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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 狗の本分だな第66話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:5d772d24 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/23 03:32
狗の本分だな第66話


時は多少遡る。

ポーランさん達は私の指示の通り、歩を進めるのを感じながら、私は1人森を疾走します。
理由は余りにも明らかで、魔法銃の魔弾を弾いた一隻の船に警戒をしたもの。
開戦の様子を見て逃げ出すというのなら、まだ話しは解りますが、
その開戦の狼煙が上がるよりも前に、既に岸に着こうとしていた一隻の船。

私達が女性の姿をしているのを侮らず、敵の指揮官が差し向けた刺客。

否 その刺客がたった1人で、此方に切り込んで来る訳が無い。
  相手を侮らないと言う事は、少なくとも送って安心できるだけの戦力を送る事が必要である。
  少なくとも、刺客を送るなら2人・・・、それに、私達の指揮者を暗殺するなら、舟ではなく泳ぐべきだ。

単なる脱走兵か。

否 単なる脱走兵が魔法を扱えるのなら、今橋の上で戦っている中にも魔法使いがいるはずだ。
  いや、いなければ可笑しい。既に城塞の高所には弓兵がいて弓を射っている。
  傭兵共はすでに抜剣し、剣を交えている。
  そんな中、魔法使いが戦場に出ない訳が無い。
  橋の上と言う狭い場所なら、魔法の矢をばら撒いた方が数で切り合うよりもなお有効的だ。

なら、あれは一体何か。

解 私達の襲来を予見し、なおかつあの砦を見限ると答えを出した者。
  その上、魔法を使える手足れ。
  それ即ち、

「あの砦の指揮官の1人・・・。」

本来、指揮官が戦闘中にその持ち場を離れるべきではない。
それは、重々に承知してはいますが、それでもそんな私達の隙間を縫って逃げ出す者を、
今回ばかりは早々見逃すわけにはいきません、いえ、出来る訳が無い!
そう思い、岸に着岸した船から下りる、ぼろの黒衣を着た男にむかい口を開く。

「止まれ、この戦場から何処に行こうと言うのですか?」

そう、男に銃を向けたまま声をかけると、
男は振り返りながら、興味無さげに口を開く。

「迎えが来るのだ・・・。
 私の本来いるべき場所、私の本来あるべき姿、
 私の本来あるべき地位、私の本来あるべき・・・、そう、私の本来あるべきは、此処ではなく別にある。」

そう静かに口を開く男の胸には、くすんだ十字架が1つ。
そして、男は乗ってきた舟に手を入れ何かを・・・!!!

パン!!パン!!

男が何か武器を取り出す前に、男の胸と頭に向け躊躇無く射撃する。
しかし、魔弾は着弾する事無く、障壁に阻まれ変わりに舟から取り出された、
13と書かれた十字架を模した、彼の身長ほどある杖をこちらに向け、

「熱波・武装解除」

そう、魔法を放って来る。
しかし、既にそれは予測の出来た事、姿勢を低くし地を這うように後方に下がりながら、
男の両膝、鳩尾、杖を持った手に肩と精密射撃をくりだしていくが、
男はその射撃を意に返さず、両膝の射撃を蹴り払い、
鳩尾と肩への射撃を杖を回して防ぎ、手への射撃は、手そのものを動かされたので外れる。
しかしその動きの間、男の口から魔法の詠唱は紡がれない。
ならば、その隙に杖を奪う無いし、へし折っていまえば宜しい。

