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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 商人・・・、なのかな第44話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:122d81a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/22 01:29
商人・・・、なのかな第44話







ラムトラに着いてすぐ、ロレンスとリーベルトは買い物があると街に消え、
ノーラの方は、羊の番があると町の近くの草原に残った。
その際、ノーラを診療するフリをして服の中にコウモリをしのばせ、
ついでに、ディルムッドをノーラの所に残してきて安全を確保した。
後は、針と糸なんかも置いてこれればよかったのだが、どちらにしろ夜なのであってもあまり意味は無い。
昔は、大人の姿でコウモリを出したりは出来なかったが、何事も練習してみるものである。
と、それはさて置き、残されたのは俺とホロとロベルタ。

そのロベルタは、街角で聖書の内容を一文字一句間違いなく・・・、
だと思うが、暗唱して宣教師としての体面を保っている。
まぁ、ただ時折ご機嫌すぎる聖句が飛び出すので、聞いていてなかなかに面白い。
そう思いながら、今の内と魔法薬をキセルで吸っていると、横のホロが同じくロベルタを眺めながら、

「エヴァよ、おぬしは今回の件、このまま何もなく無事終わると思うかや?」

そう、馬車の荷台で前かがみになり、両手で頬を支えながら聞いてきた。
さて、どう答えるか。

「何でそんな事を私に聞く?」

そう、質問を質問で返すと、
ホロは溜息をつきながらジト目で、

「リーベルトが森から戻ったときに血の匂いが漂っておった。
 じゃから、ぬしに聞いてみた。」

そう言ってくるが、流血沙汰の事件なんて知らない。
しかも、森から戻ってと言う事は、その森の中で何か起こったと言うのが妥当だろう。
だが、少なくとも襲ってくるのは、レメリオ商会の商人達のはずだ。
しかし、ホロは血の匂いを感じ取ったといった。
となると、

「森に潜むのは賊か?」

スッと目を細めてホロの方を見ると、
ホロの方も同じく目を細めて俺の方を見ながら、

「わからん。人の世はいつも血の匂いに満ちておる。
 それは、わっちが麦に潜み地を肥えさせておった時も一緒。
 じゃから、最初はリーベルトが死体か何かを見つけて、それを勝手に始末した物と思ったが、
 ぬしは何か心当たりがあるようじゃな。」

そういって、口元をニヤリと擬音がしそうなほど吊り上げて見せた。
はぁ、下手に隠し事も出来ず、カマかけには簡単に引っかかる。
もっと精進せんといかんな、少なくとも、ホロと正面切って化かし合いが出来るほどには。

「在る無しで言えば在る。
 ただ、それが真実かは知らないし、確証もない。
 ・・・、広がる波紋はいずれ何かにぶつかり、反響となって帰ってくる。
 故に、最悪と最良の両方を考えるしかない。」

そう言うと、ホロは荷台に積んであった水を飲みながら、

「で、その最良と最悪はなんじゃ?」

そう聞いてくるので、煙をポワッと吐きながら、

「最良は何もない事、最悪は何か起こる事。
 ただそれだけだろ、どちらにしろ血の匂いだけでは判断できん。」

そう言うと、ホロはまだ何かこちらが隠しているのではないかとジロジロ見てくるが、
それを受け流す、ポーカーフェイスぐらいは持ち合わせている。
そして、ホロもこちらがこれ以上何も出す物がないと思ったのか、
ため息を1つ着いて、

「エヴァよ、これだけははっきりさせてよいかや?」

そう言いながら、俺の目を見てくる。
その眼差しは、一切の迷いも無く、射貫くと言う表現がシックリくるぐらい真っ直ぐな物だ。
一体なんだと言うのだろう、そう思いながらホロの方を見ていると、ホロは吐露するように、

「わっちは今の旅を気に入っておる。
 ・・・、一人はいやじゃ・・・、もう一人はいやなんじゃよ。
 崇められるのも好かんし、何よりもう、わっちはただ見ているだけと言うのに飽いた。
 じゃから、ぬしに言う。ぬしの牙の鋭さ、偽りは無いかや?」

それに関しての答えは、あまりにも明確にでている。
むしろ、俺はそれ以外の答えを持ち合わせていない。

「知の牙は賢狼に、武の牙を真祖に。
 こんなちっぽけな私でも、誇りもあれば信念もある。
 女子供を殺さんと言う誇り、自身が救いたいと思う者の為に、醜く悪鬼と罵られようとも足掻く信念。
 私は我侭でエゴイストだよ、一切合財引き受けた上で楽しくないと気に食わないのだからな。」

