「セイン、そっちはどう?」
「ちゃんと買って来たよ。ディエチは?」
「ぎりぎりってところ。」
「そっか。お互い、余分なお金は残らなかったみたいだね。」
「うん。この手の物って、消耗品なのに結構高いよね……。」
「無事調達任務を終えた事を喜ぶべきか、折角盛り場にまで来たのに色気もくそもない買い物以外、何も出来そうにない事を嘆くべきか……。」
セインの言葉に、ダークな表情でため息をつくディエチ。あれで何な格好で歌い踊る事にはもう慣れた。最近はファンもついて、それなりにやりがいが無いわけでもない。だが、さすがに今回の買い物は、正直微妙な気分にしかならない。何が悲しゅうて、正体がばれないようにアレでナニな格好までして、繁華街のディスカウントストアで、自分達が使うわけではない物を大量に買い込まねばならないのか。
「そもそも、何でこんな事になったのか知ってる?」
「あれ? セインは聞いてないの?」
「全然。」
「最高評議会派の連中が、保身のための証拠隠滅に、ドクターに全部押し付けたんだって。」
予想外の理由に、表情の選択に困るセイン。ディエチも、どう言っていいのかが分からない、と言う顔をしている。
「……また唐突に、どうしてそんな事に……。」
「管理局内部の派閥闘争の結果、ってところかな? なんか、フェイトお嬢様が内偵に入った時に、事故で……。」
セインの問いかけに、あたりをはばかりながら小声で理由を説明し始めるディエチ。が、最後まで説明を続ける前に、聞かれるとまずい人が横から口をはさんでくる。
「私が何?」
「フェイトお嬢様が、事故で何かの装置の電源を落としちゃったらしくて……。」
「あ~、あの事か。恥ずかしいから、あまり思いだしたくないよ……。」
「って、ナチュラルに話に混ざってるけど、何でアンタ達がここに!?」
今更のようなノリ突っ込みで、だっさい恰好をしているなのはとフェイトに突っ込みを入れるセイン。ディエチも、両手に買ってきた荷物をぶら下げたまま、思わずファイティングポーズをとりそうになる。
因みに、なのはは髪をいつものサイドテールではなく一本の三つ編みにして、Tシャツにオーバーオールと麦わら帽子と言う、どこの田舎の農民だという服装をしている。フェイトはフェイトで、折角のくせのない金糸の髪をお下げにして、黒ぶちの野暮ったいメガネをかけ、これまたどこの田舎から出てきたのか、と言う野暮ったいブラウスとスカートを身にまとっている。因みに、変な癖がつくのを防ぐために、髪型はバリアジャケットの応用である。理由が理由ゆえに、これぐらいの許可は下りるのだ。
もっとも、セインとディエチも服装的には大差なく、せいぜい髪型をいじっていない代わりに光学処理で髪を染めていることと、方向性が田舎者が都会を勘違いしている、と言う感じになっている程度だ。要するに、この場の四人はそろいもそろって、傍目にはダサい田舎のおのぼりさんにしか見えないのだ。
「何でって、なんとなく見知った顔が、私達と大差ないぐらいわざとらしくダサい服装で、おむつだの粉ミルクだのをたくさん抱え込んでるから、何してるのかなって思って。」
なのはの台詞に、思わず顔を真っ赤に染めるセインとディエチ。二人とも、自分の服装が、年頃の少女がするような格好ではない自覚があるのだ。
「そんなに身構えなくても、今日は私達もオフだし、デバイスは今調整中で手元にないし、第一こんな街中で昼日中からドンパチするほど血に飢えてる訳じゃないから、安心してほしいの。」
「信用できない。」
「まあ、そうだよね。普通そうだよね。」
追う側と追われる側のはずなのに、追う側に全く緊張感が無い事に、とことんまで疲れてしまうセインとディエチ。こっちは毎回、犯行現場でかちあうたびに生きた心地がしないというのに、何でこいつらはここまで余裕なんだろう?
