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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 見たかったな第46話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:122d81a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/19 00:19
見たかったな第46話







降りしきる雨の中、男は一人雨雲を見上げながら、その歪な顔を歪め、
笑みとも、威嚇とも取れる表情を作っていた。

「クククッ・・・・、あの時も・・・・、そうあの時も雨だった。」

思い出されるのは、自身の栄光と、その後に待っていた仕打ち。

「ディアール殿、そなたの指揮する騎士団、
 それは誠に神の意向に沿い、かのジャンヌの指揮する騎士団と見まごおばかり。
 これよりいっそうの精進と、蛮族の都であるイギリスの陥落。
 その時まで神と共にあらんことを。」

そう言ったのは、とある司祭。
かつて、自身が信じ自身の栄誉をたたえ、自身が神へ捧げる忠義を取り立てた一人。
それを思い出すと共に、自身の額から走る傷をなぞり、虚空なる右目を抑える。

「大司教様危ない!!!」

斬りかかる蛮族の剣閃は鋭く、自身は鎧を着て、思うような俊敏は得られない。
剣を抜くその時間さえも惜しく、自身の体を楯に蛮族の前に飛び出せば、
その剣は顔を駆け抜け、そこに残ったのはただ熱された一筋の線と、右半分の闇。
だが、それさえも気にせず自身の剣を逆手で抜き、蛮族の顎から脳天を貫く。

その時、私の右目は神へと捧げられ、供物となった右目を大司教達は神への忠誠の証ともてはやし、
私も、自身の忠誠と、神への供物と捧げられた右目の傷を誇り、威風堂々と自身の指揮する騎士団を指揮した。
戦で負う騎士の傷は栄誉の証、捧げられた右の光は忠誠のしるし。
傷が増え、蛮族の血に塗れ、血河屍の山を築き、魔獣を狩り、魔法使いを狩り、ただひたすらに神を・・・、
神に仕える大司教達の言葉を神託と信じ、朽ちた仲間を乗り越え、折れた剣をなおも振るい、
自身を一振りの剣として、神の敵たる蛮族を狩る。

「この腕もそうだ・・・・。
 いや、体中に無数にある傷すべてがそうだ!」

そう言って、もう拳を握る事も出来ない、左手の有るべき所に付いたL字型で、
角の部分のみが、ぼこりと膨らんだ異様な鉤爪をジロリと見る。

「ディアール殿、その腕は如何なされた?」

そう聞いたのは、とある貴族に使えた騎士。

「自身が至らないばかりに、不覚にも蛮族に切り落とされました。
 ですが、その切り落とした蛮族も、今は煉獄の炎に焼かれているでしょう。」

そう言うと、その騎士は顔をニヤリとゆがめながら立ち去った。
そして、その後・・・、今のような雨の中蛮族を狩り、
泥にまみれ、死に物狂いで戦う戦場で、たった一人の伝令によって知らされた知らせ。

「馬鹿な!!イギリス陥落は目前で、何故ここまで来て撤退せねばならぬ!!!
 我等が誇るジャンヌは、かの地で異端と罵られて殺された!!!
 あのクソのような蛮族を皆殺しにし、土地を奪還し、我等が神へ捧げるが修道騎士団が責務にして悲願!!!
 それを!!!その事を知っておきながら何故だ!!!!」

そう、来た伝令の首を掴み問えば、
来た伝令は私の手を払いながら、

「私は知らない!!ただ、大司教様よりそう承ったのみ!!
 故に、この戦場を放棄し、直ちに帰還せよ!」

そう言って、伝令である男は去り、我等は戦場を苦渋と辛酸を飲み、
朽ちた仲間の死体をその場に残し、祈りを捧げる暇さえも無く攻略戦を撤退戦に替え国に帰還した。
そして、そこで待ち受けていた仕打ちが!!

