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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第3話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/21 12:48
SIDE一方通行

覚醒して鏡を見ても、俺は一方通行のままだった。
何故か身体がもっと寝ろ!!今すぐ寝ろ!!さあ寝ろ!!というダルさを脳に向けて発信してくるが、俺はそれを拒絶するために冷水で顔を洗った。

……冷た過ぎるだろ!?

顔を洗ってから数秒硬直し、俺は慌てて顔を拭いた。
心臓に悪いな、こりゃ。
寝覚めが悪い体というのはどうも馴染まない。
一方通行は低血圧なのだろうか。
ちなみに『俺』は毎朝七時に起きる優良な学生だった。
あの時は楽に起きることができたのに、この身体はこう言う時だけは不便だ。
体に纏わりつくダルさを振り払いながら、俺はベッドに腰を下ろし、テレビをつけた。
チャンネルは僅かしか通っていない。
他の番組はくだらなかったので、結局ニュースを見ることになった。
意味もなくそれを流し見ていると、腹が鳴った。

ダルくても腹は減る。

なんとも一人暮らしには不便な身体だろうか。
俺はそう思いながら、冷蔵庫の中を見ると、中は空っぽだった。
せいぜい、ペットボトル1本の水が置かれているくらいだ。

どないせーっちゅうねん。

俺は二リットルペットボトルを片手で持ちながら呆然としていると、傍にある食器棚に目をやった。
その下はタンスになっており、その中もくまなく漁ってみると、カップ麺がいくつかある事が判明した。
賞味期限は切れてないようだ。
何故か新品同然だったヤカンを取りだし、それにペットボトルの中の水をどぼどぼと適当に注ぎながら火をつける。
電気ではなく、ガスだ。
俺の中の一方通行の知識はガス式は今時珍しいと言っているが、今は刹那が麻帆良にいて行動している事からおそらく二〇〇一年から二〇〇三年だと思われるので、珍しいのではなくこちらではこれが当然なのだ。
おそらく、と推測しているのは、今が何年何月の何日なのか、昨日聞くのを忘れたのだ。
学園長達と対面していた時ならともかく、刹那や刀子と一緒にいた時なら間違いなく聞けただろうに。

我ながら間抜けである。

ニュースで確認してみるか、とニュース番組に視線を移してみると、今は二〇〇一年の十一月九日。
肌寒くなる頃だ。
俺は長袖一枚とトランクス、そして長ズボンという十一月前半にしては軽装気味なスタイルだ。
これはまず学園長から金でも借りて服を買い揃えなければならないだろう。
警備員として雇うとか言っていたから、前借りで。
ピョー、という想像していたよりも腑抜けた音でヤカンが沸騰を知らせてきた。
俺はそのヤカンを手に取り、カップ麺に注ぐ。
御丁寧に割り箸や取り皿もあったので、それらで蓋をした。
三分はニュース番組の時計を見て計った。
寒くなりつつあるこの季節で暖かいカップ麺は何故か心に染みた。
単身赴任のサラリーマンってこんな感じなんだろうな、と思う。
まさかこの歳でサラリーマンの気持ちを理解するとは思わなかったので、なかなかに切ない気分になる。
ハァ、とため息を一つ付き、俺はズルズルとカップ麺をすすった。
早くも望郷の念が押し寄せて来るが、数あるネギまSSのようにどーせ帰る事はできないだろう。
しかも帰れたとしてもおそらくそこはとある魔術の禁書目録の世界。
どちらかというとネギまの方がマシだ。
猟犬部隊やら『ヒューズ・カザキリ』やら『ドラゴン』やら……アレイスターの計画には関わりたくないし、この世界で一方通行の反射を無効化できる奴というのはそういないだろうからだ。

神楽坂明日菜の魔法無効化能力は通じるのか、少々試してみたい感じはするが。

どうせ帰れないのならせいぜい楽しもうと思うが、学園長などにあれほど警戒されていては楽しむ事なんざできやしない。
それに、既に監視も動いているようだ。
窓の外……いや、窓の傍から視線を感じる。
スナイパーで俺が知っているのは龍宮真名だが、彼女はこんな面倒くさい長期任務を請け負うとは思えない。
魔法か何かでの長距離監視だろう。
ふと、視線が時計に移る。
現在時刻、午前九時六分。
十二時間以上も寝てたのかよ、と俺の睡眠量に呆れていると、突然電子音が携帯から響いてきた。
なんだなんだと思うと、メールの着信であった。

