幕間その4 仲良くなろう
「あ~、見事にやられた。」
そう、俺が言いながらコップを空けると、
ホロがそのコップに酒を入れてくれながら、
「なに、ぬしもなかなかじゃったよ。
特に、引き際からの切り返しとかの。」
そういいながら、自身のコップの酒を飲んでいる。
今現在、交渉も終わり、こちらがホロ達に雇ってもらうと言う事になったのだが、
交渉の内容の物騒さと、ロレンスの胃を労って、そのまま部屋でテーブルを囲み懇親会となっている。
当然といえば当然だが、酒にしろ食べ物にしろ料理にしろ、全部俺達持ちと言う事で、
ホロもロレンスもノーラも、なかなかに食と酒が進んでいる。
ちなみに、料理は魔法球の中からポンポン取り寄せているので、早々なくならない。
ついでに言えば、ホロ達はここに来る前に宿の主人に、
今夜は帰らない事を伝えているので、今晩は朝まで好きなだけ飲めると言う状態で、
部屋に防音用の結界を張っている。
まぁ、いくら防音用といってもホロの大声や、暴れれば流石にばれる。
そんな中で、俺とホロが話しているのは先ほどの交渉の話し。
「エヴァさんすみません、私のせいで交渉が上手くいかなくて。」
そう言って、ロベルタがホロのコップに酒を入れている。
「まぁ、それでも結果は悪くない。
むしろ誰も損をしてない以上、成功と言って差し支えないさ。
それに、ロベルタが居ない方が、
交渉の先が捻じ曲がって、分からなくなってたよ。」
そう言うと、ロベルタは小首をかしげ、代わりにホロが口を開いた。
「落とし所と言うヤツじゃよ。
そもそも、わっちたちは最初から不利じゃった。
ぬしたちの事をまったく知らんで、
ぬしたちの喉笛を見つける所から、せんといかんかったからの。
町で手に入った情報と言うのも、
馬車と馬と道を聞いた事ぐらいじゃったかのぬしよ?」
そう言って、ロレンスの方をホロが見ると、
口に入れていた乾し肉を飲み込んで、
「後は鎧を1つ買った事位かな。
まぁ、それを調べる間にも商人達に煙たがられたが、
それをしただけの利益は得たかな。」
そう言って、酒を飲んでいる。
その横に座るディルムッドがノーラに料理を取ってやりながら、
「落としどころね。
まぁ、エヴァがロレンスを殺せと言わなかったからよかったよ。」
それを聞いた、横のロレンスが酒を吹いているが、
まぁ、いきなり横で飲んでるやつから、自分を殺すだのと言う言葉が出ればそうなっても仕方ないか。
ついでに言えば、ホロが言った体中から血の匂いがと言う言葉も、頭に流れているのかもしれない。
はぁ、これ以上ロレンスの胃を苛めるのもかわいそうだ。
そう思いながら、薬をロレンスの前に置きながら、
「チャチャゼロ、私達は最初からロレンスを殺せないんだぞ。
だから、ホロが私の前で悠々と麦に帰るって言ったんだしな。
後、ロレンス薬だ。飲むと胃の痛みが消える。」
そう言うと、ロレンスはその薬をじろじろ見ながら、
「私を殺せないですか?
