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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 強い訳だよな第43話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:122d81a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/26 14:10
強い訳だよな第43話






「出発の準備は整いましたか、ロレンスさん?
 それと、その方が?」

「ええ、彼女が今回の主役ですよ。」

そう言って、リーベルトとロレンスがこちらを見ている。
出発は明朝と聞いていたが、どちらにしろする事は無く、
ディルムッドが町から帰った後は、英気を養おうと魔法薬を吸いながら魔道書を呼んで過ごし、いよいよ出発と言うところ。
朝っぱらから商館の立ち並ぶ地域に来ているが、鎧に手を出していない商会の方は冬が来ると言う事で、
食料や、香辛料の仕入れで忙しく商人達が動き回っている。
ただ、そこで働く人間達が軒並み怪力を有していると言う、ほとほと奇妙な様な光景だが、
まぁ、納得は出来る。

『厳しい修行をすると気が習得できる。』これが気の習得の原理で、
気その物を知らなくとも、やはり無意識下でもそれは身につくのだろう、
筋骨隆々の男が、岩塩の見た目100キロぐらいありそうな板を、1人で2~3枚素手で運んでいた。
修行と一口に言ってもいろいろある、水桶を棒に吊るして階段を駆け上がるとか、
兎跳びで階段を上り下りするとか、桑を持って畑を耕すのも、田植えをするのも、全部人の手で行えば立派な修行である。

「始めましてリーベルトさん、チャチャゼロと、妻のエヴァ。
 それと宣教師のロベルタです。」

そう、ディルムッドが紹介したのでペコリと会釈をする。
今朝方ロレンスから言われたが、俺達は金の密輸を知らない、
ただの一般人と言う位置づけで、まんまノーラの主治医と、ラムトラの下見として同行する事になった。
ついでに言えば、その時そのままラムトラで布教活動すれば?
言われたらしいが、1度本国のイギリスに戻って体制を整えてからするといったらしい。
まぁ、ある意味そちらの方が俺達も都合がいいし、下手な詮索はこちらも受けたくは無い。

「では、そろそろ出発しましょう。
 我々には時間が無い、いくら期限を延ばしても、その期限は永遠ではないのですから。」

そう言って、リーベルトは自身の馬に乗り、
俺達はロレンスの荷馬車の荷台、ノーラの方は多くの羊を、

「エネク!」

そう言って、犬を操り白い絨毯を一本の糸にして検問を出て行く。

「エヴァ、今日は珍しく静かだな。
 それに、何時ものパイプも咥えていないが?」

そう、横に座るディルムッドが俺の顔を覗き込んでくる。

「まぁ、お前の報告にこれからの事と、いくらでも頭を働かせる事があるからな。」

そう返すと、ディルムッドは、

「そうか、俺にはよく分からないが、大切な事なんだろう。
 少なくとも、君のとる行動は何らかの意味があるからな。
 それなら、俺はノーラと一緒にラムトラまで歩くよ。秋風に当たるのみ気持ちいい。」

そう言って、ディルムッドは動いている馬車の荷台から飛び降り、
ノーラの方に歩いていった。

「あんまり根をつめないで下さいね、エヴァさん。」

そう言って、ロベルタは俺の横で微笑み、
前の方では馬に乗ったリーベルトとロレンスが、

「夜になる前には森を抜けたいですね。」

そう、リーベルトが言い、

「そうですね、この辺りは盗賊がうろついていると聞きます。
 ノーラの体も心配ですが、襲われる危険性を考えるとそうも言ってられないですね。」

そう、相槌と嘘を交えたような受け答えをし、
馬車の横を併走して歩くノーラはとホロは、

「あの犬め、わっちに羊を襲えば喉笛に噛み付くと威嚇しておる。」

そう、目を細めながらエネクを見ながら呟き、
それを聞いたノーラが、

「そうなんですかホロさん?
 エネクがせわしなく動いているので、私の緊張が伝わったのかともいました。」

そう、ホロに返す。
すると、ホロは首を振りながら、

「違うよ、あの犬は、わっちとエヴァを警戒しておるんじゃろ。
 感のいいことでありんす。」

そう言って、声を低くして笑っている。
はぁ、のどかだ。これなら、もしかすれば商会の連中も襲い掛かってこないかもしれない。
そう言う希望的観測も脳裏をよぎるが、それでも、やはり鎧の値が暴落しているのだから、
商館の商人達は襲い掛かってくるのだろう。
まぁ、ただの人間に遅れを取る事はないと思うが、
それでも今朝の光景で、この世界の人間を俺の知っている一般的な人間として扱っていいのか迷う。