そう言って、笑うとホロは自身の額に手を当てて下を向きながら、

「ぬしは危険じゃ。
 よく覚えておくといい、そのぬしの思考はとんでもなく危険じゃ。
 じゃが、それに殉じる覚悟があるのならまだ、救いはあるでありんす。」

そうは言うが、既に後悔は死ぬ間際まで捨て、多分、死ぬ瞬間も後悔はしない。
それに、この思考は自身の根底にあるものである。
つまる所、殉じる殉じない以前にこれ以外持ち合わせていないのだ。
いくら知識があろうと、それを楽しく活かせなければ意味がなく、
知識がなければ、それを楽しむツールが無い。

「悪いがホロ、お前が危険だといくら言おうとも、私はこの私以外になれない。
 むしろ、それだけは絶対に出来ない。なにせ、今の私は覚悟を決めた私だからな。」

そう言うと、ホロは空を見上げながら、

「ぬしは苦労するよ、これからもこの先も。
 多分、ぬしの楽しみの大半はいらん苦労じゃろうからな。」

そうは言うが、日本にはこんなことわざもある。
曰く、

「若いうちは、買ってでも苦労したほうがいいらしいぞ。
 なにせ、私はお前が言うほどに若い。
 だから、いらん苦労もいずれ身になり実りとなる。」

そう言って、空を見上げれば、そこには満月には少々足りない白い月。
だが、見えるのはそれだけで、他の星は厚い雲に覆われている。
・・・、なんだろう、井戸の底から上空を見上げれば、きっとこんな風景が見れるのだろう。
まぁ、それでも、見下げるよりは、見上げる方が俺の性にあってる。

「なぁ、ホロ。
 死を持たない私達に訪れる死とはどういったものだ?」

不意にそう、口を付いて出た言葉を、ホロはよく聞こえる両の耳で聞き、
俺の言った何気なく出た言葉に、これまた何気なく、

「自殺、後は知らん。」

そう、ぶっきらぼうに答えた。
・・・・・、なるほどな。
他者では殺す術が無くとも、自身の力で、自身を殺せば事足りると言う訳か。

「なら、どの道私は私を殺す者が現れるまでは生きるとしよう。
 自殺なぞ、私が最も嫌うものだ。」

そう言うと、ホロも横で月を見上げながら、

「わっちもでありんす。」

そう、静かに相槌を打った。
そうして、どれくらい経っただろうか。
通りを歩いていた人々は、いつしか宿や家に帰り、
それに習うように、ロベルタを取り巻いていた人々も消えた。
俺達のいる場所は、町の中心近くだが、それでもこの時間になれば光源は無く、
辺りはよる闇に包まれ、ただ静か過ぎるほどに静かに風の音だけを伝えてくる。
ついでに、空を見上げれば最後まで顔を出していた月は雲に隠れ、心なしか湿った風が吹いてくる。
多分、もうじき雨が降り出す。

それは予感でしかないが、しかし、そうなれば今からこの町を発つ事になる。
と、言うのもこの街に来るまでの道は、あまり人が通らないのだろう、
所々は踏み固まった所もあるが、それ以外は雨が降れば確実にぬかるみ足を取られる。
そうなれば、今度は借金の期限が迫り、借金を返せないホロとロレンスはめでたく無く、
奴隷として売られて行く。

ちなみに、ロレンスに奴隷として売られて死ぬ要因は病気と事故で、疲労骨折とかは無いのかと聞くと、
そのこと事態を知らず、むしろ、売られた先で借金を返しきる事ができれば、もれなく強靭な肉体が手に入るらしい。
しかも、その病気も相当酷い所に行かないとかからないと言うのだから、なんとも生命力逞しい。
そんな事を考えていると、ディルムッドから念話が飛んでくる。

(エヴァ、ロレンス達がこっちに来てるんだが、どうもそわそわして様子がおかしい。
 多分、金の密輸の準備だから、一旦ノーラの近くから離れた方が得策だと思うが?)