ですが、ホロが言った事と貴女が言った事を真実だとするなら、
私を殺すなんて容易いのではないですか?」
そう言っているが、実際の所本当に俺たちはロレンスを殺せないし、殺した後のリスクも馬鹿でかい。
元々商会に属し、色々な町を渡り歩き、更にこの町で俺達の情報を聞いて回ったロレンスとホロ。
それを殺すというのは、俺達に疑いの目をむけてくれと言う他ならない。
それに、ロレンス達は宿を出る時に、教会に行くと言っていたらしいから保険は強固だ。
そう思っていると、ホロが俺の顔を見て笑いながら、
「ぬしよ、こやつはぬしという人間の本当の力に気付いたから、殺せんといったんじゃろう。
こやつがぬしの首を折るのは、寝返りを打つぐらいに簡単じゃが、
その寝返りを打てばこやつの欲していたモノは手にはいりゃせん。じゃろエヴァ。」
そう言ってくるが、まったく持ってそのとおり。
そう思い、両手を挙げながら、
「ホロの言うとおりだ。
私達は少なくとも騒ぎを嫌う。最悪の事態は想定するが、
それでも、騒がなくていいなら騒がない方がいい。
それに、ロレンスを殺せば、怒り狂ったホロに追い掛け回され、
ついでに言えば、そのせいで教会からも追われる。
だからこそ、大声を上げるというカードが笑えないぐらい凶悪なカードになる。
更に言えば、私が医者と言ってロベルタをごまかしても、
教会の連中は、胸に耳を当てさせろと言ってくるだろう、
なにせ、私もロベルタもこの町の門番が、鼻の下を伸ばすぐらいには美しいし、
それを合法的に或いは、神の名の下に触れるんだからな。」
そう言うと、微笑みながら、
「じゃな。じゃがそれだけ頭が回ったからわっちも楽じゃったよ。
まぁ、最後に蜂の一刺しと言うヤツももらったがの。
ぬしが力任せに魔法なんかを使えば交渉もなんもあったもんないでありんす。」
そう、ホロが言って来るが、この魔法と言うカードも、やはり商談では見苦しいカードだと思う。
まぁ、けん制と時間稼ぎに出したは出したが、これは、テーブルで商談している時に、
いきなりナイフを相手に向けるような、真っ当ではないやり口だ。
「だから言っただろうホロ、見苦しい所を見せたと。
まぁ、それを見せないと、クィーンが護れそうになかったんでね。」
そう言うと、ホロがチェスの駒を手に取りながら、
「わっちはこのゲームを知らんが、女王を取られたら負けかの?」
そう、ロレンスに聞くと、ロレンスは料理を飲み込み、
「いや、それは間違いだ。
なにせ、このゲームは王様を取られたら負け。
だから、俺はエヴァさんがキングを倒した時に降参を確信したんだ。」
そう言って、ロレンスは、
エヴァさんも人が悪い、と言う様な視線を向けてくる。
「まぁ、私は私のチェスのルールに従ったままだよ。
それ即ち、キングはクィーンを護るとね。」
そう言うと、ロレンスはため息をつき、
ホロは面白そうに、
「なるほどの、最後の一刺しは女王を護る王の一撃かや。」
そう言って、喉を低くして笑っている。
俺に合わせて、俺の方も喉を低く鳴らして笑いながら、
「クックックッ・・・、なかなかに効いた一撃だろう。
それこそ、共倒れになるぐらいに。」
そう言うと、ホロも笑いながら口を開き、
「クックックッ・・・、まったくじゃ、
魔法なんてモノが可愛く見えるぐらいじゃったよ。
と、そういえばぬしも、そろそろその姿は窮屈じゃないかや?」
そう言うと、ノーラが料理を食べながら、
俺とホロを不思議そうに見ながら口を開く。
ちなみに、彼女の胆力は・・・、いや、夢への情熱か。
さっきの交渉を見て、逃げ出さないだけでも凄いと思うが、
クィーンになってすぐに、針と糸と布を下さいといってきたのだからなんとも。
まぁ、やる気がないよりはいいし、本を見ていた所為で色々試したくなったのだろう。
「窮屈・・・・、ですか?
こう、何か別の姿になれるんですか?」
そう言いながら、俺と隣のホロを見ている。
ふむ、余興としてはぼちぼちか。
どうせ歌を歌う事もできず、こうやってテーブルを囲み雑談ぐらいしか出来ないんだ。
そう思い、テーブルを立ち、
「私の本来の姿はこれだよ。」
そう言って、子供の姿に戻ると。
「はぁ・・・・、エヴァさんって、こんなにちっちゃかったんですか。
会った時から大人だったんで、あの姿のまま羽でも生えるのかと思いました。」
そう言いながら、ノーラが俺の事を見てくる。
ついでに言えば、ホロはなぜか手の甲で涎をぬぐい、ロレンスはため息をついている。
そういえば、吸血鬼と人狼って仲良かったのか悪かったのか?
