<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[10094] そして歩き出すだな第49話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:122d81a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/03 15:55
そして歩き出すだな第49話





ゴトゴト・・・・、ゴトゴト・・・・、ゴトゴト・・・・・。

目が覚めれば、俺はなにやら布を頭から被り、
頬は枕であろうモノにあたっているものの、体の方はベッドではなく板の上に乗っている様だ。
取り敢えず、何となく布を取ったら大変な事になりそうと思い、

「ん~・・・・。」

そう、寝起きで余り動いていない頭を動かそうと、
布の中で伸びを1つして、息苦しいながらも新鮮な空気を吸い込めば、
自身の頭の中に残っている記憶が呼び起こされる・・・。
確か、俺はディルムッドをしこたま殴って、それと同じように殴られて。
そして、最後に・・・、『頭の言葉、今撤回してやる。』と言いながら口付けを・・・。
・・・、そこまで思考が回った瞬間、『ボンッ』と、音がするんじゃないかと言うぐらいに、
自身の顔が熱くなるのを感じた。

待て俺、俺待って・・・。
何か、ちゃんと考えてしたはずだけど、今考えると、『そこんとこどうなの?』と、
みのさん張りに突っ込みたくなる。
しかも、今考えるとかなり恥ずかしい行動も取っていたような・・・。
うぅ・・・、どうしよう。

別にキスが恥ずかしいわけではない。
最悪、キスなんて人工呼吸と変わりないと一蹴してしまえば、なんとでもなるのだが、
それはそれで、何だか『物凄く意識してます。』と、自己主張しているような気がする。
かと言って、何時もと一緒の態度でいいのかと考えると・・・・、いや、うん。
なんと言うか、別に何時もの態度でいいじゃんか。
ついでに言えば、何だか荷馬車も止まったみたいだし。

そう思いながら、自身に掛けてある布をソロリソロリと、ゆっくりずらしてみれば、
アレから2時間ぐらいはたったのだろう、ボチボチ辺りも暖かくなり、
草原を吹きすさぶ風は頬に優しく、メエメエと鳴く羊たちは、
雨のおかげか黒ずんでいた毛が純白になり、モコモコとして寝転んだら気持ちよさそうである。
と、そんな事を考えながら、目だけを出して辺りをうかがっていると、

「エヴァさん起きましたか。」

そう、足元からロベルタの声がする。
まぁ、見つかってしまっては仕方ない。
それに、どの道いずれは布の中から出なければならないのだから、
下手に延ばすよりは、こういったきっかけを使って出るのもひとつの手である。
そう思いながら、キセルを口に銜え、魔法薬をセットしながら体を起こし火を落とす。

そして、目に飛び込んできた光景は、柔らかな日差しの下、杖を使いエネクに指示を出すノーラと、
そのノーラの指示に従い、羊達を一箇所にまとめようと走り回るエネク。
前の席ではロレンスとホロが仲睦まじく寄り添い、今は休憩なのか、水を飲んだり軽く食事をしたりしている。

「エヴァさん、こちらから目を逸らさないで下さい。」

そう、ロベルタが声を上げるので、あまりいい予感はしないがそちらの方を見てみると
尼僧姿のロベルタはおしとやかに横座りで座り、その横ではディルムッドが脂汗をダラダラかきながら、
太ももの上にカバンを置き正座で座っていた。

「おはよう・・・・、エヴァ・・・。
 今日も・・・、いい・・・、天気だな。」

そう、ディルムッドが苦しそうにしながらも挨拶をしてくるので、
俺の方もそれに答えるように、

「あぁ、おはよう。で、何があった?」

そう言うと、ロベルタがディルムッドの足を指で突きながら、

「エヴァさんを殴った罰です。
 いくら私達メイドと、騎士であるチャチャゼロさんの領分が違えども、
 主であるエヴァさんを殴っていい理由なんてありません。
 なので、今できる罰を施行し、後の罰は別荘に帰って姉さま方と話し合って決める事にしました。
 もちろん、エヴァさんがこんな罰がいいと言えば、それを行う所存です。」

