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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第22話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/05 23:22
SIDE 一方通行

ゴドンッ!!と地面に穴が穿たれる。
機械で穿つようなそれではなく、なにか重いものが高高度から落下し、その重量で押し潰したかのような痕跡が地面に残る。
衝撃波だ。
魔力も気も纏っていないただ単なる衝撃波。
それを放つ事ができる人間と言うのは、この世界でも俺しかいないだろう。
その一撃で俺は敵を牽制する。
目の前の地面が炸裂したことにより動きを止めた敵は、爆撃されたようなその痕跡を見て標的は上だと判断したのだろう、皆、一斉に上を見上げる。
しかし、その視線の先に既に影はなく。
俺は既に敵の背後に移動していた。
そのわずかな空気の移動で察したのか、敵はこちらに向かって棍棒を振りかぶってくるが、俺はその時間を与えない。
踏み込む。
そのまま体重をすべて乗せるようにして、右拳を思いっきり突き出す。
ベクトル操作。

ゴギュ!!と加速した拳が敵の胸を吹き飛ばした。

首、両腕、下半身だけとなったそれは空気に解けるようにして消えていく。
仲間をやられた事を悟った敵は吠えながら棍棒を振りかぶってくるか、あるいはクナイを投擲してくる。
それら全てのベクトルを把握しながら、俺は一歩だけ軽く後ろに飛んだ。
ある一点だけ狙われるそこで、ここが安全地帯だと言う事がわかる。
ドゴガキキキ!!と前方で棍棒とクナイがぶつかり合い、それぞれ無効化される。
敵の視線が俺に集中した所で、俺は疑似瞬動で掻き消える。
前方へ砂を巻き上げ、視界を遮ると言うおまけつきで。
加速した俺はそのままベクトル操作を行い、直角に曲がる。
腕を前でクロスさせ、『ジェット・パンチ』のような加速を身体全体で行い、突進する。
バォ!!と何かを突っ切る感触と共に、一体の鬼が空気に解けて消える。
前方にいる敵を把握し、こちらの速度を認識できていないのか唖然としているその様子を確認し、敵の背後に回る。
腕を地面にぶち込む。
そのままぐるんと身体を回転させ、『ジェット・パンチ』を応用して加速し、遠心力のついた蹴りを放つ。
それは衝撃波となり、前方の敵を丸ごと吹き飛ばした。
カンの良い奴は避けたようだが、それ以外の連中は上半身と下半身がお別れをしたり、ありえないほどくの字に曲がっておシャカとなった。
文句を言わせる前に疑似瞬動で接近、空中に飛んで避けているそいつに向けて『ジェット・パンチ』を繰り出す。
ボッ!!とその頭を吹き飛ばし、疑似虚空瞬動を行って目の前の消えゆく身体を吹き飛ばしながら夜空に舞いあがる。
「クソッ、ポンポンとお手玉しとるとちゃうねんぞォ!!」
「速すぎる……なんちゅう軽業師や」
そのまま、俺は身体ごと疑似虚空瞬動し、地面に激突した。
地面が鳴動し、地面がめくれ上がって土塊が敵に殺到する。
迫りくるそれは敵にとってたやすく迎撃できるそれであったが、俺の目的はそんなチャチなもんじゃない。
それで注意を引くことが目的だ。
ベクトル操作で高速移動し、再び敵の側面に出現する。
高速演算。
複雑な演算式を瞬時にして組み上げ、俺は一直線上に結ばれている残存兵力を見やる。
右腕を振りかぶる。
それをラリアットのようにして構えながら、俺は走り出した。

音速の3倍で。

ガォンッ!!と音の壁を瞬時に破壊し、突き抜ける音。
その音に置き去りにするように、敵は何もできないまま身体の一部を消失させていた。
更に、俺の通った後を突き抜けるかのように衝撃波が追従する。

ドォンッ!!

