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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第38話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:da7c297e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/31 15:29
SIDE 一方通行

土曜日の、早朝。
四月にしては肌寒い朝だった。
しかし、まどろむ眠気を覚ませてくれるには丁度良いものであった。
俺はいつもの世界樹の枝に登り、そこで朝日を眺めていた。
いつもと逆方向なのでかなり違和感があるが……まあ、たまにはこういう日も良いだろう。
あまりに早い朝のため、眺める街はまったく動いておらず、夕日が照らす慌ただしい街とはまた違う顔を見ることができた。
所々で動き回っているのは朝早くから店の支度をしているオバサマ方だろうか。
動かない街をぼーっと眺めながら、俺は寝る前に考えていた事を思い出す。

『桜通りの吸血鬼事件』についてだ。

話し合う事、そして決めておくこともある。
茶々丸襲撃事件はややこしい要素を多分に含んでしまったため、色々と問題になりそうだからだ。
今回、その焦点になる事はいくつかある。
それをまとめてみることにする。

まずは、茶々丸が損傷したと言う事。

そしてそれがネギの魔法によるものだということだ。
この場合マギステル・マギ候補生であるネギを学園側が援護する可能性が高く、学園側による大規模な介入も考えられる。
ジジイ辺りは情報を集め次第、もうすでに動いている事だろう。
それについてエヴァや俺などといった連中が呼び出され、会議を行う可能性もある。
その場合は桜通りの吸血鬼事件の終着点はジジイのシナリオ通りになるか、エヴァが我が道を行くかどちらかに絞られる。
どちらにしても原作通りの展開になるはずだ、と考えている。
原作の展開とはまさにジジイのシナリオそのものだろうし、エヴァについてはネギを本気で潰そうとした場合に対して、何らかの保険が入る可能性がある。

タカミチである。

その場合、麻帆良に襲撃してくる連中をブチのめすために俺が色々と出張る必要があるわけだが……まったくもって面倒くさいことだ。
俺は後方で待機しているんじゃなかったのだろうか。
……それはともかく。
ネギにはきっかけを与えたが、あれがこれからの結果に大きな作用をするとは思えない。
何らかの変化が生まれるとしても、『エヴァとネギが戦う』という事項に変更が起こる事はない。
でなければエヴァの気もおさまらないだろうしな。

次に、ミサカが介入したと言う事。

俺の立場からすると、茶々丸が損傷したことよりもむしろこちらの方が問題である。
俺という存在が麻帆良全体に認められている……とは思わないが、俺自身はそこそこの信頼を勝ち取っている。
だが、ミサカはそうではない。
前にも説明したが、ミサカはここに出現してきた経緯も存在も何もかもが謎であり、また謎の原理により電撃を放つことができる―――と麻帆良の魔法使いたちには認識されている。
そんな不思議存在を不気味に思わない人間はまずいないだろう。
そしてミサカが俺と親しいということが広まってから、ミサカに対する疑念が広がっていった。
再び俺が怪しいという声が出始めたのも一月になる。
それについての対処は俺がやってしまうと更なる反発を招いてしまうためにジジイに任せていたため、あまり表面化することはなかったが、それでも何か問題を起こせば集中的に非難を浴びやすい立場にいるのは確かだ。
何もかもがあまりはっきりしていないのだから当然だが。

そこに、今回の事件。

噂と言うものはどこから広がるか分からないし、もしもネギが茶々丸を攻撃したという事実が隠蔽され、『ミサカがネギを攻撃していた』という屈折した事実が広まるかもしれない。
むしろ、俺はその確率が高いと思っている。
ジジイはまずネギの過失を広めたりしないだろうし、隠蔽されると考えているが……果たして、ミサカはどうなのか。
こうして否定的な噂が広まった場合、最悪ミサカの私生活にも影響が出てくる可能性がある。
停電時の初陣の時、下手をすれば背中から撃たれる可能性もあるのだ。
それらについても、俺はジジイと話さなければならないだろう。
俺としてはここが話の軸になるわけだが。
ぶっちゃけてしまうと、ネギたちやエヴァの問題よりも、俺はミサカに対してどんな問題が起こるのか、という方が遥かに重要なのだ。
ほとんど他人のネギは論外として、俺としては友人としての付き合いがあるエヴァの肩を持ちたいところなんだが……やはり、ミサカを最優先にしてしまう俺がいることは否めない。
数カ月も一緒にミサカと暮らしてきたんだ、愛着は沸く。
ミサカにはレベル5の実力があるとわかっていても、守らなければ、という感情は強いのだ。

そう考えた結果、俺は恐らくエヴァ側に傾くことになるだろう。

ミサカ自身、茶々丸を庇ってネギを攻撃してしまったし、今更中立というにはあまりに白々しい。
よって、ミサカはエヴァ側として認識されるだろう。
だが、かと言って俺はエヴァに協力するわけではなく、あくまでミサカを守るためにそちらに傾くのであり、決してネギを粉砕するためにエヴァ側になるわけではない。
感情で行動するようになったミサカの行動を予測する事は俺には不可能。
それでいてミサカを守るためには……ミサカが問題を起こした場合の責任をとるために行動しなければならないだろう。

