「んもっふ」
フーケのことも一段落してこれからが本当の地獄だ!?
アルビオンに隠密任務、七万相手に戦争、タバサの母親救出、やること多いぜ。
ワルドの野郎をどうすっかな?
今のままでも十分戦えるが殺すとなると話は変わる。
風のメイジが本気で逃げるとなると殺害はめんどい。
左手一本で勘弁してやろう。
ウェールズかぁ、イケメンはシネ!
と言いたいが、姫様誘拐フラグがなぁ。
生きてても死んでても迷惑な野郎だ。
「ちょっとなにしてんのよ?」
「考え事」
「な・ん・で、考え事を私のベッドの上で寝転がりながらしてるのかしら?」
「それはね、お前を食べるためだよ!!」
狼の振りをしたが、見事にクロスカウンターを食らった。
「月がふつくしい」
俺は床でふて寝した。
「あ、巻き毛ロール」
「誰が巻き毛ロールよ! モンモランシーだって言ってるでしょ?」
「ツレないね。その可愛らしい顔が台無しだよ?」
「台無しにしてるのはあなたでしょーが!」
「HAHAHA、さすがだ」
モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。
ギーシュの想い人だ。
脇役だが結構重要な存在だ。水の精霊とか惚れ薬的な意味で。
「く、あんたに借りさえなければっ!」
モンモランシーの言うとおり、彼女は清掃事業に組み込まれている。
水系統のメイジ確保として手頃なのを選んだつもりが意外にも働き者で実家のために頑張っている健気な娘だ。
平民をバカにしないという条件にも適応していた。
俺の影響だろうか、普通に平民と接していると報告がきている。
「んで、次の事業は順調かね?」
「え? ええ、平民向けの石鹸と香水ならある程度目処は立ってるわよ?」
そう次の事業は平民向けの商品だった。
モンモランシーの二つ名「香水」から思いつたのだが意外にも好評を得た。
数人の水系統のメイジを集めてもらって分担作業にして負担を減らしさらに生産レベルをあげる。
日本では割と普通の生産技術だったが、こちらでは物珍しかった。
そもそもメイジって個人プレイ多すぎ。非効率にも程があるぜ。
「キリキリ働きたまえ、そして俺を楽させろ」
「ぐっ、反論できないのが悔しい。本当に悔しいけどあんたの考えはすごい効率的だわ」
「ハッハッハ褒めるなよ? そして隠れスレンダー美人の異名を自分で暴露するな」
「な、なんで知ってるのよ? それに言い始めたのあんたでしょ? まったく、そうゆうとこがなきゃ……」
いい男なのにと言いかけてモンモランシーはやめた。
「ん? 次はギーシュを組み込むから気にすんな! そして卒業したら家に来いよな!」
ヴァリエール印の事業開発会社の勧誘も忘れない。
会社というか巨大な研究所みたいなものを既にルイズ領土に建設している。
もちろん、ルイズを騙してルイズの親を使って作らせたものだ。
ま、儲けは出してるし誰の迷惑にもなっていないので今のところ問題ないだろう。
代表取締役はルイズになってるし。
「はいはい、ってもう次の事業考えてるの? それにギーシュ? もしかして今度は土系統のメイジ捕まえる気?」
「イグザクトリー」
「なんて手の早い。そのうちトリステインを乗っとるき?」
「恐れ多いことを仰る。俺っちは既に四系統全ての事業を思いついているんだ!!」
そう言って右手を自分の胸の中心にして叫ぶ。
「なんだってー!!」
モンモランシーが叫ぶ。
これが俺の事業に参加するためのルールなのだ。
べ、別にネタを使いたかったから決めたわけじゃないんだからねっ!