と、言うのも気を一般人から習得した人間と言うものに、1人だけ心当たりがあるからだ。
まぁ、誰かと問われれば言わずもがな、浦島景太郎である。
彼の初期スペックは浪人生で、スポーツも得意ではなく、争いにも無縁。
言ってしまえば、現代人らしい現代人とでも言えばいいのだろうか。
いや、むしろ彼の場合、約束を守るという点を見ると、現代人をはるかに凌駕しているが、
どちらにしろ、彼は一般人ではある。

が、そんな彼はひなた荘に住むようになり、
なるに殴られては宙を舞い、素子に斬られては宙を舞い、スウに蹴られては地面を転がり、
サラに土器で殴られと、暮らしその物が戦場と化した。
そして、最終回に至るまでに遭難したり、瀬田に武術を習い、
モルモル島編では、走るなるの横をポールの上を、飛びながら追いかけるだけの身体能力を身に着け、
最終的に素子の斬岩剣を、見よう見まねでも出せるようになった。

・・・・、はぁ。
物事には意味がある。事が起これば結果がでる。
それは当然の事だが、この世界の場合現代人は少なくともスーパーハイブリット機になる。
と、言うのもよくよく考えれば納得のいく話だった。
過去の人間が既に生活レベルで気を使い、それを現代まで積み重ねれば、嫌でもDNAレベルで体は頑丈になるし、
人を襲う物が、この世界の場合獣と人と言う2択ではなく、悪魔と魔獣と言う4択になる。
つまりは、龍を殺した騎士はリアルに龍を殺しているかもしれないし、
悪魔を呼ぼうとした魔法使いは、リアルに悪魔を呼ぶ。

むしろ、そうでないと神鳴流なんかが出来た理由が見当たらない。
神鳴流の初期目標は京の都を守る事、つまりは京に都があった頃に出来上がった集団で、
その頃はと言えば、安部清明と芦屋道満が、

「清明君デュエルしよ。」

「いいだろう、芦屋道満!
 私の番、札を5枚だし五芒の陣を作成!」

「フッ、わしの番。子鬼を4匹だし1枚札を伏せる。」

そんな感じで勝負を行い、辺りには倒された鬼の瘴気やらなんやらが広がり、

「道満、これでおしまいだ!
 私の番、十二神将を呼び出し全軍突撃!」

そして、ほとんどの道満の式神が倒された頃、

「クックック・・・、かかったな清明ぃ!
 伏せた1枚よ面を上げろ!」

「なぁ!それは蟲毒!?」

「残った1匹に今まだ倒した式の呪が集まりおるわ!」

なんていって、陰陽道で呪術大戦をしたり、
百鬼夜行が横行して、鬼やら妖怪やらが人をボリボリ食っていた頃である。
しかも、それが御伽噺では無く現実的になれば、嫌でも人は強くなるし、
むしろ、そんな命の危機が身近にあったのなら、強くなろうとして当然である。
そこで頭が痛くなるのが、ゆくゆくは日本に行くつもりだが、
その時、陰陽師がわんさかいると俺が対処しきれない可能性がある。

と、言うのも陰陽道で有名な安部清明、彼の最大の伝説に泰山府君を調伏したと言うのがあるが、
この泰山府君とは、閻魔さまの事である。
まぁ、少なくとも日本では麻帆良学園の地下には鬼神が封印されてるし、
京に行けば、リョウメンスクナが封印されている。
・・・、実は新世界より旧世界の方がハード?

