ブリーフィングだな第62話
はぁ、戦終わりには魔物が潜む。
幽鬼に戦鬼、屍喰鬼に殺人狂・・・・。
昔、ウチのじい様が言ってたっけか、曰く、
『戦が人を鬼にするなら、人は本から鬼になるべくして生まれる』と。
ウチの親父も爺さんも戦しか能がない、そして俺もそれしか能がねぇ。
そんな能無しの俺が見てるからか解らないが、目の前の女中は人の匂いがしない。
まぁ、代わりといっちゃあなんだが、この女中からは砦のイカレタトップ達の気配が伝わってくる。
・・・、面倒くせぇ。
が、まぁ、フランス行きの駄賃しか貰ってねぇ俺達にはもうこれ以上関係無い事か。
「で、お前さんは何が知りたい?
場所なら、この町を出て西に歩いて行きゃぁ、女の足でも2日・・・、
いや、1日半ありゃあつく。」
そう俺が話す間、テーブルに肘を着いて手を組み静かに話を聞いていた女中がおももろに口を開き、
「砦のある場所の地形、及び傭兵の数・・・。
最後に、イカレタ俗物の数はわかりますか?」
そう、平坦な中に凄みの篭った声で俺とヘンリーを見てきやがる。
「戦でも始めそうな物言いだな、女中さん
流石にバケットの剣と、フライパンの楯じゃ人はヤれねぇぜ。」
そう、ヘンリーが茶化した風に女中に声をかけるが、
さて、こいつは大物なのか、それとも旅のパートナーを見誤ったか。
まぁ、フランスまでの旅なら、今の所一度背を預けたコイツ以外候補はねぇが、
もちっと空気読めねぇかねぇ~。
「夕餉に毒を盛られ、金で売られるのはトップの宿命でしょう?
無論、あなた方は裏切り者ではなく、賢いギースですが。」
そう、目の前の女中は笑っていないほの暗い眼差しで、
言葉のように、俺達に毒を盛ってきやがる。
そして、流石にヘンリーもこの毒は効いたのか、苦い顔をしながら、
テーブルの上の炒った豆を、乱暴に口の放り込みビールを流し込んで、手の甲で口を拭い黙り込む。
しかし、腸は煮えくり返ってるんだろうさ、片方しかない目で女中を睨んでやがる。
各言う俺も、今の話は胸糞が悪いが、金は貰っちまったしな。
「ヘンリーよ、毒でもバケットの剣でも、女中の好きにさせりゃあいいさ。
で、地形に数ね。」
そう言うと、女中は目でうなずき返してくる。
はぁ、俺たちとは口も利きたくないってか、まぁ面倒事はごめんだ。
口を開かないならそれに越した事はねぇ。
「俺達の居た砦は、四方を小高い丘に囲まれた盆地の中にある。
そして、砦はその盆地の中央の湖の上、深さは砦に向かって深く、泳いでわたるにゃちと距離がある。
行き来は橋を使ってたな、馬で走っても大丈夫な広い橋を。
人数は・・・、わからん。ただ、砦はだだっ広い、言えるのはそれぐらいだ。」
そう言うと、静かに話を聞いていた女中が口を開き、
「非常用の通路は無いのですか?」
そう聞いて来るが、さてどうだったかねぇ。
別のあの中を歩き回った覚えも無けりゃあ、湖を泳いだ覚えも無い。
そう思い、横のヘンリーに顎をしゃくってみると、ヘンリーはぶすっとした顔で、
「ガキでもないんだ、探検なんかやらねーよ。」
そう言葉を返してくる。
まぁ、こいつもし知らねぇんじゃしかたない。
「だ、そうだ。
暇なら水遊びがてら泳いでみな。」
そう言うと、女中は席を立ちながら、
「いえ、結構です。
後は自身の目で見れば解ります。」
そう言って、背を向けて歩いていく女中を見送りながらヘンリーが、
「胸糞の悪い女中だ。
砦に行って取り殺されればいい。」
