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No.30263の一覧
[0] サガフロンティア2 レーテ侯伝[水城](2012/03/13 21:50)
[1] 1226年 アニマ至上主義に対する一見解[水城](2011/10/26 15:27)
[2] 1227年 ジャン出奔[水城](2011/10/31 15:29)
[3] 1232年 ジャン12歳[水城](2011/11/11 10:16)
[4] 閑話1 アニマにまつわる師と弟子の会話[水城](2012/03/12 20:08)
[5] 1233年 少年統治者[水城](2011/11/21 14:15)
[6] 1234年 ケッセルの悪戯[水城](2012/03/12 20:30)
[7] 1235年 ジャン15歳[水城](2012/03/12 20:35)
[8] 閑話2 天命を知る[水城](2012/03/12 20:39)
[9] 1237年 叙爵[水城](2012/01/09 13:37)
[10] 閑話3 メルシュマン事情[水城](2012/01/17 20:06)
[11] 1238年 恋模様雨のち晴れ[水城](2012/01/31 12:54)
[12] 1239年 幼年期の終わり[水城](2012/03/13 16:56)
[13] 閑話4 イェーガー夜を征く[水城](2012/03/13 21:49)
[14] 1240年 暗中飛躍[水城](2012/03/27 10:33)
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[30263] 1238年 恋模様雨のち晴れ
Name: 水城◆8f419842 ID:517a53cf 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/31 12:54
貴族の女性が10代半ばで嫁に行くことはよくある話であり、商家の娘などは行儀見習いが終われば嫁に行く準備が整ったと考えられていた。ディガーやヴィジランツになると30代前後もザラであるが、彼女らを娶るのは大抵同業者であり、子どもができたので腰を落ち着けることになったという理由で結婚した夫婦も結構多い。しかしエレーヌ恩賜病院付属研究所の研究が進むにつれ、子どもを産むのに適した年頃が分かると自然とその範囲内に落ち着いていった。

また当時の結婚と言えば集団の長が承認することが必要であり、承認の対価として何かしらの謝礼(主に金銭)を必要とした。もっとも謝礼を受けた側がお祝いを渡すことも慣例となっていた。既婚者の証明として何かを身につけるという習慣は地方ごとに様々な特色があるが、守り石と呼ばれる宝石を付けた指輪を交換する習慣をはじめたのは、グランツ子爵であるジャン・ユジーヌとレーテ侯フランツの娘アリアとの婚姻が始まりである。
結婚史より抜粋


1238年という年はジャンにとって慌ただしい一年であった。新春早々グランツ子爵に叙任された。王族という出自ではあるが大掃除事件、ケッセルの開拓による税収の増加、街道の整備、盗賊やモンスターの討伐など実質数多くの功績を持って爵位を手に入れたといえるが、それでも彼は諸侯にとってジャンはスイ王お気に入りの成り上がりであった。あるいは次代の宮廷の一翼を担う人物である彼と彼の主君であるスイ王が何をはじめるか薄々気づきはじめていたということもあるだろう。

「汝ジャン・カミーユ・ド・ユジーヌ、ナ国への功績を讃えここにグランツ子爵の爵位を与える。今後とも励め」

「臣が臣で居られる限り陛下と国家に対し尽くしましょう」

ハン帝国崩壊後、ナが国家として形成される際に、南大陸に逃げた貴族が再興した家と、豪族としてその地を治めナの支配下に入った家いた二つの勢力がある。概して後者の方が発言力は強い。そして新興の家というのは国というより自分を推してくれた人物への忠誠を誓う場合が多かった。そしてジャンの忠誠心とはフリーハンドを与えてくれるスイ王に捧げられるものであり、ナという国はその延長線上でしかない。そもそも今回の叙勲も今後の仕事に役立つという合意の元与えられたに過ぎない。

だが、このやり取りに不安を持った人間が居た。スイ王の長子であり、おそらく後十数年で父王の跡を継ぐことになるであろうショウだ。ショウはジャンの政治的な素質については疑っていない。小規模なワイン製造くらいしか産業が無かったケッセルをたった四年で著しく発展させる手腕は評価できるし、人を効率良く働かせる才能に長けていることは分かる。だがその人となりはよく分からない。父に言わず密かに調査させたところ、治安は良く、食べ物に困ることも無い。食料の備蓄は『冷蔵庫』なるツールを設置した部屋に保管しているので、安い間に他領から買い取った食料をそこに貯め込んでいるようだ。兵力は自警団規模でまだ50人ほどだが、モンスターや盗賊などの対処を見る限りでは悪く無い。