それに巻き込まれ、ダメ押しのように敵は吹き飛ばされた。
しかしそれでも死なないような連中がいるから困る。
消えることもできずにうめく連中をよそに、俺は再び高速演算を行い、その場から退避しつつ竜巻を作り出す。
真空が作り出す刃に身体を切り刻まれながら、敵は宙を舞った。
残骸が空気に溶けて消えるのを確認し、俺は竜巻を解除した。
圧倒的な破壊をもたらした地面を眺め、少しやりすぎたかと頭を掻いた。
それら一連の行動が行われているのは深夜のとある森の中……。

いわずもがな、陰陽術師の襲撃である。

年末だからと言って油断してたら突然のジジイの非常召集。
ウザい事この上ないが、出撃する事になった。
どうやら敵は年末だからと言って俺のように油断している隙を狙ってきたようだった。
この間の停電には及ばないが、かなりの量の鬼の軍勢を配備してきているのがわかる。
そしてそれをバッタバッタとなぎ倒す俺達。
いや、少しは考えろと言いたい。

年末。

つまりは、私的な用事が無ければたいていの教師は麻帆良近辺、あるいは麻帆良の住宅にいるわけで。
その中には魔法先生もいるし、年末に里帰りしている魔法生徒はほとんどいない。
というわけで、現在の麻帆良の防衛力は前にも増して強力になっているのだ。
少なくとも俺、タカミチ、刀子に神多羅木、ガンドルフィーニと、麻帆良の戦力のほとんどが残っていることを考えると、いつも以上の戦力を保持していることくらいわかると思うのだが。
無論、そういう情報を察知できなかった、と言うのならそれまでだろうが。
刀子はどうやら飲んでいるようだったので(何やら泣き酒だったらしい。ジジイも流石に呼び出せなかった様子)神多羅木がその分穴を埋めようとド派手に魔法を炸裂させているのが見える。
見た目通り、なかなか神多羅木はデキる男だ。
後方支援だけかと思えば遅延魔法の連発で接近戦もやってのける万能ファイターだったりする。
ネギと被って見えるのは俺だけじゃないだろう。
……流石に千の雷は撃てないようだったが。
ドウッ!!と夜空を突き抜ける雷の暴風を見て、何かアイツも溜まってるんだろうか、と思う。
今度タカミチと一緒にダンディな話をさせてみよう。
バーにでも行くか。
そんな事を思いながら、俺は更に向かって来る鬼を叩き潰す。

現在、俺は反射を使わずに戦闘を行っている。

自分の味方が近くにいる状態でやってみたかったのだ。
反射と言う絶対防御が破られた場合、俺は反射を使わずにどれほどの戦闘が行えるのか。
で、やってみたら俺TUEEEE!!
反射使わなくてもここまでやれたのか、と実感してしまう。

反射の分の演算範囲を使い、更に攻撃特化になったのである。

反射神経を極限まで強化し、ベクトル操作による『無限瞬動』、更には無限瞬動による認識不能速度からの『ジェット・パンチ』。
反射という絶対防御を捨てた結果、異常なまでに攻撃に対して特化したのである。
仮にプラズマの演算式を組んでみたが、その速度も前よりずっと速い。
音速で動くのもベクトル操作で空気抵抗をなくしてしまえば問題ないし、反射よりは範囲を食わないのだ。
常時発動の反射って、結構演算範囲を食ってたんだな、と思う。
反射神経を強化する『意識加速』のせいで鬼の動きが非常にのろく感じる。
なまじ大きな身体に無駄筋肉をつけたせいだろう、鬼は力は強いが非常に動作が遅いのだ。
瞬動できるほどの身体能力強化、それに伴う動きに意識を追いつかせるための『意識加速』のおかげで完全にありえない超速度での戦闘が可能になっているのだ。
正直、『無限瞬動』から突撃すれば『ジェット・パンチ』いらずなのであるが。
ラカンやエヴァのようなバケモノどもにはそれも必要なのだろうが、鬼程度の耐久力ならそれだけで充分に破壊できる。
そして、最後の一体を叩き潰す。
「年末に仕事なンざ面倒くせェにも程があったが、新しい収穫があったから良しとするか」

