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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 気のせいだと思っておきたかったな第38話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:3cc7fbc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/15 20:58
気のせいだと思っておきたかったな第38話






リュビンハイゲンに着いて一週間。
馬車が欲しいと町の商館を回ったが、手に入れられないでいる。
と、言うのも町の近くの森に、傭兵崩れの盗賊たちがたむろしていて木材が手に入らず、
ついでに言えば、その盗賊狩りに使うと言う事で馬も全て出払っている。
まぁ、今の所特に盗賊が攻めてくる気配も無ければ、町も平穏そのもの。
ただ、一部の商館は閑古鳥が鳴くほど人影が無く、中にいるその店の店主も顔が青ざめている。
さてはて、なにが起こったのか?

商人の顔が青いのは株が暴落したか、或いは事業で失敗したか。
もしくは、取引のゴタゴタか、財布を落としたか。
まぁ、金にまつわる失敗である事は確かではある。
ついでに言えば、いい感じの鎧が二束三文で大安売りしているので一つ買って、
溶かして使えないかと思い、魔法球の中で色々知らべもした。

だがまぁしかし、このままここで足止めを食らっていても仕方ないと、
商館を回る時に買い物と一緒に道を聞いたが、ここからだとドイツもイギリスも遠く、
徒歩で向かうなら2ヶ月以上かかるらしい。
まぁ、町を出て夕闇にまぎれて空を飛んでいけば、早々時間も食わないはずなのだが、
さてどうしようかと言う所。
まぁ、それ以外にも問題が持ち上がっているのだが、

「さて、どうしたもんかな?」

今は教会で間借りしている部屋の中。
辺りの空気は清らかで、礼拝堂の方からは祈りやら賛美歌やらが子守唄のように聞こえてくる。
部屋のテーブルの上には神の血と奇跡の石が並んでいる。
まぁ、平たく言えばワインとパンなのだがなんとも。
と、問題はそこではなく、

「どうしましょうかエヴァさん?」

そう聞くロベルタは砥石でナイフを研ぎながら、
しきりに歪みが無いかを方目を閉じて確かめている。
どうでもいいが、ミスリルモドキのナイフが蝋燭の光を反射し、
その光がロベルタの顔を映し出すと言うのは似合いすぎる。

「連れて行けばいいんじゃないか?」

そう言うディルムッドは、テーブルのイスに座ってチマチマと針仕事中。
何でも新しい服のデザインが、天啓が如く降って来たらしい。
そして俺はベッドに座って、何時ものようにキセルで魔法薬を吸っているわけだが、
本当にどうするべきか・・・・。

「連れて行っても預け先が無い。
 お前が一人前になるまで針仕事を教えるか?」

そう言うと、ディルムッドの方も困ったような顔をする。
まぁ、問題と言うのはノーラ・アレントの事である。
彼女と出会ったのは2日前の夜。
この町に知り合いなんて者がいるはず無いのだが、突如として俺達の部屋の扉がノックされた。
さて、教会の人間にはボロが出ていないはずと思い、扉を開けたらそこにはフードを被った1人の人物。
何事かと思っていると、

「夜分遅くすみません。私はノーラ・アレントといいます。
 神父様に宣教師様と商人様ご一行が泊っていると聞きお尋ねしたのですが・・・。」

そう挨拶をしてきた。
まぁ、この次点で俺はノーラ・アレントなんて名前ありふれたものだと思っていたし、
リュビンハイゲンなんて町も、中世には存在したが近代化が進むにつれ、どこかの町と合併した町だと思ったし、
或いは何らかの天災で、地図と人の記憶から消えた町だと思っていたのだが、
いい加減彼女の話の中から無視できない単語が出てきた。

「ノーラさん、何故私達の所に?」

そう部屋に通して俺が問えば、

「はい、新しい町ができたと言う情報が無いかと思いまして。
 今日お町に連れした商人さんが、そういう情報があれば快く教えてくださると言われたので・・・。」

まぁ、そう聞かれても、俺達も先日旧世界に戻ってきたばかりなので特に情報は無い。
そう答えようかと思っていた所、ノーラの目線は俺ではなく、横で縫い物をしていたディルムッドの方に釘付け。
その事で聞いてみれば、ノーラは服の仕立て職人になりたいらしい。
それを聞いたディルムッドがヒョイと顔を上げ、

