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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 地味に変わってるな第51話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:122d81a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/24 00:17
地味に変わってるな第51話



「そういえばロレンス、よくこのご時勢にイギリスまで連れて行く事に頷いたな。」

そう、言ったのは旅も半分を過ぎた辺りの、昼食を取るために馬車を止めたとある昼下がり。
ディルムッドは早くも夕食を調達すると、近くの森に狩りに行き、ロベルタとノーラは荷馬車の中で裁縫の練習。
ホロの方は、ディルムッドの狩りに付いて行くから薬をよこせと言って、リンゴとレモンの飴を持ってディルムッドを追走。
もしかすれば、ホロの中の野生が目覚めて大物を取ってきてくれるかもしれない。

しかし、俺がそうロレンスに話を切り出したのも、今が大体1445~7年として、百年戦争の終わりが大体1453年頃か、
もしくは見解の違いで、1475年頃と言う事もあるが、どちらにしろボルドー周辺まで軍は進み、
下手をすれば、もうボルドーで篭城戦をやっているのかもしれない。
ついでに言えば、今の時点では俺の知っている世界地図と、かなりの勢いで国境が違うので、
もしかすれば、俺の言うイギリスと、ロレンスが言うイギリスとでは、位置的に戦禍を免れている事になるのかもしれない。

「このご時勢・・・、ですか?
 確かに、戦続きでしたが、もう終決して半年も経ちます。
 それに、今のあの辺りは町を復興させようとする人々と、それに乗じて儲けようとする商人とで、
 祭りの様に賑わっていると、そうヤコブが言っていましたが・・・、どうしました、エヴァさん?」

・・・、何かロレンスが言っているが、今はそれではない。
百年戦争が終決した・・・・、しかも、6~8年も早く・・・・・?
いや、もしかして、新世界と旧世界の時の流れの違いで、それだけの誤差が出た?
・・・、ダメだ、情報が足りなすぎる。

いくら早く終わったからと言って、何らかの外部的な要因があるのか、
それとも、ほかの・・・、例えば、今だとオスマン帝国辺りか、あそこが攻めてきたかもしれないし、
他にも、魔法使いが暗躍したと言う事も考えられる。
だが、どちらにしろ、今のロレンスの話からすると、一応の安全は確保できていると言うことか。
そう思いながら、不審そうに顔を覗き込んでくるロレンスに向かい、

「いやなに、少々海を渡っている間に戦が終決したと聞いて面食らっただけだ。
 だが、早々事が起こっていないと言うなら、のんびりと旅をしよう。
 後、戦の最終決戦は聞き及んでいるか?」

そう言いながら、飴を1つ口に含み魔法薬を吸う。
どうも、頭を働かせる時は甘い物があった方がいいと言う先入観からか、最近は甘いものをよく好んでいる気がする。
まぁ、それで病気になると言う事はないだろうし、病気になれる可能性もない。
そう思って、ロレンスの方を見ると、ロレンスは火にかけてあった鍋から、
鍋の底に残った最後のスープをお碗に注ぎながら、

「そこまで詳しくは知らないですが、フランス軍がイギリスのボルドーを陥落すると言う所まで攻め入りましたが、
 その次点でイギリス側が休戦を申し入れ、最終的にそのままボルドーを賠償金代わりに明け渡して、
 終戦と言う運びになったらしいです。」

ふむ・・・、賠償金うんぬんは別として、一応筋は通る。
それに、ボルドー陥落も俺の知っている歴史と同じで、このまま未来になれば、
フランス産のボルドーワインを、美味しく飲めることになるだろう。
となると、ただ戦の終決が早まっただけとも考えられるか・・・・?
ん~、まぁ、ロレンスに行けと言ったのは俺だが、それに応と答えたのはロレンス。