「とりあえず、私もなのはも、せっかくのオフを逃げられると分かってる捕りもので潰す気はないし、一度あなた達とは、落ち着いて話をしたいと思ってたし。」
「そうそう。デバイスがあっても逃げられてるのに、デバイスなしで捕獲は無理だよね。」
自分達の無能を笑い話にしているなのはとフェイトに、何ともいえぬ敗北感を味わう。そもそも、ナンバーズが毎回逃走に成功しているのは、ひとえにスカリエッティとプレシアのいたちごっこが、紙一重でスカリエッティに軍配が上がっているからにすぎない。戦闘と言う観点でみれば、ナンバーズはこの二人に一度も勝利していないし、レリックの奪取と言う目的に関しても、彼女達相手だと成功率は三割程度だ。彼女達の出動が不可能な時に事に及んだ場合は、わざわざ姿を晒しても百パーセント成功している事を考えれば、この二人は極めて優秀と言っていいだろう。
「どうしたの? なんだかすごく背中が煤けてるんだけど……。」
心配そうに声をかけてくるなのはに、ついにセインが切れた。
「誰のせいでこんな事になってると思ってるの!?」
「ほぼ全部、ジェイル・スカリエッティの責任かな。」
「まあ、逆らわずに命令に従ってる時点で、自己責任もちょっとはあるかとなのはは思うのです。」
「「アンタ達が無罪を主張するのはおかしい!!」」
自分達の事を棚に上げるなのはとフェイトに、思わず激しく突っ込むセインとディエチ。ナンバーズサイドからすれば、この二人が何かやるたびに、なにがしかの影響が跳ね返ってくるのだ。
「そう言われても、ね。」
「私たちだって、やりたくてやってる訳じゃないし。」
「と言うか、私、前に言わなかったかな?」
「何を?」
「ここで投降すれば、少なくとも恥ずかしいのに無理して歌って踊らずにはすむよ、って。」
言っていた。確かに覚えがある。その後のなのはの集束砲に肝を冷やし、自分達だけでも投降すればよかったと心底後悔したものだ。あれからもうじき三年になるのかと思うと、よく生きていたなとしみじみ思う。この二人に殺意もやる気もそれほど無いから助かっているだけではあるが。
「とりあえず、なんだかイライラしてるみたいだけど、もしかしておなか減ってる?」
「カルシウムが足りない……、って言うのは、ディエチの方はないか……。」
「あたしが足りてないって、どういう意味!?」
「……言っちゃっていいの?」
「言いたい事は分かったけど、アンタにだけは言われたくないよ、高町なのは!」
「うっ、気にしてるのに……。」
どうにも気が抜けるやり取りを続けているうちに、二人のお腹が自己主張を始める。
「あ~、やっぱりおなか減ってるんだ。」
「くっ!」
「買い食いすら許してもらえない予算の少なさが恨めしい……。」
フェイトに指摘されて、実に悔しそうに吐き捨てる二人。あまりに哀れを誘うその様子に、思わず余計な事を考える。
「ねえ。」
「なによ?」
「この近くに、美味しいお店があるって教えてもらったんだけど、一緒に行かない?」
「「はあ!?」」
敵を食事に誘うという魂胆が理解できないセインとディエチ。反射的に罠を警戒し、だがこの二人にそんな高等テクニックが使える気がしないというジレンマに悩まされる。
「お金の事なら、誘った以上はご馳走するよ?」
「いや、そこじゃなくて……。」
「懐柔する気じゃないのか、って疑ってるのよ。」
ディエチの言葉に、何とも言い難い微妙な笑みを浮かべると、フェイトがものすごく正しい指摘をしてくる。
「これぐらいで懐柔されるんだったら、最初から投降してるよね?」
「……何、その腹立たしいぐらいの正論は……。」
苦労人オーラを出して、壁に手をついてがっくりしているディエチの肩を、慰めるようにポンポンと叩くなのは。敵なのに、彼女の気遣いが変に心にしみる。
「ディエチ。」
「何よ、セイン……。」
「こうなったら、せめて一番高いものを頼んで憂さ晴らししよう。」
「……了解。」
おごってくれる、と言う相手に対し、堂々とそんな事を宣言するナンバーズに、思わず苦笑する。正直なところ、ミッドチルダでの金銭感覚が壊れ気味のなのは達は、宝石商でもする気か、と言うぐらいの金額をカードにチャージしている。銀行に行く機会がなかなかないため、そうそう使いきれない金額を入れる習慣が出来ており、余程の高級料理店でも財布が空になる心配はしなくてもいい。それだけの金額をチャージしても、分散して預けてある口座すべてにお金があふれているのだから、トップアイドルと言うのは儲かるらしい。
「話がまとまったなら、早く行こう。結構混むお店みたいだし。」
「了解。」
「後でお金足りなかった、とか言っても容赦しないからね。」
こうして、ウィングとナンバーズの初対談は、誰も知らないところで始まったのであった。
「あ、これ美味しい。」
「後でレシピを聞いて帰ろっか?」
「そうだね。」
