おいでませな第18話
色々あったが、酒を飲みまくりキールの店に多大な貢献をした後、一度解散して装備品やら、
遺跡発掘に要る物をそれぞれ揃え改めて集合。
ちなみに、装備を揃えるまでに3日。
うち、二日酔いでぶっ倒れていた日数2日。
まぁ、俺は倒れなかったが、残りの面子が驕りと言う事ではしゃぎ過ぎた結果だ。
何はともあれ遺跡へ出発という所までこぎつけた。
キールの方は、今日から臨時休業の札を店に下げ、最後の支度をしている。
ドクロはドクロで、棍棒と発掘ツールが詰まったバッグを背負いローブをスッポリ被っている。
準備万全いつでも出発できると言った所。
ちなみに、俺はスラックスの黒いパンツに白いワイシャツに赤いリボンタイ、最後にベストを着込み、
腰にはドア・ノッカーとランタン、片手に杖代わりの箒を担いで、口にはキセルを咥え魔法薬を吸っている。
その横には、Fateの時着ていた軽鎧に気の槍を二本背負いカバンを持ち、
さらに俺が錬金術を仕込んだロングコートを羽織っているディルムッドがいる。
ちなみに、このコート頑丈さで言えば重鎧並みの強度がある。しかし、布なので燃え易いのが玉に瑕か。
ついでに、前から考えていてようやく完成にこぎつけた、カバンと自身の影を任意でつなげる事にも成功したので、
このカバンの有用性がかなり上がった。
ちなみに、カバンとの繋げ方だが、影のゲートを返してカバンの中の影に道を開き、そこから出し入れするというもの。
取り出す時のタイムラグなんかは殆どなく、割と大きい物も取り出せるし、入れるのも同じ。
ついでに言えば、これのおかげで人形をカバンに詰めまくって、自身の影から取り出して人形の軍団を作る事も可能になった。
まぁ、人形自体は自身で作らないといけないから、そこが問題か。ちなみに、人形は現在5体。
ジャンヌの一件以来落ち着く暇がなかったので仕方ないと言えば仕方ない。
ちなみに、偽ジャンヌの心臓だが、現在ジャンヌ自身の血に浸かっている。特に意味はないが、無くなると困るのでそうした。
ただ、心臓はかなり力を入れて精巧に作ったので、血の中でビクンビクン動いているとかなり不気味だ。
まぁ、魔力を通して動くようにして使っていたのだから問題はないのだが、ジャンヌの血から漏れる魔力で動くとは思わなかった。
ついでに言えば、ジャンヌが聖者の列に加わった事で信仰の対象となり、この血からも少しずつ嫌な気配が漂うようになった。
たぶん、聖遺物とかになり始めているんだろう。と、話がそれた。
ディルムッドには今の所木の槍を持たせているが、行った所次第ではゲイ・ボウ、ゲイ・ジャルグを抜く事になるだろう。
それをいってしまえば、俺も真祖という事がばれる可能性もある。
まぁ、人の命と真祖を隠す事の優先事項なぞ聞くまでよりも明らかだが、
それでも自分の所存で俺の事を知らない面子が死ぬよりましだ。
命の価値なんてものは俺は知らないが、少なくとも、死なないという前提のある俺と、
何時死ぬか分からないという奴等との違いがあるなら、多分、それが命の価値なのだろう。
何気に、俺の命懸けの行動というのは実はかなり安っぽい行動なんじゃないだろうか?たまにそう思う時がある。
何せ、命を懸けた所でその命はなくならないのだから、イカサマもいい所だ。
まぁ、あるカードはすべて使うのが俺の流儀だから、このカードは常に有効に使わせてもらおう。
ついでに言えば、残りのカードである魔法使いや吸血鬼なんて言うのも、勝負の板をひっくり返すのに有効なカードだ。
そんな事を考えながらディルムッドに念話を送る。
(行った先がどういう所かは知らんが、危なくなったらドクロたちを優先しろ。)
そう念を飛ばすと、ディルムッドがこちらを咎める様に見て念を飛ばしてくる。
(またか・・・、アノマの時もそうだったが、君は命を軽く見すぎる。)
