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No.1511の一覧
[0] Spell Breaker[暇人](2006/01/30 21:27)
[1] 第一話 『満月の夜に』[暇人](2006/11/10 02:08)
[2] 第二話 『月夜のアルテミス』[暇人](2006/11/14 21:33)
[3] 第三話 『夜の終わり』[暇人](2006/11/14 21:27)
[4] 第四話 『目が覚めると』[暇人](2006/05/09 21:36)
[5] 第五話 『偽りの夜は明けて』[暇人](2006/11/14 21:37)
[6] 第六話 『生き残るための選択』[暇人](2006/11/14 21:46)
[7] 第七話 『月の呪縛』[暇人](2006/06/19 11:53)
[8] 第八話 『感動の次には』[暇人](2006/02/11 17:29)
[9] 第九話 『アマルガスト』[暇人](2006/02/15 20:47)
[10] 第十話 『はじめての魔術』[暇人](2006/11/26 15:23)
[11] 第十一話 『ある日の出来事』[暇人](2006/05/31 23:32)
[12] 第十二話 『ある魔術師の悪意』[暇人](2006/11/14 22:44)
[13] 第十三話 『夜の始まりに』[暇人](2006/05/31 23:21)
[14] 第十四話 『吸血鬼』[暇人](2006/11/14 21:55)
[15] 第十五話 『バイバイ』[暇人](2006/11/14 22:00)
[16] 第十六話 『Another night』[暇人](2006/05/31 23:47)
[17] 第十七話 『夜明け』[暇人](2006/11/14 22:29)
[18] 第十八話 『噂』[暇人](2006/11/14 22:11)
[19] 第十九話 『アデット先生の魔術講義/ルーン』[暇人](2006/11/14 22:35)
[20] 第二十話 『銀狼奇譚』[暇人](2006/11/14 22:05)
[21] 第二十一話 『ある夏の夜に』[暇人](2006/06/03 09:20)
[22] 第二十二話 『霧海』[暇人](2006/11/09 02:42)
[23] 第二十三話 『回想/Doll Day 1』[暇人](2006/06/09 00:25)
[24] 第二十四話 『回想/Doll Day 2』[暇人](2006/11/09 02:57)
[25] 第二十五話 『回想/Doll Day 3』[暇人](2006/11/10 00:50)
[26] 第二十六話 『断れなくて 』[暇人](2006/06/25 15:46)
[27] 第二十七話 『真紅の魔術師 』[暇人](2006/11/10 01:17)
[28] 第二十八話 『目が覚めてみれば 』[暇人](2006/11/14 22:52)
[29] 第二十九話 『公園での出来事 』[暇人](2006/11/20 05:39)
[30] 第三十話 『悪夢の舞台へ 』[暇人](2006/07/18 20:25)
[31] 第三十一話 『路地裏の喧嘩 』[暇人](2006/11/10 01:09)
[32] 第三十二話 『路地裏の決着 』[暇人](2006/11/10 01:45)
[33] 第三十三話 『逢魔ガ橋 ・血戦』[暇人](2006/11/10 01:50)
[34] 第三十四話 『訪ねてきた吸血鬼』[暇人](2006/11/10 01:57)
[35] 第三十五話 『人々の夜』[暇人](2006/11/01 05:43)
[36] 第三十六話 『憂鬱な朝』[暇人](2006/11/10 02:04)
[37] 第三十七話 『時を統べる者』[暇人](2006/11/20 06:55)
[38] 第三十八話 『無限回廊・宴の始まり』[暇人](2006/11/26 16:20)
[39] 第三十九話 『最も高貴な一族』[暇人](2006/12/07 04:29)
[40] 第四十話 『風』[暇人](2007/01/18 07:53)
[41] 第四十一話 『伝承の最期』[暇人](2007/02/10 02:11)
[42] 第四十二話 『彼女達の日々/綾音』[暇人](2007/02/10 02:16)
[43] 第四十三話 『彼女達の日々/玲菜』[暇人](2007/03/01 01:45)
[44] 第四十四話 『謀り』[暇人](2007/03/01 02:14)
[45] 第四十五話 『勘違い』[暇人](2007/04/15 01:27)
[46] 第四十六話 『ふくしゅう』[暇人](2007/05/18 02:27)
[47] 第四十七話 『浅はかな悪意』[暇人](2007/11/20 01:29)
[48] 第四十八話 『招かれざる狩人』[暇人](2007/11/20 01:02)
[49] 第四十九話『銀の杖』[暇人](2008/03/23 00:38)
[50] 第五十話 『こくはく』[暇人](2008/04/03 07:30)
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[1511] Spell Breaker
Name: 暇人 次を表示する
Date: 2006/01/30 21:27
2004年の6月――久しぶりの雨が大地を潤し、暑い時期の前触れとなっていた。

