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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 夜ももう終わりだな第34話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:3cc7fbc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/16 01:21
夜ももう終わりだな第34話






ディルムッドは起き上がろうとしている鬼神兵に向かい、
一直線に進み、起き上がるのを阻止しているが、状況は芳しくなく、もう少しで立ち上がろうかと言う所。
しかし、それについてディルムッドを責める事はできない。
すでに、体格差と言う言葉がばかばかしくなるようなこの状況で、かの英雄はなおも必死に挑んでいるのだから!
周りに展開している艦隊も、今は事の成り行きを見守るが如く静止している。
ならば、今も俺は俺のできることをするまで。
ディルムッドも俺も、満身創痍に近い状態だが、
まだ体は動きお互い死んでもいない!

「エメト・メト・メメント・モリ!!!」

始動キーを唱え鍵を扉へ差し込み、自己と世界を繋ぐ。
いくら血を飲んだとはいえ、完全回復までは程遠い。
それでも、なお軋む体に更に闇の魔法を施して、
歯を食いしばり森羅万象から魔力を集め言霊を唱える。

「契約に従い、我に従え、氷の女王。 来たれ、とこしえのやみ、えいえんのひょうが。」

本来なら、『おわるせかい』まで詠唱して、鬼神兵を砕きたいが、そこまで体が持たない。
今できるのは、氷に閉じ込めるのが限界。
氷柱封印なんていうのもおこがましい。
ただ、相手を氷付けにするだけで体一杯。

「全ての者に安らかなる眠りを。其は、悠久の安らぎ。」

呪文を唱えればそれに答えるが如く、鬼神兵の周りには氷が出来始める。
しかし、それを鬼神兵は受け入れる事無く、生まれる氷を砕き、なおも動こうとする。
眼下の神は一体なんでそんなに暴れるのか、それに対する答えはたぶん永久に得る事はできない。
それに、今はそんな答え必要ではない!
今必要なのは、鬼神兵を破壊する事であり、それに必要な状況を生み出す事!
生み出される氷は鬼神兵を足元から徐々に包み、鬼神兵の体を凍て付かせその動きを制限していく。
魔法の完成まであと少し、それなら後はディルムッドの準備に当てよう。

「我が騎士よ、自身の持てる力をすべてつぎ込み我が前にその力を示せ!!!!」

その呼びかけに、ディルムッドは一瞬俺の方を向いて念話を飛ばしてくる。

(まだ、動きが封じきれていない!今俺が攻撃の準備をしだせば鬼神兵が攻撃してくるぞ!)

それは、確かにそうだ。
だが、

(かまわん、やりたければやらせておけ。本当なら私も完全に氷付けにしたいが、
 正直な話、そこまで魔力も体も持たん。・・・・、これは鬼神兵と私達の賭けだよ。
 一体どちらがこの戦が終わった後、地に立つに相応しい者か。その座をかけた戦いだよ。
 ならば、悔いの残らないよう、やれる限りの事をやろうじゃないか我が騎士よ!!)

そう、これは本当に賭けだ。
このまま魔法を完成させても、それを維持するだけの魔力も無く、
凍結した瞬間に中から溶かされる可能性さえもある。
本当に勝負は一瞬。魔法が完成し、鬼神兵が完全凍結した瞬間にその身を砕く。
その一瞬だけが俺たちの勝機であり、鬼神兵の、いや、眼前の神の敗因となる刹那。
そして、その刹那は刻、一刻と迫っている。

「言ったとおりだ!幸運も悪運も、自身の身さえも勝利への一瞬に賭ける!!
 ないても笑ってもこれが最初で最後だ!!!これより後は無く、これを越えずして先は・・・・、無い!!!」

そう言って、両腕を突き出した格好のエヴァは俺の獰猛な笑みを投げかけてくる。
後は無く、眼前には越えるべき壁。そして、その壁を越えるのは刹那の瞬間のみ。
エヴァ自身も、彼女の言葉の通り、両腕を突き出した間に見える顔は、笑ってはいるが頬を汗が伝っている。
それに、時折頭を下に向けるしぐさもする。本当に我が主も限界が近いのだろう。

そして、俺の体も限界に近い。
片腕は肩から吹き飛び、残った腕も槍を振るい続けた所為か妙な音がする。
主も俺も、残された力は少なく、体は満身創痍。
だが、それでも主はこの戦いに勝つつもりでいる!
諦める事無く、泥に塗れる事をいとわず、ただ、自身の敵とした者を討とうと
なけなしの力を振るい神に喰らい付いている!