それは自分は反射を使わなくても楽々と魔法使いに勝てる、ということだった。

実際に食らったことがないからわからないが、おそらくナギなどといった無詠唱で魔法を唱えられ、瞬動を使える高速戦闘を得意とする魔法使いでないと俺と同じ土俵に立つことすらできないだろう。
バグキャラによるよくわかんねーチート攻撃などといった反則がない限り、俺は負けたりはしないだろう。
それは以前と変わらない認識ではあるが。
それでも、反射に頼らない実力の向上は非常に喜ばしい物である。
感慨深げに俺が拳を握ったり開いたりしていると、一緒に殲滅活動を行っていた刹那が駆け寄ってきた。
彼女は『お疲れ様です』と頭を下げてから、質問してきた。
「今日は凄まじいですね……鬼気迫るようでしたよ。というか、ほとんど私の出番がなかったのですが……」
俺はその質問に苦笑しながら答えた。
「俺は能力を使うと身体能力が上がるンだが、それを最大限用いたらどうなるか実験したくてな。あの無敵障壁を消してみたンだよ」
「ああ……あの物理攻撃を無効化したりするアレですか?」
それに俺は頷いた。
刹那は俺の能力に身体能力向上効果があるのは忘れていたようだった。
でなけりゃ気も魔力も使わずに瞬動なんてできねえよ。
彼女は俺の返答を聞いてから疑問に思う事があったのか、更に尋ねて来る。
「でも、あの能力は物理的攻撃全般に対して無敵だと思います。何故そこまで強さを探求する必要があるのですか?」
「いつも俺はそれを頼ってきたんだが、頼りっぱなしも嫌だし、俺もわからん弱点を突かれたりしたら対応しなきゃなンねェからな。手札が多い事に越した事はねェ」
木原神拳をラカンが使ってこないと断言しきれないからな。
原作でも無茶苦茶ぶり(エターナルネギフィーバー、斬魔剣・弐の太刀・今日はお嬢様と初チュー記念日スペシャル)を発揮していたので、もしも戦うとなると反射の原理を解明されてその技を使ってくる可能性もある。
なにせ、ネギの『雷天大壮』の弱点を即座に見抜く眼力があるのだ、油断はできない。
もしかして俺の想像をはるかに超えて『なんちゃって神拳』で叩き潰されかねない、という予想もできる。
……もちろん、『血液逆流』で死なないかもしれないという懸念も在るのだが。
魔法の事を知ると、嫌でも奴等の無茶苦茶ぶりが明らかになってくるのでホントに困る。
俺が内心でそんな事を思っていることも知らずに、刹那は俺の向上心に感心しているようだった。
「なるほど……そのあくなき探求心こそがアクセラレータさんの強さに結びついているというわけですね?私も見習わなければ……」
あくなきというか、危機感だけどな。

さて、刹那であるが、彼女はよく俺の家に来て世間話や愚痴をしていくようになった。

週に三度は仕事以外で俺のところに顔を出すし、クラスの中では寡黙な印象だろう彼女がペラペラと俺の前で話す光景を見たら2-Aの連中は騒ぎ立てるに違いないので、とあるパパラッチには前もって警告しておいた。
どんな文面を送ったか、それは詮索しないでもらおう。
パパラッチが行動不能になったため、新聞部の連中も刹那に手出しできないようになっている。
流石に以前のアレは少しからかい過ぎたと反省しているのだ。
少しは自重しよう、と考える心が出てきたのだ。

―――アレのおかげで面倒になるのがごめんというのが本音ではあるが。

俺は意識的に反射を復活させると、警戒を解いてポケットに手を突っ込んだ。
なんというか、いつもは無意識的に展開させている反射であるが、なければないで心もとないと言うのが今回の戦闘でわかった。
これからは何か問題が起こらない限り反射を切ろうとは思わないだろう。
小心者だな、と内心で自虐的に呟いて見る。
そんな小心者だからこそ、俺は限りなく強さを求めるのかもしれない。
死ぬのが怖いから、我武者羅に力を求めているだけなのかもしれない。
ラカンや造物主のようなバケモノに勝てるのか。
少なくとも、この世界での『最強』になりたい……俺はそう思う。
ポケットに手を突っ込んで夜空を見上げている俺を見て心配に思ったのか、刹那が話しかけてきた。
「どうしたのですか?」
「何でもねェよ」
おそらく、その時の俺の顔は少し違うものだったのだろう。
何も言わないがどこか心配そうな顔で見上げて来る刹那を見ると、俺はその頬をつまんで引っ張った。
「ほふぇ!?」
「あのなァ、心配なら懐に踏み込んで聞くくれェの事したらどォなンだ!?ンな顔されちゃ調子狂うンだよ!!俺は女子中学生に心配されるほどおちこぼれちゃいねェ!!」
「ふぁ、ふぁっふぇぇ……」
「『だって』じゃねェ!!口答えしやがる生意気な口はこれか!?」
「ひはいへふぅ!?」
刹那の柔らかい頬を思う存分引っ張りながら、俺は内心でため息をつく。

