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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第11話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/25 23:45
SIDE 桜咲刹那

ここは……病室?
私が目を覚ましたそこは、見慣れた病室だった。
見慣れた、というのは私が何度も無茶をしてここまで運びこまれたからだ。
今回も無茶をしたのか……と私は寝起きのぼんやりとした頭で思った。
確かこんな状況に言うべき名言があったはずだが……ぼんやりとしているせいで思い出せない。
そのまま体感的に十分ほどぼーっと虚空を見つめていた私だったが、何があったのか思い出してガバッと起き上がる―――。
「ぐっ……!?」
その時、激しい痛みが体を襲い、私は思わず体を強張らせてベッドに倒れた。

気を消費した反動が来ているのだ。

普段人間としての気を使っている私が、いきなり烏族の力を使うには少々無茶だったようだ。
あの時はやったこともない全力の極大雷鳴剣も放ってしまったし。
私の身体の内部はボロボロになっていることだろう。
それよりも、私は体の痛みより気にかかることがあった。

あの時大鬼を吹き飛ばして私を助けに来てくれた、アクセラレータのことだ。

私が翼をしまった記憶はない。
もしかしたら彼に翼を見られていたら、まずいことになる。
私が混血だと知っているのは関西呪術協会の連中、そして一部の上層部の人間だけだ。
混血とは忌み嫌われる存在。
彼が私の翼のことを誰かに尋ねているのなら、私が隠してきた翼が明るみに出る事になる。
覚悟はしていた。
だが、いざとなると不安になる。
今まで良くしてくれていた先生方に拒絶されるのが怖いのだ。
やはり、私は麻帆良を去らなければならないのだろうか。
重い気分になっていると、シャッ、と私の前にあるカーテンが開かれた。

「ああ、気がついたのね。具合はどう?」

その人は私がここに運ばれた時に応対してくれる看護師の女性だった。
名前も知らないが、魔法関係の人だ。
いつもながら私の外傷は見当たらないので、彼女が治してくれたんだろうと思う。
「身体のあちこちが痛いです。おそらく気を使いすぎたからだと思います」
「ええ、空っぽだったものねえ……限界以上の気を使ったでしょ?若い子にはよくあることなのよ」
そう、麻帆良に来る前は私もよくやった。
斬岩剣の練習をしているとき、気を大量に込めすぎて暴発してしまった時がある。
その後は一週間近く動けなくなり、師範には酷く叱られたものだ。
それの特大版、という所だろう。
「高畑先生たちも心配してたわよ?」
「……あの、アクセラレータさんは……?」
女性は首を傾げた。
「ここにあなたを運びこんできたのは高音さんだったし、それから来た人達の中にアクセラレータさんはいなかったわね。白い髪の人でしょ?」
女性の問いに頷きながら、その高音さんという人には改めて礼を言っておこうと思った。
「今の時刻はいつでしょうか?」
「ええと……朝の九時よ。学校はお休みになってるから、今日一日はきっちりと休みなさい。明日になったら身体の痛みもほとんど引いてると思うから」

本当にそうなら、この人はかなり医療術の使い手ということになる。

気を使いすぎた激痛を癒すにはそれ相応の知識と技術がいるからだ。
「……ありがとうございます」
「いいのよ、戦うのがあなたたちの仕事なら、私は治すのが仕事だから」
それもそうだと思い、私は少し硬い枕に頭を沈めた。
私の身体はよほど睡眠を欲していたのだろう、カーテンが閉まる音を聞いた直後に意識が落ちた。






次に目覚めた時、私はいきなり度肝を抜かれる事になった。

「おォ、起きたかよ」

「ッ!?」
びくぅ!!とその声に驚いてしまい、激痛に苛まれてしまう体にうめく。
私が痛みを堪えながら声がした方を向くと、そこにはパイプ椅子に腰掛けてにやにやと笑っている白い男。
アクセラレータがいた。
「なっ、な、なんでここに……!?」
「どォでもいいだろ、ンな事。あァ、そう身構えンな。テメェにちょっと聞きてェ事があるだけだ」
寝起きで混乱する頭の中で、何故か最後の言葉だけはするりと頭の中に通った。

