<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[21322] 第51話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:347ab112 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/29 01:44
SIDE ガンドルフィーニ

停電騒ぎから数日の時が過ぎた。
私は英語の授業用教材を脇に挟みながら、女子中等部校舎の廊下を歩いていた。
私はもともとこちらの校舎に授業に来ることはないが、学園長から会議の呼び出しを受け、それが終了して現在に至る。
教材の間には、その際に配られた書類が挟まっていた。
無論、もしも落としてしまった時のために一般人にはただの英語の教材プリントにしか見えないように細工はしてあるが、それにしても魔法関係のことで書類を作ってまで報告する事は何なのか。


それが、今回の桜通りの吸血鬼事件である。


これについては色々と不自然な部分も多く、納得できない個所も多かったのだが、学園長はそれらについてまとめて説明するために会議を開いたという。
その会議を思い出すと、私はため息をつきたくなった。
私の脳内は過去の投影を始める。
過激派や穏健派などといった、勢力関係なくそれら重要なスポットに収まっている人物たちが集められたわけだが、会議の雰囲気は最悪だった。
なにせ、過激派は学園長や私などに力づくで抑え込められたのだから。
不満があるのも無理はない。
だが、だからと言って最高責任者である学園長の指揮を離れて好き勝手やってしまった過激派に対しての風当たりは強い。
学園長の指示によって既に監視されていた連中が開放され、再び過激派の力が戻ってきたたため影響は顕著に表れていないが、停電で独断に動いたとされる連中がいた以上、彼らの行動は利敵行為と言える。
それについての情報は翌日に出回ったので、私もミサカ君と桜咲君が過激派の襲撃にあったという事は知っている。
どうも過激派は一部の者が暴走した結果だと言っているが、それもどこまで本当なのやら。

そう思いながら私が会議室で座っていると、学園長が入ってきた。

いつもの飄々とした雰囲気ではなく、どこか重い雰囲気が漂っている。
胃が痛くなる雰囲気も、学園長の登場によって幾分か払拭された。
その様子に何があったのか、そちらに興味が向いたからだろう。
学園長は席に着くと、全員がそろっているか確認してから持っているプリントを配布した。
A4のプリント用紙に書かれているそれを一目見て、私は驚きに目を見開くことになった。
それが桜通りの吸血鬼についての詳細なレポートだったからだ。
ページをめくっていくにつれて、問題が徐々に明らかになっていくようになっている。
しばらく経ってから、学園長はこう言った。
「目を通してくれたかの? その書類についてだいたいのことが理解できた者は顔を上げて欲しい」
一同はすぐに顔を上げた。
というのも、内容はともかくこんなものを配ること自体が驚きで、学園長に早く事情を説明して欲しかったというのがあるだろう。

魔法についての問題は、これまでにもよくあった。

その際、あまりにもまずい問題は書類化して本国に提出したらしいが、少なくとも私がこちらに赴任してきてからそんな不祥事は一回もない。
つまり、今回の事件は本国に対して報告すべき内容なのだろうか。
一同の表情は硬かった。
私よりも前に赴任した者の方が事態を重く受け止めているのか、年配の方であるほどその表情は硬くなっている。
硬くなった表情を確認した学園長は、それから謝罪を行い、説明を始めた。
桜通りの吸血鬼事件には、色々と事情と裏があったということを。
我々魔法先生や一部の魔法生徒に説明されていた桜通りの吸血鬼事件というのは、あくまでネギ君を成長させるためにエヴァンジェリンによって戦いを経験させるためのものであり、そのための依頼料としてエヴァンジェリンには麻帆良でのある程度の自由度を提供していた。


つまり、吸血の容認である。


その時点では異論を唱える者が数多くいたが、学園長は最大勢力である穏健派の数を盾にして政策を押し通す。
少数の異論は大多数により押し潰されるものだ。
実際、異論を唱えるにしてもエヴァンジェリンだから、という理由で反対しており、解決策も十分ではなかった。
反対者の気持ちもわからないでもない。
なにしろ、エヴァンジェリンを出す理由がネギ君に戦いというものを経験させる、というものであるからだ。
私は何度も実戦に出ているが、ネギ君はそんなことはしたこともないだろう。
だからこそ、生死をかけた戦いというものを経験させる必要があった。
知識と才能を持ち合わせる将来有望な人物が、一発の弾丸で失われる事件は数多くあるからだ。
だから、絶対的安全の中で死を演出する必要があった。
そんな芸当なんて、熟練の腕の持ち主であろうとなかなかできるようなものではない。
だからこそエヴァンジェリンをネギ君にぶつけよう、という理由もあったそうだ。
そして、そのエヴァンジェリンがネギ君に対して戦いを行う、というのが学園長のシナリオであり、私たちもそれを知っていたが、その途中に問題が起こった。
書類には絡繰茶々丸襲撃事件と書かれており、それの詳細が載っている。
この事件の説明を迅速に行わなかった結果、過激派が行動を起こしてしまった。