もしも責任を追及するのであれば、だが。

その場合は全力で反撃させてもらうが―――無論、拳ではない。
そんなことをすれば俺の発言力が激減することは間違いない。
俺達に対して良い感情を抱いていない奴らの思う壺だ。
俺はともかく、ミサカがまずい立ち位置になるのは承服しかねる。
感情と拳で行動して叩き潰す方が確かに楽ではあるのだが、安易に楽な道を通ってしまっては後始末が面倒になる。
その上、その道を通ればただでさえ燻っている所に風を送るようなもので、燃えあがる可能性は高い。
これらの事件を軟着陸させるためにも、俺は慎重に動かなければならなのだ。
単に対象を叩き潰すだけが守ると言う事じゃない。
ただ、ちょっとばかり話し合いが苦手なだけだ。
話し合い、というのはただこちらの意見を押し通すことはできることもあるが、ほぼできないと言っても良い。
それぞれの希望が意見に合致すればそのままの意見が通るだろうが、対立すれば必ず譲歩する必要性が出てくる。
俺に否定的な連中が意見するとしてきたら、やはり何らかの譲歩をすることが必要だろう。
意見を押し通すだけでは反発を招くだけ。
わがままだけでは不利益が跳ね返ってくるだけだ。
暇つぶしに頭の中でその場面をシミュレーションしながら、俺は朝日が照らす木の葉のグラデーションをぼうっと眺めていた。






家に帰ると、ミサカが料理をして待っていた。
相変わらず無表情ではあるが、やはり楽しそうなのが雰囲気で伝わってくる。
嫌々で朝食を進んで作ることなんざしないだろうしな。
俺はソファーにぐったりと座り、テレビをつける。
帰ってきたらテレビをつけるというのはもう癖になっている。
つまらないバラエティ番組だろうが、30分ごとに同じ映像を流しているニュース番組とかは関係なく、ただただ流す。
見ているだけで頭の中に情報が入ってくることがなんだか鬱陶しく思えるが、緩慢な思考がテレビを消すことを阻害する。
結局ソファーに頭を預け、天井を見てしまう。
そのまま眠気に従って眠ろうとするが、その直前にミサカから呼び出しを食らう。
良い匂いに食欲を刺激され、俺は素直にそれに従った。
「いただきますー、とミサカは手を合わせます」
「それはいいが、持っているオタマをなンとかしろ。スプーンのつもりか?」
朝食を作った後にしては珍しく寝ぼけているミサカにそう言ってから、俺は朝食を食べる。

相変わらず俺好みの濃い味だ。

正直に言えば健康に悪いのだが、薬品をがばがば投与された体に健康がどうのというのは今更な気がする。
ただの言い訳だ。
濃い味付けのシャケを頬張っていると、俺のポケットから携帯が鳴る。
規則的な電子音を止めると、どうやらメールのようだった。
開いて読んでみると……それはジジイからの呼び出しメールであった。
意外と早かったな、とジジイの仕事ぶりに感心しながら、俺はサッサと飯を食って立ち上がる。
「ゴチソウサマ。ちょっと出かけてくる」
「さっきのメールの送り主ですか、とミサカは予想します」
ポケットに手を突っ込んで廊下を歩きながら、俺は『あァ』と頷いた。
すると、ミサカは申し訳なさそうに呟く。


「すみません、ミサカのせいで迷惑をかけていますね、とミサカは頭を下げます」


その言葉に反応することなく、俺は玄関で靴を履く。
屈むなんて面倒くさい、ベクトル操作で無理矢理に踵を靴に押し込む。
靴の底を床に叩きつけて調子を確かめながら、俺はミサカが迷惑をかけていると自覚していることを少し嬉しく思う。
それだけ彼女の人格が成長していると言う事だから。
俺はそんなミサカに対して、振り向いて言った。
「別に、テメェが謝ることじゃねェよ。テメェは茶々丸を救った、ただそれだけでいいじゃねェか」
今のミサカにはその事実だけで十分だろう。
ただでさえ人生経験が少ないのだ、今は素直にその喜びを感じていた方が良い。
「後の面倒くせェことは俺やジジイに任せとけ。人には得手不得手ってモンがあるからな」
ミサカにはまだこういうことは早いだろう。
そう思いながら、俺は家を出た。
土曜日だからだろうか、街中には私服の生徒たちが出歩いているのが目立つ。
中には高校生が制服で歩いているが……妬ましそうに私服の若者を見ている辺り、補習か何かだろう。
どうでもいいことを予想するほど思考に余裕があるのか、あるいは疲れているのか。
俺は人がほとんどおらず、ガランとしている中学校に入る。
学園長室の扉を開けると、そこには当然ながらジジイがいて、こちらを冷めたような目で見るエヴァが立っていた。
無言のままの圧力を反射しながら、俺は二人の領域に踏み入る。
入る、という挨拶もなく、出迎える挨拶もなく、ただ淡々と俺たちの話は始まった。