前々から思っていたが、刹那には積極性が足りない。

『お嬢様』が関われば打って変わったように積極的になるが、その他の事柄に関しては基本的に傍観の構えをすることが多いのだ。
それは遠距離から近衛このかを守ってきた弊害のような物かもしれない。
おかげで気になっていることが言えずにストレスが溜まるという悪循環を繰り返す事も多々あるのだ。
せっかく俺という愚痴の吐き出し場所ができたのだ、俺にはそういうことに遠慮がなくなって来るようになれば良いと思う。
そうすれば少しは近衛このかとの関係も改善されると思うのだが、いかんせん刹那の性格が思った以上にクソ真面目で更正に悩んでいる。
近衛詠春に似たんだろうなあ……と思う。
さて、ぐにぐにと弄繰り回してから開放してやると、刹那はいつもと違う、がっくりとした反応を見せた。
珍しい事だ。
いつもなら『なにすんですかむぎゅ!?』と第二ラウンドに移行する所なのに。
刹那はブツブツと、
「こ、この光景をお嬢様に見られたら……というか通行人に見られたら表通りを歩けなくなってしまう……な、何故かあのなんでもないはずの攻撃を避けれない自分が情けない……」
殺気がないからじゃないか?
内心で適当に返すと、俺はとりあえず刹那の頭を叩いた。
スパーン、といい音がした。
「はうう!?」
もはやイジめられキャラと化している刹那は抗議の視線で見上げて来る。
そんな顔をするな。

もっといじめたくなって来る。

もう一度頭をブッ叩きたくなる衝動を手をポケットを突き破りそうになるほどの勢いで突っ込んで必死こいて抑えながら、俺は告げた。
「テメェは生真面目すぎンだよ。いつも言ってるが、もうちょい気楽に行けよ。……しゃァねェのかもしんねェけどな」
「しょうがないなんて……随分と妥協するようになったんですね」
「それを自覚してやがるくせに変わらねェのか?」
「変われないんですよ」
諦めるなンざどういう了見だ、と俺が刹那を見ると、刹那は強い目で俺を見つめていた。
「言い訳かもしれませんけど、私は多分、お嬢様に正体を打ち明けるまで変われない気がするんです。この関係を続けている以上、やっぱり変わることはできません。変わってしまったら、耐えられる事ができなくなってしまいそうだから」
「……へェ。言うようになったじゃねェか」
「ここまで言わないと、また頬をつねられそうですから」
ポケットに突っ込まれている手を警戒している刹那を見て、俺は苦笑した。
まあ、これも良い方向に変わった、と思って良いのか?
それがここ数ヶ月間の彼女への助言の成果だと思うと、ちょっと機嫌が良くなった。
俺は笑みを浮かべると、刹那の肩を強引に組んだ。
「ひゃわ!?」
「おォ刹那。言うようになった褒美だ、今日は一緒に飲もうぜ」
「は、はあ!?私は未成年です!」
「ンなこた関係ねェ!俺の酒が飲めねェってのか!?」
「ぼ、暴力反た―――ふぁっ!?」
「そう照れるなよ。いやァ、刹那も成長したモンだと思って奢ってやンだぜ?年上からの御好意はもらっとくモンだと思うンだが?」
「ふぇ、ふぇれふぇらいふぇふーっ!!」
「おお、そうか行くか!実は今日はタカミチもガンドルフィーニも新田も誘ってないからヒマだと思ってたンだよな!ちぃとだけ付き合ってもらうぜ」
やっぱり刹那は弄るに限る。
俺は彼女を脇に抱えて拉致りながら、夜空に向けて盛大に笑った。