ふむ、コウモリも仕込んでるし離れても問題はないか。
それに、ここで下手に時間を食って、密輸失敗なんていう馬鹿な目にあうのは困る。
ついでに言えば、今のこのパーティーで一番安全なのはノーラである。
なにせ、彼女の死=密輸失敗と言う運びになり、そうなればレメリオ商会も潰れてしまう。
つまりは、リーベルトがことを起こすまでと言う有限はあるが、逆を言えばその時までは皆が必死にノーラを護ろうとする。
うむ、正しくクィーンだな。

(一応、保険もあるし、どの道今のノーラを襲う相手もいない。
 適当な理由をつけて、いったんこっちの戻ってきて良いぞ。)

そう、念話を送り返して程なくして、ディルムッドがこちらに現れた。

「戻ったよ、何だか雨が降りそうな天気だな。
 妙に空気が重い気がする。」

そう言いながら、こちらに近寄ってきて、俺の横に立つ。

「多分、もうすぐ降出す。
 そうなると、帰りが面倒だな。」

そう言いながら、空を見上げると、ホロも同じように口を開き、

「じゃが、帰らんともう期限がせまっておる。
 どちらにせよ、もう出発でありんす。
 ほれ、ロレンスが戻ってきよる。」

そう行って、ホロの指差す先に視線を向けると、
そこには闇の中を歩いてくるロレンスが見える。
ふむ、いよいよか・・・・、ただ、何が襲ってくるか分から無くなったというのはあるが、
それでも、早々おかしな物は出てこないだろうし、出るにしても魔獣なんかが関の山・・・、だと思う。
まぁ、とりあえずは、

「チャチャゼロとロベルタで荷台の幌を外してくれ。
 私はロレンスを迎えに行ってくる。」

「了解、夜で光も少なく周囲は見えたほうが良いからな。」、

「チャチャゼロさん、手っ取り早く始めましょう。」

そう言ってキセルをなおし、ディルムッドとロベルタに馬車の方をまかせ、夜深の中を歩いていく。
ふむ、こんな時に夜でも、辺りが昼と変わらないように見えるというのは便利だ。
そう思いながら歩き、こちらに向かってくるロレンスと合流する。

「今晩はロレンス、いい夜だな。
 まるで、帰り道に私達を襲ってくれといわんばかりの天気だ。」

そう言って、牙を見せながら笑うと、
ロレンスは嫌そうな顔をしながら、

「貴方が襲わないで下さいよエヴァさん。
 と、言うより貴方が何か言うと、本当に何か起こりそうで怖いんですから。」

そう言いながら、横に並んで歩く俺を見下ろしてくる。
ふむ、悲しいお知らせをロレンスにしないといけないかもしれない。

「残念な事に、襲われるのはほぼ確実らしい。
 ホロがリーベルトから血の匂いを嗅ぎとったと言ったからな。
 と、そういえばリーベルトは?」

そうロレンスに聞くと、ロレンスは横を歩きながら、

「今はノーラの所に。
 しかし、血の匂いだけで襲われるというのは、少々早計ではありませんか?
 もしかすれば、何か別の理由で血の匂いがしたのかもしれません。
 例えば、先ほどリーベルトさんと密輸の準備をしている時に、首に包帯をしているのみチラリと見ました。
 もしかすれば、その傷からした血の香りかもしれませんよ。」

そういてくるが、今のロレンスのせいで襲われるのが、商人ではないというのが確実になった。
少なくとも、レメリオ商会の商人が襲ってくるなら、リーベルトは怪我をしなくてもいい。
もし仮に怪我をするにしても、首と言う人体の弱点が集まった場所を、
包帯を巻くほどに、怪我をすると言うのもなかなか考えられない。
まぁ、もしかすれば、レメリオ商会に借金を取り立てに来た、
別の商会の人間と、いざこざがあったのかもしれないが、
それなら、わざわざ負傷したリーベルトを、この買い付けの旅に同行させなくてもいい。

つまる所、ここにリーベルトがいる事=誰かに襲われる事と言うのがほぼ確実になる。
しかも、彼が負傷してなお、同行しなければならないと言う状況だと、
もしかすれば、商会の人間ではなく、別の所に襲うことを委託したのかもしれない。
それに心当たりがあるかと、頭を捻れば・・・・・・、俺が馬車と馬を手に入れられない原因が、そうなるのかもしれない。
となると、襲い掛かるのは盗賊と言うことになるのか?
ん~、まぁ、下手に手足れじゃないなら問題はないだろう。

一応、今は1445年から7年頃で未だに百年戦争は続いたままだが、後数年もすればれも終結する。
多分、今頃はブルゴーニュ地方に向け、フランス軍が進軍し暴れているころだろう。
その事について、今更ながらに、自身の失敗を見つけた事もあったが、それは今は別の所に置いておこう。

