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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 彼女達の戦場だな第63話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:a45958f7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/01 23:14
彼女達の戦場だな第63話





ふぅ・・・、体をポーランさんに再調整していただき、
そのまま一晩歩き続けて、目的地に着いたのは概ね日が天高く上がった頃。
確かに、男達の言っていた砦は湖の真ん中にありました。
しかし、1つ予想外だったのが、

「あの砦の設計者はいやらしいですね、わざわざ橋の中間から跳ね橋式に変えるとわ。」

初めてその砦を見たときから、いくら愚痴っても仕方の無い事とはいえ、
愚痴りたくなるのは仕方ありません。
橋の距離だけ見るなら攻め込むのは容易ですが、この跳ね橋と言うのはネックです。
攻め込む道が1本しかない以上、どう策を講じ様とこの道を通るのは避けられません。

しかし、その道を断たれる可能性があるというのはいい気がしない上、相手が篭城戦を採った場合、
最悪、舟で攻め込むことになりますが、相手が高所から睨みを利かせる事が出来る以上、
下になる私達が不利になるのは拭えません。
そんな状況で、最善の策を模索しながら遠目も解る、跳ね橋を釣っている野太い鎖を見ていると、

「戻ったよ、メイド長。
 頼まれた通り一周ぐるっと砦を見てきたけど、あの橋以外攻め込めそうな所はないし、
 歩いてわたれそうな浅瀬も見当たらないよ。」

そう、声をかけてくるのはアニエスさん。
今の私達は、砦の近くの森に陣を張り砦の様子を探っていますが、やはり芳しいものではないですね。
どこかに秘密の脱出路の2~3本ぐらい余裕でありそうな砦ですが、それをおいそれとは見つけさせてくれないと言う事ですか。
となると、やはり夕闇に紛れ速攻的な突破戦により橋を確保する・・・。
今の所、これしか策がないようですね。

「あ~、久々の外だ。
 ソニア、お茶を入れてくれ。」

「お姉さま、緊張感を持てとは言いませんけど、
 せめて緊張感の欠けらぐらいは持ってください。」

「ソニアちゃん、見てみて蝶々だよ~。
 かわいいね~、追って行っちゃおうか~?」

「・・・。(無邪気なポーラン姉さまの方が可愛いです。)」

「あ、アニエス姉さま、これから森の中を散歩しませんか?」

「こらこらジリアン、お散歩じゃなくて斥候って言わなきゃメイド長が許してくれないよ。
 まぁ、そう言う訳でジリアンと斥候に出てくる・・・、
 どうしたんだいメイド長、肩を震わせて?」

そう言いながら、アニエスさんが私の顔を覗き込んできます。
・・・、拝啓お嬢様。
私は今、この方達をまとめる事を放棄しても宜しいでしょうか?
今の状況でなんで、この方達はこんなに脳天気なのでしょう・・・。
むしろ、今から頭に鉢巻を巻いて蝋燭を刺し、魔法銃と剣を持って敵城に1人で突貫した方がマシなきがします。
・・・、うははは・・・、お嬢様のタタリじゃ~。

「いや、落ち着けよメイド長。」

「これが落ち着いていられますか!
 それと、ィ・アリスさん脛をガンガン蹴らないで下さい、へこんだらどうするんですか!!」

そう言うと、ィ・アリスさんは私を見上げながら事も無げに、

「いや、へこんだから魔法球で脛を取り替えて来い。
 すまないがジリアン、メイド長がコケテ大破しない様に付き添って脛を交換してくれ。」

そう言いながら魔法球の方を親指でクイクイと指してきます。
一応念のため脛の辺りを見ると、確かに若干ですがへこんでします。
はぁ、本当にこんな調子で大丈夫なのでしょうか?
別に、彼女達を信用していないわけではないです。

そもそも、ィ・アリスさんを初めとする5人は古くからお嬢様に使えている方達なので、
今更、信用云々と言うこと事態がバカらしくなります。
それは、既にポーランさんを見れば解る事なのですが、それでもお嬢様をして"やんちゃ"といわれる方々・・・。
見方から背後を撃たれるという事は考えませんが、いえ、ここで私が弱気になるわけには行かないですね。

「解りました、交換してきますので変な事はしないでくださいよ
 ジリアンさん、わざわざ手を引いていただかなくても大丈夫です。」

「いえ、脛の交換もありますから早く行きましょう、メイド長様。」



そういって、メイド長はジリアンに引っ張られて魔法球に引き上げた。
さて、これで今外に出ているのは私達5人と、魔法球を守備する数名の姉妹のみ。
別に私達姉妹には休息は必要なく、補給もお嬢様がいれば必要は無い。
だがまぁ、多少働きづめのメイド長には、少しばかりの休息をとっていただこう。

