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No.10094の一覧
[0] 萌え?・・・いや、むりっしょ?《ネギまエウ゛ァ憑依》[フィノ](2010/04/03 23:13)
[1] プロローグ[フィノ](2009/11/11 08:53)
[2] プロローグ 2[フィノ](2009/11/11 08:53)
[3] え・・・マジ?な第1話[フィノ](2009/08/01 22:15)
[4] 緊急指令死亡フラグを撃破せよ・・・な第2話[フィノ](2010/02/26 12:17)
[5] 現状の思考と考察・・・な第3話[フィノ](2010/02/26 12:20)
[6] チャチャゼロ・・・・ゼロ?な第4話[フィノ](2010/02/26 12:26)
[7] 良い日旅立ち・・・炎上な第5話[フィノ](2009/08/01 22:19)
[8] 学校とはとにも奇妙なところだな第06話[フィノ](2010/04/13 21:43)
[9] 人間交差点・・・・な第7話[フィノ](2009/08/28 15:17)
[10] 頭痛がおさまらないな第08話[フィノ](2009/08/01 22:21)
[11] 真実は小説よりも奇なり・・・俺のせいだがな第09話[フィノ](2010/04/13 21:44)
[12] モンスターハンター・・・待て、何故そうなるかな第10話[フィノ](2010/02/26 12:29)
[13] 復讐は我にありな第11話[フィノ](2010/02/26 12:31)
[14] 新たな一歩なのかな第12話[フィノ](2010/04/13 21:46)
[15] 肉体とは魂の牢獄なんだろうな第13話[フィノ](2010/02/26 12:36)
[16] 絶賛逃亡中?な第14話[フィノ](2010/02/26 12:37)
[17] 幕間その1 残された者、追うことを誓った者[フィノ](2010/04/13 21:48)
[18] ラオプラナな第15話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[19] 思い交差点な第16話[フィノ](2009/08/01 22:28)
[20] 色々とな第17話[フィノ](2009/08/01 22:29)
[21] おいでませな第18話[フィノ](2009/08/01 22:30)
[22] 幕間その2 騎士と主と在り方と[フィノ](2009/08/01 22:30)
[23] 発掘も楽じゃないよな第19話[フィノ](2009/08/01 22:31)
[24] 嫌な確信が出来たな第20話[フィノ](2010/04/13 21:50)
[25] 予想しておくべきだったな第21話[フィノ](2010/04/13 21:59)
[26] あいつらも大変だったようだな第22話[フィノ](2010/04/13 22:14)
[27] 目玉だな第23話[フィノ](2010/04/13 22:35)
[28] 全て世は事も無しな第24話[フィノ](2010/04/13 22:37)
[29] 知らぬが仏、つまりは知らないと死ぬ事だな第25話[フィノ](2009/08/09 13:34)
[30] タヌキとキツネとだな第26話[フィノ](2010/04/13 22:38)
[31] 失態だな第27話[フィノ](2010/04/13 22:39)
[32] さて、どうしようかな第28話[フィノ](2009/08/24 18:15)
[33] 中々にヒドイ事をするな29話[フィノ](2009/08/28 14:04)
[34] 1と0の差かな第30話[フィノ](2009/09/07 12:08)
[35] 時間は勝手に進むものだな第31話[フィノ](2009/09/21 17:04)
[36] 英雄の横顔かな第32話[フィノ](2009/09/28 22:28)
[37] ボロボロだな第33話[フィノ](2009/10/07 00:20)
[38] 夜ももう終わりだな第34話[フィノ](2009/10/16 01:21)
[39] 事故だと思いたいな第35話[フィノ](2009/10/21 19:47)
[40] 幕間その3 曰く、チョーカッコいい男[フィノ](2009/10/29 02:12)
[41] 戦闘or日常さてどっちが疲れるかな第36話[フィノ](2009/11/04 14:11)
[42] 取り合えず叫ぼうかな第37話[フィノ](2009/11/11 13:22)
[43] 気のせいだと思っておきたかったな第38話[フィノ](2009/11/15 20:58)
[44] それぞれの思惑だな第39話[フィノ](2009/11/25 09:56)
[45] 美味しそうだな第40話[フィノ](2009/12/01 16:19)
[46] 互いの牙の間合いだな第41話[フィノ](2009/12/08 01:32)
[47] 幕間その4 仲良くなろう[フィノ](2009/12/08 20:14)
[48] 出発は明朝かな第42話[フィノ](2009/12/18 17:37)
[49] 強い訳だよな第43話[フィノ](2009/12/26 14:10)
[50] 商人・・・、なのかな第44話[フィノ](2010/01/22 01:29)
[51] ケダモノの群れだな第45話[フィノ](2010/01/08 19:08)
[52] 見たかったな第46話[フィノ](2010/01/19 00:19)
[53] 疑うな第47話[フィノ](2010/01/20 01:44)
[54] 無形の有形だな第48話[フィノ](2010/02/03 06:37)
[55] そして歩き出すだな第49話[フィノ](2010/02/03 15:55)
[56] 旅の途中だな第50話[フィノ](2010/02/17 19:39)
[57] 地味に変わってるな第51話[フィノ](2010/02/24 00:17)
[58] 到着、出会いと別れだな第52話[フィノ](2010/02/26 12:10)
[59] 幕間その5 爪痕[フィノ](2010/03/04 23:18)
[60] 難しいな第53話[フィノ](2010/03/06 23:40)
[61] 日常だな第54話[フィノ](2010/03/13 12:39)
[62] その後の半年だな第55話[フィノ](2010/03/22 14:24)
[63] 研究の日々だな第56話[フィノ](2010/04/04 18:01)
[64] すれ違う人々だな第57話[フィノ](2010/04/13 22:55)
[65] 花畑の出会いだな第58話[フィノ](2010/04/25 22:56)
[66] 幕間その6 メイド達の憂鬱[フィノ](2010/05/02 06:47)
[67] 幕間その6 メイド達の憂鬱 中篇[フィノ](2010/05/05 06:13)
[68] 幕間その6 メイド達の憂鬱 後篇[フィノ](2010/05/23 22:37)
[69] ありふれた悲劇だな第59話[フィノ](2010/06/24 21:58)
[70] それぞれの思いだな第60話[フィノ](2010/11/12 06:04)
[71] 強く・・・、なりたいな第61話[フィノ](2010/10/25 22:54)
[72] ブリーフィングだな第62話[フィノ](2010/11/12 14:41)
[73] 彼女達の戦場だな第63話[フィノ](2010/12/01 23:14)
[74] 彼の戦場だな第64話[フィノ](2011/01/26 13:43)
[75] 自身の戦いだな第65話[フィノ](2011/04/18 03:53)
[76] 狗の本分だな第66話[フィノ](2011/04/23 03:32)
[77] 対峙だな第67話[フィノ](2011/05/02 03:37)
[78] 懐かしいな第68話[フィノ](2011/07/07 22:33)
[79] 風の行方だな第69話[フィノ](2011/09/23 23:39)
[80] 彼に会いに行こうかな第70話[フィノ](2011/10/01 03:42)
[81] そんな彼との別れだな第71話[フィノ](2011/10/15 07:37)
[82] 小ネタ集 パート1[フィノ](2009/08/11 22:17)
[83] 小ネタ集 パート2[フィノ](2009/09/21 17:03)
[84] 小ネタ集 パート3[フィノ](2010/02/03 15:53)
[85] 小ネタ集 パート4[フィノ](2010/02/04 03:28)
[86] 作者のぼやき。[フィノ](2010/01/08 00:21)
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[10094] 頭痛がおさまらないな第08話
Name: フィノ◆a5d9856f ID:8813959a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/01 22:21
頭痛がおさまらないな第08話




