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No.996の一覧
[0] 誘宵月[アービン](2005/11/23 13:06)
[1] プロローグⅠ[アービン](2006/03/25 15:59)
[2] プロローグⅡ[アービン](2006/03/25 16:00)
[3] 第一話 暗黒烙印Ⅰ[アービン](2005/11/23 15:57)
[4] 第二話 吸血姫[アービン](2005/11/23 15:58)
[5] 第三話 死猟[アービン](2005/11/23 15:59)
[6] 第四話 暗黒烙印Ⅱ 前編[アービン](2005/11/23 16:01)
[7] 第四話 暗黒烙印Ⅱ 後編[アービン](2005/11/23 16:03)
[8] 第五話 カルマ[アービン](2005/12/26 21:43)
[9] 第六話 妖の聖歌 前編[アービン](2006/03/08 01:49)
[10] 第六話 妖の聖歌 後編[アービン](2006/03/08 02:09)
[11] 第七話 割れる日々 [アービン](2006/03/25 15:44)
[12] 第八話 境界線 [アービン](2006/07/30 02:36)
[13] 最終話 在る理由 前編[アービン](2006/09/30 04:00)
[14] 最終話 在る理由 中編[アービン](2006/09/30 04:01)
[15] 最終話 在る理由 後編[アービン](2006/10/01 01:30)
[16] エピローグ 夕映えの月[アービン](2006/10/05 02:01)
[17] 後書き[アービン](2006/10/05 01:50)
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[996] 第二話 吸血姫
Name: アービン 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/11/23 15:58
夢…………

