人間交差点・・・・な第7話
鞄をもって部屋を出てから販売所を探して校内を歩く。
髪をリング状の髪留めとリボンを使い、首の後ろで一つに纏めたので邪魔にならない。
しかし、屋敷から持って来た服は黒系統のゴスロリ服ばかりなので早く他の服をそろえないと、目立ってしょうがない。
今もこの服で校内をうろついていると、何人かに2度見された。
元がエヴァだから似合ってないという事は無いと思うが、正直どうなのだろう。
それに、ディルムッドの正確な現状も気になる。ディルムッドは前に聞いた時は多少の動き辛さがあるといっていたが、
その多少の認識が俺とあいつではかけ離れている可能性もある。
その辺りを正確に把握していないと、いざと言う時に判断を誤る材料になりかねない。
そんな事を考えながら歩き回っていると、どうにか販売所を見つける事が出来た。中を覗いてみると、レジには骸骨が居た・・・。
パイプを加えて新聞みたいな物を読んでるから、生きているんだろう。一応目っぽい物もあるし。
なんか、こういう悪魔やらエルフやらを見ていると、真祖と言う事をばらしても問題ないような気がしてきた・・・。
はぁ、まぁ、今の所は穏便に行こう。下手に動いて封印されるよりはいい。
そう思って中を見ていると骸骨の方から声をかけられた。
「客かい?客なら中に入りな。出入り口をふさがれると商売上がったりだ。」
「あぁ、客だ邪魔をする。」
そういって店内に入る。店の中には所狭しといろいろな物が置いてあった。ネギまでおなじみの練習用の杖やローブ。
他にもマジックアイテムなど。ちなみに、アイテムの名前は分かるが何の効果があるかは分からない。
だが、ネギまの新世界のアイテムはチートアイテムが多いから下手をするとそんな類の物があるかもしれない。
そう思い物珍しそうに見ていると。
「嬢ちゃん新入生かい?やけに珍しそうに見ているが?」
「あぁ、こっちの世界には始めて来た。ついでに、最後の入学生だそうだ。」
そういうと、骸骨は何が可笑しいのか『ガハハハハ』と笑い出しその後やけに親切にしてくれた。
何でもこの骸骨、ここで働き出して勤続50年。昔は戦技も教えていたが歳には勝てず今は、この販売所で店主をしているそうだ。
だが、この学校ももう閉校と言う事で完全閉校したら子供の所に転がり込むとの事。
しかもこの販売所、やたら学生に人気が無く、ほとんど人が来る事が無い。
それで久々の客の上に、最後の入学生が来たと言う事で嬉しくなったらしい。
そうやって話が弾んだので、いくつかアイテムを見繕ってもらう事にした。
本当は原作でエヴァが持っている別荘があればいいのだが、それがないので精神修行用に幻想空間幽閉型の巻物や、
魔法の教本、錬金術の教本、後は、従者のための気入門。その他雑多な物を買った。ついでに、魔法の杖に関して良い物が無いかと聞くと。
店主曰く、好きな物を使えばいいとの事。何でも練習用の杖は魔力の通りやすい素材で作られて最初はそれで練習すればいいが、
そのうち魔法が上手くなればみんな好き勝手に魔法を使う媒体を変えるので、どうせなら最初からこれだと思う物を使えばいいとの事。
ついでに言えば、肌身離さず持てる物がいいと言われた。
そこで考えて出したのが、
「なぁ、店主これでも大丈夫か?」
そういって見せたのは、屋敷を出てから手放せないキセル。
これが使えれば、趣味もかねているので無くさずにすむ。
そう思い布懐からキセルを出したら、店主が手にとって見たいと言うのでキセルを渡してやる。
「嬢ちゃん、ただでさえちっこいんだから、こんなモン吸ってたらさらにちっこくなっちまうぜ?」
「うるさい、それでそれは使えるのか?」
げらげら笑いながらも、真剣な目で骸骨はキセルを眺めている。
そうして、しばらく眺めてから。
「嬢ちゃん、こいつは使えるぜ。素材もなかなかにいいみたいだしな。」
そういって、こっちにキセルを投げ渡してきた。
「そうか、ならこれを杖に使うか。」
そういってキセルを懐に直し『また来る』と言い金を渡し店を出る。
出る間際に骸骨からサービスだと言われて吸い込み式の魔法薬をもらった。
