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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 到着、出会いと別れだな第52話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:9e0e11ed 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/26 12:10
到着、出会いと別れだな第52話




馬車の荷台の幌の隙間から街道を見れば、多くの馬車や馬、
或いは、徒歩による旅人に踏み固められたのであろう道と、その道の脇には点々と散らばる馬糞が見える。
ついでに言えば、俺たちと同じ方向に向かう馬車の荷台をいっぱいにした人々と、
反対側には空の荷馬車に乗る商人達が見える。

「月日ははくたいのかかくにして、行きかう年もまた旅人なり。
 船の上に生涯を浮べ・・・、いや、馬車の上にリンゴを載せての方があうか?」

そう俺が頭に残っている誰かの読んだ詩・・・、でいいのだろうか?
を、魔法薬を吸いチマチマと針仕事をしながら、鼻歌のように詩う。
ディルムッドはノーラと歩くことが多かったからだろう、ノーラの飼い犬のエネクと仲良くなり、
今もそのエネクと共に歩き、ロベルタの方は、魔法球の中でする事があると言って中に引っ込んでいる。
前の方では、ロレンスとホロが共に座っているが、ロレンスは時折難しい顔をするようになった。

「エヴァさん、一体何を口ずさんでいるのですか?」

そう聞いてきたのは、同じく針仕事をしているノーラ。
ただ、流石に2ヶ月近くも毎日、来る日来る日も針仕事をしていれば上達するというもの。
最初の頃は、返し縫の間隔がバラバラだったりしていたが、今では一つ一つの仕事を丁寧にこなし、
最近は俺の体や、ほかに馬車に乗っている面子の体を使って採寸をしてみたり、
布の切れ端を見て、服の配色なんかについても学んでいる。

「旅人の詩さ。元は東の国の詩だが、さてタイトルはなんだったか。
 ついでに言えば、原文もすべて覚えているわけでもないしな。」

そう言うと、ノーラは俺の方を不思議そうに見ながら、

「エヴァさんが覚えていないで・・・、ですか?
 なんだか珍しいですね、エヴァさんは何時も断定的だったり、
 解っている事だけを、口に出しているものだと思っていました。」

そう言ってくるが、はて俺はそうも断定したような口調で話していただろうか?
ん~、そうノーラが感じたという事は、少なくともノーラにはそう取れたということなのだが、

「まぁ、ちゃんと考えて、そうだと思うことを自信を持って発言すれば、多分そうなるんだろう。
 言っておくが、私は自信家ではなく臆病者の部類に入るよ。」

そう言うと、ノーラはポカンとした顔をして手を止めて、

「エヴァさんが臆病者・・・、ですか?
 色々作れて、いろいろ知っているエヴァさんがですか?」

そう言いながら、俺の顔を不思議そうに見てくる。

「あぁ、多くを知ると言うことは、それだけ無茶や無謀を知ると言うことに等しい。
 そして、そういう分別がついていけば、出来ない事もまたわかってくる。」

そう言うと、ノーラは頭を捻りながら、

「エヴァさんが出来ない事ですか?
 なんだか想像できないですね、その出来ない事が。」

そうは言うが、できない事は星の数ほどある。
確かに、ノーラやロレンスから見れば、魔法はそれこそ何でもできる不思議な力だろうが、
その不思議な力も、中身の理論や意味合いを調べていけば、無理そうな事はわかる。
まぁ、それでもただ言えるのは『絶対に』と言う言葉だけは、どんな事にも頭につかないことだろう。
少なくとも、今を生きる人に空を飛べるかと聞けば、絶対に無理だと答えるが、
未来になれば、飛行機で飛べば言いと言うだろう。

