狸さんの返答は、風遁・練空弾の術でした。「危ねえ!?」迫り来る巨大な風の砲弾。足をチャクラで強化して速度を上げ、何とか避ける。「・・・あ、そう!回答は2だな!?それでいいんだな!?」「フザゲルナアアアァァァ!」「ふざけてんのは手前の方だろうが!」激昂した守鶴が、砂を操って捕らえようとしてくる。「・・・派手にいきますよっと!」集まってきた砂を、四方八方にばらまいた起爆札付き手裏剣を放つ爆発。念入りに仕込んだ起爆札だ。その威力は、通常のものとは比較にならない。「アマイワァ!」と、今度は超巨大な砂の槍が、地面から隆起する。「大玉・螺旋丸!」迫り来る砂の暴流を、螺旋丸で打ち砕く。「どうしたあ!?デカブツ!てめえの方こそこんなもんかあ!?」~サスケside~走り続けて、数分。あの化け物から、大分離れることができた。後方から聞こえた地鳴り、あいつがいる方向だ。振り返ると、巨大な化け物の姿と。「あいつは・・・」丘の上に悠然と立ち、巨大な化け物を真っ向から睨み付ける、金髪の忍の姿があった。「誰だ・・・?」呟きながらも、足は止めない。なにやら、嫌な予感がするからだ。さらに走り続けて数分。「サスケ!」「・・・キバか。それに、シカマルとヒナタも」肩に担いだキリハをそっと地面に降ろし、膝をつく。「サスケ、キリハは気絶しているだけか?怪我は?」「ああ、衝撃と痛みで気絶しているだけだ。命に別状は無いと思うが、一応、医療忍者に見せた方がいい」「ああ、で、あれは何だ?」「あの化け物は・・・恐らく我愛羅だ。砂を纏っているからな」「・・・あの、戦っている人は?」「・・・分からねえ。名前を聞いても名乗らなかった・・・!?」地鳴りが、辺りに響き渡る。遠くで、木が吹き飛ぶのが見えた。あれは、風の砲弾だろうか。「何て戦いをしやがる、まるで嵐だぜ・・・!」「・・・今は退くぞ。俺等がここにいても、あの化け物相手に出来ることなんかねえ」~キューちゃんside~『・・・・』覚醒した尾獣を前に吠える馬鹿をみて、戦う馬鹿を見て、考える。(何のために?こいつは何のためにこのような強敵と戦うのだろう)人の身で戦うならば、守鶴は強敵だ。ワシら尾獣のような巨大な体躯を持たないのであれば、あの砂の攻撃は厄介も極まるだろうに。返答はこうだった。「これは、俺の戦いだからさ。それに、キューちゃんにはチャクラ借りてるし、それで十分だよ」違うだろう。ワシは覚えている。俺は強くなんてない、力があるから強い、なんてのは違うと思う、と零していたこいつの背中を。力はあっても、殺し合いは怖いらしい。「それに、ある人曰くだけど、力はすぐに裏切るから」それは、確かにそうかもしれない。一瞬の油断で、生と死が入れ替わる。どれだけ鍛えても、その力で人の心を動かせようもない。力は万能ではなく、逆に巨大過ぎる力を持てば、人に疎まれる事もある。ならば、何故鍛える。何故、力を持とうとする。そう問うた。「力は所詮、手段に過ぎないよ。これみよがしに振るわなければ、逆に持っていた方がいい類のものだと思う。・・・俺のような境遇だと、特にね。それに、話しを聞こうとしないきかん坊には、必要なものだから・・・悲しい事だけどね」力が欲しいのではなく、必要だから、と言う程度。だから、人柱力についても役割程度で、どうでもいいと言う。大事なものは其処にはないといった風に。何故お主が、守鶴と戦う。そんな義理はないだろうにと、そう問うた。「うーん、義理ならあるよ。ある程度はね。でも、それだけじゃない」何?「気にくわないんだ。親が息子を兵器にしようとするのも、不安定だから殺そうとするのも、怯えた子供が力に縋り付いたままなのも・・・人柱力の運命とやらをそのまま体現してる境遇、そして、あの目も。それを利用しようとする、砂隠れの里の意志も、何もかも」同情か?「俺の勝手な我が儘。そして俺としての意地だね。だから、痛みも何もかも、俺が引き受けるから。そいつが責任ってやつだよ」正気か?ワシは九尾だぞ。最強の妖魔だぞ?「今は、キューちゃんだね」その言葉に、確信した。こいつは馬鹿だ。しかも、底なしの。ワシを九尾として見ていないのだ。いや、九尾としても見ているのだろう。だが、それはおまけで、本質的にはただ1人の個として、見ている。それを理解した時、世界が逆転したかのような錯覚に陥った。陰のチャクラが封印された今。ワタシを個と扱い、個として接する馬鹿を、どうして殺せる筈もあろうか。それに、一緒にいても面白い。偽善を振りかざす訳でもなく、運命など知ったことかと自分のしたい事をする。それがラーメンなのだろう。