「何故です!!何故ですか大司教様!!!
 何故今この時になって我々を!!!我々、修道騎士団を解散する!!!」

そう問えば、大司教は首を振りながら、
苛立った様な声で、

「解散ではない。そもそも、君達は修道騎士を名乗るが、
 洗礼を受けたのは君一人で、後の者達は皆ただの烏合の衆。
 だが、それでも君たちは良くやってくれた。
 だからこそ、君達に暇を出し自由に生きてもらおうとだね・・・。」

そうは言うが、我等に行く場所など無い。
もとより、孤児や私生児、口減らしに捨てられた者達が集まって出来た騎士団。
その騎士団に暇を出すという事は、ただ見捨てるのと同義!!
そう思い、もう一度大司教に騎士団存続を願い出ようと、
教会にある大司教の部屋の扉の前に行けば、

「まったく、あの猪武者にも困ったものだ。
 アレの醜く傷ついた顔に、不揃いな手を見るたび身の毛がよだつ。
 が、それも今日まで。アレ達には暇も出し、これからの時代は金と権力による貴族の時代。
 それなのに、今更あんな物あっても正直邪魔なだけそうでしょう、貴族様?」

「当然。私の予測では、この戦ももうじき終わる。
 ジャンヌは死に、ジルは隠居し、イギリスももう攻めるに攻め、
 その後に必要なのは信仰ではなく、神の力と言う権力と、王侯貴族による平貧民の統制。
 では頼みますよ、大司教殿。まぁ、まだ一部には古臭い信仰を貫こうとしている者もいるようですがね。
 まぁ、それもまたいずれは時に流される。」

握られた拳は白くなり、そして、自身の爪が手の平に食い込み拳を紅くする。
何が大司教か!何が貴族か!!何が忠義で、何が騎士か!!!
扉の内側にいるのは一体なんだ!?
大司教?クソ食らえ!!貴族?豚のようにクソ溜めで死ね!!
神が居わす教会に巣食うクソ蟲共がぁ!!

今すぐにでも、扉を開き中に居る者たちを斬り殺したい!!
神を裏切り、騎士を貶め、忠義を謀り、豚のように金を貪り食う。
こんな奴等の為に、我が同胞は蛮族と戦い散り、土に返り父の元へ向かった。
しかし、真に倒すべき異端はこの場にいた!
だが、ここを、神の居わす場所を異端者の血で汚すことはできない!!
だから、私は自らの率いた騎士団を連れ、教会を離れた。
そうしなければ、いずれこの者達も神にではなく、神の権力にかしずくようになるから。

邪魔でしかない我等を引き止める豚はおらず、仮に引き止められてもこちらから願い下げだ!
そして、私達は流れに流れ、今この場にいる。
流れる間に異端を狩り、補給も無く、異端の町であるラムトラを見ながら、
歯噛みしていた時の商人よりの異端討伐の依頼。
これは正しく、我等に異端を根絶やしにしろと言う思し召しだろう。

「我が同胞を抜いてこれるなら、来てみろ異端者共!!
 私が最後の関門として、キサマ等のそっ首を刎ね、くびり殺してくれる!!!」


ーsideディルムッドー


エヴァたちを残して森を歩む。
賊の気配はまだ残っているが、それでも今は監視を決め込むかのごとく息を潜め、実質の人数はわからない。
横の方を見れば、馬に乗ったホロと馬を操るロレンスそして、雨の中眼を細めながらも、
この月明かりも無い暗い森で、的確に羊を繰るノーラ。
そして、一番賊と繋がっていると思われるリーベルトは、
馬で俺たちよりも少し前を行って、ノーラと併走している。
そんな中、ホロが空を見上げながら小さな声で、

「止まぬ雨じゃの、こうも雨が降れば音も聞き辛いでありんす。
 せめて髭でも出せればの。」

そう言って、ロレンスと俺の方を見てくる。
こんな暗い森で少しでも賊の情報が手に入る物なら欲しいものだが、
どうやらホロの方も手を焼いているようだ。

「エヴァさん達の方は襲われていると思うか?」

そう、ロレンスがホロに聞けば、

「十中八九の。
 じゃが、アレの持つ最高戦力は平然としておる。」

そう言って、俺の方を頭で指してくる。
と、言っても彼女が早々ただの賊には遅れを取らない。

「よほど下手な相手で無い限り、彼女は苦戦しないよ。
 それに、ロベルタも一緒だしな。」

そう言うと、ホロとロレンスは黙り、俺の方も辺りの気配を再度探る。
そして、とうとう時が来たと言うべきか、

「敵襲ーーー!!!」

そう叫んだのは先頭のリーベルト、そして、何本もの矢がこちらへ飛んでくる!

「チッ!!」

そう、舌打ちを1つ。
矢が飛んでくる方に飛び出し、槍で叩き落す!

