<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[10094] 互いの牙の間合いだな第41話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:122d81a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/08 01:32
互いの牙の間合いだな第41話





「私達はこの街で商売をしようかと思っています。
 ですが、その商売にノーラさんの力をお借りしようかと思いましたが、
 残念な事に断られてしまいました。」

そう言って、ワインを一口飲み、
スッっとロレンスはディルムッドの目を見て、

「ノーラさんが私達に力を貸していただけない理由が、
 貴方方に服に関する事を習っているからです。
 なので、先ずは貴方方のこの町への滞在期間をお聞きしたい。」

そう言うと、ディルムッドはにこやかに、

「特に日数は決まっていませんが、今すぐに発つと言うこともありません。
 そうですね、妻と私、ロベルタがノーラに服の事を教えているので、
 ある程度のめどが立つまでは、ここにいてもいいかもしれませんね。」

そうディルムッドが言うと、横にいるノーラは嬉しそうに微笑んでいる。
まぁ、これでノーラの夢への近道がある程度確保されたのだから当然だろう。
そう思っていると、そのノーラが俺に話しかけてくる。

「さっきのチャチャゼロさんの言った事は、本当ですか?」

「ええ、物事を途中で投げ出すのはどうも性に合いませんから。」

そう言うと、ノーラは『ありがとうございます。』と言って、渡した本を眺め出した。
ロレンスの方はと言うと、ある程度こちらの回答が読めていたのか平然としている。
そんなロレンスに、ディルムッドが今度は質問しだす。

「ところでロレンスさん、ノーラさんが必要な仕事とはなんです?
 彼女はただの羊飼いですよ。腕前の事は知りませんが、それでも出来る事は限られてくるでしょう。」

そう言うと、ロレンスは笑みを絶やす事無く、

「ノーラさんから伺っていないのですか?
 それなら、こちらの口から言う事はできません。
 何せ、上手い儲け話を知る人間が多くなれば、それだけ利益が減りますからね。」

そう、けん制とも探りとも着かない言葉を返してくる。
さて、ロレンス達は、こちらが密輸の事を知っていた方が得だったのだろうか?
それとも、ノーラが秘密をばらしていないかを、知りたかったのだろうか?
まぁ、知っていた方が話は早いのかもしれない。
ついでに、魔法薬が燃え尽きていたが、今はこの交渉の方が面白いし、
ノーラも、横で吸われれば煙たいだろう。

「内容も分からないのに、彼女を如何こうすると言うのも虫のいい話ではないですか?」

そうディルムッドが少々険呑な雰囲気でロレンスに返すと、
ロレンスは、胸の前に両手を出して、

「ですが、それも事実です。
 それに、ここに来る前に彼女とは交渉しましたから、
 彼女自身は事の内容を知っています。」

そう、のらりとこちらの言葉をかわした。
ふむ、ロレンスの本当の目的は何だ?
いや、ノーラと金の密輸が目的なら分からないでもないが、
どこか遠まわしに話しているような気がする。
ついでに言えば、どうもホロがこちらを見ているような気がするが、
しかし、こちらの3人のうち一体誰を見ているのかは、頭から被っている布の所為で分からない。

(チャチャゼロ、取り敢えず引渡しは突っぱねていい。)

そう念話を送ると、

(あぁ、少なくとも彼女は『身内』だろ?)

