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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 対峙だな第67話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:4528c8fd 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/02 03:37
対峙だな第67話







吸った男の血は大して美味くも無く、まるでインスタント珈琲を缶コーヒーで薄めたようなものだった。
だが、それは文字通り目を醒ますという意味では、正当に役割をはたしてくれる。
そして、殲滅の言葉を受け取った娘達は、そのオーダーを行うべく手に武器を取り、
辺りの男達に斬りかかり、辺りはむせ返るほどの血の匂いと、
悲鳴と罵声、一握りの祈りの言葉で埋め尽くされる。
そんな戦場の空気を胸いっぱいに吸い込みながら、俺は1人歩き目の前にある砦の中に向かう。

「死ねぇぇぇぇ!!!」

そう、仲間の血を浴びた男が、自身を奮い立たせ俺の元に剣を構えて突撃してくる。
しかし、そんなものは敵ですらない。俺の胸を突くと繰り出す剣を受け流し、
そのまま抱擁するようにその男の首に甘く、まるで恋人同士がそうするかのように腕を回し、
首筋に牙を付き立てて血を啜り、カラッポになった吸殻を投げ棄てる。

投げ棄てた死体はそのまま宙を舞い、誰からも受け止められる事は無く、
そのまま地面に着地した死体からは、『どさっ』でもなく、
鎧の『カーン』と言う軽快な鉄の音でもなく、『グジュ』と言う湿った音。
当然だろう、血は既に地を飲み下し、その唇を湿らせているのだから。

そう思いながら砦の中に入り、外とは打って変わりやけに静かな石畳の道を歩く。
人の気配は無い・・・、多分全ての兵が外に出て、ここを護ろうと外で戦い朽ち果てているのだろう。
そんな静か過ぎて耳が痛くなりそうな道で、現れるのは幾人かの幽霊。
彼らはいくつかの部屋から顔を出し、そしてまた部屋の中に顔を引っ込める。

通り過ぎ様にとある部屋を見れば、ある者は鋲つきのイスに座り、ある者は逆さに吊るされ、
またある者は縛りつけられたかのような格好を取り、苦悶の表情を浮かべていて、
かつてそこで行われていた拷問劇が繰り広げられている。
ここが本来何の為の建物で、何を目指していたのか俺は知らないが、
ただ言えるのは、ろくでもないものが、ろくでもないことを夢想し、ろくでもないことをやっていたのだろう。
そんな事を考えながら、回廊を歩き2階に上がり奥を目指す。


ーsideディルムッドー


俺が部屋に入った時には既に、白い鎧の男は右わき腹から血を流しながら俺に背を向けて佇んでいた。
その傷を誰から受けたのか、俺の来るまでに此処で何があったのか、考えられる事は数多くあるが、
しかし、そのどれを考えた所で俺がこの戦いを止める理由にはならない。
そう思い、自らの槍を再度握りなおし、白い鎧の男に声をかける。

「裏切られたか?」

そう言うと、男は足元に落ちていた兜を拾い上げて此方を振り向く。
その顔は血の気が引いて青ざめ、唇は土気色になり、兜を拾い上げる間も深く刺さっていたナイフからは血が滴っている。
しかし、男の表情は一転の曇りも無く、

「さてな。
 遠い昔に裏切るって宣言していた相手に刺された俺は本当に裏切られたのか?
 それとも、弟が誠実だからこそ、俺を拒みこのタイミングで俺を裏切ってきたのか?
 まぁ、どうでもいいさ、そんな小さな事。」

そう言って、男は言い笑顔を浮かべて俺の顔を見ながら主もろに兜をかぶり、

「ようはあれだ、裏切るって言ってた弟が俺を裏切った。
 それに、本当はソイツ、俺の弟でも親類でも何でもないヤツで・・・、
 でも、それでもアイツは俺の弟だと、俺が思ってる。」

そう言いながら、男は両の手に油断無く剣を構え俺と対峙し、
その構えに習うように俺も槍を両手に構え、

「刺され、裏切られて、親類でもない前はそいつを信じると?」

そう、男と間合いを図りながら口を開けば、男は兜の奥から俺を見据え、

「俺が信じなかったら、誰がアイツの、シーナの裏切りを肯定すりゃいいんだ、槍使い?
 弟が俺を裏切った、だから兄である俺がアイツを叱りに行く。
 そこに一体どんなわだかまりがある?」