そうヘンリーが言うが、さてはて、どうなるかは知らねーし、
どうなっても俺達の範疇外、ただまぁ、あの女中の背を見ていると、
「戦が終わったのに、世界は暗い。
いや、戦中は逆に火が絶える事が無い分明るかったが、
今はその火も無いし、死者を送り出す送り火も無い。
だからだろうさ、行き場の無い幽鬼共が自分達の送り火を焚こうと歩き回る。」
そう言いながら、コップに残った酒を飲みほす。
すると、ヘンリーの方も酒を飲み干し、
「地獄は満員御礼で、折角忘れてもらえた幽鬼共も行くあてがないのさ、詩人の旦那。
さて、俺達もフランスに行こうじゃないか、これ以上いても暗がりが迫ってくるだけだ。」
そう言って、ヘンリーが行きの駄賃とばかりに、残った豆を口に流し込もうとするのを、
一掴み奪い取って口の放り込み、ガリガリと噛み砕いて飲み込み、
「あぁ、行く準備をするか。
日向を歩み、黄金の光を求めていざ行かんフランスへ。」
そう言いながら、席を立つ。
あっと、そういえば忘れる所だった。
「ほらよ、マスター駄賃だ。」
そう言って、マスターに金貨を指で弾いて渡しながら俺達は店を出た。
ーsideロベルター
店を出れば日は僅かに西に傾き、時刻は2時ぐらいといった所。
人の足で歩いて約2日、何もない状態なら半日もかからないのでしょうが、
今の状態を考えると・・・、
「少々厳しいですね。」
そう思いながら自身の腕を見れば、多少動かすのに不便を感じます。
しかし、それはもとより承諾の上の事。
ですが、もどかしいと思うのは仕方の無いことです。
そう思いながら町を出て、西を目指しカバンを片手に小走りで進みます。
そして、日が暮れ出した頃にとある場所に着きました。
辺りには咲き乱れる花があり、近くには川があるのか、水のせせらぎを感じ、
夕日のシルエットに見えるのは、ライラックでしょうか?
そんな美しい場所ですが、
「多分・・・、ここですね。
お嬢様とエマさんが訪れたであろう場所は・・・。」
その美しい花畑の一部には新しく土が抉れた場所があり、踏み荒らされた花々があります。
そして、その抉れた場所に近付き土をなでると、ほのかに感じるお嬢様の慣れ親しんだ魔力・・・。
これで、ここで事が起きたという核心と共に、事を起こした物達への怒りが浮ぶ。
しかし、1つ問題が起こる。
「片手は完全にダメですか、1度戻らないと。」
土を掴もうとした手の指は、私の意思に反して土を握る事はできず、
明け方から今まで動いていた所存か、それともお嬢様から離れているための枷か、
体の動かない場所が多くなったように感じます。
考えてみれば、時間制限もついていたのですから必然ですが、思ったよりも動いてはくれましたね。
そう思いながら、木の影にカバンを置いて中から魔法球を取り出し、辺りに見つからないように隠してから中に入ります。
魔法球の中は、基本的に何時も緩やかに時が流れ、中の姉妹達も早々慌しく動き回っていませんが、
今回は別のようで、様々な姉妹たちが歩き回りながら戦の準備をしています。
そんな光景を横目で見ながら、私は一直線にポーランさんに改造してもらったラボに向かいましたが、
ここもまた、姉妹達がごった返しています。
「改造待ちですか?」
そう近くの姉妹に尋ねると、
「ハイ、メイド長。
戦の場は決まり、時は開戦まじか。
私達は今、今だ見知らぬ敵を夢想し睨み合っています。」
そう答えた姉妹に『そうですか。』と声をかけ、他の姉妹たちに了解を得てラボの中に入ると、
