第一話 寝取るもの、寝取られたもの「わーん、クラえもーん!!」「どうしたの? トリエラくん……ってクラえもんは無いでしょう。クラえもんは」「そんなことよりクラエスー!! ブリジットが寝取られちゃったよぅ! ブリジットがエルザとか言う悪い女に引っかかったー!!」「なっ、何ですって!」 かのクヌギの木の下、濃密な百合空間にて。「ふふふ、ブリジット、どうしたの? 物欲しそうな顔をして」「ああ、エルザ様……。どうか、どうかご慈悲を……」「いけない子ね。こんなに涎でぐちゅぐちゅにしちゃって。そんなにこれが欲しいの?」「ああ、欲しいれすぅ! 下さい、エルザ様っ。下しゃいぃぃ」「ならブリジット、私に永遠の忠を誓いなさい。あなたの心を、身体の全てを私に捧げなさい」「捧げますからぁっ! 捧げますぅっ」 エルザの白魚のような指がブリジットの顎を掴む。そしてそのまま人差し指で彼女の口内を蹂躙し、ブリジットが苦しそうな声を上げた。「可愛いわ。可愛いわ。ブリジット……。なんて可愛いのかしら」 エルザが一本の棒キャンデーを取り出す。それをブリジットの舌先に持っていくと、彼女は目を潤ませ頬を上気させながら健気に舐め始めた。 淫らな水音が辺りに鳴り響く。 全く抵抗のそぶりを見せないブリジットにエルザは一定の満足を得たのか、恍惚とした表情でブリジットの頬を撫で上げる。「ふふふ、ブリジット。可愛いブリジット、これであなたは私のモノ……」 エルザの顔が、キャンデーを舐め続けるブリジットの舌に近づいていく。彼女自身も舌を出し、二人の舌が触れ合う寸前になって――「ちょっと待ったーっ!!」 エルザの後頭部を引っ掴んで引き離したのはトリエラだった。彼女はエルザの手に堕ちたブリジットを悲しみを込めた視線で捉え、今まさにブリジットを手籠めにしようとしていたエルザを、殺意と憎しみを込めた視線で射抜く。「ブリジットを初めて可愛がった、もとい、餌付けしたのは私だ!」「あら、誰かと思えば負け犬のトリエラさんではないですか。見苦しいですわよ、捨てられた女の妬みなんて……」「散々本編で嫉妬に狂っていたあんたはどうなの! それよりブリジットを返せ!」「ふふふ、あなたの眼は節穴? 今この子は私に夢中よ」「嘘だ! 嘘だと言ってよブリジット! 私があげたケーキの味はもう忘れてしまったの!?」 トリエラがブリジットの肩を掴む。顔を覗かれたブリジットはその蕩けた瞳でトリエラのことを見た。 そしてこう告げる。「私、お菓子をくれるなら誰でもいいよ?」 ブリジットの一言にトリエラは全てが敗れ去ったことを知った。そうだ、自分の愛情はエルザに書き換えられてしまうくらい脆かったのだ。 お菓子の味で勝てなかった、ただそれだけのことだ。 目の前でエルザに堕とされていくブリジット。 そして何も出来ない自分。 トリエラは拳を握った。そして何も出来ない自分を呪った。 餌を与え続けられなかった自分を呪った。 次回予告 エルザにブリジットを取られたトリエラは復讐に燃える。 そして新たに判明する子犬(ブリジット)の好物。 殆ど出番の無かったクラエスの運命は? 次回、お姉さまと書いてスールと読む。愛情と書いて餌付けと読む。 お楽しみに! ◆◆ 第一部あとがき 第一部を皆さまの沢山の御感想のお陰で書き切るることが出来ました。本当に感謝の極みです。 ただ、原作からのズレは賛否両論がありますがご容赦くださいませ。 さて次回からは原作2巻分が始まります。 そこで切れ目がわかりやすいように、ガンスリ劇場なる本編とは似ても似つかないアホなSSで章分けをすることにしました。次回は第二章が終わってからです。 この劇場が10本書くことが出来るようこれからも頑張っていきます。 ご声援、よろしくお願いします。 PS 一章だけで12話も使ってしまったことに焦りを覚える今日のこの頃。