そんな主が俺の名を呼び、力を示せと要求してくる!
あぁ、俺は今この瞬間から彼女の本当の意味でのパートナーとなり、自身を一本の槍として彼女に預けよう。
主の呼びかけに答え、いかなる者も・・・・、眼前の神さえも穿つ槍となろう!
自身の片腕は吹き飛びそこにはないが、だが、それでもその腕があった事は幻視できる!
鬼神兵か完全に立ち上がったものの、すでに下半身が凍て付き残った片腕の身を振るっている状況。

それならば、俺の攻撃が確実に当たり、なおかつ最も威力の出せるヤツの頭上に陣取るまで。
そう思い、虚空瞬動で一気に鬼神兵に頭上まで空を蹴り駆け上がり、目を閉じて心を落ち着かせる。
焦燥に駆られたままでは必ず失敗する。心を落ち着け、無にし、
あるがままの力を融合させ受け入れる器を自身の心に作る。

「左槍に魔力を・・・・。」

腕は無く、槍も無いが、確かにそこには俺の腕があり槍がある。
その槍に魔力を練りこみ凝縮させる。

「右槍に気を・・・・・。」

そこには、実体を持った腕と黄色の槍が顕在する。
そちらの槍には気を練りこみ凝縮させる。
そして、その気と魔力練りこんだを双槍を自身の頭上で掛け合わせる!

「咸卦法!!!」

そう叫び、目を開いて飛び込んできた光景はまさに悪夢だった。
何せ、氷が上半身にまで達した鬼神兵が大口を開き魔力をあつめ、
いつエヴァに魔力砲を発射してもおかしくない体制になっているのだから!!!
その光景を見て、ゆれた自身の心に呼応するかのように咸卦法が揺らぐ。
そしてそんな中でも、両腕を突き出して動けないエヴァは、皮肉をたっぷり込めた顔で、

『来・い・よ』

そう口の形を作って見せた。
そして、鬼神兵の最後の雄叫びが如き魔力砲が発射される。
今度ばかりは流石に手の打ち様が無い。
だが、彼女は諦めていない!いや、今この戦場にいる者全てが諦めてなどいない!!
なにせ、発射された魔力砲とエヴァとの間に、一隻の戦艦が文字通り身を呈して割り込んできて、
その艦の右腹でその雄叫びが如き魔力砲を受け止めているのだから!!

「隊長・・・・。」

そう俺に呼びかけるのは艦に残った兵の1人。
眼前では、戻ってきた真祖と真祖のつれていた人形が鬼神兵を破壊すべく攻撃を仕掛けている。
と、言っても盛んに攻撃をしているのは人形で真祖は空中で静止し、両腕を鬼神兵に向けているだけ。
そう思っていると、真祖が大声を上げた。

その言葉はかつて俺たちが戦った真祖の持つ始動キー。
そして、その声に答えるが如く、真祖が言葉をつむぐたび辺りの気温は一気に下がり、魔力は真祖に向かっていく。
鬼神兵の方は足の方からゆっくりと、だが、確実に氷付けになってゆくがここまでされてもなお暴れている。
その光景はまるで、小さな頃に読んだ御伽噺の魔法使いが強大な敵を前に、なおも諦めず戦いを繰り広げる英雄譚の様な光景だ。
そして、鬼神兵の完全凍結まで後わずかと言う所で、今度は人形の騎士が鬼神兵の頭上に陣取り何かをしだす。
しかし、鬼神兵はなおも足掻き、もう顔の凍結まであと少しと言う所で口を開き、また魔力を集中させ出す!