「そんな物持ってるんなら吸うだろ?嬢ちゃんぐらい魔力があれば要らないだろうが。
多分俺の見立てじゃあこの学校でも多分3~4番目の魔力量があるしな。」
「それはいいんだが、これ何の薬だ?」
そういうと店主が薬の説明してくれた。
なんでもこれは錬金術で作られていて、魔力増強効果があるとか。
だが、子供はこの味が駄目な奴が多いらしくあまり売れないし、親もあまり進めたがらないとの事。
店を出て、もらった魔法薬をキセルに詰めて火をつけて一吸い。
上がる煙の匂いはシナモンのような甘い香りで、少し癖はあるが味も悪くない。
ふむ、これはいい掘り出し物かもしれない。俺も錬金術を専攻しているから、そのうち作れるようになるだろう。
その後魔法薬を吸いながら校内を見て回る。
と、言っても鍵が掛けてある所もあるので外を見ただけだが、いくつかの施設には看板が掲げてあったので助かった。
その中でも、特に興味を引いたのは図書館だ。俺はオタクと言う事もあり本を読むのは好きだった。
しかも今はそれだけでなく本当の魔道書が眠っている可能性もある。
これは、絶対に読みに行かねば。そう思って図書館を眺めていると、
「あ、あぶねぇーー!そこ退いてくれーー!」
「へ?ちょ、おま!?」
結果だけ言おう。杖にまたがった奴に轢かれた。
いや、杖に乗ってた奴が腕をばたつかせたので、そのばたつく腕が俺の頭にヒット。
そのせいで吹っ飛んだ。
(あぁ、こんな感じの飛び方なら痛みとかも味わうんだろうな。)
そんなことを考えながら地面にダイブ。
身体に危機に本能が働いたのか、魔力が守ってくれたので身体に傷は無し。
ちなみに、起き上がって辺りを見ると俺に特攻してきたヤツも横に仰向けに倒れていた。
コイツはお礼をしてやらんとな、いったいコイツが誰に何をしたのかという事をきっちり教えてやらないとな。
「つぅ~、おい大、ぐぇ・・・・。おい、足を・・・。」
「だまれ、キサマがいったい誰に何をしたか教えてやる。」
そう言って、男の腹を踏む。ちなみに両足で。
今履いている靴はハイヒールだから踵の方に体重を掛けると非常に痛いだろう。
まぁ、体重が軽いから場所によればつぼマッサージとも取れなくないが。今は軟らかい腹の上、しかも鳩尾付近。
相手の歳は俺と変わらないぐらいの男なので結構厳しいだろう。
「俺は退けろって言っ・・・・、すんません、ジャンプしないでください。」
「黙れ。」
腹の上で連続ジャンプ。
あんまりやると吐くかと思ったが、下の男も魔法使い障壁でも展開しているのだろう。
目に見えたダメージは無い。
「お、俺が悪かったから踏むのをやめてくれ。」
「黙れといったが、まぁ、踏むのはやめてやる。」
そういって男の上から降りると『たすかったぁ~』などと言って立ち上がったので、不意打ちに頬ひっぱたいてやった。
まぁ、全力でやると首がねじ切れそうなので手加減はしたが。景気よく吹っ飛んで気絶したようだ。
取りあえず、この気絶した男をどう料理しようかと考えていると。
「お~いエヴァ、どうしたんだ道の真ん中に立って。」
声のした方を見るとディルムッドが、ヨチヨチと歩いている。
どこかに行ったかと思えばこんな所を歩き回っていたのか。
「あぁ、いまそこに転がっている男に轢かれたんでな、その礼をしていた。」
そういって、気絶している男を指差してやる。
ディルムッドはその方を一目見てすぐに興味を無くしたのか俺の方を見て。
「そうか、エヴァに怪我は無いか?」
そういって、身体をぺたぺた触っている。こいつなりに怪我が無いか調べているのだろう。
背伸びしならがら肩の辺りを触ろうとしているが届いていない。はぁ、なんか馬鹿らしくなってきた。
これ以上この男にかまっていても何の利益も無い。
「怪我は無い。チャチャゼロ、散らかった荷物を拾え。部屋に帰るぞ。」
「あぁ、俺の方も話しておきたい事があるしな。」
そういって、二人で散らかった物を拾い集めて寮の部屋へ。
部屋に戻ってくると、扉の所にエルシアからの張り紙があったので剥がして部屋に入り読んでみる。