本通りから裏に一筋ずれた場所にある、こじんまりとしたお店。前評判通り結構人が待っており、いつ入れるかと微妙にやきもきしたが、ちょうど客の入れ替わりが重なったためか、意外とすんなり入る事が出来た。
「……。」
「……。」
「どうしたの?」
「口にあわなかった?」
一口食べたきり黙りこんで、動かなくなったセインとディエチに、心配そうに声をかけるなのはとフェイト。因みに、二人とも公約通り、一番高いメニューを臆面もなく頼んでいる。
「いや、そうじゃなくって。」
「あたし達だけ、こんな美味しいものを食べて帰って、いいのかなって……。」
最近、食事と言えばブロックタイプの総合栄養食だとか、吸収とエネルギー変換効率だけを重視した流動食だとか、餌と言う表現すらそぐわないようなものばかりを口にしているナンバーズ。理由は簡単で、ラボの設備で簡単にほとんどコストをかけずに生産できるのが、その手の軍用食の類だからだ。同じ低コストでも、高度な循環システムで効率よく自然食を作っている時の庭園とはえらい違いである。
もっとも、食事の質に力を入れているマッドサイエンティストなど、少数派なのは間違いないが。
「そんなに、食事事情が悪いの?」
「良くはないよ。」
出てきたものを残すのも忍びない。そう思って再び手をつけながら、真剣な顔で答えるセイン。
「あたし達が稼働したころは、まだそれなりにまともな食事もあったの。」
「でも、最近はいろいろあって、さ。」
「もしかして、そのいろいろに、おむつとか粉ミルクとか関係あるの?」
「うん。単純に手がかかる食べる口が増えて、あたし達の稼ぎだけだと結構微妙なんだ。」
ドゥーエが本当に寝返っているのであれば、この程度の内部事情は筒抜けだろう。そう考えて、正直に窮状を訴える事にするセイン。
「誰かが産んだの?」
「違う。一人二人だったら、そもそもあたし達の稼ぎで食いつめたりなんかしないわよ。」
ディエチの恨みがましい視線に、思わずたじろぐフェイト。
「フェイトお嬢様、潜入捜査でトチって、最高評議会の連中にとどめ刺したでしょ?」
「えっと、最高評議会って、誰だっけ?」
「……知らずにやっちゃったのか……。」
「私、潜入捜査に限らず、人を殺した事はまだないんだけど……。」
フェイトの反応に、何ともいえぬ表情を浮かべるセインとディエチ。
「ディエチ、どう思う?」
「あたしは、あれを人のカテゴリーに入れるのは抵抗があるから、殺してない、で問題ないと思う。」
「まあ、普通なら、とっくに寿命でくたばってる連中だしねえ。」
「えっと、結局、最高評議会って誰?」
フェイトの心細そうな表情に、どう説明するか悩む二人。正直、ドクターの悲願を妙な形で潰した挙句、余計な荷物を押し付けられる原因を作った女に、慈悲の心を持つのはどうかと思わなくもない。だが、ここまでの流れで、単純にフェイトを敵だとか憎むべき相手だとかも思えなくなっているのも確かで、この表情で悩み続けられると、クアットロに比べればはるかに健全な心が、きりキリ痛んでしょうがない。
「フェイトお嬢様。ちょっと前の潜入捜査で、妙な装置を壊さなかった?」
「装置? ……それは心当たりはないけど、何かのケーブルに足を引っ掛けたのは覚えてるよ。確か、脳みそみたいなのが入った筒につながってたような……。」
「それ。その脳みそが、時空管理局最高評議会。」
「え?」
「あたし達が、人のカテゴリーに入れるかどうか悩んでたのも分かるでしょ?」
ディエチの言葉に、思わず反射的に頷く。
「ねえ、フェイトちゃん。」
「何?」
「一体何があったのか、話してもらってもいいかな?」
「……ん~。一応機密に引っかかるけど……。まあ、ゲイズ中将もグレアム提督も、なのはとの情報共有は構わないって言ってたから、いいかな。そっちの二人も、その様子だと、何があったかは大体知ってるんだよね?」
フェイトの問いかけに頷くディエチ。スカリエッティ派には、ある程度コントロールした情報を流している事は聞かされている。ゆえに、この返事も予想の範囲内だ。
「ちょっと待ってね。とりあえず一応は確認するから。」
そう言って、メンテナンス中のデバイスの代わりに持たされている通信機を取り出し、グレアムを呼び出す。本来なら、多忙な彼をこんな風に無造作に呼び出すのは、所詮二尉程度の待遇でしかない彼女がしていいことではないのだが、なのはもフェイトも管理局内ではかなり特別な存在だ。そうホイホイやってる訳でもないので、周りも黙認している。
「……ん、許可が下りた。とりあえず、詳しい話は、ご飯食べてからにしようよ。食事中にする話でもないと思うし。」
「あ~、確かに。」
さすがに、食事中に脳みそがどうだのと言う話はしたくない。それに、認識阻害の魔法を使っているとはいえ、正体が特定される可能性のある会話を続けるのもよろしくない。ナンバーズの二人を見ると、どうやら同じ意見らしく、一つ頷いて食事に専念する。
「じゃあ、さっさと食べちゃおうか。レシピも聞きたいし。」
