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No.18630の一覧
[0] ゼロのひどい使い魔(オリジナル主人公)[castake](2011/12/17 21:37)
[1] <ゼロのひどい使い魔 プロローグ>[castake](2010/05/07 17:41)
[2] <ゼロのひどい使い魔 1>[castake](2011/05/21 02:52)
[3] <ゼロのひどい使い魔 2>[castake](2011/05/21 03:08)
[4] <ゼロのひどい使い魔 3>[castake](2011/05/21 03:51)
[5] <ゼロのひどい使い魔 4>[castake](2011/05/21 04:38)
[6] <ゼロのひどい使い魔 5>[castake](2010/05/20 11:06)
[7] <ゼロのひどい使い魔 6>[castake](2010/08/21 21:02)
[8] <ゼロのひどい使い魔 7>[castake](2010/05/20 11:06)
[9] <ゼロのひどい使い魔 8前>[castake](2010/05/20 11:07)
[10] <ゼロのひどい使い魔 8後>[castake](2010/05/21 09:25)
[11] <ゼロのひどい使い魔 9外伝>[castake](2010/05/07 21:29)
[12] <ゼロのひどい使い魔 10>[castake](2010/05/21 09:25)
[13] <ゼロのひどい使い魔 11前>[castake](2010/05/21 09:26)
[14] <ゼロのひどい使い魔 11後>[castake](2010/05/20 11:09)
[15] <ゼロのひどい使い魔 12>[castake](2010/05/21 09:26)
[16] <ゼロのひどい使い魔 13前>[castake](2010/05/20 11:11)
[17] <ゼロのひどい使い魔 13中1>[castake](2010/05/21 09:27)
[18] <ゼロのひどい使い魔 13中2>[castake](2010/05/20 11:14)
[19] <ゼロのひどい使い魔 13中3>[castake](2010/05/20 11:14)
[20] <ゼロのひどい使い魔 13中4>[castake](2010/05/20 11:15)
[21] <ゼロのひどい使い魔 13後1>[castake](2010/05/21 09:27)
[22] <ゼロのひどい使い魔 13後2>[castake](2010/05/21 09:28)
[23] <ゼロのひどい使い魔 13後3>[castake](2010/05/12 20:56)
[24] <ゼロのひどい使い魔 14>[castake](2010/05/21 09:28)
[25] <ゼロのひどい使い魔 15外伝>[castake](2010/05/13 18:18)
[26] <ゼロのひどい使い魔 16>[castake](2010/05/14 22:39)
[27] <ゼロのひどい使い魔 17>[castake](2010/05/21 09:29)
[28] <ゼロのひどい使い魔 18>[castake](2010/05/16 04:57)
[29] <ゼロのひどい使い魔 19>[castake](2010/05/21 09:29)
[30] <ゼロのひどい使い魔 20外伝>[castake](2010/05/16 20:42)
[31] <ゼロのひどい使い魔 21>[castake](2010/05/18 22:18)
[32] <ゼロのひどい使い魔 22>[castake](2010/05/18 22:20)
[33] <ゼロのひどい使い魔 23>[castake](2010/05/18 22:25)
[34] <ゼロのひどい使い魔 24>[castake](2010/05/21 09:31)
[35] <ゼロのひどい使い魔 25>[castake](2010/05/21 09:32)
[36] <ゼロのひどい使い魔 26>[castake](2010/05/21 09:30)
[37] <ゼロのひどい使い魔 27>[castake](2010/05/21 09:32)
[38] <ゼロのひどい使い魔 28>[castake](2010/05/23 12:19)
[39] <ゼロのひどい使い魔 29>[castake](2010/05/23 12:20)
[40] <ゼロのひどい使い魔 30外伝>[castake](2010/05/23 12:47)
[41] <ゼロのひどい使い魔 31前>[castake](2010/05/24 12:02)
[42] <ゼロのひどい使い魔 31後>[castake](2010/05/25 12:17)
[43] <ゼロのひどい使い魔 32外伝>[castake](2010/05/25 12:18)
[44] <ゼロのひどい使い魔 32外伝 裏>[castake](2010/05/25 12:20)
[45] <ゼロのひどい使い魔 外伝 ~記念~>[castake](2010/05/25 18:04)
[46] <ゼロのひどい使い魔 33>[castake](2010/05/27 12:20)
[47] <ゼロのひどい使い魔 34>[castake](2010/05/28 12:07)