「隊長、どうされます・・・・?」

そう話す兵も、モニターから目を話せずに、食い入るようにモニターを見つめる。

「艦のコントロールを俺に一任し各員退艦。あとは俺がどうにかする。
 お前等は明日の事を考えて今すぐ退艦し、町の復興作業の準備に当たれ。」

それを聞いた兵が一気にどよめきだす。
しかし、今は・・・・、あの死地に飛び込む人間は俺だけでいい。

「命令だ!各員早急に退艦しろ!!!」

そう言うと、兵たちは背筋をビシッっと伸ばし俺に敬礼しながら、口々に、

「私の隊長は貴女しかいません。必ず生還を。では!」

「復興の指揮、またお願いします。」

「隊長、最初は何考えているか分からなくて怖かったですが、今は別です。御武運を!」

そう言って退艦して行き、最後に残ったのはこの隊の古株。
そして、そいつが口を開いた。

「隊長、いや、今はタメ口で言わせて貰うけどな・・・・。
 空より高い所には天国って言う物凄く退屈な所があって、そこじゃなんもする事が無いんだと。
 ・・・・、お前さん、今ようやく生きてる顔してんだ。そんな退屈な所行くにはちぃっとばかしはえぇぞ。
 ・・・・・、諦めるなよ!」

そう言って、俺の肩を叩き出て行った。
やれやれ、寄って集って死ぬな諦めるなと勝手な事を。
確かに俺は死にたかった。真祖に殺して欲しかった。
だが、今は違う。自らの居場所を見つけ、傷を思い出に変える覚悟をして、
そして、今俺はこの艦に残った。そんな俺が今からするのは、死ぬため行動ではなく、俺が俺として生きるための行動だ!!

「しゃくで仕方ない・・・・、気に食わない・・・・、だが、それでも今の賭けのオッズでは真祖が一番高い。
 なら、そこに賭けてやろうじゃないか!!!」

そう言って箒を握り締め、艦を全速力で鬼神兵と真祖の間に向かわせる。
そのさなか、砲撃まじかの鬼神兵と1人対峙している真祖が『来いよ』と、確かにそう口を動かした。
ハッ、気に食わない、その態度が気に食わない。こんな中でも諦めずに睨みを聞かせて笑う真祖が心底気に食わない。
何せ、アレは俺が欲しがってもたぶん、絶対に手に入らない壊れ方なのだから!!!

「いってやるさ!!お前が殺されるのは俺で、俺を殺すのはお前だ!
 お互い別のヤツなんかに殺されるものかよ!!!」

直後、鬼神兵の砲撃が放たれるが、艦の切っ先で受け止め、そのまま速度を落としゆっくりと前進させる。
真正面からの砲撃なら耐え切れたかもしれないが、右側面で鬼神兵の砲撃を受け止めたため艦全体が一気に軋みあがる。
だが、まだだ、まだ耐えて見せろ!!この国を護るために作られたのなら、
ここが墓場になろうとも、その使命を果たすまで朽ち果てるな!!

割り込んできた艦は砲撃の当たった所からひしゃげ、火を噴き今にも落ちそうな状況だが、
それでも粘り俺と鬼神兵の間に居座り続ける。
そして、止まない雨が無いように、炎が永遠に燃え続ける事が無いように、鬼神兵の最後の雄叫びが如き砲撃は終息しだす。
それを感じ取ったのか、艦の方もゆっくりと、だが、確実に高度を落とし火を噴きながら墜落していく。
鬼神兵の頭上には今だにディルムッドがいて、鬼神兵の体は氷付け
その様はまるでお預けを食らった狗の様だ。

「最後だ、最後の最後でこのリングに立つのはキサマではなく、私でもなく、今落ちた艦にいた人間だ。」

それは確かな事だろう。
神、真祖、そして人間。その三つ巴の戦の中で、最後の最後に横合いから飛び込み、
ただ勝利のためだけに身を呈した人間がこの中で一番強い。
それは力なんかに括ったものではなく、ただ護る、ただ生きる。
そういった愚直さの先にある強さだ。
たぶん、それは俺では手に出来ない強さ。
その強さを今ここに人間は示して見せて、俺たちにバトンを繋いだ。
ならば、今のアンカーである俺たちが勝利への道を駆け抜けるのは当然だろう!

