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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 彼に会いに行こうかな第70話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:661f7f1e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/01 03:42
彼に会いに行こうかな第70話



流れる時はあまりにも緩やかで、その移り変わりを一体どれだけの人が的確に認識できているのだろうか?
その宿兼酒場は町の外れにあり、荒くれ共が多いせいか、あちこちに魔法銃の後があり、
更に、そこの店主が豪快なせいで、店の風通しがコレでもかと言うほど・・・、
端的に言えば、扉が壊れ窓が外れ、『ララス』と書かれた看板が傾くほどによくなっている。

「こんっのどら息子!!!
 店の酒をアタイの前で無断でラッパ飲みとは、いい度胸じゃないかい!!!!
 今日はとことん叩きのめしてやるよ!!!!」

そう怒声が聞こえてくるとともに、店から飛び出してきたのは筋骨隆々の青年と、
それを追うように釘バットを振りかざした女。

「ちょっ、母さん待ってくれ!
 あの酒の代金は親父に渡してる!!!
 それに、カバネの分もだ!」

そう言って、マテと言うように手を出して言い訳する青年を前に、
バットを振りかざした女はバットを振り上げたまま、

「アンタ、詳細!」

「事実ですよ、ドクロこの前言ったでしょう?」

そう言いながら、店の奥から出てくる男の足取りはしっかりしているが、
片方の足からは、カツカツと人のモノではない甲高い音がする。
そして、その男の横にいる少女、多分青年が言ってたであろうカバネは、

「母さん、店を壊さないで。
 それと、若くないんだから体に障るよ。」

「あん?アタイはまだ現役だよ!!」

そう、静かに声をかける。
ふふ、まるで変わってなくて笑いがでる。

「ここまで変わってないと、いっその事清々しいな。
 そう思わないか、エヴァ。」

そう、チャチャゼロが俺に声をかけ、その横にいるロベルタは興味深そうに彼らを見ながら、

「最後に見たときはハネムーンでしたのに、今は子持ちとは・・・。
 それだけでも変わったとは思いませんか?」

そう声をかけてくる。
そんな2人の言葉を耳にとどめながら、しかし、
久々に再開する彼女に取る態度は、やはり悪態しかないだろう。

「黙れドクロ!
 年相応に大人しくなっているかと思えば、お前はまだ暴れているのか!!!」

「誰が、と・し・ま・だってぇぇぇぇぇ!!!!!?」


そう言って、アタイが顔を上げると非常に珍しい人がいた。
白い尻尾にとんがり耳が頭の上に2つ、口には銀のパイプを咥え煙をたゆたわせてる。

「何をそんなに驚いている。
 客が来るのが珍しいほど、この店は廃れているのか?」

そう、首をすくめながら悪態をついてみせる。
ククッ、なんだいなんだい、懐かしい顔に声がするじゃないかい。

「人の店になんて言い草だい、えぇ女狐?」

そう返すと、女狐はふーっと煙を吐き出しながら、

「60年以上して、こんなんじゃそういわれても仕方なかろう、
 それとも、耄碌してボケたか、なぁチャチャゼロ?」

そう聞かれたカラクリのやつは、女狐見たいに首をすくめながら、

「『地の果ての方がマシな酒場』って、ドクロの売込みだからな、俺としてはなんとも
 それに、ドクロは何時もこんな感じだろ?」

そんな事をカラクリの奴もいってやがる。
いや、何と言うかあの日々が今でも鮮明に蘇るねぇ。
目の前の女狐が、酒場のゴロツキ共に銃をぶっ放しながら酒を喰らってた日や、
飲み比べで、最終的には2人してぶっ倒れた日、遺跡探索でカラクリの前で2人して半裸で走り回った日。
そして、アタイとキールが誓った日。
いゃあ、懐かしいねぇ。


