アンリエッタの部屋を出て十歩も歩かないうちにニコニコ顔の骨に見つかった。
ルイズたちは俺を置いてそそくさと帰っていってしまった。
おい、助けろバカ!
「まあまあ」
にこやかな顔で俺をどこぞの部屋に押し込めた。
「この度は誠にお世話になった。改めてお礼を申し上げます」
「いや、そんな大相な」
「いえいえ、お陰さまでアルビオンの捕縛した兵やら賠償金で我が国も強化されます」
土下座でもしないばかりにお礼をしてきた。
「なにが目的です?」
「今後のことにおいて何かご教授願えれば」
今後?
レコンキスタ撲滅させれば満足か?
だとしたら、アニエスの敵、裏切り者のことでも教えてやるか。
「ほう、我が国を裏切る貴族をあぶり出す策ですか」
「まだ実行には早いですけどね」
「確かに今では上手く逃げられる可能性が高いですな」
夏期休暇にやるからそれまで遊ばしてくれ。
その後、骨とは政治、経済、戦後処理について話しあった。
うう、俺は政治家じゃねーぞ。
なんでこんな色気のないことしなきゃならん。
一人寂しく城下町を歩く。
あ、アレは幻の!
「セーラー服だぁああ!」
店にあるセーラー服を全て購入した。全く後悔していない。
三着しかなかったが、今後入荷したら俺に連絡するよう店の亭主と契約を結んだ。
テンションの上がった俺は学院までガンダールヴの力を使い奔って帰った。
「相棒、めちゃくちゃだな」
「走ったことを今は後悔している」
馬での移動よりも確実に早く帰ってきたがその分、疲労は溜まった。
ルイズの部屋に帰ってきた。部屋ではベッドの上で上機嫌で始祖の祈祷書を開いていた。
「おっす、君が置いていったおかげで酷い目にあった」
「何いってるの? 枢機卿とはペンフレンドなんでしょ?」
「まあ、そうだが、全く、折角街はお祭騒ぎで華やかだったのに」
「知ってるわよ。ウェールズ様と回って帰ったわ」
おい、ウェールズ、何してる。
「なにそれ、俺がルイズとデートしようとしてたのに、許さんあいつぶん殴ってやる」
「デート? なに? サイト私とデートしたかったの?」
ニヤニヤと俺を見つめてくる。クソッ、カワイイじゃねーか。
「あー、なんだ、その。ほれ」
「なぁに? 正直に言いなさいよ」
俺はマゾじゃない。俺はマゾじゃない。俺はマゾじゃない。
「すいません。ルイズとデートしたかったですぅ」
負けた。
「ほっほっほ、それでいいのよ。犬!」
悔しい、でもビクンビクン。
まあ、可愛い顔してたので、帰りに買ったモノを与えることにした。
「プレゼントでございます。御主人様」
セーラー服ではなく、ペンダントをプレゼントした。
ルイズは驚いた顔をしたあと、もじもじとしながらペンダントをつけてくれた。
「どう?」
「似合ってる」
嬉しそうな顔してくれるじゃないの。
「ねぇ、今日も一緒に寝る?」
「いいの?」
ん、と短い返答をしてベッドを空けてくれた。
くぅ~、かわいいぞこんちきしょう。
セーラー服は明日でいいよね。
翌日。
アウストリの広場で天使を見た。
「シエスタ、最高ぉおおおおおおオオオオオ」
この一言に尽きる。
「で、でも、この服……」
「素晴らしく似合っている。これ以上の言葉は存在しない! 存在してはならない!」
「い、いえ……。だってこれ、軍服なんでしょう? わたしなんかが着ても、さまにならないんじゃ……」
「バカ言うなッ!」
ひっ、とシエスタは後退った。
「回ってくれ」
「え?」
「くるりと、回転してくれ。そしてそのあと、『お待たせっ!』って、元気よく俺に言ってくれ」
サイト、君は天才だ。
「お、お待たせっ」
「ちがーうッ!」
「ひっ」
「最後は指立てて、ネ。元気よく。もう一回」
シエスタは頷くと、言われた通りに繰り返した。
ズキューン。
こいつはすげぇ。なんて破壊力だ。
「次はどうするの?」
「えっと、次はスカートを……」
言いかけたところでギーシュとミニオーク鬼が現れた。
「それは、なんだね? その服はなんだねッ!」
ギーシュは泣きそうな顔で怒っている。気持ちはわかるぞ同士。
マリコルヌも、わなわなと震えながらシエスタを指差した。
「けけ、けしからん! まったくもってけしからんッ! そうだなッ! ギーシュッ!」
「ああ、こんなッ! こんなけしからん衣装は見たことがないぞッ! のののッ!」
「ののの脳髄をッ! 直撃するじゃないかッ!」
「わかってくれるか!」
二人の目は燗々と輝き、シエスタを食い入るように見つめている
変態二人の視線を浴びてシエスタは「じゃ、仕事に戻りますっ!」と一声告げて走り去った。
「なんなんだよ! お前ら!」
俺が怒鳴ると、二人は我に返った。
それから、ギーシュは俺の肩を抱いた。
「な、なあきみ。あの衣装をどこで買ったんだ?」
「聞いてどうする?」
ギーシュは、はにかんだ笑みを浮かべて言った。
「あ、あの可憐な装いを、プレゼントしたい人物がいるんだ」
「モンモランシーか、いやしいやつめ!」
「ふ、いくらだい? 君には金で話をつけた方が早い」
随分と舐められたものだ。
「五エキューで売ってやろう。豚さんは着せる女がいれば売ってやる」
「買った!」
「ぐぬぬぬ、僕は、僕はぁ」
膝から崩れる豚さん。即決で買ったギーシュ。
モンモランシーに着せたら見せろよ。
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気付くと50投稿。ここまでよく来れたと思います。
これからもよろしくお願いします。
次回、惚れ薬を飲むのは誰か?!
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