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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 無形の有形だな第48話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:122d81a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/03 06:37
無形の有形だな第48話





頬に中たった衝撃はそのまま骨に達し、口の中を通り抜けて反対側から打ち出された。
そして、彼女は・・・、エヴァは拳を打ち出した姿勢のまま俺を見下ろし、
俺はそれを見上げて、エヴァの拳の衝撃に俺は耐える事が出来ず、
後ろに飛ばされ、尻が冷たい事で、濡れた地面に尻餅をついている事に気がついた。
エヴァは何も言葉を発する事無く、俺をその怒気のはらんだ碧眼で見下ろし、
俺もまたその瞳から目が放せず、ただ、口の中に広がる血の味とジャリジャリとした感覚、
後は、熱を持った頬だけが今の俺の状況を知らせる。

俺は・・・・、そう俺は彼女に、エヴァに首がねじ切れそうな威力で殴られたんだ・・・。
彼女は組み手の時、自身が知っている武術は守りを主体として、自身から攻めるのは苦手だし、
攻撃も拳ではなく、掌手と言う拳ではない打ち方で攻撃をして、対武器戦闘を想定している。
そう、今の出来事とはまったく関係ないことが、自身の頭の何処か冷静な部分がそう知らせてくる。
そして、次に浮かび上がるのは、何故、今俺が彼女から殴られたのかと言う疑問。

俺は、さっきした質問に、彼女なら何の躊躇も無く『おまえは間違いなく忠義の騎士だ。』と、
そう返してくれると、彼女ならそう、間違いなく返してくれると思って質問して、
今、この濡れた草原で殴り飛ばされ座している。
そんな俺を見下ろしながら、エヴァは殴り飛ばした姿勢を解き、
その怒気のこもった視線のまま俺の前に来て、

「今、キサマを殴った意味が解るか?」

そう、怒りを押さえ込み、平坦な声で話しているつもりだろうか、
その怒りが抑えきれず、所々ブレた声で目だけで、ジロリと見下ろしながら俺に聞いてくる。
だが、俺にはその理由がわからない・・・。

何故、今殴られたのか・・・、今、何故俺がここで尻餅をついているのか・・・、
そして、今何故俺が最も欲しかった言葉を彼女がくれないのか・・・・。
それを考えると、頭が混乱して、自身が座っているのか、
それとも、何か別の事をしているのかも解らなくなる。

だが、ただ1つ解るのは、俺は彼女の言葉に答えなければならない事。
そして、それに答えなければ、多分俺は何か大切な物を、
永遠に手放したままで、過ごさなければならないような気がする

「・・・、解らない・・・。」

そう答えると、エヴァは歯を噛み締めて、喉を低く鳴らして笑い出し、
最後にはそれさえも我慢できなくなったのか、大声を上げて笑い出した。
それを尻餅をついたまま、あっけに取られながら見上げていると、彼女はひとしきり笑って、
『フゥ』と、1つ溜息をついた後、俺の胸倉をつかみ、彼女の吸血鬼たる鋭い牙をむきながら、

「そうか・・・・、なら・・・、今の一撃をダース単位でくれてやればちったぁ解るか!!」

そう言って、俺を無理やり立たせて、また、顔にその重い拳を振るう。
そして、今度も俺はその怒りのこもった拳を顔に受ける。
だが、今度は俺も尻餅をつくことなく、後ろに数歩下がるに留まる。
そして、それと同時に自身の拳を硬く握りながら口を開く。

「何でだ・・・、何で何だエヴ・・・、いや、我が主よ!!!
 何で言葉ではなく拳なんだ!!!何で・・・、何でたった一言を、
 何で、今欲しいたった一言を私にくれないのか!!」

そう問えば、主は首をクイッと持ち上げ、その夜でもなお輝く碧眼で私を見下げながら、

「『何でくれないのか・・・か?』ハッ!ならくれてやる。」

そう言って、彼女の口から出た言葉は、俺の想像しうるうちでもっとも最悪で、
私自身の足場を一撃で砕くほどの威力を持ち、それと同時に、
最も聞きたくなくかつ、何処までも怒りを覚えるモノだった。