学園長だ。

内容は、俺のいるアパートからじゃ場所はわからんだろうから地図を送るとのこと。下を見れば確かに簡略的な地図が載っていた。
メールを返すのは面倒なので、俺は学園長室で挨拶する事に決め、後三十分ほどはゆらりと過ごそうと思い、淡々と流れていくニュース番組を眺めていた。






SIDE どこぞの魔法先生

「こちらアルファ。目標、起床しました」
『こちらベータ。了解、引き続き監視せよ―――ってやめねえかこの口調?』
監視魔法によりアクセラレータと名乗る奇妙な男を監視して報告する。
それが私の任務だ。
それ以上でも以下でもない。
ただやることを行うだけだ。
通信相手が何か言っている気がするが、聞こえない。
報告する時にこの口調は普通だろう。

まさかそれ以外になにかあるというのか!?

「……むっ」
心の中で叫びながら監視を続けていると、低血圧なのかフラフラと洗面所へ行き、『のわァ!?冷水じゃねェか畜生ォ!!』という怒声が聞こえてきたのでおそらくお湯ではなく水で顔を洗ってしまったのだろうと思う。
だろう、というのは洗面所辺りまでは私も監視できないからだ。
しかしこの時期に水で顔を洗うとは……ショック死するぞ。
更に監視を続けていたが、やがてアクセラレータはソファーに寝転び、何やらニュースを見始めた。
……こっちは寒い早朝でさっさと起きて監視なんていうクソ暇な任務についたってのに良いゴミブンですね。

グシャア!!と嫉妬と共に眠気覚ましの缶コーヒーを握り潰した。

血のように滴るコーヒーを手を振って飛ばしながら監視を続けていると、向こうはカップラーメンを食べ始めた。
何やら残業で疲れた親父みたいな雰囲気を発しているが、どういうことなのだろう。
……ああ、そういえば怒りに我を忘れていたが学園長に連絡を取らなければならない。
何やら学園長がアクセラレータにメールをするとか。
そういえば私も久しく友人たちにメールを送っていないことに気づく。
高速で携帯をいじりながら、
「こちらアルファ。現在メール送信中です、どうぞ」
『こちらベータ。いい加減そのフレーズが気にいってんのは認めてやるからいちいち報告すんのは―――ブホァ!?テメェなんてもん送りつけてきやがる!?っつか何時撮ったんだコレ!?どうぞ!!』
「こちらアルファ。黙秘権を行使します、どうぞ」
『こちらチャーリー。詳しく事情を聞きたいでゴザル、どうぞ』
「こちらアルファ。具体的には教師のくせに女子生徒と喫茶店でデート中な映像でゴザル、どうぞ」
『ふざけてんじゃねーッ!!ありゃあ向こうから誘われて仕方なくだな―――っつか誰だチャーリーって!?なんで自然と念話に入り込んできてるわけ!?誰だ念話傍受してるクソ野郎は!?』
『こちらチャーリー。むしろ画像をいただきたく候、どうぞ』
「こちらアルファ。だいたいその口調で誰か読めましたがとりあえず送っちゃったりしてみます、どうぞ」
『……こちらチャーリー。あまりのリアルな画像に失神寸前です、どうぞ』
『あァああああああああああああッ!?』
少しからかいすぎたか。
まあいい、別にいつものことだしな。
余計な時間を食ってしまったなあ、とくつくつ笑いながら、私は絶叫するベータの声をBGMに学園長へメールを送った。