(何より当主であるジャン・ユジーヌが強い)

報告ではあのガルムを一人で殺したという報告を受けて冷や汗が止まらなかった。ガルムは熟練の冒険者やヴィジランツが集団で戦えば勝てない相手ではないが、少なくとも単独で戦えるような相手ではない。強いアニマの持ち主であることは知っていたが、どちらかというと知謀を得意とするタイプだとショウは思っていた。だが普通に前線指揮もこなすとなれば兵力差で押し切るしかない。

そこでふと自分が何を考えたか理解したショウは苦笑した。彼は条件さえ合えばおそらく敵に回らない。ならば敵対する必要は無い。ショウはいずれ腹を割って話す必要があるだろう。果たして父はあの天才少年にどれだけの条件を付けたのやら。



1月の叙勲式が終わり、2月に入るとジャンは宮廷に招かれた。ただ今回の場合は、財務の仕事でもなく、スイ王との謀でもない。個人的な話でありつつ、政治的な色を帯びている内容だった。

「グランツ子爵も存じておると思うがレーテ侯爵フランツだ。そして彼女が娘のアリア」

レーテ侯爵家は王家に連なる家系であり、本拠地ザルツブルグは海に面しては居ないものの、川を使った水運によって栄えている。諸侯の中では王党派といっていい立場でありスイ王からの覚えも良かったが、フランツの立場としては寄りすぎず離れすぎずの立場を維持したかった。レーテ侯領とケッセルは隣接しているため何度か会談をしており、知らぬ仲では無い。

「アリア・ルイズ・ソフィア・フォン・レーテと申します」

ただ、フランツの子どもは長男であるリオンが早世したため、娘のアリアに婿を取って跡を継がせなければならなくなる。しかし国内でも有数の大貴族であるレーテ家を任せられる人物を見つけるとなると頭が痛い問題だった。身内で適齢者はおらず、他家から婿にすれば従来の路線を踏襲できるか疑問が残る。

そこで主君であるスイ王に相談したところ、今回の縁談を紹介されたのだ。

「ジャン・カミーユ・ド・ユジーヌと申します。いやレーテ侯が自慢していたのがよく分かります」

アリアはジャンより二つ年下で、ゆるめにウェーブがかかったアッシュブロンドが印象的な少女だ。

「ジャン様のこともよく伺っております」

「どうせ陛下の腰巾着とか碌な噂ではないでしょう。同世代に対しては結構やっちゃいましたし」

「ですが、ケッセルの住民は貧困から解放されたという話も聞きます。全ての人に好かれるのは不可能なのですから何を優先させるかを考えるのも貴族の務めではないかと」

ジャンは目の前の女性の評価を上方修正した。どうやら可愛いだけのお嬢さんではないようだ。

そもそも、これはスイ王が斡旋した縁談なので、密通しているなどという理由が無い限りは破談になる可能性は低い。それでも彼女の人となりはジャンにしてみれば心地良いものだったし、アニマの色もいい。

アリアにしてもジャンの良い噂も悪い噂も聞いていたので不安だったが、話してみると知的な青年であり、民衆が豊かになれば無理に税を上げなくても儲かるなど貴族としても商人としても見識豊かである彼に好感を持った。どうせ自分は婿を取らなければならないのだ。それなら家にとっても何より自分にとって良い選択をした方がいい。

こうしてジャンとアリアの交際は始まった訳だが、二つの問題があった。一つはジャンの母であるソフィーのことであり、二つ目はジャンの妹で、勉強という名目でここに来ているマリーのことだった。アリアも父からソフィーが病気で長くないことを知っていたが、将来の義母になる女性なので折を見て見舞いに行きたいと思っていた。もう一つはジャンの妹であるマリーのことで、一度テルムのグランツ子爵公邸で鉢合わせになったのだが、何故かマリーは子猫みたいにアリアを威嚇した。

「あの、私妹さんに何か悪いことをしたかしら?」

「思春期ですから色々思うところはあるようですが、2つ年下のフィリップは実感として弟なんですけど、マリーは赤ん坊の時に別れたので頭の中では妹と認識してますが扱いが難しい」