「・・・、はぁ。」

そう、俺がため息を着くと、横にいたロベルタが水を差し出しながら、

「お加減が優れませんか?
 ・・・、もしかして、何時ものパイプが無いから力がでないとか?」

そう、覗き込んでくるが、今の俺はそんなに顔色が悪いのだろうか?
そう思いながら、水を一口飲み、

「いや、気分は悪くない。
 しいて言うなら、イージーモードだと思って始めたゲームが、
 実はハード所か、インフィニティクラスだったかもしれないと思っただけだ。」

そう言うと、ロベルタは首をかしげている。
なんだろう、今だと頭痛が痛いとか言う馬鹿な事を平気で喋れそうだ。
そう思いながら前を見れば、豊穣の女神ホロがロレンスといちゃついている。
そんなホロが、俺の視線に気付いたのか、

「どうしたんじゃエヴァ?
 ぬしが静かじゃと、どうも座りが悪いでありんす。」

そう言うと、横のロレンスが。

「どうかしましたかエヴァさん?」

そう聞いてくるが、特にどうと言うことは無い。
まぁ、昔自身の知識をパンドラの箱と言った事があったが、
正しくそれんだろう、何せ中に残るのは希望と言う光のみ。
この光が無いと、助けたい物も助けれないし、拾いたい物も拾えない。
なら、この知識とは上手く付き合って折り合いをつけよう。

「何でもありませんよ。
 ただ、馬車の旅はあまりした事が無かったので、揺れで疲れたのでしょう。」

そう、横にリーベルトがいたので、
よそ行きの笑顔を顔に貼り付けてロレンスに返す。

「あまり無理はなさらない方がいい。
 疲れたのなら休憩を取りましょう、幸い時間も昼頃でしょうから。」

そう、リーベルトが言い、
歩いているノーラとディルムッドも足を止め、

「エネク!」

そう、カロンと鈴のついた杖でノーラがエネクに指示を出し、
支持されたエネクは羊達の前の方から吠えて、羊達を威嚇して足を止め、
そのまま羊の群れの周りを、吠えながら回って羊達を集めていく。

「私は先の道を見てきます。
 下手にぬかるんで、車輪を取られても困るでしょう。」

そう言って、リーベルトは目と鼻の先にある森の方に馬を走らせた。
それを見送っている間に、ホロとロレンス、ロベルタは馬車からおり、
最後の俺の番の時に、スッとディルムッドが手を差し出し、

「どうぞ、疲れたんだろ?
 君にしては珍しいが、物憂な素敵だったよ。」

そう声をかけてくる。

「いや、ちょっとパンドラの箱の中にある希望を探していてね。
 大切なんで箱にしまって、鍵を閉めて深い所に置いていたら探すのに苦労した。」

そう、微笑みながらディルムッドの手をとって地に足を着く。

「・・・、ぬしにもあれぐらいの弁があれば、
 雌を騙すにもコロリとできるじゃろ。」

そう、ニヤニヤしながらホロがロレンスを見れば、
ロレンスはやれやれといった感じに、

「俺としては、あれを俺が言うという事を考えただけで、
 産毛が逆立つ。」

そう言って、首をすくめて見せている。

「エヴァさんと、チャチャゼロさんがやると嫌味になりませんね。
 こう・・・、なんと言うんでしょうか、気品があります。」

そう、ノーラは横のロベルタに話しかけていて、
しかし、当のロベルタは、

「・・・、悔しいですが、チャチャゼロさんは十二分に美男子ですから。」

と、ギリッと奥歯を噛み締めている。
ふぅ、下手に思考に走るとどうも、悪い方に行く。
まぁ、こっちに来て今までの事を考えると、そうなっても仕方ないか。
なにせ、この世界に生まれて以来、散々戦ったし殺したし殺されたからな。
最悪を考えるなと言う方が、難しいような生活だったし。
まぁ、俺達は保険だし確か、今回は襲って来るのも普通に商館の人間だったはずだ。
いくら一般人が強いからと言って、早々倒されてはたまらない。

「さぁ、飯にしよう。
 リーベルトの手前、豪華な物は出せんが食べたい物があれば言ってくれ。」

そう言って、各人の食べたい物を出し昼食となった。
ただ、リーベルトが森に行ったまま帰ってこないが、
おおかた、商人の隠れ場所の探索でもしているのだろう。


ーside森ー


ロレンス達と別れ1人森に馬を走らせる。
館長の話により、犠牲者が増えた。
が、ここまで来ればもう後には引けないし、今更作戦を変更できない。
後は、私の口の上手さを信じるだけか。

「ディアール・・・、ディアールは居るか?」

そう、森の中ほどに馬を止め森に入り声をかける。
あまりここに長居は出来ない、あまり遅ければそれだけ残してきた彼等に不振がられる。
そう思い、森の奥に歩を進めると、