 入学して約半年。魔法、錬金術ともに授業に関しては今の所問題ない。そう、授業に関しては、だ。
入学して今まで授業を受けて錬金術に関しては、今の所様々な数式や薬品の調合。物質変化に関する考察やレポート。
特殊な文字への理解。そして、今俺が錬金術で力を入れているのが、無機物への魔法もしくは素材でのエンチャント技術。
少なくとも、俺は工業系の高校を卒業していたおかげで、今の所数式やらレポートやらに関しては問題ない。
しかし、エンチャント技術が魔法では無く錬金術に属しているとは知らなかった。

その事について、一度錬金術の授業で質問してみると、エンチャント技術はあくまで、
魔法では無く、ちゃんとした理論式によって成り立つ現象と定義され、その式の意味合いを理解しないと成り立たないが故に、
錬金術に分類されると言われた。確かに今まで俺が習った授業ではエンチャントの際、なんに属性を持たせるにしても薬品の調合やら、
基の物質の性質、強度、はては成分にいたるまでを計算して、初めてエンチャントが成功するという状態だ。
しかしエンチャントの効果は絶大で、壊れないかぎりはその物に半永久的な効果を宿す事になる。
それを考えると、錬金術が廃れている理由が分からないかも知れないが簡単な話、錬金術には金がかかる。しかも大金が。

エンチャントだけ見ても、それに使う薬品やら材料は簡単な物なら安いが、与える効果次第では金がいくら有っても足りないという状態になる。
それに、この世界の錬金術師の最終目標は、完全なる人間の作成だと言うぶっ飛んだ物だった。
作り方は先ず、オリハルコンを生成して人の骨格を作る事から始まり、次にエリクサーを血液代わりに作りこれを各器官に流す、
更に賢者の石を脳にして、最後にそれらにホムンクルスで意思と思考を肉付けして完成するらしい。
ちなみにアルケミストの称号を得るためには、これの内のどれか一つを作らないといけない。
しかし、これらを作るための材料が今では殆ど手に入らないので、事実上アルケミストはいない事になっている。

 次に魔法に関してだが、精神世界では操作にしても安定性にしても大分マシになった。しかし、現実世界はそうは行かない。
今の俺の状況だが、先ず魔力感知や相手の魔力量を読む事は出来るようになった。
これは吸血鬼としての第六感が一番大きな要因を占めている。それに伴い、自身の魔力操作もマシになったし、魔力の調整も上手くなった。
と、ここまでは精神世界の話。現実世界では命一杯頑張ってもこれの半分が限界。
理由にして、最大の原因は魔力封印に使っている指輪。これのせいで、魔法を使おうにも何をしようにも全て阻害される。

しかし、この指輪が無いと吸血鬼とばれてしまいそうなので、簡単にははずせない。そんな状態が一ヶ月続き、
そのジレンマから精神世界に逃避行する事が多くなったが、そのおかげも手伝って今では現実世界でも大分マシだ。
使用出来る戦闘呪文も基本にして使い勝手のいい魔法の射手、同じく基本の武装解除、精霊召喚、後はエヴァが使っていた魔法と、
新しく重力も使えるようになったので、それに関して鍛えている。後、入学前に校内を歩き回って見つけた図書館はかなりの広さがあり、
それにちなんで禁書も禁書庫に数多く置いてあった。

まぁ、錬金術と魔法の禁書が収めてあるのでこの量になったのだろう。
そして、この学校の禁書は観覧は手続きを行なえば簡単にできるが、持ち出しは不可。
しかし写本はOKとの事なので、連日授業が終わると図書館に篭り片っ端から禁書を写本した。
当然、最初はディルムッドにも手伝ってもらって2人で写本していたが、量が多くてとても終わりそうに無かった。
そこで、精霊召喚魔法の修行も兼ねて闇の精霊を召喚しながら写本をし、現在は大体3割といった所だろう。

