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No.22829の一覧
[0] リリカル的神話体系[ホーグランド](2016/02/27 12:19)
[1] プロローグ[ホーグランド](2016/02/27 12:47)
[2] 第一話 騒動の始まり[ホーグランド](2011/05/01 00:17)
[3] 第二話 くしゃみの代償[ホーグランド](2012/04/12 09:35)
[4] 第三話 取引[ホーグランド](2012/04/12 09:35)
[5] 第四話 間奏[ホーグランド](2012/04/12 09:36)
[6] 第五話 神々の遊び[ホーグランド](2012/04/12 09:36)
[7] 第六話 ある一般人の憂鬱[ホーグランド](2011/04/29 00:27)
[8] 第七話 時間飛行[ホーグランド](2011/05/26 15:42)
[9] 第八話 介入[ホーグランド](2012/04/13 19:07)
[10] 第九話 勝負 [ホーグランド](2011/04/29 00:44)
[11] 第十話 集会[ホーグランド](2011/05/26 15:41)
[12] 第十一話 取引 part2[ホーグランド](2011/05/26 15:41)
[13] 第十二話 最後[ホーグランド](2011/05/26 15:40)
[14] 第十三話 確執[ホーグランド](2011/06/07 01:33)
[15] 第十四話 意地[ホーグランド](2011/05/26 15:37)
[16] 閑話第一話 周囲[ホーグランド](2011/06/10 10:51)
[18] 第十五話 side As[ホーグランド](2011/07/05 21:59)
[19] 第十六話 機動六課[ホーグランド](2012/04/12 09:32)
[21] 第十七話 Deus,Magia e Família 【神、魔法、そして家族】[ホーグランド](2012/04/15 14:34)
[22] 閑話第二話 結婚秘話[ホーグランド](2012/12/25 02:31)
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[22829] 第十七話 Deus,Magia e Família 【神、魔法、そして家族】
Name: ホーグランド◆8fcc1abd ID:de55ef8e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/15 14:34
 
 フェイト・T・モリは朝の日差しの中で、先まで見ていた夢にまどろんでいた。
 彼女が見ていたのは、既に遠い記憶となって久しい頃の思い出であった。それはフェイトがモリという神に引き取られて、この”家族”の一員に――管理局最高評議会付属連絡分室という家族の一員に――なった頃の記憶であった。

 あの暖炉の暖かい熱にうとうとしながら、彼ら連絡室の勤勉とは言いがたい仕事の様子を眺めていたあの頃――というところまで思考を進めて、ふとフェイトの視界に傍らの時計がうつる。

「あっ……」

 短い言葉と、頭から血の引く感覚。
 彼女は時計を二度見して、慌てた様子で扉を開け階段を降りだすのだった。





「もう、ビアンテさん! どうして、起こしてくれなかったんですか!?」

「昨日は遅かったんでしょ、随分いい寝顔で寝てたわよ」

 フェイトが階段を降りてキッチンに向かうと、コトコトと音を立てる鍋を前に前掛けを着た妙齢の女性が腰に手をあて振り返らずに言った。
 彼女のその言葉に、ふくれっ面で少しの反抗の意を示してからフェイトは近くにかけてあるマイ前掛けを手にとった。そして、慣れた手つきでフェイト担当である卵焼きの用意に勤しむ。

「……そんなに気合い入れてどうしたの? 何か今日、特別なことがあったかしら」

「みんなが集まって朝食とるなんて久しぶりでしょ。だからお父さんの好物でも作ろうかと思って」

「はぁ、フェイト……いや、なんでもないわ。そこの塩とって」

「はい」

「アルフは寝てるの?」

「うん。後で起こしにいかなくちゃ」

「……どっちが主従なんだか」

 そんな他愛のない会話をしながら、二人は朝食を作っていく。どうも、卵焼きにネギが入った辺りがフェイトのいう特別であったようだ。
 こんな会話も久しぶりだなぁとフェイトは思う。最近は皆が一緒の食事を取るという事自体が少なくなっていた。それはフェイト自身が執務官として仕事をしているのもあるし、あのモリが、なんと仕事を忙しくしているという今の状況があったからだ。つまりは各人の生活スタイルがバラバラになってしまったのである。