しかも、旧世界を常に旅しているロレンスがそう答えたのだから、大丈夫なのだろう。
ただ、今の時点で俺の持っていた時間軸が、本当に正しいのかが怪しくなったのは確かだが、
それでも、元々自身がどんぶり勘定で時間を計算していたので、2年ぐらいの誤差は覚悟していたから、
今の時点からのゼロ時間軸・・・、つまりは、何らかの方法で西暦を知れればどうとでもなるか。

「それに、今だともしかすれば、イギリスの方も収穫祭で賑わっているかもしれませんね。」

そう言って、ロレンスはスープをグィッと飲み話を締めくくった。

「なぁ、今のイギリスでノーラの雇い先を探すのは骨だと思うか?
 一応聞いただけの話なら、早々雇い先を探すのは難しくないと感じたが?」

そう、吸った煙を吐きながら言うと、ロレンスもお碗を口から外しながら、

「タイミング的には悪いですね。
 既に半年経ちます、それだけの期間があれば、商人でなくとも人が行き交う事は出来ますし、
 復興させるにしても、人を雇うにしても、どの道お金がかかります。
 ・・・、世知辛いですが、今だと生きるために体を売り、髪を売り、それで足りないなら、
 見合う代価のない自らの命でさえ、乗せる人は天秤に載せますよ。
 まぁ、私はそれに載せる気はありませんが。」

そう言って、ロレンスは首をすくめて見せる。
さてはて、復興中の町は俺達に一体どういったものを見せてくれるのやら。
悲劇か喜劇か、悲恋か恋慕か、まぁ、戦に行った男を祈りながら待つ女なぞ、今更過ぎるほど今更過ぎて、
今ならむしろ、そういった者が溢れているのかもしれない。

まぁ、別にそれが悪いわけでもなければ、帰ってくればおめでとう、
帰ってこなければ、残念だったとしか声をかける事しかできないし、むしろ、
そう声をかける事すら、他人である俺にははばかられるか。
そんな事を思いながら、煙を肺いっぱい吸い込んでいると、

「チャチャゼロよ、ぬしは何故あそこで槍を振るわぬ!
 あそこであやつの頭を貫けば、わっちらは夕飯に鮮血漂う猪の肉を食らえたでありんす。」

「すまないホロ・・・、だが、猪だけは・・・、猪だけは勘弁してくれ。」

「そうは言うがの、ぬしよ、ぬしの主が・・・、エヴァが猪に襲われたなら、ぬしはどうする?」

そう、背後からホロの食い意地のはった声と、
そのホロに、獲物を逃がした事を怒られているディルムッド。
まぁ、今の話しだと、ホロは猪を狩ろうとしたのだろうが、
誓約により、猪を狩れないディルムッドにとってはなんとも酷な話しだ。
ふむ、助け舟ぐらいは出しておくか・・・。

「チャチャゼロでも勝てない猪が出たら、私は飛んで逃げるよ。
 なにせ、猪は地上しか走れないから、その鋭い牙も空の上までは届かない。」

そう言いながら振り向くと、槍に兎を3匹吊り下げたディルムッドと、
そのディルムッドの横を、頭の後ろで手を組んで歩くホロ。
とりあえず、今晩の夕食は兎と後は魔法球に備蓄してある食糧か。
後は、魔法球で錬金術の材料と言う名目で手入れもせずに、ほとんど自生しているであろう植物やら、
飼っている魚(?)や、食肉(?)を食べれば問題はない・・・、と思う。
まぁ、どちらにしろ、節約できる物は節約した方が得策か。
ついでに、後で暇にしているであろう、中のメイド達に生物の飼育もお願いするか。

「なんだか、エヴァさんはチャチャゼロさんに甘くありませんか?」

そう言いながら、荷台からひょっこりと顔を出すロベルタと、

「恋仲なら、当然なんじゃないですかロベルタさん?」

そう言いながら、ロベルタの横からこれまたひょっこりと顔を出すノーラ。
別にディルムッドのヤツに甘いとは思っていなし、甘い事をした記憶もない。
むしろ、いつも一方的に振り回し、命の危険何のそので突っ走る俺に、よく付いてきてくれると思う事はあるが、
いや、むしろ英霊を半分顎で使い、制止さえ振り切ってフラフラと走っているのだからなんとも。

