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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 美味しそうだな第40話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:122d81a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/01 16:19
美味しそうだな第40話






ーsideホロ&ロレンスー

レメリオ商会を出て、ホロをつれて町を歩く。
レメリオとの交渉は成功だろう。
金の工面と借金返済日の延長、更に金を裁いてもらうルートの確保。
こちらの欲しがっていた条件は、全て取り付ける事に成功し、金貨3枚も帰ってきた。
これは間違いなく大成功と言って差し支えないだろう。

「ありがとうホロ、最後の一押し。
 アレがあったから、レメリオも折れたんだろう。」

そう言うと、ホロは俺の前に出てクルリとこちらを向き、

「あの男の顔は、喉に肉が詰まったほどに真っ青じゃったからの。
 わっちが口を開かんでもすぐに折れたじゃろ。」

まぁ、確かに最後のレメリオの顔は酷いものだった。
顔は青白く、冷や汗さえも出ていた。
だが、

「それでもだ、時間がない中で時間を稼ぐのは難しい。
 あの一押しのおかげで、この時間にノーラに会いにいける。」

そう言うと、ホロはニヤニヤしながら、

「それなら、夜は肉じゃの。
 生きのいい羊がいいでありんす。」

そう言ってくる。
羊飼いに会いに行くのに羊の肉を要求するとは、
金の密輸の前に羊達が、ホロの胃袋の中に収まらないか心配だが、どちらにしろ、

「成功すれば、たらふく食わせてやる。
 解体した後の肉を少し買い取って、乾し肉にしてもいいな。」

そう言うと、ホロは頬を膨らませながら、
少々不機嫌そうに、

「わっちは今夜がいいんじゃが?」

そうは言うが、手持ちの金貨は3枚。
確かにこれを使えば、ホロに腹を満たすには十分な肉を買えるだろう。

「清貧は美徳だがホロ?」

そう言うと、ホロは喉を低く鳴らし、

「戦の前の腹ごしらえと言うじゃろ?
 これから小娘をたぶらかすのに、頭を廻さわさんといかんでありんす。
 じゃが、そしたら腹が減る。腹が減っては廻る物もまわりゃせん。」

どうやら、ホロは今夜の夕食を肉にする事を譲る気はないらしい。
まぁ、昨日一晩分の負い目に、今朝の事、ホロを傷つけた事、そしてレメリオ商会での一押し。
これだけ見ると、俺もホロに肉を食べさせてやりたいが、今の俺達にはまだやる事が残っている。
ホロが言うように、これからノーラを密輸に引き込まないといけない。
たぶん、十中八九引き込む事は成功すると思うが、それでもまだ、

「ノーラを仲間に出来たら肉にしよう。
 あと、たぶらかすと言うのは人聞きが悪い。」

そう言うと、ホロは面白そうな物を見るように俺の顔を見て、

「何か違うのかや?」

そう聞いてくる。
たぶらかす・・・・、か。
この件にノーラを引き込めば、彼女は町を出る事をいやがおうにもしいられる。
そして、そのノーラがどこかの職人の弟子になれるか、
それとも商会に属して、見よう見まねで自身の腕を磨く事になるのかは分からない。
ただ、服の仕立て職人と言うのも、職人と言う言葉が付くように簡単なものではない。

相手が一般人なら多少の失敗もまぁ、許されるかもしれないが、
もし貴族からの注文なんてものがきたら、
それこそ神経をすり減らすような感じで1針1針縫わないといけないのだろうし、
採寸1つ間違えばそれでその服は使い物にならなくなり、他の背丈が合う人間が来るまでの間在庫となる。
その事を考えると気が滅入るが、それでも彼女に協力してもらわないといけない。
既にレメリオとは一蓮托生の立場で、契約も交わし金貨も受け取った。
そんな事を考えながら教会に向かい歩いていると、