中にはメイド服の上に白衣を着て背を向けるポーランさんと、それのサポートをするステラさんと、意外な事にジリアンさんがいました。
「ポーランさん宜しいですか?」
そうポーランさんに声をかけると、ポーランさんはこちらを振り向きながら、
口に銜えていたペンを手に持ち、
「いいよ、そろそろ限界が来ちゃった?」
そう、私が現状を言うより早く、私の言いたい事を言い当ててきます。
まぁ、今の私の体を改造したのがポーランさんなのですから、当然なのでしょうけど。
「はい、中では何時も通り動きますが、外では全体的に動かない所が出てきます。
どれくらいで戻せますか?」
そう聞くと、ポーランさんはステラさんとジリアンさんにそれぞれ、
「ジリアンちゃんは、アニエスちゃんの所で防具の準備なんかを手伝ってき。
ステラちゃんはィ・アリスちゃんにアレを使うのは無理って事と、ソニアちゃんのはいけるって言って来て。
あぁ、後この書類も一緒にお願い。」
そう指示を出して2人に書類を渡しラボから追いし、私にベッドに服を脱いで座るように促し、
ごちゃごちゃとした機器類の準備をしながら、
「外だと概ね半日?」
そう聞いてきたので、朝から今までの行動を報告すると、
ポーランさんは渋い顔をしながら、
「コップ砕いて男脅して、小走りで走って半日、
戦闘状況となると、もう少し稼動時間が縮むね・・・。」
「はい、時間延長が出来れば嬉しいですが、可能ですか?」
そう聞くと、ポーランさんは首を左右に振りながら、私の体を触り、
「無理だよ。
私がやれたのはあくまで魔法銃の弾、常時魔力流入式弾頭の理論を使ったものだもん。
それに、これは元々はお嬢様が研究されていた物で、未完成もいいところ。」
そう言いながら、機器を使い私の体のあちこちから、何かの破片を取り出しながら、
「私達はあくまで、お嬢様あっての私達であって、お嬢様以外には仕える気が無いの。
だから、本当はこんな術式使いたくも無いの。」
そう口で言いながらも、私にこの術式を施してくれたと言う事は、
ポーランさんも、相当に今回の事は頭にきていたのでしょう。
そんなポーランさんに、頭の中でお礼を言いながら、
「そう言えばポーランさん、私達は泳げますか?」
そう、あの酒場で男に砦の事を聞いた時、湖と言う言葉が出てきたので聞いてみましたが、
ポーランさんは私の背中で溜息をつきながら、
「あのね、ロベルタちゃん、鉄って沈むの
それ解ってるよね、解ってて聞いてるんだよね、解った上でそんな事を聞いてるんだよね?
え、もしかして沈みたいの?海底散歩とかしたいの?それとも、溺れたいの?」
そう、なんだか背筋が寒くなるように、言葉を重ねて返してきます。
ま、まぁ、私も自分の体の材料は知っていますし、それと同様な姉妹達の体も知っています。
「わ、解っています。
ただ、今回の戦場が水上になる可能性があるので・・・。」
そう言うと、背後からガンと言う音がするので見てみると、私の背で額を打ったポーランさんの姿。
そして、打った額をさすりながら、
「泳ぐのは無理だね、舟も・・・、厳しいね、少なくとも私達は重いから。」
そう言われると、なんだか傷つきますが事実は事実ですし・・・。
しかし、何かを言おうとして口を開こうとした矢先に、ラボのドアがガンと大きな音を立てて開かれ、
反射的にかけられていた布で胸を隠すと、そんな事お構い無しにズカズカと歩きながら、
「ポーラン、なんで私の兵装が使えず、ソニアのは許可する?