「ロレンス!!馬を早く前へ!!
 止まっていては狙われる!!」

そう叫べば、ロレンスは馬手綱を打つが、
馬はどこかに矢が当たったのか、足を引きずったような動きで答える。

「チャチャゼロ!!馬がやられた!!
 リーベルトーー、ノーラーーー無事か!!!」

そう叫ぶ先にはリーベルトはおらず、
ノーラは少し前にいたおかげか、矢の被害は無いようだ。
そして、矢を叩き落している後ろから、

「私達よりノーラを逃がしてください!!」

そう叫ぶロレンスの声、しかし、今ここを離れればロレンス達は矢面に晒される。
せめて、もう少しノーラが先に行くまでは、そう思い、飛んでくる矢を片方の槍で叩き落し、
もう片方の槍で矢の飛んでくる茂みの中へと気を飛ばし、攻撃をする。
そうすれば、茂みの中からくもった悲鳴がいくつか聞こえ、矢の応酬が止まり、
茂みから鎧を纏った賊達が剣を抜き攻めてくる。

「異端なる者共、今この場で朽ち果てよ!!!」

「我等が歩む先に異端者が居てはならん!!
 我等が歩むは巡礼の道、その道を汚す事なかれ!!」

そう言って、斬りかかって来る男達の心臓を穿ち、
頭を潰し、喉を貫き、或いは気の刃で斬り捨てていく。
だが、辺りに血の匂いが立ち込める事は無く、流れる血も雨に打たれ流れていく。

「雑兵よ!!来るならかかって来い!!
 キサマ等如きで俺を倒せると思うな!!」

そう叫べな、男達は狂ったように声を荒げ、

「我々が貴様を倒すのではない!!
 我々の神がお前を倒す事を望まれた!!!
 キサマのような異端は居てはならぬ!!
 貴様のような存在は居てはならぬ!!!
 神罰を!!!地上の代行者として神の神罰を!!!」

そう叫びながらかかって来る男の首を跳ね飛ばしながら、

「神などとうに殺した!!
 人を襲うキサマ等はただの悪漢に過ぎない!!!」

そう叫ぶと、心臓を穿った男がなおも身を呈して前進し、
片方の槍を封じようとするが、その男の全身よりも早く、男の膝を槍で穿ち、腹をけって木にたたき付ける。
そして、蹴り飛ばすと同時にあたりを見れば、羊の群れはもう見えず、
辺りには俺が殺した死体が転がる。

クッ、ノーラと離れすぎたか、襲撃が在った今ノーラの安全性はとても不安だ。
少なくとも、森の出口も近いここで襲撃すると言う事は、
ノーラを殺して、他の羊飼いに羊の誘導を頼むと言う手はずなのかもしれない。
ならば、これから先は『かかって来い』ではなく、自らの意思でかかって行き、死体の山を築く事になる。
そう思い、辺りを見渡せば、数人のいきり立った賊共。

「殺してやるから動くな。
 キサマ等が神罰だの言った所で、気にしない。
 俺は俺の目的のために、お前達を自らの意思で・・・、殺す!」


ーsideロレンスー


襲撃を受けた後はまさに嵐だった。
飛び交う矢に叫ばれる罵声と怒声、そんななかリーベルトの姿は消え、ノーラと羊達も姿を消し、
賊も矢が切れたのか、森から抜刀した賊が次々に襲いかかってくる。
そんな中、何処からとも無く槍を2本取り出したチャチャゼロさんは、
飛んでくる矢をすべて叩き落し、襲い掛かる賊を片っ端から屠っていく。

「ぬしよ、大丈夫かや?」

そう、声をかけたのは横に居るホロ。
馬は後ろ足に矢を受け走れず、ただこの場ので幸運と言えたのは、
馬は矢が刺さったのに大きくいななく事もなく、俺とホロは落馬せずにすみ、
なおかつ、チャチャゼロさんのおかげで、早々襲われる事が無い事だ。
そうして、木の陰に隠れながら、横に居るホロに、

「俺は大丈夫だ、ホロは?」

そうホロに返せば、ホロは木の陰からチャチャゼロさんの方を見ながら、

「アレの空気が変わったの。
 今まで見とるうちは防戦じゃったが、
 羊飼いの姿が消えたのを悟ったか、打って出ておる。
 それに、アレが最高戦力といっただけの事はある、まるで賊共がボロ雑巾のように屠られておる。
 ・・・・・、ぬしよ、怖いかや?」