「そうだね。知らない野菜とかも入ってるから、そこから教えてもらわないと。」
本気でレシピを教えてもらう気満々の二人に、思わずげんなりするセインとディエチ。正直、この二人の料理に賭ける情熱は、まったく理解できない。
「ねえ、フェイトお嬢様。」
「ん?」
「どうしてそこまで料理にこだわるの?」
「美味しいって言って欲しい人がいるから。」
恋する乙女の顔になって答えるフェイト。その表情に、しまった、と思うディエチ。身近にそういう人間はいないため経験はないが、こういう顔をした女の話と言うのは、大概聞くのが苦痛になるほど甘ったるいのろけ話で、しかもものすごく長い。ドラマだの映画だのといった娯楽作品からの知識でしかないが、多分そう外れてはいないだろう。
「へえ、どんな男?」
どうやら、そういう空気を読めなかったらしいセインが、地雷原に突っ込んで行く。その様子に、内心頭を抱えるディエチ。
「見た目は、すごくきれいな女の子。」
「……フェイトお嬢様って、もしかしてそっちのケがある?」
「そっち?」
「恋愛対象が女。」
「……どうしてそう思ったのかは知らないけど、ちゃんと話せば、間違いようがないぐらいには男の子だから。」
フェイトのむっとした顔に、本気で地雷を踏んだ事を察するセイン。
「いやだってさ、フェイトお嬢様って、高町なのはとそういう雰囲気があるじゃん。それで、好きな男が見た目は綺麗な女の子って言いだしたら、さ。」
「……フェイトちゃんとは、そういう関係じゃないよ?」
「本当に? テレビとかで見てる感じじゃ、たまに外部が割り込めない雰囲気を醸し出してる事があるんだけど?」
「それを言いだしたら、そっちもたまにそんなときがあるよ?」
「そこはそれ。あたし達は姉妹だから。」
どうにも、やたらとなのはとフェイトをそういう関係にしたがるセインと、それ以上地雷を踏むな、と目で訴えているディエチ。そんな二人の様子に気がつかず、むっとした表情のまま言葉を紡ぐフェイト。
「顔で好きになった訳じゃない。」
「でも、美形は美形なんでしょ?」
「女としてのプライドが危なくなるぐらいには。」
なのはの、どこか遠い目をしながらの回答に、思わず絶句するナンバーズ。さすがに、そこまで女っぽい顔の男など、テレビですら見た事が無い。
「だけど、私たちがその人を好きになったのは、別に見た目の問題じゃないの。」
「一緒に歩いてると、一番最初に彼がナンパされてへこんだりとか結構あるから、出来ればちゃんと男の人に見える外見の方が嬉しいけど、それとこれとは別問題。」
多分、今みたいにわざとダサい格好をしているのだろうとは思うが、それを差し引いても次元世界でも屈指の美少女であるなのはとフェイトを差し置いて、真っ先に声をかけられるほどの美少女顔。そんな男がいること自体、いろいろ突っ込みどころのある話だ。少なくとも、セインもディエチも目の前の二人ほどそいつを受け入れられる気がしない。
「何がきっかけで、この気持ちを得たのかは、もう今となっては分からない。でも、今の私を形作る全ての根源に、彼がいる事だけははっきりと断言できる。」
「私も、自覚したきっかけはともかく、どの時点で今の気持ちに至ったのかはもう分からない。ただ、この気持ちを差し引いても、フェイトちゃんに負けないぐらい、その子に依存してる事は分かっちゃったんだ。」
「……ごめんなさい、あたしが悪かった。」
いろんな意味で降参するセイン。ディエチが睨んでいた理由が、今頃理解出来たのだ。これはまずい、確かにまずい。さすがにいくらなんでも、問答無用で全力全開の砲撃を叩き込まれる事はないだろうが、これだけ真面目に思いを寄せている相手を茶化すのは、たとえ不真面目がカラーのセインといえども、良しとは言えない。
さらに言うならば、真面目な気持ちを茶化した後味の悪さに加え、どっちに転んでも延々惚気のような話を聞かされると言う苦痛を味わう。ディエチがしまったという顔をするわけだ。
「……本当に反省してる?」
「さすがに、あたしも、そういうのを馬鹿にするのはポリシーじゃない。」
「……そっか。」
「だったら、この話はこれでおしまい。」
二人の予想に反して、なのはもフェイトも惚気も愚痴も言わずにあっさり話を済ませる。
「とりあえず、早く食べちゃおう。」
「レシピも教えてもらわなきゃいけないしね。」
結局、レシピについては妥協しなかった二人。恋する乙女の願いに快く答えた店の主人に根掘り葉掘り聞く二人を、思わずげんなりした顔で見守るセインとディエチであった。
「それで、結局何があったの?」
「ん~、どこから話せばいいかな?」
裏路地の廃ビル。人払いと消音の結界を張って、ボトルの飲み物に口をつけながら話を始める。
「そうだね。潜入捜査で、何を調べにいってたか、からかな。」
