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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第34話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:da7c297e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/30 17:36
SIDE 一方通行

日輪が地平線の向こうに沈み、とっぷりと暮れた夜空の下、俺はコーヒー缶の入ったコンビニ袋を片手に夜中の見回りを行っていた。
俺が仮契約をしてからしばらく経ち、春休みも終わった。
そして、ネギは無事に3-A担任になったということをタカミチから聞いた。
どうやら素直に嬉しいらしく、テンションがかなり上がっていたようだ。
もう完全に自分の息子扱いだな、ネギは。
一方でミサカのアーティファクトであるが、ミサカは家に帰ってもアーティファクトをたまに起動して、辺りの索敵を行ってアーティファクトの能力の発見に努めているらしい。
何度かエヴァの別荘で戦闘による実験を行い、実戦に投入されても扱えるくらいは慣れたようだった。

……そのミサカの事であるが。

あの仮契約以来、少々態度が変わったように思えるのだ。
何が、というのは明確には言えないが、どことなく雰囲気が柔らかくなったような気がする。
それを初日は魔法陣の効果のせいだと思っていたが、どうもそれは気のせいじゃなかったらしい。
ため息をつきながら、俺は夜空を見上げた。
最初はギクシャクしていたが、それももう慣れてしまった。
なんとなくこのまま流されて行く気がして、俺はなんだか嫌になる。
もう仮契約した日から何度目になるか、数えたら馬鹿らしい数になるくらいのため息をつきながら歩いていると、

「アクセラレータさん」

後ろから声がかかった。
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには刹那が立っていた。
何故この時間に、しかもこんな所に?
俺は一つだけ心当たりがある事項に辿りつき、緩んでいた顔を引き締める。
「……襲撃か? そういや携帯の電池が切れてたな」
真っ暗な液晶を見ながらそう言うと、刹那は慌てたように首を振った。
「いえ、特に何もないんですが……あの、ご一緒してもよろしいですか?」
「中学生はさっさと帰れ。怪しいオジさんに目ェつけられるぞ」
すると刹那はすこしムッとした様子で言う。
「私はただの中学生じゃないんですが」
「俺から見りゃァただの中学生だ」
言いながら歩き出すと、もう許可は取らないとばかりに刹那は横に並んで同じように歩いてついてくる。
俺が強く言えないのは、こいつも自分の身くらいは守れるだろうと思っているからだろうか。
それともあのミサカとの仮契約以来ちょっとおかしくなってきているんだろうか。
深く考えすぎか……いや、それこそ深く考えすぎで。

頭がこんがらがってくる。

イラつきながら頭をバリバリと掻いていると、刹那が俺の様子を珍しそうなものでも見るように観察していることに気づいた。
「ンだよ」
「いえ……アクセラレータさんが悩んでいるのは久しぶりに見たので」
悩んでいる?
俺は自分の内心が刹那に見透かされている気分になり、不愉快になる。
確かにそうだが、まさか刹那に当てられるとは。
様子と表情に出過ぎていたか。
刹那は俺の表情を見て図星だと思ったのだろう、じっと俺を睨んでくる。
「さっきから何なンだ?」
「……アクセラレータさんは悩んでいる事を人に相談しないんですね」
「あァ……そういやそォだな。全部自分で自己完結しちまうな」
「じゃなくて! 人に頼れと言っておきながら自分は頼らないんですかと聞いてるんです!」
語気を強くして刹那はそう言った。
テーブルがあったら両手でバンと叩いていただろう、そんな感じだ。
俺は刹那の剣幕に戸惑いながら、少し前の自分を見直してみる。
「まァ、頼ることはあンまりねェな。頼るとすりゃァジジイかタカミチくらいだ」
なにせ、たいていのことは自分でやってのけてしまうからだ。
このごろはミサカがやってくれるし。
自分の能力だとたいていが力押しでなんとかなってしまうし、それほど悩みなんていうのもなかったのだ。

重要な俺の秘密は別として。

まあ、ジジイには頼っていることを自覚している。
戸籍や金など、借りはたくさんあるし、ミサカのことについてだって素直に受け入れてくれたことを感謝すべきだ。
タカミチは……年上だからということが大きいだろう。
俺の知り合いは2-Aに集中していることが多く、その知り合いの多くが年下か高音のように同年代の、それも女だ。
やはり異性というのはそれだけで気を遣ってしまうし、その分タカミチとは話しやすいこともある。
酒に酔えば、やはりタカミチやガンドルフィーニとかの方が話しやすいしな。

それに、一般的に考えて頼るのは年上だと決まっている。

極端な例ではあるが、ネギを頼るかタカミチを頼るかであれば間違いなくタカミチを頼るし、ジジイかタカミチかと言われれば俺はジジイを頼るだろう。
物事にもよるが、だいたい頼る時は年上だ。
「……でも、今は悩みがあるんですよね?」
「確かにそうだと言やァそォだが……」
何やら妙に刹那が粘る。
一体コイツは何を言いたいのか。
少しそれについて考えてみて、すぐに答えに辿りつく。