「まぁ、絶対ではないから、ホロに言った様にそのうちできるようになるだろう。
 それは、ノーラ、お前も一緒だよ。最初は下手だった針仕事も、今では十分に上達した。」

そう言うと、ノーラは嬉しそうにはにかみながら『はい。』と返してきて、
前にいるロレンスから、今日はここで休むと言われ、幌のかぶった荷台から顔を出せば、
そこには黄昏時の目覚めるようなオレンジ色の太陽と、夜を知らせる濃紺の空。
そんな空を見れば、なんだか無心で泣き出しそうなほど物悲しくなり、同時に、
夜の訪れに何処までも心踊り、ドキドキする。

この2つの感情が、心に同居していいものなのかは知らないが、
それでも今の時点で同居しているのだから、きっと同居していいものなのだろう。
そう思いながら、馬車の止まっている前に枯れ木を拾ってきて焚き火の準備をする。
幸いといっていいのか、今はちょうど秋と冬の中間、枯れ木や枯葉を集めるのも、
街道の両脇にある林から拾ってくればいいし、火種はなくとも魔法を使えば火をつけることは出来る。

そして、夕食は旅の途中で買った野菜と前にディルムッドが取った兎を干し肉にした物を入れ、
塩とコショウと魔法世界にあった調味料で、コンソメスープ風に仕上げ、
後は天寿を全うされた羊の生ハムなんかと、西洋版乾パンの紐パンを添えれば、簡単な夕食の出来上がり。
ただ、不満があるとすれば、新世界に和風の調味料や材料が少ないせいで、
醤油や味噌、梅干なんかが無いのが痛いといえば痛い。
まぁ、それはいずれ日本に行けば間に合う話しか。

そう思いながら食事をして、水の代わりに酒を飲む。
ちなみに、海外の場合水より酒の方が長旅には保存が利くうえ、
アルコール消毒と言う言葉があるぐらいに、アルコールには殺菌作用もある。
それに、これから冬が来ると言う事は、それだけ気温が下がり行商や、歩いての旅をしていると、
ライターなんて便利な物がない関係上、どうしても火が手に入りにくい。
そんな時にも、アルコール度数の強い酒は凍らないので体を温めるのに重宝する。
ついでに言えば、現代の山岳救助犬なんかにも、首に酒の入った樽をつけた者がいるぐらいだ。

まぁ、今に限って言えば、単に酔いたい夜もある。
と、言う事でウィスキーをコップに注ぎ口に運ぶ。
口に入ったウィスキーは、口の中に痺れる様な暖かさを伝え、
それを一度嚥下すれば、今、その飲み込んだ酒が、
食道のどのあたりを通っているかと言う事を、独特の熱として伝え、
最後にふわりと鼻筋を抜ける香りは甘く、何処かホロの血に似た味と香りがする。
元材料が麦だから、そう感じるのだろうか?

そんな事を思いながら、ウィスキーのコップ片手に煙を吸いつつあたりを見れば、
酔って寝てしまったノーラに、それに寄り添い眠るホロ。
ディルムッドの方は、森の中で咸卦法の練習をするといって森に消えた。
まぁ、俺の方も魔法球を有効活用して魔法球の中で魔法や読書、合気道の型や徒手格闘を練習している。
ちなみに、その時の相手はディルムッドや、ロベルタ&中のメイド達にお願いしているが、勝率は五分でほぼ横ばい。
言ってしまえば、オスティアで戦った神には神の強さがあるが、ディルムッドやロベルタ達には積み上げられた経験と、
それに裏打ちされた技量があるので、下手をするとアレより質が悪い。

そんな事を考えながら横を見れば、今の俺とペアルックの街娘姿のロベルタ。
ただ1つ違うのは、髪をリボンではなく白い布ですっぽりと縛っている事だろう。
そんな彼女は、皆で囲んだ焚き火の番をし、最後に起きているロレンスは燃え盛る火をただじっと眺めている。
とても静かな夜で、秋なら五月蝿いぐらいに聞こえそうな虫の声も、耳障りがいい程度に聞こえ、
足を投げ出しながら空を見上げれば、現代ほど空気が汚れていないおかげで見える満天の星空。
俗に、『零れ落ちてきそう。』や『星が手に取れそう。』なんていう表現があるが、まさにそれが当てはまるに相応しい。
そんな事を思いながら、このここちいい空気をむさぼっていると、不意にロレンスが口を開いた。