そう、ロベルタが喋る横では、ディルムッドが歯をかみ締めて足の痺れと戦っている。
ふむ、考えてみればそうだが、東洋人と西洋人では昔からの生活習慣の違いで慣れている事と、慣れていない事が割りと明確に分かれる。
例えば、食事で言えば日本人は松茸が好きだが、西洋ではただの臭い茸と言う事で松茸は食べないし、
剣を振るう事をとっても、東洋人は引く力が強く、西洋人は押す力が強い。

だからこそ、西洋の剣は肉厚で、真正面からみるとひし形に見えるし、剣で攻撃する時も、真上に振り上げて振り下ろすではなく、
肩に担ぎ上げるように掲げ、そこから叩き付ける様に振り下ろす。
それに、西洋の場合騎士甲冑を纏った相手と戦わないといけないので、剣の技量で戦うよりも、
重い剣を力いっぱい叩き付けて、甲冑ごと殴り殺した方が手っ取り早い。

だが、東洋人の場合引く力が強いと言うまったく逆になるため、青龍刀や刀は反りが入り、剣の軌道が弧を描くようになる。
つまりは、斬った後の残身や、斬るまでの足の運びと言った、いわゆる剣術として技量に特化していく。
それに、海外でも刀といえば日本刀と言われるぐらい日本刀は有名だが、リアルな切れ味として、
日本刀を固定した状態でもヘビーマシンガンの弾は斬れるし、それ以上に巨大なキャリバー50と言う銃の弾さえ斬れる。
更に言えば、技量向上につれ俺が知っている世界でも斬鉄、厚さ1~2センチぐらいの鉄板なら割と余裕で可能である。

と、だいぶ思考が遠くへ飛んで行ったが、
まぁ、結局の所ディルムッドにとってはこれが初めての正座で、そして初めての足の痺れ永久ループなのかもしれない。
と、そう言えばディルムッドは後生大事そうに、痺れているであろう足の上に、カバンを置いているが、アレは一体なんなのだろう?

「なぁ、そのカバンは何なんだ?
 確か、擬装用のカバンは中身カラッポのはずだったが?」

そう言うと、ロベルタは太ももの上に乗っているカバンをコンコンと叩きながら、

「なんでもありませんよエヴァさん、重し用の石が入ってるだけです。」

ふむ、石抱きとはまた古風な拷問方法だな。
ついでに言えば、足りない備品も在るし。

「ギザギザの座布団は用意しなかったのか?」

そう、指で山を描きながらロベルタに聞くと、
ロベルタの方も、少々残念そうな顔をしながら、

「用意したかったのは山々ですが、それを積むと、
 どうしても町への到着が遅れますので、今回はカバンのみです。」

と、そう返してくるが、よもやそこまでやる気だったロベルタに、杯を掲げて乾杯と言ってやりたい。
しかし、実際の所特に俺はディルムッドに怒っている事もないし、ついでに言えば、
リュビンハイゲンがだいぶ近付いているこの状況で、休憩を取ると言う事は何らかの意図があるのだろう。
そう思い、荷台からでて草原にいるノーラの横に行き、

「チャチャゼロ、ここまで走ってこれたら一切を不問にしてやる!
 ロベルター!カバンを退かしてやれ!」

そう叫ぶと、ロベルタはディルムッドの上のカバンを退かし、
ディルムッドの方は荷台から飛び降りて走ってこようとするが、飛び降りた瞬間に立つ事ができず、
盛大にすっ転び、立ち上がろうとするが足がいう事を利かず、生まれたての小鹿のようにプルプルしている。
これがで、呼び出したのが日本なら正座をしても、問題なかったのだろうが、
そんな言葉も知らない海外で呼ばれたのが、今回のディルムッドの敗因だろう。
そんな事を思いながらディルムッドを見ていると、馬車に乗っていたホロとロレンスとロベルタが馬車を降りて、
ディルムッドの横を素通りながらこちらに来る。

いや・・・、うん。
誰かディルムッドに手を貸そうよ。
流石に皆で素通りとか俺も予想外だから。
はぁ、これは甘さか、それとも自らが誇る者が無様をさらすのが耐えられないのか。
まぁ、今の状況に叩き込んだのは俺だから、やっぱりそこから引き上げるのも俺なのだろう。

