結論から言おう。姫様誘拐事件は未遂で終わった。
ウェールズの遺体が使えなかったのでどこぞのメイジさんが誘拐しようとアンリエッタの部屋付近に近づいたら予め警戒していた魔法衛士隊の隊員とたまたまマリアンヌの所に遊びにきていた「烈風カリン」が協力して犯人を捕らえた。
犯人曰く、なんでこんなに警戒態勢が高いの? バカなの? 死ぬの?
「烈風カリン」がいるなんて聞いてないと言っていたらしい。
骨の手紙には久々に痛快な気持ちになったとか書いてあった。
姫様は誘拐されそうだったと後に聞いたとか。
「烈風カリン」がいたと聞いてその正体を知りたがっているらしい。
それより、事件のことを探れよ。
さらに付け加えて、犯人が首謀がレコンキスタと言ったのであら大変。
ならアルビオンに攻め入りますかと。
骨自体は戦争に反対だが面子の為に結局はアルビオンを攻めなければと書いてあった。
これが上手く運べばウェールズをアルビオン王に仕立て上げれる。
空のアルビオン、地のトリステインと駒が揃えばそれはそれで強力な連合国になるが、ガリアにはまだ劣る。
そろそろ、本気で対七万軍攻略法を考えないと。
一方、事業の方もそろそろ拡張しないといけない。
順調に儲けを出しているが今は水と土の系統魔法の事業のみ。
火の系統の下準備は終えており人材確保中。
風の系統は重労働向きなのだ。
平民向け商品も軌道に乗ったので今度は金のある貴族向けの商売をしている。
金属の食器を土系統が分担して土俵を作り風と水系統が彩る。
ステンレス製品に近い食器ができたときには流石に驚いたが、これもウケがよかったのでそのまま売り出した。
次の売上が楽しみなところである。
さらにもう一つのプロデュース活動がある。
『魅惑の妖精』の買取。
「スカロン店長!」
「ボスゥ、元気~?」
「ははは、元気ですよ。相変わらず盛況ですねぇ」
「ボスのおかげよ」
『魅惑の妖精』の制服はすべてセーラー服である。
服が大量に入ったので俺は思いついた。
ノーパンしゃぶ……じゃなく、セーラー服喫茶ならぬ、セーラー服居酒屋である。
スカロンさんは俺の話に大いに賛同してくれた。
オカマの考えることはわからんが、商売上手のようだ。
「じゃ、またそのうち来るんでそん時は知らない振りしてください。店長好みのカワイイ子もついてくると思うんで」
「あら~、もういっちゃうの? わかったわ。楽しみに待ってる」
男の投げキッスを受けて俺はダッシュで逃げ帰った。
「さて、明日から夏季休暇なんだけど」
「旅するには好都合だね。どこ行こうか?」
「あのゼロ戦で?」
「勝手に国境超えていいならやるけど壊れたら嫌だから馬の方向で」
「自由気ままに旅かぁ、ってそうじゃないわ。任務よ!」
正直やりたくない。
アニエスとかアニエスとかに任せとけよ。
「って聞いてた? あと姫様から追伸で彼に早く会いたいって。ウェールズ様のことよね?」
「聞いてました! アホ女王は国より個人が大事なようです」
ボカッと頭を叩かれた。最近は警告なしで叩くのがルイズの流行りのようだ。
「いてぇな。はいはい、すいませんでした。わるーございました」
「わかればいいのよ」
トリスタニアまでの移動。
学院の馬は使えない。
つまりは徒歩。
季節は夏、歩いて十分でやってられなくなった。
「荷物を背負う、そしてルイズをお姫様抱っこする。俺は何をするつもりでしょう?」
「ちょ、ちょっと何する気?」
「ズルイさん、俺はこう思ってるんです、旅は素晴らしいものだと!
その土地にある名産、 遺跡!暮らしている人々との触れ合い!
新しい体験が人生の経験になり得難い知識へと昇華する!
しかし、目的地までの移動時間は正直面倒です、その行程この俺なら破壊的なまでに短縮できるゥ!