「……ビアンテさんは、もう復帰しないつもりなの?」

 フェイトが何度聞いたか分からないその問いを隣に投げかけると、ビアンテ・モリは手を止めて困った顔をさらしていた。
 その顔を見るたびにフェイトは悲しくなる。何故なら、フェイトにはどうしても彼女が意地を張っているようにしか見えなかったからだ。

 ビアンテ・ロゼはモリと結婚を機に管理局を所謂寿退社することになった。というのも、それ自身は彼女が望んでいたことであって誰にも強制されたことではない。むしろ、慰留されたぐらいだ。
 
 当たり前である。彼女はその才能を連絡室で腐らせてはいたが、本当は総合SSランクの才能を持つ才女であり、まだまだ年齢も若かったのだから。
 それでも無理やりに退官したのは本人の意思がそれほどまでに固かったからである。今、フェイトが思うに彼女は舞い上がっていたのだろう。その気持ちはフェイトにもよく分かるのが、辛い。

 一緒の結婚指輪を、机に頬をつきながらニンマリして眺めていたビアンテの姿をフェイトは覚えていた。そんな幸せが崩れ始めたかに見えたのはモリが忙しくなってから、フェイトが独り立ちしてから、である。
 余りにも”家族”の生活がズレてきたのだ。一緒に食事をとれなくなるのも、それを考えれば必然であった。

 思えばビアンテが無理をしているように見え始めたのは、ちょうどその頃からであった。人は、何も無い暇な状態が続くのが一番心身に応えるものなのだろう。フェイトがいくら復帰を勧めても、ビアンテは一切首を縦に振ろうとはしなかった――彼女が案外頑固な正確であることを、フェイトは知っていたのだが。

 フェイトがお父さんと呼ぶモリに不満が一つあるとすれば、そんな女心に一切気づかない鈍さだけであった。そして『仕事と私、どっちが大切なの!?』という典型的な、めんどくさい女の言葉についての真理にフェイトが気づいた瞬間でもあった。






『――いただきます!』

 モリ家、といっていいその集団の食事はその地球式の挨拶から始まるのが通例である。その理由についてフェイトは聞いたことはない。いつの間にか、それが当たり前になっていたのだ。
 
 あの”家族”の頃とは比べ様もなく広くなったダイニングで、フェイト、ビアンテ、モリ、そして遅れて起きてきたアルフが席につき朝食をとっていた。この四人が揃って朝食を食べているという一見当たり前の風景に、フェイトは一瞬胸が詰まってしまう。

「……あ、そうだ」

 フェイトは昨日はやてに聞かれた質問の件について思い出し、声を上げた。

「ん?」

 と、フェイトが作ったネギ入り卵焼きのネギを口角に貼っつけながら、目線をフェイトの方にやったのはモリ・カクである。

「昨日の、お話にあった空港火災の件なんだけど――」

 とたんカチン、カチン――と食器たちが奏でる音だけが一瞬テーブルを支配する。フェイトが様子を少し伺うと、ビアンテは食事を口に運びつつも話を聞いている様子で、アルフは完全に目の前の食事に夢中である様子であった。
 そして肝心のモリは明らかに分かりやすい表情で、しまったというか痛いところを突かれたというか、そんな顔を晒していた。そんな彼のあまりも分かりやすい顔に、フェイトは思わず苦笑してしまう。そして、湧いてきた懸念にすぐさまフォローを施すのだった。

「あ、いやお父さんが話したくないことだったら話さなくていいんだよ? ……ちょっと、はやてが気にしていたみたいだから」

「あー、うん、そうだな。悪い、フェイトには悪いが今は話せない、かも……」

「っ…ううん! 大丈夫、はやてにもちゃんとそういっておくから!」

 慌てた声を出すフェイトは、その声の調子とは裏腹に実はこんな朝の会話がとても楽しいのだ。
 そして同時に薄い、とても薄い罪悪感をも感じる。

 隣をもう一度、フェイトは見やる。そこには表面上全く変化の無い様子のビアンテがいる。そんな彼女の様子を確認して感じる罪悪感と――少しの優越感。
 なんてことはない。モリの仕事が忙しくなって、ビアンテが仕事を辞め、フェイトが執務官となった――たったそれだけのことである。だが、それだけのことで増える”お父さん”との会話が、フェイトを心底幸せにしていることも事実なのだ。