「よぉ~~~し、言いたいことはそれだけか?」


そう言って、ドクロがエヴァンジェリン嬢にズンズンと近づいていきますが、ドクロも変わらなければ彼らも変わりませんね。
まるで始めてこの酒場に来た時のような、軽快な悪態のやり取り。

「お、親父大丈夫なのかよあの人たち?
 母さんにあんな悪態ついたら、それこそ首がとんじまうよ。
 優男とか弱そうな美人2人じゃやばいって!!」

そう、息子のギンジョウが声をかけてきます。
・・・、この子も探索者を目指すなら、相手の力量を見てわかる程度にはなって貰いたいものです。
そんな事をつらつらと考えていると、私の横にいるカバネがポツリと、

「写真の人たち?」

そう声を漏らします。
どうやら、洞察力うんぬんはカバネが全て持って行ったようですね。
まぁ、ギンジョウが気を使い、カバネが魔法を使うのですから、どちらの性質が色濃いかは明確ですが。
そんな事をつらつらと考えていると、私の方に逃げるように寄ってきたギンジョウが、

「カバネ、写真って何の写真だよ?
 あんな上品な美人さんの写真、こんな乱暴夫婦の住むウチには無いだろ?」

そう、小声でギンジョウ言うのを聞きながら、
カバネは頭に手を当てて首を振りながら、

「兄さん、軽いのは言動だけにして、頭は重いままでいて。
 じゃないと、本当にただのバカになるから。」

そういわれたギンジョウは、私を縋る様に見てきますが、
コレばかりは、私もカバネの意見に賛成ですね。

「ギンジョウ、あの人達の写真はあります。
 私と、ドクロの結婚写真に黒衣を着て、写っているじゃないですか。」

「そっか、結婚式の写真に写ってんだ。
 へ~・・・、って、あの人たち幾つなんだよ親父!?
 なんぼなんでも、変わらなさすぎだろ。てか、若くなってね!?」

そうギンジョウが、目が飛び出しそうなぐらい目を見開いてエヴァンジェリン嬢を眺めています。
まぁ、息子の気持ちも解らないではないですが、それでも女性には失礼と言うものでしょう。
その証拠に、

「兄さん、種族の問題があるのよ?
 あの人たちが、たまたま長命な種族なんでしょ。」

「長命・・・ねぇって、あ!」

そう、ギンジョウが声をあげる先では、大きく拳を振りかぶったドクロとエヴァンジェリン嬢の姿。
殴り合いでも始めると思ったのでしょう、ギンジョウは駆け出そうとしていますが、
そんなのはお構い無しといった感じで2人は拳を突き出し、コンと拳と拳をあわせた後、
お互いニィっと笑い合い、

「懐かしいねぇ、女狐元気だったかい?
 とまぁ、定型文的に聞いては見たけど、あんたは『元気』しかないんだったねぇ。」

そう突き出した拳を合わせたままドクロが口を開き、それに答えるようにエヴァンジェリン嬢が、

「なぁに、その元気であることに越した事は無い。
 オマエこそ、永遠の誓いは護っている様だな。」

そう、柔らかく嬉しそうに返してきます。
そして、お互い合わせた拳を放しながら、エヴァンジェリン嬢は私の方を見て、
足の方を指差しながら、

「調子はどうだ?」

そう聞いてきます。
最後の冒険で失われた足は、しかし、始まりの旅の切符でもありましたね。
多分、この足の事がなければ、私とドクロの関係も少し違ったものになったのかもしれませんね。
・・・、ふふ、そう思うとこの足は、失われるべくして失われたのかもしれません。
好きな人を護り、懐かしき友人と思い出を共有できる象徴として。

「おかげさまで、調子は条々ですよ。
 ただ、たまにドクロが改造しようとするのがあれですがね。」

そう首をすくめて返します。
そうすると、エヴァンジェリン嬢はドクロをジト目で見るエヴァンジェリン嬢と、冷や汗を流すドクロ。
さて、何か地雷を踏んだようですが、被害はドクロが被るようですし、私はチャチャゼロさんと積もる話しでも話しましょうか。