『Sanctus, Sanctus, Sanctus, Dominus Deus Sabaoth――』

日本、そこはある地方都市――人口は十数万人といったところ。

『Pleni sunt caeli et terra Gloria tua――』

その街の一角で響き渡るはミサ曲『サンクトゥス』。

『Hosanna in excelsis――』

宗教歌の響き渡る教会――外で降り続ける雨の音にも負けない歌声。

『Benedictus qui venit in nomine Domini――』

オルガンの音色に合わせて楽隊の老若男女が綺麗なタペストリーを織り上げる。

『Hosanna in excelsis――』

だが、彼らは別にプロというわけではない。

彼らはこの教区の聖歌隊のメンバーというだけのことだ。

聖歌隊といっても彼らの場合、簡単に言ってしまえば趣味の延長のようなもの。

別にこれで給料を貰うわけでもなく、それぞれが別な職業で働いている人々。

聖歌隊も自身が入りたくて入っただけ。

その心にどれほどの信仰があるかどうかはさておき、信者である以上はやはり趣味ともいえない微妙な活動。

歌が佳境に差し掛かったとき、教会の扉がわずかに開いた。

その瞬間に外に音が漏れ、外で響き渡る雨の音が中に入り込んだ。

そして、その雨音を従え、レインコートを羽織った人影が入ってきた。

聖歌隊はその侵入者を気にするわけでもなく、歌い続ける。

彼らには外の音も、突然の訪問客も気にならなかった。

荘厳な空気が崩れることなく、歌は続く。

それを邪魔しないように静かに椅子に座る訪問客。

そのまま訪問客がレインコートを脱ぐと、下から現れたのはセミロングの茶髪の美少女。

どこか外国のブランドの服、落ち着いたデザインのスカートとブラウスは上品だった。

茶髪は櫛で梳かしたすぐあとのように綺麗で、外国人の血が入っていることがよくわかる白い肌と碧の瞳が印象的だった。

それでもどこか日本人らしい印象もあいまって、不思議な雰囲気を纏っている。

小アジアあたりの文明の交差点で見られる人々のような絶妙な混ざり方といえばいいのだろうか、彼女の風貌はそれに近い。

彼女はそのまま入り口近くの椅子に座り、聖歌隊の練習が終わるまでずっとその場で待つつもりのようだ。

手元には丸められたレインコートを持ち、楽な格好で寛いでいた彼女は時折腕時計を確認しながら歌に聞き入っていた。

○○○○○

そして、午後8時前まで続いた練習が終わった。

練習を終えた人々が帰り始めたとき、徐に席を立った彼女はさっきまでオルガンを弾いていたシスターの元に歩み寄った。

いまだ教会に残る人々は練習での問題点を話し合ったり、世間話をしていたりしていた。

白髪頭の西洋人神父は他の日本人のシスター達と片づけを行っていた。

少女に気がついていたただ一人の西洋人シスターは、神父に断りを入れた後で少女と奥の部屋に入っていった。

シスターのあとに続いた少女の顔には緊張が見られる。

○○○○○

6脚の椅子と長い机が置かれただけの質素な休憩室――。

少女に紅茶を出したシスターは被っていたカソリックの帽子を脱いだ。

衣擦れ音の後、絹のようなブロンドの長い髪が流れ落ちる水のように肩に落ちる。

眼鏡の奥に光る瞳は深青なるサファイア。

陶磁器のような白い肌。

年の頃は10代の後半にも見える怜悧な少女。

細い指先、彼女は目の前の少女に手を差し出した。

「はじめまして、私はこの土地の『調停者』でアーデルハイトといいます。貴女が電話を下さったアサミ・レナさんですね、どうぞよろしく」

電話であらかじめアポイントメントを取ってきた相手に笑顔で挨拶するシスター。

玲菜は差し出された手を見つめたが、しばらくそれを握り返すことが出来なかった。

玲菜の目の前に座る少女――彼女こそ噂に名高きアーデルハイト・フォン・シュリンゲル――数少ない吸血鬼狩りの英雄。

騎士として最高の称号『エムピレオ』を併せ持つ六十四番目の魔導師。

今となってはわずかしか現存しないという魔導師の一人に出会えることは本当に稀な事だ。

だが、その有名人は会ってみれば意外に普通の相手。

故郷でも見かけるようなただの白人少女。

確かにとても美しくはあるが感じる印象はそれだけ……実際の年齢は少なくとも100に近いはずだが、プレッシャーをまったく感じない。

逆にそれが不安だった――この相手は本物かどうか?