だから俺は旅が大好きなんです!!聞いてますかズルイさん、ズルイさァァァ~~~~ん!」
ガンダールヴの力を最大限に使って、走った。
「ハァァ~~~! また世界を縮めたァ……!」
「ルイズです!」
街についた俺は、暑さと猛ダッシュでへばっていたので、ルイズは一人で財務庁を訪ね、手形を金貨に換えた。
新金貨で六百枚。四百エキューである。
「うぇ~、もう二度とやらん」
「そう? 大分早く着いたからこれからアレで移動したかったのに」
この女、俺を殺すつもりか?!
とりあえず、格好が貴族なので平民に仕立てるために仕立屋に入って地味な服をきせた。
嫌がったが貴族の格好のまま活動したら姫様の依頼の意味がないと説明するとしぶしぶ納得してくれた。
「足りないわ」
「胸が?」
ボカッ。
無言で叩くのはやめて欲しい。
「この頂いた活動費よ。四百エキューじゃ、馬を買ったらなくなっちゃうじゃないの」
「じゃあ帰れば?」
「それこそ依頼の意味ないじゃない」
「おい、ナイチチ、金が少ないのは平民に混じって情報収集するためだろ? 公爵家のナイチチとして頼むならそれなりの金はくれたさ。いいか、平民にまぎれるの! ドゥユゥアンダスタンド?」
ボカボカと殴ってくるがこれでわかってくれた。
「まー、胸は増やせんが金が増やせる場所はあそこにあるぜ?」
「博打じゃないの! あきれた!」
「ならその金でやりくりしろ。半分は俺の分として頂く」
俺はルイズから半分金をもぎ取り博打をすることにした。
赤か黒、ルーレットである。
とりあえず、十エキュー赤にかけてみる。
「ほら見ろ。増えた。自分の才能が怖い」
「わたしに貸してごらんなさい」
「自分の持分でやりな、俺にたかるな」
「なによ。いいわ。使い魔が勝てるなら、主人がやればその十倍勝つわ」
ルイズはいきなり三十エキューを黒にかけた。
俺はルイズが負けて全額スルのを知っているので逆に三百スゥ赤にかけた。
「いきなり大負けしてんじゃん。もうわかったろ? やめとけって」
「う、うっさいわね」
ルイズの目はギャンブラーのそれになっていた。
三十分後……。
「ルイズ」
「あによ」
ルイズは不機嫌な声で答えた。ルイズの手持ちあわせて四百エキューはスっている。
逆に俺はルイズのとは逆の目にかけて倍々に金を増やしていた。初めに三十スゥ賭けてから、もう十五回連続勝っている。三十が六十に六十が百二十にといった感じで増えていった。
所持金は十万エキューに近くなっており怖くなってやめた。
というか、それ以上勝たれると支払できないとオーナーに泣きつかれたので止めたわけだが。
面子があるのか十万エキューは払ってくれた。
ギャンブル狂になったルイズをおいて大金を財務庁で手形に変えてそれを学院にいるマチルダに送っておいた。
ルイズは、暮れゆく街の中央広場の片隅にぼんやりと座りこんでいた。
「その様子だと結局スったな?」
「ど、どうしよう」
捨て犬の顔をしていた。
「お金の怖さを身を持って体験しましたとさ」
「う~~~」
膝を抱えて、ルイズが悲しげにうなる。
ここで俺に金をよこせといわないのは貴族のプライドだろうか?
「ん?」
見覚えのあるオカマがいた。俺を見つめている。
俺はルイズの後ろでスカロンに手招きをした。
ニコッと笑ったスカロンが近づいてくる。
「なにやらお困りのようね。よかったら、うちにいらっしゃい。わたくしの名前はスカロン。宿を営んでいるの。お部屋を提供するわ」
「いやぁ、ルイズ。助かったな良い人がいたぞ」
「ほんとですか!」
「ええ。でも、条件が一つだけ」
「なんなりと」
「一階でお店も経営してるの。そのお店を、そこの娘さんが手伝う。これが条件。よろしくて?」
俺はスカロンにウインクした。
ルイズはしぶったが俺が睨むとおとなしく頷いた。
「トレビアン」
スカロンも俺に目配せをしてきた。
「じゃ決まり。ついてらしゃい」
「なんかイヤだわ。あいつ変」
「お前、えり好みできる立場だと思ってんのか?」
ガクリとルイズは肩を落とした。
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モンモランシーの人気に嫉妬wwwww
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