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No.8346の一覧
[0] 【一発ネタから一発ネタまで】何故RPGで村が無事なのか?【ファンタジー・オリジナル】[兄二](2011/02/11 22:45)
[1] 【一発ネタ】ニコぽ、ナデぽについて本気で考えていたら百八十度ひん曲った作品ができた。[兄二](2009/06/15 11:16)
[2] [ハイパーネタタイム]ローマ字系主人公とかORIKYARAについて本気んなって考えてみたら、すごいことになった。[兄二](2009/05/23 20:27)
[3] 【真・一発ネタ】ネギまオリ主ハーレムと思っていたらタカミチに告白されていた[兄二](2009/06/21 20:58)
[4] 【銃に込められた一発のネタ】ヒーローとか悪の組織に生きる変な人とか。[兄二](2011/02/06 22:37)
[5] 【一発どころじゃないけど一発にまとめたネタ】バケモノラプソディー[兄二](2009/06/20 23:39)
[6] 【激・一発ネタ】異世界転移だの転移の際のオリ主チートだの笑わせるぜぇっ! とか考えてたら俺の予想斜め上をいった。あと筋肉とか。[兄二](2011/02/06 22:38)
[7] 【撃・一発ネタ】俺が最強主人公だぜッ! と思ったらそうでもなかった。[兄二](2011/02/06 22:40)
[8] 【爆・一発ネタ】 なんか妙なものに憑依しました。[兄二](2011/02/06 22:41)
[9] 【絶・一発ネタ】女の子が俺の剣、なんて思っていた時期が僕にもありました。[兄二](2011/02/06 22:41)
[10] 【一発ネタ】ヒーローものだと言い張りたい。[兄二](2010/06/22 22:10)
[11] 【一発ネタ】放課後破壊神[兄二](2011/02/06 23:02)
[12] 【一発ネタ】何故RPGで村が無事なのか?[兄二](2011/02/12 00:51)
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[8346] 【一発どころじゃないけど一発にまとめたネタ】バケモノラプソディー
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/20 23:39
バケモノラプソディー