「ジャン様でも困難なことがあるんですね」

「俺は自分が術の分野に於いて天才だと思ってますが、他者との関わり合いは常に試行錯誤ですよ。経験ではどうしても大人に負けますしね」

まだ出会って数回だが、ジャンはアリアに対して話し方こそ丁寧だが大分フランクになってきた。そして言葉の端々から意外と大雑把な性格だと分かると親近感が抱いた。ジャンの側からしても頭の回転が速い女性との語らいは好きだったので秋になると正式な婚姻が結ばれることとなった。

婚約披露のパーティはテルムのレーテ公邸で行われることが決定したが、その前に二人はファウエンハイムのソフィーの元を訪れた。

「良かったわねジャン。いい方がお嫁さんになってくださって」

ソフィーは以前ほど体調が優れなかった。体調のいい日き庭に出ることはできるし、普通に食事を取ることもできる。だが視ることができるものからすればじわじわとアニマが欠乏しているのが分かる。

「俺としてはギュスターヴの方に先に結婚して欲しいと思っていますが」

この場にギュスターヴは居ないがソフィーに付いているレスリーに視線を向けると、彼女も気付いたのか顔を赤くする。

「そうね、そればかりはなるようになるしかないわね。私達の結婚はどうしても政治が絡むけどそれを実りのあるものにするのは夫婦の努力の結果なのよ」

「母上は父上との結婚を後悔したことは?」

ジャンは多分、この話を聞けるタイミングは今しかないと思った。ソフィーは息子の問いわずかな時間目を瞑り、そして首を横に振る。

「無いわ。政治的な思惑で結ばれた婚姻だけど、陛下は陛下なりに良き夫であり父親であろうと努力したの。あなたが遊び回ってるから私は相談したのよ。でも、それがあなたの為になるからと。跡継ぎでないならできるだけ多くの選択肢があった方が良いって。あまり多くを語らない人だけど子ども達のことを思っているのよ」

母の話を聞いてレスリーは泣いていた。アリアも泣いていた。そしてジャンも自分の目から涙がこぼれていることに気がついた。どうしても自分が異物・異端であることに引け目を感じていた。死の定めは覆すことはできないが感謝しよう。そしていずれ生まれて来る子に伝えよう。自分の祖父母のことを。

「ギュスターヴは前しか見られない子だからあなたにお願いするけど、みんなのことをお願い」

「はい」

「ジャン、レスリー、ちょっとアリアさんと二人だけで話したいことがあるから出ていてもらえる」

「分かりました」

部屋から出るとギュスターヴが待っていた。

「どうしたんだ二人とも・・・泣いているのか?」

自分の弟が泣いたことなど見たことが無いギュスターヴは困惑したが、ジャンはレスリーをギュスターヴの方に押し出し。目で合図した「抱きしめてやれと」。ギュスターヴは困惑したままレスリーを抱きしめた。幼馴染みといっていい少女の体つきはすっかりと大人になっていた。




まあ将来的な脅威に対して対策立てないといけない王太子とかようやく出てきた結婚相手とか色々ありますが、レスリーヒロイン化計画は着実に進んでいます。

ジャンは基本的にジャン・ユジーヌを名乗っていますが、公文書とかではジャン・カミーユ・ド・ユジーヌと記載しています。ジャン・カミーユはギュスターヴ12世の母方の曾祖父から取っているという設定です。現在はグランツ子爵ですのでジャン・カミーユ・ユジーヌ・フォン・グランツが正式名称。婿入りすればジャン・カミーユ・ユジーヌ・フォン・レーテになりますが、商売とかの決済などではジャン・ユジーヌ表記しています。これはグランツ子爵位とレーテ侯位を兼任するからなのですがまあ別に深く考えなくてもいい設定ですね。

ギュスターヴはギュスターヴ・ド・ユジーヌ、正式にはギュスターヴ・ド・フィニーなんですが、今後ギュスターヴ・ユジーヌ・フォン・ワイド、戦争後はどうしようか。多分日本語訳すると新ハン帝国ユジーヌ朝に収まるので、多分称号としてアウグストゥス系を名乗ると思うのですが、まだ10年以上も先の話ですね。

地名がドイツ語で、名前が英語系だったりするヤーデをベースにすると貴族号は『フォン』なのか『オブ』なのか迷うわけですが、多分メルシュマンは『ド』でいける。南大陸はフォンでいいやと決めました。別に名前と姓だけでも問題無いと思うのですが、雰囲気だそうと思うとそれなりに考えなければならない点なので、名前に関してはこうした方がいいと御意見は承ります。



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