「それなら俺の妻に習ったらどうだ?
 俺が今している針仕事も、彼女の見よう見まねだし。」

と、そう、よせばいいのに言ってしまい、何だかんだで簡単なモノを教える事になった。
だが、俺ができる事なんて型紙を作ったり、採寸したり、後は布を縫い合わせたりとその程度。
下手をすれば今はディルムッドの方が得意になっているかもしれない。
ちなみに、ディルムッド曰く針仕事は集中力がつくうえ服が作れるから、修行と両立できて効率がいいらしい。

まぁ、そんな感じの針仕事でも、ノーラからすれば全てが真新しく見えたのだろう。
服飾に関することを説明していると、彼女は目を輝かせながら話を聞いていた。
そして、それを教えている間に彼女と話していて、いい加減気のせいだと思えない名前が出てきた。
先ず1人目がロレンス。どのロレンスかと聞けばクラフト・ロレンスとはっきり答えた。
ついでに連れがいるかと問えば、巡礼者の娘さんが一緒との事。
はぁ、なんていうか・・・、うん、このまま何も聞かなかった事にして逃げ出そうか、超法規的措置により。

そう思うも、今は不味すぎる。
なにが不味いかと言えば、ロレンス達の所にノーラが居ない事。
これが一番の問題である。何せ、彼女がいなければ金の密輸が出来ず、
哀れロレンスとホロは路頭に迷う事になるし、最悪商会から追われる身となる。
まぁ、ここで本当に狼と香辛料的な展開になっているのかと、町の様子を思い出してみれば、
少なくとも、鎧は二束三文もいい所の値段で販売中である。

俺達がノーラに出会う前にロレンス達と出会ったおかげで、ノーラの方はロレンス達と面識があるが、
そのノーラはただいま自身の夢に向かって絶賛爆進中。
更に言えば、今の所仕事は不満だが、少なくとも賃金と住む場所は確保できる。
さて、この状態のノーラがロレンス達の企みに加担するかも甚だ疑問である。

そう考えると、さぁ、本当にどうするかな?
取り敢えずノーラに関しては、このまま1人にしても、商人の護衛と羊飼いで得た賃金を貯めて町に行く事ができる。
が、ホロとロレンスは別、このままほっとくとたぶんだが破産する。
ついでに言えば、この町の話ではホロとロレンスの間に亀裂が入と言うダブルパンチ。
ん~、いらんくじを引いたと見るか、はたまた密輸に一枚噛んで儲けを貰うか。
しかし、面識も無い俺達ではおいそれと密輸に一枚噛めるわけも無く、
ついでに言えば、なんちゃって商人である俺達は商会にも属していない。

さてはて、酒場で面識を作ろうにも、今のロレンス達は焼けぼっくりに火がついたうえで、
更には火中の栗を素手で拾うほどにバタついているのは確かだ。
ん~、確かロレンスは今の所手当たりしだいに、知り合いに金を借りまくっているだろうから、そこに金をちらつかせるか・・・。
いや、これじゃあ根本的な解決にはならないか・・・。

「エヴァさん、そう難しい顔ばかりしていると疲れるでしょう。」

そう言って、ロベルタが俺の前にワインの入ったコップを置いてくれる。

「あぁ、ありがとう。
 だが、事が起きる前に考えておかないと、少々面倒になりそうでな。」

そういって、煙を吐いてコップに口を付けるとディルムッドが、

「見捨てはしないんだろ?
 となると、仕立屋で弟子を欲しがっているヤツがいればいいんだが。」

そう言って、針と布を置いて顔を上げる。
ディルムッドは、俺がノーラの事で悩んでいると思ったか。
まぁ、それも間違いではないのだが、どちらかと言うとノーラよりもピンチあろう2人組みの方に、
思考を持っていかれていたような気がするな。

「まぁ、運しだいと言った所か。
 人と人とがめぐり合うのも、何かの必然があるからだろう。
 ただ、問題なのはここにいる面子でコッチの世界の知り合いがいるヤツが居ない事だな。」

そう俺が言うと、ディルムッドは不思議そうに俺を見ながら、

「エヴァは元々貴族だろ?
 それなら知り合いは多そうだが?」

そういい、横のロベルタも俺を見てくる。
さて、知り合いか・・・。
エヴァの知り合いと言うより、マクダウェル家の知り合いと言うラインなら、まぁ居ない事も無い。
だが、それは父や母の知り合いであって、エヴァ自身の知り合いかと問われると微妙なラインになる。
更に言えば、家を焼き没落貴族とう言うレッテルが張られているであろう俺に、手を差し伸べる人間はいかほどか。
ついでに、10数年もコチラの世界では雲隠れ状態で、髪の色まで変わってしまった俺を信じてくれる人間と言うと更に少なくなる。