それにより停電での暴走が起こった。

停電の時にミサカ君、桜咲君を襲撃した連中は既に強制送還されているということも書かれている。
書類の詳細を学園長が説明し終えると、その場には深い思考に陥っている時独特の空気が漂った。
張り詰めた緊張感とゆったりとした流れが共有している空間である。
それらの空気を最初に打ち破ったのは、過激派でも重要なポジションにいるとされる年配の男だった。
「この書類の内容は事実で間違いないのですか?」
学園長はそれに応じ、頷いた。
男は眉間のしわを寄せる。
「私はこの時期に起きた事件について、一方ミサカ君がネギ君を襲撃したと捉えています。開示される情報がなかったのでこちらで情報を集めさせましたが、どうしてそのような情報が出回ったのか、それについての調査は行ったのですか?」
「もちろんじゃが、その結果は不明の一言じゃ。誰かがあの場で公園に突き刺さった鉄骨を目撃した結果、どうしてネギ君とミサカ君が戦ったという人物特定ができたのか定かではない。明確な証拠として鉄骨が残っていて、それがミサカ君に結びつくのは百歩譲って納得したが、どうしてその相手がネギ君になるのかわからん。本人に確認したわけでもないじゃろうしのう」
「戦闘の最後のみを目撃して早とちりしたのでは?」
「それもあり得る。そうだとしたら、噂を広めたどこかの誰かは今頃頭を抱えておるかもしれん。迂闊な発言がこれほど大きな問題に発展したわけじゃからな」
噂を広めた相手について特定するのは難しい。
本格的にそれを探るには一人一人魔法で調べ上げることができるが、それだけ時間も手間もかかる。
結果が出るのがいつになるかわからない以上、説明を求めていた過激派からしてもここで文句は言えなかった。
その中で、また壮年の男が手を挙げる。
彼は過激派ではなく、穏健派の人物だ。
「そのネギ君についてですが、この書類を見る限り、最後の戦いで鬼が乱入したことにより学園長のシナリオは失敗したとされています。しかし、学園長の目的はネギ君の成長だったはずです。エヴァンジェリンと戦う事ができた以上、成長はできたのではないのですか?」
「そういう意味ではないんじゃ。ワシの目的とシナリオは別物じゃよ。確かに目的はネギ君の成長であり、鬼との戦いで戦場というものを経験したネギ君はシナリオを経験したネギ君よりも更に成長した結果になっておるし、目的以上のものを果たせたわけじゃ。もっとも、その道筋がワシの描いたそれを進んでくれなかっただけ。シナリオの失敗とはそういう意味じゃよ」
その言葉に対して、若い魔法先生がぽつりと言った。
「ということは、結果的に良かったのではないのですか? ネギ君も成長しましたし」
「ワシの失態と、ネギ君の麻帆良に対する疑念という代償は払ったことになるがの。その成長の過程でアクセラレータやミサカ君に迷惑をかけてしまった以上、良かったで済ませられる問題ではないわい」
学園長は一息の間をおいて、続ける。
「先ほど話に出た、ミサカ君がネギ君を襲撃したという噂は事実ではない。こちらが真実じゃ。証拠としてネギ君の直筆サインもある。まだ勘違いをしておる者はこの書類を使って認識を改めて欲しい」


一同は何も言わずに頷いた。


その後、その問題について過激派が早とちりしたために起こった事件があった、しかしそれは学園長が情報を開示しなかったからだ、いやいや開示すればシナリオが露呈する、というやりとりがあり、実際に会議が終わったのは3時間後だった。
あまりデスクワークが得意ではない私にとって、あの椅子に座っている会議は気だるいものに違いはなかった。
今、私は廊下の途中で出会った瀬流彦君をひきつれて、広場のベンチに座っていた。
首を振ると、関節が鳴る乾いた音がした。
隣にいる瀬流彦君が大げさに驚く。
「凄い音ですね。ムチウチになりますよ」
「なったらなったで治療すればいいさ」
投げやりに言って、瀬流彦君の方を見る。
瀬流彦君はあの場にはおらず、会議が終わった後、廊下をたまたま通りがかった所を呼びとめただけだ。
彼は立場もはっきりしていないし、若いからあの場には呼ばれなかったのである。
流石に会議に魔法関係者全員を呼ぶわけにはいかないからな。
というわけで、私は瀬流彦君に書類を渡し、諸々の事情について説明することにした。
もちろん、周りには認識阻害の魔法をかけて。
瀬流彦君は書類を見た後、大きくため息をついた。
「最近起こっていたゴタゴタはこの事だったんですね。停電というイベントだけにしては葛葉先生がピリピリしてたり、やけに神多羅木先生がいなかったと思ってましたよ」
「あの二人についてはほとんど寝てないだろうからな。ただでさえ時間がとられることが嫌な葛葉先生がピリピリするのは当然だろう」
「そういえば彼氏がいるんでしたっけ。なんか神多羅木先生がフォローしてたような覚えがあります」
「この学生ばかりの麻帆良で出会いを探すのは大変だろうなあ……彼女ほど美人であれば貰い手はたくさんいると思うんだが、どうだろう?」
「実際いると思うんですけどねー。周りに硬派と思われてますから、話しかけづらいんじゃないんですか?」
「確かにそれはある。だが、それがいいという人は意外に多いと思うんだよ、君」
「あれ、ガンドルフィーニ先生は硬派がお好きですか?」
「いや、私はただ一般論を言っているだけであってだね。というか私には妻も子供もいるんだが」
「結婚する相手と好みは別だと聞きましたけど、その辺りどうなんですか? 経験者として、未経験者に実際の体験から基づくアドバイスを! 具体的に詳しく!」
「何故そうも食いついてくるんだ君は? 君はいつもそう言う類の話になると白熱するタイプだな。30代程度ならわからないでもないが、君はまだ20代だろう?」
「ガンドルフィーニ先生の北○談議に比べればマシです! それに、若いと言ってももう10年すれば完全にオッサンですよ!? オッサンになってから『さーて結婚でもするかー』じゃあ遅いんですよ!! 特に僕たちみたいな職業じゃ!!」
「魔法使いの慣習はともかく、このシステムが一般人に対しての出会いに向いていないという事は全面的に同意するが、じゃあ君は君でそれについての努力とかしてはどうだ? 葛葉先生はそちらに時間を割くためにデスクワークが恐ろしく早くなったとか。執念の力というものは人間の限界なんて軽く超えるものだぞ?」
「それは勝者だからこそ言える言葉でしょう! ううっ、ガンドルフィーニ先生や弐集院先生はどーせ勝ち組なんだ! 美人な嫁さんとかわいい子供を持って安定した収入があるなんて、正直言うと超羨ましいんですけどッッッ!!」
「アドバイスを欲しいと言ったのは君じゃないか!? というよりこんな所で魂の叫びを漏らすな!!」
それから問答が続き、疲れた所で僕と瀬流彦君は休戦した。