「弟子・・・、と言っても教えた事は少ない。
 だが、教えを請うたのはオマエだよな、ドクロ?
 あの足がおかしな事になっていないか、後でテストしてやろう。」

女狐が、いつの間にかお師匠様モードに入ってる。
うぅ、あの地獄と言っても生易しいスパルタ教育は・・・、今日は勘弁願いたいねぇ。
そんな事を思っている間に、キールの奴はチャチャゼロとメイド、ロベルタって言ったかい、そいつを連れて中にはいっちまうし。
だがまぁ、アタイたちもここにいても仕方ないねぇ。

「あのバカ旦那・・・、いらん事を・・・・。
 はぁ、まぁ、そのなんだい。
 取り敢えず旅で疲れてるだろ、1杯どうだい?」

そう言って親指で店を指すと、女狐はククッっと低く喉を鳴らして笑いながら、

「あぁ、そうだな1杯やろう。
 それとな・・・、テストは冗談だ。
 キールの足の面倒を見るのはオマエなんだ、好きにしろ。」

そう言って、店の中に入っていきやがる。
・・・、なんだか、コイツ柔らかくなったかね?
まぁ、コイツがそう言うならアタイは憂うこともないねぇ。
一応、アタイがヘカテスでは最後の錬金術師なんだしさぁ。

「あぁ、好きな奴を好きにするさ。
 いくよ、ギンジョウ、カバネ今日はあんたら給仕しな。」

そう、アタイがいうと息子のギンジョウはどっから出したのか、手に花を一輪もって、

「お嬢さんこちらへ。
 あんな野蛮な母親ですが、仲良くしてやってください。
 あ、コレはお嬢さんへの贈り物です。」

そう、キリッとした顔で言っているが、なんだか滑稽だねぇ。
そんな息子を見ていると、カバネがすっと寄ってきて、

「母さん、あの人が母さんに錬金術を教えた魔法使い?」

そう、興味深そうに見てる。
この子は、アタイに似ず頭もいいし魔法も使える。
何だかんだで、女狐に教えてもらえれば伸びるかもしれないねぇ。
まぁ、何をするにしても、この子の心次第だろうけどさ。

「あぁ、そうさ。
 見てくれはいいし、頭もいい。
 度胸もある・・・、まぁ、性格は別として、そんなに悪い奴じゃないよ。」

そう言って、アタイは女狐と子供達を連れて店に入る。
変わってないって、女狐は言ったけど確かにそうかもしんないね。
店の中はあの時から変わらず、何処となく誇りっぽくて暗いし、ゴロツキが溜まるにはもってこいって感じで廃れてる。
でも、アタイはこの空気が好きだし、こんな店じゃないとは入れないような奴もいる。
そんな事を考えながら、カウンターに女狐と座ってつまみと酒を頼む。

「ぴぴるぴるぴーにチーズ、ジャーキーに後はサラミなんかも貰おうかねぇ。
 アンタはどうする?」

「そうだな、ぴぴるぴるぴーに後は・・・、適当に塩気のあるモノをくれ。」

そう注文してから、料理と酒は程なくして出てくる。
まぁ、カウンターに座ってるんだし当然だねぇ、なぜかロベルタまで給仕してるのかはなぞだけどねぇ。
てか、コイツが新しい誰かを仲間に入れるなんて、相当なことがあったんじゃないかい?