「貴方のあるべき場所が、此処ではないのは重々承知しまいた。
 ならば、とっとと死にさらせ!!」

そう、蛇のように手を伸ばせば、男は私の手首を掴みグンと引き寄せながら、

「あの娘が現れた今、見届けねばならぬのだ、この戦は。
 この戦だけは見届けねばならぬのだ、そうしなければ、
 私と言う者がただの道化と成り下がる。」

そして、ピタリと額をあわせ、剥き出す歯を隠そうともせず、
胃の底に溜まったヘドロのような息で、

「何もかもが憎たらしい・・・。
 私を此処に押し込んだ者も、此処でやり続けた事も、そして、この"魔"法も。
 魔法の射手・炎の79矢!!」

「ちっ!!」

ほぼゼロ距離で放たれる矢としては量が多く、避けきれない!
しかし、それでも掴まれた手首を無理やりに振りほどき、
飛来する矢の中で、致命傷になりえる矢を拳で落とし、1度仕切りなおすために、

「そんなに憎たらしいのなら、それをもたらした者に復讐しなさい!!
 私やお嬢様の進む道に、お前は必要無い!!」

そう叫びながら、クンとスカートをつまみ、
スカートの中にぶら下げてあった爆弾をばら撒きながら後ろの高く跳んで下がり、
爆弾の爆発により、周囲は火の海に包まれる。
そんな中、男は戦いの歌を詠唱し終え、口を開く。

「お前達に必要は無くとも、私達には必要があるのだよ。
 いかに邪教の神といえど、私達にはそれを倒す術が無い。
 腐った信者と教会では、お前達を倒すほどの者が現れない!!!
 ゆえに私は縋ったのだよ、人を人から越える者にできる奇跡に!!
 神は自身に似せ人を作った、だが、中身はどうだ!?」

そう、炎の海の中から焼け落ちたボロを払いながら、神父服の男が現れます。
あの爆発で無傷・・・、防御障壁は硬いうえに、接近戦が出来ないわけではない。
しかし、チラリと袖口を見れば、煤けてはいますが内部までのダメージは無い。
それに、遠距離攻撃がほぼダメージとならないのなら、まだ接近戦の方が分があります。
そう思い、両袖に仕込んだ・・・、エマさんから受け継いだナイフを袖から滑らせて抜き、

「人の書いた書物に魅せられて、妄執に駆られたクズが!
 中身がどうのこうの、似せて作られたからどうのこうの、
 そんなもの、自身の足で歩めばおのずと道が見えるでしょうに!」

抜いたナイフを右手は順手、左は逆手と構え姿勢を低く・・・、
地面を舐めるように杖を持つ男に走りよろうとしますが、男もそれはさせる気が無いのでしょう。
魔法の矢を小出しにするように放ち、弧を描くように動きながら、

「そんな邪道は認めない!!
 人とは神に縋り導かれ道を示してもらうもの、その導き以外の道など認めない!!
 だからこそ歪みを正す。」

「歪みの現況であるキサマが何を・・・。」

飛来する魔法の矢をナイフで切り払い、もしくはスカートの裾をはためかせて叩き落しながら、
杖を振るう男めがけ近寄り、左手でバックブローを放つように回転してナイフで切りつければ、
男も私と反対の方に回転し、私の肘に杖を当ててカーンと言う甲高い音と共に叩き落す。
ペキリ・・・、そう、左肘付近からいやな音が聞こえ、
肘が動かなくなる。

(チッ!このタイミングで!!)

しかし、私もこのままで終わるわけには行きません。
更にその場で回転し、男の腹をけりつける。
だが、男に見て取れるダメージは無く、乱れた髪を掻き揚げながら、
その口元には絡みつくような笑みを浮かべ、

「・・・、お前は人形..か?」

そう、口を開きながら前に一歩踏み出し、

「お前の体から、鉄の擦れる音がする。
 人より生まれず、兄に殺されその血を吸った大地より生まれし者の音が・・・。
 問おう娘、お前の主は何ぞや?
 嘆く大地より"禍"々しい"音"を伝えるオマエを作った暗き"闇"の使徒の名は何ぞや!?」

煌々と輝く瞳をする男を前に、私も動く右腕を構え、
だらりと垂れ下がりながらも、ナイフを手放さない左手を庇いながら、

「我主の名はエヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マグダウェル。
 悠久の時を生き、幾数多の困難を打ち砕き、強欲を称する血を吸う者。
 そして、私は・・・、主の娘であり尖兵。」