「私が知るか!!!」

そう叫ぶと同時に、彼女はまた私に右の拳で殴りかかってくる。
だが、今度はそのくり出される拳の手首を外つかみ、彼女の瞳を射抜きながら口を開く。

「どういう事だ。主は私を謀ったのか。
 どうして・・・・、どうしてそんな言葉を私に投げつける。」

そう、自身でも驚くほどに平坦で、同時に怒りに満ちた言葉が、自身の口より吐き出された。
だが、主はその言葉を聴き、私の射抜くような視線を同じく、怒気をはらませた視線で睨み返しながら、

「いいご身分だな、ディルムッド・オディナ。
 自ら考えもせず、質問のみを投げかけ答えを欲する。
 キサマは自らが欲したモノの意味を知って、今まで叫んでいたのか!?」

そう主は叫びながら、その場で突き出した拳を振りほどくように自身の体に引き寄せ、
その反動を利用した、ヒュンと風の音を切るような回し蹴りを、顔めがけかかとで放ってくる。
私はその蹴りをバックステップでかわし、主もそれが外れた事を悟ると、
回し蹴りで出された足を斜め下に弧を描くように振り下ろし、
今度はその振り下ろした速度を利用して、後ろに跳んで距離を取る。

「解って叫んでいたさ!!
 私は自らの主に仕え、そして、その主のために行動する!!」

そう俺が叫んでいる間、主は俺の言葉を聞く気が無いかのように、
彼女が何時も咥えているキセルを取り出し、それを口に咥えて火を落として、
『フゥーッ』と、吸い込んだ煙を吐きながら、何処までもふてぶてしく、

「なら、おまえは騎士ではなく、ただの使いっ走りでいいな。
 ただ言われた事をするだけなら、騎士などと仰々しく言わずともそれで十分だろう?
 それが嫌なら、いっその事、目を瞑って耳を塞ぎ、闇を見て生きろ。
 そうすれば、嫌なモノは何も聞かず、何も見ずに過ごせるぞ?」

そう、主は私の顔をせせら笑いながら言葉を吐き、
またキセルを口に咥えて、煙を吸い込み吐く。
そして、その主の行動と言葉に何処までも怒りを覚える。
私は・・・、こんなモノに仕えていたのか?

「何でなんだ・・・、主はそんな人ではなかっただろう!?」

そう、自身でも顔が歪んでいる事を自覚しながら言葉を放つと、
彼女はまるで仮面を描けた様に、

「何を今更、私は騎士ではない・・・。
 私は醜くも人に仇名し、人の血を啜る吸血鬼で、今この場に立つにも森で人を殺してきた罪人で咎人だぞ?
 そんなモノが、忠義や礼節、ましてや騎士の事なぞ知る訳が無いだろう?
 クックックッ・・・、あぁ、余りにも馬鹿馬鹿しい。
 私をコケにしたお前が余りにも腹立たしかったが、それが今ではアホらしくさえ感じる。」

その言葉が、余りにも腹立たしい。
目の前にいるモノが・・・、そのふてぶてしく煙を吸い、
私をコケにした、などと言う訳の分からない事を言う存在が!
『ギリッ』そう聞こえたのは自身が奥歯を噛み締める音だった。
手に伝わる小さな4つ痛みは、きっと、自身の爪が手の平に食い込んでいるものだろう。

「ある・・・、いやエヴァンジェリンよ・・・・。」

そう言いながら、自らの拳を構え、目の前の吸血鬼を睨みつける。
すると、吸血鬼は何か感じ取ったのか、顔をニヤつかせながら、キセルをなおし指でクイクイと、
こちらに、かかって来いとジェスチャーしながら、

