<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[21322] 第41話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:da7c297e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/10 01:14
SIDE エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル

「始まったな」
時計塔から眺める景色の中に大規模な爆炎を見て、私はそう呟く。
あれはおそらく魔法の射手の一斉射撃。
炎属性だから、案外佐倉愛衣の撃ったものだったりしてな。
そう思いながら、私は隣にいる茶々丸を見やる。
思いだすのはぼーやとアクセラレータ、そして一方ミサカだ。
どうも日曜日からぼーやが色々と動いていたようだが……こちらとしてもぼーやとの接触を極力禁じられたため身動きが取れない状態になっている。
私の自由が縛られた結果として、3-A運動部の面々を操ると言った計画もなくなった。
麻帆良も色々と緊張状態らしいしな。
あのアクセラレータですら警戒しているんだ、私も余計な真似をしない方が良いと言うのはわかる。

処世術という奴だ。

そのおかげで、今日ぼーやを呼びだすこともやることができているわけだがな。
今夜、大浴場に呼び出すというのは既にやっているのだが、はてさて素直に来るかどうか。
「さて、私たちも向かうとするか」
浮遊して大浴場へ向かうと、その途中に茶々丸が私に話しかけてきた。
「マスター」
「ん? なんだ?」
「神楽坂さんにはお気をつけください。素人ですが、思わぬところでネギ先生のサポートに入る可能性があります」
既に神楽坂明日菜がぼーやと一緒に行動しており、契約執行も行っていたことからパートナーであることは知っている。
その報告を行った茶々丸が言うんだから、何らかの根拠があるのだろう。
というより、コイツは明確な根拠がなければこんな発言もしないんだがな。
「お前が最後のぼーやの魔法を食らいそうになったのも、確か神楽坂明日菜の攻撃のせいだったな。それでか?」
「はい。私も素人として舐めていましたが、そのおかげで手痛い被害を受けました」
私の眼は、咄嗟に茶々丸の左肩に向かう。
少し前までは壊れていたが、翌日にはすっかり修理されてしまっていた。
何やら超鈴音が言うには強化装備を施したようだが……また迷惑なトンデモ兵器を取り付けたんじゃないかと内心ではひやひやしている。
あの連中、技術力は確かなんだが時々おかしな方向に走ることがあるからな。

まあ、今はグチグチというのはやめにしよう。

大浴場の中にある簡易的な屋根に着地し、私は応じる。
「神楽坂明日菜がお前に不意打ちをしたのは、ぼーやがいたからだろう? 私がぼーやを倒すから、お前は神楽坂明日菜だけを相手にしていれば良い」
「しかし、警戒はしておいた方が良いと思われます」
「あー、わかった。そこまでいうなら一応警戒しておくよ」
しつこい茶々丸に了承の言葉を返し、私はちょっと前に神楽坂明日菜に蹴られた事を思い出す。
あの時の痛み、少し晴らそうと思っていたのだが……茶々丸の様子では無理か。
と思い、茶々丸を見ると、なんだか少し雰囲気が違っているように感じた。
いつもは機械的なのだが、少し人間的な雰囲気を感じる。
無機物にあるまじきその雰囲気。
生々しく感じるそれは、なんだ?
そこまで思考して、私はとある可能性に辿りついた。

こいつは魔法と科学が融合して生み出された、ロボットでも魔法生物でもない何かだ。

ガイノイド、とかいうのに分類されるらしいが、そんなもんは知らん。
そういえば茶々丸は一方ミサカと出会って以降、感情の発露が顕著だったじゃないか。
そう思うと、答えは単純だった。
茶々丸は、おそらく内心でリベンジに燃えているのではないのだろうか。
流石に2年以上付き合ってきているのだ、何らかの感情を抱いていることが分かれば、その機敏を読み取るくらい容易いものだ。
神楽坂明日菜にぶつければ、やはり面白いことになりそうだな。
しょうがない、ならばぼーやは私が独占するとするか。
そう思いながらぼーやが来るのを待っていると、ようやく大浴場の外から気配がした。
やっと来たか、と思うと同時、私は仁王立ちでぼーやを待った。
ぼーやの向こうにナギを見ているのは、正直に言って自覚している。
だからこそ何か突拍子もないことを起こすんじゃないかと期待しているわけだ。
どうせジジイが私を踏み台にさせようとしているんだ、少しくらい楽しまないと損だろう。
口の端が上がるのを自覚しながら、私は大浴場に入ってきた人間に視線を向けた。