まぁ、今はホロと友好関係を気付こうとしているが、
ヴァンパイアーセイヴァーだと、傲慢ラッキョウ頭の吸血鬼は拳法使いの人狼に負ける。
まぁ、こっちもただの吸血鬼でなければ、相手もただの人狼じゃないから大丈夫なんだろう。
・・・・、ホロがビーストキャノンとか撃って来たら考えるか。
いや、でも狼の姿でタックルしたら、それはそのままビーストタックルになる?
そう思っていると、
「確かに、その姿なら丸呑みでありんす。
若い娘の肉は美味じゃからな。」
そう、ホロが人の悪い笑みを浮かべ、
ロレンスが疲れたように、
「俺は子供に負けたのか・・・。」
そうは言っているロレンスの肩を、
ディルムッドが優しくたたきながら、
「エヴァもホロも見た目=年齢ではないんだろ。
少なくとも、エヴァはロレンスと同じ歳ぐらいだよ。」
そう言って慰めているが、やっぱりロレンスは落ち込んだまま。
まぁ、ロレンスには相手が悪かったか、もしくは強く生きてもらおう。
そう思っていると、ホロが面白そうに、
「のうエヴァよ、おぬし確か狐にもなれると、言いよらんかったかや?」
そう言ってくるが、ホロの前で狐になっていいのだろうか?
取り敢えず、ディルムッドはならないかな~と、言った様な視線を送ってくるし、
ノーラも好奇心旺盛な目を向けてくる。
いや、ノーラの場合こうやって、人と話せる事自体が嬉しいのかも知れない。
なにせ、日長一日草原で羊を操る彼女は人と話す機会は限られて、
その話す機会も祈りの言葉だけと言う場合が多い。
そんな彼女からしてみれば、たぶんこことても暖かな空間で、
ある意味、夢のようなものなのかも知れない。
まぁ、教会の関係者に見つかった瞬間、サバトだと言われても、
仕方ないような面子が集まっているが、それでもここは暖かく俺は神は信じないから、
ついでに相手からも、俺達がここにいる事を信じないで貰おう。
そう思いながら、薬を使い耳と尻尾を生やす。
「全身は出来ないが、これでも十分だろ?
それに、全身だと今度はコウモリになる。」
そう言うと、ノーラが近寄ってきて、
「尻尾に触らせてもらってもいいですか?」
そう言いながら尻尾を見ている。
「あぁ、いいぞ。
ホロと私とでは、毛の質では多分私のほうが柔らかい。」
そう言って、ホロの方をニヤリと見ると、
ホロの方は、俺の言葉を聞き逃さないと言うばかりに頭の上の耳を動かし、
俺が尻尾を自慢した事が気に食わないのか、
「ほぅ、ぬしよ。
わっちの尻尾の毛が硬いと言うかや?」
そう言って立ち上がるホロに向かい、
「狐の毛皮は肌触りがいいから、高くで売れるらしいぞ?
しかも、それが私のような穢れ無き純白となれば尚更だ。」
そう言うと、ロレンスの俺を見る目が少々不穏になったが、
まぁ、いきなり皮剥ぎされる事もないだろうし、早々される気もない。
そう思っていると、ロベルタがロレンスの横に行って、
「エヴァさんに手を出したら、その不義に鉄槌を下しますよロレンスさん。
なにせ、私の体はチタンと言う鉄ですから、拳でも十分鉄槌となります。」
そう言うと、ロレンスは引き攣ったような笑いをしながら酒を飲み、
ついでに言えば、ロレンスの横のディルムッドはロレンスの肩に指を食い込ませながら、
俺の頭を見ている、多分耳を触りたいんだろう。
そんな事を考えている間にも、ノーラは俺の尻尾をモフモフしていて、
ホロは俺の前に来て、耳をピコピコさせながら、
「そこまで言うなら、ぬしの尻尾触っても?」
そういうホロに、俺の方も耳をピコピコさせながら、
「なら私もご自慢の触らせてもらおうか。」
そう言ってほくそ笑む。
多分こんな時にこの台詞はあるのだろう、曰くニヤリ計画通りと。
まぁ、自慢するぐらいだから、普通に頼んでも触らせてくれたんだろうけどね。
そう思いながら、ノーラ、ホロ、俺と3人で尻尾をモフり合うと言う、
傍目から見たら酷くシュールな光景が出来上がった。
ーside残された3人ー
ふぅ、交渉は成功・・・、で良いんだろうか?