「なんだ、いっちょうまえに怒ったのか使いっ走り。」

その傲慢さに怒りを覚え、瞬動を使い接近して、
その吸血鬼の顔に右の拳を見舞う。
速度、腰の入れ方、そして、握られた自らの拳の硬さ。
すべてにおいて完璧だった拳は、構えさえしていない彼女の顔に吸い込まれるように入り、
間違いなく、吸血鬼を殴り飛ばすに足る力はあった。

だが、吸血鬼はその拳を受けてなお、1歩たりとも動く事無く、
拳のめり込んだ頬を、首だけの力で強引に横に振って俺の拳を弾き、
殴りかかった俺の瞳をまたもや、怒気を含ませた視線で射抜くように睨みながら、
その口のはしからツーッっと一筋血を垂らしながら、

「そんな空虚な一撃で私は倒せんよ。
 今、キサマが抱いている怒りの薄っぺらさ、今、私が怒っている理由、
 そして、欲したモノの真の価値をさえ理解できぬキサマでは、
 何千年、何万年たとうとも、私に膝を折らせる事などできん!!!」

そう言って、放たれた吸血鬼拳は掬い上げる様な顎への一撃。
それを首を振ってかわしながら、自らのやり所のない怒りを乗せて拳を放つ。
一体、目の前の吸血鬼は何を口走っている!?

「おまえは一体何が言いたい!?
 先ほどから意味や理解と言って、何故、それを教えない!?」

そう言いながら、左の拳を再度、顔に放てば吸血鬼はそれをよける事無く、
頬で受け止めながら、今後はボディに拳を放ちながら、

「キサマは既に答えも意味も知っている!!
 そして、それはキサマが気付かなければ、永遠に手に入らないモノだ!!!」

そう、言われながら放たれた重い拳を、拳が当たる瞬間に腹を引き締めて受け止める。
しかし、それでも彼女の拳は重い。だが、私もここで引く訳にはいかない。
目の前の吸血鬼が、何を言いたいのか解らない。
だが、吸血鬼は・・・、いや、彼女が何かを伝えたいという事だけは、彼女の言葉と、
何より、振るわれる拳に乗っている思いが伝えてくる!
だが、

「一体・・・、一体どういう事なんだ!!!
 一体、何がどういう事なんだよ!!!」

解らない事のジレンマに八つ当たり気味に、拳を振り上げれば、
彼女も同じように拳を振り上げながら、小さく、本当に小さく『チッ』と、
舌打ちをしながら、何処か苛立たしく、そして悲しそうに、

「あぁ、もう!!
 キサマは何を欲していた!?キサマは何を手に入れた!?
 そして、キサマは・・・、キサマは一体今まで何を見て何を感じてきた!?
 キサマの今に至るまでの道程は、そんなにも楽な道のりだったのか!?」

そう言いながら放たれた拳は、私の拳と交差し、まるでそれが当然かの様に、
お互いの顔に吸い込まれて鼻を打つ。
当たった瞬間に、手から伝わる感触では間違いなく彼女の鼻は折れたが、
それは俺の鼻も変わらず、溢れ出るように血がボタボタと流れる。
だが、それでもお互い倒れず、握られた拳はそのままに、
私は・・・、いや、俺は思考しだす。

何を欲していた?
そんなもの決まっている、騎士としての忠義だ。
自身が生きていた時、俺はそれではなく、自身の誓約を優先し、
自らの主を裏切り、裏切りの騎士として生き抜き、結局はその裏切った主に殺された。
だからこそ、俺は忠義を欲した。

何を感じてきた?
そんなもの決まっている、聞くのも見るのも初めての場所を旅し、
訳のわからない生物と戦い、終いには神と思しきモノと戦い、あまつさえそれにも勝利した。
それは、多分俺一人なら余りにも過酷で、きっとなしえなかった偉業。
そして、それをなしえた後も、笑い出してしまいそうだが、いまだに戦いつつも世界を旅している。

俺はそんな中、たった一人の主と共に戦い、
新たな仲間もでき、この面白おかしくも恐ろしい世界を笑いながら旅している。
そう、一人では笑う事は出来ないが、今の生活を面白いと感じる事のできる主と仲間と旅をしている。

