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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第52話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:347ab112 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/18 15:44
SIDE ネギ・スプリングフィールド

通勤途中の大通りで、僕は何気なく空を見上げた。
今日は麻帆良では珍しく、灰色の空が広がっている。
どうもテレビで見た天気予報では午後から雨が降るらしいから、傘はちゃんと持ってきた。
傘を持ってくる度に思うけど、杖と一緒だと意外と荷物になってしまう。
折り畳み傘にすればいいじゃない、ってアスナさんは言ってたけど、どうも紳士傘じゃないと落ち着かないんだ。
僕の体格から見て大きな傘と杖、そして鞄まで持って歩くのは、やっぱり疲れる。
それも気分的なもので、体力的には全然問題ないんだけど。
「ネギ君、それ重そうやな。大丈夫?」
優しいこのかさんは心配してくれるので、僕は『大丈夫です』と返した。
さっきも言った通り、今は通学途中。
それでいてどうしてゆっくり歩いているのかというと、それはこのかさんの横にいる人が原因だ。
なんというか、とても硬い表情をして歩いている桜咲さんがいるのだ。
硬い、というのもなんか違うなあ。

挙動不審という日本語が一番合うかもしれない。

いちいちこのかさんに話しかけられてびっくりしたように肩をすくませる様子は、僕が見る限りでは挙動不審だと思う。
真面目そうな人だけど、昨日のことと現状のことを合わせて印象がちょっとだけ変わった。
ずっと真面目なんじゃなくて、普通に慌てたりもするんだ、と。
このかさんに話しかけられて慌てる桜咲さんを見て、そう思う。
ミサカさんと話している所は見かけたことがあるけど、その時よりも反応が正直に見える。
それは僕のカンで、本当は違うのかもしれないけど。
このかさんが桜咲さんの腕を引っ張って僕とその隣にいるアスナさんとの間が開くと、アスナさんは頭を下げて僕の方にぼそぼそと話しかけてきた。
「ネギ、昨日の場所で話すの?」
僕はそれに頷いた。
昨日の帰り道で決定した、桜咲さんと話すこと。
一応魔法関係の話になると思うので、流石に職員室や廊下で話すわけにもいかない。
誰かに聞かれたら困るし。
だから、僕はアスナさんと桜咲さんを『昨日の話の続き』といった名目で昨日の教室に呼び出すことにしている。
もともと補習みたいな感じで呼び出したんだし、周りから見て不審に思われることもないだろう。
あんまり大声で言えないけど、アスナさんと桜咲さんの成績が悪いのは結構知られてることだし。
呼び出すのには都合が良いと思う。
僕は教師なんだから、本当はこんなことを思ったらダメなんだけどね。
アスナさんは僕の返事を見て、ひとつ頷く。
「わかったわ。このかにはうまく言い訳しとく」
そう言い残して、アスナさんはどこかぎくしゃくしているように見えるこのかさんと桜咲さんの間に飛び込んで行った。

昨日から、桜咲さんがこうして一緒に通うことになった。

その理由については、どうもこのかさんが桜咲さんと仲良くしたいから、っていう理由らしい。
アスナさんの説明だから色々抜け落ちてる所があると思うけど、要約したらこんな感じだ。
桜咲さんの護衛も、このかさんが近くにいればやりやすいだろうし。
そう思ったが、目の前でアスナさんに肩を組まれて目を白黒させている様子を見ると、なんとなく頼りなさそうな印象を受けた。
たぶん、僕よりもずっと強いはずなのに。
そのまま僕たちは中等部校舎に到着して、そこから三人と別れた。
教室へ行くアスナさんたちと、職員室へ行く僕。
昨日はアスナさんに『ちょっと先に行ってて』と言われて一人だったけど、今日はいつも通りだった。
登校ラッシュに巻き込まれてない時間帯だからいつもよりも時間は早いけど。
職員室に入ると、しずな先生が挨拶してきた。
「ネギ先生、おはようございます」
それに同じように挨拶を返し、近くの机に座っている先生方にも挨拶をしていく。
「今日は昨日と同じで早いね。いつもは遅刻ギリギリの時間に来るもんだからバタバタするけど、早くに来るのもいいもんだろ? この方が忘れ物も少ないしな」
「慌ててこける危険性も減りますしね」
そう言って笑う先生たち。
その冗談を聞いて、僕は恥ずかしくなった。
アスナさんたちはいつも遅刻ギリギリ……登校ラッシュの時間帯に登校するので、僕も通勤時間が遅くなってしまう。
だからホームルームの時間に遅れないように、慌てて準備をすることが多かった。
それでこけたりしちゃって、あの頃は周りの先生方にたくさん迷惑をかけてしまった。
今ではちょっと要領良くなったから、このごろ失敗してない。

