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No.958の一覧
[0] 『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/02/24 04:05)
[1] Re:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/03/01 10:35)
[2] Re[2]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/03/07 00:18)
[3] Re[3]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/03/15 10:21)
[4] Re[4]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/03/21 19:48)
[5] Re[5]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/03/30 03:10)
[6] Re[6]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/04/04 02:19)
[7] 訂正[KCA](2005/04/04 02:34)
[8] Re[7]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/04/11 02:49)
[9] Re[8]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/04/18 00:53)
[10] Re[9]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/04/24 17:27)
[11] Re[10]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/05/01 21:08)
[12] Re[11]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/05/05 23:16)
[13] Re[12]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/05/08 23:13)
[14] Re[13]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/05/15 20:30)
[15] Re[14]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/05/29 22:33)
[16] Re[15]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/06/06 05:56)
[17] Re[16]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/06/13 00:23)
[18] Re[17]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/06/20 15:21)
[19] Re[18]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/06/28 13:36)
[20] Re[19]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/07/12 02:09)
[21] Re[20]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/07/19 02:30)
[22] Re[21]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/08/02 00:19)
[23] Re[22]:『東方聖杯綺譚』18訂正[KCA](2005/08/02 12:41)
[24] Re[23]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/08/23 09:42)
[25] Re[24]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2005/08/29 08:25)
[26] Re[25]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2006/01/18 04:41)
[27] Re[26]:『東方聖杯綺譚』-おさらい その1-[KCA](2006/01/18 15:51)
[28] Re[27]:『東方聖杯綺譚』[KCA](2006/05/22 01:21)
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[958] Re[16]:『東方聖杯綺譚』
Name: KCA 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/06/13 00:23
『東方聖杯綺譚』~その15~


 ――それは、少女たちが織り成す、幻想的で悪夢のような光景。

   *  *  *


 (クッ…これは……)

 妖夢はその青白い頬にじっとりと汗を浮かべていた。

 10合……20合……30合……

 (同じだ、あのときと、まるで……)

 すでに幾度となく剣を振るい、その過半数を目の前の敵にヒットさせている。
 だが、それはすべて"当たって"いるだけだ。確かに斬ったという手ごたえが感じられ
なかった。

 かつて幻想郷でこの小鬼と対峙したときも、そうだった。

 萃香の身ごなしがことさらに優れているわけではない。
 たしかに、人並み以上に敏捷ではあるし、その小柄な体に見合わぬ怪力を発揮する。
 しかし――それだけだ。

 握った拳は力任せに振り回され、相手の攻撃も単に反射神経にまかせて避け、あるいは
受け止めているだけ。その守りをかいくぐることなど、妖夢の力量をもってすれば
造作もない。
 妖夢や咲夜はおろか、士郎にさえもその格闘技術は劣るであろう。
 ありていに言って、萃香は武術や格闘技等に類する技術をまったくと言ってよい
ほど、身に着けていないのだ。

 しかし、それは言い替えれば、そんなものが必要ないからだ、とも言える。
 彼女は、人の形をしていながら人ではないモノ、”鬼”なのだ。

 もとより、武術や体術の類いは、力で劣る人間――その範疇には、咲夜のような
異能者や妖夢のような半人も含まれる――が、そのハンデを克服し、少しでも効率的に
戦い、強い存在を打ち負かすために、気の遠くなるような長い歳月をかけて編み出された
技術である。

 だが、力の化身たる鬼にそんなものは必要ないのである。
確たる理由も裏づけもなく、鬼はその身に自然に備わった力で人を蹴散らし、人に
”勝つ”存在なのだ。
 人の身でその法則を打ち破るためには、相手の鬼の弱点を知り、確実にそれを突く
戦法をとらねばならない。
 そして……いま、目の前の”鬼”の弱点については、ほとんど何ひとつわかって
いないのだ。

 だが、ここで引くわけにはいかなかった。
 単に武人の意地、というわけではない。
 おのれが一命に賭けてでも守るべき存在が、妖夢の後ろにはいるのだから。

 「……はぁーーーーッ!」

 呼吸を整えるまでもなく、妖夢は再び絶望的な剣舞を舞い始めた

   *  *  *

 (厄介ですわね……)

 妖夢ほどではないにせよ、咲夜もまた焦れていた。

 (私のナイフくらいでは、あの小鬼にはロクに傷をつけられないでしょうし)