そこに至る道程が楽なものだったか?
まさか、死に掛けた回数は片手では足りず、両手両足を足しても足りない。
むしろ、自らの主は死にかけたと言うより、死亡した回数をカウントした方が早いのかもしれない。
それほど過酷な道を歩めたのも、俺が俺であるために行動する事ができ、それを認めてくれる主が出来たからだ。

そして、俺は何を手に入れたか。
呼び出されてすぐにした契約は多分、今も生きている。
そうでなければ、彼女は、エヴァは拳を振る事も無く俺を捨てて立ち去っただろう。
だが、今もこうして俺とエヴァはお互いの顔と言わず腹と言わず、常人なら一発で即死するような拳を、
拳が振るえるであろう位置には拳を叩き込み、お互いがボロッカスになるのも顧みず乱打合戦をやっている。
そして、そんな中、彼女が怒っている理由や、俺が最初に殴り飛ばされた理由を考えれば、それは余りにも分かりすぎる理由だ。

俺が欲したモノは、形が無い。

それは俺の心の中にあるものだから。

俺が欲したモノの形は、俺が形作らないといけない。

それが俺の欲したモノの形だから。

でも、それは一人では完成できない。

なにせ、それを一人で完成させても信念にしか成らず、忠義にはないから。
俺の欲しているモノは、実はとんでもなく手に入れるのが難しくて、それでいてけして一人では手に入らない代物。
手に入れても、それはすぐに崩れて壊れ去るほど、脆く儚いモノで、例えば疑うだけでなくなる。
そして、俺は今自らの質問で自らの欲していたモノを壊し、あまつさえ、主の顔にも泥を塗った。

だってそうだろう。
契約内容は、世界中の誰もが如何、俺を罵ろうと、主だけは・・・、
エヴァだけは、絶対に俺を忠義の騎士だと認めるといったのだから!
なのに、それなのに俺は彼女が認めている事も、顧みず自身の手でそれを疑い、
信じてくれている、彼女の言うように騎士で無い彼女が、なおも在ると肯定してくれていたモノを踏みにじった。
今の今まで、彼女が俺を呼び活躍の機会を、忠義がどういったものかわからない彼女が、
なおも、その忠義を示せるであろう機会に俺の事を呼んでくれた彼女を、俺が裏切った。

そう、今の今まで俺は・・・、忠義をこの胸に手に入れ、そして、忠義の騎士でいられたんだ。

自らの事を絶対的に肯定してくれる主が、俺の主として目の前にいたんだ・・・。

『喜べ騎士、君の願いはかなう。』そう、彼女は断言した。
そうだろう、なにせ、彼女でも自らの欲したモノの意味を知らず、
それを手に入れた後に、完璧に手に入れたモノを疑う馬鹿がいるとは思わない。
そして、それを疑った俺に送る言葉なぞ、確かに『知るか。』しかない。
そこまで来て、自身の発した言葉の重大さに恐怖し、
そして、今まで振るっていた拳がいかに空虚なものか知らされた。

考えながらも打ち出していた拳は次第に数が減り、それに合わせるかのように、エヴァのくりだす拳も減っていく。
エヴァの顔は、骨だけを回復しているのか、それ以外の場所は殴られたという事が、一目でわかるほど酷く、
多分、俺の顔の方も・・・、いや、俺は彼女の拳を避けたりしたが、俺の振るう拳を彼女は避ける事もせずに受け止め続けた。
それは、避けられなかったではなく、避けなかったが正解で、彼女の使う武術が後の先を取るものなら、
俺が攻めれば攻めるほど、エヴァが有利にならないとおかしいんだ・・・。
その考えにまで至った時、肩で息をする彼女が、瞳の輝き衰えぬまま口を開く。