「俺の悩みってのを聞きてェのか?」

「……ただ言うだけでも楽になるかと思ったんです」
「俺のは言ってもどうにかなるもンじゃねェンだが……」
「でも、私は楽になりました。アクセラレータさんだって楽になるかもしれないんだったら、ちょっとでも力になりたいです」
話したら楽になると以前に言った手前、そう言われると反論し辛い。
それに、刹那の目はからかいとかそういうのではなく、明らかに真剣なそれだ。
そう言う目をされると、弱い。
俺はため息をつきながら、それでもバカ正直に話すわけにはいかない……というか異常に恥ずかしいので、話をでっちあげることにした。
軽く頭を回転させながら、俺は話し始める。
「俺は商店街の方で有名なのは知ってンな? もう有名になって長くなるから横の関係もそこそこ構築してるんだが、まァ、色々な連中とも話すわけだ。上はジイさんから、下は小学生までってな。で、そこで俺は青少年の悩みを聞いてしまったわけだ」「せ、青少年の悩み?」
ゴクリ、と刹那はそれに食いついてきた。
「生唾を飲み込むな。別にエロい話じゃねェぞ」
「ぶはっ!? いえ別にそういうことを期待してとかそう言うわけでは―――」
「続けるぞ」
「…………はい」
何故悩みを話してるというのに刹那が落ち込んでいる状況になるんだろうか。
不思議な流れだが、きっと変わる事はないんだろう。
そう思いながら、俺は話を続ける。
「とある少年A君が妹みたいに思っていたBさんにキスされたわけだ。で、A君は別にそれは事故みたいなもンだから気にしないと思ってたらしいンだが、話を聞いてるとBさんを完全に意識しちまってる。A君には昔ちょっとした借りがあってな、どうすりゃ意識しなくなるか相談を受けたわけだ」
「……意識しているんだったら、お付き合いすれば良いんじゃないんですか?」
「それも一手だが、そんなことはできねェとA君に拒絶されちまってな。他には?」
「う、うーん……座禅で煩悩を追い出す、とか?」
「さて、何年かかるンだかな」
「それじゃあ、事故と思って割り切る、とか」
「やっぱそれしかねェよなァ……」
必死に頭捻って出した答えは、俺と同じ。
あの仮契約は事故として割り切るしかない、ということだ。
ミサカは俺の見ている限り、そういうそぶりは見せていないので、俺がウジウジ悩み過ぎなのだろうか。
割り切るのも大切だが、やっぱり割り切れないことは存在するのでありまして。

やはり刹那の言う通り、割り切るしかないか。

「刹那と意見が同じってことは、だいたいそんな感じなんだろォな」
「参考になりましたか?」
「まァな。……っつゥか、テメェにこういう話をしてまともな返事をするなンざ思ってなかったンだが。やっぱ刹那でも女の子してンだな」
「私だって女です! アクセラレータさんよりそういうのはわかると思いますけど」
「どさくさに紛れて言うじゃねェか。剣の人生じゃなかったのか?」
確かに女心はわからんが、刹那に言われたくない気がする。
これが超や神楽坂であればちょっと納得はいくのだが。
俺はとりあえずミサカについては割り切ることにし(というかそれについて考えれば考えるほど泥沼になると思い)、話を変えることにする。
「なァ、そォいやなンでテメェは―――」
―――こんな所に、という疑問を言う前に、視界に面白いものが映った。