「仕上げだ、我が騎士よ!」

そうディルムッドに声を張り上げ宣言して、
魔法を完成させる最後のトリガーを引く。

「こおるせかい」

その言葉を紡げば、最後に残っていた顔も氷に閉ざされる。
氷柱封印と言うにはおこがましすぎるが、それでも完成できた。
そして、鬼神兵の頭上からは俺が信頼する騎士の揺ぎ無い勇ましい声がする。

「この一撃、我が主に捧ぐ・・・。」

そう静かに言った後、残った腕と言わず、その小さな躯体全体で力を溜め、
ただその一撃に全ての力を込め、

神穿つ黄薔薇ゲイ・ボウ!!!!!」

そう言って放たれた槍は、鬼神兵の体を砕きながら地表に向かい突き進む。
そして、地上に突き刺さる共に遠雷のような轟音と共に鬼神兵の体が砕け散り、
氷が天高く舞い上がる。その様はまるで、自然界には存在しない青い薔薇の花びらが舞い散っているようだ。

「今度こそ終わりか・・・・。」

目の前の鬼神兵は砕け散り、後に残されたのは墜落した戦艦と砕かれた氷の残骸。
戦艦が火を噴いて爆発する音がするは、それ以外は聞こえない。

「終わったなエヴァ。」

そう言って、俺の横にディルムッドがやってくる。

「あぁ、終わりだ。」

そう言って、地上に2人で舞い降りる。
そして、地上に舞い降りて地に足が付いて足に体重が乗るとその瞬間によろけた。
まぁ、流石にそれは仕方ないか。
魔力も体もボロボロのスカスカで立っているのも億劫なぐらいだ。
そんな俺を見て、ボロボロのディルムッドが声をかけてくる。

「大丈夫か?」

「キサマよりわな。お前の方こそ大丈夫か?」

そう聞くと、

「なに、また君になおしてもらうさ。」

そう言って微笑んでくる。
ふぅ、今回は疲れた。いらん苦労だと言われればそれまでだが、
だが、その苦労の先にある疲労感は心地いい。
そう思っていると、残骸を見ながらディルムッドが人の悪い笑みを浮かべて口を開いた。

「とりあえず、今回の事で1つ分かった事があるよ。」

「奇遇だな、私もだ。」

(私もですね。)

そう、して3人が同じ事を口にする。

「「(今後神には祈らない。)」」

そう言って俺とディルムッド、そして念話だけだがロベルタが笑う。
笑って、笑って、笑い転げているとディルムッドがロベルタを迎えに行くといって飛んでいった。
その背を見ながら思うのは、まったく持って頼りになる相棒達を手に入れたものだという事。
それと同時に、体に闇が覆いかぶさってくる。

「グッ・・・・ウグッ・・・!!」

ザワリザワリ、何処からともなく忍び寄り、皮膚の下といわず、
体中といわず、ただ、ざらついた感覚がするものが這いずり回る・・・・。
そして、それに耐え切れずペタンと地面に尻餅をついて前かがみになりながら自らの両肩を抱く。

「気持ち・・・・悪い・・・・。」

ザワリザワリ・・・・。
それに耐えていると、何処からとも無く俺を呼ぶ声がする。

「エヴァンジェリン!!!」

そう呼ぶほうを見れば、頭からは血を流し片方の肩を庇うように箒を片手にした。

「サーヤか。」

「あぁ、俺だ。」

そのサーヤの姿を見て立ち上がる。
先ほどまでのざらついた感覚は無いが、それでもこいつの前では尻餅をついたままではいたくない。
そして、その俺の姿を見たサーヤが口を開く。

「返す。」

そう言って、差し出すのは一本の箒。
たぶん、俺がサーヤに渡して今までサーヤと共にあったもの。

「いらん、くれてやる。」

「何故だ。」

そう片方の目だけで俺を睨みながら、サーヤは問いかけてくる。
何故かか、そうだな強いて言えば、

「それはキサマにとっての蜘蛛の糸だ。
 それがある限りキサマは今回のことを思い出す。」

そう、サーヤの目を見て話せばサーヤは手をおろす。
そして、ふと空を見れば空は白み始め、サーヤの背後からは太陽が昇ろうとしている。
さて、このままここにいても拉致が空かない。
体はボロボロだが、それでもここから地上に逃げなければ、なにがあるか分かったものではない。
問題はサーヤか。