少しのあいだ、そう考えたほどだった。

「一つ確認させて、貴女が本物のアーデルハイト? それとも、その体は人形とか使い魔の類?」

そう言われて、相手は苦笑しながら答える。

「私以外にもアーデルハイトという名前の人間は世界に大勢居るでしょうが、少なくともこの街に赴任してきたのは私一人ですから、貴女がお探しのアーデルハイトは私かと」

『高貴なる者』の名を冠する金髪の魔導師はちょっとおどけて答えた。

確かに聞いていた外見とは一致する、そう思えば彼女が本物なのだろうがあるいは偽者かもしれない。

下らない疑問だが、相手は魔導師なのだからなにがあってもおかしくはない。

「……」

少し渋ったが、手をひかない相手の視線に突き動かされ、仕方なく手を握り返した。

「どうも――ですが、珍しいですね」

「珍しい? なにが珍しいの?」

薄く笑ったアーデルハイトは自分のカップにも紅茶を注ぎながら話を続けた。

紅茶にジャムを入れる……あれはロシア流の飲み方なのだが、彼女はドイツの出身ではなかったか?

しかし、それには答えらしきものが与えられていた。

彼女が行方知れずになったのは三十年近く前だったのだから、ロシアに滞在する時間もあったということだ。

当然のことだが、本当に行方知れずになったと思っているわけではない。

彼女のように吸血鬼から命を狙われている人間を彼女の属する派閥が色々な場所をたらい回しにすることで隠していたのだろう。

それが最も妥当な推理だし、理由も説明できる。

そんな玲菜の考えなど露知らぬ様子のアーデルハイトは、こんな場所で隠棲していることで感じる退屈を紛らわせようとしている様子だった。

「いえ……『調停者』の存在自体が人の庭に勝手に交番を立てているようなものですから、新入りの方でも挨拶に来てくださることは稀なのです。因みに、私もここに来て1年ほどですけど、挨拶に来られたのは玲菜さんが初めてですよ」

『調停者』――魔術世界の六大派閥が協定を結んで発足させた治安維持部隊。

魔術師たちの地域紛争を調停し、地域の平和を維持する人々。

六大派閥出身の高名な魔術師から傭兵魔術師までその出身は様々と聞くが、紛争地帯に単身あるいは数名で乗り込み、その地域の平和を維持する。

有事の際には吸血鬼狩りも率先して行わなければならないという事情から、選ばれる魔術師は実践派の化け物じみた連中が主だそうだ。

当然ではあるが、その業務は大変な危険を伴う。

そもそも地域紛争の場で争うのは大派閥に属さない魔術師が多く、彼らの争いは地縁に基づくものが多いのでこれをよそ者が解決するのは難しいのだ。

最悪の場合、調停者自身が彼らに敵とみなされて殺された例さえあるというのだから正義の味方も楽ではないということだろう。

だから、数多の魔術師の中で進んでこの職につくものは少ない。

その報酬が多いとはいえ玲菜はこんな職業をやっている人間の精神を疑う。

そんな玲菜の心情など露知らない様子のアーデルハイトはそのまま自分がここに来てからの思い出などを楽しそうに話した。

だが、そんなことにいつまでも付き合って入られない。

玲菜がここに来たのには理由があるのだから、下らない世間話など聞いている暇はなかったのだ。

「――調停者、私がここに来たのはドルイド魔術師のクレア・マクリール、私の祖母の紹介よ。だからお願い、私の相談に乗って!」

真剣な表情で頭を下げて頼み込んできた玲菜に少々戸惑いながらも、アーデルハイトは懐かしそうにその話に乗ってきた。

「クレア・マクリール? ――ああ、あのレディ・クレアさんですか。彼女にはこの場を借りて祝辞を述べさせてもらいますよ」

「まぁ……ありがとう。貴女にそういわれると多分うれしいとは思うから、今度あったら伝えておくわ。それで話だけど……」

玲菜の祖母、クレアは偉大な魔術師としてそれを称える称号を得た。

それはつい最近のことで、長い研究の果てにそれが認められてのことだった。

わかりやすく言うとノーベル賞を取ったようなものだろうか?

尤も、その取得率では雲泥の差はあるのだが。

「ですが、これでマクリール出身の魔導師は二人になりましたね。これは大変な偉業です、誇りに思って結構だと思いますよ」

未だかつて二人の魔導師を輩出した家系は存在しない。

マクリール家がそれを達成するまでは。

それは偉業などというものではない、すでに奇蹟に等しいほど困難なこと。

「でもそれって私の力じゃないから。家がどうとか言われても正直、関心もないけど」

それは本音だった。

正直、家族を褒められることはうれしいが、それは自分の力ではないし、自分が偉くなったわけでもないのだから当たり前だ。

玲菜は高い自尊心を持ち、家名を誇る典型的な貴族の令嬢だったが、その生まれゆえにちやほやする大人が嫌いだったし、自分の力で掴んだもの以外は決して誇らないと心に誓っていた。