というより生徒たちが見ている中で非常に醜態をさらした気がする。

認識阻害の術式を展開しているとは言っても、叫びあっていることに変わりはないわけだし。
アニメ話で盛り上がっている時は気にしなくていいんだが、こういうときはやけに気になる。
今は授業時間中で、広場にいる人は少数だが、それでも人の目があることに変わりはないからだ。
もう遅いかもしれないが、とりあえずこの場から離れて歩きながらさっきの話の続きをすることにした。
まったく、何故ああいう話に発展したのだろうか……ちょっと今でも思い出せない。
それから適当に歩いてさっきの書類の事について話していたのだが、またもや話はそれて、これから女子中等部が修学旅行で京都に行くことについての話になる。
これについては以前からネギ君に親書を届けさせるという話が出ていたので驚かないが、瀬流彦君はそれについていくことになったらしい。
もともと女子中等部に勤務している教師だし、彼女らに同行することについてはまったく問題はない。
ネギ君をサポートするというのが瀬流彦君の役割らしい。
ネギ君の考えが足りない所を影ながらフォローし、ネギ君が親書を届けに行っている間は他の生徒の安全を守るつもりのようだ。
正直、戦闘に特化していない彼の実力では不安なのだが、あまり強い者を送り込んでも向こうの反発が強いだろう。
そう思っていたのだが、ここで瀬流彦君はとんでもない発言をした。
「それで、昨日言われたんですけど……どうもアクセラレータが修学旅行に同行するそうです」
「ブッ!?」
思わず噴き出した。
口を袖で拭って、私は信じられないことをいった瀬流彦君に問いかける。
「アクセラレータが修学旅行に!? 彼がどうして京都に行くんだ!?」
「『保険』らしいです。何か問題が起こった時、僕じゃ対応しきれない時のためですって。それじゃあ僕だけじゃなくてアクセラレータだけを選んで欲しいですよ」
「それはわかるが……だからと言って、アクセラレータは高畑先生以上の実力がある存在だぞ? 向こうが了承するのか?」
「なんか、魔法先生じゃないからという理由で送り込むそうです。葛葉先生から聞いた所、向こうも過激派と穏健派で別れているそうですし、向こうの長が穏健派だそうですから了承はとっていると思いますが……」
「君は若いから聞きづらいのもわかるが、その辺りをしっかりと聞いておいた方が良い。学園長は深く突っ込まないと色々と情報を言ってくれないからな。それに、その後でアクセラレータと話し合った方が良い。そうしないときっと面倒事になる。間違いなく」
「はい、わかりました。でも、アクセラレータと話し合いか……気が重くなりますね」
「最初は彼の物言いに反感を覚えるかもしれないが、まあ、慣れたらそんなものだよ。慣れるまでが勝負だ」
「……アドバイス、ありがとうございます」
なんだか瀬流彦君が哀れに思えてきた。
アクセラレータはよっぽどでない限り人を露骨に嫌ったりすることはない、と私は考えている。
だから瀬流彦君が一方的ないじめを受けることはないと思うが、問題はアクセラレータの言動と行動である。
私も彼の言動に慣れてからは、アクセラレータとはそういうもの、として受け止めることができたが、瀬流彦君は真面目だから割り切るには時間がかかるだろう。
彼もアクセラレータと話したことはあるらしいが、私ほど親密ではないらしいからな。
無論、そんなことでアクセラレータ自身がストレスを感じることはないだろうから、瀬流彦君がストレスをため込むことになる。
波長が合えば良いのだが。
彼の冥福を祈りながら、私はこれから待っている書類仕事をやることにする。
少し話しすぎたから、手際よくやらなければならない。
私には愛する妻と娘がいるからな。
そういえばその娘だが、このごろ早めの反抗期が襲いかかってきたからどうすれば良いと明石先生に相談した所、
「うーん、私の娘はもうそろそろ親離れして欲しいくらいですから、構い方といわれてもちょっとわかりませんね」