「どう・・・、した?
 空虚な・・、拳でも・・・、振るえば疲れるか?」

そういった後、彼女は大きく息を吸い込んで、

「お前はこの程度か!!!!」

そう、俺の瞳を見ながら一喝して来る。
だが、俺はどう彼女に声をかければ言いのだろう?
一体、何をどうすればいいのか、今度はそれが分からない。
そして、こんな状態の俺とエヴァが元に戻れるのかも解らない。
でも、俺は今口を開かなければならない。
その言葉に打算無くとも、その言葉に考えなくとも、
そして、それがどんなに厚顔無恥に思えても。

「すまない、本当にすまない・・・。
 だが、どうか俺を君の騎士でいさせてくれないか?」

そう言うと、彼女はやはり不機嫌そうな声で、口を開き、
今だに構えた拳を解かぬまま

「謝罪は受け取るが、次のモノは知らん!!」

そう、返す彼女の言葉にたまらなく寂しくなる。
自身が得ていたモノすべてが足元より崩れ去り、隣にエヴァも居らず、
この知り合い無き広い世界で1人で朽ちるまで生きることが。
いや、俺自身が朽ち果てるかも解らないこの状況で放り出されれば、
それこそ、永久の彷徨い人になるのかもしれない。
だが、それほどまでに自身がしでかした事は重大で、
彼女を裏切り、あまつさえ、その綺麗な顔に何度と無く拳を振るった。
そのことで、顔をうつむけようとした瞬間、

「そんなにいたければ、男なら拳骨で自分の居場所ぐらい奪い取ってみろ。」

そう、彼女が拳を握ったまま口を開いた。
だが、それは・・・!

「いいのか?」

そう聞くと、エヴァは拳を構えたまま、
今までできた傷を治す事無く、

「何がだ?今までお前は、馬鹿な事を言いって、私を怒らせながら顔を撫でくり回していたんだろ?
 何でそんな者に私がおいそれと、私の横にいる権利をやらねばならん?」

そう、牙を剥き傷のせいで多少歪んでいながらも、笑顔とわかる顔を作る。
そして、それに答えるように自然と俺も拳を構える。
そうすると、彼女はその歪んだ笑顔のまま、

「さて、これからは撫でるんじゃなくて殴るんだろ?
 と、言っても、もうじき朝で私は眠いんだ。
 私を一撃で倒すか、それとも、私の一撃に耐えるかどっちかしかないがかまわんか?」

そう、拳を構えた彼女は言ってくるが、それは彼女の最大限のサービスにして、
同時に、耐えれなければ、或いは倒さなければ本当に捨てるという意思の現れ。
だから、俺はこの一撃にかけるも、彼女の全力の一撃に耐えるかしなければならない。
そう思うと、自然と体に力がわいてくる。

それは、魔力なんてモノでも気なんてモノでもなく、
何処か心の奥底にあるもの、多分、彼女ならこれをこう呼ぶだろう、曰く強欲と。
自身が欲するモノのために行動する彼女なら、間違いなくこれをそう呼ぶ。
それに、これを心の強さなんて綺麗な言葉で塗り固めて言うのは、彼女の騎士らしくない・・・・・
彼女と共に現実を見続けている俺は、いや、俺はとうの昔に綺麗なんかじゃない。
むしろ、綺麗でいられる訳が無いんだ。

「かまわない。むしろ、最後に立っているのは俺だ。」

そう言うと、彼女は喉を鳴らして笑いながら、

「ククク・・・、いいのかそんな大見得切って?
 私は悪い吸血鬼だから、平気で悪い事をするぞ?
 それに、吸血鬼らしい業も知ってるしな。」

そう言ってくるが、それでも俺はかまわない。
むしろ、彼女がそうするなら俺も望む所だ。
どんなものであれ、この一撃で片がつく。
実際の所、俺の方も乱打戦ですべて避けた訳ではなく、
更に言えば、彼女の拳は途方も無く重くまた思かった。
それに、今の言い口だと、彼女は確実に悪い事をすると言っているようなものだ。