星があまり見えない夜空に、流れ星のように一筋の光が見える。


あんな遅い流れ星はない。
とすると、あれはおそらく茶々丸だろう。
こんな時間に飛んでいるというのは珍しい。
俺の視線に気づいたのか、刹那も夜空を飛ぶ茶々丸を見つけたようだった。
「あれは、茶々丸さんでしょうか?」
「多分な」
そう言っていると、急激に茶々丸がスピードダウンした。
まるで燃料切れのそれみたいにフラフラと高度を下げ、向こうの……公園の方に降り立った。
なんというか、その様子はとても墜落したっぽかった。
「……行くぞ」
「……はい」
今は刹那がどうしてここにいたかということよりも、茶々丸がどうしてあそこに着陸したのかが気になる。
俺は見回りのコースを強引に変更し、その着陸した公園へダッシュで向かった。
やがて公園に辿りつくと、そこでは下着姿のエヴァが茶々丸のネジを巻いているところだった。
エヴァはブツブツと見る人が見れば危ない感じに呟いているし、茶々丸はまったく動かない。
なんとなくオチは読めたが、とりあえず俺は二人に話しかけることにする。
「よォ」
「おわあっ!? って、アクセラレータか!?」
どうやら俺が迫っていたことに気づかなかったらしい。
何やらブツブツ言っていたようだし、何か考え事をしていたのだろうか。
エヴァが勢いよく振り向く。
そして俺を確認した後、その目は刹那の方に向いた。
「桜咲刹那もいるのか……ふん、二人仲良く夜のデートか?」
「ぶふっ!?」
そこで刹那が吹きだす。
この程度で吹くか、まだまだ甘いな。
俺はそれに動じず、エヴァに不敵な笑いで返す。
「いや、下着姿で徘徊する幼女が見えたンでな。広域指導員という立場上見逃すわけにはいかねェンだよ」
「誰が幼女か!? 服を脱がされたのも理由がある! 好きで下着姿になってるわけじゃないわ!!」
「露出するのが快感だっていう困った性癖があるって理由だろ? あァあァわかってる。言い訳は署で聞くからよ」
「うおっ!? 首根っこを掴むんじゃない!! 離せーッ!!」
じたばた暴れるエヴァだが、反射がある俺には無意味である。
口で俺に勝とうなんてエヴァには無理だ。
俺が暴れるエヴァを無視して茶々丸の方を向くと、茶々丸は膝をついたまま挨拶をしてきた。
「こんばんは、アクセラレータさん、桜咲さん。このような姿で挨拶することになってしまい、申し訳ありません」
「いや、それはいい。……その状態は燃料切れか? それともエンストか?」
「魔力切れです。燃料切れが近いと思われます」
さっきから動かないのはそのためだったらしい。

節約モードとかいう奴だろう。

どうやらその茶々丸の台詞から想像するに、空を飛んでいると茶々丸の燃料が切れてここに不時着したとのこと。
空を飛ぶんなら燃料確認くらいやっておけよ、と思うのだが……まぁそこはうっかりだろう。
俺は抵抗するのをやめてぷらーんとなっているエヴァを離してやると、エヴァはこちらを一睨みして鼻を鳴らした後、茶々丸の頭についているネジを巻き始める。
ぎーこぎーことやけにクラシックな音をたてるそれを観察していると、刹那が少々硬い声で言った。

「エヴァンジェリンさん、ネギ先生とはどうなったのですか?」

ここで、俺は疑問に思う。
エヴァンジェリンとネギ。
そして夜。
見上げると、今日は満月だった。
そして空を飛ぶ茶々丸。
それらを総合して、ああ、と思いだす。

今日はネギがエヴァンジェリンと初めて戦った夜だ。

何やら原作ではカッコつけていたが、あの後茶々丸が魔力切れで墜落してたのか。
いや、原作では無事に帰っていたのかもしれない。
……本当のところは誰にもわからないんだが、今起こっているこれが現実だ。
エヴァは刹那に聞かれると、ふんと鼻を鳴らす。
「引き分けだ。今のままでも敵じゃないが、邪魔が入ったのでな。くそっ、この私を蹴るなんて人間は何百年ぶりだ……?」
ネジを巻き続けながら、エヴァはぶつぶつと呟き続ける。
神楽坂にやられたのがよっぽどムカついたんだろうな。
何やら怨念みたいな黒いオーラが出ているが、見なかったことにする。
「エヴァンジェリンさんが短絡的な吸血行動に出るとは思えなかったので、静観させてもらいましたが……ネギ先生と戦ったのはどうしてですか?」
それに対して、エヴァは意外そうな顔をする。
「それを聞くためにここに来たのか?」
「お嬢様を寮まで見送ってから、事情を聞こうと思いまして……私も仕事があります。お嬢様も巻き込まれる可能性がある以上、それについて聞くのは私の義務です」
「相変わらずクソ真面目だな、桜咲刹那。……まあ、そのこともとりあえず家に帰ってからだ。私も露出狂じゃないのでな」
プシュー、と蒸気音を立てて再起動する茶々丸の肩に飛び乗りながら、下着姿のエヴァはそう言った。
そして、こちらに振り向く。
「貴様も来るか? 遠回りじゃないだろう?」
「……まァ、行くには行くか」
自分でも良く分からないことを言っている自覚はある。

なんだかやけに思考が回らない。

なんでだろうか、ということをのんびり考えると、ただ単に眠い事に気づいた。
今日は非常に眠い。
エヴァの家に泊まることも視野に入れることにする。
あの家のソファー、高級なのか異常に寝心地が良いんだよな。
頭を半分寝かせたまま行動するということにもう慣れていた俺は、自然と足を動かしていた。