まず口を開いたのはエヴァだった。

「てっきりタカミチの奴が来るものだと思っていたが……まさか貴様とはな、アクセラレータ」
「まァな」
そっけなく返事をしながら、何故タカミチが来ると思ったのか考察して―――いや、考察するまでもなくネギのことだからだろうと予想がついた。
俺はジジイに目線を向けると、ジジイは説明を始めた。
「昨日の件じゃよ。それについて、ちょっと話があっての」
予想していたため頷くと、ジジイはそのまま続ける。
「まず、ネギ君が茶々丸君を襲撃する事はこちらとしても予想外じゃった。それについてミサカ君を巻き込む形になってしまったことが話をややこしくし始めておる。麻帆良の魔法陣営は現在、かなりの緊張状態にあるのじゃ」
色々と端折ってるな。
エヴァと話していたからこちらも把握していることを前提で話してるのか?
悪いが、俺はまだその辺りの事は把握していない。
原作知識との矛盾が出ては困るので、俺は現状をほとんど把握していないことにして、ジジイに聞いた。
「……話の先が見えて来ねェな。ミサカを巻き込んだことが、どうして麻帆良全体の魔法関係者に影響を与えることになる? むしろネギと茶々丸が戦ってネギが負けた事の方が衝撃的な事実のような気がするンだが」
「ふむ。それなら一つ一つ説明する事にしようかの。まだ朝なんじゃ、時間はある」
どっこいしょ、と座りなおしたジジイは長期戦の構えを見せた。
俺も腕を組み、体に入る力を緩めた。
「ミサカ君は現在、麻帆良におる大半の魔法関係者には警戒、あるいは様子見されとる立場じゃ。これはミサカ君もアクセラレータ君も知っておることじゃな? 実際、ミサカ君を信用している人物は少ないのが現状じゃ」
「そォだな。それはしょォがねェことだと思ってるが……」


「そして、『ミサカ君がネギ君を攻撃した』という確証もない情報が出回ったとしたら、どうなる?」


そう言われて、俺は納得の表情をした。
俺がさっき予想したことがそのまま当たってしまった事には驚きだが、その分だけ動揺は少ない。
「情報操作……じゃねェな。それが事実を予想した連中が事実と称して言いふらしている、という辺りか」
「うむ。その情報が出回った経緯じゃが……『鉄骨』じゃ」

鉄骨?と俺は眉根を寄せる。

鉄骨なんて、ミサカの話では出てこなかったが……いや、待て。
茶々丸とネギの戦闘の詳細は聞いている。
ネギは白き雷を茶々丸に放った、というのは聞いた。
それをミサカが迎撃した?
いや、受け止めて防御したと考える方が自然だ。
となると、砂鉄で受け止めるよりは鉄骨で受け止めた方が確実性が高い。
ミサカも砂鉄を集めて固形化させるよりも鉄骨を磁力で動かす方が迅速に行動できるし、楽だろうと思う。
ミサカは鉄骨を使って茶々丸を助けた。

ならば、鉄骨はその後どうなった?

「幸いにも戦闘そのものを目撃した者はおらんようじゃが、魔力反応などから戦闘があっただろうと予測した聡い人物がいての。そこに地面に突き刺さっている不自然な鉄骨を見つけたわけじゃ。この麻帆良では鉄骨を武器として扱う魔法関連の人物はまずおらん。肉弾派の人物はたいてい刃物か拳で戦うし、あんな収納に困るものを武器として使うのは非効率的じゃ。魔法バレを防ぐために証拠隠滅を重視する我々としては、鉄骨を武器として扱うのはあまりにもデメリットが多すぎる。よって、魔法使いの中でそれを武器のように使う者はおらん、ということじゃ」
「……そこで、新参者のミサカに疑いの目がかかった、ということか。都合良すぎじゃねェか?」
「はけ口があれば、そこに疑念は流れ込んでいくじゃろう。ただでさえ明確な目標がない状況で、その目標に近いのではないかと疑念を抱かせる怪しげな存在がそこにあるのなら、そちらに意識が向くのは自然じゃろうて。君の言う通り都合が良すぎるがの」
だが、ネギを攻撃したことは事実であるので、なんともややこしい問題になっているのがわかる。
俺は頭を抱えて、ため息をついた。
「テメェらだけじゃ抑えきれねェのか?」
「ワシらも停電が控えておるのでのう……内輪もめは避けたいんじゃよ。下手をしたら、君と過激な連中との殺し合いに発展しかねん。そうなっては困るのじゃよ」
学園都市ならわからないが、麻帆良でバシバシ人死にがでるとまずい。
ある程度の治外法権がきくとはいえ、流石に人が死ぬのを誤魔化すことはできないだろう。
ジジイも俺とそういう連中が衝突すれば、死傷者が出るのは免れないと思っているからこういう事を言うのだろう。
「というわけで、ミサカ君が危険だという情報が広まってしまい、且つ彼女がかなりの実力者であることを示してしまったが故に警戒する人物が急増したわけじゃ。この前のデモンストレーションが仇になってしまったのう」
「……問題になるくらい反応するンだったらどの道同じだろォよ。で、それを改善するためには?」
「改善するには、君と同じく何らかの形で信用を勝ち取るしかないじゃろう。それが停電時の件じゃったが……今の段階ではその噂を完全に否定できん以上、まずい発言はできん。荒れるのは御免じゃよ」
「こっちだってそォだ。荒れたら俺たちの立場上、戦いになるだろォし……」
そうなった場合、どんな未来が待っているかはちょっと想像したくない。