交渉の末手に入れた金貨は全てエヴァさんに返し、代わりにエヴァさん達3人に、ノーラを含めた4人が手に入った。
まぁ、どうせ荷馬車に積む物はなく、運んできた鎧は既に二束三文で売り払っていて、
4人、人が増えても狭いと言う事はない。
ただ、心残りは何処までエヴァさん達を信じていいかと言う所だが、
それも今はだいぶ薄らいでいる。
多分、エヴァさんの言った事は全部本当で町を滅ぼすのも容易いなら、
神を屠ったと言うのも本当・・・、なのだろう多分。
そう思って、コップを口に運ぼうとすると、
「ロレンスさん、コップは空ですよ。
まぁ、一杯どうぞ。」
そう言って、俺の横のチャチャゼロさんが空のグラスに酒を注ぎ、
反対側に座るロベルタさんも強い匂いのする酒をチビチビやっていて、
ちょうど、彼等に挟まれたような形になっている。
「あぁ、ありがとうございますチャチャゼロさん。
しかし、チャチャゼロさんの交渉も、なかなかに上手かったですね。」
そう言うと、チャチャゼロさんは頬の傷を触りながら、
「まぁ、彼女といればと言う所でしょう。
元々私は商人ではありません。・・・、それと敬語はやめませんかなんだか堅苦しい。」
そう言いながら、コップを傾けている。
しかし、彼が商人ではないとは、俺もまだまだ修行が足りないと言う事か。
そう思いながら、手を差し出し、
「では改めてチャチャゼロ。
俺はロレンス、一時の旅だがよろしく頼む。」
そう言って手を差し出すと、
「あぁ、よろしく頼むロレンス。」
そう言って、握手していると、肩をトントンと叩かれ、
もう反対側から1本手が出てきて、
「私はロベルタです。
よろしくお願いしますロレンスさん。」
そういい微笑みながら握手してくる。
そのては、多少柔らかい感じがするが、それもなおゴツゴツとした感触を伝えてくる。
そのことを思っていると、
「私の体はホロさんの言われたように、人のソレではありません。
ですが、エヴァさんは私を人間だと言います。なので、多分私は人間です。
なので、あまり顔に出さないで下さいね。」
そう、にこやかに言ってくる。
これは、悪い事をしたな。
そう思い、頭を下げながら、
「いえ、俺の方こそ悪かったです。
それに、ホロと旅をしているのに、そんな事は今さらですよ。
貴女が人間だと言えば、貴女は人間です。」
そう言うと、チャチャゼロがニヤニヤしながら、
「ロベルタには惚れない方がいいぞ。
後でなにが起こるかわからない。」
そう言うと、ロベルタが唇を尖らせながら、
「大丈夫です、エヴァさんに不埒な行いをしない限り、私はなにもしませんよ。」
そういった後笑っている。
彼等と、エヴァさんが一体どういった旅をしていたのかは分からないが、
それでも、こういって笑いあえて、心の許せるような関係になるような旅をしてきたのだろう。
しかも、それは彼等の言う言葉の端々に潜む、危険な発言が目の当たりで繰り広げるような旅を。
そこでふと思ったのが、今チャチャゼロは商人である事を否定した。
となると、彼とロベルタは一体なにをやっているのだろう?