どんなに大切なものでも自分で築いたもの以外はすぐに零れ落ちるのが幻想というもの……だから体を痛めつけ、精神を切り刻んだ果てに自分に残る魔術師としての力だけを頼るべきなのだと心に刻んでいる。

「名門のご令嬢にして、その謙虚な姿勢は評価に値しますね。ですが、なるほど。確かに彼女は私の知り合いです。しかし、あのレディ・クレアさんに孫が出来るほどの年月が経っていましたか……時が経つのは早い。国の諺では『時は羽を持つ』とも言いますが、まさにその通りですね」

アーデルハイトは玲菜の年と変わらない見た目だというのに、遠い過去の出来事のように語っていた。

自慢の祖母、六十八の魔導師の末席に名を連ねた一族の誇り――今は北欧を中心にした大派閥で教授の職にある。

そんな彼女も100歳近い年だというのに、そんな老婆との思い出を語るのはまだ17,8にしか見えない少女だというのはおかしな光景だ。

だがそれも当然か――少女が活躍したという吸血鬼との抗争に一応の決着が着いたのがおよそ100年ほど前なのだから。

「ですが、マクリールの家名を捨てられたわけでもないのでしょう? あれだけ偉大な家名を捨てることが許されるわけもありませんし」

古い魔術師が信じる迷信によれば、家名も大事な体の一部と思うべきらしい。

名は体を現し、言霊としての力さえ宿っているという。

尤も、それが本当に効果を持つことなどほぼありえないのだが。

「まあ……本名はレナ・マリア・アサミ・マクリールだけど、お父さんの顔を立ててあげないと悪いでしょう。一応、婿養子だけど日本に来たときくらいはお父さんの苗字を優先させてあげないとかわいそうじゃない」

「なるほど、見かけによらずお優しい……あの人もそんなところがありましたね。実は昔――」

ただ、彼女の思い出話など聞く余裕はない。

すぐに話を元に戻そうと何とか割り込む。

「え、ええ。そうね――それで、私の話だけど」

「おっと、そうでしたね……数少ない知人の孫の頼みがどのようなものか、それを聞くだけならいくらでも聞きますから、どうぞ仰って下さい」

そう言われ、何とか相手に自分がここにきた本当の目的を伝えようと頭の中でまとめていた台詞をそのまま口にする。

「実は……その、呪いを解く手がかりを探しているの! お金は出すから呪いを解いて! もし、それが無理ならその道の専門家を紹介して!」

勢いに任せて、やや強気に言ってみた。

魔術師が他の相手に相談するなどなかなかあることではないが、意外にも相手は馬鹿にするでもなく、真摯な態度で相談に乗ってくれた。

この場合は馬鹿にする方がむしろ当然だ。

自身で物の性質から成り立ちまでを調べ上げ、動植物から果ては世界自体さえ組み直すのが魔術の本分。

それを他の魔術師に聞くなどどうかしている。

それでも自分を笑い飛ばさない相手に逆に不気味さを感じる。

嘲笑すべきところで哂わない、そちらの方がずっと恐ろしいこともあるのだ。

○○○○○

取り敢えず、その経緯を話し、今までどういう方法を試してみたのか、誰に相談したのか、その結果どうなったのかを切々と語ってみた。

アーデルハイトはそれを真剣に聞いて、色々な質問を繰り返した。

様々な可能性について二人で議論してみたが、結局のところは徒労に終わった。

「……正直、私では無理ですね。まさか神がかけた呪いの例を今の時代に見ることになるとは思いませんでしたが、貴女の場合はその中でも特に運が悪い。名前を持たない神に呪いを受けるとは……最悪以外の何者でもありません」

アイルランドで祖母から魔術の手ほどきを受けていたときに事故で神の怒りを買い、その名前も分からない神に呪いをかけられた。

それは確かなのだが――無名、つまりはほとんど信仰を受けていない神の呪いがどうして危ういというのか?

古い魔術師の祖母ですらそんなことは口にしていなかったというのに、目の前のうら若い少女は深刻そうな顔で語った。

玲菜はそんな顔を見ても、自身が信じる法則を口にしてみた。

「どうして、それが最悪なの? マイナーって事は弱いんじゃ――」

すると、即座にその意見を否定する答えが返ってきた。

「確かに、神々の世界においての信仰とはその力にも大きな影響を与えます。広く世界から信仰を集める神はその力が強大……それは一つの事実ではあります」

「だったら――」

「大切なことはそれだけではないのです。これは全ての人間にもいえることですが、名前とはそれ自体に意味がある一種の言霊です……特に神や悪魔といった手合いはその真の名を知らない限りその力を殺ぐことが容易に出来ません。故に、その神の呪いには有効な対処策はほぼ存在ないのです」

古の時代、魔術師達は本名を隠していた。

それは呪いを恐れ、自身の心を奪われるのではないかと恐怖したからだ。

だが、それはとてつもない魔導師だけに可能な神業、とても普通の魔術師に真似の出来ることではないし、専門でもない限りは魔導師の称号を持っている者でも不可能なのだから、用心のし過ぎということも出来た。