SIDE 桜咲刹那

その後、茶々丸さんはエヴァンジェリンさんを肩に乗せたまま飛んで、エヴァンジェリンさんの家に直線距離で向かっていった。
当然私たちも向かうのだが茶々丸さんたちが直線距離で家に向かっているため、茶々丸さんたちの方が速い。
こっちは回り道をして向かわなければならないのに。
というのも、他の学生寮があって直線距離ではなかなか進みづらいこともある。
その回り道を、アクセラレータさんはポケットに手を突っこんだまま、欠伸をして高速移動をしていた。
私も高速移動のときは少し周りを気をつけるのに、アクセラレータさんは完全にリラックスして移動をしている。
時折障害物を跳躍して避けることから辺りを把握していることは確かみたいだが、相変わらずその常識外な性能には呆れを覚える。
なんかすごい能力を持ってるから、もう『アクセラレータさんだから』という理由で納得できた。

……それってどうなんだろうか。

そんなことを思って苦笑いしながら、私はエヴァンジェリンさんの自宅に辿りつく。
そういえば、私はエヴァンジェリンさんの家に来た事はない。
真祖の吸血鬼の家……どんな家なのだろうか。
見た目はログハウスだが、中身がどうなっているかは窺い知れない。
そう思っていると、アクセラレータさんがズカズカと呼び鈴も鳴らさずに入っていった。
中からは『うわっ!? おいアクセラレータ、ノックくらいしろ!』という怒声が聞こえてきた。
「あァ、悪ィ」
ダルそうに返事をしたアクセラレータさんは、そのままソファーにどっかりと座った。
前々から思っていたんだが、アクセラレータさんは夜になるとちょっと思考力が落ちる気がする。
ソファーに座って軽くうとうとしているアクセラレータさんは、なんだかちょっとかわいかった。
さて、エヴァンジェリンさんの家がどんな家かと思っていれば人形だらけだった。
私はあまり見たことがない西洋人形やぬいぐるみなどを見て意外に思いながら、再びアクセラレータさんに視線を戻す。
ソファーに座っているせいでその周りにある人形やぬいぐるみにアクセラレータさんが囲まれていて……うーん、なんというかこの世の光景とは思えないような気がする。
いや、不気味というわけではなく、なんとなくそれが眠そうなアクセラレータさんにマッチしていて、彼に似つかわしくないかわいさを強調しているのだ。

思わずくすくす笑ってしまった。

普通なら『あァ?』とか睨んできそうだが、アクセラレータさんは眠いのか反応しない。
いつもはこんな姿を私に見せないのだが……ここがエヴァンジェリンさんの家だからだろうか。
私が玄関で立っていると、アクセラレータさんに茶々丸さんが近付いていった。
「アクセラレータさん、紅茶ですか? それともコーヒーにしますか? それとも―――」
「コーヒー」
「……かしこまりました」
茶々丸さんが頭を下げて台所の方に向かっていく。
何らかのリアクションが欲しかったのか、どこかがっくりと項垂れているように見える。

あのからかい方、どことなくミサカさんに似ていたような……。

すると、フリルのたくさんについた服を着ている、西洋人形のような姿になったエヴァンジェリンさんが私の方にポツリと呟いてきた。
「……似てきたんだ。愚痴を言うつもりはないがな」
その様子を見て、エヴァンジェリンさんもちょっと苦労してるのかな、と思った。
私は一言断って、テーブルに近い椅子に座る。
エヴァンジェリンさんはコーヒーの香りが漂ってくる台所を見た後、眠そうにしているアクセラレータさんを見た。
「しかし、貴様は相変わらずコーヒーを飲むんだな。たまには紅茶を飲まんか?」
「コーヒーの方が俺に合うンだよ」
そっけなく言いながら、アクセラレータさんは欠伸をしていた。
今思えば、アクセラレータさんがついてくる意味はなかったんじゃ、と思った。
何か疲れてるみたいだから帰ってもらった方が……。

「ほっとけ」

その思考を読んだかのようにエヴァンジェリンさんが言った。
「奴のことだ、コーヒーを飲んだら帰るか、そこで寝るだろう。ああなった奴はほっとくに限る」
慣れたように言うエヴァンジェリンさんを見て、こういうことは多々あったんだろうな、と思う。
茶々丸さんが台所でコーヒーを淹れている間に、私とエヴァンジェリンさんは何故あそこでネギ先生と戦っていたか、その理由を知ることができた。
どうも、エヴァンジェリンさんと学園長の間に密約みたいなものがあったらしい。
そして学園長からネギ先生を鍛えるように、という感じの事を言われているらしい。
ただし、殺さないように、とも言われている。
それを逆手に取る形で、エヴァンジェリンさんが麻帆良に縛られている呪いを解くカギであるネギ先生の血を吸おうとしているらしい。
ざっくりと説明されたから詳しくはわからないが、概要を説明するとこんな感じだ。
真祖の吸血鬼であるエヴァンジェリンさんが麻帆良にいるのは呪いがあるからとは聞いていたが、それを解除する鍵がネギ先生の血とは……先生も災難だな、と思う。
その間にアクセラレータさんはコーヒーを受け取って、ちびちびとそれを飲んでいた。
ちらりと見ると、完全に目は寝ている。
というかもう、寝ながらコーヒーを飲んでる感じだ。