そう、念話を返し、

「それなら、私達も早々彼女を手放せません。
 少なくとも、私達がこちらにいる間は彼女は身内です。」

そうディルムッドが返すと、
ロレンスは笑いながら、

「流石は大商人、懐が深い。
 私のような駆け出しでは、弟子一人取るのも金貨で計算してしまいますよ。」

そう言われたディルムッドは、
笑いながら一口ワインを飲んで口を湿らせて、

「いえいえ、そうでもないですよ。
 私たちも日々の暮らしで手一杯です。」

そう、ディルムッドが笑って返すと、
ロレンスはスッと笑みを引っ込め、

「ええ、そうでしょうね。
 なにせ、商人ではないのですからあなた方は。」

そう言うと、ディルムッドも笑みを引っ込めて、

「ええ、そうですね。
 私は薬売りで、妻は医者。売り買いする物はありませんが、
 仮にするとすれば、それは人の命と言う所でしょうか?」

そこまで話すと、ロレンスはニヤリとどこか人の悪い笑みを浮かべて、

「宣教師様も居ますから、葬儀も楽ですね。」

そう言うと、ディルムッドはやや顔をしかめ、

「あくまで助けるのが仕事です。
 早々彼女の世話になっていては、仕事になりませんよ。」

そこまで話すと、
今まで黙っていたホロが口を開いた。

「のうぬし様よ、わっちゃ医者と言うものを知らんが・・・・。」

そう言いながら、俺の目を見据えて、

「心の臓腑が止まっていても、
 生きた人間のようにする事が出来るのかのう?」

そう聞いてくる。
なるほど、確かにロベルタの心臓は、いや、
そもそも、心臓のないロベルタは心音そのものが聞こえない。
だが、それでもこちらに打つパンチとしては弱い、

「それはまさに神の所業ですねホロさん。
 ですが、それも鼓動が聞こえる距離で言える事でしょう。」

そう、俺が返すと、
ホロは喉を低く鳴らして、ロレンスに目配せをし、
それで何か感じ取ったのか、ロレンスは自身の座っていた場所をホロに譲った。
たぶん、これから先はホロが交渉の席に着くのだろう。
だが、それでも初期よりのこちらの有利があるのに、どうやって交渉するきだ?
そう思っていると、

「なに、わっちゃ耳と鼻がよくての。
 じゃからぬしが吸う煙のせいで、甘い匂いしかせんかった。
 じゃが、1度部屋に入って、しかも煙が消えれば話はかわりんす。」

そう言って、俺達の方を見回しながら、

「チャチャゼロのように、体中から血の匂いをする人間もおる。
 まぁ、戦場に立てば自然そうなるじゃろ。」

そう言って、ディルムッドを見て、
次に、

「ロベルタのように、心の臓腑の音のせん人間は知らん。
 まぁ、ぬしが医者といい、わっちは医者がなにをできるか知らんからなんとも言えんが、
 医者であるぬしが、出来るといえばできるんじゃろう。」

そして、最後に俺の方を見て、

「じゃがなぬしよ、体中から血の匂いをさせて、
 更にはその口の・・・・、とりわけ牙から、色濃く血の匂いを漂わせるような人間なんぞわっちは知らん。
 のう、そうじゃろ、若い血吸いの娘子。」

そう言って、ホロは俺の目を射抜くように見ながら言葉を続ける。
だが、それどころではない。一気にこちらの分が悪くなった。
しかも、ゲームの盤を180度一気にひっくり返すぐらいの勢いで。
くっ、これなら魔法薬をやめずに、吸い続けておいた方がよかったのか?

「いくら戦場に立って血を飲もうとも、人なら口から入り喉を通る。
 じゃが、血吸いなら話は別じゃろ。喉を通らず、その牙で吸うのじゃからな。」

そう締めくくって、ホロはニヤリとこちらを見てくる。
ふぅ、ここまで看破されれば隠した所で、見苦しいだけだろう、
頭に混乱は残る、盤がひっくり返ったせいで、
一体どのカードが好手で、どのカードが悪手なのか分からなくなった。
それに、相手は賢狼。相手にとっては不足はないが、相手からすれば、こちらは不足な相手だろう。
なら、誰もが幸せになれる道を探し出そうじゃないか。
そう思い、ベッドを立つと、