「先ずは乾杯と行こうか、ドクロ。」

「あぁ、そうだねぇ。」

そう言って、互いのグラスを合わせれば、
カーンと澄んだ音が上がり、そのままお互い1杯目を飲み干す。
今日のバーテンはギンジョウのせいか、キールが入れるほど美味くは無いが、
それでも、いずれはこの味がこの店の味になるんだろうねぇ。

「しっかし、アンタの噂を中々聞かないから、くたばっちまったと思ってたよ。」

「なに、色々と私も忙しくてね。
 最近では、奴隷解放戦線なんて呼ばれた戦いで暴れていたが、それ以外を含めると大小様々すぎてなんとも。」

そう言いながら、アタイの横で女狐が出た料理を口に運んでるけど、
はぁ、その戦いは確か、今じゃ教科書に載るほどには有名な戦いじゃないか。

「取り敢えず、事件と題されるもんにはアンタがかかわってると思っとくよ。
 そういえば、この前ウチで食い逃げした奴がいるんだけど、あんたが糸引いてたんじゃないか?」

そう言って、アタイが酒を飲んでいると、女狐は料理をぱくつきながら、

「なに、少なくとも身内にはそんな事はせんよ。
 もしするなら、手紙を書いて承諾を取って、堂々と食い逃げするさ。」

そう、堂々と外道な言葉を吐いてくる。
いや、ここまで来ると清々しいねぇ。

「まぁ、アンタなら飯ぐらいはただで食わせてやるよ。」

そう、アタイが言うと女狐は気持ち悪そうに、

「それなら、黙って金を置いていくな、気持ち悪くて仕方が無い。」

「誰が気持ち悪いって、女狐ぇ!」

そう声を出すと、女狐は喉を低く鳴らしながら、

「なに、私は人に借りを作るのが苦手でね、それが気持ち悪いんだよ。」

そう言って、首をすくめて見せる。

「はぁあ、そう言われるとアタイは何て返せばいいんだい、えぇ?
 まぁ、今日は好きなだけ飲んどきな、ギンジョウ酒~、ボトル10本ぐらい持って来な!」

そう言って、お互い酒を酌み交わす。
しかし、女狐・・・、エヴァンジェリンは不思議な奴だねぇ。
いたのはほんの半年そこそこ、なのに会えばこうして酒を酌み交わして、語り合う。
でも、そういやぁアタイはコイツの事ほとんど知らないんだよねぇ。

「なぁ、女狐ぇ~、そういやぁアンタはなんでまた急にここにきたいんだ?
 アタイが言うのもなんだけど、アンタが用事のありそうな事はここには無いだろ?」

そう聞くと、女狐はクィッと酒の入ったグラスを口に傾け、
中の琥珀色の液体を胃に流し込み、からになったグラスを弄びながら、

「そうだな・・・、確かにドクロ、オマエの言うとおりだよ。
 私がここにいる事は、そのままお前たちへのリスクへと繋がる。
 本来なら、私はここに2度とは来る事はないと思っていたよ。」

そう、語る女狐にワインボトルを差し出し、空のグラスに酌をしてやる。
来る事はなかった・・・か、確かに、こいつの正体は本物の真祖様。
首にかかった賞金は10万ドラクマを悠に超え、指名手配書にも、『DEAD or DEAD』
つまりは、死体をもってこいと書いてある始末。

「なに寂しい事言ってんだい、別に人1人酒を飲む自由ぐらいはあっていいと思うけどねぇ。
 で、そんな風に考えるアンタは、なんでまたここに?」

そう聞くと、酒が回ったのか少し頬を赤らめて妙に艶っぽいコイツは、何処か歯切れが悪く。

「古い・・・、約束があるんだ。」

そう、酒の入ったグラスを見つめながらポツリと呟いた。

「どんなだい?」

「・・・、私がここに来る少し前の話し。
 アリアドネーで学生をしていて、その生活が終わる時にした約束。」

そう言って、エヴァンジェリンは酒を飲み干し、アタイは話を促すように空のグラスに酒を注ぐ。
さて、約束ね・・・、契約って言わない辺り何かあるのかねぇ。
そう思いながら、アタイのグラスにも酒を注ぐ。
変にしおらしく、妙に艶っぽい。
コレはもしかすると、