してない、はず。

そう思いながら僕は先生方と多少の雑談をした後、そろそろチャイムが鳴る時間になったので出席簿を持ち、3-Aの教室に向かう。
その途中に挨拶してくる生徒の皆さんに挨拶を返しながら、僕は放課後のことについて考えていた。
「(桜咲さんが僕たちに助けを求めなかった理由、かあ)」


アスナさんは気合を入れていたけど、僕は僕でそれに対する予想くらいはある。


桜咲さんがもう既に修学旅行での行動を決定していて、その予定を崩されたくなかったからとか。
実は関西呪術教会のスパイで、裏で色々と画策していて邪魔されたくなかったからとか。
ただただ、責任感の問題なのか。
なんとなく最後のが一番しっくり来る気がするけど、僕が一番可能性が高いと思っているのは『僕の実力不足』ってやつだと思う。
要するに、このかさんを護衛する時に僕たちは足手まといなんじゃないか、ってことだ。
桜咲さんはいつも大きな刀を持っていて、学園長が頼りにするよう勧めるほどの実力者だ。
あまり思いだしたくないけど、茶々丸さんを襲撃した時にミサカさんが踏み込んできた速度は、正直に言って見切ることなんてできなかった。
正面に来た、と認識した時にはもう意識がなくて、気が付いたらアクセラレータさんの家だったんだ。
少なくとも、そのミサカさん並みに強いはず。
となると、僕は役不足なんじゃないか、と考えてしまう。
桜咲さんはこのかさんの護衛を任されるプロフェッショナルなんだから、他人であり素人である僕やアスナさんに助けを求めることなんてないと思う。
そう思っても、結局は『思っている』なんだから、実際に聞いてみないとわからない。
もしかしたら言いづらいだけなのかもしれないし……もちろん、言われたらきちんと協力するつもりだ。
むしろ進んで協力したい。
大勢になると動きづらくなるけど、確実性は増すと思うから。

このかさんは絶対に守らないと。

僕は心の中で新たな決意を固めながら、教室の扉を開ける。
相変わらず元気な皆さんを見て、僕は頭を切り替えることにした。
魔法関係のことは後回し。
今の僕は先生だ。
そう思って、僕はいつもより2割増しくらいの声で言った。
「皆さん、おはようございまーす!」






いつものホームルーム、いつもの授業。
そして、いつもの放課後。
僕は桜咲さんがいつ来ても良いように、先に部屋で待っていた。
以前に図書館島で借りてきた『良い先生になる100の条件』という本を読みながら。
その本を読んでいるんだけど、タカミチがそういう本はあまりあてにならないと言っていた通り、この本はちょっとこじつけた所が多くある。

全部見習わなくてもいい。

良い所だけを抜き取って、自分なりに解釈しようと思ってる。
そういう趣旨の本だろうしね。
その本の条件の内、46条を読み始めたところでドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
僕が答えると、扉を開いてアスナさんと桜咲さんが入ってきた。
早速アスナさんは僕が読んでた本を覗き見て、
「へー、そういう本も読むのね。昨日の夜に読んでたやつ?」
「あれは違いますよ、ただの小説です」
のどかさんが薦めてきた本で、ライトノベルという中学生や高校生向けの本で、僕でもとっつきやすい本だった。
小説の中にある魔法とかは空想のものなんだろうけど、本当にそういう魔法があったらすごいな、と思うような魔法があった。
空を飛ぶ船の艦隊を一撃で撃ち落とす威力の魔法を放ったりするんだ。
ファンタジーの世界なのにゼロ戦っていう日本の戦闘機に乗ってる表現が斬新だったし……まあ、僕たちの常識だと普通に飛びながら魔法は使えるんだけど、そこは突っ込み始めたらキリがない。
第一、それだと面白くないし。
現状とはまったく関係ない思考をそこで打ち切り、僕は正面に座った桜咲さんと、隣に座ったアスナさんを見る。
桜咲さんはちょっと難しそうな顔で僕のことを見ている。
「あの、ネギ先生。本当に補習ってことはないですよね。昨日の話というのは修学旅行についての話という意味ですよね?」
「桜咲さんが補習するんだったら、バカレンジャーの人たちはみんな補習ですよ」
「え゛っ」
アスナさんのひきつった驚き顔を見て、僕は思わず笑ってしまった。