「エヴァさん、大丈夫ですか?」

そう、ロベルタが俺に聞いてくるが、

「なに、序盤戦は終了。今から中盤戦だ。
 そして最後の終盤戦で勝負は決する。それはチェスも交渉も同じだろう?」

そう強がって言うと、ロベルタは『はぁ。』と、どこか困惑するかのように返す。
さて、目の前に見えるは決闘の盤、その子に赴く前に、

「ノーラ、真実は目に見える以上に不思議で不可解だ。
 だが、それでも、真実は真実。今から自身の眼で見て考えるといい。
 ・・・、あぁ、それとお前が身内と言うのは、間違いの無い真実だ。」

そう、頭をなでながら言うと、ノーラは目を白黒させながら、

「エ、エヴァさん、その口調が・・・・・、後、血吸い?
 でもあれ、身内?」

そう、面白いぐらい混乱している。
が、その方がいい。ノーラには悪いが、
俺以上にノーラが混乱してくれたおかげで、逆に頭が落ち着いた。

「チャチャゼロ、場所をかわってくれ。」

そう言うと、ディルムッドは俺に席を譲りながら、

「見事に看破されたな。
 まさか、ロレンスが時間稼ぎ役だとは気付かなかったよ。」

そう言うディルムッドに顔を寄せ、
ディルムッドにだけ聞こえるような声で、
ただ、ホロには間違いなく聞こえるような音量で、

「私もだ、流石は賢狼。」

そういいながら、ディルムッドの肩越しにホロを見ると、
向こうもこちらの言った事が聞こえたのだろう、
ニヤリと笑って返した。
くっ、多少でも悔しそうな顔でもしてくれれば、
こちらのアドバンテージがどれ位か分かっただろうが、笑って返させるとなんともいえない。
そう思いながら、席に着く前にテーブルの上を見れば、チェス盤が駒は置かれずに出しっぱなしになっている。
ふむ・・・、

「なにをしておる?」

「なに、分かりやすいようにな。」

そう言って、ホロ達の前に白のクィーンとキングを、
俺の前に黒のキングを置き、その後ろにクィーンを置いて席に着く。

「さて、私はお前に血吸いと呼ばれたわけだが、
 そう呼んだお前は何者だ?」

そう聞くと、ホロはキョトンとして、

「ぬしは、わっちの事を知っておるのじゃろ?」

そう聞いてくる。
だが、それでもまだお互いの口でお互いの事を名乗ってはいない。
それに、これで上手く行けば多少は場を元に戻す事ができる。

「知っているが、私はおまえ自身の口で名乗るのを聞いてはいない。
 改めて名乗ろう、真祖 エヴァンジェリンだ。」

そう言うと、ホロは面白い物を見るような目をした後、
笑いを噛み潰しながら、

「真祖の、いいじゃろう。わっちは賢狼ホロじゃ。」

そう言ってくる。
だが、まだカードを出してもらおう。
一体何処まで出してくれるかは、知らないけど。

「ここまできたら今更だろう、被り物を取ったらどうだ?
 そろそろ窮屈で仕方がないだろう?」

そう言うと、ホロはスッと被り物を取り、
その頭上に着く獣の耳をあらわにした。
背後からはノーラの息を飲む音が聞こえるが、今はそれにかまっていられない。
なにせ、ホロは自身の手で人で無いと言う、一番の証拠をこちらにさらしたのだ。
と、言う事はホロにとって、それを知られるのは痛くも痒くもないと言う事なのか?
そう考えていると、

「ククク、わっちの連れはぬしの事を狐呼ばわりしておったが、
 まさか血吸いじゃったとはの。最後に見たのはいつじゃったかの。」

そう、どこか懐かしそうに言っている。
長く生きているホロは一体、今までにどれ位の人に出会い、
そして人を看取り、忘れられていったのだろう。
と、いかんいかん。
ここは交渉の場だ、私情を挟むのは交渉の後でも十分できる。

「狐と言うのも間違いではない、狐にもなれるからな。
 それで、私は交渉の場に立ったが、それ以上にどうして欲しいというんだ?
 少なくとも、私達をこれ以上どうにかする事はできないだろ。」