聞きたいこと。

おそらく、あの事に違いない。
私が喋る前に、アクセラレータは掌の上にある拳大の機械を見せてきた。
「こいつはとある発明家が発明した音波遮断装置でな。ある一定範囲の音を外に漏らさない機械だ。俺とテメェの話は一切外には漏れねェから気にすンな」
まるで、私が話す事がわかっているような口ぶりだ。
もしかしたらもう学園長に聞いてしまったのだろうか。
私は気持ちを落ちつけるために一度深呼吸をして、アクセラレータを見つめた。
私が落ちついたのがわかったのだろう、彼もいつもより幾分か真剣な声で尋ねてきた。

「あの白い翼はなンだ?」

やはり、見られていたか。
当たり前か。
最後の会話を思い出して見ると、あの時アクセラレータはばっちりこちらを見ていた。
その時はまだ翼をしまっていなかったのだから、当然だ。
「……あなたは人以外の種族を知らないかもしれませんが……私は烏族と呼ばれる人外と人間との混血です」
それ自体には全く驚きを示さなかったアクセラレータは、疑問そうに眉を寄せた。
「ウゾク……烏?カラスか?カラスだったらなンで翼が白いんだよ?普通カラスは黒いモンだろ?」
その質問は正直答えるのが躊躇われる。
だが、答えなければこの人は絶対に納得しないだろう。
私は彼の視線に観念する事にした。
私の顔は自然に俯く。
「突然変異なんです。もしかしたら混血だからかもしれませんが……百年に一度くらい、白い翼の烏族が生まれるそうです」
「ほォ……なるほど。アルビノと同じってことか」
「はい」
で?と彼は膝に頬杖をついて追求して来る。
「そのアルビノの烏族と人間の混血が、どォしてこんな所にいンだよ?俺だったらそんな貴重な存在をわざわざ人里に手放そうとは思わねェけどな」
やはりそこに踏み込んで来るか。
彼はやはり頭の回転が速い。

隠し通す事はできなさそうだ。

「……白い翼は、烏族にとっては禁忌なんです。それに、私は人間との混血だったから……里を追い出されて路頭に迷っている所を拾われて、今はここにいます」
かなり端折ったが、私の生涯を短く言えばこんなものだろう。
迫害されて里を追い出され、拾われたのが長だった。
流石に、このかお嬢様のことまでは言う気にはなれないが。
私が俯いた顔を上げると、そこにはまさしく『ふーん』という言葉が似合いそうな表情をしているアクセラレータの姿があった。
あまりにも無関心そうなその顔を見て、逆に私が戸惑ってしまった。
「あ、あの、なんとも思わないんですか?私はあなた達のような人間とは違うバケモノなんですよ?怖いとか思ったりしないんですか?」
「……はァ?」
アクセラレータは心底理解できないみたいな声を上げると、

いきなり立ち上がって私の両頬を掴んでむにむにと引っ張り始めた。

いきなりの意味不明な行動に目を見開いていた私だったが、やがて襲ってきた痛みに悲鳴を上げる。
地味に痛いのだ。
というより、身体が、身体がァッ!?
「ひ、ひひゃいへふ!ひゃ、ひゃめふぇー!」
振り払おうとしても激痛が走るのでペシペシとアクセラレータの身体を叩く事しかできない。
しばらくむにむにとした後に、彼は私の額をチョップで叩いた。
「はうっ!?」
何故彼のしょーもない攻撃はこんなに痛いんだろう。
とにかく抗議の篭った瞳で私はアクセラレータを睨むが、そこにいたアクセラレータは呆れたような顔をして私を見下ろしていた。
「あのな、バケモノは『ひひゃいへふー』とか、『はうっ』とか言わねェンだよ。バケモノってのは際限なく破壊を生み出す存在やらいくら殺しても死なねェとかそういう奴等を指すンだよ。たかが翼が生えたくらいで何バケモノ気取ってやがる。空を飛ぶ事くらい魔法使いにだってできるだろうが」
「た、たかが翼って……」