 そしてこんな気持ちを、自分よりもずっと彼を見てきたビアンテが気づいていないなんてことは無いということもフェイトは確信していた。それはあえて名付けるなら、女同士の裏腹な信頼感とでも言うべきだろうか。
 そこまで分かった上で――それでも嬉しい思ってしまう自分が、フェイトは嫌いで、そして愛おしい。

「ん? 今日もフェイトは忙しいのかい?」

 先まで目の前の朝食に向いていた興味が何ゆえそれたのか、アルフは不意打ちに質問を繰り出した。

「うん、今日も午後からはちょっと用事があるの」

「そうかい、大変だねぇ。……モリ、もうちょっとフェイトに休むよういってやってくれないかい」

「うーん、でも、フェイトは有能だからなぁ」

「もう、アルフ! 私は好きでやってるんだから!」

「ああ、そうだフェイト。この間の捜査の資料についてなんだが……」

 笑顔でモリの仕事の話に相対するフェイト。それに苦笑いするアルフ。少しずつずれた”家族”の団欒が、困ったことにフェイトはたまらなく幸せなのだ。
 そして、そのずれは無理からぬ事であるが――少なくともフェイトはそう自分に言い聞かせていた――彼女の覚悟の欠如も原因の一つであった。

「……モリ君、ちょっとそこの醤油とってくれる?」

「あ、醤油なら此処にあるよ、”ビアンテさん”」

 そういってフェイトは近くの醤油をとる。それに少しの頷きでビアンテは謝意を示して――その醤油を卵焼きにかけた。

 そう、もしこの”家族”が普通の家族であるならば。
 必然的に、フェイトはビアンテのことをお母さん、と呼ばなければおかしい。その少しのずれが――この奇妙な”家族ごっこ”を成り立たせ、残酷にも今まで存続させていることに聡明なフェイトが気づいていないはずがなかった。


 しかし、走りだした列車は止められない。事故を起こすまでは止まらないのだ。

 






 ************




 春の海鳴はいい街だ。
 
 なんてテレビの芸能人が言っていたのを思い出す。そういえばあの時、この街に来た芸人はとんと最近テレビでは見かけない。八神はやては目の前で壮大に咲く桜を見ながら、いずれ散り行く桜の儚さとテレビ芸人の栄華について想いを巡らせていた。
 いつも思う事がある。目の前のような桜を見るたびになんで自分はこうも他の皆と一緒に遊んだり、学校に行けないのか、と。春といえば桜。桜といえば入学式。新しい制服に身を包んで嬉しそうな恥ずかしそうな、そんな顔をしてはにかんでいる子供たちに何故自分は混ざれないのだろうか?

 ――だから、春の海鳴は嫌いだ。

 
 はやては軽く溜息をつき、ゆっくり桜の前から動こうと車いすを反転させようとした。背中から聞こえてくる子供たちの騒がしい声にどうしても気分が沈みがちになる。

 ――あかんあかん。せっかくの新刊やのに。

 そうだ、今日ははやてが楽しみにしているシリーズ物のファンタジー小説が図書館に入る日なのだ。
 何時も図書館に車イスで入る時に手伝ってもらう職員のお姉さんと、仲良くなっていたはやてはそこそこの人気を誇るそれを一番に見せてもらえる約束をしていたのだった。
 今日の為に前巻まで読みこんで復習までしておいたのである。それなのに勝手に落ち込んだりしたら、勿体ないやないか。

 そう心に命じつつ、はやてが車いすをこぎそうと、手を掛けたその時。


 はやての後ろから、間延びした声が聞こえてきた。



「……この世界でも、桜は綺麗だなぁ」

 その声の内容は、締りのない印象の割にトンデモでもあった。

 ――この、世界?