「エヴァさん・・・、1つ聞いてもよろしいですか?」

「何だ?」

そう、お嬢様はロレンスさんに答えました。
ですが、その体から出る雰囲気は気だるげで、
『できれば今はこのままそっとしておいてくれ。』と、そう言いたげです。

「魔法と言うものは誰でも、例えば私でも扱えるものなのでしょうか?」

そうロレンスさんに聞かれたお嬢様は、口で輪っか状の煙を吐き出し、
その煙が空に霧散するのを見送りながら、

「使えるよ、けど教えないけど。」

そう、お嬢様が言うのを聞いて、ロレンスさんは渋い顔を作り、
顔を落として、燃え盛る火を眺めながら、

「どうしてです?
 そんな便利なものがあって、私でも扱えると言うのに・・・、
 どうして教えていただけないのです?」

私は、静かにお嬢様の横で火の番をしながら聞き耳を立てていますが、
そのロレンスさんの声からは苦悩・・・、とでも言いましょうか?
思い悩む事に怖さを感じた人のそれが伺えます。

「知ってどうする?
 この才は確かに、旅にも商売にも役には立つが、この才の孕む危険性は計り知れない。
 私の話を聞いただろ、人を殺し、神を殺し、屍と血の道を歩む。
 その危険は、お前には必要ないだろ?」

お嬢様がそう言われ、訪れるのは一時の静寂。
パチリパチリと番をする火は燃え盛り、口を閉ざしたロレンスさんは、
目だけで私の事を見てきますが、私にはどうすることも出来ません。
それを知らせるために、軽く首を横に振ればロレンスさんは何処か落胆したように、

「それなら、何故エヴァさんは私にも魔法が使える事を教えたのです?
 その事実を知らなければ、私も魔法を求めませんでしたし、
 今のエヴァさんには、私に魔法を教えた責任があります。」

そうロレンスさんが言うと、お嬢様は面白いと言うように、『ククク・・・。』と、
喉を鳴らして笑い、近くに置いてあったコップの中身をあおり、

「私は少なくとも嘘つきではない。
 だから、魔法が使える事をお前に教えた。
 だが、その教えた先の責任を持つ事が私には出来ない。
 私も色々考えたよ、魔法を使えないと切って捨てる事も、魔法を教えると言う道も、このままヨイツまで旅を続けると言う道も。
 でも、それは私には出来ない。なにせ、私には私の目的があり私と私の連れている者の旅があるからな。
 それに、今ならまだお前は引き返せるんだよ。それが、例えホロと旅をしていようとも、今のお前はまだ人の枠にいる。
 だが、一度魔法を知れば、お前は完全のその枠から外れる。」

「ですが・・・、それでも扱う人はいるのでしょう?

そう食い下がるロレンスさんに、お嬢様はその空色の瞳をスッと細めながら、

「問おうクラフト・ロレンス。
 汝は何ぞや、人か商人か或いは探求者か?
 探求者なら、いずれ敵対する可能性があるな・・・。」

それに対し、ロレンスさんは両手を上げ、

「私は、人で商人で探求者ではありません。
 商人は人の間を魚のように泳ぎながら、天秤に商品と金貨を均等に載せます。
 それに、魔法を知って命の危険があるなら割に合わないでしょう、
 なにせ、ヨイツにいく前に無作為に襲われては困る。」

そう、ロレンスさんは噛み締めるように『うん、困る。』といって、ホロさんの寝顔を眺め、
私の顔を見ながら、申し訳なさそうに、

「ロベルタさんもすみません、変な質問をしてしまって。」

そう言いながら、ペコリと頭を下げられました。

「いえ、人は未知なるモノに最初に恐怖を覚え、次に好奇心をいだくものです。
 それならば、ロレンスさんのその反応も正しいものでしょう。
 それに、お嬢様の持つ力は人の枠外に値するもの、
 それを見せられれば、そうなっても仕方ありません。」