「アクセラレータが気になるか?」


と、ここでエヴァンジェリンさんはドキリとするようなことを言ってきた。
複数の意味にとれてしまい、思わず私は慌ててしまう。
「あ、いえ、その、ああいうアクセラレータさんは初めて見ますから……」
「意外か?」
「はい、意外でした」
立て続けの質問に、私は素直に答えてしまっていた。
少しの間、沈黙。
アクセラレータさんが背伸びをした後、ぐったりとソファーに体重を預ける音が聞こえてくる。
その間、エヴァンジェリンさんは紅茶をすすっていた。
エヴァンジェリンさんの今の発言の意図は不明だが……何か探ろうとしている口調だった。
私の何を探ろうと言うのだろうか。
カップから口を離すと、エヴァンジェリンさんは短く息をつく。
そして、にやりと笑いながらこう言った。

「百獣の王も、こうなってしまえばただの猫だ」

あ、確かに。
エヴァンジェリンさんの例えになんとなく納得してしまった。
いつもダルそうに、そして眠そうにしているが、いざという時はその圧倒的な力で麻帆良を守る。
麻帆良を群れと仮定すると、ライオンのオスに少し似ている気がした。
ソファーに思い切り体重をかけて寝ているアクセラレータさんからはそんな覇気は見えないのだけれど。
ぐーぐー無遠慮に眠っているアクセラレータさんの方を見ていると、エヴァンジェリンさんがその場から立ち上がった。
「私はもう寝る。魔法を使って疲れたからな。お前もそろそろ帰れ」
「あ、でも、アクセラレータさんを起こしてから……」
「無理だ。コイツには反射がある。物理的接触は不可能だぞ」

そういえばそうだった。

ソファーに寝転がって寝息を立てているアクセラレータさんを見て、本当にその反射と言うのが働いているのか疑問に思う。
これだけ無防備ならその反射というのも無効化されているんじゃないんだろうか?
という素直な思いと好奇心から、そろりそろりとアクセラレータさんに近づいていく。
「もの好きな奴だな。まぁ、好きにするといい」
そう言ってエヴァンジェリンさんは階段を軋ませて上っていった。
エヴァンジェリンさんの行動理由はおそらく自分を中心にしているだろうから、単純に私が何かした結果に興味がないんだろう。

……本当に眠いだけなのかもしれないが。

エヴァンジェリンさんの事は気にしないことにして、私は再びアクセラレータさんに向き直る。
彼女の言っている事を信じないというわけではないが、とりあえず自分の目で見ないと信じない性格なのだ、私は。
そのままアクセラレータさんに近づいて、私は寝ているアクセラレータさんの顔を覗き込む。
いつも目があいていると凶悪そうに見えるその顔は、寝ているせいかいつもよりも子供っぽく見えていた。
年上に子供っぽいなんていうのは失礼かもしれないが、本当にそう思う。
あのひねくれた口調や態度じゃなければまた違う印象だっただろうに……アクセラレータさんはもったいないことをしている。
「アクセラレータさん、起きてください」
そう簡単に起きるとは思えないが、呼びかけてみる。
だが、依然としてアクセラレータさんは眠ったまま。

まあ、当然か。

次は本当にその反射が働いているのかどうか確かめる意味も含めて、肩を掴んでみることにする。
肩に触れてみるが、なんだか掴んだ気がしない。
少し力を入れてみると、何やらとても硬いものを掴んでいる感覚になる。
とてもではないが、人の肩を掴んでいる感触ではない。
「これが反射か……鬼の棍棒を素で受け止めて砕くんだ、これくらいは当たり前か」
掴んでいるのかどうかわからない感覚のまま、アクセラレータさんの肩を揺すろうとして、


不意に、引き寄せられた。


「ッ!?」
突然の事態に混乱する私。
いや、もちろんアクセラレータさんが私を引き寄せたわけじゃない。
寝ぼけて誰かを抱き寄せるなんて展開、普通はあり得ないだろう。
肩を掴んで揺すろうとした所、アクセラレータさんが異常に重かったのだ。
アクセラレータさんが揺れないから、私の方がアクセラレータさんに引き寄せられてしまった。
単に言えばそんなことなのだが、まさかこんなことになるとは思わなかった。
イメージとしては、重い家具を片腕で引き寄せようとして自分が引き寄せられた感覚だ。
細身のアクセラレータさんがこんなに重いなんて。
そう思う間もなく、私は壁に手をついていた。
ぼふっ、と膝がソファーに乗る。
開いた目からは、異様に近いアクセラレータさんの顔。