「いや、なにもない。
 とことんシンプルだ。」

そう声をかけると共に、お互いの剣先と穂先が触れ合い火花が上がる。
槍と剣、間合いでは俺の方が圧倒的に有利で、更に言えば、相手は手負い。
しかし、相手もただでやられる気は無いらしい、左の突きを放てばそれをいなし、
前へ1歩踏み出そうとする所を右の突きを膝に向け放ち、勇み足になった所を胸に向けて左の突きを出す。
しかし、男はその突きを体を半身にして避け、前へ1歩。
その分、1歩下がりその位置から気の刃を乱れ打つ。

「ちっ!」

そう舌打ちを1つ残し、瞬動で後ろに下がり、いくつかの気の刃を体に受けながら切り払い、
斜め上に跳躍しながら虚空瞬動で切りかかってくる。

「見え透いた手を!」

そのまま、斬りかかって来る男に動きながら気の刃を飛ばすが、
男は致命傷となる刃を左の剣で切り払い、右の剣を大きく振りかぶりながら、

「なら、初見ならどうだ!!」

そう、叫びながら男は刃の届かない距離で剣を振る!?

「チッ、隠しだまか!」

そう叫びながら男の伸びてきた剣先を首を振ってか避けて、男の下をくぐる様に瞬動で移動し、
男の背に向けて突きを放つが、男はそれを空中で身を捻って避けて膝をついて着地する。
伸びたはずの右の剣は元の長さに戻っていて、一瞬錯覚だったのかと言う事が頭をよぎるが、
しかし、自身の左の眉の上付近からは薄い痛みと、熱い物の感覚が伝う。

「やるじゃないか。」

「俺としては、お前に用はないんだがな。」

そう言いながら立ち上がる男からは、『ブシュッ』と言う音と共に右わき腹から血が流れ出し、
白かった鎧を朱に染め、気の刃を受けた部分は所々刃のあとが残っている。

「悪いが、俺には用があるんだ。
 今回ばかりは譲れないやつがな。」

「そうか、でもまぁ、そいつは俺も同じなんだわ、槍使い。
 それに、今此処でくたばってる訳にもいなねーしな。」

そう言いながら、武器を握りなおしジリジリとお互いの距離をつめる。
相手の隙をうかがうが、剣が伸びる・・・、多分連接剣になっているであろう右の剣の間合いがつかめず、
どの距離で飛び込むべきか攻めあぐねる。

「弟を叱る為か。」

そう、距離を測りながら・・・、自身が瞬動を使い一足で飛び込める間合いを模索する。
しかし、それは相手の男も同じなのか、両の剣を正眼に構え、ジリジリと間合いをつめながら、

「それもあるが、白髪の娘を・・・、俺が殺し損ねたそいつを捕まえなきゃならねえ。
 そうすれば、弟も正気に戻るらしい!!」

その男の叫びと共に、左目の視界が潰れる。
多分、さっきの傷口から流れ出た血が目に入ったのだろう、
しかし、そんなもので目を瞑るほど俺もバカではない!

「キサマがエヴァを傷付けた者かぁぁぁ!!!!」

目を見開き、瞬動で突っ込んでくる男に対して、俺も瞬動で飛び込む。
右の剣を右に半身ずらして避け、そのまま右に回りこみながら左手で上半身に突きを放つ、
しかし、男はそれを上半身を後ろに倒して交わし、

「ぬぁぁぁっ!!」

そう叫び声を上げながら左に持つ剣を床に突き立てる様に振り下ろしてくる。
それをバックステップで避けるが、男はそのまま突きたてた剣を足で蹴り上げ、剣を伸ばしながら振り上げてくる。
だが、剣が伸びるのならそれに合わせればいいだけ、振り上げられる剣に槍の穂先を中てて剣閃をそらし、
がら空きになったナイフの刺さったままの右わき腹に気を集中させた蹴りを放つ、
しかし、男は蹴りが当たる瞬間に1歩右に出て、最大限の威力を出させないようにするが、
そんなものは関係なく蹴りぬく。

そうすれば、流石の男も数歩後ろに下がる。
だが、それだけでは追撃は終わらせない!!