・・・、久々の戦なんだ、使わせろ。」
「ィ・アリスお姉さま~、今は入るなって札が出てますの~。」
そう言って、ソニアさんを引きずりながら部屋に入ってくるィ・アリスさん。
そして、そんな2人を無言で眺めるステラさん。
そんなィ・アリスさんにポーランさんはニコニコしながら、
「燃費が悪くて魔力を喰い過ぎるので、ィ・アリスちゃんのは使えないよ?」
そう悪びれもせずに答えるポーランさんに、顔を顰めながら、
「切り込みと拠点制圧が私の役目なんだ、使わせろ。」
そう言うィ・アリスさんを尻目に腰に手を当てて溜息をついたソニアさんが、
「お姉さま、ここに来る前にアレを使うと、スカッとするから使いたいって言ってませんでしたっけ?」
そうジト目でみるソニアさんを、ィ・アリスさんは歯牙にもかけず、
「するよ、スカッと。
ついでに仕事が速く済む。」
そんな言い合いをしている2人を尻目に、ステラさんはポーランさんの前に立ち、
「お姉さま、他の姉妹が待っています。」
「ん、もうすぐロベルタちゃんが終わるからまって。」
そう言葉をステラさんに言葉を返す間にもまた、
「ポーラン、ラボ集合って書類をジリアンから貰ったけど、ここで会議かい?」
そう言って姿を現すアニエスさんと、そのアニエスさんの3歩後ろを歩くと言った感じのジリアンさん。
しかし、会議とアニエスさんが言う事は、
「ここで、今段階の状況説明をしろと言う事ですかポーランさん。」
そう言うと、ポーランさんはニコニコしながら、
「当然してくれるよね、メイド長殿?
それと、整備は終わったよ。」
はぁ、なんだかハメられた感じがしますね。
しかし、どの道ブリーフィングは必要です、最も現地でしたかったというのが本音ですが。
ですが、そのまえに、
「服を着ます、1度出てください。
着たら呼びますから。」
そう言って全員を追い出し、服を調えてから再度ィ・アリスさん、ソニアさん、
ポーランさん、ステラさん、アニエスさん、そして、ポーランさんからの申し出でジリアンさんを中に入れ、
他の姉妹達には念話をフルオープンにして、今ある情報を流します。
そして、一通りの情報を流した後、静かにィ・アリスさんが口を開き、
「つまりは、外時間の明日の夕暮れには開戦予定か。
・・・、しかし、地形的不利はぬぐえないな。」
「私達は見た目以上にウェイトがありますからね、お姉さま。」
それに続くようにソニアさんが口を開き、その言葉を聴いたアニエスさんが苦笑しながら、
「それに、着ている服に武器が加算されればなおの事。
しかし、流石に人も鎧を着ては泳げないから、一概には不利じゃない。」
「それに、私達が溺れない事を考えれば再出撃はできます。」
そう、ジリアンさんが続きます。
そんな姿を見ていたポーランさんが、首をすくめながら、
「戦闘指揮はロベルタちゃんが取ってくれるし、問題は戦力だね。」
「少なくとも、大将首は個人では無理かと。」
そう、ステラさんが言葉だすと、今まで念話で喋っていた姉妹達も、水を打ったように静まり返ります。
しかし、それは当然でしょう。
お嬢様が、どのような状況で膝をついたのかは解りません。
ですが、それをできる事のできる者がいる、これが目下の問題であり、ネックです。
しかも、砦には傭兵がいる事を考えれば消耗戦は必死。
でも・・・、
「尻込みする事はありません。
時は既に開戦前夜、憎い怨敵の居場所は割れ、準備は万全を期す状況。
ならば、後は何も恐れる事などなく、私達はただただ目の前の敵をただただ屠れば宜しい。
敵が千なら1人頭約十を斬ればいい、万なら百を、億なら千を・・・。
人の身でこれを行えば、偉業をなしえた英雄となるのでしょう。
で・す・が!
私は人ではない!姉妹である貴女方も人ではない!!
ならば、これは偉業ではなく、ただの作業!!!