薄暗いビルの闇の中、

一人でうずくまっている。

体がズキズキと痛む、

でも、そんなことよりも…

寂しくて、たまらない……










徐々に意識が覚醒していく。

「朝か・・・・」

柔らかい朝日が窓から差し込んでいる。

穏やかな光景。

まるで昨日までの事は夢だったかのように。

「それだったらどんなによかっただろうな・・・」

俺があの女性を殺してしまった事も、

弓塚が吸血鬼になってしまった事も、

全て夢だったらどんなによかっただろう・・・

けど、そんな事はありえない。

コンコン、とノックの音がした。

「入っていいよ」

カチャ、とドアが開き翡翠が入って来た。

「志貴様、起きていらしたのですか?」

「ああ、嫌な夢を見て目が覚めちゃって」

本当に嫌な夢だった、まるであれは弓塚の体験している事みたいだった。

翡翠はそうですか、と言って着替えを渡してくれた。

「秋葉様は既に居間でお待ちしています」

「ありがとう、着替えたらすぐ行くよ」






「おはよう秋葉」

「おはようございます兄さん、今日は早いのですね」

「ああ、たまたまだ」

「私としてはいつもこのぐらいの時間に起きてほしいのですが」

「努力はするよ・・・」

「前にも言った気がしますが努力は要りません。結果を出してくれれば結構です」

秋葉はピシャリと言い放った。

わかっているのだが、それはなかなか出来ないんだよ。










「いってらっしゃいませ、志貴様」

そういってふかぶかとおじぎをする翡翠に見送られて俺は屋敷を出た。

どうも照れくさいなあ・・・

登校の途中で俺は思う。

今の俺の状況はとんでもない事になっているのに俺は学校に行っている。

いつもと変わらない事をしている自分にとまどい、また安堵している。

まあ、今は日常にいるとしよう。

夜になればどうせ非日常に向かい合うんだから。

――――が、それはもっと早くきてしまった。

登校途中の交差点、人が大勢いるというのに俺はそれを見つけてしまった。

「そん・・・な・・・」

見覚えのある、いや忘れようの無い後姿。

美しい金髪と白い肌。

俺がバラバラにして殺したはずの女の姿が見えた。

俺が唖然としている間にその姿は人ごみに消えていく。

落ち着け俺。

単なる見間違いか、人違いさ。

気にする事は無い、さっさと学校に行こう。

そう、気にする必要は無い。

無いというのに――――

俺は気付くと女の消えていった方に足を向けていた。

しばらく歩いても女は見つからなかった。

ほら、見間違いさ、もう戻ろう。

そう思った時。

――――いた。

その女を見つけてしまった。

しかも、さっきより近い。

やはり後ろ姿だがそれは以前見たものと酷似している。

どうする?話しかけてみるか?人違いだとわかるかもしれない。

だが、もし本物だったら・・・

答えを出せず、俺は・・・とりあえずあとをつけた。

――――女はこっちに振り向かない。

俺の中で振り向いて欲しい、という思いと、

振り向くなという思いが両方渦巻いていた。

だんだん人通りが少ない道に来てしまった。

まずい、引き返した方がいいかもしれない。

それなのに足は止まってくれない。

――――と女が曲がり角を曲がった。

数秒置いて俺も曲がり角を曲がる。

が、女の姿が無かった。

「な!?いったいどこに!?」

この道は行き止まりで特に隠れられる場所は無い。

「ねえ、私に何の用?殺人鬼さん」