「浮かない顔じゃの。」

そう、横を歩くホロが言ってくる。

「あぁ、彼女を巻き込むのが心苦しくてな。」

そう言うと、ホロは顔をしかめ、ため息を1つ付き、

「ぬしは本当にお人好しじゃの。
 それならわっちが小娘を丸め込んでもよい。」

そう言ってくるが、そこまでホロを頼るわけにも行かない。
これは俺のつけであり、俺の見通しの甘さが招いた事だ。
そんな自分の尻をホロに拭いてもらうのはあまりにも幼すぎるし、
これ以上彼女を頼れば、後でどんな形でつけを回収されるか分かった物ではない。

「なに、俺も商人だ。商談に私情は挟まないさ。
 それに、これ以上ホロを頼れば自分がダメになる。」

そう言うとホロはニヤニヤしながら、

「殊勝な心がけじゃな。
 わっちとしては頼ってもらって、後で回収した方が嬉しいんじゃが?」

ふっ、危なかったが、その罠にからなかったのも何だか惜しく思える。
だがまぁ、既に俺はそれとは別の罠に、どっぷり腰まではまっているのだろう。
商人の金の恨みは谷よいも深く、取立ては夜空に浮ぶ月よりもしつこい。
そして、服の駄賃欲しさに、北の森まで取り立てに行くと言った俺は、
ホロの言う当にお人よしなのだろう。

だが、そのお人好しのおかげで、ホロに出会えて旅が出来るのなら、
お人好し言うのも、存外悪いものではないのかも知れない。
そう思っていたのが顔に出ていたのか、ホロがジト目で俺の顔を覗き込み、

「だらしのない顔じゃの。
 そんな顔じゃ、小娘1人騙しゃせん。」

そう言ってくる。
そんなにだらしないはずはないんだが。
そう思い、自身の頬に手を触れたが、やはりそこには何時もと変わらない頬がある。

「別段だらしなくないが?」

そう言うと、ホロはニィッと口をあけて笑い、

「今ので、気が引き締まったし、肩の力も抜けたじゃろ?」

そんなやり取りをしながら歩き、着いたのは教会の前。
昔は教会には何時も人がいて、司祭が怒り出すまで祈る事なんてザラだった。
だが、何処をどう間違ったのか教会はいつの間にか、悪魔よりも狡猾に人々から金をむしりとるようになり、
いつの間にか教会に満ちる祈りの声は、他者からの異端の告発を受けないようにと言う心の叫びとなった。
そして、そう言ったモノのあおりを受けたのは、不浄な死体に触れる肉屋、そしてその死体から剥ぎ取った皮を使う職人に、
羊飼いのような人と関わらず、その多くの時間を平原や森で過ごす人々。
森には何時もよくないものがいて、人をたぶらかす。
そんな迷信めいた言い伝えと、森は死の国、緑は死の色と言う考えから、
町でも浮いた存在となりやすい。

昔、深い森を抜けて商品を運びやっと町にたどり着いて、商人と名乗ろうが町に入れてもらえない事があった。
何でも、待ち人曰くその森には魔獣がいて多くの人が食われたのに、無事にたどり着けるとは異端者のしるしだ。
そう言われて立ち往生しながらも、何とか商館の主に話をつけてもらったこともあった。
そう考えると、長くを馬上で過ごす俺と、多くを森と平原で過ごすノーラは似ているのかもしれない。
ただ、願わくは彼女がこの提案に乗り、いい職人になれる事を願う事だろう。
教会から祈りの声がやみ、人々がはけた後に、町の肉屋や皮職人と言った教会に大金を寄付する者。
そして、羊飼いの少女は一番最後に出てきた。

「教会の前で会うなんて、偶然ですねノーラさん。」

そう、ノーラに声をかけると彼女は、

「そうですね、これも主のお導きですね。」

そう、まるで教会で歌われる清貧をもっとうとする、
修道女のように、胸の前で手を合わせて彼女は挨拶してきた。
ただ、ひとつ気になるとすれば、数日前に出会った時はその顔に愁いを帯びていたのに、
今の彼女はその気配さえなく微笑んでいる事だろう。
だが、話をしなければ始まらない。