「別に私はチャチャゼロに甘いとは思わないが?」

そう返すと、荷台にいる2人は2人で顔を見合わせながら、

「やはり、自覚のない甘やかしは愛のなせる業なのでしょうか?
 どう思います、ロベルタさん?」

「どうなのでしょう、ただ言えるのは私がお二人に出合った時には、
 二人とも既に呼び捨てにするような関係でしたし、エヴァさんの傍らには何時もチャチャゼロさんがいます。
 あまつさえ、オスティアでは自身の体が消し飛ぶというのを省みずにチャチャゼロさんを救出。
 ・・・、くちおしやそのポジション・・・。」

そう、荷台ではなんだか黒くなって、荒んだ目をしているロベルタが何か言っているが、
最後の方はなんだか聞こえない。
まぁ、聞いてもろくな事はなさそうなのでかまわないが、
そもそも、チャチャゼロにわざわざ厳しくする必要性はあるのだろうか?
個人的には、そこまで厳しくする必要性その物を感じないのだが。
それに、戦力としても十分だし、状況判断も利く。

「ロレンスはどう思う?
 男の視点から見て、私はチャチャゼロにもっと厳しくするべきだろうか?
 まぁ、何を厳しくすると言うわけでもないが。」

そう、ロレンスに聞くとロレンスが口を開く前にホロが先に口を開き、

「雄は優しくするとすぐに付け上がる、
 わっちは、もっと厳しくするべきだとおもいんす。
 それに、エヴァとこやつは恋仲ではなかろう、群れで言うなら頭と、
 それに連れ添う副官といった所かや、のうぬしよ。」

そう言葉を向けられたディルムッドとロレンスは、お互いに顔を向け合わせながら、
なんとも微妙な顔を作って、

「苦労しているなロレンス。」

そう言いながら、ディルムッドがロレンスの肩をポンと叩き、
叩かれたたロレンスも、

「お互い様・・・。」

そう言って、肩を叩きあう2人の背中からは、哀愁が漂っているように見えるのだがなんとも。
ついでに言えば、今のホロが言ったのがほとんど正解といえば正解で、
しかし、群れも何もそんな大所帯を所有・・・、する予定はあるが、今の所いないのでなんとも。

「まぁ、ホロの言う事は概ね中ってるよ。
 だがまぁ、今の所どうとも言いようがない。
 すべてにおいては"いずれ"と言う言葉がつくよ、恋仲は別だがね。」

そう言いながらホロの方を見ると、ホロは今言った言葉が面白かったのか、
牙を剥き出しにして笑顔を作り、

「いずれ・・・、かや。
 ククク・・・、ぬしの作る群れとは如何なるものか、
 さぞ混沌として、無茶と無謀を投売りしながら驀進するのじゃろうな。」

ん~・・・、なんだかホロからとても失礼な事を言われている気がするが、
否定できる材料がない気がするのだが・・・、

「私はわざわざ、自分から面倒事には足を突っ込まないぞ、ホロ。」

そう言うと、なぜか俺以外の面子が全員顔を見合わせて、
その後揃ったように、

「「「「いや、嘘ですね(でしょ)(だろ)。」」」」

そう言いながら、全員で俺の方を見る。
・・・、なんだか凹むな。
今まで頑張って・・・、まぁ、全力とは言えないが、それでも一応は平穏を目指してきた。
それなのに、あぁ、それなのに・・・・。

「・・・、もういい。
 これから先、私は何もしないし、チャチャゼロに縫い包みのように持ち運ばれて、
 ロベルタや他のメイド達に病人の様に世話をしてもらいながら、永遠のスープと名付けた水を啜って生きる。
 むしろ、その方がここにいる皆の為なんだ・・・。」