そう言うと、ホロは何でもないというかのように、

「じゃろうな。じゃが、それでもどうにかせんと、
 わっちと連れがのんびり旅をする事もできん。」

そう、前置きをしてワインを啜る。
さて、本当にホロはいったいどうする気だろう?
その言葉しだいでは、こちらも如何にかしないといけない。

「その如何にか、とは?
 すくなくとも、この場での力関係は私達が上だが?」

そう言うと、ホロは飲んでいたコップを置き、

「そうかの、ここは教会じゃろ?」

そう言って辺りを見回す。
確かにここは教会で、俺たちは宣教師ロベルタの連れと言う事で泊めて貰っている。
だが、それでも早々こちらの有利は揺るがな・・・・・・い?
いや!こちらは外敵から自身を護るのにもっとも有利な場所に陣取った。
それは間違いない。少なくとも、教会の不祥事なら内々で始末しようとするし、
その不祥事が外に露見すれば、それは教会の威信に関わる。

だが、その城壁は俺達の本当の正体を知らない。
もし、それが露見してしまえば、ここは地獄の釜の中だ。
少なくとも、ただの人間には負けない。
だが、事が大きくなればなるほど、初期よりの目標の平穏は遠のく。
そう思ってホロを見ると、ホロの方はやっと気付いたのか、と言うように、

「わっちは人ではないが、ぬしもその連れも人じゃありゃせん。
 じゃあ、ここで人が大声を上げたらどうじゃろう?
 そう、例えばロベルタが倒れたとかの。」

そう言って、ロベルタを見る。
倒れたと大声を上げれば、間違いなく来たヤツは胸に耳を当てるだろう。
そうなれば、間違いなくそこで事が露見する。
・・・、切りたくない札だが一応切ってみるか。
少なくとも、こちらが考えるだけの時間ぐらいは稼げるだろう。

「なるほど、確かにそれはこまる。
 だが・・・。」

キセルを取り出し魔法薬を詰め、

「エメト・メト・メメント・モリ 火よ灯れ。」

魔法を詠唱して、指の上に炎を浮べ吸い口に火を落として火をつけ、
煙を吸い込み肺まで入れふぅーっと一息。そうして、ホロの方を見ると、
ここで初めて、苦虫を噛み潰したかのような顔をして、

「魔法か。」

そう言ってくる。
ふむ、割と有功だったらしい。
これは誤算だな。

「あぁ、魔法だ。
 ちなみに記憶を消す事も、物を隠す事も、空を飛ぶ事もできる。
 それに、お前はどうする賢狼。」

そう言うと、ホロがニヤリとし、

「ロベルタを隠せば何処に言ったかと聞かれ、空を飛べばすぐに見つかり、
 記憶を消そうにも、消す相手が誰かわからんと消せんじゃろ?
 それに、わっちは麦に帰るだけじゃ。」

そう返してくる。
確かに、記憶を消す魔法は難しく、大規模でやれば間違いなく消去どころか記憶の欠落や、
ネギが言うように頭がパアになる。
パアになると言われると、意外と可愛いように聞こえるが、
実際なったヤツ、まぁ俺の場合は賞金稼ぎだったが、
見ていられない、もしくは目も当てられないような状態で、むしろ白痴に近いような状態になる。

数日で戻るにしろ早々使いたい物ではない。
なので、よっぽどの事がない限り、この魔法は慎重になおかつ対象を明確にしてやる事が重要になる。
しかし、ホロがそこまで読んでいた・・・、のか?
いや・・・、なるほど、これは・・・。

「なるほど、見苦しい足掻きを見せたな賢狼。
 そちらが大声を上げれば、私とその連れは捕まる。」

そう言いながらキングの駒を倒し、後ろの方を見るとディルムッドは、
事の成り行きを見極めようと俺の方を見て、
ロベルタは、自身がネックになった事をどうし様かとオロオロし、
ノーラはだいぶ落ち着いたのか、俺の事を不思議な物のように見ている。

そして、ホロの方を向けばホロはニヤニヤ笑い、横のロレンスは憮然としているが、頬から冷や汗がたれている。
だが、口の辺りはどうも、喜びを隠せないらしい、少し釣りあがっている。
当然だろう、俺がキングの駒を倒したのだから。
だが、ここからまた交渉するとしよう。
なにせ、クィーンはまだ残っている。

「だが、それはそちらも出来ない・・・・だろ?」

そう言うと、ホロは眉をひそめる。
だが、ここからだ!
まだ、俺の言葉はまだ止まらない!