そう言うと、ロレンスさんはスッと目を閉じて、

「確かに、あの別荘は凄かったですね。
 まるで、貴族か王族になった気分でしたよ。」

そう言いながら、『先に休みます。』そう言って、
ホロさんとノーラさんに布を掛け、自身もその布にもぐりこみ、
残ったのは私とお嬢様と、未だに森から帰らないチャチャゼロさん。
そして、ロレンスさんの寝息が聞こえるまで、お嬢様は煙と酒を気だるそうにあおり、
皆が寝静まったであろう頃にポツリと。

「ロベルタ、私を酷いヤツだと思うか?」

そうお嬢様が聞いてきますが、私にはそれに対する答えを持ち合わせていません。
私は人に似せて造られてはいますが、人ではありません。
なので、人の持つ感情と言うのは理解しかねます。

「お嬢様の判断・・・。」

そう言おうとすれば、お嬢様はスッと横に目を動かし、

「私ではないよ、ロベルタ。
 お前が、ロザリタ・チスネロスどう思うかと問うているんだよ。」

そう言って、顔ごと私の方を向いて目を見てきますが、
私の有する私の中にその答えを有する者はいません。
それに、今ある私とて個を有していない以上、個の意思に対する答えと言うのは中々に見つけられません。
ですが、お嬢様が私を個として扱い名をつけて頂いた以上、私も、私の個を見つけなければならないのでしょう。

「お嬢様は、多分酷い事をロレンスさんにされたのでしょう。
 アレだけのモノを見せられれば、それにそれを扱う事が出来ると聞かされれば、
 多分、それを誰もが求めるでしょう。」

そう私が言うと、お嬢様は下を向いて煙を深く吐き出しながら、

「そうか・・・、まぁ、そうだろうな。
 私も、少しやりすぎた感があるとは思っていたよ。
 私だって、アレだけの物を見せられれば、すべてを捨ててでも欲しいと思う。」

そう疲れたように言いながら、星空を見ていますが、
実は、私の言葉はまだ終わっていません。
これから言うのはきっと、差し出がましい事なのでしょうが、
それでも、やはり口に出さないと解りません。

「ですが、きっとロレンスさんは、そのうちお嬢様に感謝されるでしょう。
 お嬢様がこちらの出身で、元が人だと言うのなら、少なくともこちらの魔法使いは真っ当ではありません。
 そんなもの達がいると予測される中で、中途半端に魔法を身に着けるというのは、自殺行為に等しいでしょう。
 それに、異端狩りも行われていますし。」

そう言うと、お嬢様はふわりと顔に微笑を浮べ、
優しい眼差しを私に向けながら、子供の頭を乱暴になでる父親のように撫でながら、

「そう言ってくれると、なんだか救われる様な気がするよ。」

そう言って、撫でていた手を引っ込めてまた、煙と酒を楽しんでいらっしゃいますが、
その姿は何処か、肩の荷が降りたといった感じでしょうか。
そしてそんな中、ガサリと言う音と共に現れたのは、
こちらに来る前に作った、コートに身を包むチャチャゼロさん。
そして、その姿を見たお嬢様はポイとコップを1つ投げ、

「一杯どうだ?」

そう言いながら、酒を差し出し、
自身のコップと、私の前に在るコップに酒を注ぎます。
その姿を見たチャチャゼロさんは、お嬢様の近くに座りコップを差し出しながら、

「何があったか知らないが、ご相伴には預かろう。」

そう、言ってお嬢様が注いだ酒を一口口に含み、
それを見たお嬢様は何でもないといった感じに口を開き、

「旅の終わりが近い事を憂いていたよ。
 今やイギリスは目と鼻の先、出会いと別れは表裏一体で、いつかは訪れるものだが、
 それまでの時が楽しいものであれば、それを先延ばしにしたいと思うのもまた人の業だよ。」