フェイトの潜入捜査の内容と言うのは、違法研究について、だったそうだ。管理局本局内で違法研究をしているという情報があり、たまたま手が空いていたフェイトに話が回ってきたのだ。普通なら何日もかけるミッションだが、表ざたに出来ないルートで大方の証拠は集まっており、局員の手で正規の方法で裏付けを取るだけで終わり、という段階だったのだ。
フェイトは知らない事だが、この表ざたに出来ないルートと言うのは、言うまでもなくドゥーエだ。管理局も腕利きの諜報員をたくさん抱えているが、彼女ほどの実力者はいない。
「その違法研究の調査とやらが、レジアス・ゲイズが仕掛けた、最高評議会排除の一手だった訳か。」
「そうなのかな? 私は最高評議会ってものの存在を今日初めて知ったから、その辺の詳しい話はよく分からない。」
「だろうね。連中の存在は、管理局でも上層部しか知らないはずだし。」
「なるほど。で、とりあえず話を戻すと……。」
レジアスから指定されたのは、本局内部でも外れの位置にある、古さでは上から数えた方が早いぐらいの施設。管理局本局は下手な大都市よりも広く施設の数も膨大なため、古い施設の中には何のためのものか分からなかったり、もう役割を終えて休眠していたりするものも数多い。そういう施設についての情報を全部把握している部署もないため、往々にして内部での犯罪行為の温床になっていたりする。
言うまでもなく、過去に何度もその手の施設の調査管理のための部署を立ち上げ、解体処理を進めていこうとしたのだが、その都度人手不足と予算の壁、さらには利権が絡んだ駆け引きの前に挫折して来た。ここ十数年は、役目を終えた部署の施設は、他に使い道がなければとっとと解体するようになってきたが、それでも管理局成立以前の、前身となった組織の頃からある、百年物の廃墟も結構残っている。頭が痛い事に、そういう施設や事実上何もしていない部署にも、予算は振り分けられていたりするのだ。
組織が古く、大きくなってくるにつれて、どんなに頑張ってもこういう問題は出てくる。管理局が取り立てて腐っているわけではない。ちょっと裏側をのぞけば、複数の管理世界にまたがるような企業・組織は、大体似たような問題点を抱えている。単に、時空管理局が規模としては突出して大きく、また、前身となった組織まで見れば結構な歴史を持ち合わせている分、内部に抱える問題の絶対数が多くなるだけだ。それに、グレアムとレジアスの捨て身に近いやり方で、ずいぶんと内部は綺麗になってきている。
因みに、この種の昔からある予算だけ食って事実上死んでいる部署の代表例に上がっていたのが、ユーノが来る以前の無限書庫だったりする。管理できないデータベースなど、予算の無駄だから廃止すべしという意見が定期的に上がり、その都度、中にどんな爆弾があるか分からないから下手に廃棄できないという意見がでて、処分先送りのまま資料の廃棄場所となっていたのである。
「結構物々しい警備をしてて、内部にはAMFも展開してあったから、これは確かに後ろ暗い事をしてるな、って思って、割と手薄なところから一気に突入したんだ。」
「真っ向勝負で?」
「うん。物々しいって言っても、アウトレンジからソニックフォームで突っ込んで行けば、さすがに対応できるような警備システムじゃなかったし。それに、ちょっと前に組んでた光学迷彩とかジャミングとか、そこらへんの魔法も使ってたし。」
実際には、優喜が作った使い捨ての隠れ身を使って突入したのだが、そこは真実を言うとまずいと判断して誤魔化しておく。一応、隠れ身を切らした時のために、その手の魔法もちゃんと使えるように訓練している。なお、進級を期に二人ともバリアジャケットのデザインを変更しており、ソニックフォームもいろいろリファインされている。新旧どちらのソニックフォームの方が、目のやり場に困る度合いがマシかは、かなり微妙なラインではあるが。
「……一体どんな潜入工作員よ……。」
ディエチのあきれたようなセリフに、思わず苦笑を洩らす。実際には、フェイトはいまだに閉鎖空間での戦闘は苦手だ。超音速で動ける最高速度からすれば半分程度しか出せないし、マニューバでのかく乱もやりにくい。だが、元の実力が突出している事に加え、御神流による鍛錬の成果もあって、そんじょそこらのベルカ騎士よりは上手くたち回れる。むしろ、苦手分野でそれだという事に、突っ込みを入れるべきかもしれない。
「で、内部に力技で突入した後、あれこれ調べてたんだけど……。」
半分程度を調査したあたりで、巡回中のガードメカが、たまたま侵入していた羽虫に反応して、迎撃のために撃ったビームの流れ弾が、フェイトに着弾した。いくら次元空間に存在するとは言え、人が暮らしていて公園などに緑がある以上、小さな虫の類が全く存在しないというわけにはいかない。その結果、ステルス周りがすべて解け、ガードメカに発見されてしまったのだ。引きの悪さは相変わらずである。