ネギ・スプリングフィールド。


所持品は、杖。
そして、懐にいくつか魔法具を隠し持っているようだ。
真祖の吸血鬼相手に、随分と貧相な武装だな。
しかし、そこでおかしいことが一つ。

何故一人なのか、ということだ。

普通なら神楽坂明日菜といったパートナーと一緒に行動するものだろうに。
それに、報告にあったオコジョの姿がないのも気になる。
何かを企んでいるのか?
ならば蹂躙という結果に終わらず、楽しめそうだ。
「よく来たな、ぼーや。もう少しで来なかったら貴様の住居に襲撃をかけていたところだったよ」
「エヴァンジェリンさん。あの、その姿は何なんですか? なんだかとてもギャップがあってやりづらいんですけど……」
「場の雰囲気を壊すな! クソッ……」
予想はしていたが、やはりこの大人の姿で登場するのはインパクトに欠けたか。
むしろ疑問を抱くとは、意外と胆の強い奴なのかもしれない。
私としてもこの姿はいつもと視線が違ってやりづらいこともあるので、とりあえず解除する。
所詮こけおどしのための魔法だ。
私はいつもの姿になり、ぼーやを睨む。
「15年の倦怠からようやく解放される時が来た、というわけだ。貴様の血、頂くぞ」
「僕もただで殺される気はありません。抵抗しますから!」
杖を構えるぼーやを見て、私はその様子を意外に思った。

前回に戦った時は情けなく泣いていたが……コイツにどんな心境の変化があったんだ?

ガキの成長が早いというのはどこでも同じだが、私の脅しにも怯まないとは、面白いな。
私は腕をゆっくりと上げる。
一人で来た事は称賛してやろう。
この私のビッグネームを知って尚、挑むのなら当然のことだ。
だが、無謀と勇気は違うと言う事を、身を持って知らせてやろう。
「氷の精霊11頭、集い来たりて敵を斬り裂け!!」
詠唱を始めると同時、茶々丸が合図なしで飛び出す。
魔法使いが詠唱を始めると、従者も行動を開始する。

当然だ。

茶々丸は突撃して拳を出すと見せかけて、反対側の拳からロケットパンチを発射した。
テレフォンパンチだと思って大ぶりの拳を避けようとしたら、いきなりフェイントだ。
ぼーやには難しいだろうと思ったが、案の定そのパンチをモロに食らって、


いきなり首が吹き飛んだ。


驚愕する茶々丸が見える。
軽い風を巻き起こして消えていくそれを見て、私は舌打ちする。
あれは風の精霊の分身か。
やけに精巧にできていたが、マジックアイテムでも使ったのだろうか。
もともと10体ほど召喚して従えることができるんだ、1対を本人に似せることくらいはできるか。
惚れ薬の事件などもあったし、奴は魔法学校から持ってきた薬品とかも保管してそうだしな。
マジックアイテムの線は濃い、か。
しかし、精巧とはいえ分身に気づかなかったとは、こちらも油断していたという事だな。

平和ボケも大概にしなければ。

そう思い、私は手を窓の方に向ける。
「魔法の射手・連弾、光の11矢!!」
ガラスを叩き割ってぼーやの魔法が私に殺到してくる。
話しかけてきたのは分身を通してぼーやが喋っていたのだろう。
まったく、小賢しい真似をする。
だが、面白くはあるな。