十二月三十一日。
昨日が三十日だったので、今日は大晦日となる。
結局あの後は刹那に逃げられてつまらなかったし、からかう対象を探しに今日は街に出ていったものの、流石に大晦日と言うことはあり、全員家に亀になってしまっているようだ。
まあ、寒いしな。
クリスマスには普段の何倍もの数の人間が辺りを闊歩していたものだが、今は普段よりも遥かに人の数が少ない。
昼間っからこうでは弄り甲斐がある奴らが出てくることはないだろうと思い、俺は軽く走って健康的な汗を流しながら家へと戻った。

すると、我が物顔をして蜜柑を頬張る高音、愛衣がいた。

「……何してンだテメェ等」
「お邪魔してます」
「理由はヒマだからの一言に尽きます」
そう言って年末スペシャルが連続するバラエティ番組を見ながらコタツで次の蜜柑を手にしている。
俺の事なんて全く気にしてないようだ。
こいつ等もふてぶてしくなりやがったなあ。
すっかり俺に順応した性格になってしまっている。
流石にからかいすぎたか。
俺はふかぶかとため息をつきながら、二人が足を突っ込んでいたコタツにお邪魔する。
もっとも、俺の家のコタツなのだが。
しばらく沈黙していると、バラエティ番組を見ていた高音がちらりとこちらを見て来た。
「……ここにどうしているのか聞かないのですね」
「聞いてどうすンだ?どォせロクでもねェ理由なんだろ?」
まだまだ冷たい足先にイラつきながら言うと、
「まあまあ、蜜柑でもお一つ」
「俺ン家の蜜柑じゃねェのかよ」
と言いつつ、俺は愛衣から差出された蜜柑を受け取った。
喉が乾いていた所だし、柑橘系の果物は嫌いじゃないからだ。
俺達は黙々と蜜柑を消費しながら、ただ時間を浪費していた。
騒がしい一日もいいが、たまにはこんな一日があっても良いと思う。
必死に笑いを取ろうとして肝心なところでスベる一発型の若手芸人の姿を見ながら、俺は比較的穏やかな気分でそう思っていた。
思えば、もうこの世界に来て一周年が過ぎている俺だが、いろいろと原作キャラの意外な一面性を見てこれたと思う。
まず、高音。
原作では非常に生真面目で融通の利かない性格の少女だと思っていたが、それはネギ視点だったからで、実際に接してみるとちょっと生真面目な生徒会長風の女子高生としか思えない。

それも、ドジ属性が入った。

何でもかんでも自分でやろうとして、結果抱えきれずに自滅するタイプだ。
そんなケは原作でもあったのだが、それをうまく愛衣がフォローしている。
愛衣は親切心からなんでもかんでもやろうとする高音に弱めながらも警告風の提案をし、『これはやらなくてもいいんじゃないですか?』くらいの事は言っている。
愛衣はああ見えてきっちりとしているので、高音よりもスケジュール管理が得意そうだ。
正義感、親切心によって行動する高音の良い感じのストッパーになってくれている。
原作での麻帆良祭ではどうやら高音の雰囲気に流されてしまったらしいが。
高音の強気で前向きな所と、愛衣の弱気で無難な所が交じり合い、良きパートナーとなりつつある。
近頃では愛衣が炎系統の魔法の実力を上げてきているらしく、ガンドルフィーニが喜ばしいことだと言っていた。
近接攻撃では地味だが結構強力な『黒衣の夜想曲』という近接系影装魔法を使う高音と、彼女が突っ込んでいった後のフォローとしてちくちくと遠距離攻撃をしている愛衣は、なかなか相性が良いと思うし。
そうそう、ガンドルフィーニといえば正義病だが、彼は彼なりに考えたらしく、俺を見て自分の考えを多少改めたらしい。
SSでは正義に非常に拘るガンドルフィーニをよく見るが、正義に囚われて盲目になる……というほど正義信者ではないようだ。
以前はエヴァの存在に対して否定的であったが、現在は中立の立場を取っている。