その後はグダグダだ。迎撃にガジェットは出てくるわ妙な魔法生物や合成獣が出てくるわで、そいつらの始末に大わらわになっている間に、脳髄の入った巨大なポットがある、中央の大きな広間に追い込まれてしまったのだという。
「そこで戦闘してるうちに、ポットの機械につながってるケーブルに足を引っ掛けちゃって……。」
その時はすぐには気がつかなかったが、その機械から部屋の端に這わされたケーブルは、ミッドチルダで一般的な仕様の、家庭用の電源コンセントだった。ガジェットと魔法生物を全て仕留めた後、そのケーブルの形状を調べてショックを受けたものである。
「……家庭用電源のコンセントって……。」
「つうか、ガジェットとのドンパチに巻き込まれて、よく機械が壊れなかったもんね。」
「機械そのものは、ものすごく頑丈だったよ。ガジェットの質量兵器の流れ弾で壊れないぐらいだったから。」
「なのに、電源が家庭用って……。」
「多分、産業用の動力より安かったからじゃないかな?」
フェイトの台詞に、そんなはずはないと突っ込みかけて、考えを訂正する。最高評議会派は、レジアスとグレアムの裏工作で、年々資金源が潰されていた。当然、高度なシステムを使った、メンテナンス費用が高くつく機材での延命は出来なくなっていく。さらに、産業用の動力を使ってとなると、不自然さで足がつきかねない。
「……なるほど。人とは呼べなくなってたとはいえ、哀れな最後ね……。」
「……天然ボケって怖いなあ……。」
セインとディエチのえらい言い分に、思わず苦笑するなのはと釈然としない顔をするフェイト。
「私だけがいろいろ言われるけど、そんな大事なシステムがある場所でガジェットに攻撃させる仕様にしてあった方が、どうかと思うよ?」
「あ~、それはそれで一理ある。」
「でもさ、いわばそこって、その施設の心臓部みたいなものだから、侵入者の排除のために、何らかの攻撃手段は必要だし、そのための設定だったのかも。」
「ん~。多分、電源ラインが地中埋め込みだった頃の、シールド魔法で防御できる前提のシステムを、変更するのを忘れてたんじゃないかな?」
なのはの言葉に、それだ、と言う顔をする三人。この面子の中で、一番機械に強いだけの事はある。
「しかし、そうなると、よく電源コードに流れ弾が当たらなかったね。」
「それが一番の奇跡かも。」
実際、あちらこちらに弾痕があるというのに、電源ケーブルのあたりには一発も当っていない。因みに、フェイトは知らない事だが、後でドゥーエが最高評議会の連中の生死を確認しに行った時、機材はきっちり機能が残っており、
『で、電源が!?』
『誰か! コンセントを、コンセントを!!』
『くっ! 意識が!!』
『あっ……。』
と言うログが残っており、最後の台詞のすぐ後に、生命反応途絶と記録されていたらしい。
「結局、やっぱりあたし達のこの状況は、フェイトお嬢様が原因か……。」
「え? どうして?」
「最高評議会派が証拠隠滅のために、自分達の違法研究の成果をドクターに押し付けたんだ。」
「大半は適当に捨てたみたいだけど、いくつかそういうわけにいかない物があってね。」
最高評議会がこだわっていたのは、魔導師不足を補うための手段だ。それも、可能な限り質量兵器に頼らない方向で。自分達の身を守るために、質量兵器に分類されるガジェットドローンを使っているくせに、結構勝手な言い分だ。だが、昨今の世界的な大規模質量兵器へのアレルギーを考えると、表に出せるのは魔法関係になってしまう。
結果として、どうしても生命倫理に引っかかる研究が多くなってくる。その中でも特に多いのが、人体に直接干渉して、人為的に魔導師もしくはそれに相当する存在を生み出す研究だ。ここ二、三年はプロジェクトFの成果を利用したコピーを、戦闘機人の素体や後天的なリンカーコアの付与、強化、さらにはキメラ実験などに使う事が多くなり、表に出せない被検体が山盛り出来上がっているのである。
その中でも、特に処分に困ったのが、普通にリンカーコアを持って生れてきたクローン達。有力な魔導師の遺伝子を片っ端からクローニングし、幾人かは同年齢の頃のオリジナルと同等、もしくは凌駕する個体が現れるところまで計画が進んでいた。さすがにこれを適当に処分するわけにはいかず、また、全ての実験体が移送の都合で培養槽から出されており、現状単なる赤子と言うのも一杯いる。そのため、なにがしかの実験に使うにしても、もう少し育ってからでないとどうにもできないため、仕方なしに面倒を見ているのである。
「本当に、毎日が地獄だよ……。」
「赤ちゃんの世話がこんなに大変だとは思わなかったよね……。」
「メガネ姉は絶対手伝わないし、トーレ姉は危なっかしいし、チンク姉に何でもかんでも押し付けるのもあれだし……。」
「ノーヴェが意外と頑張ってくれてるけど、押し付けられた連中は、基本的に人格も知識も経験もないから、現状は全員単なるでくの坊だし……。」