愕然とした。

今まで私の翼の存在を認めてくれたのは長や一部の人のみ。
それ以外の人や烏族は私の翼を禁忌として、汚れた者として侮蔑の視線を送って来ていた。
翼の事を言われたのも少なくない。
だというのに、この人は翼が生えたくらいなんだ、と言っている。
翼が生えるのと空を飛ぶ魔法使いを同列に見ている。
記憶喪失をしているからこその価値観かもしれないが……私はそんな横暴な考えに触れた事がなかった。
私がいまだ呆然としていると、彼は私の頬を両手でバチン!と挟んだ。
「ふぁうっ!?」
「それになァ、バケモンはテメェの目の前にいるだろうが。どんな物理攻撃も効かない、無詠唱でとんでもねェ魔法を使う、気も魔法も使わずにその現象を起こす、7メートル近くある大鬼を一撃で殺す俺のどこが普通の人間だ?」

……確かに。

なんだかよくわからないから放置していたが、確かに彼の力のほうがよっぽどバケモノに近いかもしれない。
「……そこで納得するってのァテメェが図太いって証拠だな」
そう言って彼は私の頬から両手を離した。
何時の間にか表情に出ていたらしい。
慌てて謝るが、彼は気にするなと手を振った。
「言い出したのは俺だからな。とっくに自分がバケモノだってくらい自覚してるンだよ。お前がそう思ってたようにな」
彼はにやっと笑みを浮かべた。
それは私が気絶する直前に見たあの悪魔的な笑みではなく、どこか人を安心させるような笑みだった。
はたから見ればとても区別はつかないが、なんとなく私にはわかった。
「テメェのバケモノの定義がどんなモンか知らねェが、テメェの台詞は本物のバケモノを知らない奴の台詞だ。本物のバケモノはただ翼が生えてるどころじゃねェ。見た瞬間に恐怖するモンをバケモノってンだよ。人間でもバケモノみてェに強ェ奴はいるし、バケモノみてェな姿に変えられちまう奴だっている。テメェは恵まれてンだぜ?」
そこで何故か、彼は寂しげな表情を浮かべた。
いつか見た、世界樹の上でのあの表情だ。
「断言してやる。ただ翼が白いとか混血とかだけでバケモノになるんじゃねェ。翼が白くなくて純血だとしても百人千人殺してる奴の方がよっぽどバケモノだ。そこまでテメェは堕ちちゃいねェだろ?」
そう言うと、彼は立ちあがった。
若干その顔が赤いのを見ると、照れているのだろうか?

「テメェの翼をバケモノ呼ばわりする奴がいたら俺の前に連れて来い。そこで本物のバケモノって奴をみせてやるからよ」

彼は私が何も言えないまま、機械のスイッチを切るとカーテンを開けて外に出ていった。
「あら、もういいの?まだ彼女起きてなかったと思うけど?」
「いいンだよ、言いてェことは今度言うさ」
どうやら本当に会話は聞こえていなかったらしい。
女性にそう言い残し、アクセラレータは病室から出ていった。
今思うと、ここは病室ではなく保健室なのかもしれない。
カーテンの向こう側にあの女性もいるし。
ようやく思考が始まってくるのを感じると、私は彼の言葉を思い出す。

本物のバケモノ、か。

あなたはどれだけの人を殺して来たんですか、アクセラレータさん。






SIDE 一方通行

少し迷ったが、俺は刹那の所に行くことにした。
なんと言っても翼を見てしまったし、動くのもキツいそうだから俺のところに来させるのもなんだかアレだし。
だから俺は高音に聞いて刹那の病室にやってきたのだが、コイツ寝てやがる。
疲労してるから当然と女性の治療術師が言っていたが、せっかく尋ねてきてやったのにこれはないだろうと俺の自己中心的理論が爆発した。
寝ている間に落書きでもしてやろうと思ってマジックを取り出したのだが、その直前に瞼がピクリと動いた。

チッ。

俺は舌打ちすると、目を薄く開いた彼女に問い掛けた。
「おォ、起きたかよ」
「ッ!?」
何故か刹那はそれに過剰に反応し、びくぅ!!と竦み上がった。
何がそんなにビビったのかね。
しかも痛むのかうぐぐと唸りながら震えている。
痛みを抑えながら、とでも言うのだろうか。
そーっと、という言葉がピッタリな動きで刹那はこちらの方を向いた。
彼女の顔は動揺の一色で染まっていた。
「なっ、な、なんでここに……!?」
「どォでもいいだろ、ンな事。あァ、そう身構えンな。テメェにちょっと聞きてェ事があるだけだ」
そう言って、俺は掌の上にある拳大の機械を見せた。
「こいつはとある発明家が発明した音波遮断装置でな。ある一定範囲の音を外に漏らさない機械だ。俺とテメェの話は一切外には漏れねェから気にすンな」
実を言うと、今日の朝にハカセから借りてきたのだ。
ふふ、持つべきものは友だ。