SIDE 一方通行

十時ちょっと前。
徒歩で辿りついたのは良いものの、女子中学校に入るのは抵抗がある。
と思っていたのだが、案外すんなりと入れた。
授業中だったことが幸いし、誰もいなかった事が大きいだろう。
それにしても女子中学校校舎に学園長室を作るとか、あのぬらりひょんは何を考えてるんだか。
まあ……大方孫がかわいいとか言っておきながら超や明日菜、エヴァンジェリンの監視をやりやすくするためだろう。
麻帆良祭のあの件は、何やら学園長は訳知り顔だったし……だいたい、学園長の目をかいくぐって超や葉加瀬達が地下の鬼神などに手を出せるとは考えづらい。
おそらく、学園長も心の中では変革を望んでいたのではないだろうか。
本気で変革を望んでいないのなら、交渉事ならば超と比べ物にならないキャリアを持つ学園長だ、容易に超の思惑を無視することはあるまい。
言葉で聞かないのなら大多数による武力で制圧してしまう事だろう。

いくら超の内に存在するスプリングフィールドの魔力が強大だと言っても、一人ではできる事に限りがある。

茶々丸、葉加瀬、龍宮の力を借りても無理だ。
なにせ、こちらには学園長とタカミチがいるのだ。
茶々丸と葉加瀬は問題外。
超はタカミチが潰し、一番厄介な龍宮を学園長などが追いつめるだろう。
麻帆良祭でなければあの『最強の弾丸』も使えないことだし。
現在でも超の計画が進行している以上、学園長が超の計画を知っている事は明らかである。
明日菜に至っては言うまでもなく、彼女は魔法使いの天敵である魔法無効化能力者であり、更には『黄昏の姫巫女』でもある。
彼女を傷つける事はタカミチが絶対に許さないだろう。

ガトウに彼女を任された男として。

もちろん、その感情は決してLOVEではないが。
LOVEなのだったら、どんな光源氏計画だ、それは。
そんなくだらない事を思っていると、学園長室の前についた。
携帯の画面に映っている地図では学園長室を示す場所を『秘密の花園♪』と書かれている。

殺してェ。

思わず一方通行モードで扉をブチ殴って侵入しようかと思ったが、なんとか思いとどまって普通にノックした。
誰だと聞かれるまでもなく許可された。
そういえば、監視がついてるんだったな。
そう思いながらドアを開けると、そこには学園長一人だけがいた。
「よう来てくれたの、アクセラレータ君」
「あァ」
俺はダルげに答えを返しながら、視線だけでぐるりと周りを見まわす。
「昨日のうっとォしィのは来てねェみてェだが、どうかしたのか?」
「……ガンドルフィーニ君は授業、高音君は生徒じゃ。この時間はそれぞれ一般人と変わらない事をやっておる」
鬱陶しいのと言われて誰かわかるか。
流石学園長だ。
別に誉めてないが。
「そォいえばここは学校だったな……で、用件は?」
「うむ。君がこれから働く場所について。それと、面倒じゃから色々と質問も受け付ける。なんなりと聞きなさい」
学園長が話したのは、これからの俺のことだった。
麻帆良は重要な霊的拠点なので妖怪などの魑魅魍魎が発生しやすい。
その上、関西呪術協会の連中も攻め入って来るので非常に麻帆良の防衛範囲が広くなる。
それに何やら魔法使いたちには以前に第二次世界大戦とは異なる大きな戦があったらしく、それにより魔法先生の数は少ないので、魔法生徒まで動員することになっており、今回俺という強力な戦力が手に入ったのは実に助かるとのこと。

基本的に警備員は複数で行動し、主に魔法生徒と魔法先生の混合のグループで行動する。

それは三人であったり、四人であったりするが、優れた実力を持つ魔法生徒ならば魔法生徒だけで迎撃に出たりする事もあるらしい。
ま、NAR○TOで言うスリーマンセルである。
ちなみに、その優れた実力をうんたらというのは刹那と龍宮だ。
俺は魔法先生ではなく歳から魔法生徒に該当するらしいが、それはどーでもいい。
問題は、俺をどこのグループにくみこむか、らしい。
素性が知れない俺は他のグループに組み込まれると言うのを強く反対している一派がいるらしく、単独戦力として運用すれば良いという見方が強いらしい。
だがそれでは俺を野放しにする事になる。
それも危険だ、とのことで俺はガンドルフィーニ、刀子が受け持つグループに編入されることになった。
「おいおい、ガンドルフィーニってあの面倒臭ェ奴だろ?良くアイツ等が俺と同行する気になったな?」
「君を抑えこむにはそれ相応の戦力がいる、とのことでな。タカミチ君、刀子君、ガンドルフィーニ君のグループは我々の中でも最強クラスの戦力じゃ。タカミチ君は単独戦力じゃから二つのグループに編入させるしかなかったんじゃよ」
「俺をここに馴染ませようってェわけか?」
「ま、君もそんなに悪い青年には見えないしの。麻帆良は未知の力を使う者に対して非常に排他的な者が多いから、馴染むのは難しいと思うのじゃが……」
「構わねェよ、しばらくは俺も俺のことで精一杯だろうからな」
今日の朝、望郷の念がまた膨れ上がったのだ。