 ここまで、そうここまで見れば順調なように見えるだろう。今俺が一番頭を抱えているのが、一つは変な集団が出来てしまった事。
二つめは俺の隣の席の住人に関する事だ。
一つめの変な集団と言うのが、最近ディルムッドに教えてもらい更に、チャチャゼロ人形に盗聴術式を仕込んで確証を得た集団だ。
これに関しては、俺もへっぽこの口癖の『なんでさ』と言いそうになった。
その集団と言うのが、

「なぁチャチャゼロこの『エヴァンジェリンさまに虐めて貰う会』って言うのはどうにかならないのか?」

「どうにかと言われてもな。正直、俺もこんな集団の対処は範疇外だ。」

俺は入学初日にアノマを膝蹴りし、顔を掴み教室で見詰め会うなんて事を教室でしてしまった。
別に俺はその時の行動がおかしな行動だと思っていなかったし、むしろ復讐のために力が欲しい俺にとっては、
クラスから孤立する絶好の機会だと解釈していた。しかし、現実は甘くない。俺がその行動を起こした後もクラスの奴らは普通に話してきた。
それならそれでかまいはしないのだが、その話しかけてくる奴らの中に仕切りに俺を食事や、デートに誘う奴らが出てきた。
そして、俺はそのしつこさにとうとうキレて引っ叩いてしまったのだ。
しかし、これが引き金になろうとは思わなかった。

「やぁミス・マクダウェル授業の後は暇かい?もし良ければ遊びにでも行かないか、景色の綺麗な場所を知っているんだ。」

そんな事を考えていると、一つめの頭痛の種のご登場。
今は昼食時で俺は魔法の修行もため何時もグランドで食べている。
そして、今俺に話しかけているヤツ、名前はクーネというヤツで、顔はまぁカッコいい方だろう。身長も高くスラッとした優男だ。
俺個人が男に興味が無いので殆ど相手にしていないが、噂では女をとっかえひっかえしているらしい。
しかも、俺とコイツの年齢差は5歳。言ってしまえば高校生が小学生をナンパしているような物だ。
まぁ、今の時代いつ死ぬか分からないから、若い方が良いとは言えこれはなんとも。

「いや、けっこうだ。私は忙しいのでな。」

「だ、そうだ出なおしてくれ。」

「君には聞いてないよ人形の騎士。
 ミス・マクダウェルそんなツレ無い事を言わずにさ、君だって本当は僕に声を掛けられて内心は嬉しいんだろ?」

はぁ、頭が痛い。そう思いながら、俺は食べていたサンドウィッチをディルムッドに渡して立ち上がり。

「黙れ下郎、目の前から消えろ。」

そういって、クーネの尻に回し蹴りを一発。無論力は入れるが手加減はしている。
ただ、俺が蹴りを入れようとした時にはすでに、クーネの方はバッチコイな状態で俺の方に尻を突き出している。
そして、綺麗にクーネの尻に命中。初めて言い寄ってくるヤツを引っ叩いた時は、流石にマズイかと考え、
相手が起きるまで膝枕をしてやったら、それ以降やたらと誘いが増えその叩いたヤツもいまだに誘ってくる。

最初の頃は何故オレなのか意味がわからなかった。どうして引っ叩いたり、踏みつけたりする俺を誘うのかと。
そして、それ以外のヤツはなんでそれを見ても俺にアタックするのか?いや、今思えば俺もその答えから逃避していたのだろう。
何せ、やつらの中では俺のことが『ツンデレ』もしくは、『女王様』として認識されているのだから。
初めてディルムッドから聞いた時は信じられなかったし、それを確かめる為に盗聴もした。
そして、盗聴から出てきた音声は、

「おい、今日の女王様は蹴りか・・・、なっ、今日は踏むだけでなくそのままぐりぐりと、
 順番で挑んでいるとはいえ羨ましいな。」

「あぁ、俺も早くあの細く綺麗なおみ足で蹴られ踏まれたい物だ。
 それに、あのゴミを見るかのような目、まったく持って感服する。」

「オレは、最初のように引っ叩かれたい。そして、あの柔らかい膝でもう一度膝枕をしていただきたい。
 オレはあの膝枕の中で新たな真理を得たんだ。それすなわち、女王様に自身をささげデレ期を待てと。」

「リーダー、しかしリーダー以外はみな足蹴にされるばかり何らかの策はないのでしょうか?」

「同志馬鹿を言うな、最近は新たなご褒美に腹を踏む事や、あまつさえジャンプまで増えたと言うじゃないか、
 それにより彼女のスカートの中の心理に近づけると言うものよ。ん、戻ったか同志よ。」

「はっ、私も初めのうちは疑っていましたが、まさかこのように素晴らしい事があるとわ。」

「うむ、新たなる同志よ『エヴァンジェリンさまに虐めて貰う会』に新しく入会を許す。女王様にけして気取られる事のないよう注意しろ。」

これを聴いた瞬間、なんと言うか産毛が逆立った。
叩いても蹴っ飛ばしても絶えず声をかけてくるヤツラの真相がこれか。
ディルムッドも、この音声を聞いてドン引き。その後、二人で、よって来るヤツを片っ端から殴ったがめちゃくちゃ幸せそうな顔で倒れた上、
なんか余計に増えたので、今は諦めて素直に警告した後ぶん殴るなり蹴り飛ばすなりしてやる。
考え方によってはこれも一種のストレス発散と蹴りや打撃の訓練になっていると思えば悪いものではない。
あくまでヤツ等の思想に目をつぶった場合だが。