「チャチャゼロにロベルタ、2人ともエヴァさんとなにをやっていたんだ?」
そう聞くと、チャチャゼロは料理を自身の皿において、
「元々俺は騎士で、今はエヴァだけの騎士をやっている。
苦労はそれこそ計り知れないが、それでもなお彼女といるのは面白いよ。」
そう、チャチャゼロは顔の傷を触りながら話し、
「私はお嬢様、エヴァさんの侍女長をやっております。
その前は大軍の指揮官とでも言えばいいのでしょうか?
まぁ、そのような事をやっていました。」
その2人の経歴にあっけに取られた。
一体エヴァさんはこの人たちを何処で捕まえ、旅をする事になったのだろう。
いや、その前に騎士と侍女なんて早々持てるものではない。
そう思っていると、
「ロベルタ、大軍の指揮って難しいんじゃないのか?」
そう、チャチャゼロさんが聞けば、
「いえ、見敵必殺で楽でした。」
そう澄まして答える。
なんだろう、エヴァさんは彼等の経歴を全て知った上で、側に置いているのだろうか、
それとも、知らないで置いて・・・・・、いる訳はないか。
なるほど、それだと彼女がホロに張り合っていたのが分かるし、
そのホロも面白そうだといって、相手の狂に乗ったのだろう。
そう思い、エヴァさんがくれた薬を一気にあおる。
そうすれば、確かに今の胃の痛みが引いていく。
「そういえば、ロベルタさん。
エヴァさんをお嬢様と言ってましたが、エヴァさんは?
いや、チャチャゼロさんが夫なら・・・?」
そう言うと、ロベルタは考え込みながら、
「そこの辺りは私ではなんとも言えません。
なのでエヴァさんに聞いた方がいいですよ。」
そういわれ、チャチャゼロの方を見ると、
「俺もなんとも言えないな、
エヴァ含め、俺たちは埃に塗れすぎていて、
下手に叩くと何が起こりかわからないそうだ。」
そう言って、チャチャゼロは料理を食べているが、
本当にこのままで大丈夫なのだろうか。
そう思いながら、ホロ達の方を見れば、
「どうじゃぬしよ、わっちの尻尾の毛並みは。
ぬしもなかなかじゃが、わっちの方が上じゃろ?」
「ホロ、枕に欲しい。
切り取ってもいいか?」
「お2人とも、毛を紡がせてください。
糸にして使いたいです。」
そう三者三様いいながら笑っている。
はぁ、あの光景が微笑ましい物なのか、
それともノーラが女傑の仲間入りしたのかは、分からないが、
それでも目に見える光景には温かみがある。
そう思いながら飲んでいると、
「チャチャゼロさん、今日は獣耳4つでいい日になりましたね。」
そういいながら。
ロベルタがチャチャゼロに話しかけているが、
彼は飲んでいた酒の入ったコップをゆっくりと、
だがその動作にはどこか、威風堂々とした雰囲気を漂わせながら、
「ロベルタ、それは間違っている。
その間違いは誰もが間違いやすく、気付かない事が多い。
だが、その間違いはとても大切な事で、はっきりとさせないといけないんだ。
・・・・、俺は獣の耳が好きなんじゃない、獣の耳を着けたエヴァが好きなんだ。」
そう、チャチャゼロが言うと、ロベルタさははいはいと言った感じで、
口調もそんな感じに、
「はいはい、バカップルバカップル。
でも、そのカップルは私が認めません。」
そう言いながら、ロベルタさんはフォーク2本を取り、
それに対するチャチャゼロもナイフ2本を取り、
「かまわない。
それにロベルタ、俺は双剣の扱いにも長けているぞ?」
そう言って、2人で俺を挟んだままナイフとフォークを構えていて、
気分は皿の上の料理だ。
そう思っていると、エヴァさんがこちらの事に気付いたのか、
ツカツカと歩み寄ってきて、
「ロレンス、あの2人はじゃてるだけで問題はないし、ある程度やれば勝手に終わる。
だが、そのじゃれている場にお前がいたら、挽肉になるからこっちにきておけ。」
そう言って、2人の間から連れ出してくれた。
なるほど、彼女の胆力はこんな所でも養われているのだろう。
そう、手を引く彼女の背を見ながら考える。