「・・・、チャチャゼロ。本来の姿に戻り、もう一度人になれ。
 お前の本体なら毒も痺れも一切意味を成さないだろ。」

そう言うと、ディルムッドの方も手をポンと打ち、
『そう言えば、それもそうか。』と、言ったような顔でポワンと人形に戻り、
そしてすぐさま人の姿に戻り、立ち上がって俺達の方にスタスタと歩いてくる。

「すまない、無様をさらした。」

そう言いながら、ディルムッドが俺の前で片膝をついて頭をたれる。
ふむ、何かしら変わったスイッチでも入ったんだろうか、それとも、こいつが思う騎士像と言うのがこういうものなのだろうか?
まぁ、あんな事があった後だ、それもおいおい元に戻っていくだろう。
そう思いながら、

「何、今更だ。お互いがお互いの恥も無様も見た。」

そう言って、ニヤリと笑うと、ディルムッドの方も顔を上げ苦笑で返す。
そして、そんなやり取りをしている後ろでは、

「のう、あの可愛らしいのがチャチャゼロの本来の姿かや?」

「俺に聞かないでくれ、でも、エヴァさんが言ってあの姿なら、
 多分あの可愛らしいのがチャチャゼロじゃないのか?」

「ロベルタさん、どうなんですか?
 やっぱりチャチャゼロさんは可愛い方なんですか?」

「はい皆さん、チャチャゼロさんは可愛いです。
 あのミニマムでメイド服を着て、後ろをチョコチョコついて来てくれたら幸せな気分になりそうなのが本当の姿です。
 し・か・も、チャチャゼロさんの性格上、主になれば割とやってくれそうです。」

何か外野が五月蝿い。
そう思っていると、ディルムッドの方も同じ事を考えているのか、
何だか小難しい顔をしている。

「は~っ、なんか締まらんな。」

そう言うと、ディルムッドの方も同じようにため息をつきながら、
しかし、何処か楽しそうに、

「だが、これが私達"らしい"だろ?」

そうは言うが・・・、いや、ウン。
確かに、これの方が俺達らしい。
下手に肩肘張るのも性に合わなければ、戦場でもない時まで仰々しくするのも性に合わない。
まぁ、結局はこういう風な感じが一番落ち着いているときなんだろう。

「まったくだ、私が頭痛がして胃が痛いぐらいが私達らしく気がおまる。」

そう言うと、ディルムッドはジト目で俺の方を見ながら、

「君の精神的タフネスの出所は日常だったのか。」

そう言いながら、立ち上がって俺の肩をポンと叩く。
まぁ、今言った事は事実なのだから、変えようも無い。
それに、それでも俺は十分楽しめているわけだし。
と、そんな事で時間をとっている場合ではない。

「で、ここで休憩を取っているんだ。
 何かあるんじゃないのか?」

そう言うと、ホロとロレンスが顔を見合わせて、

「ぬしもなかなかに抜け目がないの。
 わっちたちが、このままリュビンハイゲンに戻っても、
 最終的には、裏切り者のレメリオ商会を頼り、金を捌いてもらう事になるでありんす。」

そうホロが言った後、ロレンスが商人の笑顔で俺の顔を見ながら、

「ですので、私達は今回の密輸に失敗・・した事にしようかと思っています。
 つきましては、物を隠す事のできるエヴァさん、この羊達を買い取りませんか?」

そう、終始にこやかにロレンスは俺の顔を見ながら話して来る。
羊の買い取りか・・・、問題は額と言う事になるが、ぶっちゃげてしまうと、
金貨千枚と言われても『はいそうですか。』と言ってそれを即金で払っても痛くも痒くもない額の貯えはある。
だがまぁ、ロレンスが商人としての笑顔で話すと言う事は、俺も商人として対応しよう。

「ちなみに、そちらの希望額はいくらかな、商人ロレンス?」

そう返すと、ロレンスは羊達を指差しながら、

「金の詰まった羊です、今目算してその羊が35頭。
 リーベルトがいくら分金を買い付けたかは知りませんが、それでも羊その物のにも使い道があります。
 なので、1頭を金貨6枚で合計210枚。それと、教会は羊の分の損失をノーラに吹っかけるでしょうから、
 金貨10枚差し引いて、その分で教会との交渉をお願いしたい。」