「お疲れエヴァ、なんと言うか人の業は深いな。」

ディルムッドの横に座りサンドウィッチを受け取り食べる。
蹴っ飛ばした男は地面を転がり動いていないが気にしない。
勝手に挑んでなおかつこうなる事を望むものに、それ以上の慈悲をかける気はない・・・・、かけたらさらに増えそうだし。

「頭痛の種だ。いったい何がコイツ等を引き寄せる?はぁ、まったく持って頭が痛い。」

「さぁ、とりあえず言い寄ってくるのは一日一人、エヴァが殴るか蹴ればもう来ないし実害もないんだから。」

ディルムッドが俺の横でそんな事を言いながら笑っている。そう、チャチャゼロ人形の姿のまま笑っているのだ。
これについては嬉しい誤算と言えばいいのだろうか、1つの奇跡と言えばいいのだろうか。
今のディルムッドは俺からの魔力供給無く動いている。これに気がついたのはチャチャゼロ人形に飛行術式を彫っていた時の事だ。
あの時俺は錬金術のエンチャント技術と特殊な文字を組み合わせて飛行術式を作り教師に見せ、動作確認をした後彫る事にした。

「チャチャゼロ、ちょっとこっちに来い。今日は写本をやめてオマエに飛行術式を彫る。」

授業が終わり、図書館での写本の日々が続きディルムッドもそれに従い、毎日写本漬けの日々の中での久々の休息と言う事で。
ディルムッドも嬉しそうについてきた。それに、前に飛行術式を組み込めば少なくとも身長と言う面と、
空中からの攻撃ができるという面で、戦闘でのアドバンテージが有ると話した所、
本人も首を長くして待っているという状態だったのだが、とうとうその術式が使えると言う事ではしゃいでいるのだろう。

「あぁ、ようやくだな。ありがとうエヴァこれで君を守る力が増すよ。」

そんな事を言いながら部屋に入り、術式を彫る準備をする。
準備と言ってもそれほど必要な物は無く、術式自体はすでに教師に大丈夫の太鼓判を押され完成しているし、
術式を施すために必要な物も部屋にそろっている。つまりは、後はチャチャゼロ人形に彫るだけの状態だ。
そして、ディルムッドを机の上に乗せ術式を施す。術式展開の基点はチャチャゼロ人形の両翼に彫る。

キセルで魔法薬を吸いながら、式を彫りこみだして片方の羽に式が終わった頃、チャチャゼロ人形の羽が動いていた。
はて、前はこんな事できていただろうか?とりあえず、残りの術式を掘り込み完成すると同時に、
今までチャチャゼロ人形に向けていた魔力をゼロにする。それでもやはり、羽は動いている。

「おいチャチャゼロ、今お前は動けるか?」

「なにを言っているんだエヴァ、動けるに決まっているじゃないか。」

そういって普通に立った。
立ち上がったのだ。

「・・・・、おい、お前はなんで動けるんだ?」

そういうとディルムッドは笑いながら笑顔で答えた。そう、チャチャゼロ人形の姿なのに笑顔なのである。
それで混乱していると、こっちの気も知らずに答えてきた。

「何を当然な事を言っているんだ。今までだって散々歩いたり殴ったりしていただろ?」

「いや、それに関しては私が魔力を送っているためそれを利用してやっている物だと思っていた。
 しかし、今私はキサマにまったく持って魔力を送っていない。」

「ちょっと待ってくれ、今俺は普通に立って歩いているんだが・・・・?」

それを聞いて、二人でしばらく考え込む。何故動けるのか。何故話せるのか。
そして、1つの仮説が立ち一つ一つ試してみる事にする。ある意味俺も信じられない仮説だし、第一に確証も無い。
とりあえずキセルに新しい魔法薬を詰めて火をつけて一服。
やれることはやっておこう、

「今からする質問に答えろ、キサマの名は何だ?」

「なんだ、藪から棒に。さっきも呼んでただろ『チャチャゼロ』と。」

「次にキサマの身体はなんだ?」

「チャチャゼロ人形だろ何時も動かしている。なんだか少し重い気もするが。」

「最後の質問だ、キサマは前の自分とどれくらいの違いが有る?」

この質問については少し考え込み神妙な面持ちで話し出した。

「どれくらいと言われると、全部違うかな?
俺の身体はこの人形だし、前の姿は魔法での仮初の姿だろ宝具も双剣は無くなり、槍も真名の開放型になって常時展開は無い。
君への忠義の証に魔貌と称された顔は治らない傷を負い意味を成さない。
ただ、一番変わったのは今の俺は騎士としての忠義のために生きて行けるという事かな。」

煙を吸い込み一気に吐き出して、ゆらゆらと昇る煙を見ながら考える。考える人物は二人。
一人は『人形師 蒼崎橙子』、もう一人は『衛宮 士郎』何故この2人が思い浮かんだかと言うと2人とも人形になった事あるという点。
橙子は死ぬと自分と寸分違わない人形として目覚める。士郎に関しては確か、どれかの結末で人形に一時期なっていたと言う記憶がある。

つまりはディルムッドの今の状況はそれになっているのでは無いだろうか?
無論、チャチャゼロ人形に血液なんてものは無い。しかし、こいつは生前の姿も魔力で作れるし、
この世界の魔力は自己生成ではなく空間にある魔力を使っている。それに、動く人形は幽霊の相坂さよの実例もある。

「チャチャゼロ推測での話だが、キサマは世界から『チャチャゼロ』として認められた。
 少なくとも今のお前の現状と、前に聞いた英霊の座で起きた事、キサマの魂が宿っている事から推測すると、
 今のお前はチャチャゼロであり意思があり、自身の身体を人形と知っても動かせている。
 つまり新しく誕生した生命だと定義していいと思う。人形は少なくとも人に似せて作ってあるから不思議ではないし、
 お前を召還した術式は剥き出しの魂を人形に閉じ込めて意思を持たせると言うもの。