麻帆良にいるのが難しくなるのは確かだ。

その場合は俺が責任をとるまでだが、正直、このことで責任をとるなんていうことは理不尽だ、と考えている。
だから、俺はここで反論を開始することにする。
「ジジイの言い分はわかったが、こっちとしては対処法はある。これも賛否両論があるだろうが、麻帆良で一番発言力があるジジイならなんとかなると俺は考えてる」
「ふむ。何じゃ?」


「この事件の真相をすべて暴露する。またはネギに暴露させる、だな。後者はちょっとオススメできないが、効果的ではある」


噂があるのなら、それを上回る事実を告げれば良い。
こちらとしては『攻撃した』という事実はあるが、ミサカはただ友達を守ろうと行動しただけなのだ。
ネギが茶々丸を攻撃している所に茶々丸の援護に入った、という事実を暴露してしまえばミサカから焦点は外れるだろう。
問題はネギとエヴァのみとなり、ミサカはその問題からは関係がなくなるのだ。
そしてそれがジジイかネギに暴露させることにより、真実の信憑性を底上げする。
流石にこの二人の言う事を嘘だと言う連中はいないだろう。
これが一番解決方法として簡単で明快だと思うのだが、やはりジジイはそれを渋るように沈黙した。

それも当然。

ジジイ自身がこれらの事件を発表すると、マギステル・マギ候補生のネギに汚点を作ることになる。
エヴァに脅迫されて恐怖で行動したと発表したとしても、今度はエヴァに矛先が向いてくる。
穏便に事を収めたいジジイとしては、丸く収まる方向で検討したいのだろう。
だが、それを検討していることで対応が遅れ、ミサカに何かあったのでは遅いのである。
ミサカが傷ついた場合、俺がどんな行動をとってくるのかは……ジジイもわかっているはずだ。
ネギに暴露させるという方法はネギに負担をかける上、汚点が確実なものになる。
そして、ネギ自身に今回の事件のカラクリを説明することになってしまう。
ネギの頭脳は優秀だろうし、鋭い疑問を持つに違いないだろう。
そうなると、実はネギを成長させるためにジジイとエヴァが組んでいたという事実がバレるわけだが、『君のためだ』なんてことを言ってネギが納得するはずがない。
ネギからすれば殺されかけたのだ、まさかドッキリでしたなんて言われて怒らないはずがないだろう。
下手をすればネギからの信用を失うことになりかねない。
ジジイからすればそれは避けたいだろうしな。
ネギが事実を発表することに対するメリットはネギ自身が言う事で情報の信憑性が確実なものになり、ミサカから視線がそれる可能性が非常に高いと言う事。
デメリットはネギのジジイに対する信用が落ちることと、それらの計画を明かして『ステージ』を作り、まるで舞台劇のようなネギVSエヴァをやらなければならなくなることである。

殺されることもなく、また殺すこともない。

修行にはなるだろうが、生存本能に訴えかける急激な成長は望めないだろう。
それとも、修学旅行前に実戦の空気を経験させておこうという腹なのかね。
「どうしても選ぶと言うのなら前者じゃが、流石にそれをするのは……」
「今回、ミサカに非はないだろ。あるとしても鉄骨という証拠を残しただけだ。ネギが茶々丸を破壊することによる人殺しのレッテルを張られるよりもよっぽど良かったと思うが……それを事前に阻止したんだ。疑われている現状を解消してもらうのが最優先だろ」
「そうなると計画が緊張感のないものになってしまう。ネギ君も精神的に成長することができんようになる。これからの実戦を考えると今の内にその空気を経験させなければならん。でなければ潰れる可能性もある」
「テメェらの計画がどォなろォが、俺は知らねェぞ。もしもこのままズルズル現状維持を続けるンなら、俺も独自に動くことになる。そうやってミサカが非難を浴びる可能性がある以上、ミサカにも警告しなきゃならねェし、過激な連中がいるンなら死なねェ程度に潰すことになる。それでもいいンだったら現状維持でも構わねェが。……もともと俺たちは関わらない予定だったンだ、イレギュラーな事態を想定していなかったそっちに非があるンじゃねェのか?」
「…………」
まぁ、無茶である事は自覚している。
あのネギが茶々丸を奇襲して攻撃する姑息な手段を、誰が考えつくと思うだろうか。
実際、俺も原作知識がなければわからなかっただろうし。
「ただ、俺たちに被害が来なければ良い。それだけの調整はできるか、ジジイ」
「保証はできん」
「……そォか」
なら、俺は俺で動くだけだ。