そう言うと、男は狂ったように腹を抱えて笑いながら、

「ククク・・・、ははは・・・・、エヴァンジェリン(Evangeline)・・・、
 エヴァンジェル福音(Evangel)と近しき名を名乗るか!!
 しかも、ご丁寧に血を吸いて永久に地上を彷徨う彷徨い人ときた!!」

そう言うと、『ごう』と灼熱を吹き上げる杖を構え、私に殴りかかってくる。
その杖の切先を動く右手と、左肩の遠心力で無理やりに動かす左手で応戦する間も男は口を開く、

「血を喰らう大地を耕し、悪しき音のする自らを信じる禍々しい音のする者を使い従えた、
 オマエの主は、たった今より明確なまでに私達の討伐対象であり、神の敵だ!!
 お前達の生きる場所は、私達の住まうこの地上には毛先ほども無い!!」

そう言いながら、炎を噴く杖を振るう男の腕は鋭さを増し、
その杖を受けた服は溶け落ち、三つ編みにしていた髪は振りほどけ、その毛先を焦がす。
体のあちこちから悲鳴が上がり、ペキリ、またペキリと砕ける音がする。
男の杖を避けきれず、体の一部が解ける。
だが、それがどうした!?
足はまだ動く、武器はまだ手にある、何よりもまだ・・・、私がここにまだ存在している!!!

「その彷徨う殺人者カインの仔であるお前達人間が何をほざく!!」

「人ですらない木偶が何を粋がる!!」

そう言って、振り上げた男の杖をギリギリでよけ、左足で蹴りをだすが、その蹴りは杖で受け止められ、
そのまま押し返され、バランスを崩した所を杖の尻で右頬を打ち据えられ、
それでも足を踏ん張り左肩を振るい、遠心力に任せて左腕を振るう。

しかし、男はその左腕を右手でつかみ、地面に引きずり倒そうと力をこめが、私はその男の背中の上を転がり、つかんだ右手を無理やりに引き剥がし、
背中を降り際に男の首めがけナイフを振り上げるが、男はそれを上体を逸らして避け、杖の先を私の腹めがけ突き出す。
その一撃を右回転しながら避けるが、避けきれず服の一部が溶け、わき腹があらわになる。

だが、体を見られて羞恥心に駆られるほど私はバカではない
回転すると同時に、男の左膝側面をめがけ踵を放つが、男はそれを後ろに跳んで避けながら、

「エノク・イザヤ・カスパール・・・、
 我は願う あしきモノを焼き尽くす 浄化の炎を!
 断罪の使徒にして、正義を司る審判の使者よ!!」

「させるか!!」

そう叫びながら、下がった男を追うように地を蹴って飛び掛りながら、
大きく振りかぶったナイフを頭上に振り下ろすが、男はその一撃を杖を大きく掲げて受け止め、
更に杖をくるりと回し、体を回して回転しながら私の背中を打たれたたらを踏む。

「幾度と無く抗う者を打ち据え、罪深き者を許さず、判決を下す。」

その、静かな声と共に男の杖の先が私の腹に押し付けられ、

「制裁の采配。」

瞬間、男の魔法が完成し収束した炎に私の体は解かされ、
荒れ狂う熱風により上半身は強かに木に打ちつけられ、その反動で木は折れ、
地面にずりうつ伏せになった私の体に残っているのは、動かなくなった右腕に、武器を握り締めてはいるが体から切り離された左腕。
下半身は完全に溶け落ちて腰から下は存在しない。
私に再生機能は付いておらず、この体もさっきまでの戦闘で魔力の魔の字も無い。
そんな文字通り人形のような状態の私に男が近寄ってくる。