普通に考えて成績の悪い人たちを放っておいて、桜咲さんとアスナさんだけを補習するなんてことはない。

明らかにホッとした表情の桜咲さんは、僕が見ているのを見て慌てて姿勢を正した。
修学旅行の話だからといってそこまで緊張しなくていいのに。
やっぱり真面目な人なんだなあ、ということを再認識しながら、僕は話を切り出した。
「今日呼び出したのは修学旅行の話というより個人的な話になると思います。このかさんの護衛の件についてです」
「お嬢様の護衛、ですか?」
桜咲さんの表情は少し硬くなる。
声も低くなった。
それに気圧されないようにしながら、僕は頷きを返す。
「このかさんの護衛って、僕たちも協力できないかな、と思って……ダメですか?」
そう言うと、桜咲さんは顎に手を当てて、少し考える仕草をした。
仕草だけではなく、頭の中もちゃんと回ってると思う。
しばらくしてから、桜咲さんは口を開いた。
「お嬢様の護衛についての申し出は私の方からもお願いしたいと思っていたのでありがたいのですが、私はネギ先生が『優秀な西洋魔法使い』ということしか聞いていません。ネギ先生が具体的にどんなことができるのか、それを詳しく知っておきたいですね。私は西洋魔法について疎いので……」
桜咲さんも望む所だということを確認して、僕は僕ができることを伝えた。
空を飛べるとか、魔法の射手とか。
どんな性能を持っているのか、どれだけ使えるのか。
かなり詳細に伝えたからか、桜咲さんはこめかみの方を揉みほぐしながら、『うーん』と唸っていた。
「私と違う利点は空を飛べるということと、遠距離攻撃が充実しているということですね。誘導性があって連発できる魔法の射手と、分身を作る精霊の召喚、他にも威力の高い雷系魔法である白き雷、最大出力の魔法は雷の暴風、といった所ですか」
「はい、そういうことです」


横を見ると、アスナさんはぐてーっとなっていた。


そんなに長く説明した覚えはないんだけど……10分くらいだったかな。
こういう場合はもっと単純に説明した方が良いのかな。
空気を読むのは難しい。
それから僕も桜咲さんが何をできるのかを聞いた。
剣術による近距離戦が主体だというのは昨日に聞いたけど、詳しく聞いてみると斬撃を飛ばすこともできるらしい。
他にも陰陽系の魔法を多少使えたりと、意外なことが分かった。
てっきり剣を振るうだけで、遠距離の攻撃とかは使えないと思っていたから。
ここで魔法を覚えるくらいの勉強ができるんだったら、もうちょっと学業に精を出してほしいと考えてしまう。
やっぱりやる気とかの問題なんだろうなあ。
そう思いながら話を続け、結局決まったことは、僕とアスナさんはこのかさんの近くで護衛をして、桜咲さんはその外周を護衛し、何か異常があれば念話や携帯電話で連絡を取る、とのことだった。
引率をする立場である僕が生徒の皆さんから離れることはできないし、適任だということで了承した。
さて、この話題が僕の主題なわけで、ここからがアスナさんの主題だ。
僕は極力黙ることにして、アスナさんの方に話を任せることにする。
「僕の方は以上なんですけど、ちょっと昨日のことでアスナさんが聞きたいことがあるみたいで……」
そう言ってアスナさんの方を見ると、こっちの意図がわかったのか頷いて、桜咲さんの方を見た。
その顔が真剣になっているのを見て、これまでの流れでほぐれてきた雰囲気が一気に硬くなるのを感じる。
僕は静かに深呼吸することで、気持ちを落ち着けた。
「私はまどろっこしいことは苦手だからぶっちゃけるけど、昨日の話の途中、どうして護衛のことを話さなかったの? あの場でそのことを話してたら龍宮さんもミサカさんも協力してもらえたと思うんだけど」
単純に疑問だった、というような口調じゃない。

ほんの少しだけ棘があった。

それについての話を持ち出されるとは思わなかったのか、桜咲さんは驚いたみたいだ。
しばらくしてから、桜咲さんは口を開いた。
「私がお嬢様を護衛しているということは、あまり広めないで欲しいんです。お嬢様に護衛がいると知れたら、それも含めて誘拐計画を練られる可能性が高くなりますから……」
「本当に、それが『個人的な』理由?」
確かめるように、アスナさんはゆっくりと話した。
桜咲さんの言葉に納得ができなかったみたいで、その眉根にしわが寄っている。
アスナさんの言葉に、何故か桜咲さんは言葉を詰まらせた。
次に何か桜咲さんが言う前に、アスナさんがそれを潰す。