「それなのに、ドクターときたら、あたし達にやれ偵察だ、PV撮影だ、新曲のレッスンだ、と、無茶ぶりばっかり。少しは休ませろ、と、セインさんは声を大にして言いたい訳だ……。」
あまりにすすけている背中を見て、なんと声をかけていいのか分からないなのは。そんな二人に見かねて、フェイトが前に断られた申し出を再びする。
「今更だけど、投降してこない? その子たちの事も含めて、絶対悪いようにはしないから。」
「……本音を言うと、あたし達はともかく、チビ達のためを考えれば投降すべきなんだとは思う。セインさん、これでもあんまり自分がかしこくない自覚はあるけど、それが分からないほどおバカやってるつもりもないし。」
「……でも、あんな変態でも生みの親だし、別に嫌いでもないし、それに、あたし達が今そっちに行ったら、ウーノ姉やチンク姉、それから稼働したばかりのノーヴェに迷惑がかかるし……。」
「……そっか。」
予想通りといえば予想通りの言葉に苦笑して、話をそこで終える。やってる事は法に照らし合わせるまでもなく悪い事だし、初めて遭遇した時は死人を出す手前だったが、それでも彼女達が悪い人間だとは思えないフェイト。何というか、プレシアが狂っていたころの自分に通じる何かを感じるのだ。
「気が変わったら、いつでも言ってね。本当に、絶対に悪いようにはしないから。」
「……ん。ありがとう。」
フェイトの言葉に手をあげて、個人転移でその場を立ち去る。それを見送った後、せっかくの休日をもう少し満喫しに引き返すなのはとフェイト。その途中で、
「あれ? なのはちゃんにフェイトちゃん?」
「なんだよ、そのざーとらしい格好は……。」
かつて何度か揉めて、その結果今やすっかり仲良くなったガールズバンド。そのメインボーカルのソアラと、主にもめる原因だったリーダーの二人に発見される。
「私たちの服装、そんなに分かりやすいかな?」
「ん~、まあ、ものすごく仲のいい相手なら、もしかしてと思うレベル、かな?」
「さすがに、普通お前らがそんな恰好してるとは思わねえって。」
なのはとフェイトの変装について、そんな感想を述べるソアラとリーダー。そのまま、四人でショッピングとおやつを楽しみ、久しぶりの丸一日の休暇を楽しんだのであった。
「遅かったのね。」
「ちょっと、いろいろあってさ。」
「ちゃんと、買えるだけは買ってきたよ。これ、レシート。」
そう言って、亜空間格納しておいた粉ミルクと紙おむつを数ケース、どさどさと積み上げる。リュックと両手のビニール袋で運んできた、格納スペースからあふれた分も同じように積み上げる。
「……確かに、他のものは買ってない見たいね。でも、その割には遅かったけど、どうしたの?」
「高町なのはとフェイトお嬢様に見つかっちゃって、ね。」
「ご飯たかってきた。」
「……貴女達ねえ……。」
あまりに無謀な妹達に、思わず頭を抱えるウーノ。
「てかさ、ウー姉。向こうでご飯食べたときに思ったんだけどさ。」
「やっぱり、軍用食じゃなくて、ちゃんとしたものを食べるようにした方がいいよ。そのお金がないって言うんだったら、もっと稼げるように頑張るから、さ。」
「あたしたちはまだいいんだけどさ。さすがにチビたちがああいう、餌と呼ぶのもおこがましい食事ってのはねえ。」
セインとディエチの言葉に、しばし考え込むウーノ。正直に言うならば、別段ある程度まともな食事を調達する程度の費用はある。と言うか、彼女達が思っているほど、金が無いわけではない。ぶっちゃけ、ドクターの研究費を最優先にしているが、昨今の収入額を考えれば、食事ぐらいは豪勢にしても問題ないレベルだ。
今のところ、彼の研究もそれほど大きな費用がかかる感じではないし、ガジェットドローンの売り上げも悪くない。妹達の稼ぎも、孤児院ぐらいは余裕で運営できるレベルだ。正直なところ、ウーノの考え方はスカリエッティに近いため、食事の質をあげるということに意味を見いだせないのだが、個人的な思想で妹達の言葉を切り捨てる気もない。
「……そうね。貴女達がそういうのであれば、検討はするわ。」
「そっか、ありがとう。」
嬉しそうなセインとディエチの顔に、小さくため息をつく。どうやら、ウーノに理解できないだけで、食事と言うのはかなり重要なものらしい。
「ただし、意見を通す以上は、ちゃんと働いてもらうわよ。」
「分かってる。」
「なんでもするよ。」
なんでも、という言葉に一つ頷くと、ドクターが考えた、かなり変態的な、ターゲットをどこに絞っているのかが理解できない新グッズの説明をする。
「……あのさ、ウー姉……。」
「……何でもする、って言ったからにはやるけどさ。正直、それって企画した人間の神経とか品性とか、その辺の人として大切な何かを疑われるんじゃないかな?」
「その辺は、今更の話でしょう?」
「ウー姉、地味にきついね。」
セインの率直な感想に、思わず苦笑する。因みに、トーレとチンクはかなり微妙な顔をしていたし、ノーヴェは絶対嫌だと全面拒否、クアットロは理解できないと言いきっていた。ただし、クアットロが理解できないのは、それを買う可能性がある、人間の精神構造の方らしいが。