 今は他の人間からもキサマはチャチャゼロという、
 動く人形として認識を受けている。強引な考え方だが、この世界にオマエの魂がようやく定着したと言う事なのかもしれない。
 まぁ、魔力を送れば人の姿にもなれるし、さながら本当に真名の開放と言った所か。」

今俺の言った推測は自身で言うのもなんだが、多分どこかに穴がある。
だが、悲しいかな俺にはまだその穴を埋めるだけの知識が無い。
今の話を聞いたディルムッドは特に考えたと言う事も無く口を開いた。

「今を生きて主がいて俺の真の名を呼べる主がいる。私はそれだけで十分ですよ主。
 私はあの月の綺麗な晩に貴女の手を取り貴女のモノであると言う印を刻まれました。
 それに、貴女は私に言ったではありませんか、世界がどう言おうと貴女は私を忠義の騎士であると認めると。」

そう、穏やかな顔で俺に返す。まったく、コイツは俺には勿体無い。
英霊の座にまで上り詰めたのに、そこから無理やり引き摺り下ろし人形にされ、さらには自身の名前までも世界から爪弾きにされてしまった。
それなのに、コイツは俺に忠義を尽くすと言っている。ならば、最高の主とコイツから称えられるほどにならないと顔向けできんな。

「あぁ、私は世界からキサマを奪った。そして世界はキサマを捨て、紛い物を座にすえた。
 まったく持って馬鹿だよ世界は、今のキサマの真名を呼べる者はこの世界でたった一人だ。
 我が騎士よこれで名実ともに私だけの騎士だ。」

そういい、お互い顔をあわせてニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべる。本当に世界は馬鹿だ、こんなにも良い騎士を捨てるのだから。
その後は、ディルムッドにエンチャントで施した飛行術式の説明をして精神世界での修行で終了。
飛行術式の扱いは難しいと愚痴っているが、もともとの身体能力が高いため今ではだいぶ制御に慣れてきている。
本人もこの術式を有効活用しようとほとんど一日飛んでいる。ちなみに、気の習得に関してはまだまだとの事。
元は魔力供給で動いていたから、気の習得は厳しいと考えていたが、今は供給無しでも動いているので大丈夫だと思う。

サンドウィッチを食べ終わり、キセルに魔法薬で一服、最初の数日でエルシアは諦めて今は何も言ってこない。
個人としては嬉しいが教師としてはどうなのだと、小一時間問い詰めたい。
まぁ、やったら薮蛇だからしないけどね。

「お~い、こんな所にいたのかって、大体いつも昼時のエヴァンジェリンはここに居るか。」

はぁ、昼下がりの穏やかな休息は中々貰えないらしい。頭痛の種2つめが今、声を上げながらこっちに来ている。
どうせなら、こいつを誰か闇討ちをしてくれないか・・・・。まぁ、返り討ちだろうけどね。

「はぁ、アノマ声を上げるな。キサマの声は生娘の悲鳴のように頭に響く。」

「エヴァンジェリン生娘って何だ?なぁ、チャチャゼロ知ってるか?」

「お前には後6年ぐらい早いんじゃないか?」

頭痛の種その2うちの隣の席の住人アノマ・スプリングフィールド。コイツに関してはなんとも頭が痛い。
出会いは最悪その上、次に会った時はボコボコ。そんな出会いなのに、このバカはなぜか俺になついてくる。
その上、うちの学校の実習はたいてい隣の席のヤツと組んで練習する。つまり、必然的にアノマとの行動時間が増えるという事だ。
ついでに言えば、ネギ、ナギのご先祖様かと聞かれれば、こいつはこの学校で一番の魔力保有者の上エロ体質、他には赤毛で魔法剣士タイプ。

なんというか、この事実に俺が泣いた。俺としては、スプリングフィールドという苗字のヤツに近づきたくない。
理由としては2つ、1つは世界を救ってもらわないと困るから。
これに関しては起こるかどうか不明だが、ナギの活躍した大戦の最後ぐらいに、
世界を壊す魔法なんて物騒な物があったので、それを止めてもらわないと困る。2つめは学園への封印。
別に麻帆良に行くのは問題ないというより行きたい。ただ、行くのに関しては自分の足で行きたいので封印は勘弁願いたい。
これが理由。

「はぁ、エヴァンジェリンは可愛いんだからわら・・・・、いや、そのままで良いです。」

「誰の所存でこんな顔になっていると思っている?あぁん?キサマが毎回毎回人の服をポンポン脱がすからだろ。」

「エヴァ大丈夫だ、この後の授業で逝ってもらうから。」

ネギまを読んでいる時は、あまり気にしなかったが実際にエロハッピーの星を持つこいつの近くにいるとよく思う。
何故ネギはあれだけのエロを巻き起こして、明日菜達をモノにできたのかと。
ちなみに、実習が同じという事で今は俺が脱がされまくっている。
それも、ほぼ毎日に近い頻度でだ。
実習を二人、俺の場合はディルムッド入れて3人でやっている。
最初の頃は、壁や空に向かって魔法の練習をやっていた。

そして、ある程度慣れると実戦形式の練習が主になる。
つまり、俺はアノマと戦う事になる訳だが、今の俺は魔法剣士タイプではなく魔法使いタイプとして練習している。
無論本気で戦えば先ず負けないだけの魔力と身体能力があるが、今はその2つは隠していて使えない。
つまり、今の俺の状態は魔力の多い普通の女の子のような状態。そんな状態でアノマとやり合ってる訳だから、はっきり言って分が悪い。
最近ではディルムッドも参加しているので、大分マシになった。まぁ、それでも脱がされるわけだが。