さて、どう話を返すか。
命を軽く見すぎるか・・・・、そんなつもりはないし、俺も殺されるつもりもない。
ついでに言えば、他人を巻き込んで殺す事もしたくはない。あくまで敵以外だが。
まぁ、しいて言うなら、
(持つ者と、待たない者の違いだ。私は自身が灰になろうとも復活する命のペテン師だ。だが、他のヤツはお前も含めて違う。
塵は塵に、灰は灰に。人は死ねば生き返らず土に返る、私は死なずに私に帰る。ただ、それだけの違いだ。)
そう返すと、なおも咎めるような視線で俺を見ながら渋々と言った感じで返してくる。
(それが君の騎士であると言う事なら、なかなかに厳しい茨の道だな。
主より他者を優先して、尚且つ自身も死なぬように行動しなければならないと、さらに力が欲しくなったよ。)
ディルムッドのしかめっ面は直らないが、一応は納得してくれたか。
「生還こそ私は誉れだと思う。命をいくら懸けても、それで死んで事を仕損じれば犬死もいい所だ。
命を懸けていいのは私の様な死なない者だけだ。」
そう、ドクロたちに聞こえないように口で言うと、今度は疲れたような、楽しいような、そんな顔をして話し出した。
「それなら、俺はエヴァが命を張る必要がないくらい、エヴァが全てをゆだねてくれる位の力と判断力をつけるとしよう。」
そういって、自身の手のひらを見ている。
そうしていると、キールの準備も終わり、いざ出発という事になった。
ちなみに、キールの武器は全身に巻きつけたナイフと炎系魔法だそうで、魔法剣士タイプなので前衛としては頼もしい。
このパーティーでの組み方だが、前衛3に後方1と言った所か。まぁ、回復系は原作と違い多少かじっているから、いけない事は無いが、
それでも無いよりはマシと言った所。代わりに、薬関連を大量に作ったからそれで補うとしよう。
そう思いながら歩き、ヘカテスを出て少したったぐらいでドクロが口を開いた。
「こっからリヴァイヴァ遺跡まで大体1日位だから、途中で一泊するけど問題ないかい?
多分、まともに歩いても魔物と出くわすだろうから。」
確かに、魔物がいる場所に入るなら朝の方がいい。
あちらは昼夜関係ないが、こちらは夜になると、視界が悪くなるやつが多い。
「地図で見た限りでは大体そんな所だったか。宿はどうするんだ?」
それに対してキールが答える
「途中に温泉宿があります。そこで一泊しましょう。」
そういいながら、地図を見ている。
しかし、温泉か一波乱ありそうだが、まぁ何とかなるだろう。
「そうか、ならまずはそこを目指して行こう。」
目的地も決まり、俺が掛け声をかける。
ただ、そこに行くまでも余り安全とは言えない様だが、何かに出くわしたら、戦闘のデモンストレーションと行こう。
現状ではキールの戦闘能力が一番不確定だし。まぁ、あの町であの酒場の店主なら大丈夫だとは思うが。
そんな事を考えながら歩き出して早4時間と言った所、方向としてはケルベラス大樹林の方に向かっている。
途中で休憩を挟みながら歩いているから、目的の宿まで後どれくらいかは分からない。
ついでに言えば、俺はキセルで魔法薬を吸いながら一人箒に横座で乗って飛び、箒の先に荷物を引っ掛けて荷物持ちをしている。
「エヴァ、疲れたから乗せろ。」
と、言って来たのはドクロ。まぁ、棍棒を背負って歩いているのだから疲れるのは当然か。武器は手放せないし。
しかし、こちらとしてもこれ以上物は増やしたくない。別に魔力が心配いと言う訳ではないが、
すでに箒の上は荷物と俺で満員状態。乗る隙間がないので、当然
「却下だ。キサマが乗ったら重くてかなわん。」
「何を目狐!」
そう言うと、ドクロが食って掛かってくる。
なかなかにおちょくり甲斐のあるやつだ。まぁ、今に分かった事じゃないが。
そんな事を思いながら、ドクロをからかっていると、