「私達の体がへこむまで蹴るなんて、少しやりすぎじゃないんですの、ィ・アリスお姉さま?
 既に高らかに振り上げられた拳は、最速を持って振り下ろされているんですよ。」

そう妹のソニアが私に苦言を言ってくる。
しかし、それはお互いの挨拶のようなもので、
こうする事にソニアも依存は無いのだろう、彼女の顔には苦笑が浮んでいる。

「なに、私達も私達なりの仕事がある。
 そうだろ、ソニア、ポーラン、ステラ、アニエス。
 お嬢様曰く、メイド長は大軍戦指揮はお手の物だそうだが、それでも私達は彼女と共に戦場には立っていない。
 加えて残念な事に、私達はただの動く木偶ではなく、意思を持つ人形と言うことだ。
 そうだろ、ポーラン参謀件指揮官。」

そうポーランの名を呼ぶ、だが実際に私はこの名の意味を知らない。
この役職名はお嬢様がつけたが、実際に彼女が指揮をするのを私は見たことはなく、
どちらかと言えば、指揮と言うより作戦の提案や立案の方をしていたように思う。
だがまぁ、その適性がなければ、そういった役職には着かないので、彼女にはその適正があるのだろう。

「ん~、またその役職で呼ばれるとは思わなかったかな、ィ・アリスちゃん。
 でも、今はそんな事も言ってられないかな、拠点制圧件切り込み隊長殿。」

そう話した後、大きく息を吐いて吸い込み、
何時もの幼げな雰囲気とはガラリと違う、蛇のような雰囲気で、

「アニエス剣兵件斥候長、砦の攻略ルートは橋の一点のみか?」

そう聞かれたアニエスは目を細めながら、多少渋い表情を作り、

「その一点のみ。
 退路、進路、突撃経路、離脱経路、全てはあの橋の一点。
 ・・・、今更舟を作って水軍を作成しても、砦の城壁は高く、
 よしんば取り付けたとしても、つるべ打ちで湖に叩き落されるだろう。
 そうなれば、こちらは不利になる一方だ。」

そう言ってアニエスは言葉を締めくくる。
しかし、普段はあまり気にしないが、飛べない泳げないという2点がこうも不利になる要因とは、
今更ながらに、何らかの策を作っておくべきではなかったのかと、そう思わずにはいられない。
だが、ならば無いものをねだるのではなく、あるモノは使えないだろうか?

「ソニア、お前は確か・・・。」

そこまで言うと、ソニアは嬉しそうにツインテールを揺らしながら、胸を張り、

「砲撃件援護長という役職ですの。
 でも、あの跳ね橋の鎖は中々に太いですから、撃ち切るのは多少骨ですが、やれ無い事は無いですね。」

そう言って、ソニアが私に言葉を返す。
ソニアがやれると言うのなら、それはやれるのだろう。
自慢ではないが、ソニアの事は姉である私が一番よく見て知っている。
そして、この子は自身が出来ると言った事は確実にやりぬく。
そうなると、必要な事が大まかには見えてくる。

「速攻をかけて橋の確保を第一目標におき、橋を確保し次第城内侵入と言う流れが確実か。
 参謀件指揮官はどう考える?」

そういって、ポーランに話を振ると彼女は一瞬の思考の後、

「確実ではなく、導かれるものがそれしかないと言った方がいい。
 殿件補佐はステラが滞りなくやってくれるし、憂う事は無い。
 無論、拠点制圧件切り込み隊長が先陣を切ってくれるのだろう?」

そう言って、ポーランが片方の頬肉を吊り上げるようにして、
ニヤリ、と言う言葉がぴったりと合う笑みを私に向けて浮かべ、他の姉妹達も私の顔を見る。

「ありがたい事だ、参謀件指揮官殿。
 特殊兵装の使えない私に先陣を切らせてくれるのか。」

そう、言葉を返す。
まったく持ってありがたい事だ。
臆病な私は、一人が怖くて、置いていかれるのが怖くて、そして、
私の知らない所で誰かが、傷つき壊れるのが最も怖い。
だからこそ、私は私になった時から常に先陣を切り続ける。
私が先陣を切る事で、他の誰かの危険が減るように。
私の歩いた後が安全であるように。