良い機会だ、ここでざっと麻帆良の勢力状況を説明してしまおう。

麻帆良にはいくつか勢力がある。
細かい勢力を挙げればキリがないが、とりあえず代表的なものを紹介する。
まずは最大の勢力、学園長率いる穏健派。
学園長、タカミチが属し、発言力は右に出るものがいない勢力だ。
関西呪術協会と親密になりたいと思う者達で構成され、俺に言わせれば現実のドロドロとした汚らわしい空気に耐えることができない温室育ちのボンボンどもの集まりだ。
無論学園長やタカミチはそうではないが、そういう実力派の人間たちは極少数である。
刀子や神多羅木のようなピリッとした空気を持てない連中が温室育ちの連中にあたる。
争いは避けて、平和にやろうというのがこいつ等の考えだ。
中には最大権力者である学園長についていれば良い、という保守的な考えの奴らもいるが。
その次に巨大な勢力というと、過激派だ。
以前はガンドルフィーニや高音と愛衣も属していた勢力で、その思想は酷い物になると関西呪術協会を潰し、そこに麻帆良の支部を作ると言い出す奴もいるらしい。
主に『闇の福音』、エヴァを快く思っていない奴らや突然の来訪者でありあらゆる物理攻撃がきかないチート存在であるこの俺、アクセラレータに対して不審な考えを持っている奴らがこれに属することになる。
他にも武力による制圧以外をつまらんプライドなどで考えることを放棄している危険な連中もいる。
それが本国……魔法世界からの監視官だったりするらしいから困ったものだ。
こいつ等は基本的に現実を見ていないので、自分の実力を過信している場合が多い。
よって、身の程を知らないと言うことだ。
俺にちょっかいをかけてくるのだったら気持ち良く粉砕してやるのだが、学園長が『エヴァとアクセラレータに対しては絶対不可侵』とそいつ等に言いつけてある為、ちょっかいをかけてくることもない。
少々視線がウザいだけだ。
次に中立派。
主な実力者で言うと刀子や神多羅木、龍宮辺りがそれに属することになる。
純粋に金で動いたり、権力などに興味がない連中が集まる所だ。
真面目な人物が多く、やるべきことはきっちりとする職人タイプの人間が多く集まっている。
そのため、中立派は上司である学園長の命令をよく聞くため、過激派とは疎遠な関係である。
冷静で良く周りを見ているため、麻帆良の優秀な人物はここに集約していると言っても良い。
いざとなれば自分達だけでも行動を起こせる連中が多いからだ。
そう言う奴らは強いと思う。
最後に異端派。
ここには俺やエヴァ、超や刹那など、身元が怪しい人物や異常な能力や力を持っている連中がいる。
過激派の中にいる奴らのほとんどは異端派を排除しようと考えている。
とは言っても、そんな事は学園長がさせないし、例え実行したとしたら俺とエヴァが容赦なくそいつらを刈り取るつもりだ。
自衛行動くらい認めさせているんだ、殺されそうになるんだったら相手も殺して良いと学園長に太鼓判を押されてもいる。
非常に少数派の勢力だが、異常なまでに戦闘に特化している連中が多いので穏健派や過激派ともタメをはれる力を持っている。
なんでも、聞く所によると麻帆良には獣人や魔法世界からの流れ者も隠れているらしい。

アスナや刹那に至っては言うまでもない。

俺も知らない異端派を一度集めてみると、面白いことになるかもしれないな。
他にも小さな勢力はあるのだが、細かく分類してるとキリがないので説明はしない。
高音と愛衣はガンドルフィーニの考えに従い、悪といわれるもの全てが悪ではなく悪といわれるものの中にも悪じゃない連中はいる、という程度の認識で収まっているらしい。
俺から言わせれば悪だの正義だのという言葉で杓子定規に人間を判断するなと言いたくなるが、これでも彼女達が頭を捻って出した結論だ、俺がどうこう言う必要はない。
まあ、自分の中の信念を信じて行動するのが悪いってワケじゃないけどな。
要は、正義と言う言葉で自分が行ったこと全てを正当化することがいけないのであって、自分が行ったことに責任を持つのなら『俺は正義のヒーローだ!』と言って敵を蹴散らしていっても俺はなんの問題もないと思っている。