麻帆良は守る。

自分としても住む所がなくなるのは嫌だし、麻帆良は悪くない場所だからだ。
ただ、その際に何らかの策略が蠢くのなら、そしてそれが俺たちに危害を及ぼすものであれば、俺は躊躇なくそれを叩き潰す。
それはジジイも知ってるはずだし、こういう答えを出すのならそれを容認したに等しいだろう。
潰すにしても殺すわけにはいかないが……その点は俺も加減はできるだろうし、大丈夫のはずだ。
だが、気を張らなければならないだろう。
納得いかない所はあるが、社会なんてそんなもんだろう。
妥協しなければならないことなんて山ほどあるしな。
こちらはこちらで対処し、動くしかないだろう。
「で、俺とエヴァと一緒にしてるのは何でだ? 何か理由があるンだろ?」
それにはエヴァが答えた。
「シナリオ通りにやれ、だとさ。この間ぼーやを襲って恐怖心を必要以上に煽ったからこのような事態になった、ということだ」
「数日前にネギ君と遭遇して襲った事はわかっておる。ワシらの計画通りに動かんことはわかっておったが、それがこういう結果を及ぼした以上、こちらの路線で進んでもらわんと問題が拡大化する恐れがある。そうなれば立場を悪くするのはエヴァとアクセラレータ君たちじゃろうしの」
「甘い管理だと問題を起こしたから厳しい管理にする、ということか。まァ、俺からすればそっちの方がありがたいがな。エヴァの行動がわかってるンなら行動しやすい」
「……なんか嫌だな、その言い方」
「事実だろ」
そう言って、俺は首を鳴らしてほぐす。
このごろ暢気な暮らしばかりだったせいか、こういうシリアス展開をやると首がこる。
そうやって首をほぐしていると、ジジイが仕切り直すように言った。
「さて、エヴァの事じゃが、ネギ君と戦うのは今後、停電時の一回のみと決まった。今後と言っても停電までじゃがな」
「その戦闘時の行動は? そこら辺は決めてないのか?」
「ネギ君がどんな行動をするかわからん以上、そこは決められんよ」
シナリオという割には中身があまり決まっていないな。
確かに戦闘をそのままシナリオ通りに進めるなんてことをエヴァがやるなんてとても思えないが。
その場合はネギの行動に従って何通りものシナリオを考えなければならない以上、あまり現実的ではない。
とりあえずネギとエヴァが戦うということはわかっているし、俺が動くとしても麻帆良市街で目立たなければ大丈夫だろう。

「で、まだこちらから質問があるんじゃが」

と、ここでジジイがこちらを見てくる。
「何かあンのか?」
「うむ。こちらも掴みきれておらんのじゃが、ネギ君が事件後に出歩いている所が目撃されての。事件が起きた割には落ちついた足取りだったようじゃしのう……何か知らんかの?」
探るような視線を向けてくる。
隠すことでもないため、俺は正直に言う事にした。
「ミサカが俺ン家に運んできたンだよ。その後はミサカに謝らせて帰らせた。まァ、ちょっとした『相談』には乗ったがな」
「相談? なんだそれは?」
「別にィ。現状を考えるとネギが考える悩みなンざすぐにわかりそうなモンだろ」
「チッ。ぼーやには相談するなと口止めしておいたんだが……そういえば貴様に相談するなとは言わなかったな。貴様と会うのも想定すべきだったか?」
それに対して俺は肩を竦める。
「普通考えられねェよ。そンなこと考え出したらキリがねェ。それに、ネギをあのままにしてたらまずい方向に進ンでたはずだ。なにせ相棒が茶々丸襲撃案を出したアルベール・カモミールだからな、タカミチ辺りがちょっとしたアドバイスをするだけでも結構違ってきたと思うぜ。今となっちゃ遅いかもしれねェがな」
「そうすればワシらがエヴァが行動しているのを黙認している事をネギ君にバラすことになるじゃろ」
「ジジイは貴様と同じで過保護だからな。一度実戦を経験させておこうという腹らしい。死なないと確約されている時点で生死をかけた実戦ではないが、情報を制限することでそう思わせる必要がある、ということだ」
エヴァもネギの血を吸う口実ができることだし、これほどのチャンスはない。
ジジイの方もネギに実戦を経験させると言う理由があればエヴァ参戦にはそれほど問題はない。
ただ、ネギが負けた場合、ネギに深刻なトラウマを残す可能性もあるが……その場合は記憶操作で何とかするのだろうか。
そうなったらジジイの思惑は吹き飛んだことになるから、どうせならコテコテの『悪役』をガンドルフィーニにでもやらせて実戦さながらの緊迫感でも出せばよかったんじゃないだろうか。