「君も難儀な性格だ。」

そう、チャチャゼロさんは肩をすくめて見せますが、

「ですが、それがお嬢様なのでしょう?
 今更過ぎる事は言わない方がいいですよ,チャチャゼロさん。」

そう、私が言ったのに対してチャチャゼロさんは『まったくだ。』とかえし、その夜は更けていきました。

ー数日後ー

ゴトゴトと言う音で目を覚ませば、そこは馬車の荷台で足元ではノーラとロベルタが針仕事をしていた。
そして、自身の体に掛けてある物を見れば、それはディルムッドが着ているコートだった。
誰がどうやって荷台に運んだかは気になるが、眠りが何時も深いと言っていいのかなんだかは知らないが、
たまにこういう事があるので、どうにか注意したいのだが、何せ意識が無いのでどうとも注意のしようが無い。

「ん、起きたかエヴァ。
 外を見てみるといい、賑わっている街が遠めにも見えるぞ。」

そう言われて外を見れば、今乗っている馬車の真横を通り過ぎる荷物を満配にした馬車。
そして、更に数時間して町に入れば、街の中は案外と言うか、だいぶ復興が進み、
戦の名残は、時折見かける民家に刺さった矢を手でへし折ったのだろうが、
矢じりその物は抜けなかったのだろう、木の柱の中にさびた鉄が見える。

「エヴァさん達はこれからどうします?
 特に目処が無ければ、このまま商館に向かいますが。」

「ここにもローエン商会の商館があるのか?」

そう聞くと、ロレンスは何処か得意げに、

「戦は商人にとって、天の恵みと等しいぐらいに利益を生みます。
 それが長い戦なら尚更で、食料に武器、薬に薬草といった物まで何でも売れます。
 それに、戦がいくら激しくとも、その激戦区を迂回すれば十分に行商は出来ます。」

そういうロレンスを見ながら思うのは、なんともフットワークが軽いと言う感想だろう。
まぁ、補給無しで戦をするのは難しいし、兵糧攻めは指揮がほぼ絶対に下がると言ってもいい。
ついでに言えば、百年戦争でフランスの英雄は有名だが、イギリスの英雄と言うと名をあまり聞かない。
と、言うのも攻め込んだフランス軍が、そういったものをすべて焼き捨てたりしたからに他ならないのだが、
それと同じように、長い戦をやったイギリス王朝に国民の怒りも爆発していたのかもしれない。

「戦では英雄が必要だが、戦に負ければその英雄は責任を押し付けられる、か。
 どちらにしろ、人を殺さない事には英雄になれないのだから仕方ないだろう。」

「じゃが、それは狼も同じ。
 縄張りを護れぬ雄につく雌はおらぬし、雄が争いに負ければ賢い雌は強い雄にでありんす。」

そんな事を喋っていると、ホロの横に居るロレンスは居心地を悪そうにし、
後ろを見れば、同じようにディルムッドも居心地を悪そうにしている。
そうしている間に、ロレンスの繰る馬車は商館に着き、俺は俺とて、
その商館に付く前に、影からロレンスに渡す金貨を出して荷馬車の荷台に置く。

「やぁ兄弟ロレンス、長旅ご苦労。
 どうだ、売れそうな荷は運んできたか?」

商館に入って、そう声をかけてきたのは、
岩石を刳り抜いたようなごつい顔に、もっさりと口髭を蓄。
腕は下手をすれば、俺の腰周りぐらいあるのではないだろうかと言うぐらい太く、
下手をすれば、イギリスが誇る傭兵部隊の傭兵と言われた方が、なんだか納得できるぐらいだった。

「いや、今回は人を運んだだけ、荷物は無いですよ、ライア。」

そう、言ったロレンスの言葉に大きな歯を剥き出しにして笑みをつくり、
肩をバンバン叩きながら、

「そうか、まぁなんにせよ儲けが出ればいいさ。
 ついでに言えば、誰が嫁なんだ?みんな粒ぞろいの美女じゃねぇか。
 まったく、若いひよっ子だと思えばこんな可憐な娘さんをとっ捕まえて。
 それに、旅で疲れているだろう、休むといい。
 と、その前に自己紹介を当商館の主、ライア・ガリアだ。
 金と女は大好きだから、よろしくなお嬢さん方。」