そう言いながら、地面に取りとめもない絵を描く。
どうせ、画才ない俺が書く絵なんて、製図版を使わないと何を書いているか解らない。
むしろ、鳥と猫の区別さえつかない絵が出来上がる。
フフフ・・・、楽しいな・・・、あぁ、炭素をハニカム状に・・・。
いや、これは・・・。

「お、おいホロ、エヴァさんは大丈夫なのか?
 なんだか地面に妙な絵を書きながら、壊れたように微笑んでいるが。
 ・・・あ、目が据わった。」

そう言いながら、横に居るホロを見れば、
ホロの方も、妙な汗をかきながら、

「いや、わっちに聞かれても・・・。
 わっちらより先にノーラの方が知り合っておりんす。」

そう、ホロはノーラに話をふり、話をふられたノーラはおろおろしながら、

「私・・・、ですか。
 でも、知り合った年数ならロベルタさんの方が・・・。」

そう言って、ノーラは横にいるロベルタをチラリと見る。
そして、見られたロベルタは毅然と、だが物足りないといったように、

「私としては、そのままエヴァさんが別荘に隠居されるのでしたら、
 歓迎とまでは言いませんが、身の危険が減るので嬉しい限りです。
 ですが・・・、それもきっと一時のことでございましょう。
 どう思います、一番付き合いの長いチャチャゼロさん?」

そう言ってこちらを見るロベルタに、俺は何でもないと言う様にエヴァの頭をなでながら、

「その一時も、きっと刹那のように短い時間だぞロベルタ。
 むしろ、エヴァはもう勝手に・・・。」

そう言い終わる前に、エヴァは頭をなでる俺の手を払いのけるでもなく、
自身が地面に書いた絵なのか図形なのか、それとも新手の魔方陣なのかをしげしげと眺めながら、

「チャチャゼロ、今すぐ紙を用意しろ。
 今、地面に書いている物をメモして、新しい私見から構想案を練る。
 これが上手く行けばあるいは・・・、いや、しかし・・・、だが・・・。
 どうした、早くしろ、私の頭は触り心地のいい縫い包みやらクッションやらではないぞ?」

そう言いながら、座っているエヴァは俺の事を見上げてくる。
我が主ながら、なんとも復活が早い。
個人的には、もう少し彼女の頭のなで心地を味わっていたいが、
それでも、これは我が主の命。
だが、それでももう暫く・・・・。

「もう少しなでてから用意しよう。」

「アホ、とっととしろ、今すぐしろ、速やかに・・・、
 いや、ロベルタこいつを魔法球で24日、つまり明日の今頃までメイド勤務させていいから、
 今すぐ、紙とペンを用意しろ。」

「なっ、ちょっとま・・・。」

そうディルムッドが言い終わる前に、ロベルタが上品にスカートの裾をつまみ淑女の礼をし、

「その命、かしこまりましたお嬢様。」

そう言って、自身の手に紙とペンを取り寄せて俺に差し出してくる。

「あぁ、ありがとう。」

そう言って、受け取って地面に書いた物を紙に書き写していると、

「お嬢様、先ほどの事、実行しても宜しいでしょうか?」

先ほどの事・・・、あぁ、別に戦闘中でもないし、
今ここで襲われる縁もゆかりもない。

「好きにしていいぞ。
 ついでに、帰って来る時に縦横3センチまでの誤差なら許可するから、チャチャゼロを立派なメイドに教育してくれ。
 後、魔法球の中の生物や植物が、最低限荒れないようにしてくれると助かると伝えておいてくれ。」

そう言って、ディルムッドに送る魔力をゼロにして、人形に戻し魔法球を影から出すと、
ロベルタは、そのジタバタ暴れるディルムッドを抱き上げて一礼しながら、

「承りました。」

そう言って、さっさと魔法球の中に引っ込んでしまった。
まぁ、ディルムッドがどう変わると言う事も無いだろうが、
それでも、何かしら新しい発見や、趣味が見つかればいいかもしれない。
そう思いながら、先ほど地面に書いた物をスケッチし横に言葉を書き込んでいると、
残った3人が魔法球をしげしげと眺めながら、