「魔法の射手・連弾、氷の11矢!!」

私の魔法の射手とぼーやのそれが激突して相殺する。
私が加減をしたのもあるが、どうやらぼーやも少しは強くなっている様子。
修行でもしていたのだろうか。
追撃に備えていると、ぼーやはそのまま外に向かって逃げ出した。
奇襲が失敗したからと思い、すぐにそれを否定する。
わざわざ風の分身なんぞを作って仕掛けてくるのだ、まだまだ罠があるに違いない。
「茶々丸、まだ罠がある可能性がある。注意してかかるぞ」
「了解しました」
さて、しかしこの距離なら居場所くらい把握しているぞ?
私の行動をどこまで予測して罠を仕掛けているのか、少し興味がある。
わざわざ引っ掛かるほど間抜けではない。
敢えて引っ掛かることで、それら罠を真正面から全部打ち破ってやる。
私は魔法の射手の詠唱をしながら飛び、屋外に出た。


同時に、外にいた風の精霊が襲ってきた。


やはりさきほどのは何らかの強化が施されていたのか、以前に見た不格好な分身だ。
「茶々丸」
「はい」
だが、あんな動きでは茶々丸の敵にはなりえない。
無論、私を捕えるなんぞ論外だ。
茶々丸が向かってくる二体の拳を受け流し、そのままカウンターで両方とも沈める。
私の方は別に障壁を展開するだけでどうにでもなる。
私の障壁を突き抜けずに停止する精霊を、上空からの蹴りで茶々丸が吹き飛ばした。
吹き飛び、空中分解するように精霊は消えていった。
「あまり面白くないアトラクションだな。麻帆良祭のジェットコースターの方がまだ歯ごたえがあったぞ」
「……乗ってたんですね、マスター。言ってくだされば同行しましたのに」
「お前を連れていけば録画されるだろうが! それに、乗ったのはお前が作られるずっと前だ」
私はぶつくさと呟きながら、さきほどの詠唱の続きを行う。


鬼ごっこ、と洒落込もうか。






SIDE 弐集院

作戦情報統合室。
要するに指令室ルームなんだが、明石教授がこの名称が良いと言ってきかなくて、こういう名称になった。
多数の電子精霊が配置され、麻帆良大結界の制御にも使われているコンピュータがある。
巨大なウィンドウが暗い部屋を照らしており、明らかにアニメの影響を受けていることがうかがえる。
僕としてもこの部屋の構成には大賛成ではあるんだけど。
僕の目の前では明石教授が慌ただしく動き回り、状況を確認しているのが見える。
というのも、戦況が良くないのを知って焦っているようだ。
「戦況は?」
「あまり良くはないそうです。南地区の方は前線が突破され、どうやら第2防衛線も突破されたようで……」
「くっ……まさか隠蔽の護符を使ってくるとは。気配を隠すだけのものだからと言って油断していたか」
明石教授が悔しそうに言うが、こちらとしてはそんなことよりも気になることがある。


こちらからわざわざ警告したのに、アクセラレータがまだ動いていないと言う事だ。


彼の事だ、裏で何かが動いていると言えば、ミサカ君に何か危害が及ぶ事だと察しがつくはず。
となると、意地でも何か動きまわるかと思えば、明石教授がつけた女性と喋っているだけで動こうとしていない。
監視カメラからの映像によると、今は脱力している状態のようだ。
あんな状態の彼は久しぶりに見るが……何か、とても疲れた事があったんだろうか。
人付き合いが色々と特殊な彼のことだし、初顔合わせの1対1に疲れたのかもしれない。
しかし、それにしてもこの時点で行動していないのは異常だ。
あれで意味は伝わったと思うんだが。
僕が疑問に思っていると、オペレーターの夏目君や他のオペレーターが戦況を報告してくる。
「龍宮さんは既に後方に回って援護を行い、桜咲さんや高音さんなど近接戦闘を得意とする魔法生徒は率先して敵部隊へ突進をかけています。しかし、集中し過ぎです。また奇襲をかけられた場合、対処できなくなる可能性が……」
「大井君と松平君は配置場所に戻るよう言ってくれ。彼らがいれば大丈夫だろう」
「了解です」
「西地区に鬼の軍団が出現しました! ガンドルフィーニ先生、対処をお願いします!」
「第2防衛ライン、完全に突破されました。後方部隊を動かしますか?」
「仕方がない……無理せずに戦うよう言ってくれ。場合によってはアクセラレータへの救援要請も考える」
情報が飛び交い、明石教授はそれらを耳にしつつ指示を出す。