「厳しいな、知り合いをあたろうにも、今の私を『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』だと信じる人間は少なく、
 更に言えば父や母の知り合いが主で個人的な知り合いは少ない。
 ついでに髪も金から白に色が変わっているしな。」

そう首をすくめながら言うと、
ロベルタとディルムッドはお互い顔を見た後、
俺の方を向き、3人で『はぁ』と1つため息をつく。
ん~、八方塞とはまさにこの事。
と、まぁ本当に狼と香辛料的な事になっていると言う確証も無いので、
今の所は今まで考えていた事が取り越し苦労で済んでくれれば、
当面はノーラをどうするかと言う事だけを考えればいいのだが・・・。
そう思いながら魔法薬を吸っていると、

コンコン。

はて、こんな夜更けのまた来訪者・・・。
そう思っていると、

「私が出ます。」

そう言ってロベルタが部屋の扉を開ける。
ロベルタの肩越しに見える人物の髪は灰色っぽい白。
そして、その人物の口から、

「夜分遅くすみません、ローエン商会のクラフト・ロレンスと言う者なのですが、
 少々お話ししたい事がありまして。」

そう、地味に憔悴したような顔のロレンスが現れた。

「ふむ、どうやらピースがそろい歯車が回り始めたか・・・。」

そう俺が呟くと、どうやらロレンスの方にも聞こえたらしく、

「は?」

と、首をかしげている。
まぁ、縁は縁を呼ぶと言う事か。
そう思っているとディルムッドが、

「どうぞ、得になにも無い所ですが。」

そう、にこやかな笑顔と共に中に入る様に言い、ロベルタが迎え入れる。
そして、入ってきたロレンスはお辞儀をひとつし、

「改めまして、ローエン商業組合のクラフト・ロレンスです。
 商人の間ではロレンスで通っているので、そうおよび下さい。」


ーsideロレンスー


武具の価値の大暴落を聞いて目の前が真っ暗になるも、知り合いを頼りに金を工面しに奔走するも、
既に町中に俺の破産の情報は回っていたのだろう。
そして、決定的な一言が、

「あなたは他人の情けに頼り金を借りようと回っている最中に、女連れで歩くのですか?
 馬鹿にするのもいい加減にしたまえ。ローエン商会組合の質も落ちたものだ。」

それをホロの所為にする事はできない。
だがそれでも!

「お前さえ――。」

それは自身の過ち。
しかし、口から出た言の葉は取り消す事などできず、ホロは一瞬悲しげな顔をすると共に、

「先に、宿に戻っとる。」

そう言って、宿に・・・、
いや、或いは俺に愛想を尽かし、町を出て自身の脚でヨイツを目指したのかもしれない。
こんな時は浴びるほどの酒を飲み、全てを悪夢だと思い眠りたいが、それをするだけの金も自身の手にはない。
その後も、金の工面に奔走して、手に出来たのは金貨3枚。
絶望の中、この金をホロの銀路に当て、俺自身は奴隷に身を落とすつもりで歩いていたが、
そんな時に門にいた兵達が町を歩きながら話していたのを聞いた。

「本当だって、俺はあの夫婦の嫁の方から宝石を貰ったんだって。」

そういいながら、兵は手をバタバタ振りながら隣の男に話している。
そして、それを聞いた男の方は、

「だが、手元には石ころだろ?
 信じろと言う方が無理がある。しかも、その商人夫婦と宣教師ご一行は神の家である教会に滞在中。
 これなら悪魔だとも、異端者だとも言えんだろ。おおかた、お前さんがあの嫁の色香に騙されたんだろ?
 あんなべっぴんの娘なんざ、早々お目にかかれるものでもないからよ。」

そう言いながら通り過ぎていく。
羽振りのいい商人もいた・・・・、いや・・・・、
そんな宝石を兵に手渡すような商人がいれば、それは間違いなく名のある商人に違いない。
それなら、信用貸しで金を工面できるかもしれない!
最悪、ローエン商会宛で更に借金する可能性もあるが、
それでも、この窮地を脱すればどうにかなる!