何より、優れた術者が吸血鬼との戦いで死に、あるいは吸血鬼に堕落した末に討たれたためその手の魔術は廃れた。

だから、玲菜も特に名前を隠そうともしないし、大部分の魔術師も隠すことなどない。

神の名前についても同じと考えていたため、アーデルハイトの言葉は青天の霹靂。

玲菜は今までの知識では知らなかった事実に愕然としたのだ。

そして、祖母は確かに偉大な魔術師だが、この分野には疎かったことを思い返す。

そう、祖母をして専門家と謂しめた少女アーデルハイトの言葉は深く胸に突き刺さった。

混乱する頭で、何とか呪いを解く方法がないものかと思案してみた。

「……だったら、そいつの名前を古典で調べればいいの?」

そうだ、祖母の城にある古い蔵書を読み漁ってみればすぐにそんなものは見つけられるはずだ!

広大なマクリール領――その中に聳える城には膨大な数の書物が収められ、古くは千数百年も昔の魔導書などが存在した。

それを解読すれば、彼の土地の神のことなら容易に判別がつくはずだ。

かすかな希望を込めてみた。

しかし、即座にその希望は砕かれる。

「不可能ですね。その名を過去に知られているのなら、信仰もない神にそれほどの呪いをなす力は無いでしょうし、私個人でも呪いを解けたはずです。しかし、その可能性も見えない……相手は過去に人とあまり接触しなかったのでしょう。あるいは彼の成り立ちが人の畏れといった古い意識にあるのならそれに名前などあるはずはありませんし、決して滅びることのない信仰を得た強大な存在ということにもなります」

「……方法はないの?」

青ざめた顔で聞き返すのがやっとだった。

呪いで身を滅ぼされる、その恐怖が襲い掛かってくる。

「無くはないでしょう。神の呪いといっても、即死という類のものではないのですから、その呪いを解くことは無理ではありません。尤も、かなりの時間と優れた協力者を必要とすると思いますが」

最後に、わずかに声が明るくなっていた。

相手の顔にはこちらを助ける意思があるとかいてあったようなものだ。

「? 協力してくれるって事?」

半信半疑ながらも、この期待していなかった強力な協力者の登場を確認してみる。

「ええ。貴女の側は面白そうですし、私もここ20年ばかりは暇でしたから」

「20? ……いくつなのよ、貴女は」

本来、彼女の功績を知っていれば驚くようなことでもなかったのだが、どうも自分とあまり変わらない見た目をしているために20年と聞いてびっくりして、思わず聞き返していた。

「女性に年を聞くとは、礼を失していますね。それに、魔力と魔術をうまく使えば多少の長生きなどさして難しいことでもありませんでしょう?」

別に怒ったわけでもなさそうだが、教えてはくれないようだ。

確かにそういう魔術師もいると聞く、玲菜の祖母はわざわざそんなことはしなかったが、技術自体は古い文献でも読んだことがあるし、自身でも可能だとは思う。

「……答えたくないなら、それでもいいわよ。因みに私は14だけど」

「14? だとすれば、わりと老けていますね。てっきり私の体よりもだいぶ年上かと」

真顔で目の前の少女はとんでもないことを口にする。

どっちが失礼なのだろうか?

思わず、そう口にしたくなる一言だった。

「この――」

「ふふっ、失礼。ほんの冗談です。ですが、14……この国なら中学三年生?」

「ムカつく家庭教師がついてたから大学レベルまでなら多分問題ないとは思うけど、一応この国の規定だとそうなるみたいね」

「なるほど、ですが呪いを抑える霊薬を作るだけでも一人前の魔術師としてかなりのものですよ。それ所か、その年で魔術を使いこなすだけでも貴女は天才の器だ」

「? そうなの? たったそれだけで天才って、本気で言ってる?」

自分と母、祖母くらいしか魔術師を知らない玲菜は天才などと思ったこともなかったのだが、アーデルハイトにそういわれて少し照れた。

「ええ。大抵、普通の魔術師は厳しい修練を積んだ末に魔術を使えるようになります。そもそも魔力の使い方を覚えるだけで10年ほどは鍛錬を要するといわれているくらいですから……これを聞くと、ご自分がいかに恵まれているかがお分かりになられるでしょう?」