戦況は刻々と変わりつつある。


どうも麻帆良側にとっては有利じゃないようだが、いつも麻帆良は最後で持ち直すタイプだ、大丈夫だ。
監視カメラの映像によると、どうやらアクセラレータ側も戦況の不利さを察したようだ。
南側を見て、険しい表情をしている。
僕もできれば助けに行きたい所なんだけど、生憎僕は戦闘用の魔法使いじゃないわけで、どうにもならないというわけだ。
僕じゃおそらく佐倉君にも勝てないからね。
「後方部隊、行動開始しました」
「西地区も行動開始、交戦に入ったようです」
「結界の復旧には?」
「約60分……いえ、50分ほどで終わると思います」
「なら戦闘は終わっている可能性が高い。いや、続いているのか。微妙な線だな」
明石教授は焦っているが、彼が間違った指示を出すとは思っていないため、僕は口出しをせずにいる。
さて、後方戦力を動かすという事は、問題のミサカ君を動かすという事だ。
ミサカ君の戦闘能力は、以前に見せたあの程度ではないはずだ。
おそらく裏で動いている者たちもそう考えているはず。
戦場を掻き回されたらたまったもんじゃない。
せめて、そういう連中が入らないようにサポートするのがこっちの仕事だ。
僕の周りに画面が出現し、電子精霊が出現する。
「『奴ら』の所在は掴めたかい?」
電子精霊は首を振って否定する。
これは監視カメラもない所にいるとしか考えられないな。
もう戦場に紛れ込んでいるのだろうか。
だとするとかなり危険だが……。
「(学園長に連絡するか?)」
学園長は南を見はっていると聞いた。
おそらく複数のゴーレムなどの遠隔操作や魔法で状況を確認しているんだろうが、電子的な制約のないそっちの方が戦場の把握はしやすいだろう。
問題をこれ以上ややこしくしないためにも、動く必要があるな。
僕はそう思い、携帯電話を取りだした。






SIDE 桜咲刹那

停電の防衛といえば、あまり良い思い出はない。
去年は大鬼に潰されかけたし、私の正体をアクセラレータさんに見せてしまった日でもある。
もちろん、あの時から自分を鍛え直したため、去年とは比べ物にならないほど私の実力は上がっている。
あの大鬼が来ようとも、不覚は取らないはず。
大ぶりになるのを抑えながら、そう思っていた時を思い起こす。

今現在、南地区はかなり攻め込まれている。

まさか隠蔽の護符で中央から堂々と前線を突破されるとは思わなかった。
私も慌てて引き返し、迎撃に当たっている。
敵の策略のせいで前線の者は引き返して、鬼の軍勢の背後から強襲する形になったのだが、どうやら鬼たちは前進することしか考えていないらしい、前方にいる味方を蹴散らして前に進み続ける。
前に回り込み、迎撃態勢を整えるまで時間がかかった。
その現状に舌打ちしながら、龍宮の弾丸を食らいつつも前進してくる鬼の軍勢に向けて夕凪を構える。
いつものように、夕凪に気を乗せる。
収束させていくそれは、やはり去年のそれとは段違いだと思う。


「斬空閃!!」


空を飛ぶ斬激が鬼達を襲う。
狙った鬼には外れたが、それた斬激が他の鬼に直撃した。
切り裂かれ、元いた世界に還っていく鬼達。
もちろん為すがままというわけではなく、向こうも投槍などといった方法での遠距離攻撃を開始した。
無論、銃弾すら見切る神鳴流剣術を扱う私に、そんな攻撃は効かない。
それらの攻撃を見切り、且つ斬空閃を放とうと気を収束させるが、そうはさせないと私の背後から鬼が迫って来る。
「ッ!!」
咄嗟に背後に振り向きざまに斬撃を放ち、収束させた気を霧散させた。
倒れこんでくる鬼の亡骸を蹴り飛ばし、チャンスだと思ったのか前方から鬼たちが跳びかかってくる。
再び気を漲らせ、両足をしっかりと大地に押し付ける。