そう言ってくるがさてはて、羊1頭の相場がわからない以上、
今、ロレンスが言った額が、高いのか安いのかは分からない。
だがまぁ、ロレンスが言うように羊の使用用途は割と広い。

毛を刈って糸を紡いでもいいし、乳を搾ってチーズにして売ってもいい、
他にも、殺して捌いて食肉にしてもなんら問題はない。
ロレンス達は、原作だと大体50枚前後の金貨を手に入れるに留まったが、この交渉を決めると手に入るのが約3倍になる。
その事がいい事なのか悪い事なのかは解らないが、だがまぁ、早々悪い交渉ではないだろう。

「いいだろう、商人ロレンス。金貨200枚で手を打とう。
 支払いはとりあえず50枚払って、町を出てから残りを払うとしよう。」

そう言うと、ロレンスの方もそれで納得したのかうなずいて返す。
それに、こんな状態で金貨200枚も懐に入れてうろついていれば襲ってくれ、
もしくは襲ってきましたと、言っているようなものである。
ついでに言えば、この交渉がまとまった事で、よほどの幸運が無い限りレメリオ商会は破産するだろう。
そんな事を思いながら、金貨50枚をロレンスに手渡す。

まぁ、原作でもその辺りにはまったく触れられてないので、なんともいえないが、
いくら商人といえども、裏切り者を早々野放しにしておくとも思えないし
各地に支店を持つローエン商会が、ロレンスの話を聞いてレメリオ商会に制裁を下したのかもしれない。
と、それはひとまず置いといて、今は目の前の羊達をとっとと隠す事にするとしよう。
そう思いながら、自身の影の中からダイオラマ魔法球を取り出す。

「うわーっ、大きなガラス玉ですね。
 それに、中に在るのは小さな置物ですか?」

そう言いながら、ノーラが取り出した魔法球を外から眺めて、
指で突いたり、本体にハリネズミのように付いている、小さな魔法球を見たりしている。
そして、ホロやロレンスもノーラと同じように興味深そうに魔法球を見ながら、

「エヴァ、こんなガラス玉でどうするつもりじゃ?
 いや、もしかすると、ぬしの作る甘い薬かや?」

そう言いながら、ホロはジュルリと音が聞こえそうな感じで、自身の口元を手でぬぐい、
その横のロレンスは、流石に飴とは考えないながらも、
これを売ったらいくらになりそうかと、頭で考えていそうである。

「なに、これは私の別荘でな、これに羊達を隠そうかと思う。
 ノーラ、羊達をこっちの方に誘導してくれないか?」

そう言うと、3人とも不思議そうな顔をしているが、
ここに居続けてもいい事なんて無い、

「えっと、誘導するのはいいんですが、これが壊れたりしませんか?」

そう、ノーラが不安そうに聞いてくる。
そんなノーラにロベルタが、

「大丈夫ですよノーラさん、なにせ、この中では私の姉さま方も、
 他の動物も、エヴァさんの財産だって詰まっているのですから、早々簡単には壊れません。」

そう言いながら、ノーラの肩をたたき、
ロレンスはロレンスで、

「この中には入れるんですか、チャチャゼロ?」

そう聞かれたディルムッドは、首をすくめながら、

「エヴァの言うようにこれは別荘。
 中にはいって、普通に暮らせるよ。」

それを、ロレンスの横で聞いていたホロは、首をかしげながら、

「なんじゃったかな、昔これとよく似た話を聞いたんじゃったが・・・・、
 おぉっ、壺中天じゃ。 」

そういって、手をポンと打っている。
しかしまぁ、ホロもよくそんな昔話を思い出したものである。
確か出所は中華の国で、物乞いが壺を大事にしているので、その物乞いがいなくなった時に、
待ち人が興味本位で壺を覗くと、急に壺に吸い込まれ、中には桃源郷が広がり、なんと物乞いは仙人だったと言う昔話である。
まぁ、これを中華の国に持って行って、同じ事をしようと思えば出来る訳だが、やったところで意味も無い。
そんな事を考えている間にも、ノーラはエネクを使い羊達をこちらに導いている。
なので、俺の方も草原だけで、これからなんに使おうかと考えていた、小さな魔法球への道を開き、
こちらに向かって進んでくる羊達を、次ぎ次ぎと魔法球に入れ程なくして、羊達はすべて魔法球に入ってしまった。