相談した相手が間違いだった。


なんだか困ったような顔をしていたが、娘に嫌われるより何倍もマシだと言う事を明石先生はわかっているのだろうか。
明石先生の娘は中学生だから、思春期のど真ん中だろうに。
心の中で10回は悪態をつきながら、私は弐集院先生の所に向かった。
弐集院先生は、どうも娘とのコミュニケーションは魔法を教えることでとっているようだ。
これだから魔法関係者同士の夫婦は……いや、それについては別にいいんだが。
しかし、弐集院先生との会話でわかった事は、娘との間に共通点がなければならないということだ。
それを持つために色々と試行錯誤したのだが、どうやら私からアプローチをかけるのではダメらしい。
そっちでダメなら、娘の好きなことを一緒にやったらどうだ、とのこと。
妻に娘の好きなことを聞いたのだが、どうもボードゲーム系が好きらしい。
そういえば、居間には片付けられてないオセロとかあったことを思い出す。
ふむ、なら今度はそっちで遊んでみることにするか、と思ってから既に一週間ほどが経過しつつある。

しょうがないだろう、忙しいんだから。

だが、今日はその書類仕事を終わらせればなんとか時間をとることができそうなんだ。
事務椅子に座りながら、私は心の中でぼやいた。
瀬流彦君、結婚はいいが、娘に好かれると言うのも大変なんだよ。
さめざめと涙を流しそうになりながら、私は書類を作成するためにパソコンを立ち上げた。






SIDE 神楽坂アスナ

昼休みが過ぎて、午後の授業も終了し、私は廊下を歩いていた。
思う事は、今日の朝の事。
このかが計画した『朝にせっちゃんを迎えに行こう大作戦』は成功に終わった……のかなぁ。
私は桜咲さんとこのかの顔を思い浮かべながら嘆息する。
今まで話しかけられなかったこのかが勇気を出して話しかけていたのは良いんだけど、肝心の桜咲さんがずっとオロオロしてたのはどうなのかと思う。
流石に校舎に入る頃には落ちついて、普段みたいな寡黙な感じに戻ってたけど……まあ、ああいう一面があるってことがわかっただけでも良いのかな。
この作戦は桜咲さんがこのかの事を嫌っているわけじゃないということを確認するためのものだったんだけど、さっきのやりとりだけだと、実際の所よくわからない。
本当に嫌いな人だったら嫌悪感とか、近づくなオーラとかを発揮すると思うんだけど、さっきの桜咲さんはそんなことはなかった。
あれは嫌いな相手に対する態度じゃない。
桜咲さんは無難な答えを返しながらも、きちんとこのかの話は聞いていた。

嫌っているわけじゃないと思う。

昼休みの時間に桜咲さんが教室の外に出て行ってからこのかにその事を言ったら、このかはホッとしたような顔をしていた。
もちろん、学校に入ってから急に雰囲気が変わったのは気になるけど……もしかしたら、学校と私生活で顔を使い分ける人なのかもしれない。
そんな人って、面倒くさいんだよなぁ、と私は他人事のように思ってしまう。
腹の中で何を考えているかわからない人ほどやりづらいことはない。
いいんちょ辺りだったら読み放題なんだけどな。
そんなことを思いながら、私は進路指導室の扉を開く。
そこには、見知った顔が四つほどあった。
「アスナさん、遅いですよ」
「ごめんごめん」
ネギがぶーぶー文句言ってくる。
遅れたのは考え事をしていたのと、このかと話していたからだ。
だいたい明確な集合時間なんて教えられていなかったんだから、遅れるも何もないと思ったんだけど、ここで反論しても面倒になるだけだから素直に謝っておいた。
席に座って、自分がどこに座っているか確認する。
一番右がミサカさんで、その次に龍宮さん、桜咲さんと続き、その隣が私だ。
ネギはその向かいの席に座っていて、龍宮さんの前にいた。
隣にいる桜咲さんは相変わらず真剣……というか、硬い顔をしている。
ほんの少しだけその横顔を盗み見てから、私はネギに質問した。
「それで、ネギ。今日はなんでここに集めたの? ミサカさんもいるし、成績の話じゃなさそうだけど」
「もちろん、成績の話じゃありません。修学旅行についての話をしようと思っていた所です」


修学旅行。


この中学三年間での一番の思い出になるだろう、一大行事。
その行き先は京都だ、ということを前に聞いていたけど、それに何か問題でもあったんだろうか。
疑問に思って首をかしげるが、ここはネギの話を聞こうと思う。
黙って先を促すことにした。
ネギもそれがわかったのか、咳払いする。
「では、全員そろった事ですので説明を始めます。今回ここに集まってもらったのは、ちょっとお願いがあるからです」
「お願い、ですか」
「はい」
桜咲さんの呟きに、ネギは頷く。
私は改めて桜咲さんの横顔を見た。
さっきよりも真剣な表情で、むしろ目つきを鋭くしたように見える。
何か、桜咲さんはネギが話すことが分かっているのだろうか。
「この修学旅行で、おそらくですが魔法関係者との戦いが起こる可能性があります。皆さんには襲撃してくる魔法関係者を撃退して欲しいんです」
「ちょ、ちょっと、ネギ!?」
ミサカさんはともかく、桜咲さんや龍宮さんに魔法関係の話は―――。
そう思った時、龍宮さんが軽く手を振った。
「私たちも関係者だよ。ネギ先生が知っているという事は、学園長経由かな?」
「はい、その通りです。魔法関係者が襲ってくるかもしれないっていうのも学園長から聞きました」
すみません、とネギはこっちに謝ってくる。
「先にそれを説明して欲しかったわね。焦っちゃったじゃない」
ぶーぶー言っていても始まらないため、私はため息をついた後、先を促すことにした。
「で、修学旅行で魔法関係者が襲ってくるっていうけど……どうしてそんなことがわかったの?」
その質問に、ネギはすらすらと答えていった。