そんなに簡単に切り捨てられる事ではない。

俺の真剣な雰囲気に気づいたのか、学園長は話を変える事にしたようだ。
「どうじゃ?一晩たって何か思い出した事でもあったかの?」
「さっぱりだ」
おそらく、学園長は嘘発見器のような正直な事しか言えないような魔法も使っているのだろうが、それは別に問題ない。
記憶を失っているというのは嘘だが一晩たって何か思い出すにしても、記憶を失っているわけではないので思い出す事は何もないのだ。
だから嘘ではないのである。
屁理屈だが、通っているようなのでこれでよしとする。
もしかしたら、外部からの魔法を無意識的に反射しているのかもしれないが。
「アンタ達がどう思ってンのか知らねェが、俺ァ多分まともな人間じゃねェ。アンタ達が俺の正体を知るために俺の記憶の復活を願っているのはよくわかってる。だがな、俺は記憶が復活したら何しでかすかわかんねェぜ?アンタ達にとっては俺の正体を知るほうが重要なのかもしれねェが、俺は怖ェんだ。俺じゃねェ俺がこの身体を乗っ取るかもしれねェからな」
あながち、これは嘘ではない。
一方通行の思考がたまに混じる事から、おそらく一方通行の意識とやらは存在していると思う。
一つの身体に意識が二つある場合、普通は殴り合いなどといった喧嘩を起こす。
……と、俺は半端な漫画知識で推測している。
その時に俺の意識が負けてしまうと、俺という存在は消えてしまうのではないか、と言う錯覚が俺を襲うのだ。

転生し、身体がチート肉体で、転生先が漫画の世界。

味方はほとんどおらず、孤独な状態。

更に魂の危機という状況にまで陥ったら流石に俺も不安になると言う物だ。
もしかしたら考え過ぎなのかもしれないが、想定しておく事は悪い事ではない。
いざとなれば異常事態に対して冷静に対処できるからだ。
俺のそんな思惑も知らず、学園長は深刻そうに唸っていた。
「そォ気にすンなよ。いざとなりゃ、アンタが俺を殺せば良い」
「……君はそれでいいのかの?」
「いざとなりゃァ、な。俺は自殺志願者じゃねェ。ま、バカなことしねェように自重はしてやンよ」
それは本音だ。
一方通行の人格が目覚めてしまうと、彼が暴走する危険もある。
一方通行に首輪型のチョーカーがついてない時点で打ち止めと出会う前だということがわかる。

つまり、打ち止めというリミッターがないのだ。

反射の能力を持つ一方通行は、初見の人間に対しては絶大な優位性を持つ。
おそらく、『紅き翼』の連中を相手にしたら何らかの打開策を打ち出される可能性が高いので粉砕されるだろう。
理知的な感性のない……例えばリョウメンスクナとかであれば一方通行は無敵なのだが。
だから、一方通行が暴走すればこの世界で止められる人物はほとんどいないのである。
原作を見るに、彼は他人を傷つけるのが嫌であえて他人を遠ざけている節があったので、よっぽどの事がない限りそれはないだろうが、垣根帝督などの件もある。
あの黒い翼がでないという可能性を否定しきれない以上、一方通行が暴走するのだけは避けなければならない。
どうしても暴走するのなら、反射を解除して自刃でもしてやる。
介錯は刹那にやってもらおう。
そんな事を思い始めると、学園長はため息をついた。
「自分の事はわからんというのに、どうしてそんなことばかりに頭が回るかのう」
「元は優秀な頭脳だったんだろォよ」
こればっかりはそうと言わざるを得ない。
「ンで、今日は誰と行動すりゃいいんだ?っつか、集合時間は?」
「まあまあ、慌てるでない。まだワシの話は続いておるんじゃ」
どうでもいいが髭を撫でるな。