[48] <ゼロのひどい使い魔 35>[castake](2010/05/28 14:00)
[49] <ゼロのひどい使い魔 36>[castake](2010/05/29 10:11)
[50] <ゼロのひどい使い魔 37>[castake](2010/05/29 14:35)
[51] <ゼロのひどい使い魔 38>[castake](2010/05/30 19:51)
[52] <ゼロのひどい使い魔 39>[castake](2010/05/31 20:55)
[53] <ゼロのひどい使い魔 40外伝>[castake](2010/05/31 22:58)
[54] <ゼロのひどい使い魔 41>[castake](2010/06/02 21:05)
[55] <ゼロのひどい使い魔 42>[castake](2010/06/03 22:31)
[56] <ゼロのひどい使い魔 43>[castake](2010/06/13 00:18)
[57] <ゼロのひどい使い魔 44>[castake](2010/06/06 19:02)
[58] <ゼロのひどい使い魔 45>[castake](2010/06/06 19:09)
[59] <ゼロのひどい使い魔 46>[castake](2010/06/10 22:23)
[60] <ゼロのひどい使い魔 47>[castake](2010/06/12 00:24)
[61] <ゼロのひどい使い魔 48>[castake](2010/06/13 00:24)
[62] <ゼロのひどい使い魔 49>[castake](2010/06/13 02:59)
[63] <ゼロのひどい使い魔 50外伝>[castake](2010/06/15 23:10)
[64] <ゼロのひどい使い魔 51>[castake](2010/06/17 00:48)
[65] <ゼロのひどい使い魔 52>[castake](2010/06/17 22:17)
[66] <ゼロのひどい使い魔 53>[castake](2010/06/19 00:56)
[67] <ゼロのひどい使い魔 54>[castake](2010/06/20 02:02)
[68] <ゼロのひどい使い魔 55>[castake](2010/06/20 15:45)
[69] <ゼロのひどい使い魔 56>[castake](2010/06/21 22:07)
[70] <ゼロのひどい使い魔 57>[castake](2010/06/26 13:38)
[71] <ゼロのひどい使い魔 58>[castake](2010/06/27 04:03)
[72] <ゼロのひどい使い魔 59外伝>[castake](2010/06/27 22:39)
[73] <ゼロのひどい使い魔 60>[castake](2010/06/30 23:14)
[74] <ゼロのひどい使い魔 61>[castake](2010/07/05 02:26)
[75] <ゼロのひどい使い魔 62>[castake](2010/07/08 22:08)
[76] <ゼロのひどい使い魔 63>[castake](2010/07/10 23:49)
[77] <ゼロのひどい使い魔 64>[castake](2010/07/18 00:31)
[78] <ゼロのひどい使い魔 65>[castake](2010/07/19 21:58)
[79] <ゼロのひどい使い魔 66>[castake](2010/07/24 01:33)
[80] <ゼロのひどい使い魔 67>[castake](2010/07/27 23:59)
[81] <ゼロのひどい使い魔 68>[castake](2010/08/13 01:27)
[82] <ゼロのひどい使い魔 69>[castake](2010/08/20 01:10)
[83] <ゼロのひどい使い魔 70外伝モンモランシー編>[castake](2010/09/01 00:06)
[84] <ゼロのひどい使い魔 71外伝アニエス>[castake](2010/09/19 18:02)
[85] <ゼロのひどい使い魔 72外伝フーケ編>[castake](2010/09/20 02:34)
[86] <ゼロのひどい使い魔 73外伝キュルケ編>[castake](2010/09/23 14:11)
[87] <ゼロのひどい使い魔 74>[castake](2010/11/20 23:43)
[88] <ゼロのひどい使い魔 75>[castake](2011/06/25 22:50)
[89] <ゼロのひどい使い魔 76>[castake](2011/07/30 18:58)
[90] <ゼロのひどい使い魔 77>[castake](2011/09/06 15:21)
[91] <ゼロのひどい使い魔 78>[castake](2011/12/17 19:10)
[92] <ゼロのひどい使い魔 79>[castake](2011/12/17 19:47)
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[18630] <ゼロのひどい使い魔 78>
Name: castake◆d6014dec ID:f24ad8e7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/12/17 19:10