「オマエが俺の主を・・・!!!
 大切な、大切な我が主を悲しませた者かぁぁぁ!!!!!」

そう叫びながら、ゲイ・ジャルクを男に向かい全力で投擲する。
そうすれば、男は避けきれないと悟ったか、両の剣を交差させて槍を受け止める。
しかし、全力で投げた槍は男の剣を貫通しない。
だが、それでいい貫通させる必要は無く、ただ、その動きが止まればいい!!

「その命・・・、貰い受ける!!」

そう叫びながら、槍に押され後ろに下がっていく男に瞬動で追いつくが、
ゲイ・ジャルクを右わき腹から血が噴出すのも気にせず、全力で払いのけ、

「その主とやらの居場所を言え!!!
 今からその女のそっ首を刎ねてくれる!!!」

そう叫びながら、両の剣を伸ばしその剣先が蛇のように俺の上半身に迫ってくる。
だが、それがどうした、上半身を狙うなら、それよりなお低く地を舐めるように姿勢を低くして更に早く動けばいい!!
頭上で合わさった剣閃が俺の髪を切り飛ばす、だが、そんなものでは俺は死なない。
そのまま男は剣を地に叩きつけるように振るうが、その剣の長さが仇となり、
振り下ろされた剣閃は俺の後を追う様に迫ってくる。

「よこせ、その命!!」

「お前こそよこせ、主の首!!!」

間合いはほぼゼロ。
自身の体ごと相手に体当たりするように突きを放つが、男は両の手に持った剣を棄て、
身近らのわき腹に突き立てられているナイフを抜き放ち、わき腹から血が滝のように溢れ出るのもものともせず、
血に濡れたナイフを両手で持って穂先を逸らし、転がるように右にナイフを投げながら避け、
俺の追撃をけん制すると共に、地面に落ちていた剣を一振りその手に握り締め、
片膝をついた状態で剣先を伸ばしてくるのを、1度大きく後ろに跳躍して避ける。

「ははは・・・、裏切るって言ってたシーナに助けられたな。」

そう言いながら、男はわき腹から血を垂れ流しながらふらりと立ち上がる。
出血の量はナイフを抜いたせいでさらに増え、もしかすれば、もう目も霞みだしているのかも知れない。
だが、こいつに容赦はできないし、する気も無い。

「その光はまやかしだ・・・。
 最初からその傷が無ければ、お前はまだ戦えた。」

「その戦いに意味があるなら、いくらでも・・・、死んででも戦ってやるさ。
 俺が戦う意味は弟の為だ、あの娘に出会うまでは、俺は死んでやらない!!」

そう男が意気込んでくる。
だが、もう勝負はほぼついている。
あの出血量では打ち合うのもほぼ限界。
その上、俺の背後からは懐かしくも、禍々しく仄暗い魔力が。


ーside俺ー


2階の廊下を歩き、行き着いたのは大きな広間。
時折激しく鳴り響いていた鉄のぶつかる様な音は今はせず、静寂となった広間に入れば、
ディルムッドと、その奥には白鎧が血を流しながら立っていた。

「オンナァァァ!!!!」

そう、白鎧が吠えるように大声を出し射抜くように俺の方を見てくる。
見覚えのある男だ、あの時あの場所で・・・、あのライラックの花畑で俺が腕をもがれ、身を刻んだやつだ。
その男が、俺の前で血を流しながら叫んでいる。

「生きていたか、やはり生きていたかぁぁぁ!!!!!!
 その首をよこせぇぇぇ・・・、今すぐに息絶え亡骸を俺にさしだせぇぇぇぇぇ!!!!!」

そう叫びながら、白鎧は男はふらつく足で俺の方に向かってくる。
だが、今はこんな死にぞこないを相手にしている暇は無い。
それに、ディルムッド槍を構えながら、その男の前に立ちはだかる。