「毎度不思議に思うが、ホロ、これの中は一体どうなってると思う?
 なんだか色々入っているみたいな事も言ってたし、今のチャチャゼロとロベルタさんを見る限りだと、
 本当に、これの中には入れるんだろ?」

そう言いながらロレンスは、魔法球を指差しながらホロの方を見るが、
ホロの方は首をすくめながら、

「わっちに聞かれても、流石に魔法は範疇外でありんす。」

そういうホロの横では、魔法球を指で突いているノーラが居る。
そして、その突いていたノーラが、

「エヴァさん、これの中って私達も入れるモノなのでしょうか?
 もし、入れるなら中の方も見てみたいのですが。」

ふむ、中に入れるには吝かじゃないが、それに伴うリスクもまたある。
実質ネギやアスナ達は寿命が縮んでいる、しかし、元々人がいつ死ぬとも、
後、寿命がどれくらい残っているかも解らないので、実質減ったと言われても直に感じ取れず、
そもそも、人は割と鈍感なので、死が目の前に来ない限りは早々死に怯えないし、
仮に、死に怯え続けるだけの人生を送れば、それだけでストレスで早死にしそうである。

まぁ、自身が人間で、これを見て入ってみたいか否かと言われれば、俺は間違いなく中に入りたいと言うだろうし、
もしかすれば、この中を安寧の地として、そのまま死ぬまで出ないかもしれない。
なにせ逆を言えば、この中から外に出ない限り、対外的に自身の老化具合が早いか遅いか知る術はないのだから、
魔法球の中での、死ぬまでの人生と言うものも、それはそれで7、80年そこそこ魔法球時間生きれるのだろう。

「入るのはいいが、その分寿命が減るぞ?
 まぁ、半日とか一日とか或いは数時間とか。
 一応、中に長くいればいるほど寿命が減るが、
 それでも構わないと言うなら、私は、私の別荘に招待するとしよう。
 まぁ、ホロの場合は寿命と言う言葉があってない様な物だから、入りたいなら連れて行くが。」

そう言うと、3人は魔法球を見ながらあーだこーだ話しあい、
意を決したようにロレンスが、

「半日・・・、それだけの分中に入れてもらえないでしょうか?
 命に見合う代価が無い事は重々承知していますが、それでも、
 今この機を逃せば、後はそのガラス球の中を夢想しながら、悶々とした余生を生きる事になるでしょう。
 その事を考えるなら、私はその中に入って、悶々とした気分を払拭したいと思います。」

そう、ロレンスが言い左右にいるノーラも同じように頷き、
唯一、寿命とは無縁だろうホロは困ったような顔をしながら、

「わっちとしては、そんなリスクを犯したくは無いんじゃが、
 それでも、こやつらは聞きわせん。
 ま、人の命は有限じゃが、それでも人は退屈する。
 その事を考えれば、これもいい経験でありんす。」

そう言って、ホロが締めくくった。
ふむ、この回答は意外といえば意外か、ロレンスないしホロは、
寿命が縮む事を知れば、間違いなく行かないと言うと思ったが、それでも行くと言うなら、
盛大にもてなし、来てよかったと言わしめるだけの贅沢ぐらいは提供しよう。

「そうか・・・、ならちょっと準備するから待っててくれ。」

そう言って、今いる辺りに人払いの結界を張り、
更に魔法球周辺には対物理結界も張り、魔法球が壊れないように処置をする。
中に入っている間に、魔法球が壊れればどうなるか、試した事は無いが、試す気も無い。
予想としては、中の物が外に溢れ出すか、或いはそのまま時の狭間に放り出されるか。
まぁ、製作時に保険として壊れたらその壊れた場所に俺が出て、それ以外は俺の影に引き込まれる様にしているから、
大丈夫だとは思うが、その影の中の広さが有限なのか、それもとディラックの海のように何処までも深く、
更には半無限空間が広がるのか・・・、どちらにしろ、相対性理論やら虚数空間やらの話しになるが、そこまで俺は詳しくない。