アーハンブラ城は廃城であり、ところどころ崩れている。
危険な場所にはロープが張って立ち入れないようになっている。内部は正に迷路であった。
侵入する前に兵隊の武器や杖を回収したせいで時間を食ってしまった。

「ってキュルケがいねー」
「サイトが兵隊にいたずらしてる時に先に行っちゃったわよ」

モンモランシーが答える。
いや、止めろよ。もちろんいたずら書きしてた俺じゃなくて、キュルケの方をね。
キュルケを追うべく天守のエントランスに通じる階段を駆け上っていたとき、天守の壁の一角がいきなり爆発した。

「ちっ」

壁の破片といっしょに、キュルケが落ちているのが見えたので急いで落下地点へ走ってキュルケを受け止める。

「ひどい怪我!」

モンモランシーは慌てて水魔法を唱え始める。
シルフィードも変身を解くと、いっしょになって回復の魔法をかけ始めた。

「エルフ……、気をつけて……」
「逃げろって言っただろ!」
「ごめん。サイト……」

そう言うなり、キュルケはがっくりと気絶した。

「モンモランシー、イルククゥ。キュルケを頼む」
「ちょっと、待って! 待ってよ!」

モンモランシーが怒鳴る。

「なんだよ」
「相手はエルフなのよ! 慎重にいかないと……」
「知ってる。なんとかなるさ~」

SIDE:モンモランシー

私は呆然としてサイトを見つめた。
私は、サイトの勇気が怖いと思った。
五万の敵に突っ込んでいったり、エルフをも怖がらない勇気が怖い。
使い魔の契約は、主人の従順な僕になるような効果がある。
それが人間になるとこうも感情をこうも操作してしまうものなのだろうか?

「サイトが危険じゃない!」
「やけに絡むなぁ」

いつものようにヘラっとした顔で答える。

「す、好きなんだからしょうがないじゃない! お願いだから無茶しないで!」
「告白は嬉しいが、モンモランシーにはやってもらうことがある」

どこまでいっても調子を崩さないサイト。
私はサイトの先に見えた人影にドキリとした。
二階に通じる階段の上に、スラリとした細身、エルフの特徴である長い耳。

「エ、エルフ!」
「お前たちも、さっきの女の仲間か?」

サイトが背中の大剣を構える。

「エルフか……、どうしようもねえな。ここは引いたほうが無難だぜ」

サイトの持つ剣がせつなげな声で言った。
私もそう思う。

「引いたらタバサを助けられん」

エルフは一歩ずつ、階段を下りてきた。

「わたしはエルフのビダーシャル。お前たちに告ぐ」

穏やかな声の中に無限の迫力があった。

「なんだ? 聞いてやる」
「去れ。我は戦いを好まぬ」
「おう! モンモランシーとイルククゥはキュルケと一緒に逃げろ」

私に近づき、耳元で「ルイズを連れてきてくれ」とサイトは言った。
私たちは足手まといだ。直感的にそう感じた。
サイト一人ならきっと逃げ切れる。
エルフの恐怖心から逃げるように私たちはその場を去った。

SIDE:サイト・ヒラガ

助けてルイズさん!
とりあえず、モンモランシー達を逃がしたので一安心。
さっさとルイズを連れてこい。
虚無がなきゃ勝てんのだよ。
しかし、自分がどれだけ強くなっているか手加減なしで戦えるいい機会だ。
不思議とエルフを目の前にしても妙に心は落ち着いていた。