「実は仕事の依頼をしようかと思いまして。
 この後、大丈夫ですか?」

そう言うと、ノーラはしばし考え込むようにした後、

「かまいません。余り時間はありませんが。」

「では、立ち話もなんです露店で話しましょう。」

そう言うと、彼女はうなずき歩き出した。
そして、横にいたホロが口を開き一言、

「妙じゃの、嫌な予感がするでありんす。」

そう、前を歩くノーラと犬のエネクに聞こえないように呟いた。
確に、彼女の顔が晴れているのは嬉しいが、
今の俺達にとってはむしろ愁いを帯びていて、思いつめていてくれた方が交渉しやすい。
これは、本当にホロの言うように嫌な予感がする。
そう思いながら、広場の活気のある露店のイスノーラと対面するように座り、ビールを3つ頼む。
一応、ヘソクリに取っておいた銅貨だが、それをはたいてでも、今はこの交渉を成功させる必要がある。
これで本当に金貨3枚が最後のお金となった。
そんな事を考えていると、安い分手荒く運ばれてきたビールがテーブルの上に3つ並ぶ。
そして、3人がビールを取った所で、

「再開を祝して。」

そう言って杯を掲げるが、誰一人それに口をつけない。
ホロなら、チビリチビリと飲むかと思ったか、どうも彼女も何かおかしな物を感じ取ったのかもしれない。
だが、どちらにしろ口を開き交渉をしなければ進む交渉も、儲け話の商談も、旅の武勇さえも喋れない。

「それで、ノーラさんはラムトラまで行けるんでしたっけ?」

これは確認しておかなければならない、もしこれがノーなら、金を安くで買う事が出来ない。
そうすれば、今回の計画事態を頭から考え直す必要がある。
だが、それは思い過ごしだったのだろう、ノーラは指を折りながら、

「はい、ラムトラ、カスラータ、ポロソン、後は魚が多く取れる辺りまでは、羊を操りながらいけます。」

そう言ってきた。
これで、彼女を確実にこちらに引き込まないといけなくなった。

「ラムトラまではどれくらい羊を連れていけますか?」

そう聞くと、ノーラは、

「あまり多くなければ。」

即座に返した所を見ると、ラムトラまでは何度か行った事があるのだろう。
こちらの必要な情報は揃った。
ならば、後は本願成就のために交渉の核心を話すとしよう。

「最初に言ったように、私は貴方に仕事のお願いをしたい。
 報酬は金貨20枚。無論、現金支給で証書などはありません。」

そう言うと、ノーラはその言葉の意味が理解できなかったのか、
よく噛み砕くように考え込みだした。
金貨20枚、この額を扱うのは駆け出し以上の商人や、
町商人、肉屋などで、早々農民が扱える物でもない。
そして、それはノーラも同じなのだろう、いくら腕が凄かろうと教会からの賃金は低い、貧民救済院に住むほどに。
それに、彼女のこの町でのあだ名は妖精ノーラ、教会からは目をつけられ、いつ異端として告発されるかも分からない。
そして、そんなノーラに畳み掛けるように、テーブルをコンコンと指でたたきながら口を開く。

「失敗すれば報酬は出ませんが、成功すれば今言った通りの報酬が出ます。
 そして、羊飼いの貴方に要求する能力は、羊を繰りながらラムトラまで行って、そこからより多くの羊を連れ帰ることです。」

そう言うと、ノーラの頭も追いついたのだろう、報酬と仕事内容が見合わない事に。
そして、口を開く前にこちらが更に言葉を被せる。

「ですが報酬は報酬です。それに、一生懸命羊を護れば守るほど教会からは目をつけられ、よりか過酷な場所に送り込まれる。
 たぶん、貴方が狼か魔獣か盗賊に襲われるまで、その行いはかわらないでしょう。」