 妖夢の攻撃を支援するため、萃香の目や口、あるいは喉などを狙って銀のナイフを
投げ続けてはいるが、効いているどころか、痛そうな顔すらしていない。

 これでは、仮に時間を止めて、彼女の無防備な背後をとったとしても、さして事態
が変わるわけではないだろう。

 無論、宝具(スペルカード)を使えば話は別だろうが、いまのこの身はサーヴァント。
魔力の源を支えるのが優れた魔術師である凜とはいえ、何度使えるかわからない、危険な
賭けだった。

 かつて萃香と戦った際も、スペルカードによる攻撃は、それなりにダメージを与えて
いた記憶がある。もっとも、それでも萃香の再生速度のほうが、咲夜の魔力回復よりも
早く、結局は打ち倒されてしまったわけだが……。

 (それでも……それしかないですね)

 的確に当たるが相手が傷つかない攻撃と、ロクに当たらないが威力のある
攻撃は、一見同じ結果のように見えても、その意味はまったく異なる。
 いまは何とかしのいでいる妖夢だが、遠からず体力を消耗し、萃香の豪腕に
捕らえられる時が来るだろう。そうなれば、一気に戦局はくつがえる。

 咲夜はラインを通じて、凜に宝具の使用許可を求めた。

   *  *  *

 (この状態は……やはりマズいわ)

 鬼と人と半幽霊の戦いを、人形使いたるアリスは引いた位置から見ていた。
 無論、何もしていなかったわけではない。
 桜、士郎、凜たちの前に不可視の魔力障壁(シールド)を張り、流れ弾による
被害から防ぎつつ、何とか萃香の弱点らしきものを探ろうと、先程から探査の魔術
と頭脳を全力で駆使しているのだ。

 主の身を守ることを第一とする従者である、妖夢や咲夜たちと異なり、アリスは
基本的にただの――というにはいささか強大だが――魔術師だ。
 しかし、だからこそ、魔術師の性として、己の力の及ばない、及ばなかった事態を
省みて冷静に分析し、その原因を探ろうとする習性を備えている。

 咲夜は、自らの主レミリアに害を及ぼさない、と判断すれば、萃香が何者であれ
気にしないであろう。
 妖夢の場合も同様だか、彼女の場合、武人としての後悔はあるようだ。ただ、それ
とて自らの未熟を恥じ、より修行に励むことの材料に過ぎない。

 しかし、アリスは、未知の解明と知の研鑽に余念のない魔術師である。
かつて幻想郷にて、かの鬼と戦い、敗北を喫したのち、アリスは密かに"鬼"という
存在について調べていた。
 古今の奇書と稀書が納められた恋敵の図書館や、思い人のいささか乱雑な蒐集物
を漁り、さらには、冥界の名家たる屋敷の蔵、かのスキマ妖怪の住処たるマヨイガに
まで足を運んで、少しでも役に立つ資料はないかと、頭を悩ませたものだ。
 その結果得られた知識(こと)はごく僅かであり、しかも悲観的な内容だった。

 つまり……鬼とは(その形式は様々であるにせよ)他者と戦い、ことごとくこれを
討ち下す存在だ、ということだ。
 妖怪は、鬼には勝てない。なぜなら、妖しと戦うのは基本的に人間の仕事であり、
妖し同士の間では純粋に力の優劣をもって一方が他方をねじ伏せるに過ぎない。
そして、鬼とは妖しでありながら妖怪とは別次元の力を持つ存在なのだ。たとえる
なら、空を飛ぶ鳥を地を駆ける獣が見上げるようなものだ。

 人は人のままでは鬼に勝てない。なぜなら、鬼とはその存在そのものが人の
天敵として世界に規定された存在だからだ。ただ、人の中から時折現れる"英雄"
――世界秩序の守護者だけが、かの者を討ち滅ぼすことが可能とする。
 先の譬えになぞらえれば、英雄とは、空を翔ける鳥を射るための弓を手に入れた
存在だと言えよう。
 しかし、それにしたって、鳥を射落とす――鬼に勝つことは容易ではないのだ。
 本人の技量、正しい策、そして時の運……それらが揃って初めて”鬼退治”は
可能となるのである。

 (そして……いまは、その3つとも欠けている)

 アリスたち3人の力をうまく合わせれば、あるいは”力”だけは十分かもしれ
ないが、策略と幸運は致命的に足りない。

 (となれば、ここは退くしかない。桜、いいかしら?)