「私はもう行く。さて、キサマはどうする?」

そう問えば、

「キサマを殺すのは俺だ。そして、キサマに殺されるのは俺だ。
 だが、今の俺ではキサマを殺すすべが無い。それに、俺が殺したいのは真祖であって、
 エヴァンジェリン・・・・・・・・ではない。」

そう静かに言ってそっぽを向いた。
ククク・・・・、いや、今大声を出して笑うのは流石に悪いだろう。
だが、それでも笑いが堪えきれない。

「ククク・・・・、そうか。それなら、私はエヴァンジェリンなので行かせて貰おう。」

そう言って、エヴァンジェリンは俺に背を向けて歩き出した。
そして、後ろを向いたまま手をヒラヒラさせながら、

「あぁ、キサマに1つ言い忘れた事があった。
 キサマの望みを私が叶える可能性。それについて考えてみたが、1つ思いついたものがある。」

そう、もう小さな点になったエヴァンジェリンは振り返りながら、

「キサマが自殺したら殺してやる!」

そう、皮肉たっぷりに俺に向かって叫んでその姿をけした。

「チッ、やはりここで戦っておくべきだったか?」

最後の最後まで気に食わないヤツだが、最後の台詞で更に気に食わなくなった。
生きて足掻いて、今ここに立つ俺にとって自殺なんてものは、それこそ考えられない事だ。
それなのに、最後の最後で俺に自殺すれば殺してやるなどとアレはほざいた。

「あぁ~、クソ!」

そう言って、地面に大の字になって寝転ぶ。
見上げる空は次第に明るくなり、少し頭を動かせば天に昇ろうかとする太陽が見える。
先ほどから艦の爆発音も収まり、辺りに漂うのは静けさと舞い上がった氷が天から降り注ぐばかり。
真祖が去り、鬼神兵が壊れ、まるで世界に俺が1人残されたような静けさ。
そんな事をボーッっと考えていると、足元の方から俺を呼ぶ声がいくつもする。

「隊長ーーーーーっ!!」

「艦の中じゃないか?ぶっ壊すか?」

「待て、下手に壊すな!」

「辺りの捜索急げ!」

その声は、いつか聞いた兵たちの声。
その声は、今の俺の居場所を示す声。
その声は、戦場を共にかけた仲間たちの声。
そんなやつらの声にはちゃんと答えてやらないとな。

「ここだーーーー、俺はここにいるぞーーーーー!!!!」


そうして助けられた後は大変だった。いや、それは現在進行形か。
俺の傷を見た兵たちは俺を担いで、そのまま王宮の病院に放り込み、
後の兵たちは姫指揮の下、町の復興作業に入った。
王は元々諸外国を訪問中だったが、そのまま他の国に復興支援を頼みに回り、
数ヶ月たつが未だにこの国の土は踏めないでいる。

ついでに、あの戦闘のさなか一切姿を見せなかった、クライツとシュヴァルだが、
クライツは鬼神兵の操縦室らしき場所で血まみれで発見され、医者曰く、

「後一歩遅ければ死んでた?バカ言えこいつは死んでたのを生き返らせたんだよ!」

そう言って怒っていた。
実際問題発見されたクライツは、ほぼ全身の筋肉の断裂、出血多量、足や手、指の骨の骨折等、
上げたら限が無いぐらいボロボロで、発見した兵も死んでいる者と思うほどだったらしい。
まぁ、そんな中でも生きて居たから良いのだが、動けるようになって見舞いに言った時、

「隊長が生きてた!!!」

と、顔全体から体液を撒き散らしながら俺に抱き付こうとベットの上で暴れたいたので、
眠りの霧を使いとりあえず眠らせ、落ち着いた頃にまた見舞いに行く事にした。
それと同時に不穏なのは、クライツの記憶が消えていた事。
発見され、助かったクライツに話を聞いた医者が言っていたが、
クライツ曰く、何であんな場所に居たのか分からないとのこと。
それと、あそこに居たであろうもう一人、シュヴァルの姿は忽然とこの国から消えて、
今ではヤツの下顎だけがヤツがいたことを立証する証拠になっている。