……今更な話ではあるし、俺も口には出さないが。

「で、ネギへの処分はどォすンだ? 茶々丸を損傷させたンだ、御咎めってのはあるンだろ?」
「ネギ君へは警告処分とする。謹慎も考えたが、3-Aの生徒たちはカンが良い。色々と探られてはこちらが困るからの」
ネギにはそれでちょうどいいか。
ジジイから何か言われることで、魔法を扱う事に対して緊張感と言うか、そういうのを持って欲しいもんだ。
ネギも聞いたことを自分のものにする能力は高いだろうし、就任当初よりはかなり改善されると思う。
そう思った所で俺はその話はもう終わることにし、シメに入る。
別に詳しく聞くべきことでもなかったからだ。
「停電は明々後日だったな。とりあえず、俺はその時にやることは変わらねェ。魔法生徒の危険を見張るってことでいいンだな?」
「主にミサカ君じゃろ、見張るのは」
「この状況じゃ当然だ。……アイツの実力があれば気にすることはねェンだろォが、油断ってモンがあるからな。他の魔法使いに何かあったときは連絡をくれよ」
「それはもちろんじゃ」
そう言って踵を返すと、エヴァも後をついてくる。
既にジジイと話す事は終わっていたらしく、そのまま一緒に廊下に出た。
暫く無言で一緒に歩き、階段を下りていると、突然エヴァが話しかけてきた。

「……今回の事は、私が悪かったと言う事か?」

別にすまなさそうな訳でも、落ち込んだ口調な訳でもなかった。
ただ、ほんの少し疑問に思った程度だろう。
こんな殊勝な事を言うエヴァは珍しいので、俺は少し真剣に考えることにする。
今回の事と言うのは、間違いなく茶々丸襲撃事件のことだ。
それが起こる原因となったのは確かにエヴァが必要以上にネギを恐怖させたせいもあるが、そんな事を言えばもともとネギをここに呼び、エヴァと戦う事を黙認しているジジイのせいでもある。
更に言えばエヴァをここに封印したナギのせいなのだが、さて、どこまで遡って誰のせいにすれば良いのだろうか。
頭の中で言葉を整理して、俺は吐きだした。
「テメェも悪いし、ジジイも悪いが……俺は謝れなンて言わねェよ。『桜通りの吸血鬼』の計画を俺が知ってた以上、何らかのトラブルが起こって喚くのはみっともねェしな。それに、誰かが妥協しなきゃ終わらねェだろ? 面倒な事はサッサと終わらせるに限る」
誰もが自分の意見を主張するだけでは誰も認めてくれない。

だから妥協する必要がある。

それに、俺とエヴァ、そしてジジイとでは立場も発言力も違う以上、やはり公平ではない結果に終わる。
それに納得している以上、俺は特に何も言う事はない。
ミサカに何か被害が出ているとなると、流石に黙っちゃいないが。
そう思っていると、エヴァは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「貴様も丸くなったものだな。以前のような獰猛さが感じられん。ボケたのか?」
「緩慢な戦闘ばかりだったらボケるだろォよ」
実際、戦闘はほとんど関西呪術協会から襲いかかる鬼ばかり。
だいたい俺と緊張感のある戦いを行うほどの存在が麻帆良にいては困るのだが。
そうやって緩慢な戦闘ばかりを繰り返していれば、獰猛さと言うか、そういう野性は失せるんじゃないのだろうか。
特に今回で求められるのは理性的な話し合いだ、そりゃあ野性は失せるだろう。
「俺だっていつもギスギスしてるワケじゃねェよ。ただ、そう見えてるだけだ」
「それはわかってるさ。だが、一方ミサカの問題になると貴様は過保護になるからな。今回はそっちに影響が及ぶからジジイと衝突するかと思っていたんだが」
「露骨だったら反撃するだけだ」
今回、ミサカは微妙な立ち位置であるがゆえに俺としても中途半端な話し合いになってしまったと思っているが、ただ、俺がどういう行動を取ろうがある程度は容認される以上、俺は仲間が理不尽な攻撃を受けるんなら反撃しに行く。