そんな私のことを、みんなが知っているのか知っていないのかはわからない。
だが、誰も私が先陣を切る事に異議を唱えることは無い。
もっとも、妹のソニアだけはぶすっとしたような顔をしているが、それは見ないことにしておこう。

「さて、会議はこんなものかな、みんな
 ジリアンからの知らせで、もうじきメイド長が帰ってくる。」

そう、アニエスが言葉を話すか話さないかのうちに、

「ジリアンさん、他の方の武装は整っているんですね?」

「はい、メイド長。
 後は号令を待つばかりです。」



脛の交換をジリアンさんにしていただきましたが、中々手際がよかったので、
彼女を救護係りにするのも1つの手ですね。
それに、魔法球の中の様子も自身の目で見れたので良しとしましょう。
そんな事を考えながら魔法球を出ると、ポーランさんが何時ものようなニコニコ笑いではなく、
どちらかと言うと、お嬢様が悪巧みをするような笑い顔で、

「お帰りなさい、メイド長。
 さぁ、部隊を編成して開戦しましょう。」

そう言ってきますが、さて、この方達が何を企んでいるのやら。
もっとも、開戦する事は確定事項で、殲滅する事は決定事項です。

「そうしましょう。
 ただ、作戦が今だ決定・・・。」

そう言おうとすると、普段は無口なステラさんが、

「作戦は、速攻による橋の奪取一点。
 奪取方法は、跳ね橋の鎖の狙撃による破壊により、篭城を防ぎ内部潜入し殲滅。
 不安事項は、鎖を切る事により橋が崩壊しないかと言うことですが、木製ですので湖に浮くので問題ではありません。」

まるで何時もとは別人のように、すらすらと饒舌に作戦内容を話してきます。
そして、聞く限りでは確かに今の所それぐらいしか策がないのも事実。

「解りました。
 ステラさんの提案を最大限に採用します。
 では、皆さん班編成をし、夕暮れまで待機。」

そう言うと各人は解散していきます。
さて、後は作戦の再確認しましょう。


ーside砦ー


「飯を持ってきましたよ。」

「おぉ、そうか!
 しかし、最近砦もアーチェさん達もピリピリしてると思わねーか?」

そう、砦の一番高い見張り台に飯を持ってきた若い男に話しかける。
はぁ、目の良い弓兵が見張りに立つのはセオリーだが、それでも、
こうしてボーっと辺りを見ているだけって言うのも、なかなかに骨が折れる。
しかも、敵が何処のどいつか分からないならなおさらだ。

「さぁ、でも貴族達が小競り合いしてるから、それに対して警戒してるんじゃないですか?」

そう若い男が言葉を返してくる。
貴族の争いねぇ、そいつは確か、

「胸に深紅の薔薇を抱いたランスターと、高潔の白き薔薇のヨークだったか。
 はぁ、めんどうだね~、まったく。」

そう愚痴りながら飯をかきこんでいると、若い男がコップに水を入れながら、

「面倒は面倒ですが、これが僕達の飯の種ですからね。
 しかし、こんな夕暮れでも遠くまで見れるものですか?」

そう、若い男が返してくる。
しかし、これは俺の数少ない自慢の一つで、

「な~に、俺は夜目が利いて更に目が良い。
 だから、こんなお天道様に近い高台で、一番敵が入ってきやすい橋の方を見てんだ。
 ほれ、お前には見えるか、橋の近くの森から・・・、なんだありゃ?」

「えっ、なんです?」

そう言って、若い男は目をキョロキョロさせているが、俺にはハッキリ見える。
日の落ちかけの薄暗い森から、ぞろぞろと人が出てくる。
しかも、何かを示し合わせたかのようにみんな頭にはヘッドドレスをつけて、黒のワンピースに白のエプロン。

手に手に武器は持っているが、鎧は一切つけていない。
そんな女の集団が、森からゾロゾロと駆け出てくる。
遠いせいで音は聞こえない、だが、それでもあの女達は間違いなく、
隊列を組んで行進しながら、この砦に進軍してくる。

「おい坊主、下にいるやつらに伝えろ。
 黒衣のメイドが群れを成して、隊列を組んで行進しながら進軍しているって!
 はやく!!」

そう若い男に壁を飛ばし、矢を弓に番える。
アレはどう考えても友好的に、話し合いにきたって言う雰囲気じゃねぇ。
話し合いに来るなら、抜剣した群れで来る必要は無い。
そんな事を考えながら、ギリギリと引き絞った矢を先頭を進む白い髪のメイドに矢を放つ。

ヒュンッ!!!