ちなみに彼女が尊敬する人はアキハ○ラアトムと早乙○博士らしい。

一番にアキハ○ラの名前が出て来る所は流石と言わざるを得ない。
この名前を知らない人はググってみよう。
お母さんに聞いても知らないだろうから聞いたらだめだぞ。

……それはともかく。

俺はようやく俺がいるという状況を受け入れたのか落ちついてきた刹那の様子を見てから、シリアスな顔で尋ねた。
「あの白い翼はなンだ?」
すると、刹那は納得したような表情をした。
やっぱり、という感じだ。
少し悩むような葛藤を見せたが、この俺相手に隠し事は不可能だと考えたらしい、ぽつぽつと話し始めた。
「……あなたは人以外の種族を知らないかもしれませんが……私は烏族と呼ばれる人外と人間との混血です」
「ウゾク……烏?カラスか?カラスだったらなンで翼が白いんだよ?普通カラスは黒いモンだろ?」
それは彼女の内に踏み込む言葉である。
それを知っていて、俺はそう言った。
卑怯かもしれない。
だが、彼女が彼女自身を認めてくれる人間がいる事くらい知って欲しい。

アクセラレータのぶっきらぼうな言葉でも。

俺が真剣な目で彼女を見つめていると、刹那は観念したように俯いて、ぼそぼそと話し始めた。
「突然変異なんです。もしかしたら混血だからかもしれませんが……百年に一度くらい、白い翼の烏族が生まれるそうです」
「ほォ……なるほど。アルビノと同じってことか」
「はい」
そこは新事実だ。
混血だから生まれるかもしれない突然変異か。

純血の烏族とは違う人間の血が混ざるから変異が起こりやすいのかね。

……解析はともかく。
で?と俺は膝に頬杖をついて追求した。
「そのアルビノの烏族と人間の混血が、どォしてこんな所にいンだよ?俺だったらそんな貴重な存在をわざわざ人里に手放そうとは思わねェけどな」
すると、刹那はつらそうな顔をした。
これは彼女の過去をえぐる言葉だ。
知っていて言うんだから、俺もあくどいよな。
「……白い翼は、烏族にとっては禁忌なんです。それに、私は人間との混血だったから……里を追い出されて路頭に迷っている所を拾われて、今はここにいます」
傍から見れば非常に涙ぐましいエピソードであるが、俺にとっては涙を流すどころか『ふーん』と無関心に流すくらいの出来事でしかない。

なにせ、そんな子供の末路にしては今の刹那の待遇は奇跡のように良いものだから。

そんな事を思っていると、刹那は戸惑ったように俺に聞いてきた。
「あ、あの、なんとも思わないんですか?私はあなた達のような人間とは違うバケモノなんですよ?怖いとか思ったりしないんですか?」
「……はァ?」
やっぱそう思ってんのかコイツは。
しょーがない。
俺は立ちあがると、いきなり刹那のほっぺたを摘んでむにむにしてやった。
「ひ、ひひゃいへふ!ひゃ、ひゃめふぇー!」
振り払おうとしても激痛が走るのでペシペシと俺の身体を叩く事しかできない。
お、なんか楽しい。
ていうか涙目の刹那ってなんかこう、クルものがあるな。