相手が誰だろうが、だ。


俺は心の中でそう呟き、ポケットに入れている拳を握った。






SIDE ネギ・スプリングフィールド

部屋の中で、僕はカリカリとノートに文字を書いていた。
その文字はラテン語だ。
英語ならともかく、この言語なら普通の日本人は覗き見しても解読するのに時間がかかると思ったからだ。
魔法使いなら読めるかもしれないけど、もしものための保険だ。
別に僕が読めれば良いんだから、日本語で書く必要はない。
日本語はもうそこそこ書けるから、あまり練習もしなくて良いしね。
トントン、とシャープペンシルをノートに規則的に叩いて考えながら、僕はまたノートにメモしていく。
思いついたこと、考察できる事をそのままノートに書いていく。


その内容は、今回の『桜通りの吸血鬼事件』の話。


あくまで噂とか僕の考えとかを書きだしたもので、事件の全貌とは程遠いかもしれないけど、なんだか書きだしていくうちに怪しい所が出てきた。
隣にいるカモ君や近くにあるベッドの上で雑誌を呼んでいるアスナさんとも話したけど、やっぱり色々と怪しい。

何が怪しいのかと言うと、この麻帆良が、だ。

昨日、僕がアクセラレータさんの家から帰る時に思ったように、派手な魔法を連発しておいて魔法関連の人が誰も僕たちに気づかなかったというのはおかしな話だし、エヴァンジェリンさんが暴れて噂にもなってるのに、学校側が何も動いていないのはおかしいんだ。
普通、こういうのは誰かが調査するようなことじゃないんだろうか。
吸血鬼がそんなにゴロゴロいたら困るけど、この麻帆良にはエヴァンジェリンさんが吸血鬼であることは学園長も知ってると思うし……10年以上もエヴァンジェリンさんは麻帆良にいるんだから、まず気づいていないわけがない。
真祖の強力な魔法がそうさせているのかもしれないけど、わざわざそんなことをしてまで中学生をやる理由はない、はずだ。
これは僕の想像にすぎないけど……呪いをかけられて嫌々中学校に通っていたっぽいし、そんな魔法を使う必要はない。
だから、真っ先にエヴァンジェリンさんを警戒しないのもどうかと思うんだ。
それに、どうしてその事を僕に教えてくれなかったんだろう、というのも気になる。
知らなかった訳じゃないだろうし、エヴァンジェリンさんが真祖の吸血鬼だって僕に言ってくれても良いじゃないか。
それくらい自分で調べるのが教師なんだろうか。
でも、それとこれとは危険性が違うような気がするんだけど……。
真祖の吸血鬼っていう強力な魔物がクラスにいる、ということくらい言ってくれれば良いのに。
それも疑問だ、書きだしておこう。
ノートに更に文字が追加される。

このノートは失敗ノートじゃない。

買いだめしておいたただのA4のノートだ。
疑問点を書きだして考察することで、やっぱり新しい予想というのは頭の中から出てくるし、やっぱり整理しやすい。
線を引っ張り、出てきた考えを項目ごとにまとめていく。
その様子を見て、カモ君が感心したように言った。
「流石っスね、兄貴。魔法学校首席卒業は伊達じゃねえってわけですね。俺っちはこんなコツコツなんてやれねえっスよ」
「学校にいたときは勉強してたし、要点をまとめたりしてたから。こういうデスクワークとかは得意なんだ」
えへへ、と素直に照れながら僕はそう言う。

やがてまとまったものを見ると、おかしな所が浮き彫りになってきた。

まず、真祖の吸血鬼であるエヴァンジェリンさんが拘束もされずに自由に動き回っていること。
そして、エヴァンジェリンさんが活動し、噂にもなっているのに学校側が何も対応を行っていないこと。
ただし、これについてはもしかしたら行っているかもしれないので、深く聞いてみる必要がある。
次に、僕とエヴァンジェリンさんが戦闘を行っている時に本当に目撃者がいなかったのかどうか。
いたのなら、どうして連絡したりとか助けに入ったりとかしてくれなかったのか。
実際、アスナさんと一緒に帰った時も誰も来てくれなかったし。
いなかったんなら、学校側の対応がそれほど真剣なものじゃないということがわかる。
どうして真剣じゃないのかも聞こうと思う。
恐ろしい力を持っていて、どうにもならないから放置……っていうことはないと思うし。
何にしろ、僕には圧倒的に情報が少ない。

少なすぎる。

これで現状なんて把握できやしないし、アクセラレータさんの言うように客観的に考えることもできない。
情報がないんだから、選択肢が少なすぎるんだ。
その情報を得るために、行動を起こす必要がある。
そうすれば、この奇妙な納得できないことに関しても答えが出る気がするんだ。
「カモ君は、やっぱりあの人が良いと思うんだよね?」
「おおよ。兄貴の話を聞く限り、学園長はかなり怪しい。聞いてもはぐらかされる可能性もあるしな。となると、他の人間に話を聞くしかねえ。それも、兄貴に親しくて、嘘なんて言いそうにない人間に」
さっき、もう既にメールを送っておいた。
今は忙しいって言ってたけど、多分、あの人なら相談に乗ってくれると思う。
それに、明日は休みだろうし。
タン、と僕はシャープペンシルを置く。
カモ君は僕の肩から飛び降りて、ベッドの上に寝っ転がりながら言う。
「にしても、俺っちもどーしてこんなことに気づかなかったんだろ。やっぱ抜けてんのかなあ、俺っちは」
「さあ……僕もわかんないよ」
そういえば、魔法の中には認識阻害っていう魔法もあるけど……あれを僕にかけ続けることなんてできないよなあ。
うっかりし過ぎてた、というよりは考えが回らなかったということかなあ。
アスナさんが寝がえりを打って、僕の方を向いた。
「ねえ。その人の所に行く時って、やっぱりあたしも行くことになるわけ?」
「そうなりますね。すみません、迷惑をかけてしまって……あぶっ!?」