それを見た瞬間、私は顔が一気に紅潮していくのがわかった。

自分の今の体制は、ソファーに体重をかけて寝ているアクセラレータさんをまたいで膝をついている状態だ。
見る人が見れば……というか普通の人が見れば誤解されること間違いない状況だ。
それを自覚した瞬間、私は慌ててその場から離れようと思った。
エヴァンジェリンさんに見られたらなんと言えばいいのか―――。
離れようとして、壁についていた手がずるりと滑った。
いつのまにか手汗をかいていたことに驚きながら、私はそのまま重力に従ってアクセラレータさんの体に寄りかかった。
寄りかかってしまった。
いや、触れているわけではないが、かなり接近してしまった。
それこそ、額と額が触れ合うくらいの距離まで。


ドギッ!!と私は心臓が破裂しそうなくらいの鼓動を耳の奥で聞いた。


「~~~~~ッ!?」
悲鳴を上げなかった自分を褒めたいが、今の自分はそれを考えられるほど思考に余裕がなかった。
今の私は目の前の出来事を認識することで頭がいっぱいだったのだ。
目の前にアクセラレータさんがいる。
自分はとてもアクセラレータさんに接近している。
どうしよう。
その三つのことが私の頭の中でぐるぐると回っていた。
「あっ、あ、わわっ……!?」
口からは言葉にならない声が漏れるだけ。
それはとても掠れていて、こんな静かな空間でなければすぐに掻き消えてしまうような音量だった。
その声で現実を自覚して、私は思考を現実に持っていこうとして、


アクセラレータさんの吐息が、唇に触れた。


思ったよりも暖かいそれが触れて、私の思考は再び真っ白になった。
思考だけが止まっているのに、感覚だけが鮮明に感じる。
唇が、再びアクセラレータさんの生々しいほど暖かい吐息を当てられ、それを伝えてくる。
目が、眠っているアクセラレータさんの無防備な顔を伝えてくる。
耳が、その奥でなり響く心臓の音を伝えてくる。
舌が、ごくりと飲み込む唾液の感触を伝えてくる。
鼻が、男の人独特の汗をかいている時のようなにおいを伝えてくる。
五感全てが私の脳にそれらを伝えてくるが、私はとてもではないが全てを処理しきれなかった。
顔と頭が熱くなる。
意識が遠のいていく。
このままアクセラレータさんの近くで一緒に眠っても、というバカな考えが浮上してくる。
息が荒くなった。
目が潤み、もしかして自分は興奮しているのではないかと自覚する。
すると、体が流れていった。
アクセラレータさんの頭のすぐ横にある壁に手をついていたので、僅かにあった体と体の隙間がなくなっていく。
力が抜ける。
そのくせ、震えて強張る。
突然膝の力が抜けて、立てていたそれが折りたたまれる。
ぺたん、とアクセラレータさんの足の上に座った。
背中に背負っている夕凪が、床に当たって小さな音を立てる。
それが何の音なのかわからずに、私は興奮したまま彼の鎖骨の辺りに額を寄せて―――。



「こういうのは無粋かもしれませんが、一応ここはマスターの家ですから他でやっていただけませんか?」



即座に気を発動してできるだけ最速でアクセラレータさんから離れた。
瞬動気味になってしまったが、止まれたから問題ない。
いや、それより、と私はお盆を抱えて立っている茶々丸さんの方を見た。
まるでブリキ人形のように無骨な仕草で。
「…………み、み、見て、ましたか?」
「はい。そちらに向かって歩いていく所からずっと」

全部だった。

思わず気絶しそうになったが、それをどこからか沸いてくる気力で意識を強引に引き戻す。
ガクガクと崩れ落ちそうになりながら、私は茶々丸さんに近づいた。
「お願いします今見た事は忘れてくださいッ!! いや、もう本当に!! 私の黒歴史として封印させてくださいッ!!」
「良ければお布団を用意しましょうか? この家にはそこそこの量の布団がありますから」
「人の話聞いてますか!? って動かないでください!! 布団なんていりませんから!! 私帰りますから!!」
「痛いです刹那さん関節が壊れます」
「あああああ死にたい!! なんで自分はいつもこう、なんというかこう、集中すると我を忘れてしまうんだ!!」
「刹那さん、私もからかったのは謝りますから少し力を弱めてくれませんか? またハカセの世話になってしまう事態になります。―――今見た事は黙っておきますから早く離してください。破損します。いいかげん私の腕が破損します」
ミシミシギシギシと私の握力が無自覚に茶々丸さんの腕を握り潰そうとした時、


「うるせェ」


バゴウッ!!と私と茶々丸さんが吹き飛ばされた。
弱かったので少し吹き飛ぶくらいですんだが、結構痛かった。
私が目を開けてソファーの方を見ると、ゆらりとアクセラレータさんが立ちあがったところだった。
「クソッ、ギャーギャー騒ぎやがって……完全に目が覚めちまったじゃねェか」
ゴシゴシと目をこするアクセラレータさんを見る。
やっぱり起きたら悪人面だと思いながら、私はさっきのアクセラレータさんを同時に思い出して赤面する。
そんな私を気にすることもなく、アクセラレータさんは玄関に向かう。