引き絞る。

弓がしなるような音と共に筋肉が収縮し、そのエネルギーが気の爆発とともに解放される。
「百烈桜華斬!!」
爆風と共に見切れないほどの斬撃が鬼たちを襲い、雑魚はただそれだけで吹き飛び、斬られ、消えていく。
それを気にしている暇はない。
前方から襲いかかってきた烏族の剣を受け止めたからだ。
夕凪と相手の剣で押し合い、ギチギチと嫌な音が夕凪から聞こえてくる。
「流石に疲れたやろ、神鳴流剣士。これだけの物量や、それだけ奥義を連発してりゃあ限界も来るやろ」
「黙れ!」
無理矢理に剣を押し返し、弾き飛ばす。
踏み込んで夕凪を振るうが、それも受け止められる。
確かに奥義を連発して限界が近いのは事実だが、それでもまだ私の体は動く。
足を地面に叩きつけるようにして力を維持しながら、烏族の刀と鍔迫り合いで体力を消耗していく。
現状では消耗戦になる。
それは非常にまずい。
短期決戦で撃墜数を稼ぐのが私の役割だ。
そのまま叩き斬ってやろうと力を込める。
しかし、次の瞬間、乾いた小さな音がして、烏族の額に穴が開いた。


「あまり熱くなるなよ、刹那」


龍宮だった。
冷静な彼女の手には、いつも握っている長銃ではなく、二丁の拳銃が握られていた。
感謝すると同時に、疑問。
確か龍宮は後方で援護しているんじゃなかっただろうか。
そんな疑問に気づいたのか、龍宮はこちらにやって来つつ答える。
「戦況が悪くなってな。前線に出る。追加報酬は払われることだし、私もたまには前線に行かないとな」
その場でにやりと笑って見せる龍宮を見て、やはりいつも通りの彼女だと思う。
こんな状況でいつも通りにしていられる冷静さは見習わなければならないだろう。
深呼吸して、気を落ち着かせる。
カッとなっては剣が暴走する。
整わない剣は相手にすぐ読まれる。

冷静に、冷静に。

もう一度目を開いた時、私はさきほどとは違う瞳に戻っていた。
「助かる。龍宮はどちらをやるんだ?」
「そうだな……旗色の悪そうな所に突撃していくよ」
そう言って歩き出し、次の瞬間には跳躍して森の中に消えていった。
暫くして火薬と銃弾が炸裂する音が聞こえてきたから、たぶん適当に遭遇した所で戦っているのだろう。
私は私で戦わなければ。
敵がどこに固まっているかを察知し、そのまま敵めがけて突き進もうとした時、強烈な電撃が私の横で炸裂した。
通り過ぎる絶大な音と、熱。
思わず私の動きが止まった。
苦悶の声と共に、何か重いものが倒れる音。
地響きと共に消えていくそれは、電撃に打ち抜かれた鬼だった。


「この程度ですか、とミサカは拍子抜けします」


倒れ伏した鬼の背後にいたのはミサカさんだった。
頭には近代的な見た目をしているヘルメットを被っている。
なんだろう、超さんの発明だろうか。
いや、彼女が魔法関連の事を知っているはずがない、きっと何か別の品なのだろう。
彼女は本格的に戦闘状態なのか、常時帯電しているような状態だった。
それが威圧感を感じさせる。
本気、というわけではないだろうが、これが戦闘時のミサカさんということだろう。
ミサカさんはこちらに気づいたのか、帯電しながらこちらにやってくる。
私は咄嗟に思った疑問を尋ねることにした。
「ミサカさん、後方で守っていたのではなかったんですか?」
「中央が突破されたとの話でしたので出張って来ました、とミサカは報告します」
後方にいるミサカさんが出てきたという事は、更に後方の守りは薄くなったということだが……私はそれに危機感を覚える。