やべえ、もっといじめたくなってくる。

俺もアクセラレータもSのせいか非常にこういうイジメはハマる。
エヴァや高音をいじってる時なんて至福の一時だ。
まあ、こういうのもやりすぎては嫌われるため、俺は仕上げとばかりにチョップをかましてやった。
「はうっ!?」
刹那は頭を抑えた後、抗議の篭った瞳で俺を睨んでくる。
予想通り、と俺は刹那を見下ろしてから、言ってやった。
「あのな、バケモノは『ひひゃいへふー』とか、『はうっ』とか言わねェンだよ。バケモノってのは際限なく破壊を生み出す存在やらいくら殺しても死なねェとかそういう奴等を指すンだよ。たかが翼が生えたくらいで何バケモノ気取ってやがる。空を飛ぶ事くらい魔法使いにだってできるだろうが」
「た、たかが翼って……」
刹那は驚いているようだが、一般人……いや、元一般人の俺からして見れば翼くらいなんだと言いたい。
垣根帝督に比べれば刹那の方が何倍も良い人だ。
それに、翼を展開して身体能力が上がる程度ならかわいいものだ。
あっちは『未元物質』なんて意味不能力を使ってくるからな……あっちの翼の殺傷能力に比べれば刹那の翼はまさしく天使そのものだろう。
俺の言う事が信じられないのか刹那はまだ呆然としていたので、俺は喝をいれるためにその両頬をバシンと挟んだ。
お、いい音。
「ふぁうっ!?」
「それになァ、バケモンはテメェの目の前にいるだろうが。どんな物理攻撃も効かない、無詠唱でとんでもねェ魔法を使う、気も魔法も使わずにその現象を起こす、7メートル近くある大鬼を一撃で殺す俺のどこが常識人だ?」
俺が言った後、何故か刹那はうんうんと頷こうとした。
「……そこで納得するってのァテメェが図太いって証拠だな」
そう言って俺が手を離すと、刹那がペコペコと謝ってきた。
俺は気にするなと手を振った。
「言い出したのは俺だからな。とっくに自分がバケモノだってくらい自覚してるンだよ。お前がそう思ってたようにな」
俺はにやっと笑みを浮かべた。
そう、俺の方こそバケモノだ。
最早鬼を叩き潰すことに罪悪感や嫌悪感すらわかない。
生死についての感覚が曖昧になってきているのがわかる。
アクセラレータが内包する闇ってもんは、どうやら一般人を侵食してきてしまうものらしい。
日々、それに恐怖を覚える。
力を得るためにはリスクが必要だとわかってはいたが、いつ『自分』というものが消えてしまうか、恐ろしい。
ガチン、と何やら“聞こえない音”がする。
この自分が自分でなくなるような感覚。

来たか、『一方通行』。

何か言いたい事があるみたいだ、と思い、俺はその虚脱感に身を委ねた。
俺の口が勝手に滑り出す。
「テメェのバケモノの定義がどんなモンか知らねェが、テメェの台詞は本物のバケモノを知らない奴の台詞だ。本物のバケモノはただ翼が生えてるどころじゃねェ。見た瞬間に恐怖するモンをバケモノってンだよ。人間でもバケモノみてェに強ェ奴はいるし、バケモノみてェな姿に変えられちまう奴だっている。テメェは恵まれてンだぜ?」
俺の記憶……正確には一方通行の記憶だが、その中には人体実験ってのは腐るほどあった。
それこそファンタジーに出てくる典型的な『人外』に改造された人間だっていた。
泣き叫びながら死んでいく奴だっていた。
生きている。
何の不自由もなく生きている。

“それだけの事実がどれだけ得難い幸福か、コイツは知らない”。

「断言してやる。ただ翼が白いとか混血とかだけでバケモノになるんじゃねェ。翼が白くなくて純血だとしても百人千人殺してる奴の方がよっぽどバケモノだ。そこまでテメェは堕ちちゃいねェだろ?」
その通りだ。
刹那は人を切ったことがないはず。

ならば、一万人以上殺してきている一方通行の方がバケモノなのには違いない。

一息ついた後、俺は自分の体を確かめるように拳を握った。
彼も刹那に何かを感じたのだろうか。
俺がここにやってきたのはそれが理由なのか?
一方通行が何か言いたくなったからなのだろうか?
自分の行動が時折わからなくなる。
これが憑依の弊害って奴なのか?
そんな事を思っていると、今言った台詞が無性に恥ずかしくなり、俺は踵を返す。