内容は明日から授業に出る事と、それに必要な物。後、明日の朝迎えに来るなんて事が書いてあった。
まぁ、読んだかぎりでは必要な物は先ほどの買い物で大体そろっている。
そう思い俺はベッドに腰掛け、イスに座っているディルムッドに話しかける。
「なぁ、チャチャゼロ明日から授業に出るがキサマはどうする?」
それを聞いたディルムッドは多少考え込み、
「今後のためを考えれば魔法の知識は欲しい。だが、今は身体を使いこなす事を優先したい。
それに、この体型だとまともに槍が振れないからその鍛錬もしたい。」
確かに、ディルムッドの言っている事は優先事項ではあるな。
それなら鍛錬ついでに一つ課題を出そう。まぁ、出来ればの問題だが。
「私が呼ぶ以外はそれでかまわん。ついでに一つ課題を出そう、この世界には『気』と呼ばれる物がある。
これは簡単な話、体内で生命エネルギーを錬って外側に放出して技を出す物だ。
ちなみに、これは体力勝負な所があるがキサマにはもってこいだろう。
これを習得できたら、次のステップもあるから出来るだけ早く形に出来ることを祈る。」
それを聞いたディルムッドはなにやら深く考え込み口を開いた。
「それは、俺も使えるのか?俺はルーンなんかの知識は一応あるが。
魔法なんかの知識はゼロだ。ついでに言えば今は人でさえないのだが。」
これについては俺も考えていた。しかし、今のコイツには魂が宿っている。ついでに言えばそれの受け皿である身体もある。
ならば、後は練習しだいだろう。これに関しては未知数としかいえないが、一般人でも練習しだいでは使えるのだからコイツも使えるだろう。
「だからこその課題だ。精神を司る魂があり、人形とはいえ生命を司る身体もある。ならば、キサマの練習しだいだろう。」
そういってやると多少は不安が残っているようだが、首を縦に振りうなずいた。
「あぁ、エヴァが望むのなら頑張ろう。それで、エヴァの方はどういう方針で動くんだ?」
「あぁ、今の所は魔法のみで行こうと思う。体術に関しては多少の経験があるがそちらを伸ばすよりも今は、
魔法に関して伸ばしていきたい。ほかの事を伸ばすのは復讐を果たしてからでも遅くは無い。」
少なくとも、今の俺は死なない。
それでも、魔法に関する知識が圧倒的に足りなさ過ぎる。それならば、魔法の方を伸ばした方が得策だろう。
錬金術に関しても今は片手までいいだろうし。今行動方針を誤ると復讐自体が長引く可能性が高い。
「わかった。しかし、いざ使えと言われても全く知識の無い物はなんともな。」
そこで、ディルムッドに昼間買った『従者のための気入門』を投げて渡すと、それを受け取り読み出した。
「なぁ、エヴァ結局これを使えるとどうなるんだ?」
気をつかえると、か。個人的にはディルムッドには咸卦法までマスターしてもらいたい。
まじめな話、今のまま生きていけばコイツの想像しているよりもはるかに過酷な事になる。
それに、依り代であるチャチャゼロ人形が壊れた場合、ディルムッドそのものの死亡という状況になりかねない。
ただの人形ならば壊れても直せば問題ないだろうが、流石に今のコイツが壊れた状態から修復して元どおりになるとは考えられない。
ならば、力がいくらあっても問題ないだろう。それに、俺は俺でエヴァの固有スキルである『闇の魔法』を使いたい、ついでに改良もしたい。
少なくとも、これが物に出来るまでになれば早々簡単にやられることも無いだろう。
「簡単な話、私ぐらいの娘が鋼鉄の塊で出来た馬を殴り飛ばせる。しかも結構な距離で。」
そういってやると、読んでいた本をさらに熱心に読み出した。それを見て、俺の方も買った本を読み出す。
内容としては簡単な基礎と、初期魔法から中級までの魔法の呪文が載っている。魔力を使い魔法を使うと言うのはやはり精神力の問題がある。
後は術法を覚える事。しかし、ただ呪文を唱えればいいというものではなく、イメージの力も必要となる。
最初に俺が『火よ灯れ』で失敗したのは、単に『大きな火が欲しい』と思って出したためにそうなったのだと分かった。