もしかして隠蔽鬼が中央のどさくさにまぎれて突破していたらと思うと、ゾッとする。

かと言って消極的に下がってばかりでは押し切られる可能性もある。
やはり、前方に出て敵を殲滅していくしかないのだろうか。
私は戦いの全貌を眺める指揮官ではないので何とも言えないが。
「この辺りもかなり乱戦になってきているようですが、現状では後方戦力を投入したことでこちら側の有利に傾いています、とミサカは追加報告をします」
「そう、ですか……隠蔽鬼はどうなっていますか?」
ミサカさんはヘルメットをコツコツと叩く。
「どうやら隠蔽されている鬼は気配を極力微弱に抑えるものらしく、熱源センサーなどには反応するようですので、ミサカの探知能力を使えば楽勝で割り出せる範囲です、とミサカは言います。索敵ができる人間が辺りに散らばっていて、隠蔽鬼に対してはきちんと対応しています、とミサカはそっちの事は気にするなと刹那さんの肩を叩きます」
それを聞いて少し安心した。
ミサカさんが何らかの探知能力を持っていたとは初耳だが、持っていればそれで安心できる。
しかし、そうなると私は私の役割を果たすべきだ。
となると、私がやるのは敵の殲滅だ。
どうせ剣しか取り柄のない私だ、やることなんて単純明快。


ただ敵を倒す、それだけだ。


「ミサカさん、敵はどこですか?」
「右前方54メートル、愛衣さんと他の魔法生徒が持ちこたえているようですが、数で押され気味です、とミサカは詳細に報告します」
行きますか、と目で問いかけてくるミサカさん。
一見、無感情に見えて、実はこう言う仕草が人間っぽいミサカさんの仕草が面白くて、私は少し笑う。
私が笑った意味がわからないのか、ミサカさんは首をかしげる。
別にわかってもわからなくてもいい。
とりあえず、ミサカさんは私と一緒に戦う事において安心できる人物であるようだ。
修学旅行で共闘するかは私もわからないが、参考にはしておくべきだ。
迷惑はかけられないが、頼りにするのとそれは違うと思う。
ここはしっかり頼りにしておこうか。
「行きましょうか、ミサカさん」
「おう、とミサカは少年漫画の男子っぽく応じます」
そこから瞬動で目的地に向かう。
脚を地面に押しつけながら、最速で移動する。
2秒も経たずに到着し、同時にその勢いで鬼の首を切り飛ばした。

回る。

斬撃が舞い、その周囲にいる鬼をまとめて斬り飛ばした。
カマイタチが起きたその場をミサカさんの雷の槍が突き抜ける。
一瞬のフラッシュと頬に当たる熱風。
凄まじい炸裂音と光と共に、斬り飛ばされた鬼の残骸ごと別の鬼も貫通する。
私の横をミサカさんが駆け抜けていく。
こちらに気づいた鬼に相対するつもりのようだ。
鬼は棍棒を振り上げてミサカさんに振り下ろす。

直線的な動き。

ミサカさんはそれを流れるような動きで避け、すり抜ける。
巨大な鬼の懐に入ると、震脚。
鬼の股の下に放射状の地割れが起こる。
それだけ凄まじい震脚から繰り出される一撃に、雷が纏う。
放電しながら、ミサカさんは鬼に拳を繰り出した。


「崩拳」


鬼の腹を貫通する勢いで、ミサカさんの拳が激突する。
それは鬼を感電死させながら吹き飛ばし、木に叩きつける威力を出した。
良く見ると、鬼の腹には拳型の火傷の跡が残っている。
消えていく鬼を一瞥した後、ミサカさんは背後から忍び寄ってきた狐女を電撃で吹き飛ばす。
振り向かずに吹き飛ばしたという事は、死角にいても察知できるという事だろうか。
そう疑問に思って、私は先ほどの言葉を思い出す。
あのヘルメットで辺りを察知できるということは、あれおかげで近距離での死角からの攻撃に対応して反撃できるという事だろうか。
もしかしてミサカさんが見ている風景は、彼女の頭上から彼女自身を見ているような風景なのかもしれない。

