恩赦
時は少し戻って、押しかけてきた劉備たちと宴会をしていたときのこと。
一刀は劉備を見て疑問を感じていた。
劉備ってひどすぎる。
ゲーム中でもそれほど有能ではなかったように見えたが、ここの劉備は更にひどい。
とても国の長に納まる器じゃあない。
でも、少なくとも関羽、張飛、諸葛亮の3名は劉備に従っている。
諸葛亮がなんでこの時期劉備と行動を共にしているかと言うことは、恋姫だから、で説明がつくので深くは考えない。
張飛はちょっとおいといて……なんで劉備ってそんなに人を惹きつけるんだろうか?
俺はその疑問を解こうと考えた。
誰に聞くのが適当かと言うと、張飛は論外。
劉備といい勝負だから。
関羽か諸葛亮なんだけど、最初からいたのは関羽のはずだから関羽さんに聞いてみよう。
部屋を訪れ、いきなり本題を切り出す。
彼女の答えは
「何か放っておけなくて」。
それって……
劉備が駄目すぎて、関羽さんがついていないとどうにもならないっていうこと?
子供が何をしでかすかわからないから保護者がいるっていうこと?
それが劉備の人を惹き付ける魅力なの?
関羽さん、あなたはかわいそう過ぎます。
俺だって、無能な上司を持っているけど、関羽さんは無能な上司、金欠、兵欠、領土欠、名声欠その他もろもろの負の成分を全て備えている。
俺が不遇だと思ったけど、関羽さんは桁が違う。
本当に関羽さん、あなたはかわいそう過ぎます。
(実は微妙に状況が違うようだが、一刀がそれを知ることは今後も無い)
俺はつい涙ぐんでしまい、
「頑張ってください!」
と、心の叫びを彼女にぶつける。
彼女は、
「はい」
と答えて…………その目から溢れるように涙を流しだす。
関羽さん、やっぱり辛いんですよね。
俺は、本当に関羽さんを守ってやりたくて力いっぱい抱きしめる。
そして……
色々あった。
結局、彼女は劉備と行動を共にした。
そうだろう、あの人ゲーム中でも本当に一途でまじめだったから。
幸せになれるといいんだけど。
宴会があってもなくても翌日は仕事になる。
今日はちょっと寝不足だ。
俺の仕事は農業が主。
今日もフェロモン麹義さんに連れられて、領内の見回りをする。
最近、菊香も清泉もやらせてくれないから、辛い。
昨日の愛紗とは久しぶりだったから燃えた。
とてもよかった。
愛紗もあんなに狂ってくれるとは。
俺も相手があそこまでエキサイトすると、普段以上にがんばってしまう。
菊香、清泉も悶えるけど、あそこまで獣のようじゃない。
体力の違いだろうか?
でも、愛紗いっちゃったからまた悶々とした日々をすごさなくてはならない。
菊香も清泉もいい加減肥料のことから頭を切り替えてくれればいいのに。
最初は麹義さんもいやそうだったんだけど、毎日肌を合わせているうちにだんだん普通に戻ってきてくれた。
あ、肌を合わせるといっても、しているわけではないから、その辺誤解無いように。
……いっそ麹義さんと
……
……
……
……
いいかも。
……
……
……
いや、やっぱり菊香や清泉は裏切れないな。
昨日のは……ちょっと慰めただけであって、決して浮気ではありません、ハイ。
体(下半身)の問題は、それはそれで解決しなくてはならないことだけど、俺もそろそろ自分一人で馬に乗れるようになりたいなぁ。
一人で馬には乗れるんだけど、まだ引いてもらわないと無理。
一度、麹義さんの横で馬を走らせたんだけど、馬が走り始めてしまって大変なことになってしまった。
ハンドルとブレーキが効かない乗り物は乗ったらだめだな。
かといって、俺は兵士ではないから乗馬訓練を真剣にやるわけにもいかないから、上達が遅い。
……普通の兵士が1~2日で乗れるようになっているのは、きっと前から乗っていたからだよ、ハハハ。
俺の運動神経が鈍いわけではないよ………多分。
そうそう、鐙は全馬装備済み。
おかげでみんな乗馬が楽になったと喜んでいる。