「エヴァ、その辺にしたらどうだ?宿に着く前にドクロの血管が切れるぞ?」
と、ディルムッドが茶化し、
「ドクロ、きついなら私が背負いましょうか?貴女なら、私にとって羽よりも軽いでしょうからね。」
と、キールがフラグを回収しようとしている。
いや、こんなやり取りもなかなかに新鮮だ。他人の恋愛劇を見守るなんて今までした事もなかったし。
そんな事を思っていると、ドクロが罰の悪そうな顔をして、頭の後ろで手を組み、
「カラクリ、アタイの血管はそんなヤワじゃないよ。ついでにキール、恥ずかしい事言うの禁止。」
といいながらスタスタ早足で歩き出した。
残された俺たちも、顔を見合わせて一度首を竦めてから、それを追うように歩き出す。
そして、先を行ったドクロから聞こえてくるのは、
「ちぇ、やりにくいったりゃありゃしないよ。・・・・・、そりゃチョットは嬉しいけどさ。」
と、愚痴る声。まぁ、その声は俺しか聞こえないんだけどね距離あるし。
ドクロもドクロで、まさか聞こえているとは思っていないのだろう。
それが本音なら、キールも報われると言うものだが。
そうしてさらに1時間。順調だと思っていた旅にも招かざる客というものがやって来る。
「エヴァ、あれ見えるか?」
そういって、ディルムッドが槍で差した先には竜が二匹。
原作ネギが森で戦ったのと同型。今の俺とディルムッドにとっては雑魚でしかない。
「あぁ、見えてる。しかも、こっちにまっすぐ飛んでくるって事は餌と思われたか。」
「なんだい?なんか来たのか?」
そうドクロが俺たちに聞いてくる。キールの方は気づいたのか、ナイフを2本取り出しながらドクロに言う。
「虎竜ですよドクロ。2匹ほどですが。」
キールがそう伝えると、ドクロは背中から棍棒を取り出して、ブンブン振りながら、
「そいつぁちょうどいい。たまった鬱憤晴らさせて貰おうじゃねぇか。」
そういって、俺たちの視線の先に顔を向ける。
竜の方もこちらに飛んできているのだがら、そろそろ目視でも見えるだろう。
そう思うと、角の辺りが光った。
「キサマら集まれ。」
そういい、みんなを集め魔法障壁を展開。
直後、
バシィバシィバシィ・・・・・・。
魔法障壁に竜からの電撃が着弾。
しかし、魔法障壁は完璧でこの程度で貫かれるほど甘くはない。
そう思っている間に2体の竜がご到着。牙を向き、こちらを威嚇しながら、角を光らせている。
さてと、このまま遊んでいる訳にもいかないし、さっさと片付けるとしよう。
「ドクロとキールは右の竜を狩れ。私とチャチャゼロで左を狩る。異議は?」
「「「無し!」」」
そういって、キールとドクロは駆け出して行く。
俺たちも俺たちで、
「チャチャゼロ、私が動きを止める。キサマが仕留めろ!エメト・メト・メメント・モリ 魔法の射手・重力の52矢!障壁突破!」
魔法の矢と障壁突破を唱え、竜の両翼を狙う。
しかし、魔法の矢が飛び出す場所が箒の柄なので、気分としては弾幕ゲームっぽい。
「任された!」
そう言いながら、ディルムッドは全身と武器を気で強化し、竜の電撃をかわして、
姿勢を低くしながら瞬動で一気に竜の懐に潜り込み。
「特に言う事は無い。しいて言うなら力量を見極められなかった自身を呪え。」
そう言った後、2本の槍で顎の下から一気に脳天まで貫き、その場を離れる。
そして、
ズズン・・・。
という音の後、竜がその場に倒れる。
さすがに、顎を貫いて脳まで達する一撃、これで生き残ったらなかなかにホラーだ。
「終わったか、なかなかにいい動きだったぞ。」
「それはそれは、気に入って頂けましたか姫君?」
そういって、おどけて返してくる。
そうしている間に、キールとドクロのコンビも終わったようだ。
ただ、竜の頭が吹き飛んで、血の噴水だ上がっているが。
ーsideキール&ドクロー
さてさて、このまま何も起こらず宿までつけばと思いましたが、そうも行かないようですね。