「命を貰い受けるといったが?」

「お前にやる物はねぇ!!」

そう、男はいきり立つ。
だが、どんなに叫ぼうとも、何を吠えようとも、
何を俺に願おうとも、そんなものに俺が答える義理も無ければ、今俺がここに留まる必要も無い。

「チャチャゼロ。
 名乗りを上げて、あの白鎧を叩き潰せ。
 酷く不愉快だ。」

そうディルムッドに言葉をかけ、更に上へ上がる階段の方に向かおうとするが、

「何処へ行こうっていうんだ化け物!!
 オマエを刻んだ男はここにいる!!
 オマエを貫いた男はここにいる!!
 オマエが怒り戦うべき男は・・・、アーチェ・ファイランスは此処にいるぞ!!?」

そう、男はディルムッドにではなく、俺の方に血を垂れ流しながら剣の剣先を向けて威嚇してくる。
その姿を勇ましいととるか、それとも、無駄な足掻きと取るかはそれぞれだろう。

「オマエの処断はオマエの前にいる私の騎士が行う。
 私が戦うはお前ではなく、私の大切な者を奪ったあの男だ。
 私はあの男から彼女を奪い返すための此処に来た。」

そう言葉を残し、階段に向かい上へ上がる。
背後から、白鎧の絶叫が聞こえるが俺には関係ない。

狭い階段をカツカツと上る。
上の階からは人の気配がする。
上りあがり、人の気配のある扉の前に立つとドクンと心臓がなる。
それはまるで、恋焦がれた思い人がその扉の向こうにいるかのような思い・・・。
いや、それはあながち間違ってはいない。

何せ、俺が今此処にいる理由はこの扉の向こうの男に合うためであり、
そして、その男から彼女を奪い返すためだ。
それはまるで、結婚式場に出向き花嫁を奪還する男のようではないか。
そんな事をつらつらと考えながら、自身に魔法を施し扉に手をかけ、扉を開く。

その扉は『キィィ・・・』と言う音と共にあっけなく開き、
その扉の中の部屋に入ると、中には上半身裸のあの男が窓辺に座り、こちらを見ていた。

「やぁ娘さん・・・、来てくれたんだね。」

そう言い、男は俺の方に窓辺から降り歩み寄ってくる。
上半身裸の男の胸の中心には、焼印でつけられたかのような十字の後がある。

「待ってたんだよ娘さん。
 君が来るのをどんなに身を焦がして待ったか・・・。
 君を食べたくて食べたくて、でも君はいなくて・・・・。
 だから、他の人でそれを埋めようとしたけど、それは君が余りにも僕を魅了して無理だった。」

そう男は顔に笑顔を貼り付けて、まるで抱擁を待つかのように手を広げながら俺の方に歩んでくる。

「さぁ、君を食べ!!」

これの話を聞く必要は俺にはない。
必要なのは、この男から彼女を・・・、エマを奪い返すことだ!
目の前のよく舌の回る男の顔面を掴み、自重も相手の体重もゼロにして、ひたすら加速する。
耳元では、パンッ!と何かがはじける音がするが、それはきっと音速に達した証拠だろう。
そして、その部屋の岩壁に当たる瞬間に全ての重みを数十倍に跳ね上げてから、その男の頭を壁に打ち付けめり込ませる。

ぐじゃ・・・。

水っぽい音が耳に届き、手には暖かい血潮が降りかかる。
そして、そのままめり込んだ頭を、壁を削り飛ばしながらスライドさせて床に打ち付ける。
これでこの男は死んだのだろうか・・・、死んだのならそれでもかまわない。
むしろ、そうしてくれればどんなに気が楽か。
そう思いながら、男の頭を持ち上げ、その首筋をあらわにさせる。

「お前の中にある彼女を帰してもらうぞ。」

そう言葉を吐き捨て、男の首筋に牙を近づける。

「娘さんが食べるんじゃなくて、僕が食べるんだよ!!」

そう手の平に口から出たであろう血がかかり、その声と共に俺の顔を殴ろうと男の拳が振り上げられる。
チラリと拳を見れば、その拳には魔力が乗り障壁突破の術式が何重にもかけてある。
だが、その拳がなんになる?
振り上げられた拳は俺の顔を殴ろうと、最速最短を持って迫ってくるが、
俺はその拳を腕ごと凍結させて頬に中る寸前で止める。