まず、ネギは学園長が関東魔法協会という組織の会長をやっていることを話した。

今更学園長が魔法使いだったなんてことには驚かないけど、そういう大きな組織がいると言う事は初めて知ったので、そっちに驚いてしまった。
「それで、京都の方には関西呪術協会という、関東魔法協会と仲が悪い組織があるんです。でも、学園長はもう仲直りがしたいらしくて、そのための親書を届けてくれと頼まれたわけです」
そして、その親書を狙って関西……なんだっけ、なんとか協会とかいう組織が攻撃を仕掛けてくるらしい。
向こうの組織の長もこっちの組織と仲良くしたいみたいだけど、仲良くしたくない向こうの組織の連中がそれを阻止しようと攻撃してくる、らしい。
私は咄嗟に思いついた疑問を尋ねた。
「ねえ、それって向こうの組織の問題じゃないの? どうして私たちが対応しなきゃなんないのよ」
普通、向こうの上司が仲良くしたいと言ったら部下も従うものじゃないんだろうか。
心の中でどう思っていても上司の決定、部下には決定権なんてないと思う。
会社なんて、そんなもんだと思うけど。
ネギは困った顔をして、私の疑問に答えた。
「そう言われればそうなんですが……勝手に動いている人たちが多すぎるから抑えきれないとか、そういう理由なんじゃないんでしょうか」
「ないんでしょうか、って疑問形で返されても困るんだけど」
「向こうの土地に上がり込みに行くんだから、多少のトラブルはあってもおかしくないと思うけどね」
龍宮さんが突然そんな事を言った。
向こうの組織からすれば、修学旅行に行く私たちが麻帆良側の組織に所属していると見なされているわけで……。
そこまで思考が進んでから、また首をかしげることがあった。

去年も女子中等部の修学旅行先には京都があったはず。

いいんちょも言ってたけど、前年度の行き先とほぼ同じらしいし。
となると、去年もそんないざこざがあったんだろうか。
そこまで思って、私は親書というものの存在に思い至る。
多分、ただの中学生が京都に行くことには何の問題もなくて、ただ組織と組織が仲良くしようとするのを邪魔したいだけなんだ、という考えで納得した。
色々考えすぎて頭がごちゃごちゃになってたみたいだ。
もともと考えることは私には向いてない。
思えばネギの説明を途中で遮ってしまったことに気づいて、私は謝ってネギに先を促すことにした。
「ごめん、ネギ。続けて。頭がこんがらがってたみたい」
「それじゃあ続けますけど……」
とりあえず私は聞き手に徹することにした。
まあ、よくわかんない所があったら突っ込むけど。
そう思っていたのだが、ネギが話し出す前にミサカさんが手を挙げた。
「ちょっと待ってください、とミサカはまだ話がありますと挙手します」
申し訳なさそうなのは、言うタイミングを逃したからだろうか。
結局中途半端な所になってたけど、とりあえず言いたい事があったんだろう。
なんだかグダグダな感じだなあ、と思いながら、ネギがミサカさんの方を向くのを見ていた。
「今までが大まかな事情の説明で、これから細かな事情の説明になるとミサカは認識していますが、その前に『お願い』に関する了承をとった方が良いと思います、とミサカは長々と説明します」

それを聞いて、私は『あっ』と思った。

そういえば淡々と話が進んでいて気づかなかったが、この中にいる誰もが今の話に協力するとは一言も言っていない。
本来ならそうやって話が進んでいくはずだったんだろうけど、それを私が遮ってしまっていた。
ちょっと申し訳なく思いながらネギの方を見ると、ネギも私と同じような表情をしていた。
「す、すみません。ここまで話してしまって何ですけど……皆さん、協力してくれますか?」
「私は報酬さえあれば協力するよ。タダ働きだけは御免だからね」
龍宮さんは淡々と言った。
その物言いは、なんとなくこういう荒事に慣れている感じだったけど、その辺りは詮索しない。
龍宮さんの雰囲気だと、なるほどと納得させるようなものがあったから。
「お金、ですか。あまり高い金額だとちょっと困ります」
「別にネギ先生が払わなくても、学園長にお願いして必要経費だとかで落とさせればいいだろう? まあ、私もそう高い金額を請求するわけじゃないけどね」
正直なネギの態度に、龍宮さんは苦笑していた。
「私は依頼内容次第だが、とりあえず話は聞くよ。それから依頼を受けても構わないかな?」
「はい、わかりました。ミサカさんは……?」
「ミサカは特に断る理由はありません、とミサカは龍宮さんと同じ意見だと主張します」
ミサカさんはいつも通り、淡々とした口調で言った。
ネギはやっぱりミサカさんに対して苦手意識というものがあるのか、なんだか視線を合わせづらそうだった。
ミサカさんはもう気にしてないって言ってるのに、こっちがウジウジ悩んでたら向こうが気にするじゃないの。
後でとりあえずそのことについて言っておこう。
最後に、ネギは桜咲さんの方に向いた。
「桜咲さんは、協力してくれますか?」
「……協力することはできますが、私にも事情があります。そちらの事情の方を最優先して良いのなら、協力はしましょう」
ネギはそれを聞いて、桜咲さんの事情って奴に覚えがあったのか、真剣な顔で頷いた。
桜咲さんはネギの表情を見て、怪訝に思ったんだろう、眉根を寄せる。
「私の事情について知っているのですか?」
「一応、大まかな所は学園長から聞きました。ええと、あまり話してはいけない事でしたっけ?」
「いえ、そうではありませんが……」
そう呟いて、桜咲さんの瞳が揺らぐ。
それが動きそうになって、すぐに元の位置に戻った。
桜咲さんが見ようと思ったのは位置的にミサカさんだ。
何か、ミサカさんに関係がある話なんだろうか。
対するミサカさんはそのことに気づいていないのか、私と目線が合ったせいで不思議そうに眼を瞬かせていた。
その間に、桜咲さんはネギに答える。
「個人的に話してほしくないことではあります」
わかりました、とネギは言った。
正直言って、私たちの前でそんな事情がどうのとか言ってる時点で興味がむくむく湧いてくる。
魔法関係で、しかも修学旅行で何か事情がある。
桜咲さんは魔法関係者。