「貴様は逃げないのか? 我は戦いを望まぬ」
「ふっ。ここで逃げたら俺が俺でなくなるのさ。それにタバサを助けられない」
「タバサ? ああ、あの母の子か。それは無理だ。我はその母の子を〝ここで守る〟という約束をしてしまった。渡すわけにはいかぬ」

じゃあしょうがないよね。先手必勝。
落ちていた壁の破片を素早く拾って投げつける。
ビダーシャルの手前の空気がゆがんだ。
破片が弾き飛ばされた。
わかってはいたが実際問題かなり厄介な相手である。
幻想殺しがあればっ!!
まあない物ねだりをしてもしょうがない。

「立ち去れ。蛮人の戦士よ。お前では、決して我に勝てぬ」
「しるか! 投石を跳ね返すとかどんな魔法だよ!」
「ありゃあ〝反射《カウンター》〟だ。戦いが嫌いなんてぬかすエルフらしい、厄介でいやらしい魔法だぜ……」
「便利だね。解説よろ」
「あらゆる攻撃、魔法を跳ね返す、えげつねえ先住魔法さ。あのエルフ、この城中の〝精霊の力〟と契約しやがったな。なんてえエルフだ。とんでもねえ〝行使手〟だぜ、あいつはよ……。覚えとけ相棒。あれが〝先住魔法〟だ。今までの相手はいわば仲間内の模擬試合みてえなもんさ。ブリミルがついぞ勝てなかったエルフの先住魔法。本番はこれからだけど、さあて、どうしたもんかね」

うん。なにその反則。知っていたが、どうするか。
しかもこの場面。某運命のエロゲーでバーサーカーとアーチャーが戦った場面そっくり。
ならば言うしかあるまい。

「貴様が挑むの剣戟の極地! 恐れずしてかかってこい!!」

日本刀を抜き、二刀流で飛びかかる。
ビターシャルの頭上から一刀両断。
ガキィンとビターシャルの頭上の空間が歪み二刀の剣が弾かれた。
その代わり地面にビターシャルの足が少し埋まった。
やはりな。思惑通り。
弾かれたのは攻撃。
だがその威力そのものも弾かれるわけではなくちゃんと通じた。
つまり、攻撃や魔法は反射するが、発生する力、エネルギーは通じる。ただ、生半可な攻撃力ではまるで意味なく反射されてしまうようだ。はじめの投石は簡単に弾かれたし。
反射自体は厄介だが、倒せなくもない……気がする。

「なに?」

俺の思考とは裏腹に、ビターシャルは驚いていたらしい。
まあ、攻撃は反射したが威力が反射できていないことに驚いているみたいだった。
ビターシャルは知らないだろうが、アニメだったか、原作だったか忘れたが戦車の大砲の弾で壊れていたような記憶がある。
恐らく、反射のできる攻撃許容量がある。
なら、やることは決まっている。

なぎ払いでカウンターごとビターシャルを吹き飛ばす。
ピンポン玉のように壁から壁へ跳ねる。
中にいるビターシャルもその振動は伝わっているらしい。

(タバサ姉妹と3ピーィイイイ)