「へぇ、こんな事もできるんだ。」

そう、何処かその男は他人事のように声を上げる。
頭の傷はいつの間にかふさがり、血の後も無い。
なら、別の方法で黙らせればいい。

「エメト・メト・メメント・モリ 来たれ氷精 闇の精
 闇を従え 吹雪け・・・・。」

頭を持っていた手から、闇の吹雪をゼロ距離発射してその男の頭を粉砕しようとするも、
男の頭を掴んでいる手から鋭い痛みが走り、しかし、ただ放すのも躊躇われ、結局近くの壁に叩きつけるように投げつけて手放す。
そして、闇の吹雪の詠唱を終えて遅延させながら、自らの手を見ると、そこには肉を失い骨まで見えている手の平と、
その周りにはあの男の歯形だろうモノがついている。

くちゃくちゃと、何かを咀嚼する音が、男を投げつけた方からするから見てみれば、
そこには瓦礫に埋もれるように座った男が、微笑を貼り付けたまま、
口の端から、俺から食いちぎったであろう肉から血を滴らせながら、

「はは、酷い味だね、お娘さん
 あんまりに酷すぎて・・・。」

そういって、咽るような咳1つついて、その肉を嚥下し、
その瞳に気色の色を浮かべながら低い声で、

「もっと食べたくなった・・・、
 ううん、食べ尽くしたくなったよ。」

そう言う男めがけて、腕を突き出し、

「闇の吹雪!」

そう声を出し、遅延していた魔法を放つ。
しかし、男はそれをヒラリとかわし、片手で顔を覆いながら、隠れていない片方の目で俺を見据え、

「お腹が空き過ぎてそろそろ辛いかな、
 本気で食べに行くよ、娘さん。」

そう言った、男の背中から淡く輝く羽が現れる。
しかし、その羽は鳥の羽のようなものではなく、骨ばり皮膜のようなものが見える。
それは、けして天使の羽ではなく・・・・。

「悪魔・・・。」

そう、ポツリと漏らすと男は自らの羽をさすりながら、

「さぁ、なんだろうね・・・。
 昔、此処に居た時、真っ暗な部屋で光も無いそこで僕は、瞼の裏の光を追ってると思ってたんだ。
 でも、それは違ったんだよ、手を伸ばすと光はあっけないほど簡単に捕まえられて、
 余りにもお腹がすきすぎていた僕は、その捕まえた光を食べたんだ。
 そうして、気がついた時にはこんな風になってた。」

そう、男は笑みながら言葉を紡ぐ。

「たしか、その光にも僕と似たような羽が生えてた。
 でも、そんなのどうだっていいんだよ。
 ・・・、光あれ、暗い僕の世界にあった光は結局こんな光なんだから。
 さぁ、喰らい合おう!」

そう言い、男は頬を歪めて俺に笑いかけてくる。


ーsideロベルター


体を2人の姉妹に担がれて橋を渡り、砦の門の所にたどり着きます。
そして、そんな私に一番に気がついたのは、

「メイド長、ご無事なようで。」

そう、入り口に立ち、巨大なハンマーを持つステラさん。
その言い草は、何処か私を咎めるようであり、また、何処か安心したようなもの。

「この姿を無事と言うのならば。」

そう返すと、私の声を聞きつけたのか、ポーランさんがひょっこりと顔を出し、
私の姿を見るやいなや、『はぁ』とため息をつき、

「ボロボロだね、でも、口が利けるならまだ死んでないよ。
 じゃあ、中で休んで。」

そう言葉を返して魔法球を指差します。
ですが、

「我侭かも知れませんが、此処で見ていては・・・、
 いえ、見届けさせてください。」

そう言葉を返すと、ポーランさんと、ステラさんは顔を見合わせ、

「ステラちゃん、メイド長をどう思う?」

そう意見を求められたステラさんは、門から逃げ出そうとする敵を、
その巨大なハンマーで叩き潰しながら、辺りを見回し、

「もう兵は少数・・・、尋問です。」

そう声を返してきます。
そして、その言葉を聞いたポーランさんは人の悪い笑みを浮かべながら、

「そうだね、メイド長にこんな風になった経緯を聞かないとね。」

そう返してきます。
それに対し、私は動かない体で胸を張り、

「いいでしょう、ですがそれはもう少し後。
 砦内の探索をしてからです。」

そう言葉を返し数刻後、辺りに動く敵兵はなくなった頃、
他の姉妹達を集め、砦の内部探索班を結成しながら話すのでした。




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