それも、このかと同じ京都出身。


なんとなーくだけど、今の話題とは全く関係ない話題の全貌が掴めてきた気がする。
十中八九、桜咲さんは京都にある魔法組織に関係していると私は思う。
これも直感だけど、それがこのかとの関係に何か関係してるんじゃないだろうか。
このかと話しているのもおっかなびっくりみたいな感じだったし、嫌ではなさそうだったから、きっと桜咲さんもこのかと仲良くしたいはず。
その事情ってやつがカギなんだろう、と私は思った。
……それにしても、なんだか探偵みたいなことしてるなあ、私。
探偵とか、絶対私に似合わないのに。
「アスナさんも、協力してくれますか?」
「もちろんよ。魔法使いが襲ってくるんなら、パートナーも必要なんでしょ?」
そう言って私が笑いかけると、ネギも嬉しそうに笑っていた。
仮契約についてはあの時限りとか思ってたけど、実際、こういう危なっかしい奴はほっとけないのよね。
それに、一応同居人だし、何かあった時に私が何もしてないなんて、なんか気まずいし。
今更無関係だなんて言ってらんないしね。
そう思っていた私だったが、横から視線を感じてそっちの方を向く。
そこには、驚いた顔をした桜咲さんがいた。
「どうしたの、桜咲さん?」
「あ、いえ……その」
桜咲さんはなんとも言い難い顔で視線をさまよわせると、若干顔を赤くしていく。
その意味がわからずに首をかしげていると、桜咲さんは神妙な顔つきで尋ねてきた。

「ね、ネギ先生と神楽坂さんは、ぱ、仮契約をしているんですか?」

やけに噛み噛みだった。
それは気にしないことにして、なんだかそう言われると恥ずかしくなってくる。
咄嗟に何か言わなければ、と思うくらいには。
「はい、僕とアスナさんは仮契約をしてますよ。ね、アスナさん」
「…………あー、そうよ」
驚くほど平然としているネギを見て、落ちついてしまった。
っていうか、なんでそんなに嬉しそうなのよ、コイツ。
なんだかその幸せそうな表情を見ていると、どーでもよくなってくる。
たかが子供とのキスに何を恥ずかしがってるんだか。
実際、ネギは気にしてないじゃない。
恥ずかしがっていた自分がやけに幼稚に感じられてバカらしくなっていると、ここでまた桜咲さんが発言した。
「じゃあ、キスした仲ってことなんですか? 教師と生徒でそんな……」


吹いた。


「ぶっはぁ!? ちょ、桜咲さん!? あのね、キスしたって言っても仮契約よ仮契約! それに、こんなガキとのキスなんて回数に入んないわよ! そこんとこ勘違いしないでくれる!?」
「は、はあ、そういうものなんですか?」
「そういうもんよ!」
視界の端に入ったネギはなんだかあわあわしていたが、知らない。
無視して、私はどっかりと頬杖をついた。
なんで仮契約やらキスやら教師と生徒がどうのなんていう話になったんだろうか。
まさか桜咲さんがこんな所に食いついてくるとは思わなかったから、考えてみると少し意外ではあった。
そういうのに興味があるんだろうか。
他の二人に顔を向けると、一人は顔をそらしていて一人は笑っている。
まったく、他人事だと思って。
「ネギ、さっさと進行しなさいよ」
今の空気を払拭するために、とりあえずパニクっているネギに言って、強引に司会進行を再開させる。
ネギがこんなに慌てると言う事はキス云々の話でようやくその事実に気づいたってところか。
それだけ鈍いってことは、まだまだガキってことね。
なんだか安心してしまった自分がいることに気づかずに、私はそのままネギの言葉を聞いていた。


ネギは仕切り直して、今から『お願い』についての詳しい説明を始める。


何度も出てきてようやく覚えたが、関西呪術協会という組織には、きっとこちらのスケジュールは全てバレていると考えた方が良いということ。
つまり、危ない時は自由活動時間と班行動の時間。
関西呪術協会の人間にとっては京都なんて自分たちの庭だ、色々な手を使って親書を強奪しようと企むはず。
「僕は自由行動時間……三日目に関西呪術協会に向かって、親書を届けようと考えています。他の先生方や生徒たちの目に触れない時間っていうのは、ここくらいしかないでしょうし」
「でも、それは向こうもわかってるでしょ? この時に攻撃を仕掛けてくるんじゃないの?」
「仕掛けてくるとしたら、ですね。間違いなく仕掛けてくると思いますけど」
もちろん、それ以前に攻撃を仕掛けてくる可能性だってある。
まあ、考えてもキリがない。
ネギ曰く、場を想定してその時にどう対応していくか考えることで冷静に対応できるらしいけど、時々考えすぎじゃないかな、と思う。
不安になるのはわかるけど。
ネギは更にこの時間帯にはこのように行動する、という計画をそれぞれ明かしていく。
もちろんそれらにはその時点で失敗したことも想定されていて、なんだか神経質すぎるんじゃないか、とも思う。
私は大まかな所だけを覚えることにして、細かい所は聞き流した。
というより、覚えきれなかった。