そう言って、ライアと言われた商館の主は手を差し出し、握手に答えると、
ブンブンと、手が千切れそうなぐらい腕を振ってくる。
そいつは俺達に部屋に泊る様に、好意的に勧めてくる。
そして、バシバシ叩かれたロレンスは痛そうに肩を抑えながら、

「こっちは一緒に旅をしているホロと、そちらはチャチャゼロ夫妻とロベルタさんにノーラ。
 ライア、言っておくが下手な事をすると、痛い目に合うから気をつけた方がいい。」

そう言われたライアは、大げさに手を目に当てて、

「おぉロレンスよ、美しいお嬢さんにそんなこと言っちゃいけねぇ。
 見てみろ、チャチャゼロ婦人の目の覚めるような白い肌と、零れ落ちそうな胸、そのくせして腰はキュッと細い様を。
 ロベルタさんはロベルタさんで、珍しい漆黒の黒髪は艶やかで、同じく、漆黒の瞳は意志が強くて見ていると引きずり込まれそう。
 そして、ノーラさんはノーラさんで、その儚げな姿に胸打たれる。
 こんな人達を見れば、男冥利に尽きて、目の保養は十分だろうよ。」

そう、よくこの粗暴な容姿の男から、これだけの美辞麗句が出ると思うほどの美辞麗句が送られてくる。
まぁ、それはそれで、誉められれば人は悪い気もしない。
そう思い、微笑みながらスカートの裾をつかみ、膝を折りながら礼をする。

「ありがとうございます館長ライア。
 ですが、既婚者にそういう言葉は囁かない方がいいですよ。
 なにせ、私の夫が焼いています。」

そう言うと、ライアの方は今度はゲラゲラと声を上げて人懐っこく笑い、
ディルムッドの方を見ながら、

「なに、旦那も鼻が高いだろうよ。
 これだけの美女のつがいに選ばれたんだ、どっしりと構えなきゃいけねよ。

そう言われたディルムッドも同じよう笑顔を浮かべながら、

「当然、俺は彼女以上の女性を知らないし、
 俺と彼女はいかなる時も共にある。」

そう、真顔でディルムッドがこっぱずかしい台詞を言っているが、
取り敢えず、俺は聞こえないフリをしよう。
そして、それを聞いたライアはやはり、口を広げて笑っている。
そんな感じで自己紹介がすみ、夜までの暇な時間を使い街の様子と、
教会の様子を探ろうとするも、すべてにおいては、捗らないの一言。
まぁ、街が入り組み人が多く、露天商が多いせいで色々と客引きにあった。
そして、疲れながらも近場の酒場に駆け込み、酒と夕飯を頼み、それが届くのを待つ。

「さて、無茶だとは思うが目星は付いたかノーラ?」

そう、パンを口にくわえながら聞けば、
ノーラは振るフルと首を左右に振りながら、

「まだ解らないですエヴァさん。
 色々ありすぎて、何処がどうだか。」

そう、ノーラが言っている間にも、背後から誰かが近寄ってくるのがわかる。
まぁ、酒場なら当然よくあることだが、その足音は、どうも俺に向かい一直線に来る。
そして、ポンと肩を叩かれなんの様だと座ったまま真上を向いた時、ポンと肩を叩いた人の顔が見えて固まる。
しかし、相手はそれを気にしないかのように、淡い微笑を顔に称え、親愛を込めて、

「エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルお嬢様ですね。」

そういわれて、口に挟んでいたパンが零れ落ちる事も気にせず、彼女の名を口にする。
彼女の顔に小皺が浮び、髪にも白いものが混じっている。
だが、それでも彼女は、彼女は間違いなく・・・、

「・・・、エマ。」


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