ウゼェ。

内心で思いっきりため息をついたが、それを知らない学園長はまだまだ語る。
「君を広域指導員に任命しようと思っての」
「……何だ?俺に教師になれってか?」
「そうじゃないんじゃ。言うなれば見まわりという生温いのよりもよからぬ輩などを鎮圧する部隊なんじゃよ」
「ハァ?そんなもンは警察にでもまかせりゃいいだろうがよ」
「麻帆良には警察は少ないんじゃ。公安に所属しとる魔法使いは少なくての、隠蔽工作が大変なんじゃ」
ああ、そういうことか。
原作を読んでいて全く警察が出てこず、広域指導員が輩を退治しまくっている理由がやっとわかった。
考えて見れば魔法は秘匿なのだから、公安の末端といえど一般の警察官を麻帆良に招き寄せるのはいささか抵抗があるのだろう。
公安というのは場合によっては学園長も逮捕する事ができるのだから、学園長の権力が絶対である麻帆良ではそれは不都合以外の何者でもない。
だからこそ、この広域指導員という治外法権がまかり通っているのだろう。
……ていうか、まともな警察があればネギが麻帆良に教師としてやって来るのは違法だと通報されてしまう。
麻帆良の結界とやらでゆるく対応される事になっているが、流石に警察官をごまかす事はできないだろう。

ネギは再来年の二月に麻帆良にやって来る。

おそらく、向こうの魔法学校の校長とも連絡を取り合っているのだろう。
あの校長と学園長は気が合いそうに見えるし。
「おそらく君の場合説得は無理そうじゃから、拳で黙らせるといい。それなりに体術も使えるんじゃろ?あと、君の風の力は使ってはいかんぞ。相手は一般人じゃからな」
「あァ、魔法は秘匿だったな。……緊急事態には?」
「構わん。迅速に対応してくれ。後の処理はワシらがやる。……ま、そんな事は滅多にないじゃろうから安心してくれ」
後の処理、というのは記憶の消去だろう。
毎回思うのだが、この麻帆良の魔法に関わる者たちは記憶を消去する事を何とも思っていないのだろうか。

普段正義正義と語っておいて、いざとなれば魔法使いとしての秘匿を優先し、他人の記憶を改ざんする。

これが『仕方がない』とか『決まりだから』とかほざきつつ『立派な魔法使い』を目指している連中が多いのだから、ホントにため息が出る。
ちなみに、こう言う連中は学園都市では真っ先に死んでいくタイプだ。
だがいざそうなってみれば向こうで適応していくのが人間なのだから、不思議な物だ。
「……あのよォ、一つ言っておくが、俺ァ体術なんざできねェぞ?誰だそんなデマ流しやがった奴は」
「ふぉ?刀子君と刹那君じゃが。見た目素人の拳なのに鬼をぶっ飛ばしたらしいの?合気道か何かかと思ったんじゃが」
「まァ、こんな体つきじゃそう思われても仕方ねェよな」
俺の身体は見た目病弱にも貧弱にも見える。
筋肉なんざ必要最低限しかなく、贅肉もほとんどない。
腕はガリガリ。
足もガリガリだった。
まあ、最弱状態のエヴァでも合気道はできたのだから、あまり見た目の腕力とかは関係ない武術らしいが。
「多分だが、そりゃ俺が無意識的に拳に風を纏わせたんじゃねェか?」
「ふむ?それなら刀子君達も感知するはずじゃが……」
「俺の風には魔力とか気ってのがねェんだろ?魔法とかじゃねェんだから感知できなくても仕方ねェことだろ」
「ふぉ?……そういえばそうじゃったの」
今更ながら学園長は気付いたらしかった。
比較的頭は柔らかい(むしろ長い)学園長だが、どっぷりと魔法使いの世界に浸かってしまっているので、魔法や気を使わない超常現象が理解できないのだろう。