こうやって魔物と戦うのも久々ですが、腕が鈍っていないか試すにはちょうどいいでしょう。
手には使い慣れたナイフが2本。指には、これまた使い慣れた魔法発動媒体である指輪が二つ。
「ドクロ、足止めとトドメどちらがご希望です?」
そう聞くと、ドクロの方は当然と言ったように、
「トドメ!むしろ、それ以外は嫌だね。チマチマやるのは性に合わないよ!」
そう言いながら、飛んできた雷撃を棍棒で打ち返す。
やれやれ、その決断の気持ち良さが私を惹きつけるんですかね。
最初に出会った時からこんな感じですが、それが今も変わらずと言うのは、成長していないのか、
それとも、あえて変わらずいるのかは微妙なところですが。
しかし、それも彼女の長所でしょう。彼女のその明るさと決断力は、私にとって好ましい。
逆に、か弱くて泣き言しか言わない彼女なんて気持ち悪すぎて間違って殺してしまいそうですし。
さて、狙うのは両翼の付け根ですかね。そこなら頭も下がりますから。
「それなら私が前衛をしましょう。戦いの旋律。」
そういって、キールは竜の元へ、滑る様に駆け出していった。
キールとこうやってパーティーを組んで発掘するのは2回目。
今回のリヴァイヴァ遺跡発掘で出会った後、キールはララスを親父から継いで発掘業は引退した。
だから、キールは10年ぶりの発掘で、魔物との戦闘も多分10年ぶり。
町でゴロツキを相手にしているから体が鈍る事は無いと思う。
現に、キールの動きはあの発掘の時見た動きと余り変わらない。
滑るように地を駆け、瞬く間に魔獣や魔物に近寄ったかと思うと、ナイフで突き刺し、一気に離脱しながら、
「破せる焔。」
その一言でナイフに纏わせた魔力を爆破する。これでナイフは残るんだから詐欺だね詐欺。
しかし、その戦闘法は鮮やかであり、その爆発までの間は静寂しかないので、敵に気づかれる事の無い暗殺者を思わせる。
まったくキールらしい戦い方だ。と、そんな事を考えてる場合じゃないよアタイ。
手に持ったエクスカリバーンには気を充填し終わっている。
それなら、このまま駆け出せばちょうどアタイの一撃の前に頭が来るって寸法だ。
「ドクロ行きましたよ。」
「ああ、キールいい送球だ!」
そして、掛け声とともに一気に振りぬく。
「唸れ!エクスカリバーーーーーン!!!」
全力の一撃、寸分たがわずジャストミートした頭は、衝撃に耐えられず砕けて飛び散った。我ながら馬鹿力だと思う。
そして、ほんのチョットそれが恨めしくもある。アタイがあの女狐見たいに綺麗でか弱そうなら、まだキールとの付き合いも変わったのかねぇ。
まぁ、無いものねだりしても仕方ない。アタイはアタイ、女狐は女狐。
それに、あの女狐は外見がそう見えるだけで、中身は下手するとアタイらより逞しいかも知れないしねぇ。
そう思いながら、ナイフを拾った後のキールの差し出した拳に拳を合わせる。
「料理はお気に入りいただけましたか?」
「喰い散らかすほどにねぇ。」
そういっていると向こうから女狐の声がする。
ーside俺ー
向こうも終わり、こっちも終わり、残ったのは竜の死体が2体。
さて、これからする事と言えばただ一つ、モンハン風に言えば皮剥ぎです。
そう言う訳で
「チャチャゼロ、竜から鱗と角その他モロモロを引っぺがして来い。
時間が余り無いから必要最小限でいい。私の方はドクロたちが狩った方から剥いで来る。ドクロとキールは休憩しておいてくれ。」
そういって、錬金術に使えそうな物を剥いでいく。
剥ぎだして大体30分と言った所で切り上げてまた出発。
その後の襲撃は特になく、強いてあげるならドクロとキールの間の空気が少し落ち着いたぐらいか。
そんなこんなで着いたのはキールが言っていた温泉宿。
しかし、ついたのが日暮れ前なので、殆ど人通りはない。