そう思い、急いで商会に戻り、その商人が何処の商会に属しているのか、
いや、もしかすればどこかの商会の主なのかもしれない!
しかし、いくら聞いてもそんな商人達の事なんか知らないとヤコブはいう。
そして、あの門番達の会話をもう一度よく思い出し、今その商人達がいるであろう教会へ足を運んだ。
そこでようやく俺は、門番達の話題に上がったであろう商人夫婦と、宣教師と思しき三つ編みの女性に出会えた。
彼等は夜も遅く、フクロウの鳴き声が聞こえる時刻だと言うのに、幸運にも誰一人寝る事無く部屋に蝋燭を焚き起きていた。

俺を出迎えてくれたのは宣教師のロベルタさん。
そして、招き入れてくれたのは、顔に傷のある眼鏡をかけたチャチャゼロさん。
最後に、ベッドに座り煙を吸う彼の妻であろうエヴァさん。
部屋に入った当初、エヴァさんが何か言っていたが、よくは聞き取れなかった。
だが、俺の目的はあくまでチャチャゼロさんの方。
挨拶も早々に、彼等から金を借りれないかを聞かなければならない。
いや、借りれるだけの材料は既に門番達の会話で得ている。

「チャチャゼロさんは名のある商人とお見受けしますが、少々お願いがありまして・・・。」

そう切り出すと、チャチャゼロさんは1度奥さんであるエヴァさんにスッと目配せをし、
その後に、

「立ち話もなんです、どうぞおかけになってください。」

そう言って、自身の座っているイスの対面に座るよう促してきた。
よし!門前払いではなく、交渉の席に付く事ができた。
そう考えれば、彼等は今の俺の状況を知らないのだろう。

「不躾で申し訳ないですが・・・、その、お金を貸していただけないかと思いまして。」

そう俺が言うと、チャチャゼロさんは肘をテーブルにつけて手を組み、

「初対面である私達に信頼と言うものはありませんよ、ロレンスさん。
 さて、その状況で貸してくれと言われましても銅貨数枚が関の山ですが?」

そう、穏やかだがやんわりと拒絶の意を含めた言葉で返してくる。
まぁ、当然だろう、初対面に人間に金を貸してくれと言われて、おいそれと貸すヤツもいない。
だが、それでもここで借りれなければ、俺たちに待っているのは暗い明日だろう。

「ローエン商会名義でもかまいません。
 年数はかかりますが、必ずお借りした分はお返ししますし、利子も払います。」

そう、商会の名前を出してもチャチャゼロさんは首を横に振り、

「私と妻は個人商で商会とかかわりは持っていません。
 いくら為替や証書を貰おうとも、それを換金する術もありません。
 なので、私達に商会の名前は無意味です。」

そう、拒否してくる。
・・・、何か彼等から金を借りる術は・・・・、ある!

「失礼ですが、あなた方はこの町に入る時に門番に"宝石"を渡されたとか?」

そう宝石の所の語気を強めて問えば、チャチャゼロさんは何でもないかと言う様に、

「ええ、妻が渡していたようですね。
 この町に入るにしても、どの町に入るにしても商人と言えば税を取られる。
 なので、その税の代わりに宝石を渡したまでですが?」

ここだ!
門番の言う事が本当なら、彼等は石を宝石に見せて門番を騙したらしい。
つまり、彼等を教会に告発するすると脅しをかければ、
後ろめたい所があれば否が応でもこちらと交渉しなければならない事になる。

「その宝石が石ころだったと門番が言っていましたが、あなた方は・・・?」

そう、最後まで言わずに言葉を濁す。
こういう場合、最後まで言わず相手の頭の中で考えさせた方が、
こちらの言葉で言うより、より最悪を導き出す確率が高い。
そして、案の定蝋燭の光に照らし出されるチャチャゼロさんの顔は眉をしかめながら、

「ロレンスさん、あなたは私達に何か後ろめたい隠し事があると?」

そう言ったチャチャゼロさんを畳み掛けるように口を開く。

「いえいえ、ただ、そういった者が居たと言うだけですよ。」

そう言って、チャチャゼロさんと俺の視線が交差し、
互いに口を開かないまま見詰め合っていると、
フーッっとベッドの上でエヴァさんが煙を吐き、喉を低く鳴らしながら、

「ククク、溺れる者は藁にも縋ると言いますが、縋る藁が違いますよクラフト・ロレンスさん。
 まぁ、少し頭を冷やして女神に貢物なんてしたらどうです?」

そう言って、エヴァさんはリンゴをどこからとも無く1つ取り出し俺に投げてくる。
縋る藁が違う?女神に貢物?彼女は一体なにを?
そう思っていると、チャチャゼロさんも苦笑し、