そうやって基礎をを読みながら、よくよく考えると俺はこの学校に途中編入と言う形で入っていると言う事を思い出した。
やばい、下手をすると追いつけない可能性がある。俺は天才ではなく、どちらかと言うと努力型。
つまり、生半可ではなく、ひたすらやらなければいけないという事になる。これはまずい、置いてけぼりなんぞくらってたまるか。
そこで今日買った幻想空間幽閉型の巻物を取り出す。あの骸骨に聞いた話ではこの巻物は精神のみに作用する仕様で、
精神の体感時間を一時間を一日最大展開でも二日と言う物。あまり多用すると精神的疲労がたまるから気をつけろといっていた。
「チャチャゼロちょっと行ってくる。」
巻物を開き、聞いた時間設定のやり方で時間を二日にセットする。
「行くってどこにだ?昼飯でも食べに行くのか?」
「いや、精神修行だ。一時間ぐらいで目覚める。」
そういって、ベッドに寝転び巻物を展開する。そうすると巻物から光があふれ思わず目をつぶる。
そして、次に目を開けた時にはグランドのような場所に居た。
「ここが巻物の中か。現実と代わらんな。」
何せ風の音も日の光も何もかも本物と変わらない。しかし、だからこそ修行がしやすい。下手に道場や何かに出されるよりずっといい。
そんな事を思いながら、自らの首にぶら下がっている指輪をはずす。現実世界では指輪をしたままだが、
外すしたと言う事で魔力の封印がなくなったような気がする。これは一度外の世界でも指輪を外してみないといけない。
まぁ、何を持って吸血鬼とばれるかが微妙だが、少しぐらいなら大丈夫だろう。
ディルムッドに関しても人の時とチャチャゼロ人形の時、どちらがやりやすいか聞かないといけない。
「さてと、取りあえずは基礎の前に私の体の確認か。」
そうして自身の身体の限界を探る。簡単なところでは走る速さや握力等。足の速さは100mを大体6秒ぐらい。
これに関してはまだまだ伸びそうな気がする。ついでに言えばこれで瞬動が使えるようになればさらに速度が上がるだろう。
次に握力。これに関しては凄いの一言、辺りにあったコブシ大の石を握って壊そうと力を込めてらみたら簡単に砕けてしまった。
その後もいろいろやったが自身の能力に関しては大体理解できた。ただ、これが現実世界でも反映されるかと言う疑問も残るが。
シーニアスの腕を奪った時の事を考えると多分大丈夫だろう。次が吸血鬼としての能力。これは取りあえずコウモリ変化から試してみる。
といってもやり方が分からないのでコウモリをイメージしながら、更に身体を分解するようにイメージする。
最初はぜんぜん出来なかったが何度も強くイメージしていくと指先から少しずつコウモリが出るようになってきた。
そして、日が傾き一日目の終わりごろには体を完全にできるようになっていた。ただ、問題なのはこのコウモリたちの操作の仕方。
今の段階では集団で飛ぶしかできない。練習しだいではコウモリを操って数匹なら広範囲にもばら撒けそうだ。
それにコウモリになっていると、吸血鬼としての第六感などが鍛えられているような気がする。このスキルは更に伸ばそう。
そう思いコウモリの操作と持続時間を延ばす。
そのまま休憩せずに、二日目に突入。
今日は主に魔法を重点においてやる、といっても今は師も無く殆ど本を読んだ我流のやり方になるが仕方ないだろう。
先ず最初は魔力を感じる事から始めようと目をつぶり瞑想する。ついでにコウモリで鍛えた第六感も動員。
そして、魔力と言う物をイメージする。イメージの仕方は、身体に纏わり付いている様な感覚をイメージする。
このイメージについては、実際に指輪を首から下げる前に見た事を元にイメージする。魔法を使う基礎の基礎としてこれは入念にやりこむ。
半日程度だろうか、こればかりやっていたので荒さは残るが感じられるようになった。そして、そのままもう半日。
そして外に出る。目を覚ますと自分の部屋、ディルムッドは相変わらずイスの上で渡した本を読んでいるそして、
目覚めた私に気が付いたら、なにやら興奮して話しかけてきた。
「おはようエヴァ、気というものは凄いな!