そう、微笑を浮かべながらノーラに言うと、そのノーラは目を閉じて耳だけで俺の言葉を聞いている。
表情がない分なにを考えているのかは分からないが、全ての言葉が届いているなら、
彼女も事の内容を理解しているはずだ。

「それに、それだけの額があれば組合に加盟するも、株を買って仕立て屋の女主人になるのも思いのままですよ?」

そう言った時に、ノーラの眉がピクリと動いてスッと目を開き、
テーブルの上に一枚の布を出してきた。

「ロレンスさん。私は商人ではないので、今聞いた金額も仕事の内容が本当はなんなのかも知りません。
 ですが・・・、」

そこまで言ってノーラは俺の目を見ながら、

「私の夢は仕立て屋の店主ではなく、あくまで自身の手で服をつくろう事です。
 そして、このーテーブルの上の布を見てください。」

そう言われてテーブルの上の布を見ると、様々な縫い方で糸が布の上を走っていた。
お世辞にもその縫い方が上手いとはいえないが、布の穴の開き具合から察すると、
縫っては糸を引き抜き縫っては糸を引き抜きと、繰り返し練習したのだろう。

「少なくとも、仕立て屋になるのは楽ではないです。今服飾の事を掻い摘んで教えてくださってる方が言うには、

 『材料を買って縫い合わせるだけなら誰でも出来る。だが、それを人に着て貰おうとなると、細やかな心遣いが必要となる。
 それは糸一本の毛羽立ちや、縫い方の違いなんかになる。人の手でそれをして売るのはとても大変で、
 自身が着る分なら、いくらでも妥協が出来るだろうが、人の分となると妥協は出来ない。まぁ、頑張って修行するんだな。』

 っと、言っていました。そして、今私がしているのが、その方から出された宿題です。
 私から見ても下手ですが、その下手な物を見せられたロレンスさんは、私から服を仕立ててもらいたいですか?
 更に言えば、私は羊飼いで草原で針仕事は出来ず、できる機会といれば貧民救済院での補修ぐらいでしたし。」

そう言われると、言葉に詰まる。
商人として、今目の前の物にお世辞を言うのは楽だが、それを提示した本人が下手だと言い張っている。
そんな相手を誉めれば、間違いなく相手の怒りを買う、こうなれば、話を摩り替えた方が早い。

「ですが、それも生きているからできるのでしょう。
 森で盗賊に襲われればそれまでです。そして、貴方は教会からそこに行く事を強いられている。
 それは貴方が襲われるまで、ずっと続く。それに、ノーラさんはこの町で仕事をなさる気ですか?」

そう言うと、ノーラは眉を八の字型にしながら、

「いえ、この町で仕事をする気はないですが・・・・。」

ここで攻めきれなければ、たぶんノーラは首を縦には振らない。

「さすがに、この大きな町でも知り合いがいる所では仕事がし辛いでしょう。
 さらには、教会からは眼光鋭く司祭達が貴女に睨みを利かせている。
 それに、私も教会からは色々とひどい目に合わされた事がある。はっきり言いましょう・・・。」

そう一拍おき、あたりの人間に聞こえるか聞こえないかの声で、

「この町の教会は豚にも、いや、その豚のクソにも劣る。」

教会への批判は重罪である。
だが、それでも口にしなければいけない時もある。
たぶん、今がその時だろう。
それに、気付かれれば横のホロが教えてくれるだろう。

「私は、今言った物にも劣る所に、いい様に使われているノーラさんを可哀相に思います。
 私達の提案に乗って頂き、ほんの少し教会に仕返しをして、
 そして、新しい町で新しい暮らしをしを手に入れていただきたい。」