ヒヤリ、とした指が俺の首に触れていた、俺の「後ろ」から。

「う、うわあああああ!!」

俺はその指を振り払って、振り向いた。

認めたくなかった、人違いだと思いたかった。

だがそこにいたのは紛れも無く

俺が殺したはずの女だった。

「そ、そんな・・・」

「こんにちは、この前は本当にお世話になったわ」

「あ、ああ・・・」

俺は今すぐこの場から逃げようとした。

だが、足が全く動いてくれない。

いや、足はおろか、腕すら動かない。

まるで蛇に睨みつけられた蛙のように、

俺は全く動けなかった。

「逃げようとしても無駄だよ。私の目を見ちゃったからね。ここは人通りも無いし、ゆっくり話せるね」

ゾッとする、俺は捕まってしまったのだ。

とんでもない化け物に・・・

「全く、本当に大変だったわ、突然見知らぬ殺人鬼にバラバラにされるし二日前にずっと探していたのに、全然見つからないし、そのうちネロに見つかって散々な目に遭うし。おまけに探すのを諦めた途端に探していた奴に跡をつけられるし、ふんだりけったりっていうのはこういう事をいうのかな。」

「お前は、確かに俺が・・・」

「ええ。この前貴方に殺された女よ。覚えていてくれて嬉しいわ」

「なっ!!」

そんな事が有り得るはずが・・・

「ふざけるな、死んだ人間が生きてるハズがないだろ!」

「ただ生き返っただけだよ、そこまで驚かなくてもいいんじゃない?」

「いきかえった・・・」

どういう事だ?あの後に息を吹き返したとでもいうのか。

「馬鹿にすんなっ!あんなに手足をバラバラにされて生き返る人間なんているはずがないだろ――――!」

「うん。だって私、人間じゃないもの」

「――――は?」

人間じゃない、じゃあ一体?

「当たり前でしょ。手足をバラバラにされて、ひとりでに再生できる人間なんているわけないじゃない」

そりゃそうだ、そんなのは人間に似ているだけの全く違う怪物だろう。

殺しても蘇る。

息の根を止めてもお構いなし。

バラバラにしても、すぐに元通りになって動き始める人間とは呼べないもの。

それが、今自分の目の前にいる女の正体らしい。

正直言って笑い飛ばしたい。

だが俺にはそれができなかった。

俺は、ひとつだけこの女の正体に心当たりがあった。

人間と酷似していて人ではない化け物。

「・・・人間じゃないって言ったな。それじゃあ何なんだ、お前」

「私?私は吸血鬼って呼ばれてるけど。」

それを聞いた途端、俺の中で何かがキレた。

吸血鬼?



「知ってる、志貴くん?吸血鬼にかまれるとね、その人も吸血鬼になるっていうよね、あれ本当なんだよ、正確にはかんだときに自分の血を送り込むとそうなるんだけどね」

じゃあ、お前が・・・

「どうしてこんな事になったかなんてそんなの私の方こそ聞きたいよ、気が付いたらこんな体になっていて、人の血を飲まないと生きていけなくなっていたんだよ、目が覚めたら死んでいた方がずっとずっと楽だったのに」

お前のせいで・・・

「痛いよ、志貴くん、痛くて、寒くて、すごく不安なの。ほんとは、今すぐにでも志貴くんに助けて欲しい。」

「恐いの。すごく寒くて、どこにいっても私は独りきりで、すごく不安なの。お願いだから、私を助けて」



「お前のせいで弓塚は・・・!!」

「え?」

気が付くと俺は動けないはずの体を動かし、

ナイフを持って女に襲い掛かっていた。

コロス・・・・

ナイフは正確に首の『線』を狙っている。

殺った、俺はそう確信した。

ガッ!!