「帰る。コーヒー、ゴチソウサマ」

そう言い残すと、本当にアクセラレータさんはそのまま出ていってしまった。
私は慌てて玄関の扉を開けたが、既にそこにはアクセラレータさんの姿はなかった。
私は一つため息をついて、茶々丸さんに近寄る。
「さっきの話、本当ですね? 本当に話さないでくれるんですね?」
「今のショックで忘れました……ということにしておきます」
それにホッと一息ついて、私も帰ることにした。
最後に茶々丸さんにもう一回念を入れて釘を刺しておき、私は外に出た。


ひやりとした夜の風が、私の熱くなった体を冷やす。


私の五感はいまだにあの感覚を鮮明に思い出すことができる。
高鳴る胸は抑えられず、自然と息は荒くなった。
どうしてこんな風になるのか、私はそれを考えて―――。
「……男の人にあんなに近づいたのは初めてだから……なのか?」
他人に聞いてみるわけにもいかないので、私は首を捻って眉根を寄せていた。
だが、もともと私はバカだ、考えるよりは行動する派なので、そういう思考はさっさと取り払うことにした。
満月は、いまだに夜の麻帆良を照らしている。
その光を浴びている間、私の異常な鼓動は鼓膜の裏で鳴り響いていた。






SIDE 一方通行

エヴァの家で何やら刹那と茶々丸が騒いでいたのをブッ飛ばした後、俺はすぐに寝入ることができた。
そして朝に起きるわけだが、どういうわけかいつもよりも30分も早く、しかも自力で起きることができた。
いつもよりも少し早く起きれたのは、深く短く寝入ることができたかだろうか。

偶然なんだろうが。

帰ってシャワーを浴びることがなかったため、俺は寝起きのぼーっとする頭のままシャワーを浴びた。
ミサカが『あ、アクセラレータがいつもよりも早く起きているなんて……とミサカは目の前の事実に唖然とします』とか言っていたが、とりあえず無視した。
俺は朝食を食べてミサカを見送り、そして午後四時くらいまでいつもの通りに過ごした。

トレーニングしたり、寝たり、寝たり、食べたり、寝たり。

この頃寝過ぎだな……やはり寒いと眠い。
そう思っていると、携帯が鳴った。
番号を見ると、ジジイだった。
「俺だ」
『おお、ワシじゃ。すまんがアクセラレータ君、学園長室まで来てくれんかの? ちょっと話したい事があるんじゃ』
というわけで、俺はジジイの所に向かう事になった。
下校している生徒たちの間を通りながら、中等部に向かう。
特に不審者と疑われることなく、俺は学園長室に到着した。


その中にはタカミチ、ガンドルフィーニ、神多羅木、そして呼び出した張本人であるジジイがいた。


その面子を見て、なるほど、と納得する。
と同時に疑問を覚え、俺は神多羅木の方を見た。
「おい、刀子はどォした? アイツも来るンじゃねェのか?」
「葛葉は仕事の方が忙しくてな。今はそちらの方に集中している」

……教師と魔法先生の両立も大変だな、と思う。

俺がジジイの前に進み出ると、ジジイはここにいる全員を見回して言った。
「さて、と……麻帆良の魔法先生や広域指導員である君たちに集まってもらったのは他でもない。連中が襲撃してくる停電時の話じゃ。毎回のことじゃが、よろしく頼むぞ」
要するに、今回の招集は停電時の麻帆良防衛のこと、ということだ。
麻帆良の全ての電力を遮断する停電は、同時に麻帆良を危険にさらす事を意味する。
それは麻帆良大結界が消失して妖怪などといった物の怪が出現しやすくなると同時に、麻帆良が暗闇になる。
その暗闇に乗じて乗り込んで来る敵は膨大な数に上るのだ。
街灯があるとないだけで明るさが異様に違うため、物量攻撃をかけてくるとこちらも索敵を漏らす可能性が高くなるため少々まずい。
特に去年は巨大な鬼がやってきたりと、例年よりも戦力が強化されている可能性が高い。
おそらく俺と言う存在がいるからだろうが、それだと困る。

刹那や龍宮ほどの実力者でも倒せない鬼が出現するということは、それは十分に囮になり得る。

俺やタカミチであれば時間はかからないが、その場合麻帆良の最強戦力である俺達が一時的にではあるが動けない事を意味する。
その隙を、敵はついてくるだろう。
前回はかつてない物量作戦で俺とタカミチを鬼の雑魚掃討に集中させ、結局は刹那と龍宮が守る防衛ラインを突破された。
一応失敗に終わったわけだが、危ないと言えば危なかったのだ。
「学園長。わざわざそのことだけのためにに私たちを集めたわけじゃないでしょう?」
「ここに集めたのは攻めるための策を決めるためだろう」
「まあ、そういうことじゃ。一応考えては来たんじゃがの」
そう言って、ジジイは大きな紙を取り出し、開く。