「チャチャゼロ、怖い事と言うなよ俺気絶嫌なんだよ。これ以上馬鹿になりたくないんだよ。
 と、そろそろ時間か行こうぜエヴァンジェリン。」

「あぁ、行こうか。」

そして、場所は変わって戦技用のグランド。

「はぁ~い、みんな今日も楽しく逝きましょう。・・・・、アノマ、てめぇエヴァ脱がしたら殺すからな。」

(アノマ今日も存分に脱がせ、成績をアップしてやる。)

「いや、何時も不可抗力な訳でして。」

(ラジャーエルシア、その期待に答えよう。)

俺の横でエルシアとアノマが話しながら、なにやらアイコンタクトを取っている。
はぁ、どうせろくなことじゃないだろう。

「エヴァ、今日はどうする?」

俺の横でディルムッドが聞いてくる。今言っているのは戦闘方針ではなく互いの行動方針。
今の俺は、魔法戦闘での経験が不足しているので、それを補う事と魔法の練習兼最適化を念頭においている。
ディルムッドに関しては、飛行訓練と気の使用を念頭においている。
ちなみに、今の俺の状態はちょっと魔力の多い女の子程度と思われている。
これは今まで本気で力を振るったり指輪をはずしていないからだ。

もし、指輪なしで魔法使ったり格闘戦をやったりしたら間違いなく相手がミンチになる。
しかも最近では、接近戦のたびに重力魔法を使用して殴る時は限りなく重さを0にしてスピードを上げ、
相手に当たる瞬間だけ重さを上げるなんて事もやっている。威力がどれくらいまで上がるかと思って、
1回外に出てこれで木を殴ってみたら俺よりも太い木に穴が開いてしまったので、流石に対人戦では全力でやるのは自粛している。

「私は何時どおり魔法の使用を行う。必要な時以外は前には出んから、接近戦は任せた。死ぬような事は無いから私にかまうな。」

「了解。俺の方は気と飛行の訓練と行こう、最近では飛行もだいぶマシにはなってきたし、俺の獲物も使いたいんだがな。」

そう言って木で出来た槍を持ってみせる。流石に戦闘訓練と言えどもやっているのは子供なので、本物の武器の使用は禁止されている。
そこでエルシアに何なら使って良いのかと聞いた所、木製の物で布を巻いていれば良いと返された。
そこで作ったのが今ディルムッドが持っている槍。重さはと長さがゲイ・ボウ、ゲイ・ジャルグと同じように作り、布を巻いている。
一応エンチャントを使って強化と風属性を与えているので魔法の矢なんかを切り裂く事も出来るが問題は強度だろう。

「さて、準備の整った組からはじめなさ~い。」

エルシアがそう言うと辺りにいたクラスメイトたちは戦闘を開始して行く。さてと、俺たちもやりだすか。

「こいアノマ、今日も勝たせてもらおうか。」

戦闘の勝率は大体俺が7割ぐらい勝っている。
言ってしまえば、アノマは熱血派俺は理論派と言った所だろうか。

「へっ、今日の俺には秘策がある。そう何度も気絶するかよ。」

「俺がいる限りエヴァに近寄らせるか。」

そう言って戦闘を開始する。

「はっ、アノマとっとと気絶しろ。」

「するかバカ。お前が空に浮いてるんならまだどうにかなる。ラス・ララ グ・スキス クロテル 勝ち鬨の祈り!」

そういって、肉体強化と風を纏ってディルムッドと接近戦をやっている。
この魔法の厄介なのがただ速くなっているのではなく、風を纏っているから攻撃をするにも、その風で攻撃がそらされて中々有効打にならない。
しかも、今のディルムッドが使っているものは布を巻いただけの槍。一応やってやれない事は無いが分が悪すぎる。
だが、ディルムッド曰くこれからの事を考えるとこれぐらいでちょうど良いとの事。

目の前ではチャチャゼロ姿のまま、二槍を回転させながら縦横無尽に突き、払い薙ぎ倒そうとするディルムッドと自らの拳と杖で対処するアノマ。
ディルムッドが地上で槍を振るっていれば相手にならないが、浮いているなら別。簡単な話しまだ慣れが足りないのだ。

「さて、私もボチボチ始めるか。エメト・メト・メメント・モリ 魔法の射手・重力の30矢、行け。」

そういって、キセルを指揮者の指揮棒の様に振るい魔法の射手を操作しながら飛ばす。
今使った重力の矢だが、この矢の利点は矢自体に重力効果がある事。つまり、矢に触れた瞬間いきなり身体が重くなったり、
逆に軽くなりすぎて格闘戦をするやつにとっては辛い。
しかも、俺は打ち出すだけではなく地雷のようにアノマとディルムッドを囲むように配置している。

「ちっ、いつもながら面倒くさい。」

「ふっ、アノマ動きが鈍ったな。」

そういうと、ディルムッドの槍がアノマの右わき腹を突く。
しかし、決定打にはならない。突かれたアノマもその反動を利用して地雷原から抜け出す。
無論、俺は地雷その物を動かしてアノマを追撃。ディルムッドは、その動かしている地雷の最後尾をゆっくりと飛んでいく。
今のディルムッドは空中で強風が吹こうが静止できるほどまで腕が上がったが、飛行速度の面と攻撃時の姿勢の安定感がまだまだで、
今はそれの訓練中だったりする。