「へぇ……そうなんだ」

正直、そんなことを突然聞かされても実感が湧かない。

ただ事実を事実と認めることしか出来なかった。

だから、口から漏れたのは如何にも気の抜けたその言葉だけ。

「……他の魔術師の前で言えば殺されますよ、多分。尤も、当代マクリール卿の孫娘と聞けば、当然だと納得する人の方が多いかもしれませんが」

「そう、例えば貴女は嫉妬とかするの?」

シュリンゲル家は彼女の代まではまったく名を聞かない田舎錬金術師だったと聞く。

だが、吸血鬼討伐の折に幾多の魔術師を葬ってきた吸血鬼の王を屠ったことでその名が知れ渡り、その後も功績があったことから魔導師の称号を得たという。

それならば、彼女は途方もない秀才ということになるだろう。

歴史も積まず、確かな師の下で学んだわけでもなく、ポッと出の魔術師が魔導師の称号を得た例は彼女を入れても3人だというのだから、その努力は想像に難くない。

しかし、意外にも答えは違った。

「いいえ、どちらかといえば私も天才肌でしたから貴女に特別嫉妬はしませんね」

そんなものだろうか?

歴史も積まず、優れた師にも恵まれない家に天才など生まれるものだろうか?

これはどの分野についてもいえることだが、真の天才とは人口に比例するものではなく、その文化的背景が大きく影響するものだ。

芸術の下地のないところにその道の天才は生まれず、数学を学ばない世界で数学の天才は生まれない。

知能の高さ、身体能力の高さなどで図抜けた人間は人口にも比例するのだろうが、それらと本当の意味での天才はまったく違う。

天才とは生み出すものだ、真似をするのではなく、新たに創造する力を持った人間――それらは積み重ねがない場所に生まれない。

生まれた家がそういう条件でなかったとしても、育った国がその条件を満たしていれば天才も生まれるだろうが、シュリンゲル一族は衰退の家。

ただ一人、世界に冠たる天才を生んだ家は彼女が生まれるずっと前からの近親婚により力は弱り、病気に悩まされ、現在までに生き残るのは彼女だけ。

あの家は閉鎖的で外との交流もほとんどなかった、そんな場所には天才など生まれない。

だというのに、彼女は特別なのだろうか。

「それより、学校には通われるのでしょうか?」

学校、玲菜に聞くのだからそれは中学校のことだ。

魔術師が学校に通う、別にないわけではない。

彼らとて人間社会と隔絶されて生きているわけではないのだから、人間社会で生活する上で学校などへ行くことはある。

玲菜はあまりそういう協調性を重要視する空間になじみがなかったので、ちょっと眉をひそめ、面倒臭そうに回答した。

「? 別にどうだっていいでしょう? 何かあるの?」

アーデルハイトは別にいやな顔をするでもなく、笑顔のまま答える。

「いえ、せっかく来ていただいた玲菜さんのためですから……地元の先住民の方々がおかしな妨害をしてきたときにお守りして差し上げようかと思いましたもので」

地元住民――いわゆる土着の魔術師達のことだが、魔術師というのは如何にも人間らしく中央では大組織を作って群れるくせに、自分の土地に余所者が来ることは嫌がるというダブルスタンダードを持っている者が多い。

群れを作りながらも、一方では孤独でありたい……矛盾する感情なのだが、それは吸血鬼という外敵が存在するために元々は孤立主義者ばかりであった魔術師たちが仕方なく群れを作るようになったという理由がある。

マクリール家のような名門、シュリンゲル家のような孤立主義を貫く衰退の家、そういった連中ですら結局どこかの派閥に属している。

それは弱いからでも、悪しき画一主義のためでもない。

単純にそれが最も効率のいい方法だからだ。

大昔、六大派閥の原型ができたころは派閥も脆弱でメンバーも少なかった、故に参加することに意義を見出すことは困難だった。

だが、吸血鬼との戦いの激化により群れの力を求めるようになった多くの魔術師達が大挙して派閥に加わるようになると、状況は一変する。

そこは世界の最先端をいく魔術の殿堂となり、吸血鬼への防壁となり、最も優れた研鑽の場へと姿を変えた。

そういう事情があるため、プライドを重視して自分の家だけで単独の研究を試みることはあまりにも浅はかなのだ。

だが、六大の派閥が伸張することを面白く思わない魔術師も当然存在し、彼らは自分たちの土地への余所者の流入を嫌う。

アーデルハイトはそういった排他主義者との抗争を警戒して言ったのだろう。

だが、玲菜にはその申し出も大してありがたい話でもなかった。

「先住民って……私のお父さんの家、元々この街にあるのよ。だから、言ってみれば私自身がその先住民」

「ああ、そうでしたか。それなら大丈夫でしょうね」

「それより、アデット?」

「? はい? アデット? 誰ですか、その方は?」

「貴女よ、貴女! 他に誰もいないでしょう! しっかりしなさいよ」

「……玲菜さんのその気安さはクレアさん譲りですね」

苦笑しながらも、まんざらではない様子で玲菜に続きを促した。

「で、アデット。私以外にこの街に魔術師はたくさんいるの?」

「いえ、そう多くもないと思いますけど……何しろ自営業者の方が多いのでこちらも把握しきれておりません。何より、私の管轄する地区が北海道くらいあるもので、巡回も年に一回くらいですから、会ったことのない方も大勢おられると思います。それでよろしいのでしたら、この街近郊に住む6名ほどの方にお会いして喧嘩をしないでください、と釘を刺しておきました」