今もらった書物を読んでみたが、こんな事が出来るようになればさぞ戦いで役に立つだろう。」
「そう思うなら精進しろ。私の期待にこたえてくれるんだろ?」
そうニヤリと笑いながら返してやるとディルムッドの方もニヤリとぎこちなく笑い返してくる。
どうも、コイツはチャチャゼロ人形を本当の身体だと認識して行けば表情なんかも作れるようになるようだ。
そんな事を考えているとディルムッドが声を掛けてくる。
「エヴァ、精神修行といって巻物を開いて寝ていたが、何か理由があるのか?出来れば俺も精神修行はしたいのだが。」
そういわれて巻物を見る。まぁ、二人で入っても問題ないだろう。
「そうか、ならこっちにこい。」
そういってやるとイスから降りてベッドの上に載ってきたその後巻物のことを説明してやると、
『こんな便利な物があるとわ』としきりに感心していた。そして、また巻物の中に入る。
「エヴァ、ここは本当に精神世界なのか?本物と変わらないじゃないか。」
「あぁ、だからこそ修行が出来る。こっちなら人でも人形でもどちらでも練習していいぞ。
ついでに、感覚だけでもいいから人と人形の時の違いを探しておけ。」
「あぁ、わかってる。」
そういって首から指輪を外すと人の姿になり走り出した。
どうも、外の世界での束縛は一様精神世界でも反映されるらしい。
「さて、今日もコウモリと魔法か。」
そうして、コウモリの姿になるちなみに、コウモリの数は任意で変えれるが余り多いと制御が難しい。今の時点では大体100匹ぐらいが限界。
しかし、修行と言う事で時間ごとに50匹ぐらい増やしていく。別に一気にと言うわけではなく徐々にだが。
後、ここが精神世界のせいか疲れが無い。だからこそ荒業とも言えるぶっ続け修行が出来るのだが。
そうやって数を増やしながらなおかつコウモリの状態で動けるように、
さらには人に戻る時のタイムラグやコウモリと俺との割合などを調べていると、一日の終わりがもうやってきた。
今日の最終的な数としては案定数が300匹。不安定でもよければ倍の600匹となった。後、タイムラグだが殆ど無いに等しい。
まぁ、考えてみればコウモリも俺なら、俺も俺なのである。
当然と言えば当然だ。
そのまま休み無く二日目。
ディルムッドは昨日コウモリ姿で飛行している時に見かけたが人の姿で槍を振るったり、瞑想したりといろいろやっていた。
そして今、俺の前に出てきたディルムッドは人形の姿。多分身体の確認だろう、そう思って魔法の練習に入ろうとすると話しかけてきた。
「おはようエヴァ昨日は途中から姿が見えなかったが、これは勝手に外に出れるのか?」
「いや、昨日は殆ど人の姿ではなかったから分からなかったのだろう。」
そういうと首をかしげている。ややあって
「あぁ、吸血鬼なら狼とか霧とかコウモリに化けれるんだっけ?」
そういってきたので、目も前でコウモリに化けてやると素直の驚き、その後お互いの修行に入る。
「エメト・メト・メメント・モリ 火よ灯れ」
そういってキセルの上に火を浮かべる。しかし、なかなかうまくいかない。
まず、思い浮かべたのはライターの火ぐらいだったのだが、今出ているのはバーナーの炎ぐらいの大きさがある。
それに、安定性も無く絶えず大きくなったり小さくなったりしている。
「これは、コウモリなんかよりも難しいかもな。」
そんな独り言をいいながら火の安定を目指す。
ついでに操作も出来るかと思って試してみたが、なかなか思うようにはいかない。
それでもめげずに一日を投入。最終的な個人評価としてはダメダメの一言だった。
理由としては自身の魔力量の大きさがネックになっている。
つまりは原作ネギと同じような状態と言う事だ。これは相当な荒行が必要だろう。そう思い修行方法を変える。
先ず、一つは自身の魔力の限界を知るために魔法の射手の限界数までの射撃。
その際ただ撃つのではなく、一度矢を待機させてから順番に撃つようにする。
次に操作訓練として、石を一つ投げ上げてその石を砕かず落とさず、なおかつ全ての矢を操作すると言う物。
これの元ネタはリリなのだったりする。そうやって二日目も終わり外にでる。
外に出て早々一緒に修行していたチャチャゼロ姿のディルムッドが話しかけてきた。
「エヴァ今の修行で分かったんだが、動きや性能の面で見ると今の姿がいいんだが、扱い方なんかで見ると人の姿がいい。