真相はベクトルを操作してありったけのベクトルを殴ることに使ったからぶっ飛ばせたわけだが。

地球の自転もベクトル操作で力に変換できるチート能力がある一方通行なら、風のベクトルなどを全て集め、収束することができると考えたのだ。
どうやったのかよく説明できないが、そういうことだ。
わかりやすく言えば元○玉に近い。

みんな、オラにベクトルを分けてくれ!みたいな。

「俺がただ机を叩いた程度じゃせいぜい小さな音を出す事しかできねェよ」
実際に叩いて見ると、ドン、という音がしただけだった。
タカミチなら余裕でぶち抜いてみせるだろう。
「ま、最初は手加減が難しいから、救急車の手配はしとけよ」
「善処はしてみるぞい」
二回目からはそんな事はないだろうが、人を殴る事になれていない俺は確実に最初加減を間違うだろう。
……できるだけ急所は狙わない方向で。






昼間は散歩して麻帆良を回ることにした。
学園都市よりは小さいとはいえ、麻帆良はかなり広い。
とてもではないが一日で回りきれる量ではなかったので、とりあえず家の周辺を探索してみた。

この白い頭は目立つのでパーカーを深めに被って隠しておきながら。

俺は男か女かわからない体形をしているから女子中等部の方に向かっても多少違和感があるくらいで済むだろうが、あっちには刹那がいる。
数あるSSでは『このかお嬢様の敵か?』と尋ねて来るのが定石なので、できる限りそっちには近づかない事にする。
遭遇率が下がるからだ。
他人に嫌われるのが嫌、なんて可愛らしい事は口にしないが、それでも敵対視されるのは良い気分ではない。
それに、背後から感じられる視線が鬱陶しくてしょうがない。
暇な魔法先生の尾行だろう。
お勤めご苦労様。
そんな事を思いながら、俺は麻帆良を練り歩いた。
改めて麻帆良という土地を見ると、実に綺麗な土地だった。
路地裏は流石に汚いが、表通りにガムが吐き捨てられている事はなかったし、ゴミが無造作に散らかっている事もなかった。
おそらく、お節介な誰かがゴミを捨てると注意するからだろう。
バカ正直な正義感を抱く誰かとか。
高音の顔を思い浮かべて肩を竦めながら、俺は小腹が空いたのでチェーン店っぽいところに入って適当にカロリーの高いものを注文した。

……腹が減るんだ、この身体。

そういえば原作では一方通行はステーキを日常的に食ってたりしたな。
それでこの体形だから、たいしたもんだ。
もしかしたら膨大な演算を行うのに過剰なエネルギーを使っているのかもしれない。
俺のその予想が当たっているのなら、反射をあまり使わなくなったのでこの身体も鍛えなおせるかもしれない。
おそらく15,6程度の肉体だ、今から鍛えなおしても間に合うはず。
エヴァンジェリンの別荘が使えれば良いのだが、流石に十五、六歳で修行しまくると外見まですぐに変わって来るのでむやみに使うことはできない。
ネギが来るまで大きな事件もあるまい。
のんびりと鍛えていけばいいさ。
そう思いながら運ばれてきた注文―――ラーメンとチャーハン、餃子と唐揚げを見た。
ぐー、と正直な身体は匂いだけで耐えられないらしかった。
かぶりつかん勢いで料理を捕食する……まさに生還した遭難者のようなその姿にウェイトレスのねーちゃんもドン引きだ。

しかし美味い。

麻帆良祭の時期には是非超包子に行きたいと思う。
超や古菲、茶々丸などといったトンデモ連中がいるが、その時はその時で対処するしかない。
俺程度の人物が超相手に何ができるのか、と言う感じではあるが。
正直『最強の銃弾』でも俺を仕留めることはできないと思うが、それならそれで超は改良を加えるだろう。
銃弾そのものを時限爆弾のように改造し、何百メートル進んだら炸裂する、とか。
龍宮とかなら余裕でやりそうだから困る。
改造する期間は一年半近くもあるのだから、超と葉加瀬であれば十分可能だと俺は考えている。。
物理魔法攻撃に対してほぼ無敵の俺を封じるためならありとあらゆる手を使うはずだろうし。