ただ黙々と前進し、ただ黙々と邪魔者を叩いて潰し黙らせればいい!!!!」
ドン!と台を叩きながら、姉妹達の目を見ながらそう宣言すると、
ポーランさんがニタァっと悪魔の笑みを浮かべながら、パンパンと拍手をしだし、
それに釣られて、他の姉妹達も拍手をしだします。
そして、鳴り止まぬ拍手の中、ポーランさが声を出さずに口を動かしながら、
(中々の演説だね。)
そう言うので、私も言葉を出さず口を動かしながら、
(お嬢様に習いました、激励での士気の上げ方を。)
そう言葉を返した後、私は外に出て今だ見ぬ敵のアジトに向け歩き出しました。
ーside俺ー
暮れる夕日が部屋に差し込み、もうじき静寂の夜が来る。
体は鉛のように重く、未だに流れぬ涙はごろりと目に溜まる。
『泣けるまで伏しているといい。』そうディルムッドは言ったきり姿を見せない。
こんなにも、静かに1人で居るのはいつぶりだろう・・・。
まるで、世界に取り残された後を1人生きているようだ・・・。
否・・・、今俺は確かに1人なのだ。
敗北によって大切な者を失い、木偶の様に床に伏し、解決の糸口の見つからない・・・、
否、解決の糸口と向き合おうとしない俺は未だに床に居る。
流れる時間は有限で、同じ時の流れない世界の原風景は、その風景の中からエマを奪った。
否、奪ったのではないし、奪われたのでもない。
ただ、そうただ俺が死と言うモノと真に向き合わず、身近な者の死を見ようとしなかっただけ。
そう、死を忘れるなと刻まれた始動キーを唱える俺が、その死を忘れようとしただけの笑いにもならない笑い話。
今までの生活は1つの所に留まる事無く、人を背負おうともせず、失う事を恐れ死から逃げていた。
きっと、アノマとの別れも彼の死を先の事と捕らえ、先延ばしにした言葉。
『人生を駆け抜ければ。』そんな言葉を偉そうに投げかけた俺自身が、
きっと、人生と言うものを軽く見ていた罰。
「あぁ、そうか。
きっと俺だった人は、あの火葬場で笑っていたんだ。」
人の死を悼み、その上で涙の別れではなく、笑顔での別れを選んだんだ。
なにせ、彼はその人生を生き抜いて、そして安らかな顔で逝ったのだから。
なら、それならそんな彼の人生の最後は、きっと笑顔で見送るべきなのだろう。
「エヴァンジェリンさん・・・。」
「ノーラ、か・・・。」
私が声をかけると、エヴァさんは確かに反応して顔を上げてくれました。
しかし、その顔は余りにも心配になるような微笑を浮かべたもの。
「笑っているんですか?」
そう聞くと、エヴァさんはその微笑のまま目を閉じ。
「あぁ。」
そう、透明な声で私に返事を返した後、相変わらず微笑を浮かべたままの顔を私に向け、
とても静かな声で一言一言を噛み締めるように、
「エマが逝ったよ・・・。
私の腕の中で・・・。
安らかとは言えない別れだった・・・。
言葉を交わす事もできない、慌しい別れだった。」
そう、言葉を話すたびに目は潤んでいるけど、決して涙は流れない。
そんな姿を見ている私の方が悲しくて、いつの間にか渡しの頬には涙が伝っていました。
そして、そんな私を見たエヴァさんは私を引き寄せ、頭を胸に抱きながら、
「泣く事なんで何処にも無いんだきっと・・・。
そう、きっと私は泣いちゃいけないんだ。」
そう静かに言葉を紡ぎ、泣き止むまで私を胸に抱いていてくれました。
そんな中、私の中ではどうしてエヴァさんが泣いてはいけないのかと言うことを考え、更にとめどなく涙が溢れ、
そして、辺りが暗くなり、空にほんの少しだけ欠けた月が昇った頃、私はようやく泣き止む事が出来、
それに気付いたエヴァさんは頭を放し、私の目を見つめながら、
「明日・・・、迎えに行くよ。
私の家族と・・・、大切だった人の人生を。
そして、パーティーを開こう、盛大で華やかで笑いのたえないそんな・・・、
そんなパーティーを。」
そう言いながら、エヴァさんは微笑んでいます。
そして、そんなエヴァさんを見ていると、ふと思ったんです。
(あぁ、そうか、この人はきっと誰よりも寂しがりで、
そして、誰よりも1人が居る事が怖くて、そして最後に、誰よりも人を受け止めようとしているんだ。)
だから、きっとこの人の周りには、楽しい事も悲しい事も含めた色々起こるんだろう。
自身を人では無いと言うこの人は、きっと、人で無い人でしか見る事の無い人を見ているのだろうと、
そう思いながら、エヴァさんを見て微笑み、
「解りました、明日ライアさんに発注をかけます。」
そう言って、私は今晩徹夜をすることを心に決めた。