「ラス・ララ グ・スキス クロテル 光の精霊13柱 我が盾となれ。」

呼び出された精霊に俺の魔法の矢は直撃して消える。しかも、アノマの方は精霊の半数は削れたがまだ健在なものが多い。
ちっ、もう少し魔力上乗せしておくんだった。

「今度は行かさせて貰うぜチャチャゼロ。ラス・ララ グ・スキス クロテル 魔法の射手・雷の矢連弾45矢。」

そういって、精霊を操りながら魔法の矢を撃ってくる。ディルムッドは精霊を1人で5体の精霊と戦闘しているため抜け出せない。
さて、こうなったら俺も前に出るか。

「早々やられるわけにはいかん。エメト・メト・メメント・モリ 夜想曲を展開。」

これが俺の強化魔法。といってもまだ研究途中のためあまり出来がよろしくない。
基本を重力系統で作ったため。自身の重さを自由に変えて戦闘できるのは良いが、問題は展開すると魔力を結構持っていかれること。
まだまだ最適化が必要だ。アノマの雷の矢を夜想曲とレフレクシオーで反射したりしながら空きに上がりかわす。

「追加だ食らえ。エメト・メト・メメント・モリ 氷神の戦鎚!」

キセルを天に向け、その上に氷の玉を作り地面に向かって投げつける。大きさは原作ほどではなく大体2mぐらいの球体。
しかし、夜想曲展開中だとこの玉がすごい凶器になる。まず、玉の重さを0にして投げる瞬間に元の重さプラス50Kgぐらいにしてやると、
あら不思議。地面にクレーターが出来るぐらいの威力になる。
しかも、そのクレーターが出来ると同時に土砂やら氷の破片やらがばら撒かれるので相当迷惑だろう。

「ちょっと待て、お前殺す気だろ?!って、えぇい ラス・ララ グ・スキス クロテル 来れ、虚空の雷、薙ぎ払え 雷の斧 !」

アノマは、俺の投げつけた氷神の戦鎚を地上から雷の斧で真っ二つにしてしまった。
どうでも良いが、ここまでの戦闘を毎度やっていると魔法学校ではなく人間兵器学校にでも通っているようだ。
氷神の戦鎚は斬られて真っ二つになったとはいえ完全消滅はせず地面に着弾。そのせいで一気に視界が悪くなる。
本来ならここで、こおる大地あたりを出したいのだが、魔力封印の所存で思うように出せない。一応詠唱とかは可能なのだがね。

そんな事を思っていると、地上から木と木のぶつかる音がする。たぶんアノマとディルムッドが打ち合っているのだろう。
さて、ここは上空から爆撃機よろしく辺りを蹂躙するのが一番なのだろうが、あいにく今は授業中なので他にも人間がいる。
仕方ない、地上でやるか。そう思い音のなる方へ飛んで行くと、

「エヴァ近寄るな!」

「もらったぜ、今日こそは成功させるラス・ララ グ・スキス クロテル 風花・武装解除!」

そう声が聞こえると、一気に辺りの埃が風によって吹き飛ぶ。ついでに言うと、俺の服もすべて吹き飛びネックレスとカボパンのみになる。
辺りを見ると、最後に見た時よりさらに倍の戒めの風矢によって、身動きの取れないディルムッド。
流石に、全包囲攻撃だと避けきれなかったのだろう。後、その横で俺に杖を向けて冷や汗をたらしているアノマ。
この馬鹿は、毎回俺で武装解除の練習をする。

一応授業の勝敗は武装解除して杖を飛ばされたら負けとなっているが、誰も服まで無くせとは言っていない。
それとこの馬鹿は、今の戦闘訓練で見たように戦闘に関しては中々にうまい。しかし、なぜかこの武装解除だけは苦手との事。
しかも、杖であるキセルは飛ばせないのに服だけ飛ばすというエロ体質。俺に露出癖は無い。
ついでに言えば、人前で裸になるのは恥ずかしいしあまり目立ちたい方でもない。
が、この馬鹿は許せない。とりあえず、片手で胸を隠し、真っ赤になっているであろう顔のままひたすら抑揚の無い声で話す。

「・・・・・アノマ、そろそろ逝こうか。」

「いや、エヴァンジェリンさん、これは不可抗力でして。」

「うん、わかってる。」

今はすごい笑顔で目だけ笑っていないであろう俺の顔を見て、アノマが青くなっている。
後ろで捕まって動けないディルムッドがやけに暴れている。
あれ、おかしいなアイツは俺に忠義を誓っているはずなのに一緒に青くなってる。

ーsideアノマー

目の前にすごい笑顔のエヴァンジェリンが居る。
俺の武装解除が失敗して、その病的なまでに白い肌を日の下にさらしパンツ一丁で片腕で胸だけをかくして。
毎度思うのだが、本当にエヴァンジェリンは綺麗だ。その白い髪も小さな身体も鈴を鳴らしたかのような声も。
初めて会った時は間違って轢いたため気絶するほど殴られた。まぁ、あれは仕方ない。
転校初日は間違ってローブの中に頭を突っ込んで膝蹴りを食らってチャチャゼロにボコボコニされた。
が、その後とんでもないことが起こった。
ボコボコニされた俺の顔をエヴァンジェリンが両手で掴み教室のド真ん中で見詰め合うなんて事をしたのだ。

俺は、その時初めてエヴァンジェリンの顔をよく見たがすごく綺麗だったし、なんだかいい匂いがした。
そんな事があったものだから、俺はエヴァンジェリンをよく観察するようになった。
見ていて思ったのは何かを焦っているような気がする事だ。
表面上は分からない。エヴァンジェリンはだいたい何時も教室ではパイプで魔法薬を吸いながら本を読んでいるし、
あまり人とも話さないし、あまり笑わない。放課後は放課後でチャチャゼロをつれて魔法の練習やらたまに格闘をやっている。

ちなみにその時のエヴァンジェリンは強い。チャチャゼロの方が格闘に関しては強いが、魔法が入ると別になる。
この二人がいったい何を目指しているのかは知らないが、できれば俺もエヴァンジェリンの横に立ちたいな。などと考え始めている。
しかし、今のエヴァンジェリンは怖い、まず、顔は聖母の様に微笑んでいるが目がまったくもって笑っていない。
むしろ反転しかかっている。そんな状態で出てくる声は抑揚も無く、だが、ひたすらに甘い。
まるで脳の中にガムシロップでも流し込まれたかのように甘い。