「約束の相手は男か?」

そう言うと、エヴァンジェリンは一時の沈黙の後、

「そうだな・・・、バカな男だよ。
 底抜けにバカで、アホなほど真っ直ぐなね。」

そう、酷く優しい声色で話す。

「そいつとは、学生の頃約3年半ほど一緒にいた。
 まぁ、いたと言ってもクラスメイトしてだがな・・・。」

そう、語りだしたエヴァンジェリンの口は、何時もの悪態をつく口とは違い、穏やかで軽やかにその男の事を語る。
話しの内容は、学生の頃の思い出から始まり、その男の出会いとなり、そして別れとなる。

「最後にその雪原で約束したんだ、死ぬ間際に会いに行くとね。」

そう言って、エヴァンジェリンは話を締めくくる。
聞き役に徹していたアタイが言うのもなんだけど、こいつがその男の事を語るときの顔は、
酷く優しく、時に苦々しく、そして、ほんの少し誇らしそうだった。

「バカな奴だろ、真祖と解った私に、それでもなお愛を囁くなど。」

そう、カウンターに頬を預け、転がったワインの栓であるコルクを指で弄ぶエヴァンジェリンを見ながら口を開く。

「さぁてね、アタイはそいつに会った事ないから、知ってアンタがバカだって言うならバカなんだろうし、
 アホだというなら、やっぱりアホなんだろうね。」

「あぁ、そうさ、バカでアホな男だよ。」

(はぁあ、そんな優しそうな目で言っても、悪意なんか感じないってぇの。)

「で、あんたはそいつに合いに行くと。」

「あぁ。」

「なぁ・・・、エヴァンジェリン1つ聞いていいかい?」

「何だ?」

「・・・、エヴァンジェリン、アンタ本当に仲良くなるなら、男の子と女の子どっちだい?」

そう、アタイが聞くと、エヴァンジェリンの奴はコルクを弄びながら、何処か眠そうで、
でも、その答えは初めから決まりきっていたかのように、だが一抹の恥ずかしさがあるのか、
酒で朱に染まった頬を、更に若干赤めながら、女のアタイが聞いても思わず襲っちまいそうな声で、

「男の子・・・、かなぁ。」

そう一言呟く。
あ~ぁ、何となくだけど、コイツが男達から好かれる訳が解っちまったようなきがするねぇ。
そりゃあ、最初は見てくれで惚れるかもしれない、でも、中身が悪けりゃ男は離れる。
見てくれが悪けりゃはなっから男も寄って来ない、じゃあ、なんでコイツは変に男から好かれるのか?
答えなんてぇのは簡単だね、コイツは男の嫌いな女の部分がほとんどなくて、コイツはコイツで、
本当に仲良くなれるのが男だといってる。

どこまで行っても、この世界には男と女しかいないんだ、なら、ある意味コイツは男の理想とする女なのかもねぇ。
女々しくなくて、変に意地っ張りで、何か面白い事があれば一緒にゲラゲラ笑って、腹立つ事があれば怒って、
それでいて、変に義理堅くて・・・、誰にも自分の責任を押し付けないで、何よりも裏切らない。

「はぁ~あ、可愛くなっちゃって。」

「なんか言ったか?」

「いや、そろそろお互い飲みすぎたと思ってね、あんたは何時まで居るきだい?」
そう聞くと、女狐はむくりと体を起こして、

「明日の夜には居なくなる。
 こんばんは、1泊させて貰うさ。」

そう、毒の無い顔で口を開く。

「そうかい、好きにしなよ。
 まぁ、あんたがアタイ等を身内って言うなら、
 アタイ等からしてもアンタは・・・、身内なんだからさ。」

そう言って、笑いながら頷いたエヴァンジェリン達は、しかし1泊の後その姿をけしていた。

「どうしたのですか、ドクロ空なんか見上げて?」

そう、アタイの横に居るキールが口を開く。

「なぁに、決めた事にはとことん真っ直ぐな、
 今何処に居るかも分からないアタイ等の友人が、この空の下のどこかにいると思ってね。」


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