たぶん修行すればそれも無くなるとは思うんだが、今の所は人の方が戦いやすいと頭に入れておいてくれ。」
そういうと、もう一度使っていいかと聞かれて許可を出すとディルムッドは巻物の中に入ったようだ。
今の話しを聴くかぎりじゃ、一長一短なのだろう。スペックだけ比べるならチャチャゼロ人形がいいんだろうが、
戦闘経験の反映を考えるとスペックの悪いディルムッド本人の姿がいいと。まぁ、あの姿ではまともに槍を振るおうとすれば無理が出る。
それに話を聞いたかぎりでは、修行でそのことは無くなる。それならば、俺の出来る事は先ず飛行術式をチャチャゼロ人形に施す事だろう。
これが出来れば少なくとも身長と言う面では改善される。
そう考えながら、鞄の中からワインとチーズ、干し肉にパンと取り出し遅めの昼食を楽しみながら買ってきた魔法の本を読む。
そうしていると、ディルムッドの精神が帰ってきたので入れ替わりに入って修行開始。
そうやって風呂に入り寝るまでの時を過ごした。
ー次の日ー
相変わらず薄暗い部屋で起きる。ついでにディルムッドも一緒に起きてきた。
今日は学校初日と言う事で気合を入れようと朝からシャワーを浴び昨日買った丈の短いローブを着込み、
魔力封印の指輪を首から下げ、昨日と同じように首の後ろでリングを使い髪を束ねた後に大き目のリボンで全体を覆う。
その後、朝食にパンと火を使える所があったので、そこで昨日買った食材を炒めて出来上がり。
前の俺なら朝食をブラックコーヒーとトーストで済ませても良かったのだが、
どうせ時間もあるしディルムッドも食うだろうから問題ないだろう。
出来た物を机の方に運ばせて最後にコーヒーを入れて出来上がり。
そして食事を開始する。
「チャチャゼロ、言い忘れたが今日は一緒に授業に出ろ。」
そういってやると、炒め物をぱくついていたディルムッドが食べていた物を飲み込み口を開く。
「ん?何かあるのか?」
「あぁ、クラスメイトとの顔合わせだ。不測の事態のためにも顔ぐらいは知っておいた方がいいだろう。」
そういって食事を再開。その後昨日の魔法薬をキセルに仕込み一服。
本当ならここで新聞が欲しいが無いので昨日買った本を読む。
そうしているとノックの音と声がした。
「エヴァちゃん起きてる~?起きてないなら添い寝だよ~。」
朝からこいつは何を言ってるんだか、これだけでも精神修行になりそうな気がする。
「またおかしなのが来たな。」
「言うなチャチャゼロ。それとエル起きてる、開いてる、入っていいぞ。」
そう言ってやるとエルシアが入ってきた。
今日は珍しく落ち着いているように見える、言動以外はだが。
「準備できてる?出来てるならもう出発って何吸ってるの未成年?」
そういって指差してきたのはキセル。
やれやれ、朝の一服もゆっくりできんとわ。
「エル、これは魔力増強薬だ。さもなくば病気のための薬だ問題ない。」
「いや、流石に魔力増強薬でも問題だから!一応未成年禁止!」
はぁ、仕方ない。そう思いキセルの中の火のついた薬を水を入れた木のコップに落とし火を消す。
その後エルシアがキセルを取ろうとしたが。杖の代わりということで勘弁願った。それから、エルシアとともにチャチャゼロをつれて部屋を出る。
そして、今日から勉強する教室の前につれてこられた。ついでに新事実だがエルシアは教師だった。
もしかすれば、受付はローテーションでやってるんじゃないだろうか?そんな事を考えているとエルシアが
「私が先に入って呼ぶからそしたら入ってきてね。」
そう言ってエルシアは扉を開けて中に入っていった。
そして程なくして中から声がしたのでディルムッドと中に入る。
中に俺が入ると男どもがえらくうるさい。まぁ、エヴァの容姿なら仕方ないかなどと考えて教壇へ。
「は~いみんな、今日から新しくこの子が勉強するようになりました。じゃあ自己紹介をお願いね。」
そう言われて教室を見回す。良かった、生徒は一応はみんな人間のようだ。
そう思った後に自己紹介しようと口を開きかけたら。
「あっ、てめぇ昨日はよ・・・・。」
「黙れアノマ。」
自己紹介しようと思ったら、いきなり一番後ろの席の男子生徒が俺を指差して立ち上がり叫びだしたと思ったら、
エルシアが全て言い終わる前にその男にチョークの様な物を投げつけて黙らせた。
気のせいが血が出ているように見えるが気のせいだろう。