「溶け残るか・・・。
 ならば、幾度と無く浄化しよう。
 オマエが終わるまで、滅びが訪れるまで、残滓さえ残らぬほどに。」

そう言って、男は杖を掲げ魔力を集めだす。
動けない私は顔さえ上げて睨む事さえできない、遺跡より出て行き着く先はこの地での終焉なのか。
大丈夫・・・、私と言う存在は幾数多の集合た・・・、いではない。
かつての私は、私"達"だった・・・。
でも、今は違う・・・。

新たな名前を下さり、私をあそこより連れ出してくださったお嬢様。
お嬢様に仕え、今では喧嘩友達のようにも感じるチャチャゼロさん。
そして、人手すらない私に大切な思いを引き継いで欲しいと言って死んでしまったエマさん・・・。

『全力で生きる覚悟をしろ。』

ふと、その言葉が私の中で思い出される。
オスティア炎渦巻く中、お嬢様より下された言葉。

『みっともなくとも、生き恥をさらすと思おうとも、
 足掻いて泥の中をはいずろうとも、それでも生きろ!』

そう、私はまだ死ぬ訳には行かない・・・。
私に明確に死と言うものがあるのか、人で無い私の終わりとはなんなのか・・・。
そんなものクソ喰らえ!!!

「あの娘・・・、砦の中で恐ろしいものになったか・・・。
 夕闇のようなものではなく、仄暗い闇そのものに。」

顔の前にある千切れ跳んだ左腕には今だナイフが握られ、
そのナイフに刻まれたライラックの花は今だ曇っていない。

『私の中の狗が囁く。』

そう、エマさんは私に言った。
私には狗の素質があると。
それがどういったものかは解らない・・・。
ですが、下半身は無くとも、右腕は体に残り顔も、さえも残っている!
自らを奮い立たせ口を大きく開き、転がっている左腕を口で噛み締め、残っている右腕に力を貯める。
男は今だ杖を振り上げたまま、砦を見ている・・・。
ならば、私の勝機は今しか・・・・、ない!!

「フゥーーーッ!!フゥーーーーーッ!!!!」

「な・・・・、にっ!!」

右腕に溜めたなけなしの力を一気に解放し、首を大きく捻り男の胸めがけ体当たりをするように飛び掛る!
人間が同じ事をしても、多分刃は致命傷にならない。
ですが、私達姉妹は人なんかより、はるかに重い・・・!!!

「がはっ・・・!
 なぜ・・・、動け・・・、た・・・。」

そう言いながら、男は私を払いのけながら自らの胸の少し低い位置に刺さったナイフにぶら下がる私の左腕に手を持っていく。
なけなしの力で跳んだ為か、一撃で心臓を穿つことはできなかった。
だが、あの位置ならば延命はほぼ不可能に近い。
そう思っていると、よろよろと口の端から血を流しながら後退し、ドンと木に背を預ける。

「主の命無しに狗は・・・、死ねない。」

その私の言葉を聞くか否かで男の首がガクリと落ちる。
これで、この男は終わったのだろう。
そして、今の私も動けない・・・。
なけなしの力は文字通り最後の力で、スッカラカンの私は指先さえ動けない。
あの戦闘で不思議な事に、森に火は燃え移らなかったのか、辺りは酷く暗く感じる。
まるで、いつかの闇のせか・・・。

・・・。

「メイド長様、お嬢様の命によりお迎えに上がりました。」

そう、頭上から声がかかり首の後ろ辺りから、
カチリと言う音がすると共に辺りの景色が鮮明になりだす。

「お嬢様・・・?」

「はい、お嬢様の命により私達がお迎えに上がりました。」

そう言って、2人の妹達が私の上半身を持ち上げます。
私の頭は、どこか呆けていたものが次第に鮮明になって行きます。

「お嬢様がコチラに来られているのですか!?」

「はい、先刻の事です。」

そう言って、私を持ち上げた姉妹達が歩き出そうとするので、それを1度静止し、

「すみませんが、あの男に刺さっているナイフと・・・、あそこに刺さっているナイフを回収して貰えませんか?」

そう言うと、姉妹達はナイフを回収し私を2人で抱え3人で砦に向かいました。


ーsideアーチェー


槍使いの男に蹴られ、そのままその反動で一旦城塞内部に撤退する。
いらん敵が増え、本願がその姿を現さない事が苛立たしくて仕方ない。
そんな事を走りながら考えシーナの元に向かう。