人にはそれぞれ誇るべきものがあると聞いた。大切なものがあると聞いた。こいつにとっては、ラーメンと、ラーメンによってもたらされる笑顔が、何よりも大切なのだろう。(なるほど、『九尾の人柱力』はついでだな)苦笑する。こいつは『うずまきナルト』であって。そしてどこまでも『小池メンマ』であろうとするのだ。ならば、自分は応援するしかあるまい。長い間一緒にすごしてきた、1人の友として。そして、意地を通そうとする馬鹿な男の背を、押す。ただ1人の女として。~~~~「来た」呟く。風の砲弾と、砂の槍を避け続けて数分。ついに、使ってきた。守鶴が使う攻撃方法で、口寄せを使わない今の自分にとって、最も恐ろしいものは何か。それは、練空弾でもなく、砂の槍でもなく。「まるで津波だな・・・!」秘術・流砂瀑流だ。津波のような砂が、俺を押しつぶそうとしてくる。避けようにも、範囲が広すぎて無理。螺旋丸だけでは、効果範囲が狭すぎて足りない。特製の起爆札でも、砂の津波の大質量では、威力が足りない。だからこその新術だ。だが、途轍もない大質量の砂の波が迫るのを見て、内側から本能的な恐怖がこみあげる。だが、その恐怖は内側から発せられた、キューちゃんの一言でかき消された。『ナルトよ!メンマよ!・・・人としてのその身、宿る意地を通そうというのなら、ただ押し通せ!』叫ぶ。キューちゃんが叫ぶ。『馬鹿は、馬鹿らしく!一発、ガツンと、蹴散らしてやれえ!』キューちゃんの声。その中に篭められた気持ちを受け取ると、身体の震えは止まった。それは、歓喜。見てくれている。1人の女性が、見てくれている。なら、格好つけるしかないよなあ!『手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に、だよ』マダオはマダオらしく、的確なアドバイスをくれる。巫山戯ては居ても、締めるところは締めるマダオ。あんがとよ。「応!」身体が動く。心が熱くなる。だが、頭は冷静に。ただ成すべき事を成すと、馬鹿の最善を、馬鹿の意地をここから貫き、押し通す!言葉と同時に、影分身を使う。4体の影分身が、本体の俺の前方に出て、一点に手を向ける。「「「「アイン!」」」」俺の前方に、大玉の螺旋丸を作り出し、留める。密度は普通より若干薄め。「ツヴァイ!」そこに、本体である俺が、突っ込む。両手に、超大玉かつ超高密度の螺旋丸を携えて。「「「「「ドライ!」」」」」5人の螺旋を一つに合わせ。指向性を前方に。五重に重ねられた螺旋の大玉が、世界を引き裂かんとばかりに荒れ狂う。「麺・元・突・破!」だが俺は、手が傷つくのも構わず、その反発する螺旋の巨塊を!助走の勢いのまま、前方へと押して押して、押し通す!「螺旋砲弾!」天をも貫く螺旋の瀑龍が、目の前にある全ての障害物を吹き飛ばした。守鶴が砂の津波を被せ、これならば逃げられまいと嗤った直後だった。本能が危険を感じ取ったのか、守鶴が両腕を前に突き出した。「オオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!?」だが、津波の向こうから発せられた風の暴流は、天を覆う砂の津波を吹き飛ばし、前に出された、山ほどにある巨大な砂の腕をも貫いた。そして、守鶴がその風余波を受けて、倒れる。「おらあああああああああ!」砂煙の向こうから、馬鹿が突っ込んだ。助走を付けて、影分身を踏み台にして、大跳躍。守鶴の所に向けて、愚直なまでの一直線。「ツブレロ!」空中にいる馬鹿を潰そうと、前方を覆い、そして死角である背後から砂の塊を放つ。だが、その砂の塊も届かない。「派手にいきますよっとぉ!」後方にある砂は全て、馬鹿が大量にばらまいた起爆札に吹き飛ばされた。そして前方の砂は、莫大な量のチャクラが篭められた、ただの掌打に吹き飛ばされる。そして馬鹿は、起爆札の爆風を背に受けた勢いのまま、着地後も転がり、勢いを殺さないように疾走を始める。倒れた守鶴の上を全力で疾走し、ただ一直線に我愛羅の所へと向かう。「だらっしゃああああああああああああああああ!」「ハヤイ!?」捕まえようにも、砂が追いつかない。前に展開した砂は、そのことごとくが逸らされ、打ち砕かれ、届かない。止まらない。止められない。そう悟った守鶴は、即座に憑代である我愛羅の前に砂の壁を展開する。だが、突進は止まらない。「それがどうしたあああああああぁぁぁぁ!」走る勢いのまま繰り出されたラリアットは、その砂の壁をも打ち砕いて。「目え覚ませえええええええええぇぇぇぇ!」本体である我愛羅をぶっとばした。