だが、とりあえず最後にこれだけは言わせてくれ。

「テメェの翼をバケモノ呼ばわりする奴がいたら俺の前に連れて来い。そこで本物のバケモノって奴を見せてやるからよ」
そんな差別をする奴は俺は許しておけない。
一般人のケツの青い正義感だということはわかっている。
だが、どうも一方通行も俺と同じようなそれを持っているようだ。
ならば、彼と共に怒るべきだろう。
そう俺は自己中心的思考に貶められながら、機械のスイッチを切ってカーテンの外に出る。
そこには女性の医療術師がいた。
「あら、もういいの?まだ彼女起きてなかったと思うけど?」
「いいンだよ、言いてェことは今度言うさ」
適当な事を言って、俺は保健室の外に出る。
保健室のドアを閉めて歩き出そうとすると、そこにはエヴァが立っていた。
まだ授業サボタージュしやがったな。
彼女は仁王立ちになりながら、何故か不満そうに俺に尋ねて来る。
「……何をしていた?」
「こンな所に来るンだ、昨日の事も考えれば目的は一つしかねェだろ?」
「わからんから聞いている。……貴様、桜咲刹那に助言していたな?」
何故エヴァにそれを問われなければならないんだ?
俺はエヴァの不可解な行動に内心で首を捻りながら、正直に答える。
「まァ、助言だな。それとテメェは知ってるだろうアレうんぬんの話だ」
「アレか。それにしても、貴様が助言するなんて珍しいじゃないか。惚れたのか?」
「くだらねェ」
惚れた?
だから助言する?
くっだらねェ。
惚れたんならもっと具体的に助言するし、もう少しマシな応対の仕方をする。
それに、相手が弱っている所につけこむみたいで、俺は嫌だ。

もっとピュアな恋愛が良い。

……アクセラレータには無理な話かも知れないが。
俺が照れ隠しではなく本気で不機嫌になったのを察したのか、エヴァはそれ以上問い詰めずに踵を返して階段を上がっていった。
本当になにがしたかったんだろうな、エヴァは。
胸クソ悪ィ。
俺はそう呟くと、手身近にあったゴミ箱を蹴っ飛ばした。






SIDE エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル

私は屋上から奴が校舎の中に入って来るのが見えた。
こんな昼間から……ジジイにでも呼び出されたのか?
私のその内心の考えは覆され、奴は保健室に向かった。

保健室?

風邪でもひいたんなら病院に行けば良いのに。
そう単純に思った私だったが、保健室に入っている奴に覚えがあった。
昨日の停電騒ぎだ。
過去最高とも言える戦力で攻めこんできた関西呪術協会の過激派は、後一歩の所でアクセラレータを始めとする最強クラスの面々にボコボコにされて帰っていった。
まあ、アクセラレータとタカミチが同時にいる時に攻めこんではダメだな。
せめてタカミチがいない時に攻めれば良いのに。
アクセラレータはここに住みついて離れないしな。
まあ、停電というのは確かに学園結界がなくなって良いが、あれは妖怪の出現を抑えるのが主な機能で、他には探知系の術式くらいしか込められていない。

よって、召喚される鬼の数や力などには全く影響しないのだ。

探知されにくいという利点もアクセラレータの尋常ならざる探知能力でバレるのは必死。
面白そうだからジジイの所で戦闘を見物させてもらったが、奴の戦闘は出鱈目が実体化して歩いているようなものだった。
ベクトルの向きを操作すると言う能力がここまで強いとは。
どんなベクトルを操作しているのか知らないが、奴は近接戦闘中は凄まじい速度で動く。
連続瞬動ならず無限瞬動だ。
あれが奴の通常移動速度なのだから笑えない。
そしてこのごろ筋力が上がり、タカミチに体術を習うようになってきたせいかパンチの威力がかなり上がってきている。
普通に殴っても鬼の上半身を丸ごと吹き飛ばすような威力だったしな。
それに、奴の表情を見るとあの掃討戦も近接戦闘の実験みたいな感覚だったように思えた。
そして龍宮真名からの情報を受け取った後。

アレは凄かった。

タダでさえ速い速度がもはやズームアウトしなければ視認もできないくらいに速くなった。
お遊びはここまでだ、とばかりに速度を増したアクセラレータは誰にも止められるようなものではなかった。
あらかた駆逐すると後はタカミチに任せ、奴は一気にその場を離脱する。
その速度も音速を遥かに超えた動きを見せていた。
一瞬だけだが、桜咲刹那を追い詰めていたあの大鬼に到達する1キロ手前から音速の三倍以上の速度が出ていたとジジイが言っていた。
どんなベクトルをどう使ったらそんな動きができるのか、今度じっくり確認する必要がありそうだな。
そして、最後に今度は殴りつけるだけで大鬼の身体を不自然に爆砕させた。
と言っても肉体が内部から膨れ上がった感じだったので、炎属性による爆発ではなさそうだ。
あれもベクトルを操作したのだろうか。