 これが噂の春に湧くという『変なの』ではないかと一瞬、はやては振り向くの躊躇ったが慣性の法則は彼女の思いをよそに車椅子を反転させる。結果、はやての真正面に控えめに言って変な人――何やら特撮に出てきそうな、一言で言うとコスプレまがいの服を着た――男が目の前に立っているという状況に彼女は追い込まれたのだった。

「あ……」

 とっさの、何も他意のない声。
 
 声というよりふと喉から漏れてしまったという音。

 その音によって桜を眺め、上向いていた男の視線が車椅子の少女へと向かうこととなった。


「……変質者?」

「いやいや、いきなりちょっと待ってよ! おじさん此処で警察呼ばれたらちょっと困った事態になっちゃうから!」

 公権力に対しても『ちょっと』困った事態ですむのか、とこの男の少しピントのずれた返答にはやてはプッと吹き出してしまう。そんな少女の様子に男は困った顔を晒すのみだ。

「……ふふ、おっちゃんおもろいなぁ。なんでそんなん変な格好してんの? そんな格好でうろついてたら小学生に声かけんでも警察に目付けられるで」

「……やっぱり、この服目立つのか。道理で視線を感じると思ったら」

「うん、変や」

 マジマジと自分の服を見やるその平凡な男が、どこか浮世離れしていて――そのせいだろうか、はやては普段なら口にすることなどしない愚痴などをぼやいてしまう。

「……桜なんか、下に死体でも埋まってて大事件になればいいんや」

「……なんだかえらい具体的な大騒動を指定するなぁ」

「せやな――大体や、なんで私だけがこんな目にあわなあかんの。そりゃあ、不平等ってやつやん、そこら辺、神様はどう思ってるんやろ?」

「? ……ふむぅ。どうも、思ってないなぁ」

「え?」

「……え?」

 一瞬、二人の視線が交差する。
 
 すぐにはやては、この眼の前の男が実は春のせいとかじゃなくて本格的にやばい人なのじゃないかと思い始めた。

「ん、さっきの言葉を常識的に解釈するとおっちゃんが自称神様ってことになんやけど……」

「んー、そうなるかな」

「……マジで?」 

「マジで」

 横たわる沈黙。
 最初はさすがに引いていたはやてであったが、ここまで突き抜けているとは――と、少しこの可笑しな自称神様に興味を持ちはじめてきたのだった。付け加えて言うなら最近、はやてとまともに会話しているのは先生と、それこそ図書館の職員さんぐらいしかいないのだ。

 だから、はやては久しぶりに子供らしく――と自身が思っている時点で子供らしくはないのだが――無茶を言ってみる気分になった。

「じゃあ、治してーな。神様ならこの足ぐらい治せるんやろ?」

 と、ポンポンと自身の動かない足を叩くはやて。
 はやては自身が何と言うか、無茶ぶりを言っているのを自覚していた。勿論、彼女が本気であるはずがない。この眼の前の男の戯言に対して反応、といった感じの表層的な会話ゲームであった。

 そして、彼はノリよくその会話に乗ってくる。

「神様つっても色々あるしー 俺、破壊しか出来ない感じの神様だし」

「なんやそれ。じゃ、神様っちゅーより、破壊神やん」

「そうだな」

「はぁー、使えん神様やなぁ」

 はやてはそんなモンだと――現実なんてそんのようなモノだと笑う。その様子をモリはマジマジと見つめるのだ。
 自称神様の、不審者に見つめられたはやては先まで浮かんでいた自嘲めいた笑みを引きつかせて、少し後退る。割りと、はやては本気で我が身を案じ始めていた。

「神様はね、正直一人の人間だってどうでもいいんだよ。一つの世界だってどうでもいいのに、一人の人間になんか構う訳ないじゃないか」

「……それも、そうやな」

 二人の会話が途切れるの同時に、二人の間を強い風が通り抜ける。その春にしては寒い風は先まで散っていた桜を再び空中へと舞い戻らせた。
 その突発的ひらひらピンクな空間の中で、自称神様は予言する。

「君を助けてくれるのは神様なんてもんじゃなくて、たぶん魔法とかそこら辺のファンタジーだよ、きっと」

 そんな根拠も何もない、荒唐無稽な事を言って――神様は前に手をつきだした。


「え……?」

 ぽかんとしたはやての前には先まで舞っていた桜の花びらが、まるで空中に固定されたみたいに――よくある氷中花みたいに――動かずそこにあった。まるで世界が止まったかのように錯覚してしまうほどのその綺麗な光景は、遠くから聞こえてくる学校の鐘の音が否定する。つまり、時が止まった訳ではないのだ。