砦から一番槍ならぬ一番矢が、私に向かって飛んでくる。
その矢を裏拳で叩き折りながら、橋に向かい走る。
そんな私の後ろから、

「お見事、流石は拠点制圧件切り込み隊長。」

そう、アニエスが声をかけてくる。

「褒めんでいい。
 お前にも出来るだろう、剣兵件斥候長。」

そう返すと、アニエスは小さな笑い声を上げた後、

「それでも、見事なものは見事だよ、ィ・アリス。
 キミの一撃で、私達と共に来た70名の姉妹達には埃1つ飛んできていない。」

「当然だ、私が先陣を切り、私が先頭を走っているんだ、
 それに、うちの妹は中々に優秀でね。」

そう言いながら空を見上げると、そこには矢を放ったであろう位置に向かう一条の光。
アレはソニアの援護射撃で間違いないだろう。 
光は寸分の違いなく、矢の飛んできた見張り台に着弾する。
そして、その着弾が文字通り引き金であるかのように、砦の入り口からワラワラと鎧を着込んだ男達が湧き出してくる。
そんな男達の先頭を、黒馬に乗った鎧の男が走ってくる。

「構え!!」

そう、背後のアニエスから声が響き、それぞれの獲物を手に構える。
そして、私達が橋の3分の1を過ぎた辺りで、先頭の男と対峙する。

「ここに何用か!!
 この先の砦は我傭兵団の領!!
 お前達のような不気味な集団の、訪問を受けるいわれは無い!!!」

そう、馬上の男が私達を睨みつけるように叫ぶが、
要件も何も、既に決まっている。

「私達はさるお方に仕えるもの。
 そのお方が、貴殿達の長により、涙を流せぬほどの悲しみを抱かれた。
 ゆえに、私達は今よりこの先の砦に進軍し進撃し蹂躙し殲滅する。
 ほら、そこをどけ危ないぞ。」

そう声をかけてやるが、別に相手を気遣う気は無い。
既に殲滅するといった相手を心配してやるほど、私は甘くない。
未だに無手の私を、馬上の男は警戒しながら剣を抜く。
しかし、そんなものは意味がない。

「下がれよ、バカ。」

その声と共に、私の剣が空より目の前の男と馬を真っ二つにしながら橋に突き刺さる。
それを、男と馬の血溜りの中からずるりと引き抜く。
自身の愛剣名前は顎、これは私の身長よりもなお長く、剣と言うには歪で刀身の部分には無数の返しがついている。
しかし、その剣をソードブレーカーと言うには余りにも返しが小さい。
ならば、この返しは一体何のためについているのか。
ツバの付近にある紐を勢いよく引きと、白煙と共にドゥルルル・・・・!!!!
と、まるで野獣が威嚇しているかのような音が響きわたり、無数の返しが高速回転しだす!!

「さぁ!!
 おとなしく殲滅されてくれよ!!!」

そう声を上げながら、背後の姉妹達と共に橋を奪うために走り出す。


「激突したようですわね、メイド長様。」

そう私に声をかけるのは、魔法銃を構えるソニアさん。
援護を行うために木の上に陣取るのは、他20名の姉妹達。
初弾は寸分違わず砦の見張り台に着弾し、着弾地点を破壊しています。

「ソニアさん、援護地点を前へ。
 橋の奪取は速攻が命です、砦の入り口及び弓兵に弾を食わせなさい。」

「仰せのままに、メイド長様。
 みんな、行くわよ!!」

そう声を上げ、ソニアさんが姉妹達を連れて木の上を飛んで移動していきます。
その姿を見送りながら、下での待機組みであるポーランさんとステラさんに、魔法球ごと本陣を前に移動するよう指示を出し、
私も最後尾を着いていきますが、ふっと、視界の端、湖の上に浮ぶ小さな1隻の船。
相手の水軍・・・?
どちらにしろ余り良いものではないようです。
そう思いながら、自身も魔法銃を抜き、舟に向かい狙撃しますが、

(直撃前にかき消された!!)

明らかに直撃するコースの弾は、しかし、舟に直撃する事無くけされました。
アレは間違いなく、魔法を知るもの・・・!!