それはこの麻帆良全域の地図だった。

それからの説明を聞くと、ジジイは去年の失敗を踏まえ、敢えて南を手薄にしてそこに敵を集中させ、一気に東と西から南に向けて進軍し、殲滅すると言う作戦を取ることにしたようだ。
何故南なのかというと、南が女子中等部から一番遠い方角であり、そこから攻めてくれたほうが陰陽師達の目標である近衛このかやジジイがやられる心配が少ないからだ。
よって、北には神多羅木と刀子が配置され、東西には俺とタカミチ、ガンドルフィーニが配置される事になった。
南には刹那や龍宮を始めとする生徒連中で構成される―――ということにしておく。
実際には南はジジイが目を光らせ、更に俺が配置されることになっており、危険な状態になり次第俺が突撃して一挙に敵を殲滅する手はずになっている。

生徒たちを囮に使う形になるが、俺たちはそれに異論をはさまない。

いざとなれば俺がいるし、この戦いは魔法生徒が存分にその能力を発揮することができる場所でもあるのだ。
高音や愛衣は言うまでもなく、刹那もこの戦いで実力を向上させている。
そう言う意味では関東呪術協会には感謝しなければならないだろう。
前回は甘く見て刹那を大怪我させてしまったが、そうならないための俺である。
俺も友人たちが死んだら流石に嫌なので、その辺りは賛成していた。
南が生徒ばかりで構成されているとして、敵がそれを罠だと深読みして南以外を攻めてくればそれはそれで僥倖である。
教師連中の強さは生徒とは比較にならないし、例え百体を超える鬼達が相手でも一歩も引かない強さは持っているのだ。
いざとなれば俺が援護にかけつけるが、それも心配ないだろうと思う。
だが南の戦力がやはり心配なので、と言って、ジジイは俺を見て来た。
「ミサカ君の実力調査はいつにするかの?」
前もって決めていた事なので、俺は驚かない。
少し思考を回し、答える。
「こっちの都合にもよるが、だいたい今日か明日くらいが妥当じゃねェか?」
「そう言うと思ったわい。ミサカ君の都合は?」
「俺が見回りに出るころには自分の部屋に戻って寝るのがミサカの予定だ。どうせ暇だろォよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
そこで、ガンドルフィーニが口をはさむ。
「ミサカ君が出撃するのですか!?」
「うむ。これは前々から決まっていたことでのう。今までナイショにしてたんじゃ」
げふん、とジジイは咳払いして続ける。
「ミサカ君の力はかなりのものと聞いておる。実際、彼女が麻帆良にやってきたときは油断していたとはいえ魔法先生を一撃で気絶させた。アクセラレータからもその実力については御墨付きじゃ。のう?」
「まァ、そォだな。鬼如きに後れをとることはまずしねェだろ」
なにせ、その鬼と何度も戦ってるからな。

それも明らかに関西呪術協会の連中が召喚する鬼よりも格上の鬼と。

勝った事は一度もないが、あの電撃とヘルメットゴーグルがあればまず負ける事はないだろう。
俺の断言にガンドルフィーニと神多羅木は驚いた表情をしたが、タカミチは納得の表情をしていた。
遠距離からの雷撃による狙撃。
あんな器用なことをやってのける上に、俺の風の捕縛から脱出する時に使った超電磁砲を目の当りにしているタカミチにとって、ミサカがとんでもない戦闘力を持っているのはわかっていたからである。
「具体的にどれくらいの戦闘能力があるのかわからないが……その辺りの説明もしてくれるのか?」
「実力調査で判明させる。わざわざ自分の能力の説明なンざしねェよ」
他の魔法先生には各々伝えることにして、俺達は解散した。
この作戦は配置を傍受される事に意味がある。
魔法先生が少ない南を攻めるように誘導していることに気付かれることが前提なのだ。
その上で罠にはめるのだから。
まあ、ミサカの強さだと他の魔法生徒の出番がなくなってしまうかもしれないが。

自慢しすぎか?

やっぱ自分は過保護なのか、とか思いながら、俺は中等部を出て歩いていく。
空には雲はなく、今日の夜は晴れそうだった。






~あとがき~

今回でようやく桜通りの吸血鬼編突入、となりますか。
なんか長かったなあ、としみじみ思います。

久しぶりに刹那を書いた気がします。
この頃ミサカばっかり書いてたような……。
そして最後は戦闘準備。
次回はミサカの実力判断です。


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