吹き飛ばされた狐女が痺れて動けない隙に、私はその首を斬り飛ばす。

脚を地面に無理やり押し付け、来た方向とは逆に瞬動。
空気を吹き飛ばし、とある魔法生徒の背後から出現した鬼を斬る。
いや、斬ろうとして、私の太刀が空を切った。
後ろに飛んで避けられたのだ。
明らかに餌に釣られた形になる。
私も疲れているのだろうか、動きが直線的過ぎたか。
後ろに飛んだ鬼は両足を地面につけ、私に対して追撃を行おうとするが、その背中が突如として爆発した。
倒れる鬼の後ろから、手を突き出した愛衣さんの姿が見えた。

「私を忘れてもらっては困ります」

どこか怒ったその口調は、今まで対峙してきた鬼の戦闘目標が私たちに移り変わったことに対する不満だろうか。
ミサカさんの電撃が再び炸裂し、私は関係ない思考から現実に引き戻される。
ミサカさんは再び崩拳を放ったようで、鬼は吹き飛ばされていた。
それから色々と見ていたが、彼女の戦闘傾向では、雷撃はどうも牽制用らしいことがわかる。

あれだけ絶大な威力を持つ雷撃だが、遠距離からのそれはあまり多用しない。

近距離でも雷撃を使わずに、単なる崩拳として放つこともある。
きっちりとした動きは無駄がなく、気の操作が私に比べて拙い事を差し引いてもかなりの戦闘能力を持っているのがわかる。
まだ力も全て出し切っていないようだし、彼女の潜在している能力はどの程度のものなのか、私には計り知れない。
アクセラレータさん級とは思えないが、それでも一般の魔法生徒とは一線を画しているのは間違いない。
私は脚を地面に押し付け、停止する。
鬼が私の急制動についていけず、私の眼前で棍棒を振り下ろす。
炸裂する地面を目の前で観察する余裕を持ちながら、私は棍棒の上に乗り、そこから跳躍して鬼の首を斬り飛ばす。
その私を追撃しようとする鬼がいるが、それは魔法生徒の魔法の射手、そしてミサカさんの瞬動からのタックルが阻止した。
タックルで吹き飛んだ鬼は、愛衣さんの魔法の射手でとどめが刺される。
爆発するそれを目の端の方で見た後、私は着地して周囲を見回す。
どうやら、殲滅し終えたようだった。
ミサカさんもそう判断したらしい、辺りを見回しながらゆっくりとこっちに戻ってくる。
「この辺りの敵は片付きましたね、とミサカは辺りを索敵しながら報告します」
「なら、次へ向かいましょう。ぐずぐずしていてはまた戦線を突破されるかもしれません」
ミサカさんが辺りを見回していると、魔法生徒……おそらく高校生くらいの男の人が、こちらに向けて頭を下げてくる。
「悪い、助かったよ」
「どういたしまして、とミサカは索敵しながら応じます」
ミサカさんが頭を下げずに応じ、辺りを索敵を続けている。
男の人もそれがわかっているんだろう、笑顔でそれに応じた。
「実を言うと魔力がもう限界でな。パートナーともはぐれて困っていたんだ」
「私は引く途中で襲撃されてしまって。もう引きますけど」
「じゃあ、一緒に行くか。後方まで戻れば襲撃の心配はないだろうし」
あっちもどうやら成り行きでこういう組み合わせになっていたらしい。
どちらも魔力切れで引くそうなので、私は警告しておくことにする。
「伏兵には気をつけてください。まだ何体いるかわからない状況みたいなので」
「わかりました、刹那さん。そちらも気をつけて」
愛衣さんと魔法生徒が離脱していく。
それと同時に、ミサカさんの方も索敵が終わったようだ。
僅かに聞こえるのはアニメにありそうな『ぴぴぴ』といった電子音。
本当にこういうのはこんな音がするのか、と私は微妙にドキドキしてしまう。
場違いだと言うのはわかっているのだが……気にしないことにする。