「全軍、突撃!!
 ィ・アリスさん、アニエスさん、1歩も引かずに城内まで攻め入りなさい!!
 ソニアさん、橋の奪取を最優先として砲撃を許可します!!
 ポーランさんステラさん、私は今から遊撃に出ます!!」


ーside砦ー


「アーチェさん、戦況は分が悪いです。
 あの黒衣のメイド共、切っても殴っても顔色1つ変えやしねぇ!!
 それどころか、血のひとつもながしやしねぇ!!」

そう言って駆け込んできたのは伝令の男。
ジュアが言ったように、娘は攻めて来た。
いや、正確には娘達が、だが。

「解った、今から俺も出る。
 跳ね橋を上げ、篭城できそうなら篭城しろ。」

そう言って、伝令の男を下げ砦の入り口に向かい歩き出す。

「シーナ!!ジュア!!」

「なに、アーチェ?」

そう言って顔を出したのはシーナ。
最近は、まともになったジュアの方が反応がよかったが、今は姿が見えない。

「娘達が攻めて来た。」

そう言うと、シーナは目を爛々と輝かせながら、

「そっか、娘さ・・・、ん?
 娘さんじゃ無くて、娘達なの?
 そうか、大所帯で着てくれたんだぁ・・・。」

そう言いながら、淡い笑みをうかべる。
・・・、ジュアの言葉を信用したわけじゃない。
だが、シーナがだいぶヤバイと言うのは今の顔を見れば十分解る。
それなら、せめて弟のこいつには安静にしていて欲しい。

「お前の目標はあの娘であって、今着ている娘達じゃない。
 ・・・、上にいろや。」

そう言うと、シーナは何時もならぶーぶー言うはずなのに、珍しく聞き分けがよく、

「上じゃなくてここで待つよ。
 ジュアも森に行くって言って暇だしね。」

そう言って、近くのイスに座る。
しかし、ジュアのヤツが森に・・・?
アイツが先手を打って森にいったって言うんならいいが、アイツはそんなたまか・・・。
いや、今はそれよりも向かってくる娘達か・・・。
そう思いながら、自身の両肩に掛けている双剣を抜く。

「ジュアの言う事にゃぁ、娘がいりゃあシーナは救える。
 その娘が来ているのかは知らねーが、今来ている娘達を根こそぎ黙らせれば出てくるか。」

そう自身に激を飛ばして跳ね橋に出る。
しかし、どうやら俺たちはそうとう分が悪いらしい。
頭上からは流れ星のような光が、砦にいる弓兵や、或いは橋にいる傭兵どもに直撃し、
その傭兵どもの血が舞い上がって、赤い霧の様になっている。

そして、その赤い霧の中からドゥルルルル・・・・と言う野獣のような声と、共に見える白い髪・・・!!
俺とシーナが殺したはずの!!!
あの見間違えるわけの無い白い髪の!!!

「あの娘が先陣を切るか!!!」

そう思い、血霧めがけて突貫する。
しかし、そんな中からまた1人やられた声がする。

「ぐぎゃ!!」

その声と共に眼前の男が削れて裂ける。
顎、これはその名の通り、肉を裂き喰い千切る様に人を咀嚼する。

「どうした!!
 藁束が突っ立てるんじゃないんだ、受けて見せろよ。」

そう、先陣を切りながら敵を刻む。
ある敵は剣で受けようとしたが、その剣ごと削り飛ばし、
ある敵は楯を構えたが、その楯ごと噛み砕いた。
辺りにあるのは血の赤と臓物の朱。
だが、ふと空を見上げれば、そこには私の妹が私の背を護るために放つ流星群。

「あぁ、どうせならお茶を飲みながらこれが見たかった。」

「戦場の百合の様だね、ィ・アリス。」

そう声を掛けてくるのは、私の横を進むアニエス。
そんなアニエスも、所々返り血を浴び赤黒くなっている。
そしてまた、迫り来る敵をなぎ倒し、とうとう跳ね橋の鎖の位置についた。
これならば、ソニアの砲撃も届くだろう。

(ソニア、砲撃を頼む。)

(お任せあれ。)

その念話と共に左の鎖が切れる。
この分なら、城内侵入まで早々時間は食わない!?

「危ないアニエス!!」

念話を送るために一瞬私が立ち止まった。
そして、その一瞬で私の横をアニエスがすり抜けた。
そのすり抜けた先にいたのは、白い鎧を着て両手に剣を持った敵。
その敵が大きく振りかぶった剣を、落雷のような速度で振りぬき、辺りに血が舞い上がり視界をなくす。

しかし、それでも、そうそれでも私達の中で、一番速度が速い・・・・・・・
アニエスがやられるはずは無い。
なにせ、今も彼女は私の横にいる。
だが、そんな彼女の服の一部は多少なりとも破れている。

「中々に早い。」

そうアニエスの呟きをかき消すかのように、

「見つけたぞ、白髪の娘!!!」

そう声を荒げながら、白鎧は私に向かってきた。


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