ただ、昼間につけば露天商がちらほらいて、それなりの賑わいを見せるらしい。
そんな事を宿の主人から聞きながら部屋を取り宿泊。
ちなみに、部屋の空きが無く4人同室という事になり、宿代を負けてもらった。
そして、部屋に荷物を置き、ドクロが自身の荷物をゴソゴソし出す。
「なをやってるんだドクロ?」
そう聞くと、ドクロは顔を上げないまま答えた。
「話を聞いてなかったのかいエヴァ?ここは温泉宿だよ。温・泉・宿。
それなら一っ風呂浴びようってすんぽうさぁ。あんたも浴びんだろ?」
そう言いながら俺を見てくる。
そういえば、温泉宿で休むって言ってたっけか。
さてどうするか、風呂道具もあるし、浸かれば疲労も抜けるんだろうが、はてさてどうするべきか。
別に、いまさら女性の体が~と言うテンプレをする気は無いが、なんとなく騙していて申し訳ないような気がしないでもないんだが。
そう思っていると、ディルムッドが声をかけて来る。
「エヴァ、風呂に行くんならこれをもって行くといい。俺たちも男風呂に向かうし。」
そういって手提げ袋を渡された。
ここまでされたら、後は入るしかないと言った所か。
まぁ、これも一つの男の夢の体現なのかどうなのか迷うが、これから長い人生のうちこんな事もあるだろう。
「分かった、入ってくるとしよう。ドクロ、風呂の場所は分かるか?」
そう聞くと、ドクロの方も準備が終わり、後は出発だけといった所。
「あぁ、知ってるよ。付いて来な。」
そういって、ドクロが歩き出しその後に俺も続く。
そして着いたの女湯の脱衣場。なんというか、のれんを一つ潜るのにも新鮮さを感じると言うのは面白い。
そんな事を思いながら服を脱ぎだす。ちなみに、辺りには他の客だろう女性がいて、みんな巨乳だったりする。
はぁ、スレンダーさんはいないのか。そう思い溜息をついていると、ドクロが声をかけてくる。
「なに風呂場に来るなり溜息ついてるんだい、たく辛気臭いねぇ。」
「いや、スレンダーな奴がいないと・・・・、目の前にいたか。」
そう思い、ドクロの胸を見ると、残念な事と言うよりは、他の人よりは小さいと言った所。
まぁ、それなりの大きさはあるんだが。そう思っていると、ドクロが俺を恨めしそうに見てくる。
「悪かったねぇ女狐、アタイはそんな塊ほしかぁないよ。第一、スイングし辛いったらありゃしないよ。」
そう言いながら、視線は俺の胸に突き刺さっている。
なんだか、そのまま見られていると、もぎ取られそうで怖いので胸を隠しながら、
「私もこんな物欲しくは無かった。むしろ、スレンダーな方がいい。」
そう言うと、ドクロが今度は目を手で覆いながら、
「アンタは今、世界を敵に回したよ。それだけ綺麗な体しといて何を文句言う。えぇ、この口か、この口かい?」
そう言いながら、俺の口に手を伸ばしてくるので、それをひらりとかわし、
「世界を敵に回そうと、伝えたい気持ちと言うものもある!」
そういって、風呂場の中に入る。
それに続き、ドクロもぶつぶつ言いながら風呂場の中へ入ってくる。
「たく、アンタ見てると何も要らないんじゃないかって思えてくるよ。」
「そんな事は無い、色々と要るさ。特に今は石鹸とかな。」
そういって、近くの洗い場に座りまず、尻尾に石鹸をつけて泡立てる。
そして、一回綺麗に流し、もう一度尻尾を泡立てる。
「アンタ、そんなに尻尾ばかり洗ってるけど汚れてるのかい?」
「いや、単にこうすると便利なだけだ。」
そうして、泡立った尻尾で背中を洗う。
何気に、これが獣人化してからの癖になりつつあるが、使い勝手いいのでよし。
これが猫なんかの細い尻尾なら無理だろうが、狐の尻尾という長さも大きさもある尻尾ならではの芸当だ。
そんな俺を見てドクロが、
「器用なのか面倒くさがりなのか分からないねぇ、それ気持ち言いのかい?どれ。」
「みぎゃっ!」