集中しなければ。

「少し遠いですね、とミサカはため息をつきます」
「遠くても行くしかありませんね……とりあえずそちらに向かいましょう」
「ええ、とミサカは応じます。ですが、刹那さんの方も体力は大丈夫ですか、とミサカは尋ねます」
改めて、私は今の自分の状態を確認する。
気はまだ使えるし、怪我も少ない。
私は魔法生徒の中でも戦力である以上、こんな程度で抜けるわけにはいかないだろう。
力強く夕凪を握りしめながら、私は答える。
「言っておきますが、私は引く気なんてありませんよ」
「それだけ言えるなら大丈夫ですね、とミサカは確認を終えました」
ミサカさんは私に背を向け、瞬動で飛び出していく。
さっきまでの戦闘を思い出して、意外とミサカさんは連携が取れていたことがわかる。
もしかして雷撃が少なくなったのも、私たちの視界を遮らないための遠慮だったのかもしれない。
ミサカさんは汎用性の高い能力も持っているし、肉弾戦能力も高いから、ある程度の相手には簡単に適応するのかもしれないな。
それはそれでミサカさんの能力の高さだろう。
私はミサカさんの背中を見ながら、いつの間にかその背中を頼りにしていることに気づいていなかった。






SIDE ネギ・スプリングフィールド

魔法の射手が飛んでくる。
誘導性が高くて、殺傷力も高い氷の矢だ。
僕は懐に隠し持っていた魔法銃で氷の矢を撃ち落とす。
魔力の節約のためだ。
後ろから魔法の詠唱が聞こえてくる。

エヴァンジェリンさんの声だ。

後ろを見ないで飛ぶのは、正直に言って恐ろしい。
改めて感じるエヴァンジェリンさんの魔力は膨大だった。
魔法の射手も基礎の時点で僕よりも遥かに上回る事を証明しているかのように、威力が高い。
やっぱりタカミチの言う通り、停電でのエヴァンジェリンさんの力は僕なんかをはるかに上回っている。
急制動をかけ、路地に入りこんで魔法の射手を避けようとするが、魔法の射手は普通では考えられない軌道で曲がって、僕を正確に追尾してくる。
魔法銃でそれを撃ち落とし、僕は上昇する。
視界の端に茶々丸さんをとらえ、僕は詠唱する。

「風よ!!」

爆風を起こし、接近していた茶々丸さんを吹き飛ばす。
やっぱり僕よりも麻帆良の地形を知っている。
僕が路地を動きまわっている間に近道をして距離を詰めてきたんだろう。
茶々丸さんを迎撃していると、その分エヴァンジェリンさんが距離を詰めてくる。
後ろから聞こえてくる詠唱は、まるで呪詛みたいだ。
引きずりこまれるような錯覚に陥る。
僕は前に進んでいるのか、それともエヴァンジェリンさんに引き込まれているのか。
魔法銃で魔法の射手を迎撃し、続く氷爆を緊急回避する。


「どうした、ぼーや。逃げてばかりでは勝てんぞ」


それに応じず、僕は迫ってくる魔法の射手を迎撃するために魔法銃に銃弾を装填する。
正直、魔法の射手を詠唱する余裕がない。
こちらの詠唱速度と向こうのそれが段違いだ。
速い。
それに、追われているという切迫感もあって反撃する気にならない。
やっぱり、あそこまで追い詰めないと。

罠がある、あの場所まで。

それを悟られないために、僕自身が追いつめられなければならない。
エヴァンジェリンさんの場合、それに気づいていて付き合っているのかもしれない。
最初の分身を配置しての襲撃だって、様子見の一撃だったけど……やっぱり茶々丸さんは凄い。
体術で全部僕の分身を倒してしまった。
エヴァンジェリンさんも身動き一つせずに障壁で持ちこたえていたし、生半可な一撃じゃエヴァンジェリンさんは倒せない。
やっぱり、全力の一撃をブチ込むしかない。
「魔法の射手・連弾、氷の12矢!!」
後ろから響いてくる吸血鬼の声に反応し、僕は後ろに魔法銃を向けた。






~あとがき~

連続投稿、第二段。
二つの出来事は同時進行していくように書いていきます。
今回はミサカと他の魔法使いの連携、そしてエヴァとの序盤での戦闘です。
今日、課題が一気に出ました……今週中にレポート提出2つとテスト2つが被るなんてありえねー。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.030945062637329