「よし、これで完全に見つからんだろう。」

そう言って、今度は皆で馬車の荷台に乗って、町へ向けて出発する。
そういえば、ここに来て気がついたことだが、何で荷台がここにあるのだろう?
そう思って横を見ると、俺の横に座るロベルタ、罰再開と言うことなのか、正座をしているディルムッドと、
そのディルムッドに裁縫を習っているノーラ。
とりあえずは、ロベルタに聞くか。

「ロベルタ、私が寝た後何があった?」

そう聞くと、ロベルタはディルムッドの方を見ながら、

「エヴァさんが寝た後、チャチャゼロさんが、この荷馬車を森まで走って取ってきたんですよ。」

まぁ、確かにこの面子ならそうするのが妥当だろう。
ただ、1つ気がかりな事があるとすれば、ディルムッドが心惑わせた敵をどうしたのかと言う所。
まぁ、間違いなく死んでいるのは確かだが、

「チャチャゼロが殺した賊はどうした?」

そう聞くと、ロベルタは頬に手を当てて困ったように、

「その・・・、ですね。」

そう何処か歯切れ悪く話しを切り出し、

「あの賊・・・、名をディアールと言う方で修道騎士団の団長だったそうです。
 そして、その方をチャチャゼロさんは騎士と認め、穴を掘って墓標に剣を刺したかったのでしょうが、
 剣は砕けていたため、土の上に寝かせるに留まりました。
 エヴァさんが賊を騎士と言う事を不快に思うかもしれないと言いましたが、チャチャゼロさんはそれを頑として譲りませんでした。」

そう言って、話を締めくくった。

「そう・・・、か。チャチャゼロがその男を騎士とね。」

そう言うと、ロベルタの方も今回はディルムッドの肩を持ったのか。

「私が言うのも差し出がましいですが、チャチャゼロさんにとって騎士と言うのは多分大切なものです。
 エヴァさんも、その方を騎士と認めて差し上げたらどうでしょう?」

そう、ロベルタが俺の顔を見ながら言って来る。
それに対して、俺の方も吸っていたキセルを口から外し、

「なに、アレが騎士と認めたうえでそうしたのなら、その男は立派な騎士だったのだろう。
 戦場で散り、墓も墓標もその名前さえわからぬ者達は山ほどいるが、それでも、認め合い、相手の名を呼べたのなら、
 墓を掘り墓標を立てても罰は当たらないさ。
 ・・・、究極的に見て、墓標を立てるのも自己満足のそれだよ、
 相手からすれば敵に墓標を立てられるなど、屈辱の極みだろうが、それでもこの世界で生きるにはそういったけじめがいる。 
 むしろ、私はそのけじめさえつけずに、その死体を野晒しにしていた方が私は怒るよ。」

そう言うと、ロベルタはこちらにスッと目礼をして返す。
俺が血を飲んで知っているその、ディアールと言う男の知識など、やはり、
真正面からぶつかり合ったディルムッドに比べれば、それはただ知っているだけで重さなどなく、
むしろ、俺がその男の事を語る方が滑稽だろう。
そんな事を考えながら、優しい日差しと柔らかい風に身をさらしていると、
リュビンハイゲンの検問の近くにまで近づいた時に声をかける一人の人物、

「ロ、ロレンスさん?
 それに、他の皆さんも、ご無事で何よりです。」

そう声を上げたのは馬に乗ったリーベルトと、その馬の後ろに犬を担いで乗る老人。
おおかた、ノーラの後釜用の羊飼いだろう。
そう思っていると、手綱を操っていたロレンスが、これでもかと言うほどの作り笑顔で、