 ラインを通じて、自らのマスターである少女に撤退を呼びかける。
 桜もすぐさま同意……しようとしたとき、それは起こった。

   *  *  *

 3人のマスターたちとて、何も指をくわえて見ていたわけではない。

  まっさきに動いたのは、やはり凜であった。

 「――Vier Still ErschieBung……!」

 宝石に込めた魔力を解放し、呪文とともに萃香の背中に叩きつける。迸る魔力の
量からすると、大口径の銃弾にも等しい衝撃が直撃しているはずだが、わずかに
体勢を崩すに留まった。
 高い耐魔力で無効化したわけではない。単に、”効いていない”のだ。

 「Es erzahlt――Mein Schatten nimmt Sie!」

 桜も拙い口ぶりで呪文を紡ぎ、足元から現出させた影をもって、萃香の
動きを牽制しようとするが、歯牙にもかけられない。

 そして士郎は……懸命に自分がいまできることを考えていた。

 (強化は……距離がありすぎる。投影した刃物をぶつけるか? いや、咲夜
くらいの腕前がなければ、妖夢に当たっちまう。変化は……だめだ、有効な
内容が思いつかない!)

 何もできない自分に焦る士郎。

 そんなとき、ついに萃香の冗談のような、けれど信じられないことに口から火を
噴くという攻撃が、妖夢の身体を捕捉する。

 「よ、妖夢ーーーッ!!」

 トサッ、と何か軽いものが地面に落ちる音がした。
 咄嗟に後ろに跳び、わずかにダメージを殺したようだが、鎧や防具の類いを一切身に
つけていないため、ほとんど気休めしかならなかったようだ。 
 剣を杖にかろうじて身を起こしたものの、華奢な妖夢の胸からお腹にかけては、大き
く焼け焦げて、呼吸をすることさえ辛そうだ。

 「妖夢、逃げろ!」

 それでも彼女は立ち上がろうとしていた。
 逃げるためではなく、立ち向かうために。

 (士郎様こそ……お逃げください……)

 ライン越しに切れ切れに伝わってくる、妖夢の意思。
 後事を友人ふたりに託して、彼女は皆が逃げ延びるための盾になろうと言うのだ。

 衛宮士郎という男にとって、誰かが自分のために傷つくなどというのは、耐え難い
苦痛だった。
 それは、養父から受け継いだ”正義の味方”という生き方に反するからであり、
それ以上に、あの惨劇を生き延びたときから心の奥底に刻まれた傷痕が疼くから
である。

 そして、何よりも……自分を守るために戦ってくれた、大事な少女を置いていく
ことなどできはしない!

 「このぉおおおおおお……!」

 気がつけば、士郎は全力で駆け出していた。

   *  *  *

 「―――ッ!!」

 驚く声が聞こえた。
 まずは、目の前にいる、今にも泣きそうな妖夢。
 後ろで悲鳴をあげ、駆け寄る桜。
 ついでに、遠くで憤然と罵っている凜。
 そして……なぜだか、呆然と見下ろしてくる、イリヤと名乗った少女の瞳。

 「なん、で……?」

 ぼんやりと少女が呟き、それによって士郎は自らの身に起こった事態を知る。

 (あぁ、そうか……)

 セイバーのサーヴァントである妖夢でさえ、一撃で半死半生に追い込んだ
バーサーカーの攻撃なのだ。
 まるでネズミ花火のように気軽に投げられたその火の玉は……しかし、
妖夢を庇おうとした士郎の身体を一瞬にして燃え上がらせていた。

 (全身第3度の火傷ってところか……こりゃ……)

 かつてあの大火をくぐり抜けて入院した身だ。火傷のことについては、
己が身をもって十二分に知っている。
 そして……いまの自分が、おそらくは助からない状態であろうことも。

 「もういい。つまんない。萃香、帰ろう」

 なぜかふくれっ面の少女は、萃香に呼びかける。

 「ん? ま、いっか。オッケー、イリヤ」

 ふたりの少女が去るのを感じながら、士郎の意識は途絶えた。

  -つづく-

--------------------------------
<後書き>

どうも。某板でこのSSが散々に叩かれているのを発見し(しかも、結構
反論しづらいイタイ点を突かれていて)、結構凹んでいるKCAです。

とりあえず、対萃香(バーサーカー)戦、初戦は衛宮組、ボロ負けといったところ。
基本的には、本編の展開をなぞっていますが、単なる模倣ではなく、次回の
伏線オープンのため、と思ってください。
いろいろ本編とは違う設定が、これまでにも出てますから、もしかしたら
気づいている人もいるのかも?  


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