そして、今日はその落ち着いたであろうクライツの所に見舞いに来ているのだが、
その病室で思わぬ人物に出くわしている。

「おぬしがサーヤ隊長かの?」

そう言って声をかけてきたのはこの国の姫ドーティア。
何で彼女がここに居るのかは知らないが、何だか嫌な予感がする。

「はい、自分がサーヤ・フライスですが、一体この様な場所にどうされたのです?」

そう言うと、姫はニコニコ笑いながら、

「うむ、今回の騒動で一番の功労者である英雄サーヤ隊長に会おうかと思っての。」

「よしてください姫、自分は英雄などと大それたものではありません。」

そう、現在進行形で大変な事は、この呼び名、すなわち『英雄』
これは割りと頭痛の種となっている。
と、言うのも今回の騒動で国は多大な被害をこうむり、
更にはその被害をもたらしたものをこの国が作り、真祖がそれを破壊した。
しかし、外交的また、政治的に見ても真祖が国を救ったと言うのは酷く体面が悪い。

なので、そこで祭り上げられたのが俺。
あの戦場で指揮を取り、最後には艦で特攻して鬼神兵を壊したという事に外交的にはなっているし、
あの戦場を見ていない町の住民もその事を信じた。
真実を知る者はあの戦場にいた兵と、目の前の姫とその姫の近くに居た学者のみ。
後は王が書類で知っている程度だろう。

「そう言うでないぞサーヤ隊長。英雄とは、人の思いの象徴。
 つまりは、あの戦場で一番兵の思いを集めそして、その思いを形にした者が英雄よ。
 契約を果たした真祖の事を言えんのが歯痒いのは分かるが、それでも今はまだ耐えよ。」

そういいながら、済まなさそうに頭を下げてくる。

「よしてください姫、一兵士に頭を下げるなど。
 アレの事は・・・・、なんと言えばいいのでしょう。未だに心の整理ははっきりとは付きません。」

そう、真祖はあの後本当に国から姿をけし、今は一体何処に居るのか分からない。
まぁ、アレが早々くたばるようなヤツでないのは俺が身にしみて分かっている。
そう思って、窓から外を見れば、姫がポンと手を打って、

「そうじゃ、わらわからも個人的に何か贈り物をしたいがないがよいかの?」

そういいながら、俺の顔を見てくる。
贈り物か・・・・欲しいものは特に・・・・、いや、そういえば未だだった事が1つある。

「花束と酒を3つ、後は休暇を少々いただければ。」

そう言うと姫はキョトンとして、

「欲の無いやつじゃの、まぁよいすぐに手配して部屋に届けさせよう。」

そう言って、姫は病室を出て行った。
それを見送っていると、包帯でぐるぐる巻きになってベッドに寝ているクライツが声をかけてきた。

「隊長が花とは珍しいですね。」

「まぁ、昔馴染みにな。花なんて興味ないようなやつらだが、それでもな。」

「そうですか。」

そう言って、クライツは天井を見る。
クライツの今後は分からない。
一様は記憶が無いためどうするという事もできないし、シュヴァルの書類のおかげで、
クライツ事態はアレがどういうものだったか知らないと言う事に結論付けられた。
ただ、体の方が酷く、リハビリにしても、隊に戻るにしても多大なリハビリが必要との事。
まぁ、そんなクライツにいえる事は、

「まぁ、早く体を治せ。」

そういうと、天井を見たまま、

「治した所で自分の居場所は・・・・、隊にはありませんから。」

そう、静かに口を開いた。
その姿はどこか昔の俺を連想させる。
居場所が無い・・・か。

「馬鹿を言うなクライツ。俺の副隊長はキサマで最後なんだ。
 俺1人では仕事がはかどらん、副隊長席は空けておくから・・・・、」

そこで言葉を区切った隊長は俺の顔を見て、ニヤリと笑いながら、

「足掻いてもがいて這い上がって来いよ。」

そう言って肩をたたいてくれた。


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