もっとも、反射の事実を知っているのは俺一人。

ネギが来ていろいろと起こるまで、俺はこの事実を隠しておくつもりだ。
能力が発覚したら『いろいろと実験してたらわかった』とか言い訳しておけば良い。
それで向こうが文句を言って来たら監視でもしてたのかとか言って脅せば良い。
向こうは正義を主張する魔法使いだ、姑息な真似を嫌うだろう。
十分、監視も姑息な真似ではあるのだが。
そう思っていると、突如目の前に誰かが座った。
席はいくらでも相手いるというのに、わざわざ目の前に座るというと、俺に用がある人物としか思えない。
俺はラーメンの汁を飲み干すと、口元を拭ってからソイツを見た。
「そんなに一生懸命な姿を見てたら声をかけられなくてね。勝手に座らせてもらったよ」
「……アンタか、オッサン」
まさしく『オッサン』という概念を捏ねて型にいれて焼いたらこんな感じになるんだろうという人物、タカミチ・T・高畑がそこにいた。
タカミチはいきなりオッサン呼ばわりされた事にちょっと傷ついたのか、がっくりと肩を落とす。

怒らないところが大人だ。

「いきなりオッサンかい?」
「名前も知らねェオッサンはオッサンで十分だ」
ようやく自分が名乗っていない事に気付いたタカミチは一本取られた、とばかりに頭を掻いた。
「そういえば名乗ってなかったね。僕はタカミチ・T・高畑。君と同じで麻帆良の広域指導員をやっている」
「あァ……で、そのタカミチさんが何の用なンだ?」
「これを渡しに来たんだ」
タカミチは懐からカードのようなものを取り出す。
「君の麻帆良での身分証明書みたいなものだよ。ここのマークが広域指導員の証。君が騒ぎを鎮圧した時、被害者達にこれを見せれば安心してくれるよ」
「ま、鷹を追い払った鷲が敵だった、って事実は良くあるモンだからな。このくらいは当然だろォよ」
俺はそう言うと、から揚げを頬張りながらカードをポケットに突っ込む。
いつの間に撮ったのか俺の顔写真まで張ってあった。
後でこの事を詳しく学園長に問い詰めてやる必要がありそうだ。
どーせ、また魔法か何かなんだろうが。
「どうだい、麻帆良は?」

かなり突然だった。

そのせいか、ぴたり、と思わず俺の箸が止まる。
「……悪くねェ所だ。ただ、あんま落ちつかねェ場所だ」
「どうしてかな?かなり住み心地良い場所だけどね?」
「だからこそだ」
俺は淡々とした調子で言う。
「なんとなく、こう言う仲良しこよしみてェな空気は好きじゃねェ。平和が一番ってェのはわかってンだが、なんとなく慣れねェんだよ。俺は記憶がなくなる以前はとんだ廃れた生活を送っていたらしい」
それは俺も、一方通行も同じ気持ちだ。

平和が一番。

もちろん、一方通行もそれがわかっていないはずはない。
だが、どうにも落ちつかないのだ。
監視されているから、と言うのもあるかもしれない。
しかし、おそらくそれとは関係なく俺は麻帆良に漂う空気その物が嫌なのだろう。
生温く、のほほんとしていて、急激な変化が感じられないのだ。
麻帆良には変化を嫌う魔法使いがいるのだからそれも当然なのだろうし、麻帆良大結界が認識を適当にさせる効果を持っているのだから生徒の反応もお気楽で非常に緩い。
十五年も正気でいられるエヴァンジェリンや常識的観点を持つ長谷川千雨がこの空気に耐えて来た事は賞賛に値する。
エヴァンジェリンのような廃れた生活を送っていた者からすれば、この麻帆良は地獄の牢獄でしかないし、千雨のような者からすればクラスから浮くことになる。
漫画の中の出来事だった彼女達の気持ちの一端が、ようやくわかった気がしていた。
「…………」
タカミチはタカミチで何か思い当たる事でもあるのか、どこか厳しい表情をしている。
彼は麻帆良にいる魔法使いとは違い、全世界を飛びまわり、紛争地帯などに行ってNGO活動をしてきた常識人だ。
理想と現実は違うということを理解しているからこそ、俺の言う事が多少はわかるのかもしれない。
「じゃァな」
俺はタカミチにそれだけ言い残すと、代金をレジにおしつけてその場から去っていった。
もうちっと周りを探って見るか、と思いながら。