馬から弓を射るのがかなり楽になったらしい。
戦術に影響するくらいの発明(?)だったそうだ。
菊香も清泉も絶賛してた。
あ~あ。鐙を考え出すのが肥料の後だったら、二人とも戻ってきてくれたかもしれないのに。
肥料は効いたよなぁ。
生育にも、女性たちの反応にも。
荀諶なんか、俺の顔を見るたびに、
「糞野郎!死ぬの?消えるの?いなくなるの?」
だもんな。
てめえだって糞出してるじゃないか!と言いでもしたら、本気で刀持って俺のこと殺しにきそうだから、止めておこう。
街だって綺麗になったじゃないか。
逆に、褒めてもらいたいもんだ。
落葉樹がふんだんにあるんだったら、堆肥をつくるとか色々手があるんだけど、それほど多くないからあれしかなかったんだもん。
この時代生ごみなんでほとんどでないから、生ごみから堆肥を作るのも無理。
他に肥料を確保するとしたら海から持ってくるっていう手もあったけど、まだ海辺の様子はよく分からないからできなかったし。
そのうち、海にも行ってみたいなぁ。
そんなことを考えながら一日の仕事を終える一刀である。
夜、一刀が部屋でくつろいでいると、珍しく客がある。
「あれ?菊香、清泉。どうしたの?」
最近相手をしてくれないので、何かあったかと尋ねる一刀に田豊が答える。
田豊は厳しい表情をしている。沮授は不自然に穏やかな表情をしている。
「許してあげます」
「え?………な、何を?」
いきなり何かを許してくれる田豊。
昨日の今日なので思い当たる節だらけなのだが、とりあえず知らない振りをする。
「肥料の件は許してあげます」
「肥料?それって、許すとか許さないとかそういう問題ではないような……」
「ゆ・る・し・て・あ・げ・ま・す!!」
「はあ………」
どうも訳が分からないが、とりあえず許してくれるものはそのほうがいいので、黙って受け入れる一刀である。
二人とも妙な怖さがあるし。
で、話はそれで終わりと思いきや、沮授がそれはそれは穏やかな笑顔で話し始める。
「でも、許せないこともあります」
「な、何が?」
「昨晩の行動を教えてください」
心臓が止まったかと思った一刀。
白を切るか?
いや、ここにわざわざ来たということはばれているということだろう。
「ききききき昨日の晩は、あああ愛紗さんが辛そうだったので、その、すすす少し慰めてあげただけだ」
「そうですか。もう、真名で呼ぶ仲なのですね?」
にっこり微笑む沮授。
しまったーと思ったが後の祭りだ。
「でもでもでも、その、心を許しただけで、そんなに変なことは……」
「そうなんですか?それでは、あれだけのよがり声があったのはどうしてですか?」
………万事休すのようだった。
「ごめんなさい!
ちょっと愛紗が可哀想だったんで、抱きしめたら、そのままやってしまいました!
最近ご無沙汰だったんで何回も何回もやってしまいました!!
本当にごめんなさい!
もう、二度としません!!!」
「そう、そうですね。
正直なことはいいことよ」
沮授から暗黒のオーラが立ち上っている。
穏やかだけに怖い。
だが、そろそろ声が怒りで震えてきている。
「だから、今日は二人で一刀に罪を償ってもらうためにここに来ました」
「償うってどうすれば……」
「一晩中私たちを喜ばせ続けなさい!!」
「え?」
何のことはない、元の鞘に戻ったというだけだ。
今まで一刀を避けていたが、関羽に取られたくないという嫉妬心か何かから、一刀を取り戻したいと思ったのだろう。
一刀はきっかけをつくってくれた関羽に感謝した。
「あー!今、関羽さんのことを考えましたね?!」
鋭い沮授であった。
そして、約束どおり一刀は二人に一晩中奉仕した。
嬉しかったけど、二晩連続はかなりこたえた。
こうして、三人は再び同じ部屋で寝るようになったのだった。
めでたし、めでたし。
あとがき
もうすぐ、黄巾の予定です。