「ふっ、よろしい。じゃ、またな~」
「ええ、またね」
そう言ってモンモランシーと別れた。
SIDE:モンモランシー
急な話だった。
「君が必要だ。だまって俺についてこい」
確かこんな風に勧誘された。
既に彼は学院中の噂になっている。
曰く、ギーシュに圧勝した平民
曰く、フーケから破壊の杖を取り戻したメイジ殺し
曰く、フーケは既に彼によって殺された
曰く、賢者である。
曰く、変態である。
破壊の杖を取り戻したまでは事実だと分かっている。
残りは噂に尾びれが着いたものだろうとされているが、彼の行動を見る限り、真実ではないかと言われている。
そんな彼がいきなり私の部屋を訪れ勧誘というなの拉致をしたのだ。
「というわけで、あなたには私の事業を手伝っていただく」
「ちょ、ちょっと待ってよ。なんで平民なんかの手伝いをしなきゃいけないのよ?」
私は貴族よ。そう思っていた時期もありました。
「君ぃ、知ってるんだよ? 実家、厳しいんでしょ?」
悪魔の囁きに耳を傾けてしまった。確かに私の実家の家計は厳しい。
そして彼の言う事業は成功すれば彼の言うとおりの報酬が得られるだろう。
それほどに理論的で現実的な事業だった。
「私どうすればいいの?」
「笑えばいいと思うよ」
意味が分からないことをよく彼は言う。
いや、聞いた時には分からないが後々になってその言っていた事の重大性に気付かされるのだ。
「ん~? どうしたのかね? モンモランシーくん? 断ってくれてもいいんだよ? そしたら別の水系統のメイジを宛にするから」
彼に勧誘された時点で逃げ道の無い袋小路に閉じ込められたも同じだ。
「わかったわよ。やればいいんでしょ?」
「もう少し素直になりたまえ君はスレンダー美人なんだから」
そう言われて悪い気がしない。
「ま、それに気づいている男は今のところ俺だけなんだがね。実は自分の体には自信のあるモンモランシーさんでした」
これさえなければ!
「んじゃ、前金の二百エキューね。無駄遣いすんなよ?」
不思議に思う彼が現れてからまだ一ヶ月も立っていないのになぜ彼はこんなにもお金持ちなのだろう?
「どっから調達してきたお金よ? まさか悪いことしてんじゃないでしょうね?」
「ははは、そこは男の子の秘密ってことで」
ほんとなんでこんな奴の話に乗ってしまったんだろう。
SIDE:サイト・ヒラガ
風の魔法最強説の男だ。
「では授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」
教室中が、しーんとした雰囲気に包まれた。その様子を満足げに見つめ、ギトーは言葉を続けた。
「最強の系統は知っているかね? ミス・ツェルプストー」
「『虚無』じゃないんですか?」
「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いてるんだ」
何が現実的な答えだ。戦いなんて時々によって状況が変わるだろ。恒久的に最強が風系統なら軍隊は全部風のメイジで埋め尽くされてるっーの。
原作でキュルケが吹き飛ばされるのを知っているので黙ってキュルケが吹き飛ばされる位置に移動した。
ギトーの方を見ると炎の玉をかき消していた。そしてそのままキュルケは俺の方に飛ばされてきた。
「おっと」
「きゃ」
さり気なく乳を揉む。身長あるのに軽いな。
「あ、サイト。ありがと」
「どういたしまして」
ギトーは俺たちのことは気にせず言い放つ。
「諸君、『風』が最強たる所以を教えよう。簡単だ。『風』はすべてを薙ぎ払う。『火』も、『水』も、『土』も、『風』の前では立つことすらできない。残念ながら試したことはないが、『虚無』さえ吹き飛ばすだろう。それが「風』だ」
「んじゃ、ルイズの爆発は?」
俺が言った言葉で教室は静まってしまった。
アレ? 外したか?
「ミス・ヴァリエール、試してみなさい」
「え? でも」
「何時までもゼロと呼ばれていたくないだろう?」
「やります!」
そう言ってルイズは杖を振る。
ギトーは風を使わなかった。
なぜならルイズの杖からは魔法が放たれたように見えなかったからだ。
ボンという音を立ててギトーの手前で爆発がおきた。
「サイト、これがあなたが前に言ってたこと?」
「ん~、まあ理想は違うけど大体はあってるね」
ルイズが加減したのかギトーは服がぼろぼろになったのと髪の毛が見事にド●フのコントみたいにアフロヘアーになった程度ですんでいた。
ギトーが立ち尽くしていると、教室の扉がガラッと開き、緊張した顔のコルベールが現れた。
いや、この学院はコントしたいんか?
明らかにズラとわかる金髪のカツラをつけてる。
貴族の美的感覚が本気でわからない。
「ミスタギトー?」
「は、私は何を?」
立ったまま気絶してたのか? 意外と根性あるな。
「あややや、ミスタ・ギトー! 失礼しますぞ!」
「授業中です」
「おっほん。今日の授業はすべて中止であります!」
生徒たちが喜んでいた。気持ちはわかるが自重しような? な?
「えーおほん。皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、よき日であります。始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります」
コルベールは横を向くと、後ろ手に手を組んだ。
「恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされます」
教室がざわめいた。
「したがって、粗相があってはいけません。急なことですが、今から全力を挙げて、歓迎式典の準備を行います。そのために本日の授業は中止。生徒諸君は正装し、門に整列すること」
国の代表が来るのはいいが、そのせいで授業中止にしてたら将来困るのは自分ですよ? 姫様?