まったく、なんでああいうことばかり応用を思いつくのだろうな、奴の脳は。

ま、そんな所を見ていたおかげで、私はこの中等部の保健室に桜咲刹那が運び込まれた事を知っている。
そこに奴が向かったのだから、刹那の翼の話に違いない。
ジジイは既に詠春の奴から話を聞いているようだった。
でなければ判断にも困る場合があるだろうからな。
私は刹那とアクセラレータが話をしている光景を見て、どうにも面白くない感覚を抱いた。

あの桜咲刹那には未だに近衛このかに隠し事をしている負い目と自分の生まれによる差別から自分に自信が持てないでいる。

それから来る研ぎ澄まされた刀のような気配に、私は共感を覚えていた。
それが、奴によって崩されるのではないのか。
奴によって、何か特別な価値観がもたらされるのではないか。
奴には全ての常識や感性が通用しない。

それ以上に、無意識だ。

奴は自分の言葉が他人に与える影響を全く考慮していない。
だから、結果的に私は奴が桜咲刹那を救ってしまうのではないか、と思っていた。
それは面白くない。
なんだか、非常に面白くない。
そんな事を思っていると、私は何時の間にか保健室の前に立っていた。
そして、アクセラレータが眼前にいた。
考え事が自然と行動に移っていたか……私らしくないな。
私は内心のイライラを隠そうともせずに、アクセラレータに尋ねた。
「……何をしていた?」
すると、コイツはとぼけたように答えた。
「こンな所に来るンだ、昨日の事も考えれば目的は一つしかねェだろ?」
「わからんから聞いている。……貴様、桜咲刹那に助言していたな?」
それしかない。
私は確信していた。
奴は図星なんだろうが、それ以上に私がそんな事を聞いて来るのが疑問だったのだろう、少し眉根を寄せていたが、正直に答えたようだった。
「まァ、助言だな。それとテメェは知ってるだろうアレうんぬんの話だ」

アレ。

つまりは、桜咲刹那の翼の事だろう。
「アレか。それにしても、貴様が助言するなんて珍しいじゃないか」
ここで、私は私自身も思わぬ事を口にする。
「惚れたのか?」
「くだらねェ」
即答だった。
というか、今私はなんでこんな事を聞いた?
目の前のアクセラレータから闇のオーラのようなものが徐々に漏れ始めているのがわかる。

このままいるとまずい。

私でも、コイツの陰湿な闇には敵わないのは百も承知だ。
600年生きてきたが、コイツの種類の闇は初めて見る。
底が見えず、どこまでも深淵。
それが恐ろしくなって、私の体は少し強張った。
私はそのままその場の雰囲気に耐え切れず、逃げるようにその場を去った。
私は混乱していた。
どうして、私はあんな事を聞いたのか。

何故だろう。

わけがわからなかった。
私は腹いせに、屋上の扉を思いっきり蹴り飛ばした。
跳ね返って来たので、今度は回し蹴りで蹴り飛ばしてやった。






~あとがき~

できる限り更新します、作者です。
自分でも思いますが、今日の執筆速度は異常ですねwww
やはり刹那が私のキーポイントですね。
明日更新できないかもしれませんので、これで勘弁してください。

えー、あれだけ説教自重とかぬかしておきながらまた説教っぽいことになってしまいました、すみません。
刹那って頑固ですからあれくらい言わないとダメかと思いまして。
なんとか『一般人』と『一方通行』の区別をしたうえで、人格を乗っ取られる『一般人』の心境を書いたつもりです。
実は彼も内心でオドオドしてたりします。
エヴァはアクセラレータと自分が似ている事を肯定しているため、そんな存在が人を救うということができるという事実を否定し、それをしようとしているアクセラレータに嫉妬してます。
同族であるが故に気になりますが、同時に少し違うので嫌悪する……そんな複雑な関係です。

次回から麻帆良祭編です。
プロットがもの凄い事に……一応、これまで出てきたすべてのキャラを出すつもりになっています。
応援、よろしくお願いします。


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