実際、ちょっと惹かれるところがないわけでもない。

それはともかく。
俺はぐてーっと机の上に頬をだらしなく押しつけながら、高音のほうを見やった。
「にしてもテメェらは変わったな。最初の頃はウンザリするほど俺に注意ばっかしてた女が、今じゃ一緒のコタツで蜜柑食ってンだからな」
「私だって信じられませんよ。一年前の私なら絶対に今の自分を信じないでしょうね。あなたと仲良くしているなんて考えられませんから」
「お姉様、私達ってやっぱり変わったんでしょうか?自分じゃちょっと判断しづらいです」
首を捻る愛衣に向けて、高音は苦笑して答えてやる。
「愛衣は変わったわ。特にズケズケしてる所が変わったかしら」
「ず、ズケズケ?」
「おォ、そォだな。ミョーにでしゃばってくンのはこのごろになってからだな」
「あ、アクセラレータさんまでーっ!!」
涙目になる愛衣をからかいながら、俺は欠伸をした。
こののんびり気分も後何ヶ月くらいだろうな、と思いながら、俺は近づいて来る原作開始に向けて自分なりの身の振り方を考えていた。






夜の十一時五十三分。
一年の終わりまでもう少し。
ようやく一年が終わる、と俺はコーヒーを飲みながらコタツに入ってぬくぬくしている―――というわけではなく。
「何故貴様の家には紅茶がないんだ?というか冷蔵庫の中身はフツーの食材とコーヒーしかないとはどういうことだ?」
「マスター、フツーの食材があった時点でアクセラレータさんの普段の異常さを見るとマシかと思われます」
「フツーの食材があるから五人で鍋を囲めるんだ、別にいいじゃないか」
「……なんで龍宮まで……というかどうしてエヴァンジェリンさんや茶々丸さんまでここにいるんだ……」
「それを言うとテメェもだがな」
今ここには六人の存在がいた。
あえて存在というのは生物じゃねえ奴もいるからだ。
俺、エヴァ、茶々丸、龍宮、刹那の五人。
密かに茶々丸の頭の上にはチャチャゼロが乗っている。
たまに『ケケケ』と笑っているが、龍宮は既に気付いていて完全スルーだし、刹那は何やらぶつぶつと言って暗い表情になっているので気づいていないようだ。
俺はもう諦めの表情で、いきなり『鍋だ!』といって突撃してきたエヴァと茶々丸、そして他二名と一緒に鍋を囲んでいるわけだ。
何故鍋なのかといいたくなる。

普通ソバじゃないのか。

そのことをエヴァに聞くと、どうやらソバを食べるよりも鍋の方が好きから、という何とも自己中な意見のようだった。
エヴァが正直に答えてくれなかったから茶々丸経由で聞いたんだがな。
まあエヴァの突然の突撃にはよく遭うので驚かなかったが、一番驚いたのは龍宮と刹那がやってきたことだ。
夜の十時にもなってやってくる女子中学生がいるとは思わなかったが……こいつ等ならなんとなく納得だった。
刹那は何やら終始不機嫌そうな表情で龍宮を睨んでいたし、何故か龍宮はにやにやとした表情で刹那を見ていた。
その表情は俺とよく似ている、と思う。
刹那をからかっていたのだろうか。
彼女の性格を考えるとそれもアリかなと思う。
そんなことを思って鍋には死ぬほどあわないコーヒーを飲んでいると、エヴァがバシバシと机を叩いた。
「ええい、無視するな!私の質問に答えんか!」
「あァ?俺がフツーの生活してちゃ悪ィのか?」
「へ、返答になってるようで返答になってないぞ……」
「少なくとも水やお茶ではなく水分補給源がコーヒーしかないというのはフツーではないと判断します」
「別にいいじゃねェか、コーヒーが気にいってンだよ」
「気に入るからといってそればっかりというのは流石に飽きるんじゃないか?」
「そォか?だいたいこんな生活だが、飽きたってことァ一度もねェぞ」
俺の発言にエヴァは信じられんと首を振る。