ネギの奴、細かい所を細かく話しすぎなのよ。

「―――これで僕の話は終わりです。今のは僕とアスナさんだけで行動するってことを前提にしているので、また予定が変わってくることもあると思います。僕も皆さんが何をできるのかわからなかったんで……」
さりげなく私が協力することは前提だった、というわけか。
別にそれが気に食わないわけじゃないけど、この場以外でちょっと相談してくれれば良かったのに。
そんな私の気持ちなんてネギはわかっちゃいないだろうけど、まあ良しとしておこう。
少なくとも、一人で無茶するなんてことはしない、ってことだろうし。
そう思っていると、説明を聞いて依頼を請け負ったらしい龍宮さんが自分の力について説明を始めていた。
「私は銃による狙撃と、広範囲の索敵が得意だな。私に苦手な距離はないが、役目としてはそういったものが適任だ」
所謂、スナイパーって奴ね。
っていうか、銃?
魔法の世界って杖とか、そういうのが武器じゃないのかと思ってたけど……銃もアリなの?

やけに近代化してるわねー、魔法。

そして、それに続いてミサカさんも説明を始めた。
どうも、依頼を受けるかどうかわからないことを言っていたみたいだけど、結局二人とも受けるつもりのようだ。
「ミサカは近距離から中距離の戦闘、索敵ができます、とミサカは自分の戦闘能力を主張します」
そして、ミサカさんには電撃がある。
本人曰く超能力らしいけど、その電撃を使っての戦闘が得意のようだった。
かなりなんでもできるとのことで、殴り合いもできるし電撃を撃つ砲台にもなれるらしい。
味方や敵の戦い方に応じて戦法を変えることができるとも言っていた。
「私は剣術による近距離戦闘を主としています。中距離や遠距離の攻撃は得意ではありません」
桜咲さんは私と同じで、前衛向きの能力を持っているらしい。
まあ、剣道部だしね、そんな予感はしてたけど。
そして私の能力……と言っても、この3人ほどの実力はないだろうから、ハリセンでブッ叩けるということを説明しておいた。
怪訝な表情をされたが、とにかくアーティファクトがハリセンなんだからしょーがないじゃない! と言いたい。
実際にアーティファクトを出してみると、龍宮さんに笑われた。
爆笑されたわけじゃないが、こっちから顔をそむけて肩を震わせてたし、絶対に笑ってたんだと思う。
そして、私たちが得意なことを言った内容をメモしていたネギは、ふむふむと何度か頷いていた。
「ネギ、何してんの?」
「3人の得意なことはわかりましたから、その役目を分担していたんです」
とは言っても、実際にどう行動を取るのかは龍宮さんたちに任せるとのこと。
大まかに、敵らしき人物を確認したら報告、そしてできれば援護に向かうということを決めたくらいだ。
それに、ネギがいない間に生徒を守らなければならない人物が必要なので、とりあえず龍宮さんがその役目になったそうだ。
索敵が得意な龍宮さんなら、敵の発見、報告は簡単だろうと思ったらしい。
実際、龍宮さんもそれで良かったようだった。
ミサカさんは私と同じく、ネギの護衛という感じのポジションで収まりそうだった。
桜咲さんについては、その事情とやらのせいで自由時間などについては同行できそうにない、とのことだった。
ネギとしても、どうやらそちらの方が都合が良かったらしい、そうしてくれ、と言っていた。
なんだかその事情について説明はされないので、桜咲さんからすればあまり話してほしくない内容っぽいけど……それが少し気になった。






校舎を出て空を見上げたら、もう空は赤くなり始めていた。
龍宮さん達とはもう既に別れていて、帰り道をネギと一緒に歩いている。
結局、さっきの集まりでは実際に関西呪術協会の人たちがどういう行動をとってくるかわからない以上、警戒を怠らないように、とするしかなかったらしい。
素直に実力行使で出て来てくれるといいけど、とネギは言っていた。
私もゴチャゴチャ考えるのは好きじゃないので、どうせなら素直にぶつかりたいと思う。

絡め手とか、ものすごく面倒くさそうだ。

自分で決めた事だが、修学旅行が大変そうになるのだろうということにため息をついていると、隣でネギがあくびをしていた。
それを見て、ふと思った事を尋ねる。
「ねえ、あんたはこの頃ちゃんと寝てるの?」
「あ、はい。ちゃんと寝てますよ。ちょっと遅くなっちゃいますけど……ふぎゅっ」
「あんたがちゃんと寝てるなんていう時はちゃんと寝てないってことなの。今日は9時には寝なさいよね」
どうせ、夜遅く……それこそ12時とか、1時とかに寝てるんじゃないんだろうか。
私からすれば考えられない時間帯だけど、夜遅くに起きた時とかにカリカリと鉛筆を動かす音が聞こえてきたりするから、多分それくらいじゃないのかな、と思う。
外人だから日本人に比べて背は伸びると思うけど、それでも小さい内は寝ないと背は伸びないだろう。