地面に落ちてきたビターシャルを打ち上げる。
今度は天井と床の間で跳ねる。

「ぐっ」

ありゃ吐くな。上下左右に跳ね飛ばされて目を回しているビターシャル。
カウンターは自動化されてるっぽい。
次々に攻撃をしかけるが、カウンターは機能している。

「蛮人よ。無駄な抵抗はやめろ」
「そういう割に、顔色悪じゃねーの」

ビダーシャルは首を振ると、両手を振り上げる。壁の石がめくれあがり、巨大な拳に変化した。

「なにそれ? 怖いんですけど?」

SIDE:タバサ

居室で本を読み上げる私の耳に、巨大な衝撃音が聞こえてきた。
そのあと、しばらく衝撃音が続いたが……、今度は何かがぶつかって破壊されたような音が響いた。
母が怯えたように布団にうずくまる。
私はそんな母をやさしく抱きしめた。いったい何が起こっているのだろう?
大丈夫ですから、と母につぶやき、ベッドから下り、ドアに近づき扉を確かめる。
だが……、〝ロック〟の呪文で扉は固く閉じられていた。
こうなっては杖を取り上げられた自分になすすべはない。
北花壇騎士として恐れられた、シュヴァリエ・タバサはもうどこにもいない。
ここにいるのはどこまでも無力な、囚われのシャルロット・エレーヌ・オルレアンであった。外で何が起こっているのか確かめたくても、確かめることすらできない。
私はベッドへと戻った。

 怯える母は、じっと『イーヴァルディの勇者』を見つめている。
 私は本を取り上げると、幾度となく繰り返した朗読を始めた。
 本を読み上げながらタバサは思う。
 もしかしたら……、誰かが自分を助けに来てくれたのだろうか?
 シルフィードの顔が浮かぶ。
 キュルケの顔が浮かぶ。
 違って欲しい、と私は思った。
 おそらく、誰もあのエルフには敵わない。
 最後に、サイトの顔が浮かんだ。
 伝説の使い魔、との触れ込みの少年。
 自分を負かした、剣の使い手。
シュヴァリエの自分を剣で負かしたあのサイトなら……、もしかしたらここから私たちを救い出せるかもしれない。

SIDE:サイト・ヒラガ

俺は、目の前に迫り来る石の拳はまるで壁だった。

「ちっ」

これはまずい。
素早く回避行動に移り目の前の石の拳を避ける。が、速さと大きさと威力を持ち備えた石の拳を避けきれるはずもなく。
石の拳で中庭の中ほどまで吹き飛ばされた。
右腕骨折、肋骨も何本か持っていかれた。
デルフの言うとおり、本番はこれからなのだ。

「超痛い」

その割に、俺は相変わらず冷静だった。
仰向けに倒れたまま空を眺める。
ビターシャルは追撃とばかりに石礫を放ってくる。
なんとか立ち上がり、デルフを持つ左腕だけで飛んでくる石礫を落とす。
ドスッ、ガスッ。
何個か身体に当たった。

「もう一度言う。立ち去れ蛮族。無駄なのだ」
「タバサを返せ。アクセラ……じゃなかった。このクソエルフ野郎」
「分からぬな。あの娘はお前にとって何なのだ? 恋人か?」
「今は違うね」

今はね。
さて、どうしたものか。
右腕は完全に折れてる。
肋も痛む。
打撲、擦過傷、切り傷、内臓にもダメージがあるね。
満身創痍。

「では、お前はなんの為に命を無駄にするというのか?」
「やられると決まったわけじゃない。何のためにだと?」

そんなもの決まっている。
ハーレムハッピーエンドのためだ!

「サイト!」

シルフィードが急降下してきた。
そこにはルイズ、モンモランシー、絶賛気絶中のキュルケ、なぜかギーシュがいた。

「余計な奴は逃げろよな。俺がなんとかするっつーの!」
「いいから、黙ってろ」

ギーシュは俺の姿とエルフを見て察したらしい。ギーシュが土の壁を魔法で作る、俺たちの前に大きな壁を作り上げた。
ぶらんとした俺の右腕に、モンモランシーが治癒の呪文を唱え始める。

「ひどい怪我」
「十秒でなんとかしろ」
「無理よ!」
「ちょっと、サイト! エルフじゃない!」

ルイズは状況を把握していないらしい。

「娘っ子! 大仕事をやってもらうぜ! 今すぐ俺に『解除』をかけろ!」
「へ?」
「タバサを助けるんはアイツを倒す必要がある。そのためにルイズの『解除』が必要。詳しくは後で話す」