前に『エヴァンジェリンさまに虐めて貰う会』なんて会からの接触があって話してみたが、
彼らはこの甘い声と小さな子に手加減されて暴力を振るわれると言うのがお好きらしい。オレにはよく分からない世界だ。
と、目の前のすごい笑顔のエヴァンジェリンが話しかけてくる。

「アノマ、一応殺さないであげる。ただ死ぬほど痛いから。」

そういって、エヴァンジェリンはオレのレバーに回転をつけたフックを叩き込む。
意識の薄れていく中、最後に見たのはエヴァンジェリンのピンクのポッチだった。エルシア先生・・・・、オレやったよ・・・・。


ーside俺ー


とりあえずアノマは粛清してやった。そのためか、ディルムッドを縛っていた風はもう無い。
遠くの方でエルシアが俺の事をガン見しているが意識の外に追い出しておこう。
ついでにこの場を速く離れないと注目の的になる。
そうすると変な連中がまた増えそうなので嫌だ。

「いくぞチャチャゼロ、戦域を離脱する。」

「了解だエヴァ、教室にローブを仕込んである。それを回収して再出撃しよう。」

そういって、お互いに走り出す。ちなみに、エルシアはアノマを介抱している。なぜかお互いすごい笑顔だが気にしない。
そうして教室で新しいローブを着込んで授業再開。なんというかここ最近で毎度脱がされるヤツの気持ちが分かったような気がする。
出来れば一生分かりたくは無かったけどな!

こんな感じで日々楽しく(?)生活して今は2年も終わろうかという所。魔法もある程度は上達したし錬金術も同じ。
ディルムッドも飛行になれ、気の取っ掛かりを掴んだとか言っていた。図書館の写本の方もほぼ終わり鞄の中に詰めている。
後は闇の魔法や人形の造形なんかにも手を出そうかとしている時に、ひとつの情報が舞い込んできた。
俺は、販売部の骸骨の所で旧世界と新世界の情報誌を買っている。
そして、それに書かれている内容で目に留まったものがあった。

「『ジャンヌ・ダルクの処刑間近」か・・・・確かこの頃なら、あいつがいるな。」

「何をブツブツ言ってるんだ?」

今は授業も終わり晩飯を食べ、キセルで一服ついている所。歴史にある百年戦争で有名な人間は俺の中で2人。
一人はジャンヌ・ダルク。「オルレアンの乙女」と呼ばれフランスを勝利に導いた英雄。
しかし、最後は火あぶりにあい異端者とされその後何十年も魔女とされた後、ようやく聖人として認められた人。
そして、もう一人はジル・ド・レイ。ジャンヌとともに戦い「救国の英雄」とも呼ばれた男。
しかし、戦争終結後は自身の領地での虐殺行為や錬金術での悪名がとどろきジャンヌが死んだ後数十年かして処刑される。

多分ジルはジャンヌの事を敬っていたのだろう。好きとか、そんな言葉で表せないほどに。
しかし、彼女が魔女にされてしまった事により、彼の心は壊れた。そして、悪行が始まった。
だが、俺が思うのはなぜ彼女を助けなかったのか?と言う点だ、歴史的に見ても確かにあの状況でジャンヌを助け事は厳しい。
しかし、けして無理ではないのだ。彼には土地も金もあったのだから。だが、それをせず壊れた為、彼は武勲よりも悪名が有名になる。
そう、青ひげとしての。そんな事を考えていると目の前の英雄にひとつ質問してみたくなった。

「なぁチャチャゼロ、いい英雄と悪い英雄の違いは何だと思う?」

本を読んでいたディルムッドが顔を上げ視線を中にさ迷わせた後口を開く。

「ん~、難しい質問だが、悪いのは裏切りを重ねたやつじゃないのか?エヴァはどう思ってるんだ?」

確かに間違いではないのだろうが、それを歴史になおすとどうなのだろう。
後から見れば間違いではなかった事など山のようにある。

「私か・・・、いい英雄は早く死んだやつ。悪い英雄は長く生きたやつ。これだな。」

それを聞いたディルムッドがすごく複雑そうな顔で口を開いた。

「エヴァ、それは死んでこそのいい英雄と言う事なのか?」

「いや違う、単に兵法者が政治ができるかと言う事だ。
 考えてみろ、地位がある金がある功績があるそれなのに、導くだけの手腕がないが為につぶれた国など腐るほどある。
 いってしまえば英雄は戦に出てこそ咲く華と言う事だ。
 キサマがもし、国王より莫大な領地をもらったとしてそれが運用できるかと言う事だよ。」

ディルムッドはやはりバツの悪い顔のまま黙り込んだ後、

「エヴァは・・・・、いや、何でそんな事を急に言い出したんだ?」

「あぁ、ちょうどその見本のような奴等が居るものでな。見に行くか?今の時代を生きる英雄と言うものを。
 一人は確実に見れるが、もう一人は  少し微妙だ。まぁ、根回しでもすればどうにかなるだろうが。」

「あぁ、エヴァの言った事も気になるし、見れるものなら。」

そう話したと、再び情報誌に目を向ける。もう処刑まであまり時間が行けば見れるだろう。
それに、個人的な話だが顔は別としてfate/Zeroのジルは嫌いじゃない。と、そういえばあの顔はあの本のせいである可能性もある。
しかもジルは確か若い頃は美男子じゃなかったか?まぁ、今なら俺が行ってもあいつの趣味じゃないだろう。
旧世界に行く事を考えながらその夜は過ごした。


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