「建前の話はいいのよ」


その声が僕が想像していた以上に低くて、少しびっくりした。
「私は素人だけど、あの場にいた全員に協力してもらえるように頼めば、五人はこのかを守るために動けると思ったわ。人数が多いと自由に動きづらいっていうのはあるかもしれないけど、この方がこのかにとって安全じゃないのかな。私はこのかを安全にすることよりも優先した個人的な理由について、どうしても知りたいのよ。私なら、多分自分のことよりもこのかを守ることを優先するから」
それを聞いて、桜咲さんは考え込んでいるようだった。
多分、ものすごく困っているんだと思う。
困らなきゃ、すぐに回答してしまうだろうし。
それが、本当に言いたくないことなのか、言ったらアスナさんが怒りそうだから言いたくないのか、僕にはわからない。
きっと前者じゃないのかな、と予想する。
ただ予想するだけで、僕ができることは何もない。
話が終わるのを待つだけだ。
アスナさんが聞きたい、大事な結論。
それに口を出すなんて、どう考えてもやっちゃいけないことだと思ったから。
五分ほど沈黙が続いた後、額に浮かんだ汗をハンカチで拭った桜咲さんがため息のような深呼吸をした。
どこかぼうっとした瞳で虚空を見つめた後、ぼそりと呟く。
「誰にも言わないと、約束してくれますか」
その言葉は本当に小さくて、僕も聞き取りづらかった。
アスナさんにはしっかり聞こえてたのか、きちんと頷いている。
僕も頷くと、桜咲さんはそれを確認したのか、ぽつぽつと話し始めた。
しかし、最初の切り出しが衝撃の一言だった。



「……ミサカさんがいるからです」



僕とアスナさんは怪訝な表情をしていた。
傍から見ても、桜咲さんとミサカさんの仲は良く見える。
休み時間に話している光景は良く見てたし、そういう印象しかない。
桜咲さんは続ける。
「ミサカさんと一緒にこの仕事をやったら、絶対いつか致命的な隙ができます」
「ちょっと待って、どうしてそうなるの? ミサカさんは強いし、頼りになると思うけど……」
「はい、頼りになります。協力してくれたら心強いと思います」
「なら―――」
「でも、ダメなんです。ミサカさんだけは、絶対」
強い口調で言う桜咲さんを見て、アスナさんはアプローチの方向を変えることにしたらしい。
口調をさっきよりも優しいものに変える。
「じゃあ、ミサカさんがいなかったらあの場でも言ってたの?」
「はい。龍宮なら信頼できますから」
そう言う桜咲さんを見て、アスナさんは困ってしまったようだ。

どうも桜咲さんはミサカさんがいたからあの場で護衛のことを話せなかったらしい。

そして、その理由のことはどうやってもはぐらかしてしまう。
それから話を聞いていくと、どうもあの場でミサカさんに会うこと自体が苦痛だったみたいだ。
どうして苦痛なのか、それも答えてくれない。
頑なに『ミサカさんには会いたくない』と主張する桜咲さん。
何か二人の間でトラブルでもあったのかとアスナさんは考えたようで、そういう方面で質問をしていくようになった。
しかし、桜咲さんはずっと黙っていて、アスナさんがそれにだんだんと苛立ってきているのが伝わってくる。
僕はトラブルがあるのなら解決したいと思うけど、桜咲さんがそんなに話したくないことなら、深入りしない方が良いと思う。
誰だって、話したくないことってあるから。
とりあえず、桜咲さんがミサカさんと何かトラブルがあって、今は二人での連携が取れないとわかっただけでも良いんじゃないだろうか。
桜咲さんの『個人的な理由』の正体はそれだったんだし。
アスナさんはその更に深く、トラブルの事情を知ろうとしている。
アスナさんに冷静になってほしいと声をかけるべきか悩んでいると、桜咲さんがいきなり立ち上がった。
なんだか鬼気迫る表情だったので驚いて肩をすくませてしまった。
桜咲さんは僕の方に歩いてくると、呟く。
「すみません、神楽坂さんと二人で話したいんです」
たぶんその話すことがトラブルの事情なんだろうけど、どうも僕に聞かれたくないことらしい。
仲間はずれにされている気がして、僕は思わず理由を聞こうとしてしまって―――口を閉じた。
それじゃあ千日手だということに気づいたから。
僕もその事情というのは知りたくなってきていたけど、僕よりもアスナさんの方がもっと知りたいはずだ。
事情を聴いて、解決してあげたいという気持ちを抑え込んで、僕は席を立った。
「あ、ネギ」
「アスナさん、僕は職員室に戻ってます。お話が終わったら呼びに来てください」
そう言って、僕は後ろ手で扉を閉めた。
廊下を歩きながら、大きくため息をつく。
生徒同士のトラブルも解決できない教師である、僕に対して。