言うが早い、俺の尻尾を鷲掴みにしやがった。
いや、痛くは無いんだけど、一応耳と並んでデリケートな部分なんでいきなり掴まれるのは良くない。
そんな、涙目の俺をドクロがモノ珍しそうに見ながら。
「アンタも悲鳴あげんだねぇ。」
「私も痛みも感じれば悲鳴も上げる!何をバカな事を言ってるんだキサマは!」
そう言うと、ドクロは斜め上を見て少し考えた後、
「いや、アンタが案外人形って言われても驚かないと思ってねぇ。いやぁ、生きてて良かった。」
そんな事を言って笑い出すもんだから、頭に来て氷水を頭からかけたら大人しくなった。
その後、耳の中に水が入らないように慎重に頭を荒い、湯船に浸かる。
あぁ、温泉は日本人の心のオアシス。もう日本人じゃなくて人でもないけどね。
でも、このとろける感覚はなんとも。
「ふにゃ~。」
「女狐が見た事も無いような極上の笑みを浮かべて・・・・、これを、カラクリに売れば・・・。」
なんか、ドクロの声がするが今はそれよりも、この気持ちの良さが優先。
下手な事にはならんだろう。
「ふにゃ~。」
そうして風呂から上がり、体を拭いて着替えを取り出す。ドクロの方はもう着替え終わって、髪を乾かしている。
考えてみれば、この着替え全部ディルムッドが用意したんだよな。まぁ、それもいまさらか。
そんな事を考えながら、ローレグパンツとブラをつけ、後は着る物と、
着替えを取り出したはいいんだが、こんな物アイツはどこで手に入れた?
「なんだい女狐固まって、って、その服なんだい?」
中から出てきたのは、薄手の茶色い布で作られた丈の長い服。
追加装備としては赤黒い長い布。はい、答えは浴衣です。ありがとうございます。
しかし、俺がコスプレまがいの格好をするとは思わなかった。
そう思っていると、ドクロがポンと拳で手のひらを打った。何かと思えば、口を開き喋りだした。
「なるほど、カラクリのヤツこれ用の布を欲しがってたのか。」
ディルムッドが布を欲しがる?
それなら、自身の服を縫っているはずだが、それとこれとが何故繋がる?
「ドクロ、詳しく話せ。」
そう言うと、ドクロが話し出した。
「前に服飾の本を買ってきたのは覚えてるだろ?その後に布を買って来てくれって言われてねぇ、
それでどんなのがいいのかって聞いたら、薄手のヤツがいいって言ってんで、その色の布を買ってきたんだよ、まさかこうなるとわねぇ。」
そう言いながら、浴衣をしげしげと見ている。
何だろう、ディルムッドが戦闘以外の方向でダメな方に走って行っているような気がするのは、間違いじゃないよな?
・・・・・・、ま、まぁ、深くは考えないでおこう。俺の精神の為にも。
そう思い、浴衣を着込み神は相変わらずの黒い大きなリボンで纏めて完成。
そして、部屋に帰り、今日の労をねぎらうと言う事で。
「え~、途中で竜に襲われもしたがみんなの無事と、明日の遺跡発掘の無事を祈って、カンパ~イ。」
「「「カンパ~イ。」」」
そういって、各人で飲みだす。
「よかった、エヴァにその服が似合うと思って作ったがいい出来だ。」
そう言いながら、俺の横に座るディルムッドがうんうん頷いている。
「キサマは、私の与えた服が嫌で、自身の服を作っていたんじゃないのか?」
そう聞くと、今度はきょとんとして、
「エヴァから貰った服が嫌な事は無いが?」
そう言って真顔で返してくる。
ん~、なんだろうこの敗北感。何に負けたと言う訳じゃないんだがなんとも。
「そういえば、この服も服飾の本に載ってたのか?」
そう聞くと、あぁ、その事かと返してくる。
「まったく同じと言う訳じゃないが、似たのが載ってたんでな。それを参考に作った。」
そう言いながら、俺を見てくる。
はぁ、まぁ、似合っているなら問題は無いか。
そう思いながら、酒を啜り、キールとドクロも向こうで話が弾み、
そんな中、宿での夜が過ぎていった。