「賢狼の牙は確かに私の喉笛に牙を立てた。
 だが、その間合いは私の牙の間合いでもある。
 ノーラ、お前はこの町でなんとあだ名されている?」

そう言うと、1度ビクリとした様な気配の後、
おずおずと口を開き、

「妖精ノーラです。
 はっきりと聞いた事はありませんが、そういう風に言われているらしいです。」

そう、彼女は彼女の口でそう言った。

「今聞いたとおりだ。彼女がここに頻繁に出入りしだして間もないが、それでも彼女は暇があれば私の所に来ていた。
 だが、ここでひとたび私が異端者と告発されればどうなるか?」

そう聞くと、ホロはスッとロレンスの方に目をやり、
その視線を受けたロレンスが口を開く。

「異端者として捕まる・・・・、ですか。」

そう眉をしかめながら話す。

「ご名答。まぁ、仮にそうなったら私達は逃げるよ。
 文字どおり飛んで逃げてもいいし、逆に町を滅ぼしてもいい。」

そう言った瞬間ホロは俺を睨み、ロレンスも座ったままだが身構え、
後ろのロベルタ達からは息を飲む音がする。

「ぬしがわっちに勝てるとでも?」

「悪いが、ここに来る前に神は1柱屠った。」

そうお互いがいい視線が絡む。
ホロに勝てるか・・・・、そんな事やってみなければわからないが、
そもそも、そんな事をする必要性はない。
そう思っていると、はぁ、ホロが1つため息をついて、
自身の前のキングを倒し、