SIDE 神楽坂アスナ

出て行ったネギが落ち込んでるように見えた。
きっと、『教師なのに何もできなかった』とか思ってるに違いない。
教師だから生徒の問題を全部解決しないといけない、ってわけじゃないのに。
背負い込みすぎるネギのフォローは後で考えることにして、今は桜咲さんの方に意識を向ける。
桜咲さんとミサカさんが何らかのトラブルを起こしてるのは間違いなさそうだけど、その原因を今から話してくれるのだろうか。
それにしても、なんだか問題多いなあ。
このかの事もだし、頭がパンクしそう。
自分から望んだことだけど、ほんの少しだけため息をつきたかった。
桜咲さんは警戒するように周りを見回した後、ほんの少し顔を赤らめてこう言った。



「神楽坂さんは、高畑先生のことが好きなんですよね?」



思いっきり吹いて、頭を机に打ちつけた。
もしかしたら机にヒビが入ったんじゃないかってくらい強く。
顔全体が真っ赤になるのを自覚しながら、思わず立ち上がる。
「な、なんでいきなりそんな話になるのよーッ!? 私が高畑先生のことを好きかどうかなんて今の話に関係ないでしょ!?」
「もしも、高畑先生が婚約してしまったら、どう思いますか?」
「えっ?」
突拍子もないことに声を荒げてしまったが、強引な桜咲さんの言葉に頭が冷えた。
高畑先生が、婚約?
なんでそんなことを、と問いかける前に、私は『嫌だ』と思った。
そりゃあ、確かに本心では叶わない恋だってことくらいわかってるけど、それとこれとは話が違う。
率直に嫌。
好きな人に恋人ができれば、それは嫌だろう。
私は素直に桜咲さんにそれを伝えようとして、ハッと気づく。
どうしてそんな話をしてくるのかと考えると、どう考えてもさっきの話と関係しているとしか思えない。
信じられないし、まさかとは思うけど。
私は小さく頬をひきつらせた。
それを見たのか知らないけど、桜咲さんはその後に言った。


「私はその時の神楽坂さんであり、高畑先生の恋人という設定の人が、ミサカさんです。所謂、恋敵というやつですか」


最後の方がなげやりになったのは、もうどうにでもなれということなのだろうか。
見れば、桜咲さんの手が握られて、小さく震えていた。
それが今語ったことが事実だということを証明していて、私は困惑する。
まさか、ミサカさんと桜咲さんがそういう関係になっていたなんて。
「え、あー、その、相手は?」
「アクセラレータさんです」
うわあ、と私は頭を抱えそうになった。
つまり、アクセラレータとその妹のミサカさんが恋人みたいな関係になってて、桜咲さんはアクセラレータのことが好きで、ミサカさんと桜咲さんは友達で―――ッ!!
「ど、どこのドロドロ青春ドラマ? あ、バカにしてるわけじゃないのよ!? でも、うーん、ミサカさんと桜咲さんが、アクセラレータにかぁ……」
正直に言うと、私が首を突っ込んでいい問題じゃなかった、ってのは確かだ。
本当はその理由を問い詰めて、このかとその事情のどっちが大切なのか聞こうと思ってたんだけど……。