そういった、ホロの横から顔を出してみれば、
チャチャゼロさんが2本の槍を持ち、地面を舐めるように疾走し、
賊達の心臓を付き、首を飛ばし、重鎧を着た男達は、その鎧ごと穿たれ、或いは叩き切られていく。
その姿は、はっきり言ってしまえば恐ろしい、その人の命を草のように刈り飛ばしていく姿が。
だが、俺はその姿に俺は恐怖を口にしてはいけない、なにせ、彼は俺達の為に賊を殺し、
今もなお森の中を疾走しているのだから。

「怖くない・・・・、ただ、彼の強さに驚いた。」

そう言うと、ホロは喉を低く鳴らしながら笑い、
頭から被っている布を外し、その頭上の耳をあらわにして辺りの音を聞きながら、

「多分、アレはまだ奥の手を隠しておるよ。
 わっちの見立てなら、アレが本気なら、ここを瞬きする間に平にできるじゃろ。
 それと、もう動くものがおらん。」

そういうホロの言葉にビクリとなると同時に、辺りを見回すが、
この闇夜では、早々辺りが如何と言う事は見て取れない。
が、ホロは自身が言った事を証明するかのように、木の陰から先ほどまで戦が行われていた場所に出て行った。
その後を追うようにそこに出れば、思いのほか血の匂いはせず、チャチャゼロさんも返り血を浴びたようには見えない。
ただ、辺りに転がる死体が、ここで争いが行われたと言う痕跡を残している。
そして、その戦場の真ん中に立つチャチャゼロさんは森の出口の方を見ながら、

「ノーラとリーベルトが先に向かった。
 だが、ノーラの安全が心配だ、ホロ、君のよく聞こえる耳で彼女に安否がわからないか?」

そうチャチャゼロさんがホロに聞けば、ホロは耳をピコピコ動かしながら、

「ノーラやリーベルトの音はわからん、
 じゃが、多くのものが列をなす音は聞こえるでありんす。」

そう、ホロがチャチャゼロさんに返す。
この森で列をなすものといえば、今は羊しかおらず、しかも、
その羊達がバラけていないと言う事は、まだ羊を指揮する者がいると言う事だ。
そして、それをチャチャゼロさんもその考えに至ったのか、

「彼女の元へ向かう。
 ここまで明確にレメリオ商会に襲われ、そんな状態でリーベルトがノーラを生かしておくとも考えられない。
 多分、森の出入り口がノーラの明暗を分ける場所だ。」

そうチャチャゼロさんが言い、ホロは死んだ男達の鎧と武器を見ながら、

「真新しいものが混じっておるな、多分誰かがこやつ等を手引きしたのじゃろう。」

そう言ってくる。
もう、ここまでお膳立てされれば、レメリオ商会の裏切りは明確となった。
そして、チャチャゼロさんが言うように、ノーラの明暗は森の出口付近だろう。
少なくとも、この森さえ抜ければ、草原のような見晴らしのいい場所で早々人を襲うやからもおらず、
普通の道を羊を連れて歩くだけなら、ただの羊飼いにも出来る。
そして、検問を通る時羊が金を羊を吐き出さないかも、ノーラほどの腕が無くとも、
犬を使いはやし立てて中に入れれば事足りる。

「どうします!?
 ここで争っている間にノーラとリーベルトは先に行き、
 人の足では追いつけませんよ!?」

そう、俺が言うとチャチャゼロさんは何処か渋い顔をしながら、

「ただ走っていくだけなら俺の足でも問題ない、
 だが、今は早さが明暗を分ける・・・・、ホロ、君の力を借りたい。」

そう、チャチャゼロさんがホロに言ってきた。
一体いつ、チャチャゼロさんはホロの事を知ったのか、
それは解らないし、心当たりがあるとすれば、それはエヴァさんぐらいしか思い当たらない。
だが、ここでホロが姿を晒し、ノーラを追いかければ、その先に何が待ち受けるかもわからない。
クッ、どうすればいい?そう思っているとホロから声が上がり、