「まぁ、私達は保険だ。
 襲われるなら役目を果たし、何も起こらないなら楽しい旅を続ける。
 ククク・・、ノーラをクィーンと言ったが、気分はロイヤルガードだな。」

そう言って笑っていると、ロレンスは俺の方を見ながら、

「事が起きないのを願いましょう。
 下手に騒ぎに巻き込まれると、また胃が痛くなる。」

そう言ってぼやいているが、ロレンスにはもう少し精神的タフネスを付けて貰おう。
じゃないと、ロレンスが胃潰瘍になっていまいそうだ。

「後でまた薬を出そう。
 お前にはまだまだ、頑張ってもらわないと困るのだからな。」

そう言うと、ロレンスは小さくため息をついた。
そして、馬車の位置に戻ると、

「幌を外したんですか?
 こんな雨の降りそうな空模様なのに?」

そう言って、真っ暗な空を見上げてはいるが、

「ぬしよ。雨に濡れるのと、血に濡れるのどちらがいいかや?」

そう、ホロが言った事でロレンスの方も、
与太話ではすまされないレベルと悟ったのだろう、真剣な顔をしながら、

「襲われるにしても誰に?
 ・・・、もしかして、森の盗賊なんていう不確定な事ではなんだよな?」

そうロレンスが言うが、ホロの方は首を振りながら、

「わっちにもわからん。
 ただ、襲いそうな所と言えば、レメリオ商会じゃな。」

そう言っている間に、俺とディルムッドロベルタは荷台乗り込み、
ロレンスはホロの横に座り、馬の手綱を持つ。

「彼等が裏切る・・・・?」

そう言って、首をかしげながらピシャリと馬に綱を打ち、馬を出発させる。
さて、この町を出れば外に待つのは何か、少なくとも、あまり係わり合いになりたくない連中なのは確かだろう。
ただ、幸いと言っていいのか、森の位置はリュビンハイゲンから離れているので、少々暴れた所で問題はない。
そう思っているうちに馬車は進み、町の外に出る。

「遅かったですねロレンスさん、我々には時間が無い。
 それにこんな空模様です、雨が降ればさらに足は遅れ最悪、馬車を捨てる羽目になる。」

そう言って、馬に乗ったリーベルトが、こちらの馬車に併走するようについてくる。
ノーラの方は、何時もならこの時間には寝ているのだろう、眠そうな顔で目をこすりながらも、
杖でエネクを操り、眠っていた羊達を起こして、リュビンハイゲンに向けて動かしている。

「ノーラ、体の方は大丈夫ですか?」

そう、ノーラに問えば笑顔で、

「大丈夫ですエヴァさん。
 町に着けばゆっくり休めますから。」

そう言ってくる。
ふむ、今この場で魔法を使う事はできないが、
一応は診療の時に気分をリフレッシュする魔法を、無詠唱でかけたから疲れは早々残っていないと思う。
でもまぁ、ずっと歩き詰めなのだから、甘い物ぐらいあってもいいよな。
幸い、喉が渇いても水の心配をする事は無いのだし。

「これを口に含んでおきなさい。
 簡単な薬ですが、疲れが抜けます。」

そう言って、差し出したのは誰でも簡単に作れるべっ甲飴。
本来なら、砂糖水を温めて作る物だが、それにひと手間加えて、
レモン汁と、皮をおろした物を加えてレモン飴風味にしている。
それを受け取ったノーラはそのまま口に含み、その甘さに面食らったのか、
びっくりしたようなかをしながら、

「エヴァさん甘いです!」

そう言ってたが、なんと言うかストレートな表現である。
材料が砂糖水とレモンなのだから、甘くないと言う方が不思議な気がするが、
まぁ、今の時代砂糖もこちらでは高級品なのだから、こうなっても仕方ないか。
そう思いながら、もう2,3個飴をあげてノーラを眺めていると、俺の袖をクイクイと引っ張る者が1人。
そちらの方を見ると、甘いもの大好きな賢狼様が1人、前から後ろに移動していた。