これは、ちょっと困る。

私はどうしてその事実を知ったのか聞いてみると、ミサカさんがアクセラレータさんと仮契約をしているのだという。
仮契約というのは、まあ、要するにキスをすることで完了する。
私はネギが子供だからノーカウントって言えるけど、アクセラレータとミサカさんの年齢を考えると、確かにそういう関係の疑いはある。
実際、ネギも仮契約をした男女はだいたい結ばれるとかどうとか言ってたし。
そんなこと、今言えるはずがないけど。
「ミサカさんに会うと、嫉妬で避けてしまうんです。胸が痛くなって、どうしようもないんです。こんな状態でお嬢様の護衛なんてできるわけがありません。不確定な要素を入れるくらいなら、私が万全で護衛に臨める状況を選びます」
個人的な理由、についてはわかった。
その詳細な理由も理解した。
このかとその事情を考えると、納得もできた。
一応このかのことを考えてくれていたことがわかって良かったけど、話が予想の斜め上どころかぶっとんだ方向に行ってしまったもんだから、私も若干混乱している。
声が上ずってしまった。
「う、うん……わかったわ。そういう理由だったのね。このことはミサカさんも知ってるの?」
「知らないでしょう。知っていて言うなんて、ミサカさんはそんな最悪な性格の持ち主じゃありませんから」
だから余計にミサカさんに話しづらい、と。
私はそれを理解してしまって、また頭を抱えたくなった。
何度でも言うけど、これは当人たち……アクセラレータやミサカさん、桜咲さんの問題であって、私が首を突っ込む問題じゃない気がする。
突っ込んでしまって言うのもなんだけど、察してほしい。
桜咲さんは身を乗り出して、顔を真っ赤にしながら言った。
「それで、ですね。このことは決して誰にも言わないでください。ネギ先生にも、絶対に」
「もちろん。約束する」
とりあえず、このことは心の中にしまっておくことにする。
ただ、私の性格を考えると、やっぱり首を突っ込んでしまうんだろうなあ、と思う。
修学旅行が終わった後のことを考えると、げんなりした。
「もしも言ったら……」
チャキ、と何か時代劇でよく聞くような音が聞こえた気がする。
絶対に言わないようにしよう、と五回ほど心の中で決意した。
そして桜咲さんは教室から出て行ってしまい、残された私はネギを迎えに職員室に向かう。
廊下を歩きながら、大きくため息をつく。
とりあえず、桜咲さんがこのかの護衛についてはとても真剣な気持ちで取り組んでいて、このかのことを嫌ってなかったことがわかっただけで良しとすることにした。
後味悪いな、と呟きながら。






SIDE 桜咲刹那

言ってしまったという後悔と、言ってしまったというわずかな安堵感がある。
校舎から出て、私は麻帆良のあちこちにあるありふれたベンチに座る。
下校から時間が経っているからか、私の視界に人はまばらにしか映っていない。
それがなんとなくありがたくて、私は一息ついた。
あの個人的な理由、という正直な言い回しはまずかった、と後悔している。
神楽坂さんに疑問にもたれるということは、ミサカさんもそう思ったはずだ。
言うと悪いが、神楽坂さんよりもミサカさんの方が聡明だ。
間違いなくそういう言葉のミスに反応するだろう。
反応しなかったのは、ミサカさん自身がさほど興味がないと思ったのか、それとも別の理由なのか。
本人に聞かないとわからないことを、私はぶつぶつと考え続ける。

若干の現実逃避もある。

正直、あの場で本当のことを話さないという選択肢はなかったし、又聞きだったが高畑先生を片思いしているらしい神楽坂さんになら話してもいいかな、という思いがあったことは否定しない。
でも、言ってしまったものは恥ずかしい。
絶対に言わないように釘を刺したが、果たしてどこまで持つのやら。
個人的に神楽坂さんは口が軽い方ではないと思っているので信用はしているが、ちょっとのミスで真相がバレるなんていうことはよくあることで、この事実が広まることについては若干あきらめている。
ネギ先生を追い出したのは、その『ちょっとのミス』の割合が高めだったから。
流石にそんなことはないと思いたいが、普段のネギ先生を見ていると隠し事については信用できない。
あの性格から信頼はできると思っているが、信用するにはまだ実績が足りない。
その実績というのも、あのエヴァンジェリンさんを倒したとかいうのを龍宮から聞いたくらいだ。

ぶっちゃけると信じられない。

何かとんでもない力を隠し持っているのなら頷けるが、そんな風には見えないし、それほどの実力を持つ人物が麻帆良でのんびりしていいはずがないだろう。
そのこともあって、ネギ先生に対する信用はできない。
やれやれと思いながら、私は夕暮れ間近の空を見上げる。
朝から雨が降ると言っていたが、どうも天気予報は外れたようだ。
踵を返して、歩き始める。
お嬢様の護衛については、また龍宮に任せてしまった。
依頼という形になるので報酬を支払わなければならないが……ここは神楽坂さんに建て替えるように頼んでみるか。
そんなことを思いながら、私は世界樹広場に向かう。
あの枝の上に行くために。







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