「うん、綺麗だね。これが、魔法」

「え、凄い……」

 その後に続く言葉をはやては絞りだせなかった。この眼の前の、正しく魔法的な光景に見入っていたからだ。
 その時間は実際は五秒もないといったところだろう。しかし、はやてにはその時間が永遠につづくかのように感じられた。
 
 瞬間、何かが解除されたかのように動き出す花びらたち。
 
 動き出して数秒で、先の光景は幻のように消え去ったのだ。


「え、おっちゃんさっきの本当に……」

 見入っていた光景から無理矢理にひっペ剥がすかのように視線を剥いで、はやては先まで後ろにいたはずの自称神様に問いかける。
 しかし、その返事は返ってこなかった。振り向いた先には、誰も居なかったからだ。

「……」

 しばらく呆然と――先まで春先によくいる『変なの』が存在したはずの空間を眺めていた。
 一、二分程眺めていただろうか。はやては、ようやくその空間から顔を背けて呟く。そこには先程までの自嘲めいた笑みではなく、穏やかな微笑があった。

「……魔法、か」

 ――コスプレした神様っていややなぁ

 もうちょっと美形であればいいのに、はやては思った。

 

 

 


 ************



「はやて! 起きて!」

 そんな声に起こされて、八神はやては夢から覚める。
 その声ははやての親友であるフェイトのものであった。よく見ると何か面白いものを見つけた、とでも言いたげにその口角が彼女に似合わず歪んでいる。

「ん……ごめん、寝てた?」

「うん、なんかいい夢見ていたみたいだね。百面相だったよ」

「……そう、なんかなぁ」

 頭の中、朧気に残る夢の残滓にはやては唸る。
 確かに彼女の言う通り何か面白い夢を見ていたことは確かなのだ。しかし、それが何なのか、ツルツル滑るうなぎを掴もうかとするみたく後もうちょっと、というところでその正体を逃してしまう。

 数秒唸っていたはやてであったが、一瞬顔をしかめたかと思うとフェイトに向き直った。

「うん、忘れてもうたわ。……で、何の話やったっけ?」

「う、ひどいなぁ。はやてが用事あるって私を呼び出したのにー」

 そうやったっけ、とはやてが俯せていた下を見ると少しのよだれが着いた書類が見えた。素早くはやては袖でその書類のよだれを覆い拭いて――ようやくフェイトを呼んだ目的を思い出した。
 その書類には調査結果について――エリオ・モンディアル、との表記がある。その書類にしばらく目をやったフェイトは口を開いた。

「……それって今度の新人の調査のやつじゃない? 誰か、いい子は見つかったの?」

「ああ、そうや。その事を話すつもりやったんや。まぁ、とりあえずコレを見てみ」

 はやては書類をフェイトに渡す。彼女がそれを読んでいる間にもはやての説明は止まらなかった。

「その子いい感じなんやけどな。ちょっと情緒不安定、というか……まぁ、多感な時期やから仕方がないとは思うんやけどな」

 フェイトはその書類の写真に、どこか既視感を感じていた。

「そこでや、フェイトちゃんもそろそろ親離れしなければならないやろ?」

「……え?」

 フェイトは視線を書類から上げる。そこには首を傾げるはやての姿があった。

「ん? 前、そんなこと言ってなかったっけ?」

「え……うん、そうだね。続けて」

「……そうやな、簡単に言うとその子を引き取って欲しいんや。今は管理居の施設におんねん」

 その言葉でフェイトは全てを悟った。
 
 はやてが何を考えているか、何を期待しているか。


 ――そして、フェイトの”家族”の為に言っているということも









 

<作者コメ>
 お久しぶりです。なんか色々とごめんなさい。
 元々あったSTSの何話かは削除しました。続きが気になってた方が居ればごめんなさい。プロットがどっか逝っちゃった。
 他に書いてた奴が区切りついたので一度こっちを更新したいと思ってます。論文もねー、やろうとしていた事が先人のただ足跡を追っていた、なんてことが分かればヤル気も削がれますよねー

 プロットとか探すついでに他のも見てたんですが、なんだか自分は暗く、バッドエンドなやつばっかりだったみたいで。今回はラブコメ・ハッピーエンドな感じの軽いのを目指したい、そんな感じ。




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