プロローグ 2
お祈りを済ませて、今日あった事をベッドに入って考える。
今日は私の10歳の誕生日パーティーが家で行なわれ、今まで会った事の無いお父さまの友人の方や、
いつもは別のところで暮らしている御祖母さまや伯父さままで呼んで盛大に行なわれた。
今まで何度かパーティーは開いてもらったけど、今日のパーティーは特に盛大だったと思う。
だから私がお父様とお母様に、
「こんなに楽しいんだったら、毎日お誕生日パーティーにしましょう。」
と言ったらお父様は笑いながら
「それじゃあ、すぐにエヴァはお婆ちゃんになっちゃうね。」
と、言われたしまった。
楽しいのも好きだし、御祖母さまも好きだけど、いきなりシワシワになってしまうのはいただけない。
その事をうんうん唸りながら考えていると、叔父がこちらに寄ってきた。
実を言うと、私はこの伯父の事が好きではない。
別に見た目に問題があるとか、変な行動をするとかは無いのだけど、
初めてこの伯父に出会った時から感じる、伯父の私を嘗め回すような視線が嫌いだった。
だから、伯父が近づいて来るのを感じると私はお母様のドレスの影に隠れた。
「もうこの子ったら。すみませんお義兄さん、この子ったら人見知りは治ったと思ったのですが。」
そう言ってお母様は私を前に出そうとするが、私はお母様のスカートの裾を掴み駄々をこねる。
すると、
「いやいいよ。その子が今晩の主役なんだからね、主役の嫌がる事はしないさ。」
そういって伯父は私を見ずにお母様と話し出した。
私はその隙にこの場を離れようと裾から手を離したが、そのせいでお母様に気づかれ、伯父の前に出されたしまった。
しかし、今日の伯父は変だ。
いや、そんな多く会っている訳ではないと思う。
少なくとも、私が7歳ぐらいの頃に比べればだが。
7歳の頃、私は風邪をこじらせて一月ほど寝込んだが、まさにその時が地獄だった。
なぜなら、お父様が連れて来たのはお医者様ではなく、何故かこの伯父だったからだ。
その時も伯父は私を嘗め回すような視線で見ながら、私にさまざまな薬を出してきた。
多い時は一日に十数個もの薬を飲み、そのせいで逆に具合が悪いんじゃないのかと思う時もあったが、
どうにか熱は収まり、それと同時にこの伯父と接する機会も減った。
ただ、年に何回かこの伯父から薬が届き、それだけは必ず飲むように言われ、正直嫌だったが、
また動けなくなるのも嫌だったので、おとなしく飲んだ。
そして、その伯父様が目の前にいる、ある一点を除いてこれといった特徴の無い伯父が。
その私を嘗め回すような観察するような眼さえなければ無ければ、まだ私は彼に恩義を感じられただろう。
そして変だと思ったのは、この伯父の視線が私を嘗め回すでもなく観察するでもなく、
(喜んでいる・・・?)
ただただ純粋に喜んでいる、まるで長年世話をしてきた花が咲いたかのように無邪気に。
だがそれに気がついた瞬間、私は金縛りにあったように動けなくなった。
その動けない私の前に片膝を付いた伯父の顔が迫る。
そして何か伯父が話しているが、私はそれ所ではない。
ただ気持ち悪く、恐ろしい。
この時間が早く過ぎ去ってくれればどんなに楽か・・・。
私がそう思っていると耳に伯父の声が入ってきた。
さっきまでは何も聞こえなかったのに、だ。
「・・・・・・、今夜だよ。」
『何が』と、思った時には彼は私の前からもう歩き出し、ほかのパーティー客に混ざってしまった。
その後、私は母から彼に対しての態度が悪いと叱られたが、私としては全然問題ない。
その後は特にこれといって嫌なことは起きず、むしろ私のためのパーティーなのだから存分に楽しめた。
そして少女は眠りに付いた。
次の日のから始まる悪夢を見るために。
肉体を失った男は考えていた。
何も無い真っ暗な空間でいったいどうしろと。