「ここだ商人。
 どうした?殺すのは帰りと言う約束だが?」

そう言いながら、ディアールが顔を歪めながらでてきた。

「すまない、人が増えた。
 殺すのはシスターに、その連れの夫婦だ。」

そう言うと、ディアールは不愉快だと言わんばかりに顔を歪め、

「クソ商人、俺達はシスターは殺さない。
 修道騎士は異端は狩るが神に使えるものは殺さない!!」

そう言って、胸倉を掴んで顔を寄せてくる。

「お前は女も欲しいといった。なら、女の追加でいいだろう?」

そう言うと、ディアールは鉤爪を喉下につきたて、

「貴様は馬鹿か!
 俺達が女の事を言ったのは堕落した者の事だ!
 それ即ち、娼婦に不倫そんな不義を重ねた者の事だ!
 貴様はその羊飼いが異端である可能性があるといった!
 そう、私達に説いたからこそ、妖精と囁かれる羊飼いを狩る事を承諾した!
 ・・・、貴様は生きた死者か?頭に虫がわいてるか?貴様も異端か?
 神の名の下、貴様が先ず異端者でないか裁判するか?」

そう聞いてくる。
アンデルセンは言った、団長は敬虔な信徒だと。
くっ、ただ女が欲しいだけかと思えば、そういう理由か!?
この男は、魔女を裁くためだけに、女が・・・、かつてエデンの園で実を食べた、
そそのかされやすく、堕落しやすいというだけで女を欲し、裁判を行うというのか。

「そのシスターは異端だ!」

そう、胸倉をつかまれ苦しい中で声をあげれば、

「異端?ハッ、吠えろ商人!
 神に使えるものが異端だと!?
 やはり貴様を殺し、当初の3人で決まりだ。」

そう言って、鉤爪を徐々に喉元に近づけてくる。
クッ、どうする・・・、この男が動くに足る理由。
この男を動かすに足りる理由・・・・。
館長の話を信じるなら、

「シスター一行はイギリスを目指している。
 多分、そのシスターはイギリス人だ!
 それに、夫婦の妻の方は医者だ!」

そう言うと、鉤爪が喉に刺さる前にピタリと止まる。

「・・・、その話は本当か?」

そう、底冷えのする瞳で私を射抜く。
何処までも暗く、深く、光が差し込む事を拒み、
入る光も入り口で追い返される。
何処までも暗く、闇が形を持って蠢く様な瞳で。

「・・・・・、本当だ。」

そう、搾り出すように声を出すと、ディアールは私を突き飛ばすように手を放し。

「そうか・・・、そうか・・・!そうか・・・・!!
 くぅははは・・・・、そうか、それは異端者の巣窟に住まう者か!!!
 聞いたか副長アンデルセン!聞いたか騎士たちよ!!
 異端の巣窟に住まう者が、人の皮をかぶって現れたぞ!!
 我々は捨てられた修道騎士団だ!だが、今この時この場では神が我等を欲した!
 神が我等に異端の巣窟に住まう者を狩れと言って来た!!」

そう、人の出せる声とも思えず、
野獣とも思えず、
何処までも、知ある憎悪が意思を持って叫ぶよう声が聞こえる。
そして、その声に連なるかのように、

「異端狩りだ・・・・。」

「かの国に住まう者に鉄槌を。」

「焼き滅ぼせ・・・、あの国に住まう者を全て焼き滅ぼせ。」

「殺せ・・・・、すぐにでも、異端の地に住まう者を殺せ・・・・。」

そう、また1人また1人と十字をきりながら現れ、
最後にアンデルセンが現れ、

「天使に導かれた、聖処女ジャンヌを焼き殺した国の民が!
 あの異端者の巣窟で、神に使える者を名のる異端者が!
 群れを成し、地を歩み、人の姿をかたどって進む姿など見ておれるか!
 団長討伐命令を!今すぐその異端の討伐命令を!!
 異端の民など生きる価値など無い!」

そう、アンデルセンが睨みを利かせ、野獣のように犬歯をむき出しにし吠えている。
神の狗・・・、神に狂った狂狗が私の目の前にいる。
館長は言っていた、狂気が凶器を持ち狂喜すると。
神軍・・・、彼らは自身達の事をそう呼ぶだろう。
シャンヌと言う騎士の処刑に天使が降臨したという話は有名だが、
それはフランス軍の士気を上げるためだと思っていた。
だが、彼等にはその天使が幻視出来ているのだろう。