「で、ぬしたちの目的はなんじゃ?
 わざわざわっちらをここまで呼んだんじゃ、何かあるんじゃろ?
 大体目星はつい取るが。」

そう言ってくるが、はて、ホロ達が見つけられるような目星とは何だ?
そう思って黙っていると、

「ぬしたちも騒ぎはいやなんじゃろ?
 じゃから、荷馬車やら馬やらを探し取ったんじゃろ。」

なるほど、確かにそれは目的だ。
間違いなく目的だ。

「間違いない。」

そう言うと、今度はロレンスが口を開き、

「なので、私達は貴方方を私達の馬車に乗せ、
 目的地付近まで送る事を提案します。」

なるほど。
それは確かに利害は一致する。
ただ、それは俺達とロレンス達の利害がだが。
そう思い、金貨の入った袋をドンとテーブルの上に乗せる。

「ここの金貨50枚入った袋がある。
 これだけあれば借金も返せるだろうし、晴れて自由の身。
 私達とノーラがしていた町をでるまで教えるという契約も守れる。」

そう言うと、ロレンスとホロ、後はノーラが金貨の詰まった袋を眺めている。
・・・・、あぁ、なるほど。

「ここで新しく商談だ。
 その金貨50枚で私達を雇わないか?」

そう言うと、ロレンスはビクッっとしたように肩を上げ、

「貴方方をですか?」

そう言いながら、俺の事を訝しそうに見てくる。
まぁ、今までの物騒な会話からすればそれも仕方はないか。

「あぁ、出来る事は色々あるぞ?
 料理に洗濯、物の修理に後・・・、羊飼いの説得とかな?」

そうノーラの方を見ながら言うと、今度はノーラがビクッと肩を揺らした。

「エヴァさん、今金貨を目の前にして、私がその商談に応じると思いますか?」

そう、ロレンスが俺の目を見ながら言ってくる。

「いい商人の第一条件はなんなのか、ご教授願おうか商人ロレンス?」

そう、質問を質問で返すと、
ロレンスは疲れたように口を開き、

「約束を護る、ですよエヴァさん。」

そう言って、ロレンスは袋をこちらの方に押し返してきた。
その横にいるホロは手を目に当てて天を仰ぎながら、

「はぁ、ぬしのお人好しは筋金入りじゃの。」

そういって、ため息をついている。
ふむ、後で甘い物でもホロに送ろう。
旅の仲間に早々毛嫌いされたくはない。

「これで契約は成立だな、商人ロレンス。」

そう言うと、

「えぇ、間違いなく契約完了です。
 契約料も払いましたし、貴方方を雇い私の荷馬車に載せることになりました。
 なので、早速ノーラさんを説得していただきましょう。」

そう言って、俺の目を見てくる。
俺は俺でノーラをこちらのテーブルにつくように促し、
そのノーラが席に着いたのを見計らい口を開き駒を置く。

「なに、最初からここのクィーンは彼女だよロレンス。
 右は強き敗者、左は弱き敗者。勝者は盤面を眺めていたノーラ女王ただ1人。」

そう言うと、ノーラは困惑したように口を開き、

「そんな・・・、ただ私は見ていただけです。
 そんな事をいわれても実感はありません。」

そう言ってくる。
まぁ、確かにそうなのではあるが、だが勝者がノーラである事は揺るがない。
例えば、俺がでしゃばらない限りだが。
そう思いながら、ノーラの前にワインの入ったコップと、水の入ったコップを置き口を開く。

「さて、ノーラ。私達はお前を説得しないといけない。
 そういう契約で金貨を貰ったんでな。
 それではこちらの出せるカードを出そう。」

そう言うと、ノーラはゴクリと生唾を飲む。
まぁ、出せるカードはノーラが得する物以外ないんだけどね。

「私達が出せる条件、1つ、身内なので旅立つ時に一緒に連れて行く。
 2つ、旅で次の町に着くまで一日中服を弄れる、布も糸も使い放題で。
 3つ、町で商館を見つけるのを手伝う、
 まぁ、これはお前がいいと言う物を探さんといかんから、なんともいえないがな。
 一応これが出せる条件で、私は一応イギリスを目指しているので、そこまで着いて来るなら来てもいい。」

そう、ノーラに出せる甘い条件をぶちまけて、ワインで口を湿らせる。
ノーラの方は今言った事を、一生懸命理解しようかと言うようにうつむいている。
そして、口を開く。

「エヴァさん達の見返りはなんですか?
 私は何も持っていませんが?」

そう言ってくるが、既に見返りはロレンス達に貰っているし、
これといって欲しい物はない。まぁ、そうだな・・・・。

「お前が作った初めての服1着。これが私の求める見返りだ。」

そう言うと、ノーラはキョトンとしたように、

「その、血とかではないんですか?」

そう聞いてくるが、

「いや、コップなんかでくれるとか、舐め取るとかでいいならしないでもないが、牙を立てることはないぞ?
 ついでに言えば、牙で吸ってくれと言っても生きてるヤツから吸う事はないしな。
 だが、それもこれも、お前の回答しだいだ。 神の血は全てを蒙昧にして覆い隠す。
 地を潤す恵みは目覚まし代わりの一杯となる。
 さて、どちらを取る?」

そう言って、うつむいたノーラを眺めていると、
やがてノーラは手を伸ばしながら、

「私は、夢を夢で諦めたくありません。
 私は、今の生活に確かに不満を持っています。
 私は・・・、私の夢を曖昧にしたくない。」

そう言って水の入ったコップ一気にあおり、

「私は私の意思で、今の提案を受け入れます。
 その・・・、よろしくお願いします。」

そう言って、立ち上がってぺこりとお辞儀をした。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.051944971084595