「幼稚園の先生じゃないんだから……喧嘩をするなって言ってもねぇ、効果なんかなかったでしょう?」

そういわれて、相手は首を振った。

「いいえ、それが不思議なのですが私の前任者の代には激しかった勢力争いがここ一年ばかりは沈静化しておりまして、今は任務を果たして平和を維持できています」

アーデルハイトは本当に不思議そうな顔で言っていたが、中央の魔導師が突然出張してきたのだから、それもあるいは仕方のないことだろう。

六大の派閥とて、ここに軍隊を派遣するほどには結束力を持たないが目の前にいるただ一人の魔導師が吸血鬼を討伐した者なら警戒して当然だ。

何より、錬金術師にして騎士、『魔導師』の称号さえ手に入れた白き英雄に喧嘩を売るような自信家はそうそう現れないと思う。

そんな怪物の目的が平和を維持したいだけだというのなら、一々刺激する方が馬鹿というものである。

彼女は本当にそんなことにも気がついていないのだろうか?

「本当に、いい加減な話ね」

本音は隠していってみた。

「そうでしょうか? 平和になるのなら、いい加減でもそちらの方がよろしいのでは? それに、ここは世界の他地域に比べてかなり安全ですよ。吸血鬼も出ませんから」

「あ、当たり前よ。あんな化け物、出てきたら困るじゃない」

○○○○○

吸血鬼、三つのタイプが存在する怪物。
その数は100にも届かないが、彼らは人類全ての敵だ。
故に彼らを倒した者は例外なく英雄。

彼らを滅ぼしたければ、太陽と雨をうまく利用しろ。
彼らは太陽の下では弱者になる。
彼らは雨に当たれば力が半減する。

銀を打ち込めば、体も再生できなくなる。
完全に体を破壊すればそれでおしまい。
十字架と大蒜だけは止めておけ、彼らにそれは効果がない。

世にも恐ろしき闇を統べる者たち。
彼らは全て同胞であり、結束は固い。
彼らはただ一人を始祖と崇める、それ即ち最初の一人。

一つは王族たる古い吸血鬼……古の魔物、不老不死の超越者。
ただ一人を発端とする人とは別の種族。
一人の王と二十の子供達、二十一の中で生き残るは四。

彼らの中で純血はただ一人、それこそが王。
二十の子供達は皆、混血。
生き残るは一人の王と三人の子供達、合わせた数が四。

一つは貴族たる新しい吸血鬼……王の入れ知恵で堕落した五十の魔導師たち。
堕落者、禁忌を犯した者……人を捨てた悪魔達。
六十八の選ばれた魔術史上最高の天才たち、堕ちた五十の中で生き残るは十六。

一つは兵卒たるどちらでもない吸血鬼……意図的に創られた魔物。
堕落者たちの従卒、創造物。
古の時代よりの魔物、新しき創造物、二百の中で生き残るは六十四

彼らを殺せ、そう叫ばれて久しく、魔術師達は幾多の吸血鬼を屠ってきた。
生き残るは八十四の怪物……流派を超えて憎まれる彼らに安住の地はない。
しかし忘れるな、彼らが一人の例外もなく最強の敵である事実を。

古い吸血鬼は特に例外的だ、彼らは弱点など持たない。
新しい吸血鬼は伝承をそのままにした弱点を持っている。
どちらでもない吸血鬼も新しい吸血鬼に同じ。

注意すべきは古い吸血鬼……彼らの恨みは深く、その根源は数千の時を遡る。
注意すべきは新しい吸血鬼……彼らは自らを誰よりも愛するが故に人を捨てた。
注意すべきはどちらでもない吸血鬼……彼らは感情など持たない。

彼らに噛まれても安心しろ、君は決して吸血鬼には堕落しない。
吸血鬼は一種のプログラム、自力でソレを完成させる以外に成る方法はない。
だがそれは五十の天才達でさえ手助けを必要とした魔術、君には不可能だ。

もしも噛まれたときはさっさと自決すべきだ。
吸血鬼に堕落しない代わりに、君はすぐに彼らの操り人形にされるから。
それは決して望まぬ運命となるから。

○○○○○

「そうですね。でも、私の管轄地ではご安心を。地元の方々とも仲良くなって、地域の安全を守り続けますから」

何とも信じられない能天気そうに語る少女は余裕だからそう語るのだろうか?