「神軍せよ・・・、修道騎士達よ。
 神軍せよ・・・・、誉れ高き修道騎士達よ!
 異端は一切の例外なく認めるな!異端を狩れ、異端を討伐せよ!
 異端の居た町を平にせよ!異端を匿った宿を潰せ!!
 身を捧げ、使える神に意向を示せ!」

そう言って、ディアールは騎士達を引き連れ悠々と森を出ようとする。
だが、それでは困る。彼等がこのまま進軍すれば、こちらの目的が果たせない。
どうする・・・・?
この狂気の進軍にどう待てをかける?

「ディアール、約束を反故にするか!?」

そう、ディアールの背に声を名が変えると、
ディアールは肩越しにこちらを振り返り、顔を盛大に歪め、あからさまに不愉快だと舌打ちをし、

「約束は果たす・・・・、が!
 異端者が地を歩くさまを見守るなど我慢ならん!
 3人は追加分だ、先に3人殺しかえりに3人殺す!」

そう言ってくるが、それではどちらにしろこちらの目的は果たせない。
それに、

「契約内容は、羊をラムトラまで連れて行った帰りに襲う事だ。
 今襲えば、契約は反故になる。
 ・・・、お前達はユダか?
 神を売り、夕餉に毒を混ぜ、神をはした金で売ったユダか!?」

そう言うと、辺りの騎士がざわつき、腰の剣に手が伸びだす。
クッ、自身で言って背筋の寒くなる言葉で、自身がユダの手先だというのに、なんとも滑稽な話だ。
もし仮に、この場で私の首が刎ねられれば、それも神の裁きと言うものになるのだろうか?
そう思うと、何だか馬鹿馬鹿しくなって来た。

「くくく・・・。」

そう、笑い声が自身の口から漏れたのに気がついた時には遅かった。
1人の騎士が抜いた剣が、もうじき私の首に達する。
これで、私も終わりか・・・。
あっけなさ過ぎて自身も含め周りが哀れだ。
そう思って目を瞑ったが、衝撃は首に来ず、未だに森に響く虫や奇妙に鳴き声は耳に届く。

「何がおかしい商人。」

そういうディアールの声が聞こえ、目を閉じたまま口を開く。

「滑稽だから笑った。」

そう、言葉を返すとディアールの息が耳にかかり、
言葉が耳から頭に入ってくる。

「滑稽か・・・、貴様には分からん境地だ。
 信念もなく、叩きのめされる事もなく、捧ぐる事も知らぬ者よ。
 貴様には間違いなく分からぬ境地だ、商人。」

そう言うと、フッとディアールの気配が離れた。
そして、私が目を開けると、ディアールは何時ものように顔を歪め、

「我々はユダではない。
 ユダを必要とする物もいるが、我々はユダではない。
 ・・・、帰りの夜、それで相違ないな?」

そう言って、ジロリと私の顔を見てくる。

「相違ない。
 まったく持って相違ない。」

そう言うと、ディアールが目配せし、騎士達は次々に森の奥に引き上げていく。
そして、最後に残ったアンデルセンが、

「気をつけろ商人、
 貴様は目を閉じていたから知らんだろうが、
 あの時1歩でも動いていれば、貴様は串刺しになっていた。」

そう、遅れてきた死刑宣告を吐いて姿を消した。
その姿を見送った後、自身の口の中はからからで、服は頭から雨にでも打たれたかのようにビショビショ。
だが、私はまだやる事がある。そう思い、馬まで戻りロレンス達が昼食を取っているであろう位置に戻る。
そうすれば、もう昼食は終わったのか立ち上がろうとしていた。

「遅かったですねリーベルトさん。」

そう、チャチャゼロ婦人が私に声をかけてくる。
それに、言葉を返そうとしたが、喉がカラカラで声が上手く出ない。

「何があったか知りませんが、落ち着いてください。」

そう、淡い笑みを浮かべながら、彼女は私に水を差し出してくれた。
それを飲み、彼女が馬車の荷台に乗り込み出発となり、その後休憩を取らず丸一日歩き夜にはラムトラに着いた。



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