「ぐうっ・・・・!!」

だが、俺はいつのまにか地面に叩きつけられていた。

「自惚れないでよ、魅了の魔眼を破ったのは誉めてあげるけど、何度も殺されてやるほど私は甘くないわ」

「がはっ・・・・」

肺が強くうちつけられて息が詰まる。

だが、こいつだけは許せない・・・

「何よその目は・・・何でそんなに怒っているの?私には貴方を恨む理由はあっても貴方に恨まれる心当たりはないわ」

「ふざけるな・・・!お前が弓塚をあんな風にしたんだろうが!!」

自分に恨まれる心当たりはないというこの女に俺は更に怒りを増す。

「誰それ?」

「お前に血を吸われて吸血鬼になった人だよ!!」

「・・・・・それ、私がやった事じゃないわ、勘違いよ」

「嘘をいうな!!お前がやったんじゃないなら他に誰がいるんだよ!?吸血鬼なんてそうそういるものじゃないだろ!!」

「まあ、確かにそうそういるものではないわね、だけど私は別の吸血鬼を追ってここに来たから、その弓塚とかいう人を襲ったのもそいつでしょうね」

「な・・・」

じゃあほんとに勘違いなのか・・・?

「ふうん、私って勘違いで殺されたの、それはものすごく腹が立つわね・・・」

ぞっとする殺気を女は放つ。

正確には最初殺したのはそういうわけではないのだが、

そんな事をいう余裕は俺には無かった。

コロサレル、

そう思った、この女は間違いなく自分を殺すだろう。

「・・・まあ、いいわ」

フッ、と殺気が霧散した。

「俺を殺さないのか?」

「そうして欲しいならしてもいいけど、非効率的だからとりあえずやめとくわ」

そして女は少し考えた後言った。

「ね、あなた反省してる」

「え?」

「私を殺して悪かったって思ってるか聞いてるの、もし反省してるようなら許してあげようかなって、どうなの?」

「反省って俺が?」

「うん、貴方が本当に反省していて私に謝ってくれるならそれでいいよ」

信じられない、自分を殺した相手をこの女は許すと言っているのだ。

「もうっ、真面目に聞いてるんだからちゃんと答えてよ」

そりゃあ、反省してるかっていわれたら……

「もちろん悪いとは思っているし後悔している、俺はあんたを殺してしまった、それは紛れも無い事実だし、殺されても文句いえない」

「そっか、あなたいい人みたいだね」

女は笑った、すごくまっすぐでこれ以上ないぐらいの顔で。

「うん、決めた。貴方には手伝いをしてもらうわ」

「手伝う・・・いったい何を?」

「私が追っている吸血鬼を倒す手伝いよ。貴方ほどの殺害技術を持った者なら、死者を狩る程度は造作もないだろうし」

「殺害技術って・・・そんなのあるわけないだろ!!俺はただの学生なんだから」

「ふうん、ただの学生って人をバラバラにするんだね」

「そ、それは・・・」

「貴方は私を殺したのよ、そんな事ができるなんて普通じゃない」

「――――」

「協力してくれる?」

「…吸血鬼を追っているって言ったな?」

「ええ」

「その吸血鬼が今、通り魔殺人事件を起こしているのか?」

「そういう事になるかな、貴方が言っていた弓塚って人も襲われたんでしょうね」

……なら俺は戦う必要があるだろう。

弓塚を吸血鬼にしてしまったそいつが憎い。

それにそいつを倒せばもしかすると弓塚を救えるかもしれない。

「やるよ、俺にも関係があるし、協力する」

それを聞いて女は心底驚いた顔をした。

「本当にいいの!?私吸血鬼なんだよ!?」

「なんだよ、頼んだのはそっちのほうだろ」

「まあ、それはそうなんだけど……」

女はしばらく何か考えこんでいたが

「ま、いっか!ありがとう、正直助かるわ。今ほとんど力が残っていないから、回復するまで一人ではきつかったから」

そう言って女は俺に手を差し出してきた。

「これで契約は成立、と自己紹介するわね、私はアルクェイド、真祖って区分けのされる吸血鬼よ貴方はなんていう人?」

「遠野志貴。あいにくただの学生だよ、役に立たないかもしれないけど」

俺はその手を握って握手をした。

「それじゃ志貴、これからよろしくね、私を殺した責任ちゃんととってもらうから」











「……というわけなんだ」

「何て言うか…すごい話だね……殺した相手に責任を負うなんて……」

夜、弓塚の所に来て連れて来たアルクェイドの事を話すと、弓塚はそんな反応を返した。

「確かにそんなの俺だけだろうな……」

何だか俺には変わった事ばかり起きていると思う。

「まあ、この話はこれぐらいにして……それで…アルクェイド……弓塚の今の状態はどうなんだ?」

「そうね……こんなの私でも初めて見たわ、かまれて一日で活動しだすなんて聞いた事無い。よっぽどポテンシャルが高かったのね……今の彼女は人間の部分と吸血鬼の部分がせめぎあっている。そんな事有り得ないはずなんだけど……半分人間で半分吸血鬼というのが一番近いかな」

「人間に戻る事はできるのか?」

「……少なくとも私の知る限り吸血鬼から人間になる方法は無いわ」

「じゃあ弓塚は……!!」

「話を最後まで聞いて、人間に戻ることはできない、けど吸血鬼化を食い止める事はできる。彼女を襲った吸血鬼を倒せば吸血鬼化は止まるし、吸血衝動も弱くなるはずよ。人間の部分が残っているなら、吸血衝動を我慢すれば普通に生活できると思うわ」

「じゃあそいつを見つけて倒せばいいのか?」

「そうなんだけど、死徒は…死徒って人間が吸血鬼になったものを指すんだけど、大抵、殺した人間に自分の血を送り込んで操り人形にした『死者』を作って、死者に吸血をさせて死者がいなくならない限り自分は隠れて出てこない」

「まず死者を全滅させないと死徒を倒すことはできないって事か」

「そういう事よ、だから死者を狩る事から始めないといけない」

その時今まで黙っていた弓塚が口を開いた。

「ねえ、志貴くん、本当に志貴くんも戦うの……?」

「ああ、そのつもりだよ」

「やっぱり、危ないと思う……」

そう言って俺を心配してくれる弓塚、その気持ちはとても嬉しい、でも…

「やっと、俺に出来る事が見つかったんだ、俺はやれるだけの事はやりたい、大丈夫だって、アルクェイドもいるんだし」

「でも……うっ!!」

何か言おうとした弓塚が苦しみだした。

「志貴、彼女の吸血鬼の気配が強くなってきている。そろそろ出て行ったほうがいいわ、死者も動き出す時間だし」

「わかった、……弓塚、行ってくる」

「志貴くん……本当に気をつけてね……」

不安そうな目で俺をみる弓塚、

俺なんかよりも自分のほうがよっぽど辛いのに……

「ああ」

「アルクェイドさんも…気をつけてください……」

「え……?あ、う、うん………」

俺とアルクェイドは廃ビルから出て行った。

一刻も早く弓塚を苦痛から開放してやりたい!!