「来るが言い我が主よ、如何な一撃にも耐え、俺は俺のいたい場所に舞い戻る。」

そう言うと、エヴァはやはり俺の言っている事が面白いのか、
笑いを含んだ語調で、だが暖かく。

「結果が出る前に勝手に結果を出すな馬鹿。
 ただ、本当に耐えれなかったらわかる・・・・、よな?」

そう、最後だけ、本当にその最後だけ彼女が本気である事を伝えてくる。
それに、俺も無言でエヴァの目を見ながらうなずく。
もう、ここから先は言葉は不要。
ただ、次の瞬間一体どちらが立っているかで勝負がつく。

お互いの目を射抜くように見て、視線が交差し、絡み合うそして、その時が来た。
エヴァは左の拳をスッと引き、そのまま真っ直ぐ殴ろうと腕を突き出してくる。
だが、俺とエヴァとは体格差があり、彼女がこのまま真っ直ぐ殴ったとして、
同じく真っ直ぐ、その顔を殴ろうとしている俺には届かない。
だが、この一撃で間違いなく勝負はつくはずだ!

俺の拳はエヴァの拳の外側を通っているが、そこからねじり込む様にエヴァの頬めがけて、奥歯を噛み締め全力で殴りこむ。
しかし、エヴァもそれを黙って受けるつもりは無いのか、突き出した左腕の肘を立てて、
俺の拳の角度を頬よりも更に下にしようとしている。
だが、それでも肘を立てたせいで彼女の拳は間違いなく、そう間違いなく俺の顔からは遠ざかった。
それと同時に、一撃で何かをするならこのタイミングしかない。

なにせ、エヴァはまるで三日月のように口を開き、肘を立てたのと同時に姿勢を低くして俺の懐に一歩踏み込み、
そのエヴァの踏み込みと、俺の前にでる速度、そして、この一撃にすべてを賭けるために、
全身のばねを使ったせいで、打ち出した拳を下に軌道修正されれば、それと同じように俺の顔も下に下がる。
そんな状況で、エヴァの口はスローモーションのように動き、彼女の多分今出している技名を言ている。

「ブ・ラ・ッ・ディー・ク・ロ・ス!!!」

そう彼女が言い終わると同時に、今まで感じた事のないような衝撃が顎から頭に伝わる。
当然だろう、彼女は俺の力と彼女の力、俺の下がる頭に、彼女の低い姿勢からの、
跳ぶ様に全身で打ち出されたアッパーが、俺の顎を捉えたのだから。
そして、そのまま俺の全身がふわりと宙に浮く。
突き抜けた衝撃のせいで頭の中が激しく揺さぶられ、辺りの景色も、エヴァの顔もぐちゃぐちゃになる。
だが、俺はこの一撃に耐えなければならない、どうあろうとも、この一撃に耐えて、
気絶してでも、彼女の前では立っていなければならない。

そう思うと、自然と口が開いた。
こんな状況だからこそ、そう、こんな状況だからこそ、
彼女の横にいるなら、笑い飛ばすぐらいでないといけないんだ。
そして、自身が上に打ち上げられた後に来るのは、急速な落下。
そして、俺の両脚は間違いなく地に着き、俺の体は倒れる事無く、彼女の前に立つ事ができた。
俺はエヴァを見下ろし、エヴァは俺を見上げる。

「チッ、手加減しすぎたか。
 頭を砕くつもりで殴り飛ばしたのに、首から上が残った。」

そう、悪態をつく彼女に、俺からも言う事がある。
頭がくらくらする感覚もあるし、下手に足を動かせば倒れるかもしれない。
でも、これだけは言っておかないといけない。

「耐え抜いて見せたぞ。
 君の騎士は俺で、俺の主は君だ。」

そう言うと、エヴァは『はぁ~っ』と、顔を下げながら深い深い溜息をついた後、
頭を下げたまま、力なく俺の胸をポカポカ殴りながら、

「認めてやるさ、我が騎士よ。
 それと、これからあんまり悲しい事は言うな。
 楽しいのは好きだが、悲しいのは好かん。
 自分の欲しがったモノを自分で疑うなんて、そして、手に入れたモノを疑うなんて悲しすぎるだろ。