「ええ、おかげさまで。リーベルトさんもご無事で何よりです。
 ですが、残念な事に"羊"がみんな逃げてしまいまし。」

そう羊の部分を強調して言うと、元々声の上ずっていたリーベルトは、
その陰鬱な顔を始めてぽかんとさせた後、

「ちょ、ちょっと待ってください!
 羊が一頭もいないのですか!?」

そう言うリーベルトに、ロレンスは悪びれる事も無く手綱を操り、
早く中に入るなら入れといった視線の門番に、今から中に入ると片手を上げて、

「リーベルトさんここでは邪魔になる、とりあえずは中に入りましょう。」

そう言って、俺達は堂々と町に真正面から入り、その後ろをリーベルト達が付いてくる。
そして、そのままロレンスの馬車はレメリオ商会に向かい、荷受場に馬車を繋いで、皆で馬車を降りだす。
まぁ、俺達の方はこのまま教会に行って、ノーラの身柄を受け取ってもいいのだが、取り敢えずは、俺達もこちらを見物するとするか。
そう思いながら、ロレンス達の後ろをついてレメリオ商会に入る。
そして、中に居たのは机に座る多分レメリオであろう人物と、数人の男達。

「こんにちはレメリオさん。
 実は今回残念な報告があってまいりました。」

そう言って、残念そうな顔で話すロレンスとは裏腹に、
レメリオは幽霊でも見たかのように、青ざめた顔でこちらを伺ってくる。
まぁ、仕方ないだろう、多分レメリオ達の予定では俺達は、みんなで仲良く森で冷たくなっている予定なのだから。
それでも、レメリオはどうにか頭を動かしたような感じで、

「ざ、残念ですか・・・、何があったのです?
 もしかして羊が?」

そうレメリオが言うと、ロレンスは神妙な面持ちで、首を縦に振り、

「誠に残念な事です。よもや、森で盗賊に襲われるなんて事は夢にも思わず、
 羊はいませんが、命からがら逃げる事に成功しました。」

そう言うと、レメリオは頭を抱えだし、だが、鋭くロレンスを睨みながら、

「ならばロレンスさんも破産ですね。
 我々も一蓮托生ですが、それでも、借金は取り立てます。」

そう言うと、ロレンスも残念そうな顔をしながら、

「はい・・・、ですが。」

そう言って、取り出したのは金貨50枚の入った袋。
それを机の上にドンと置き、

「ここに私の借金と同額の金貨50枚が在ります。
 これで私は借金を完済しますので、破産はレメリオ商会のみです。」

そう言うと、レメリオは今度は顔を真っ赤にさせる。
そして、ロレンスにつかみ掛からんばかりの勢いで、

「何故だ!何故そんな金が存在する!!
 貴方は、私たちを裏切ったのか!?」

そう捲くし立てるレメリオにロレンスは1度フッと目を瞑り、
そして、哀れみとも取れる視線でレメリオを見ながら、

「まさか、ここに来る前に町の外でリーベルトさんに出会いました。
 そのリーベルトさんに聞いてみてください、羊は確かにいなかったと言いますから。
 そして、その金貨は私達が得た正当な報酬です。
 私はレメリオさんと交渉した時いましたよね、金が欲しいから同時に副業もすると。
 これはその副業のお金ですよ。ね、ロベルタさん。」

そう言って、ロレンスは尼僧姿のロベルタを見る。
そうすると、ロベルタは優しく微笑みながら、

「はい、ロレンスさん。
 私達は貴方のおかげでラムトラの下見と、布教活動を行う事ができました。
 それに、帰りに襲ってきた悪漢どもから無事に助かる事も。
 この報酬は正当な報酬であり、私達はその報酬を確実にロレンスさんに払いました。」