そう言うと、ノーラは訝しげにこちらを見ている。
既に、ノーラの心にはこちらに対する疑念の炎が生まれ、
すくすくと育っているのだろう。

「その、仕事の内容を私は聞いていません。」

そう、ノーラが言ってくる。
確かに、今まで話したがこちらが何をして欲しいのかは言っていない。
言っていいものか迷うが、ここまで来たら言うしかない。

「金の密輸です。場合によっては羊の解体もして頂く事になるかも知れません。」

そう言うと、ノーラは目の前にあるビールの入ったコップを手に取り、中身を一気にあおり。

「どうやら、私はここで飲みすぎて酔っていたようです。
 私は酒に弱く、その酔った時にはよく人の言葉を聞き漏らします。
 私は、ここで何の話をしていたのでしょうロレンスさん?」

そう、言われてあっけに取られる。
ノーラは今まで話した話を、全て酒を飲んで無かった事にしてしまい、
更に、密輸にも否定を下した。
その事に呆然としていると、

「わん!」

そう、エネクが吠えノーラは席を立ち、

「すみません、今日もその方に仕立ての事を教えていただくようになっているので。」

そう言いながら、歩き出そうとする、
くっ、先に彼女を手中に収めたヤツは一体誰なんだ!
仮に、彼女が出会った当初のままなら、間違いなくこちらになびいただろう。
それに、最後の彼女が言った文句は、商人が事をはぐらかす時に使う物の典型だ。
つまり、彼女はどこかの商人と通じている事になる。
そんな彼女の背に、言葉を投げかける。

「参考までに、ノーラさんが教えていただいている方とは誰です?」

そう聞くと、ノーラは振り向いて、

「はい、教会に泊っているエヴァさん達です。
 一応、彼等が町を出るまでは教えていただく予定です。」

そう言って歩いていった。
その姿を見ながら、額にピシャリと手を打つ。
ここか、ここでその名前が出てくるのか・・・。
それに、ノーラには何をするか知られてしまった。
彼女がこの事をチャチャゼロさん達に言うかは解らないが、
どちらにしろ不安事項になるのは変わりない。
そう思っていると、横のホロが俺の酒を飲みながら、

「どうやら、わっちらはどうあっても、
 そのチャチャゼロと言う商人に会わんといかんようじゃの。」

そういうホロから酒の半分残ったコップを奪って飲みながら、

「あぁ、だがこれで1つエヴァさんが、俺達の事を知っていた謎が解けた。」

そう言うと、ホロは苦笑しながら、

「やはり、相手は狐じゃな。ここまで見越したかは知らんが、
 わっちらが知らん間に罠を張っていたようでありんす。」

ここまで来ると、ホロが罠と言うのがうなずける。
知らない間に知らない所から、自身たちの所に来るように誘導されているような気がする。
しかし、そうなると狐は誰か?
チャチャゼロさん・・・?
いや、それだと何だかしっくり来ない。
彼の対応は商人然としていたが、それでも会話を打ち切ったのは彼じゃない。
となるとロベルタさん?
いや、それはあまりにもなさ過ぎる。
彼女はあの会話の中で特に気になるような事を言ってはいない。
となると・・・、白髪の彼女、

「エヴァさんが白狐?」

そう言うと、ホロがニヤニヤしながら、

「狐は痩せっぽちで肉は少ないが味は極上じゃったな。
 クックックッ・・・、わっちの牙でその喉笛に喰らい付いてやろうかの。」

そう言って笑っている。

「あぁ、お前の頭のめぐりを頼りにしてるよ。
 だが、その前に行きたくはないが商館を回って情報収集だ。」

そう言って、ホロを連れ立って再度、気が重くなる商館周りへと歩き出した。


ーside俺達ー


チェスはボードゲームだが、何気にスポーツにも分類されるゲームである。
そして、そのチェスは戦術と戦略を駆使し8×8のボードで、
ポーン8、ルーク2、ナイト2、ビショップ2、クィーン1、キング1。
これらの駒を使いキングを取る事を目的とする。