「ぬしよ、預かっといてくりゃれ。」

そう言って、着ていた服を脱ぎだし俺に渡してくる。
そして、ホロはすべての服を脱ぎ終え、首にかかる袋から麦を取りだし、
その立派な尻尾を振りながら、

「なんじゃぬしよ、わっちに言う事があるんじゃないかや?」

そう言ってくる。
はぁ、何を今更俺は馬鹿なことを考えたのだろう。
『どうすればいい?』じゃなくて、どうにかしなければならないんだ!
そう思って、ホロの方を見ればホロは俺の言葉を待つかのように聞き耳を立てている。
そんな中、俺は初めて自身が商人である事を呪い、自身がこの場でどれほど無力かを知らされた。

「立派な尻尾だ。他のどんな狼よりも美しく勇壮だ。」

そう、ホロに返してやれば、ホロは何処かキョトンとした顔をした後、
口を開いて歯を見せながら笑い、

「ぬしにしては素直な言葉じゃ、じゃが、
 他の雄ならここで口付けの1つでもするのじゃろうな。」

そう言って、俺を見てくるが、その甘い果実は後に取っておこう。
なにせ、今ノーラが死ねば、その果実さえも永久にお預けになるのだから。
そう思っていると、ホロがため息を1つ吐き、

「さて、時間も無い少し眼を閉じてくりゃれ。」

そうホロが言い、チャチャゼロさんが眼を閉じるのを確認した後、俺も目を閉じる。
そして、次に眼を開けた時に目の前にいたのは、少女の姿のホロではなく、
巨大な躯体にそれに見合う巨大な口、爪はどこまでも鋭い。
そして、その姿にいまだ少なからず恐怖を覚える自身が情けなく、
ホロに対して申し訳ない気持ちになる。
そして、それを敏感に感じ取ったのか狼の姿のホロは、

「わっちが今だ恐ろしいかや、ぬしよ?」

そう聞いてくる。
が、俺はここで恐怖を口にしてはいけないんだ。
ただの人間である俺は、目の前の神に対して恐怖してはいけないんだ。
なにせ、それはホロを一人にする事になるから。

「この姿でりんごを食うホロを想像すると笑える。
 大酒を飲んで二日酔いするホロに親愛が芽生える。
 そして、今のホロが何処までも頼りになって最高のパートナーだと誇れる。」

そう言うと、ホロはその大きな口をさらに広げ、鳴き声とも、
雄叫びとも取れる声で笑いに笑い、

「ぬしの肝が太くなってわっちはうれしいよ。」

そう言った後、チャチャゼロさんを見て、

「ぬしは・・・、わっちが怖いわけは無いの。」

そう言うと、チャチャゼロさんは首をすくめながら、

「前に倒した神はピカピカ光る、ずんぐりとした熊みたいな神だったが、
 ホロはちゃんと実態がある神なんだな。」

そう言いながら、チャチャゼロさんはホロの喉の下辺りをゴロゴロ触っている。
が、何だか今おかしな話を聞いたような気がする、
そう思いホロの方を見ると、ホロの方も何だかポカンとしたような顔をしている。
まぁ、それでも狼だから表情は読めないのだが。

「ぬしよ、今の話詳しく話せるかや?」

そう言うと、チャチャゼロさんはふと考え込み、
その後、ニヤリと何処か人の悪い笑みを浮かべ、ホロの背中に乗りながら、

「今から走って、ノーラに追いついたら話そう。
 エヴァから、力を借りる時どんな代価を払っても言いといわれたが、
 その代価を払っても間に合わなければ意味がない。
 だから、ノーラが無事なら話を話す。」

そう言うと、ホロは何処か苦笑しながら、

「契約と代価かや、血吸いが好きそうなものじゃな。
 ・・・、契約しようチャチャゼロ、ただ振り落とされるでない。
 後、ぬしはどうするかや?」

そう、ホロが聞いてくるが、俺はこの先付いていっても邪魔になる。
先に潜む賊の数は不明で、もし俺が捕まりでもすれば、その時点で俺たちは不利になるだから。
何処までも悔しいが、

「俺はここから馬を連れて町に戻る。
 それに、ここを歩いていればエヴァさん達が追いつくはずだ。」

そう言ってホロを見れば、ホロは俺の目を見ながら、

「雄なら、付いてくるといって欲しいものじゃが、
 それで死なれては元も子もないでありんす。
 ・・・・、ぬしにしては英断じゃよ。」

「ロレンス、後のことは頼む。」

そう、チャチャゼロさんが言葉を吐くとホロは突風のように姿を消し、
森の中には俺1人と、馬が一頭残され、そしてその数分後、森を走るエヴァさん達と出会う。



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