元々ルイズは頭がいい。
簡潔な説明ですぐに虚無の詠唱に入った。

「さあ、第二ラウンドだ!」
「まだ治ってないわよ!」

モンモランシーの怒鳴り声を無視して前に進む。

「ギーシュ、なかなか役立ったぞ。盾役だけどな!」
「そうかい! もう限界だ!」

エルフの強力な魔法を数十秒耐えただけだが、稀に見ないギーシュの健闘であった。

ウル・スリサーズ・アンスール・ケン……。

ルイズの詠唱で力が湧いてくる。
そして、俺は知った―――。
地面も、城の壁も、使い方次第では武器になりうるのだ。
疾走する。
これまでにないスピードで。

ビターシャルの魔法が襲いかかってくるが、それを右に避けて城の側面を駆ける。
更に天井に飛び、そこから天井の壁を蹴り勢いをつけて落下。
真上からビターシャルに斬りかかる。
ガキン!
ビターシャルの反射でデルフリンガーが弾かれるが体を捻り地面ごと、ビターシャルを真上に叩き上げる。
デルフリンガーが怒鳴る。

「俺にその『解除』をかけろ!」

〝虚無魔法〟がデルフリンガーにまとわりつき、刀身が鈍い光を放った。

「相棒! 今だ!」

吹き飛んだビターシャルに追い打ちをかける。
見えないガラス玉を割るようにカウンターはバリンと壊れる。
そのまま、ビターシャルを斬りつける。
苦痛に顔を歪めるビダーシャル。

「シャイターン……。これが世界を汚した悪魔の力か!」
「シャイたん萌えって、おぅい!」

ビターシャルは左手を右手で握り締めたと思った瞬間
ビダーシャルは糸で引かれた人形のように、宙に飛び上がった。

「悪魔の末裔よ! 警告する! 決してシャイターンの門へ近づくな! そのときこそ、我らはお前たちを打ち滅ぼすだろう!」
「誰が悪魔だ! むしろ天使だ!? あっ、エルフのカワイイ子紹介してよー!」

聞こえなかったのかビターシャルは空へと消えていった。
どさりとルイズは地面に倒れて寝息を立て始めた。
たぶん、俺の追走で疲れていたところに虚無を使ったもんだから疲労で寝たんだろう。

「信じられないけど、エルフを追い払った?」

ギーシュはマヌケ面で言った。

「別にあんたが追い払ったわけじゃないでしょ!」

モンモランシーが言った。まあまあ、落ち着け。まだタバサを見つけてない。


SIDE:タバサ

「もう大丈夫だよ」

イーヴァルディはルーに手を差し伸べました。

「竜はやっつけた。きみは自由だ」

そこまで読み終え、母に視線を落とす。
安らかに寝息を立てている。
先ほどまで響いていた恐ろしい音は、いつの間にか鳴り止んでいた。
扉の向こうに、足音が響いた。
エルフのものでも、兵隊のそれとも違う。
なぜか、私の胸は高鳴った。
期待が胸に膨らんでいく。
私はそれを否定しようとした。
だって、そんなことはありえない。
ありえないのだ。
こんな、ガリアとエルフの国境の地までやってきて、私を救い出してくれることなどありえない。でも、私の耳は、風系統の担い手として鍛えられた耳は、その足音に覚えがあることを教えてくれる。

ガン! と音がして扉は両断された。
学院を飛び出してきたときに見た、黒髪が目に入った瞬間……、私の顔は崩れた。
懐かしい感情が、忘れていた気持ちが心の中に広がっていく。
ルイズを背負ったサイトが近づいてきて、自分に手を差し伸べた。

「シャルロット、君を、助けにきた!」

頬に温かい何かが伝うのを、私は感じた。

私は子供の頃のように泣いた。
忘れていた、安堵の涙を流した。
涙を流しながら私は思う。
もしかしたら自分は探していたのかもしれない。
誰にも頼れぬ孤独な戦いの中で、己で凍てつかせた心の中で、ずっと、探していたのかもしれない。
囚われの場所から。
冷えた心の中から。
救い出してくれるイーヴァルディを。




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