そうロベルタが言うと、レメリオは浮かせていた腰をイスに戻し、
その姿を見ていたホロが、ロレンスの横で、

「商人様、まさかわっち達もこのような結末は見抜けんかった。
 じゃが、今宣教師様が言うよう、これはわっち達の正当な報酬でありんす。」

そう、締めくくってレメリオ商会を後にしようとすると、

「ま、待ってください宣教師ロベルタ。
 また、ラムトラまで布教活動にはいかれませんか?
 その際には、我々レメリオ商会が護衛をします。」

そう、まだ、諦めないレメリオが口を開くが、
そのロベルタは俺の方を見てくる。

「レメリオさん宜しいですか?」

そう言うと、レメリオはなんだこいつといった感じで俺を見てくる。
まぁ、それも仕方ないだろう、何せ俺たちが出会うのはこれが初めてなのだから。

「私はロベルタさんと共に旅をしている商人です。
 私達商人は公平な天秤に、公平な重りを載せて商売をするのが常。
 ですが、レメリオさん達は皿に乗る重りではなく、腕傾ける天秤になろうとした。
 ・・・、知っていますか?天秤は皿に何を載せられてもそれの分だけ傾くのですよ。
 結局の所、重りは重りでしかなく、むしろ天秤なんてなれるものではないのですよ。」

そういうと、レメリオは一体何の事かと思って考えていたが、
ようやく意味を理解したのだろう、なにせ、今回レメリオ達は片方の受け皿に自身の利益を、
そして、もう片方の受け皿に俺達の命を載せたのである。
しかも、ご丁寧なことに自身たちの天秤に細工をして有利になるように。

「命・・・、意外と重かったでしょ?」

そう、微笑みながらレメリオに言葉を送り、レメリオ商会を後にし、
次は教会に向けて出発。
そして、羊が全滅した事に怒る司祭にノーラが、

「司祭様・・・、私は今日限りで羊飼いをやめます。
 もう二度と町に戻らず、ロベルタさん達と巡礼の旅にでます。なので、話しかけないでください。」

そう、きっぱりと司祭に三行半を突きつけたのは痛快以外の何事でもなく、
それを援護するように、ロベルタが、

「妖精と呼ばれていた貴女が巡礼者になるとは、思ってもいませんでした。
 新しく名を連ねるものを私は暖かく迎え入れ、歓迎しましょう。
 無論、司祭様も祝福していただけますよね、羊よりもなお価値のある改宗者を手に入れたのです、
 これに見合う代価など存在しません。」

そう、教会の前で大声をあげ、ノーラの肩を後ろから抱くロベルタを、
暇で娯楽の無い町人は面白そうに眺め、司祭の方も、町人の大勢見ている前でこうまで言われ、
仕方なくだろうか、引き攣ったような声で、

「か、神もさぞお喜びでしょう。
 ですが、羊達がいないと私達も生活に困る。」

そういった司祭に、ロベルタは微笑みながら、

「今回失った羊は35頭。
 ですが、教会にいた羊は100頭を越える数、正確には35頭差し引いても145頭がいます。
 それに、ノーラさんをこちらで引き取るのですよ?
 私達の暮らしは清貧こそもっとう・・・、おや司祭様?
 貴方の服は肥え太った豚のように華美で豪華に見えますが、七つの大罪である強欲が・・・?」

そう、ロベルタが最後の方の台詞を言う頃には、その司祭は青ざめていた。
なにせ、同業者から異端の疑いをかけられているのである。
しかも、魔女裁判は民衆だけでなく、無論神父や司祭でさえかけられるもの、
ここでロベルタが目の前の司祭に異端の嫌疑をかければ、めでたくなく火刑だろう。
そして、魔女裁判を仕切っている教会の人間がそれを知らないわけもなく、
しかも、今ロベルタが来ているのは黒一色の尼服なのに対して、司祭の方は金の刺繍をあしらった服。

「ま、まさか宣教師ロベルタ。
 私も妖精と呼ばれていた羊飼いが、改宗して嬉しい限りですよ。
 しかも、貴女の様な立派な宣教師の元で巡礼できるのです、これは幸運ですぞノーラさん。」

そういった後、祈りを捧げる時間だといってそそくさと教会の中に引っ込んでしまって、
後に残ったのは、町人達の教会へ向けた苦笑と、失笑。
それに俺達は一礼してその場を離れ、ローエン商会で休養もかねて7泊。
ロレンスとホロは、その7泊の間に金を借りていた人々に金を返し、
謝罪をして回っていて、俺は俺とて、この時代の金銭感覚を養おうと、皆を引き連れて、
市場や商店、酒場なんかを見て周り、出発の日となった。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.047924995422363