「どうしたんですかホロさん?」

そう聞けば、ホロは自身の頭の方に手を当てながら、

「どうも、わっちもこの旅で疲れたようでありんす。
 医者様、わっちにも薬をくりゃれ。」

そう言って手を差し出している。

「なら、その前に診療します。
 口をあけて舌を出して上を向いて。はい、ア~・・・。」

そう言うと、素直に上を向いて目を瞑ってア~としてくれる。
ふむ、以外と言ってみるものだな。
そう思いながら、飴玉を1つしたの上に乗せてやると、

「ほう、ひょいのかほ?」

そう言って、片目だけを開いて聞いてくる。

「ええ、いいですよ。」

そう言って口に含み、速攻でガリガリと噛み砕いて・・・・、って、ちょっとまで。

「ホロさん、それは舐める物で、噛み砕く物ではないですよ?」

そう言って、ホロの方を見ていると、
またもや頭に手を当てながら、

「うむ、少しはこれで疲れがとてたようじゃが、全快には程遠いようでありんす。
 あぁ、今度は眩暈が。医者様、もう1つ薬をくりゃれ。」

・・・、とりあえずは今回までは普通に飴を渡すか。
そう思い、もう一度口を開けて舌を出し上を向いているホロの舌に飴玉を乗せる。
そのついでに、ロレンスやリーベルト、ディルムッドやロベルタにも配り、おれ自身も舐める。
ふむ、簡単に作れる割にはよく出来ている。
そう思っていると、またホロが袖を引っ張って目を閉じて上を向いている。
・・・、確かカバンには注射器が入ってたよな、2リットルぐらい血が抜けるやつが。

「ホロさん、きつく目を瞑って絶対に開かないで下さいね。
 ちょっとチクリとするかも知れませんが、大きな薬を上げますから。」

そう言って、腕を取り注射針を静脈に突き刺して、血をガンガン抜き取りながら、
ホロの口には、棒つきのペロペロキャンディ大の飴玉を放り込む。

「もう、目を開いてもよいかの?」

そう言って、目を開こうとするホロの腕から注射針を抜き、
採取した血を保存用の瓶に移しながら、

「もう開いてもいいですよ。
 ついでに、薬はそれで最後ですから味わってくださいね。」

そう言うと、ホロは飴をチロチロ舐めながら、

「医者様がホクホク顔じゃと嫌な予感しかせんのは、
 わっちの中の野生が訴えておるからかの?」

そう、ジト目で聞いてくるが、

「まさか、喜んでいただけて幸いなだけですよ。」

そう言いながら、注射針に残った血を啜る。
ふむ、流石は長い時を生きる賢狼、極上のブランデーのように鼻を通るか匂いは薫り高く、
味もキリッとした口当たりの後は、花が咲くような甘さがあり、
牙を通る時に一瞬熱くなったかと思うと、スッとなくなってしまう。
ホロから、いくらでも血を飲んでいいと言われれば、多分、その首筋に牙を立てたら最後、
ほぼ絶対に、その味に飽きるまで牙を離す事はないだろう。


ーsideロレンスー


「女性が揃うと、華やかですね。」

そう、横に付くリーベルトが声をかけてくる。

「そうですね、行商人をすると、なかなかこういった場には立ち会えませんが、
 こういった風に何人かで旅をするのもいいものです。」

そう返しながら、リ-ベルトのほうを見るが、彼は俺と目を合わそうとはしない。
この月の無い闇夜で、下手に余所見をすれば危ないのは分かるが、
それでも、先ほどのホロとエヴァさんの話で、彼が裏切り者なのかと言う疑いが頭をよぎる。
そんな事を考えていると、リーベルトが口を開き、

「この件が終わったら、どうしますかロレンスさん?」

そう聞いてくる。
ただ、何気ない世間話にしては、声色が重く、
しかし、瞳だけは真っ直ぐに前を見ている。

「終わってもまた、次の旅を始めるまでです。
 私は商人なので、物を売り、その金で物を買って、また物を売る。
 それを繰り返して、いつかは町商人に成れればと。」

そう言うと、リーベルトは、フッとこちらに聞こえるか、
聞こえないかぐらいのため息を付いて、

「そうですか。
 ・・・、そうですね、我々商人は売り買いで金を作り、その金のためなら何でもする。
 商人とはそういう人種でしたねロレンスさん。」

そう言ってくるが、

「どうなのでしょう。
 確かに商人としては、それは間違いではありません。
 ただ、我々が信じるのは、公平な天秤で不公平に利益を上げる事ではありません。」

そう言うと、リーベルトはスッと頭を上げ、遠くを見るような顔をしながら、

「我々は神ではありませんよロレンスさん。
 むしろ、我々商人はユダよりです、金がなくては物が買えない、人が居なくては物が売れない。
 そういったジレンマを抱える生き物です。」

そう、どこか疲れたような声色で話し口を閉ざす。
後ろの方では、エヴァさんやロベルタさんホロなんかの声が、風に乗って聞こえてきていたが、
その声もいつの間にか聞こえてこず、辺りは静寂と闇だけが支配する。
空を見上げれば、雲はよりいっそう厚くなり、時折稲光が見て取れる。
そして、森が見え出したころ、音を忘れたようなこの空間でホロとエヴァさんが同時に、

「「雨が降ってきた。」」

そう口を開き、横のリーベルトがせかすように、

「道がぬかるめば足が取られる、急いで森を抜けましょう。」

そういわれ、馬の手綱を操り歩を森の中へと進めていく。


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