まぁ、外国風将棋だと思えばいいが、取った駒はボードに戻す事ができないのが1つ、
ポーンが自陣から、敵陣の一番奥まで行った時に、キング以外の好きな駒になれる事が1つ。
そして、ポーン以外の駒は駒の動きに対応して後ろに下がれるが、ポーンは下がれないし、
自陣から出るときは2マス勧めるが、それ以降は1マスずつとなる。

駒の動きはルークが十すべて。ビジョップが×すべて。クィーンが米すべて。
キングが口で1マスずつ。これらの駒は自分の駒を飛び越す事はできないが、
ナイトだけ別で自分の駒を飛び越し、○で十には動けない。

と、まぁ、それをロベルタとディルムッドに教えて、チェスをやっている訳だが。
ディルムッドは、まぁ初心者なんで簡単に勝てる。
だが、問題はロベルタである。
鏡打ちをして、駒の動きを覚えた後は連敗を繰り返している。
うぅっむ、人とコンピューターの戦いはどっちが勝ったんだったか。
まぁ、この場に限っては人がいないので、なんともいえない。
ついでに言えば、本来の仕事は指揮官だったのだから、大軍指揮はお手の物と言うことか。
そう思いながら、今勝負が終わったばかりの盤面を見直しているが、

「エヴァさん、少々気になったのですが、
 どうしてキングを差し出してまでクィーンを護るのです?
 この勝負の場合、キングを取られたらおしまいでしょう。」

まぁ、確かにその通りなんだが、

「キングはクィーンを護る。ただそれだけだ。」

なんだったかな、確かどこかでこの台詞を聞いてカッコいいなぁと思って、
初めてチェスに触れて以来、何となくこのフレーズが頭に残っている。
ゲームとしてはキングを取られておしまいだが、何となく護りきれた時は幸せな気分になれるな。
まぁ、負けは負けなのだからなんとも。
そう思っていると、扉をノックする音がする。

「空いてるから入っていいですよ。」

そう、チェス盤を見ながら魔法薬を吸っている俺の横で、ディルムッドが声を上げた。
そして入ってきたのは、

「失礼します。」

そう言ってノーラが入ってきた。
そして、俺の前まで来て、

「宿題です、まだ下手ですが見ていただけますか?」

そう言って、糸が幾本もはしる布を出してきた。
縫い方は簡単な物で、祭り縫い、返し縫い等、後はエヴァの所に合った服を見ながら覚えた物と、
ディルムッドがドクロからもらった、服飾の本で覚えた物を教えている。
まぁ、今見た布の縫い方が、上手いか下手かで言えばお世辞にも上手いとはいえないが、
それでも繰り返し練習したのだろう、布のあちこちに針で刺した跡がある。

「よし、まぁお世辞にも上手いとはいえませんが、それでも向上心はあります。
 後は早く縫うのではなく、先ず同じ間隔で縫うように注意していけばいいでしょう。
 取り敢えず、ベッドで後は教えるとしましょうか。」

そう言って、ベッドの方に移る。
針山があればテーブルでもいいのだが、
今のテーブルの上には、チェス盤やらワインやらがあって散らかっている。
ついでに、今寝ているベッドの一部がほつれているので、それを直させる事にしよう。
そうして、ベッドに移りほつれている場所を見せて、

「そのまま縫ってもいいですが、 今回は少々手間をかけましょうか。」

そう言って、ハサミとペンを渡す。
そうすると、ノーラはほつれている部分を切って、
2回ぐらい折り返して両方縫い、それをあわせてもとにもどそうとしている時に、

「っつ!」

そう声が上がったので、見てみれば指を刺したのか血の玉ができている。

「気をつけて落ち着くといい。
 白い布だと血は目立つようになる。まぁ、このベッドは茶色いけどね。」

そう言って、ノーラの指を咥えて血を舐める。
ふむ、久々で量も少ないが味は上々だろう。
そう思いながら、指を口から出すと、ノーラが、

「すみません、少々酔ったようで。」

そう言うので、鼻を動かすとアルコールの香りがする。
たぶん、教会でワインでも飲んだのだろ・・・う?
いや、ワインならブドウの香りがするはずだが、どうもブドウではないな。
となると?