ちなみにディルムッドは今のエルシアの動きに対して『出来る』などと言っていた。
「ゴホン、気を取り直して自己紹介をどうぞ。」
そう言われて、黒板に自らの名前を書き皆の方を向く。
「私の名前はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、そしてこっちは騎士のチャチャゼロ以後よろしく。」
そういって、 ディルムッドの方にも自己紹介するように促してやる。
「エヴァから紹介のあったように俺の名前はチャチャゼロ。エヴァともどもよろしく頼む。」
そう自己紹介するとクラスから歓声が上がった。あまり目立つのは好きではないのだがな。
そう考えているとエルシアが俺の席を教えてくれた。
「エヴァ、貴女の席はさっき立って叫んだ馬鹿の横だから。」
なるほど、分かりやすい。
しかし、こういう時は大体ゲームだとフラグなんだよな。まぁ、俺に恋愛要素は無いから大丈夫か。
そんな事を考えながら席に着く。ちなみに、隣の男はまだ倒れたままだ。ディルムッドに関しては席の後ろに棚があったので、
そこにでも座っているように言ったら、棚に座り昨日渡した本を取り出して読み出した。
その後、クラスメイトから質問攻めにあい疲れたが、今の所は概ね順調。隣の男はまだ倒れたままだが大丈夫だろう。
そう思いながら授業を受けだして二時間目の授業が終わり考える。授業自体は今の所着いていける、問題は実習だろう。
そんな事を考えていると隣のヤツが起きた。ダメージが残っているのか目を抑え頭を振っている。
「つぅ~、いってぇ~、あの教師オレを殺す気だろ。しかも、昨日は変な女に気絶するぐらい殴られるし踏まれるし・・・・。
まぁ、パンツ見たからいいか。」
なるほど、隣の男は昨日の轢き逃げげ男か。
しかも、謝るから気絶で済ませてやれば俺の下着を見てご満悦と。
よし、とりあえず殴ろう。そう思っているとディルムッドが俺の横に来た。
なるほど、俺の怒りを感じ取ったかいい騎士だ。
「謝るから許してやればオマエはどうも死にたいらしいな。」
そう言いながら睨むと男と目が合った。その瞬間男がジャンピング土下座。
どうでもいいけど、こっちの世界にも土下座ってあるのな。
そんな事を考えながら立って、男を見下ろしていると、
「すみません、許してください、もう気絶するのは嫌なんです。」
と、そんな事をいっている。朝のエルシアを見るかぎりでは、このクラスの男子は結構な頻度で気絶しているのだろう。
まぁ同情はしないがな。と、そういえばこいつの名前だけ知らないな。後のヤツはすでに自己紹介してもらったのだが。
「おいオマエ名前は?」
「はっ、オレの名前はアノマ・スプリングフィールドです。」
なん・・・だと・・・・、今こいつはなんと言った。いや、待て、待て俺。もしかしたら他人の空似かもしれない。
いや、そうだろうん、きっとそうだ。まさか、あのスプリングフィールドじゃ無いだろう。
そう思って考えているとチャイムが鳴ったそして、アノマは顔をあげオレのローブの中に頭が入った。
「えっ、ここはどこだ。」
目の前の馬鹿はオレのローブの中でもごもご話している。カボパンに息がかかる。
あぁ、このエロ体質はネギのご先祖様だきっと間違いない。
そう思いながら膝蹴りでアノマを追い出すと、ディルムッドが追撃しアノマをボコボコにしている。
「キサマはよくも、エヴァを辱めるような真似を。」
「た、たすけてぇ~。」
はぁ、先ずは顔でも見るかそうすれば、ご先祖様なら多少は面影があるかもしれない。
「チャチャゼロ、取りあえずはもういい。」
アノマはディルムッドにボコボコにされて教室の真ん中の方にいっている。とりあえずは顔だな。
そう思ってアノマの顔を両手で掴み顔を見る。
周りがなにやら騒がしいが今はそれど頃ではない。
アノマは顔が赤いがディルムッドに殴られまくったせいだろう。
(ん~、似ているような違うような・・・・、一応赤髪って言うのは同じなんだが。)
そう思って見つめていると、ディルムッドが話しかけて来た。
「エヴァいくらなんでも、もう離してやれ。流石に吸うわけにもいくまい?」
「あぁ、吸う気は無い。ただちょっとな。」
そういってアノマを離してディルムッドを連れて自らの席に戻る。
はぁ、どうした物かね~。辺りはやたら騒がしいが、俺はその事も気に留めず考え込んだ。