将来後悔しても遅いからね。

そう思いながら言ってやるのだが、ネギはどうも『まだやることが……』とかブツブツ言ってるので、今日は無理矢理にでも寝かせようと思う。
それからしばらく会話は続き、次第に話の内容はさっきの話し合いに移っていく。
というよりも、私が話題を変えたんだけどね。
聞きたい事があったから。
「ねえ、そういえば桜咲さんに事情があるって言ってたけど、それってなんなの? なんか、やけにわかったような顔してたじゃない」
「桜咲さんの事情、ですか?」
それを聞いたネギは難しそうに眉を寄せる。
「うーん、言ってもいいのかな? でも、桜咲さんは個人的に話してほしくないこと、って言ってたし……」
個人のプライバシーにも関わるんじゃないんだろうか、とかネギは言ってるけど、そんな深刻なことなんだろうか。
もしかしたら桜咲さんって逆スパイ的なこともやってるとか。
学園長にも、向こうの長にもスパイを頼まれてて、ちょっと複雑な関係とか。
なんか物凄くドラマっぽいけど、実際魔法なんてファンタジーがあるから、別に私は疑問に思わなかった。
こんな事実があったとしても、ちょっと驚くくらいだろうし。
「うーん……まあ、いっか。アスナさんだし、無関係ってわけじゃないし」
なんか今、聞き捨てならないことを聞いた気がする。
私も無関係じゃないってどういうことだろうか。
少し身構えていたが、身構えていて正解だった事実を、ネギの口から聞いた。


「桜咲さんは、このかさんの護衛なんですよ」


いきなり突拍子もないことを言われて、私の頭は簡単に混乱した。
桜咲さんが誰かの護衛、と言われるとナチュラルに納得できるけど、なんでこのかの護衛なのか。
なんだか繋がりそうで繋がらないパズルを見ているようでイライラする。
ネギはそんな私の様子に気づかずに、続けた。
「このかさんは、学園長先生のお孫さんということは知ってますよね。それでいて、関西呪術協会の長の娘でもあるんですよ。まあ、順調に行けば関西呪術協会でも偉い地位につける人、ってことです」
「ちょ、ちょっと待って!? このかって魔法使いだったの!?」
「それなんですけど、魔法については知らされていないらしいんです。なんか、向こうの長の方針らしいですけど」
ちょっと納得いかないようにネギは呟いた。
「で、このかさんが麻帆良にいるのは、関西呪術協会の権力争いに巻き込まれないように避難していた、ってことらしいです。桜咲さんはこのかさんを狙ってくる人たちから守るボディーガードなんですよ。今回は京都に……関西呪術協会の本拠地に近付きますから、桜咲さんは集中してこのかさんを守ってほしいんです。僕もお手伝いをするつもりだったんですけど、桜咲さんの邪魔をするわけにはいかないし……」
「つまり、このかは関西呪術協会から狙われてる、って考えて良いわけね?」
「そうですけど―――って、どうしたんですか、アスナさん?」
「このバカネギ! そういうことは早く言いなさいよ! なんでそんな大事なことを黙ってたのよ!?」
「え、あの、これは明日辺りに桜咲さんから話す許可をもらってから言おうと思ってたんですけど」
「だーっ! なんでそんなのんびりしてんのよあんたは!? このかが狙われるのよ!? 桜咲さんとしっかり話して、このかが襲われないようにしなきゃダメでしょうが!!」
確かに修学旅行はまだ先だけど、それにしてもネギはのんびりし過ぎだった。
いくらあそこで桜咲さんが話したくないこと、と言っても、これは話すべきだった。
魔法を知らないクラスメイトを守る。

しかも、魔法バレせずに。

それがどれほど難しい事か、私にはわからない。
でも、とても難しいってことだけはわかる。
そんなの、桜咲さんだけに任せてはおけない。
確かに桜咲さんは小さい頃からのこのかとの友達で、私よりも先に友達だったかもしれないけど。



でも、このかは私の友達なんだ。



守りたいって想いは、桜咲さんに負けはしない。
明日、私は桜咲さんときちんとそのことについて話すことを決めた。
そして、もうひとつ。
どうしてあの場で桜咲さんはこのことを話すという事をためらったのか。
それが聞きたい。
ネギが親書を渡すという任務があるから、遠慮したのか。
それとも、自分がやらなければならないというプライドでもあるのか。
本当にこのかを大切に思っているのなら、これを機会に助けを求めるべきなんだ。
なのに、それをしなかった。
その理由を、聞きたい。
「―――ネギ、私たちも桜咲さんに協力するわよ。強引にでも」
「もともとそのつもりだったんですけど……いたっ!?」
「行動が遅いのよ! ったくもう……」
もしかしたら、だけど。
桜咲さんは、意図的にこのかと距離を取っているのかもしれない。
護衛だって言っているのに、一緒にいる所を見たことがないから。
もしかしたら魔法バレを気にしているのかもしれないけど、そんなものとこのかの安全が天秤にかかっているんなら、私は間違いなくこのかの安全を取る。
何か、理由があるに違いない。
直感でそう感じながら、私は大雑把に明日のスケジュールを立てた。
やることは一つ。
明日中に、桜咲さんに話を聞かなきゃ、ってことだけだ。
バカネギの頭をぐしゃぐしゃしながら、私は前を見つめる。
お腹がすいたな、と思うと同時、このかの料理が食べたい、と思った。







前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.039880037307739