「それはかまいませんが、何処で飲んだのです?」

そう聞くと、ノーラは口をもごもごさせている。
たぶん、ロレンス達がノーラに密輸を持ちかけたのだろう。
なら、後は賢狼が来るのを待つだけか。
そう思っていると、また部屋の扉がノックされ、ロベルタが開いた扉から、
日の光をふんだんに浴び、大きな穂をつけた麦畑のような香りが流れ込んできた。

流石は、長い年月麦を護ってきた賢狼。
その香りさえも、こんなに心地のいいものなのか。
ならば、その首筋に牙を立てたなら、さぞ芳醇な味がするのだろう。
と、そんな事を考えている間にロベルタが扉の前でロレンス達の対応をしている。

「こんにち、はロベルタさん。
 少々お話があってお伺いしたのですが大丈夫でしょうか?
 一応、連れも連れて来ているのですが。」

そう、戸口でロレンスの声がすると、ロベルタはこちらを振り返りながら、

「いかがなさいますかエヴァさん、チャチャゼロさん。」

そう聞いてきて、ディルムッドがこちらに目配せするので、ロレンス達に見えないように小さく顎を引いて返す。
そうすると、ディルムッドが、

「かまわないよ。
 わざわざ足を運んでもらったのに、帰ってもらうのは悪いしな。」

そのディルムッドの声を聞いたノーラが俺の方を見ながら、

「商談ならお邪魔でしょうから、私は帰りましょうか?」

そう聞いてくるが、彼女には居て貰わないと困る。
なにせ、これからの商談は彼女の行く末にも関わってくる。
それを、本人抜きでしてしまうのはいただけない。

「いえ、貴女はいないといけない。
 神は理不尽だが、それを含めて世界は絶望するほど酷い物ではないですよ。」

そう、微笑みながら言うと、ノーラは何の事だか解らないのだろ首をかしげているが、
入ってきた人物を見て息をのんで、

「ロレンスさんとホロさん・・・・・。」

そう、小さく呟いた。
窓から差し込む日は傾き、時刻は逢魔が時。
人と魔が、魔と魔が、人と人とが出会うにはうってつけのこの時間に、
賢狼ホロと商人ロレンスは、俺達の部屋に現れた。
クックックッ・・・、いよいよ面白くなってきた。
そう思いながらほくそ笑んでいると、ディルムッドが席に着き、それの対面にホロとロレンスが座る。
そして、ロベルタが各人の前にワインの入ったコップを置き、俺達のいるベッドの方に非難してくる。

「ノーラ、字が読めるならこの本を読むといい。
 読めないなら、絵を見て縫い方を試すといい。」

そう言って、布を数枚と針と糸を渡す。
むろん、取り出したのは影からだが、ノーラに見えないようにカバンの影から出したのでばれる事はない。
そして、近場の蝋燭からキセルの火口に火を落として魔法薬を吸う。
板上には黒の俺達とノーラ、白のロレンスとホロにレメリオ商会。
キングを俺達とするならクィーンはノーラだろう。
そう思っていると、ディルムッドから念話が入ってくる。

(ここまで来てくれたのはいいとして、ここからどうするんだ?)

(なに、相手の話を聞いて応答するだけさ。
 必要な所はこちらから念話を送る。)

(了解。)

その念話が終わると、ディルムッドが口を開いた。

「お連れさん・・・、ホロさんでしたか。
 連れて来て下さった事に感謝しますよロレンスさん。これで妻も喜ぶ。」

そう、ディルムッド言えば、ロレンスは笑顔で、

「ええ、連れもあなた方に会いたいといっていましたのでよかったですよ。」

そして、ロレンスはテーブルの上で手を組みながら、

「早速で悪いのですが、私達には少々時間がありません。
 なので本題から話させていただきましょう。」

そう、前置きをして話し出した。



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