最早コーヒー依存症と化している俺にそれは誉め言葉に値する。 

俺がコーヒーを飲み終えて、カンッ、と机の上に置いた時、時計が零時零分を指した。
年明けである。
まさかこのメンバーで年越しをするとは夢にも思わなかったが。
「明けましておめでとうございます」
「あァ、今年もよろしく」
「……なんというか、この白々しい感じは日本独特の空気だな」
エヴァが苦笑気味に言った。
その途端、俺の携帯が音を鳴らした。
『男なら―――』
俺は折畳式の携帯を開くと、更にまた着信。
どうやらあけおメールのようだ。
こんなマメなことしてくる連中はだいたい想像がつく。

メールを開いてみると、高音と愛衣だった。

二人に対して『ハイハイあけおめあけおめ』と適当に打って返信していると、今度はタカミチやガンドルフィーニからも来た。
それにも同じように返答していると、更に超、ハカセからも。
『年賀状送ったけどデジタルな年賀状も悪くないと思わないか?』という文面と共に、超とハカセで取った写真にマジックで書いたのかいろいろと文字が書かれているという味なあけおめメールだった。
俺は『悪くねえ』と返答した。
更に着信。
俺ってこんな交流関係広かったか?と思ってため息をつく。
それを見た刹那が意外そうに俺にいった。
「アクセラレータさんって顔が広いんですね」
「……まァ、一時期話題になったからな」

この麻帆良ではアクセラレータの名前は『デスメガネ』と同等なほど知名度が高い。

話題になったので、そういえばと思うと結構な関係を構築していると思う。
高音と愛衣は来るだろうなと思っていたが、まさか教師連中と超達からも来るとは予想外だったし。
俺は新たな着信からそのメールを開いて見ると、それは学園長からのメールだった。
読んでみると、

『ちと厄介事が起きたから来てくれんかの?PS、あけおめ』

と書かれていた。
普通あけおめが本文で、前半部分がPSじゃないのか。
いい度胸だ、と俺は立ち上がった。
「ジジイの所に行って来る。どうも俺は正月にもこき使われる立場らしい」
「そういえば、今日は刀子さんと神多羅木先生が見まわっていると聞きましたね……刀子さんが泣いてましたよ」
「彼氏もいねェしな」
「それは禁句です!?」
刹那の悲鳴を無視しながら、俺は再びため息をつく。
「にしても……正月早々妖怪でも出たか?まさか襲撃じゃねェだろうな」
「あけおめ襲撃という奴か?」
「ンな過激な新年の挨拶なンざあンのかよ?」
「……それよりも、それだったら私達の所にもメールが来るはずだ。アクセラレータが呼び出されるほどの戦力なら私達も絶対に呼び出されるはずだからな」
俺の言葉を否定する龍宮の言葉に、刹那もうんうんと頷いた。
時間差で二人の所にも届くんじゃないかと思うが……その辺りは気にしないことにする。
エヴァと茶々丸が『帰るぞ』とばかりに立ちあがると、龍宮と刹那も立ちあがった。
「じゃ、私達もこれで帰る事にするよ。初詣は私のところの神社に来るといい」
「行くかどうかわからねェけどな。厄介事の後始末ってのは異常に時間がかかるってのが当たり前だしよ」
「そうですか……」
そこで、何故か刹那が残念そうにした。
「……龍宮ならともかくなンでテメェが残念そうにすンだよ」
「はっ、あ、いえいえなんでもありません!さっさと帰るぞ龍宮!!」
「はいはい……」
ズカズカと出ていく刹那の後ろを、龍宮は肩をすくめてついていった。
その状況をどこか面白くなさそうに見るエヴァ、そして何故かオロオロする茶々丸を見て、この場は微妙な空気になった。
チャチャゼロは『案外罪作リナ男ジャネーカ、アクセラレータ』と言っていた。
フザケンなと茶々丸の頭から風で撃ち落してやった。






~あとがき~

順調にフラグが構成されつつある刹那をいじり、ほのぼのしただけです、はい。
完全にマンネリですね……前半にちょこっと戦闘シーンを加えただけで。
そろそろ殺伐とした時間が欲しい頃です。
というわけで、次回は久しぶりにシリアス一本槍で進めます。
ほのぼのは長く続いた分、ここで一旦区切りですかね。


今日は絶対にもう一話あげます。
もうだいたい頭の中に書きたいのは出来上がってるので、かなり早く仕上がると思います。


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