 ・・・、チャチャゼロ、取り敢えず十数年だがいろいろ在っただろ。
 私は足りない主かもしれないし、ちっぽけな存在で、ちっぽけなプライドや誇りに縋って生きている。
 私は騎士を知らなければ、忠義もどういったモノか解らない。
 だから、私はお前に騎士を学び、お前に忠義をみた。」

そう、エヴァは顔を上げずに、ひたすら俺の胸を顔を上げずに叩く。
そして、俺はその言葉を噛み締め胸に刻む。
今回の、この不始末は俺の責任なのだから。
そうやって黙って、彼女の言葉を聴いていると、
彼女がクィッともう傷の無い綺麗な顔を上げ、俺の目を見据えながら、

「お前は、あの夜の契約代価を覚えてるか?」

そう聞いてくる。
何事だろうと思うが、彼女の言った代価は、

「『今の傷口への口付けは代価だ。処女の乙女の、しかも主の初めての口付け。』だったはずだが?」

そう言うと、エヴァは何処か目を泳がせて、
歯切れの悪そうな声色で、

「いや、自身で考えても中々に酷な代価だと思ってな。
 それに、口づ・・・・。」

そう最後は消え入りそうな声で言いながら、うつむいて、そわそわもじもじした後、
小さく『よし!』と気合を入れた後、エヴァはガバッと顔を上げ、

「チャチャゼロ・カラクリ!!!!
 目ぇ瞑れ!!!!!」

そう、エヴァが急に大声を出したので、反射的に目を瞑ると、
ふっと耳に、

「・・・・、頭の言葉、今撤回してやる。」

そう、何処かぶっきら棒な声がして、『え?』っと、口を開こうとする間もなく、
一瞬俺の唇に、何か柔らかいものがふわりと中る。
中たった瞬間に目を開いたが、目に映るのはエヴァの背中のみ、
そして、エヴァは昇る朝日を真正面から受けながら、大きく手を開き、

「世界は何処までも無慈悲で残酷だが、だが、それでも絶望するほど酷くは無い。
 なにせ、私のような悪い吸血鬼が生きていけるのだからな。」

そう言う、エヴァの背中は朝日に中ってかすみ、だが、
草原を渡る風が、彼女の白い髪をなびかせて、その朝日をキラキラと反射させている。
その光景は余りにも幻想的で、一瞬彼女は本当にそこにいるのかと疑いたくなるが、
だが、彼女は間違いなくそこにいた。
なにせ、

「ついでに代価の上乗せだ。・・・・・・・、私の背中の護り、お前に全部預けたぞ。」

そう、彼女は朝日をその全身で浴びながら言葉を発する。
そして、俺は声も出せずに、この光景と今の言葉を頭で反芻していると。
彼女はまるで、何事も無いかのように、

「さて、私は寝る。
 ・・・、今は顔見るなよ、運ぶなら背負って運べ。」

そう言うと同時に、彼女は糸が切れたかのように後ろに倒れだし、
俺はその突然の行動に、あわてて駆け出し、何とか彼女を地面に横たえる事無く支える事ができた。
そして、顔を見ないように注意しながら背負うと、耳元ではスースーと言う穏やかな寝息と、
余りにも軽い彼女の体重が背中にのしかかる。

まぁ、それも当然なのだろう、なにせ、彼女の本体の体重は俺の半分ぐらいしかないのだから。
だが、それでも今俺が背中に背負っている人は俺にとってかけがえのない人だ。
そう思っていると、辺りから視線を感じるので、そちらの方を見ると、
今回の事に加わった面子が、全員こちらを見ていた。
そして、ロベルタが俺を射殺さんばかりの視線を投げかけてくる。
ふぅ、どうやら、俺の騒がしくも忙しく、愛すべき日常は今日も異常が無いらしい。


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