「シーナ、いるのか!?」

そう声を出していれば、奥の方から男が1人外に駆け出していく。
たしか、あの男はここの防衛隊長を言い渡したヤツだったか。
しかし、それなら話が早いあの男と逆の方に向かえば、その先にはシーナないしジュアがいるはずだ。

「シーナ!」

そう言いながら2階の大広間に入ると、シーナは足をブラブラさせながら窓から眼下を見下ろしている。
そして、俺の方を振り向きながら、

「ああ、アーチェか。
 どうしたの、そんなに声を出して?」

そう、何時もと変わらないように俺に声をかけてくる。

「娘達に変な槍の男が加わった。」

そう言うと、シーナはニコニコしながら、
俺の方に歩み寄り、

「うん、見てたよ。
 あんまり美味しそうではない人だったね。
 それで、アーチェはどうするの?」

そう、俺の事を見上げて小首をかしげる。
どうするか・・・、俺はコイツさえ無事なら、弟さえ無事ならそれでいい。

「・・・、解らん。
 だが、お前は弟だから護ってやるよ。」

そう言って、いる間にも俺の背後から誰かが走ってくる音がする。
むしろ、それが誰かなんて言わないでも分かる、間違いなくあの槍の男だ。

「お前は上に行け。
 アイツは俺が止めておく。」

そう言って、扉の方をみて双剣を構えるが、シーナの動く気配が無い。
仕方なく、そんなシーナにもう一度声をかける。

「弟なら言う事を聞っ!」

背後から兜を取られた瞬間、脇腹に鋭い痛みが走る。
見ると、俺の脇腹からシーナの使っていたナイフが生えていた。

「なに・・・を?」

そう言うと、シーナはやはりニコニコしたまま、

「アーチェ、僕はキミの弟じゃないんだ。」

そう、静かに話しながら、何処からともなく本を取り出す。

「君は知っているかい?
 その鎧の意味、本当は中の人には死んでもらった方がいいんだって。
 でも、弱いまま死んでもあんまり意味がないらしいんだ。」

そう言いながら、本の内容を指でなぞりながら俺の方に話しかけてくる。

「キミのかぶっていた兜にヒーリングとリジェネーションだったかな、
 そういう術式が入っていて、ある程度は死なないらしいんだけど、それでも心臓とかを潰されるとか、
 兜をかぶっていない時にダメージを負うと回復も出来ないらしいんだ。」

「だからって、何でだ?
 あの時・・・、あの暗闇の中で俺は言っただろう。
 お前を弟にするって。」

そう言うと、シーナは一度目をつぶり、何処か優しげな瞳で、

「あぁ、知ってるよ。
 あの闇のかなで君は僕を弟にするって言ったね。」

そう言いながら、俺に近寄ってきてスッと背伸びをして耳元に口を寄せて、

「でも僕はあの闇の中でこう言ったんだよ『いいよ、だって僕はきっと君を裏切る・・・』ってね。」

そう言って、俺に背を向けて立ち去ろうとするシーナに手を伸ばすが、
その手は何処を掴めばいいのか解らず、一瞬空を彷徨いだが、やはり手を伸ばさずにはおれず、結局シーナの服を掴んだ。
しかし、シーナはその俺の手を気にするような事もなく歩き出し、ビリビリと服が破けていく。
そして、あらわになったシーナの背中・・・、両の肩甲骨の付近に無残な火傷の様な傷跡があらわになる。

「そこから羽が生えるんだ。」

火傷のような傷跡を見ている俺を、シーナは肩越しに微笑みながら見てそう口を開き、
上半身裸のまま3階に上がり、残された俺は背後から来た槍の男と対峙する事になった。






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