バシッ!!と僕の顔に雑誌が激突した。

ファッション誌だったのか、青いジーパンが一瞬だけ見えた。
またコブにならないだろうかと思いながら、僕はアスナさんの方を向く。
「なっ、何するんですか!」
「そうやって謝るのはナシって言ったでしょ? この事件が終わるまでちゃんと面倒みるって私が言ったんだから、ちゃーんと付き合うわよ。ま、自分勝手に行動されるよりは良いけど」
そう言って笑っているアスナさんはやっぱり頼りになる。
パートナーや相談するカモ君がいるだけで、こんなに不安が解消されるものなんだってことがわかった。
相談できる人がいるってことは幸せなんだ、と思った。
でも、僕から顔をそむけた時にアスナさんが妙ににやけていたけど、なんでだったんだろうか?
その疑問を問いかける前に、カモ君が言った。
「しっかし、アクセラレータはもしかして全部知ってんじゃねえかな。なーんか俺っちのカンがそう言ってるんだよなあ」
「アンタのカンなんて信用できないわよ。それに、アクセラレータがよくわかんないのは前からだし……あ、それも聞けばいいんじゃない?」
「そ、それはアクセラレータさんに直接聞かないと本当の事はわからないと思うんですけど」
「兄貴、気になった事は全部聞くんじゃなかったのかよぅ。参考になるんだったら聞けばいいじゃないっスか」
「そうそう、聞いちゃえば良いのよ」
なんだか安易な気はするけど、一応わからないことだし、これを機会に聞いておくのも良いのかもしれない。

アクセラレータさんと親しいって言ってたし。

一応、最優先はエヴァンジェリンさんの情報だけど、これについても聞いてみることにする。
色々と聞くことがあるけど、これを聞くことができれば明らかになる事がたくさんあるはず。
そう思っていると、僕の携帯が鳴った。
さっきのメールの返信だった。
そこには明日の昼食の時に会うと書いてあった。
待ち合わせ場所も書いてあるし、これできちんと約束はできた。
あとは明日、そこに行って聞くだけだ。
そう思って小さく決意を固めていると、


ドパーン!!と扉がものすごい勢いで開いた。


どたどたと入ってきたのは、おなじみの運動部の皆さんだった。
「ネギくーん! 晩御飯一緒に食べよ!」
「実を言うとこのかのご飯をたかりに来ただけなんだけどね! ―――って、このかいないじゃん!!」
「アンタらまた食べに来たの!? 大河内さんもこの二人の暴走を止めるくらいしてよー!!」
「……ごめん」
まき絵さんはすっかり回復した……というか、保健室で起きた時からもう元気らしい。
その事実を知った時はホッとしたけど、元気すぎるのもちょっと。
下を見ると、中央のちゃぶ台に居座って騒ぐゆーなさんと肩身が狭そうに入口の辺りに立っているアキラさんと亜子さんが見える。
これだけ騒ぐとまた人が集まってきそうな気がする……いいんちょさんとか。
僕はラテン語で書かれているノートを閉じ、引き出しの中に戻す。
まき絵さんとゆーなさん、そしてアスナさんが話をしている光景を眺めた後、僕は梯子を下りた。
明日の事は忘れて、今は楽しみたかったから。
僕は笑いながら、その輪の中に入っていった。






~あとがき~

お待たせしました。
ようやく書けました……なかなか筆が進まなくて。
夏休みみたいに暇があればなあ、とか時々思います。
早く冬休みになって欲しい。その前にテストラッシュがありますけど。

今回は前回の翌日のネギ君、そして茶々丸襲撃事件の影響とその後についてをアクセラレータ、エヴァ、学園長で話しました。
エヴァについてはちょっとおまけっぽかったですが。
今回の事件は誰に責任があるかとか、それについてアクセラレータは言及しませんでした。
それよりもミサカの安全を最重要視したからです。
それ以外は割とどうでもいい、というのがアクセラレータの思考です。

次回はネギ君の話になりそうです。
今度こそ一週間以内の投稿を目指します。

それと、次回からタイトルにある【チラ裏から】を外そうと思います。
もうここに投稿して二か月ほどたちますし、そろそろ外しても良いかなと思いまして。


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