「よし、これで大丈夫だろう。
 じゃあ、みんな魔法球の周りに集まって目を閉じてくれ。」

そう言って、皆が目を閉じるのを確認して魔法球の中への回廊を開き、皆を別荘にいざなう。

「よし、眼を開けていいぞ。」

そう、エヴァさんが声をかけるので眼を開けてみると、

「皆様ようこそいらっしゃいました。
 お嬢様がメイド一同、心より歓迎いたします。」

そう言って俺達の目の前に現れたのは、
あの騒ぎの夜にロベルタさんが着ていたのと同じような、メイド服を着た品性正しい女性達。
あたりは商人達の話しに聞く南の国のようであり、日差しは柔らかく、
あの秋風舞、少しの肌寒さを感じていた場所とはあまりにも違いすぎる。
ただ、それだけでも、ここが本当に普通の人間がいる事が出来ない場所だと気付く。
その光景に俺が面食らっていると、エヴァさんは何でも無いと言うかのように肩をコキコキならしながら、

「あぁ、ただいま。
 みんな悪いな、中々こちらに顔を出せなくて。
 一応は顔を出せる時にこちらに戻ってきているつもりなんだが、それでも色々と休まる暇が無くてね。」

そう言いながら話しこみ、そうしている間にも、
エヴァさんと話している以外のメイド達が『上着をお持ちしましょうか?』や、
ホロとノーラに、『暑くありませんか、暑いのでしたら薄手の上着をお持ちしましょうか?』と、にこやかに質問してくる。
そんな中、俺の横にいたホロが俺の服の袖を引っ張りながら、

「・・・、のうぬしよ。
 実はエヴァは思った以上に、凄いヤツなのかや?」

そう聞いてくる俺たちの目の前では、面白いぐらいにノーラがオロオロしながら、

「い、いえ、だ、大丈夫ですますはい。」

そういうノーラを面白そうにエヴァさんは眺めながら、キセルで魔法薬を吸い、

「どうせ長旅の垢もたまっているんだ、水浴びでも、温泉でも入るといい。
 入っている間に新しい服も用意させるから、気兼ねなく湯につかってくれ。」

そう言って、エヴァさんは本来の子供の姿に戻り、
浜辺に設置してあるパラソルの下のイスに座り、本を読みながらメイド達が持ってきて、
机の上に置いたジュースを飲んでいる。
そして、俺の横に居たホロは温泉と聞いて懐かしいのか、

「わっちは湯につかってくるよ。
 これだけ豪勢なんじゃ、さぞいい湯が沸いておるはずでありんす。」

そう言って、ノーラを連れメイド達に湯のある場所に連れて行ってもらっている。
そして、ノーラの連れ犬であるエネクはメイド達が持ってきた肉を、尻尾をふりながら美味しそうに食べている。
そして俺は・・・、

「予想以上に凄いですね。」

そう言いながら、エヴァさんの前に座る。
そうすると、

「どうぞロレンス。」

そう言って、フワフワ飛ぶほかのメイドより小さな人形。

「チャチャゼロか・・・。」

そう言うと、チャチャゼロはどこかやさぐれたように、

「ペンは剣よりも強いらしい。
 俺はペンと紙を出さないだけでこの様だ、笑えばいいだろ・・・。」

そう言っているチャチャゼロさんを、後ろから現れたロベルタさんが無言で持ち上げ、

「喋っている暇はありません。
 これから夕餉の支度に洗濯・・・、は女性モノなのでしなくていいです。
 ですが、代わりに他の動物達の世話と、夕食の食材調達をお願いします。」

そういって、チャチャゼロは文字通り持っていかれてしまった。
それを俺と一緒に眺めていたエヴァさんは、

「そろそろ終了にするか、あれ以上やさぐれても困るし。
 それと、お前は風呂なり水浴びはしなくていいのか?お前が思っている以上にお前の臭いは酷いぞ?
 それに、凄い・・・、と言われてもイマイチ私には実感がわかないんだ。
 これをゼロから作ったのは私で、今運用するのも私。

