1年の間をおいて、連載を再開することにしました。この作品はガンダムを題材にした作品ですが、実質的にはガンダムSEEDの二次創作ではありません。その理由を、今からお話します。
まず、この作品はもともとあるサイトで連載していた作品を手直ししたものです。当時の私はまだ長編を執筆したことがなく、そのための練習が必要でした。そのため、二次創作で土台を借りる形で長編を書くことにしました。そのとき、SFを書いてみたかったこと、ガンダムが好きだったことからガンダムの二次創作を書くことにしました。
では、なぜ宇宙世紀ではなかったのか。私がガンダムに関して魅力を感じるのはストーリーもさることながらその根底に流れる思想性、設定に感じ取れる律儀さです。すなわち、私が描きたかったガンダムとは、作品として固有化されたものではなく、一定の条件を満たすからこそガンダムであるという、富野監督へのオマージュとしてのものでした。
また、私自身、生命倫理をかじったこともあり遺伝子操作の意味とその危険性、それが最悪の場合どのような社会をもたらすかをシミュレートしてみたかったこともありました。
①練習としての長編、②ガンダムへの関心、③富野監督への敬意、④生命倫理への挑戦、これらの理由から、ガンダムの登場する生命倫理を題材とする二次創作の執筆を決めました。
そのため、この作品は「ガンダムを題材にしたオリジナル要素の強い二次創作に、ガンダムSEEDの固有名詞を張り付けた作品」とするのが正解でしょう。
形式的にはSEEDの二次創作でありながら、実質的にはガンダムの二次創作です。
形の上ではSEEDの二次創作ですので、お話の流れや登場人物たちのキャラクターは敢えて似せていますが、基本的に別物と考えてお読みください。
たとえば、以下のような設定に変更が加わっています。
プラント
原作:宇宙進出のための工場地帯
本作:コーディネーターのために建国された国
ザフト軍
原作:前身は政治結社
本作:自警団から発展したもの
ジョージ・グレン
原作:ナチュラルの若者に射殺された
本作:血のバレンタイン事件において暗殺された
血のバレンタイン事件
原作:C.E.70.2.14
本作:C.E.61.2.14
フェイズシフト・アーマー
原作:物質を変質させ強度を飛躍的に上昇させる
本作:ミノフスキー物理学にもとづく対衝撃被膜
ガンダム
原作:ただの呼称で、ガンダムという名前は正式には存在しない
本作:ガンダムはその姿とともに最強の機体群として認知されている
キラ・ヤマトとラクス・クライン
原作:恋人の関係
本作:そもそも接触さえない
スーパー・コーディネーター
原作:キラ・ヤマトのみを成功作とする優れたコーディネーター
本作:ドミナントと呼ばれる、10人の成功作が存在
ブルー・コスモス
原作:コーディネーター排斥を訴える狂信者
本作:遺伝子操作廃止を訴える世界的思想団体
このように政治、歴史、物理学、キャラクターの生い立ちから人間関係、モビル・スーツ開発史にまで手をつけています。そのため原作と類似のエピソードでもまったく意味合いが異なっていることも少なくなく、Detiny編から読んでみようと思われる方は、原作をご存じであればそれは忘れてお読みになられた方がよいでしょう。この二次創作を読むのに、原作の知識はかえって邪魔です。
すでに第1話から設定変更のオンパレードです。アーモリー・ワンなんてでてきません。シン・アスカはザフト軍機体のエースではありません。ZGMF-X56Sインパルスガンダムなんて量産機です。
そんな作品です。
では、そもそもガンダムSEEDに興味のない人は読まない、興味のある人は変更されすぎていて二次創作として読む意味がないようなこの作品をどのように読むのかについて。
原作を知らないという方は、反対の考え方をしましょう。原作の知識が役に立たないことが前提なので、原作を知らないと読めないようないい加減な書き方はしていません。Destiny編から読み始めてもわかるよう書いているつもりです。そういう観点でみれば、門戸は決して狭くありません。
原作を知っているという方は、原作が結局格好いいロボットが活躍するだけで終わってしまったとご不満であればおすすめです。原作ではおざなりにされてしまった遺伝子を操作するということがどんなことか、デスティニー・プランがもたらす負の可能性とは何かを徹底してシミュレートした結果の作品です。正解ではなく、あくまでも回答の1つにすぎませんが、この点にまじめに取り組んだということについては、原作を遙かに超えることができたと自負しています。
よって、原作を知らない人は普通にお楽しみいただけます。知っている人も、SEEDをより深い切り口で楽しむこともできると思います。
最後の注意点です。これは古い作品ですので、作者当時の趣味としてローゼンメイデンとのクロスオーバーがDestiny編から始まります。あくまでもキャラクターに出張してもらっているだけで、設定もやはりいじくっています。こちらも原作なんて気にせず読んでいただければ幸いです。
では、戦争を背景として、人とは何か、命とは何かを問い続ける花園に咲き乱れる花々の物語を、ここに再び始めたいと思います。