SIDE タカミチ・T・高畑

僕はコーヒーを注文していたが、ハッと我にかえるとすっかり冷めてしまっていた。
どうやら、考えこんでしまっていたらしい。
彼が別れの言葉を告げた辺りまでは覚えているんだが……集中しだしたら周りが見えなくなる癖は直したほうがいいな。

咸卦法の弊害って奴かな。

それにしても、彼と一緒の椅子に座った直後に頼んでいたから、それほど時間は経っていなかったと思うんだが……冷たい。
僕は冷めてしまった苦いコーヒーをちびちびと啜りながら、ガラス張りの大きな窓の外を見た。
今は一時少し前。
学生達は勉強の最中なので人通りはほとんどない。
がらんとしている商店街はとても寂しく思える。

だが、彼はこれでも麻帆良の穏やかな空気に慣れないという。

彼にしか感じられない麻帆良の空気と言うものがあるのだろうか。
僕も裏では結構長い経験をつんできた方なので、それなりに世界の汚い所も見て来たつもりだ。
学園長には経験では遠く及ばないが、それでも麻帆良で二番目の実力者として、魔法世界で英雄と呼ばれている『紅き翼』の一員として、地球上の大きな闇はあらかた見て来たと、そう思っていた。

だが、それは彼が来た事で夢想だと悟った。

彼の目を見ればわかる。
あれは地獄以上の光景を見て来た目だ。
彼の場合わかりづらいが、アルビノ独特の赤い瞳は非常に綺麗だった。
あの目は人間としては何なのか、確立している目だ。
自己というものが確立しているから他者に惑わされない自分の答えをはじき出す事ができる。
そんな真っ直ぐな目をしていて、纏っている空気は濃密な深淵の闇そのもの。
はっきり言うと、彼は異質そのものだ。
あの歳で地獄という光景を見て来た物はすべからく目は濁っている。

そして、堕ちる。

犯罪者に手を染め、生きる事なら何でもやり、生き残るためなら他者の命を奪う事も躊躇しない。
そんな人間になってしまう。
僕はそんな醜い人間の感情を目の当りにしてきた。
だが、彼は堕ちた人間では決してない。
堕ちて、這いあがってきた人間でもない。

ドン底にまで堕ちた人間なのだという事を悟った。

深くに堕ちた人間と言うのは、ああいう物なのだという事を僕ははじめて知ったんだ。
記憶喪失であのように素直になれるのなら、多分彼は本質は善人なのだろう。
もしも本質が悪人なのだったら、あんな綺麗な目をしていないはずだ。
ガンドルフィーニ先生は警戒しているが、僕達が具体的な敵対行動を起こさない限り、彼は僕達に攻撃してくる事はないと思う。
言い切れないのは、彼の態度や見た目のせいなのだろう。
あれのせいで、彼の内面は非常にわかりづらい。
昨日の彼の殺気には思わず反応してしまったしね。

……それにしても、一方通行、アクセラレータか。

彼の感情は確かに一方通行なのかもしれない。
「難儀なもんだな、彼も……」
この僕でさえ彼と話して見て、ようやく彼への疑心が晴れてきた所だ。
常人なら、彼の表向きの面のみを見て彼という存在を判断してしまうだろう。
僕から見れば、あれはどこか演技しているようにも思えるんだ。
敢えて人に嫌われようとしているような……そんな感じがする。
何が彼をそう言う態度にさせたのか、それは誰も知らない。
彼自身も知らないのだろう。
しかし、それで彼が損をするのは素直に悲しいと思う。
「誰かさんと少しにてるかもな」
素直になれないが故に十三年も現在進行形で罰を与えられている吸血鬼を思い出し、僕は静かに笑った。






~あとがき~

一方通行という規格外が麻帆良の人間に信用されるには一年くらいの時がかかると思ったので、彼がやってきたのはこの時期にしました。
ネギが来るまで一年以上……自分でやっておいて何だが、それまでちゃんと書けるだろうか。
感想も随分頂いたし、頑張らなきゃな、と思います。
次回は多分、話はあんまり進まない予定です。
~そして一年が過ぎた~なんてことはありませんので。


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