「どうやら、妻があなたの連れに会わせろと言っているようですよ?」

と、チャチャゼロさんが言い、

「私達はあと数日はここにいます。
 この巡り会わせが神の思し召しなら、きっと何らかの必要性があるのでしょう。」

そう言って、ロベルタさんが祈りを捧げるように胸の前で手を組む。
そして、最後にエヴァさんが、

「もうじき夜が明けます、暗かろうが明るかろうが朝は来ます。
 貴方自身の放った言葉の矢はさて、一体誰に刺さりその毒を流し込んでいるのでしょう?」

そう言って、サファイアのような碧眼で俺の目を見てくる。
俺の今晩の収穫は金貨3枚にリンゴ1つ。
いや、ロベルタさんはまだこの町に数日はいると言っている。
つまりは、俺に持つ時間は少ないが、それでも彼等との交渉の機会は潰えてはいない。

「夜分からすみませんでした。
 今度は私の連れを連れて伺うとしましょう。」

そう言って、手をスッと差し出すとチャチャゼロさんではなくエヴァさんが俺の手を取り、

「次ぎ会う時は必ず2人で来てくださいね。」

そう言いながら、笑顔で見送ってくれた。
そして、部屋を出て1人、自身の手には金貨3枚とリンゴ1つ。
そう、彼女から貰ったリンゴ。
彼女が一体なにを考えて俺にリンゴを渡したのかよく分からない。
彼女の言葉はあまりにも詩的で、それでいて、あまりにも今の俺の的を射抜きすぎている。
だが、彼女の言うとおりだ。
今俺がホロに向かって放った言葉は、確実にホロを苦しめている。
それならば、先ずは彼女に謝って、そしてそれから彼等と交渉しても遅くは無いはずだ。
それに、ホロなら俺なんかよりもずっと頭が回る。

「よし、先ずはホロに謝りに行こう。」


ーside俺達ー


鶏が鳴き朝を知らせる。
昨晩から交渉と言う名のゲームをしてみたがさてはて、
まぁ、ロレンスも思い切った事をすると言った所か。
いきなり来て、金を貸してくれと言うとは思わなかった。
だがまぁ、今ここで貸した所で、その後の人生が借金付けになるのも可哀相だろう。
目下、頼みの綱はホロが金の密輸を提案してくれる事だが、しなかった場合は別の要求で手を打つとしよう。
そう思いながら、魔法薬の火を消し横になろうとすると、

「エヴァ、彼がこのまま告発したらどうする?
 俺たちは一気に追われる身となるわけだが・・・。」

そう言うのはディルムッド、
眼鏡で目が疲れたのか、目をマッサージしている。

「まぁ、それについては気に病む必要はないさ。
 なにせ、向こうも向こうで、飛び切りの隠しだまを持っているんだからな。」

そう言って、ニヤニヤ笑っているとディルムッドは首をかしげながら、

「確かこっちに知り合いはいなかったんじゃないのか?」

そう聞いてくるが、

「まぁ、な。知り合いはいない、だが、一方的な知り合いは別だよ。
 知っている通りかと問われればなんとも言えんが。」

そう言うと、ディルムッドは更に頭に?マークをポンポン浮かべるように考え込み、

「何かお考えがおありですか、エヴァさん。」

そう言いながら、ロベルタは空になったコップにワインを注いでくれる。
さて、考えと言うべき考えは今の所ボチボチ、ついでに言えば、

「まぁ、果報は寝て待て、来客も然り。ロレンスが連れを連れてくるまで寝て待つとしよう。
 それに、私たちが関わらずに事態が解決するなら、それに越した事はない。」

そう、あくびをしながら言えば、ロベルタも、

「そうですね、最悪全ての記憶を奪って逃走すれば容易でしょう。
 旧世界の人々を見る限り、魔法に関してはほぼ無抵抗でしょうから。」

そう返してくる。
さて、ノーラとロレンス後足りない役者はホロと商会の面子か・・・。
原作通り事が運ぶなら密輸に成功して万歳だろうが、何処がどうねじくれるかなんて分かったものじゃない。
となると、

「当面は町の様子をもう一度詳しく探ってからだな。」

そう思いながら、ディルムッドに町の様子を探るよう頼み、
彼が帰ってくるまでの間をしばしの睡眠とした。



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