 完成した当初はそれこそ、小躍りするほど喜んだが、それも見慣れれば褪めていく。
 まぁ、それでもこれの有用性はあるし、他の神が・・・、例えば黄金の羊なんかが安寧の地をほしいと言えば、
 私は羊達をいれてある魔法球1つ、代価を貰って報酬に差し出してもいいよ。」

そう言って、顔に微笑を浮かべている。
そして、今エヴァさんの言っている事のスケールが、
実はとんでもなく大きいと気付いた時には、ここを出て暫くしてからだった。
エヴァさんは何処からともなくタオルと桶を持ち出し、

「私も今から湯浴みに行く。
 ロレンスも綺麗にしろよ、今晩は豪勢に食べようじゃないか。
 まぁ、礼儀なぞ月に投げ、はしたなくとも楽しげに、歌い踊って楽しもう。」

そう言って、立ち上がったエヴァさんの背を見送っていると、
『あぁ・・・。』と、今更気付いたように、肩越しに人の悪い笑顔を俺に投げかけながら、

「間違っても、宝物庫なんかを見に行かないでおくれ。
 下手にトラップが発動すると、どうなるかわからないぞ?
 なにせ、徹夜明けの妙なテンションで、考えうる限り極悪にして、
 想像しうる限り最高に愉快なトラップが発動する。」

そう言って、この場を去り俺も俺とて風呂に向かう。
そして、入った風呂はきっと、そんじょそこらの貴族では入る事は出来ず
むしろ、国王でもここまで水をつかい放題できるほど、使えるかと疑問をいだくほどだった。
まぁ、そんな風呂でも最初は一人で寂しく、だが、途中からはチャチャゼロと2人で入れば、
女湯からの、楽しげな語り声も楽しめるというもの。

「チャチャゼロ、魔法ってこんなに何でもできるものなのか?」

そう、湯を手ですくい顔にかけながらチャチャゼロに問えば、
彼は何でもないという風に、

「どうなんだろう、人ではなく魔の法則を扱うものが魔法使いだからな。
 まぁ、でもただ言える事はエヴァは努力してるよ。
 それこそ、寝ずに数日過ごす事もあれば、奇妙な物を作ることもある。
 だがまぁ、彼女はそのすべてを楽しんでいる、それだけは間違いのない事実だよ。」

そう言って、気持ちよさそうに湯につかっているチャチャゼロを・・・、いや、
そうじゃなく、『死なない』と言う人を見る。
俺は今の旅を続ければ、いずれはヨイツに辿り着くと思う・・・。
だが、その後俺とホロはどうすればいいのだろう・・・。
いや、ホロは故郷があるが、根無し草の俺は・・・。

「どうしたロレンス、急に黙り込んで?」

そう言ってくるが、どう返したものか・・・。
いや、これは俺の問題なのだろう、彼等には彼等の問題があり、
今の俺にはこの問題がある。

「何でもない。
 ただ、湯上りの彼女達が、一体どんな服を着ているのかと思ってね。」

そうおどけて返すと、チャチャゼロはどこか得意げに、

「それなら心配ない、俺が作った浴衣を仕込んである。」

そう言い、湯から上がって夕暮れの浜辺での晩餐は、三人の美女が見た事もない異国の着物を着て食事をし、
メイド達が、見た事もない楽器で緩やかに曲を奏でる。
今見ている光景はあまりにも浮世離れしていて、あまりにも現実味がない。
だが、確かに触れればそこに人の温もりがある。

「ぬしよ、どうしたのかや?」

「いや、ただ何となくな。
 ・・・、必ずヨイツへ連れて行くよ、ホロ。」

そして、エヴァさんの『もう時間だ。』と言う宣言で、
俺達は別荘を後にした。


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