確かにそれもあろう、だがそれがいえるのはせいぜい兵卒レベルまでの話、それ以上は数多の魔術師が束になってようやく一人ずつ撃破できる化け物。

アーデルハイトとて夜では彼らを滅ぼすことは難しいだろう。

「それはそうと……先ほどの話の通りでしたら、玲菜さんも吸血鬼に分類されますね。今は全て滅ぼされましたが過去にそういう種類の怪物がいましたから」

それは知っている、自分が薬を飲むのをやめるか、呪いに耐えられなくなったときに堕ちる怪物の姿は悪夢に何度も見た。

文献にしかその姿をとどめない怪物はとても恐ろしく、人の肉を口にする汚らわしい姿ばかりが思い浮かぶ。

吸血鬼というにはあまりにも違うその怪物、それは恐怖だ。

「……戦うつもり? それともチクるつもり? なら……」

古い吸血鬼の中でも『真祖造り』を可能としたただ一人を滅ぼした魔導師を相手に戦う? 

玲菜は自分でそういっておきながら、それがあまりにも愚かだとわかっていた。

勝てない、絶対に。

『魔導師』とは歴史に残るほどの偉業をいくつも為しえた人々だけに与えられる最高の名誉称号――五千年も遡るといわれる魔術の歴史上にも六十八人しか存在しない人々。

彼ら以外には使うことが出来ないほどの高度な魔術を行使する天才、その理論から派生した流派や魔術は数知れないという『魔術の世界を先へと導く魔術師たち』。

二千年前に六大派閥が出来て以降、古い時代の者まで検討に検討を重ねて数えられてきた人々で、その名誉は例え吸血鬼に堕落しても剥奪されることはない。

事実、称号が創設された時点でその多くが吸血鬼に堕落していた。

堕落した人々を称える行為に反感を覚えた少数派や単独で魔術を研究する魔術師達はその権威を認めようとしないが、六大派閥はただの大組織ではなくその研究において最高峰にあることは明らかな組織。

その最高学府が最早その道で並ぶものがないと認定する相手が凡庸であるはずもない。

実際に全ての魔術師は彼らを内心では認めている。

認めざるを得ないほどの才能の差を感じさせられるからだ。

魔術の世界は才能だけが全てではない。

努力と根気で大業を為しえたものは多い。

だが、魔導師に名を連ねた者たちの中にそういう人間は少ない。

故に吸血鬼は強力なのだ、本当の意味で百年に一人という天才中の天才が成った怪物なのだから凡百の人間達がおいそれと手出しできる相手ではない。

実際は少し違うがそれに類する吸血鬼を狩った相手に玲菜が勝てる要素など何一つなかったし、その確率はゼロだった。

いや、アーデルハイトが多くの狩人達と一緒に討伐に出かけた相手こそ全ての原因を作り出した吸血鬼だったのだからそれよりも悪い。

『真祖造り』あるいは『魔王』と呼ばれた古い吸血鬼の一人『メイサ』、先王の子供の中で唯一魔術に精通した者。

五十の偉大な魔導師を残らず闇に落とした悪鬼は、それ自身も強力な存在で数多の討伐隊を滅ぼしたことでも知られた。

それを討伐したが故に彼女の名声は百年経った今でも語り草になっているくらいなのだ。

「いいえ。そのようなつもりは毛頭ございません。思いますに、玲菜さんの場合は少し特殊でしょう。治せないわけではないのですし……ただここの平和を維持する者として貴女を監視することもあるかもしれません。ですので、今後ともよろしく」

現在、最強の一人に数得られている相手に殺意は感じられない。

まったく……この相手は本当に吸血鬼を殺した化け物なのだろうか?

「わかったわ、それは仕方が無いと思うし私も反対しない。それじゃあ、よろしく」

今度は差し出された手をしっかりと握ってやる。

「どうも。ところで、例の件は私も調査してみますから定期的にどこかでお会いすることに致しませんか?」

「あ、よろしくお願いね。それはそうと、会う時間までとってくれるの?」

「ええ、今度連絡しますね。お電話番号、伺ってもよろしいですか?」

○○○○○

玲菜が自分の携帯電話の番号を伝えると、アーデルハイトとのお茶会は幕を閉じ、玲菜はそのまま教会をあとにした。

雨が降る中、教会から出て行く玲菜を見送ったアーデルハイトは、すでに神父たちが自室に戻ってしまっていた教会の扉を閉めると、自らも与えられている部屋に向かった。

階段を上るときに見える外の光景――雨が降り、すごく冷たそう。

そのままに階段を上りきると、自室のドアを開けてその中に入る。

質素な部屋――まるで生活感がなく、整頓された机やベッドだけが放置されている。

ため息をつくと、眼鏡を外し、服を脱ぐ。

「玲菜さんか……すごく弄り甲斐のありそうな人。これからはもう少し楽しくなりそうね」

悪役じみた笑いを浮かべ、これから面白くなりそうな生活に期待を馳せる。


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