「それでアルクェイド、どうやって死者を探せばいいんだ?」

「まず私が死者の気配を探るから志貴はとりあえずついてきて」

そう言ってアルクェイドは歩いていく。

俺はその後を追った。

しばらく歩いて大通りにさしかかったとき、アルクェイドはピタリと足を止めた。

「見つけた」

その声を聞いた時俺は背筋が寒くなった。

ぞっとするほど純粋な殺意。

「志貴、眼鏡を外してあの人間を見て」

「あの人間ってあのサラリーマンっぽい男の人?どうして?」

「いいから早く」

「わかったよ、あんまりやりたくないんだけどな」

そう言いいながら俺は眼鏡を外す。

ちなみに俺の眼の事はアルクェイドに話してある。

こめかみに痛みがはしる。

周りに黒い『線』が視える。

あの男にも当然『線』が……

「なんだよあれ……!?」

『線』の数が普通じゃない、

男の風貌がわからないほど『線』に埋め尽くされている。

「そう……やっぱりね、すでに死んでいる者すら『死』を視る。破壊できるものなら例外なく、ほんとに化け物じみた力ね」

「あれが『死者』なのか……」

「そう、殺された後ですら、死徒に操られ続ける意思なき人形、ただ命令に従い血を吸うだけの存在」

アルクェイドはその男に近づいていく、

その男はアルクェイドに気付くと裏路地に逃げていく。

「志貴はここにいていいわ、死者一人だけなら手助けは要らない」

そう言うとアルクェイドは路地裏に消えていった。

気付くと体が震えていた。

「あれが…『死者』…」

何故だかよくわからない、

だがあれがとても恐ろしかった。

「くそっ!!」

パン、と両手で頬を打つ、アルクェイドはここにいていいと言ったが……

「それじゃ来ている意味がないじゃないかっ!!」

俺はアルクェイドの消えた路地裏に走っていった。










「はあっ、はあっ、まさかここまで力が落ちているなんて……」

路地裏に入るとアルクェイドは息を切らしていた。

「アルクェイド!!」

「志貴……?来なくていいっていったのに……死者はもう倒したわ……」

「おい!!お前ふらふらじゃないか!!」

「大丈夫よ……ちょっと疲れただけだから……」

「ばかっ!!疲れているんなら休めよ!!そんな顔で言っても全然大丈夫に見えないぞ!!」

「気にしたってしょうがないのよ、これは……私たちはそんな悠長な事言ってられない。急がなくてはいけない事ぐらいわかるでしょう?」

それは……確かにそうだ、のんびり傷を癒している暇なんてないだろう、でも……

「ばかっ!!」

そう言わずにはいられなかった。

「さっきの弓塚を見ただろ!!弓塚は自分の為に誰かが犠牲になって助かっても喜ばない!!それに何の為に俺に手伝いを頼んだんだよ!?そりゃ俺はあまり役に立てないかもしれない!!でも……ちょっとは頼れよ」

「志貴……うん、わかった、ごめんね、これからは気を付け…!!」

アルクェイドは突然顔を険しくして、

「志貴、後ろっ!!」

「えっ!!」

俺が振り向いたのと同時に俺の後ろから死者が襲い掛かって来た!!

「うわぁ!!」

叫び声をあげながら咄嗟に俺はナイフを振るった。

ザシュッ

「ギ…ガ……」

死者は呻きながらその場に崩れ落ちた。

「志貴!!大丈夫!?」

「あ…ああ……」

目の前で死者が灰になっていくその光景に俺は呆然としていた。

「アルクェイド、これは一体?」

「あれ?言ってなかったっけ?吸血鬼は死ぬと灰になって消えるわ」

灰は風に吹かれて消えていく、そして元通りになった、もう何も残っていない。何も…

「志貴…顔色が悪いよ?」

「大丈夫、少し気分が悪くなっただけだ」

そう言って俺は眼鏡をかけた。

今ここで死んだというのに、何も残らない。
それは悲しい事のような気がした。

「アルクェイド、次はどこへ行くんだ?」

「ん……今夜はもう出て来ないと思う」

「そうか……じゃあどうする?」

「今夜はここでお別れにしましょう。明日、またあの廃ビルで十時に」

「わかった」

「志貴…一つだけ言っておくわ、死者はもう人ではないわよ」

そう言ってアルクェイドは去っていった。

「ああ…わかってるよ」

俺も屋敷に帰るとしよう。










屋敷に帰り自分の部屋に入るとベッドに倒れこむ。

「今日はまたずいぶんいろいろあったな……」

殺したはずの女に会って、

弓塚がどうなっているのかわかって、

そして…死者を殺した……

――――死者はもう人ではない――――

「わかっているさ…でもそんな簡単に割り切れない……」

さっきナイフで切った時の感触がまだ残っている。

「やめよう…それよりもう寝ないと……」

そう思うと急に眠くなってきた。

「弓塚…必ず助けてやるからな……」

そう決意しながら俺は眠りに落ちた。


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