「こういう痛い作業は早く済ませるに限るわ。さっさと終わらせましょう。」
とりあえず、誰か一人、やると言う人間が出てきたら全員やる、という約束を取り付けていたので、セインとディエチの申し出は渡りに船だったのは間違いない。
「……うう、早まったかなあ……。」
「……セイン、耐えるのよ。美味しいご飯のために、耐え抜くのよ……。」
さすがのウーノも、今回ばかりはこの二人を叱る気は起きないらしい。苦笑しながら録音ブースに向かったセインとディエチを見送ると、他のメンバーにも声をかけに行く。
「どうやら、首尾よく説得できたようだね。」
「説得と言うより、等価交換のようなものですが。」
「一応言っておくと、私だけのアイデアではないのだよ?」
「……実現しようとしている時点で、同じ穴のムジナですよ。大体、ドクターはああいうもので興奮するわけではないのでしょう?」
無限の欲望、などと言う御大層なコードネームで呼ばれているスカリエッティだが、生まれによる問題で、まっとうな意味での性的な欲求は存在しない。スカリエッティはその存在を認識してはいないが、彼の予定をいろいろ狂わせた諸悪の根源である竜岡優喜と、妙なところで共通点を持っているのは、不思議な縁である。
「それはそれとして、ウーノ。」
「なんですか?」
「さすがに、この施設にあの数の赤子は多すぎると思うのだが、どう思う?」
「その意見には同意しますが、これと言って手立てがあるようには思えません。」
「だろうね。我々の立ち位置にとらわれていれば、そうだろうね。」
そう言って、にやりと笑うスカリエッティ。その様子に、嫌な予感がするウーノ。
「孤児院をいくつか、買収しようと思っているのだが、どうかね?」
「……また、突飛な事を考えますね。」
この男のスタンスに、子供の健全な成長だとか、命の尊厳を尊重するだとか、そういう善人が発しそうな言葉は、かけらも存在していなかったはずだ。普通ならそもそも考える事すらしない胎児や乳児に対する人体実験とて、何のためらいもなく平気で行い、その結果何人死のうが知った事ではない。ジェイル・スカリエッティはそういう種類の研究者だ。その男の口から出てきた、孤児院と言う単語。また、碌な事を考えていないに違いない。
「別段、突飛と言うわけでもない。そもそも、我々には子供の世話についてのノウハウが全くない。それに、非合法に産み落とされた子供が、善悪はともかくまともな人格を得る事が出来るのか、そう言った追跡実験にも都合がいい。何より、孤児院を運営しているという事実は、管理局に対する手札に使える。」
「……分かりました。適当に手配をかけます。ですが、一か所では疑われます。人数から言って、最低でも五か所、確実を期すためには十か所以上必要になりますが、そのための費用を研究費から出してしまって問題ありませんか?」
「ああ。次の収入の当てはあるからね。」
「……例のグッズが、それほど売れるとは思えないのですが……。」
「違うよ。A3MFおよび、それを搭載した新型の人型ガジェットドローンが、一応実用レベルで完成している。すでに量産可能なところまで持ち込んであるし、売り先もそれなりに確保してある。」
さらっと、とんでもない事をぶちまけるスカリエッティに、らしくもなく驚愕の表情を浮かべるウーノ。
「……いつの間に……。」
「連中から、子供達を押し付けられたあたりで構想が思い浮かんで、三日ほどで完成させたよ。今日、一号機と二号機を子守に回す予定だったからね。」
「ガジェットを子守に、ですか……。」
「それぐらいの柔軟さが無いと、向こう側から帰ってきたプレシア・テスタロッサと渡り合うのは厳しいからね。」
スカリエッティの言葉に、もはや信仰の域に達していた忠誠をさらに深くするウーノ。だが、彼らは気が付いていない。この時の決断により、後のちスカリエッティの無限の欲望のうち、「保護欲」と言うもっともらしくない欲望が増幅され、そういう方向性でまでテスタロッサ一家と張り合う事になる事を。
なお、この時セイン達が収録した音声は、飲み口を吸うとチュパチュパと卑猥な音がし、口を離すと「ふう」と切なそうなため息をつくと言うかなり痛い仕様のドリンクボトルに使われて、ジョークグッズとして意外とバカ売れして大きな利益をあげてしまうのだが、ここだけの話である。
後書き
作中の痛いドリンクボトルは友人に、「エロ系の痛いネタグッズ、何か無い? 痛ければ痛いほどいいけど、手が後ろに回らないレベルで」と問いかけたら出てきたものです。等身大バスタオルとかがぬるい世界がある、と思い知ったのはここだけの話。世の中業が深いなあ。
なお、痛いグッズのアイデアがあればください。ものによっては本編に出します。ただし、直球ストレートにエロいのは無しで。