まぎゃくまさかはんたいたいぎ





「別にあんたのことなんか、心配してないわよ」


 ポニーテールの学友、天屋 夜子は、憮然としてそう言った。

 あまや やこ。

 彼女はあまりこの名前を気に入ってないらしいが。


「ああ、うん、わかってるよ」


 そんな彼女に、俺はにやにやと笑いながら返す。

 わかってる、わかってるんだよ。


「なににやにやしてんのよ、気持ち悪い! 勘違いしないでよね!!」


 うん、わかってるよ


「あんたのことなんか、好きでも何でもないんだから!!」


 それもわかってる。


「わかってるっての」

「わかってない! 早くどっか行きなさい! 不愉快だわ!!」


 うんうん、わかってるんだ。


「本当は寂しいくせに」

「うっ、そんなことないわよ! 寂しくなんてない!! 行きなさいよ!」

「じゃあ帰る」

「えっ、あ、いいわよ? 早く行きなさいよ!」


 珍しいなぁ、彼女がこんなに言うなんて。

 そんなに、寂しいのか。

 そんな彼女に、俺は一歩近づいて、そして、両手で抱き締める。


「そんなに言うなら」


 彼女の顔が、赤くなった。


「……嬉しくなんて…、ないんだから……」

「わかってるよ」


 俺は苦笑いして返した。

 彼女は、天谷矢子

 天邪鬼だ。

 そのままの意味で。










かわにながれたりながれなかったりするあれ




「ねえ、早く……」

「焦んなよ」

「お願い」

「ほら、すぐやるから準備しとけ」

「うん、太くておっきいのが、欲しいの」

「ほら、好きなだけくれてやるよ」

「んっ、……しょっぱい」

「そりゃ漬物だからな。今回はどうだ?」

「酢漬けよりは、好きかも。あ、でも、噛んでたらおいしくなって来た」

「うーむ、俺が漬けて見たんだが、気に入ってくれたようで何より」

「うん、私、新しい何かに目覚めそうかも」

「まあ、マヨネーズ付けて食わせたのは俺が初めてだろうな」

「今日はないの?」

「残念ながら」

「そっか。ねえ、明日はばんばんじーってのが食べたい」

「おっけ、持ってくる」


 俺は多分、人類初の河童の餌付けに成功した男だと思う。









さいほうずきでかじのとくいなどうきょにん




「ねえねえねえねえ! これは何なのかしら?」


 狼のような耳をぴんと立てた、まるで小動物のような女性が、俺の店の品である、壺を持って見せている。


「そいつは、悪鬼を入れて封印する壺だ」


 おっと、紹介が遅れたな。

 俺の名前は下詰春彦。

 下詰神聖店店主だ。

 下詰神聖店とは、マジックアイテムからマジックアイテムまで、といういかがわしい店だ。

 魔力回復カ○リーメイトきんぴらごぼう味とかがある。

 ちなみに回復力は、ゴーヤチャンプル味、イナゴの佃煮味、きんぴらの順だ。

 そして、こいつが、いや、名前を言うのはよそう。

 とりあえず、うちの家事手伝い、だ。


「じゃあ、こっちは?」

「そいつは投げると爆発する魔力封入ビリヤード玉。ってかうるさいので自重しろ」


 相変わらずうるさい。

 騒音は、こいつの習性に近いらしいが。


「ねえ、春彦。裁縫したい裁縫」

「駄目だ。糸の無駄」

「むー」


 まずい。

 余り機嫌を損ねるのもよくない。

 聞いた限りでは、鶏の羽をむしったりするらしい。


「おーおー、しゃあねえな。好きにしろ」

「ほんと? やったっ」


 まったく。

 これは何でこうも裁縫苦手なくせに機織とかしたがるかね。






「できたよ!」

「へいへい、何ができたんだ?」

「Tシャツ!!」

「誰が着るんだよ」

「春彦!」

「俺宛て?」

「うん!」


 そこにあったのは、下手なTシャツ。


「誕生日だったよね?」

「俺でも忘れてたな――」


 こいつは、張り切った様子で。


「腕によりをかけてご飯とか作るね!! 今日は掃除もがんばる!」


 そんなこいつを、俺は手まねき。


「なあに?」


 俺は、警戒もせず寄って来たこいつを、膝の上に乗せた。


「騒がしいから、しばらくここにいろ」

「え、あ? う、うん」


 家事が好きで、騒がしくて、裁縫好きだけど下手。

 シャツを作ってもらうのを待っても無駄さ、とか言う言葉ができていたりする彼女は、

 キキーモラ。

 俺より年上のはずなんだがなぁ……。
















くだんのけんですが



「あなたは今日、学校の途中で、石に躓く」

「おっけ、気を付ける」

「無駄ですよ、私の予言は外れない」


 ほんとに、躓いた。

 転ぶかと思った。


「あなたは今日、学校で日本史の授業中に当てられる」

「マジで、どこよ!?」

「え、あ、あの、近すぎます……」


 本当に当てられた。

 答えらんなかった。


「あなたは今日、私と一緒に帰ります」

「ま、いつものことだしな」


 そして、帰り道の途中。

 こいつは俺の前に飛び出して、急に真っ赤になって、言った。


「あ、あなたは。あなたはいまから……、私を…、好きだという…!」


 俺はにこりと笑う。


「その予言、外れた」

「え?」

「あなたが、大好きです」

「……私の予言がはずれることはないのです」

「外れてんじゃん」


 彼女の名は件。

 予言するっていう、クダンだ。

 まさに、件の如し。









なぞかけなぞ



「お茶を飲んでいると、ある者を応援したくなりました、なぜ?」


 黒い長髪、物憂げな瞳の彼女は、俺に問うた。


「菌。勝て、菌。でカテキン」

「むー……、じゃあ」


 そして彼女が次の問題を出す。


「突然、地球の日を制定しました、いつ?」

「明日、いわゆるアース」

「む……、つまんないな」


 それでも彼女は諦めない。


「滝はどこにある?」

「南。北、キタの逆でタキ、滝だから」

「……じゃあ」


 そう言って、彼女は茶化すようにして最後の問題を出した。


「貴方は、私をどう思っていますか?」

「好きだ」


 彼女は、予想していなかった答えに、驚いた表情を見せる。


「え?」

「ではこちらからも問題だ、あなたは、俺をどう思っている?」


 彼女は、答えを知っている。


「……好き、です」


 人の上半身にライオンの体。

 腕は鷹の羽で。

 謎かけが好きな彼女は――。

 スフィンクス。




はろーはろーもしもし



「私メリーさん、今あなたの家の前に居るの」

「へいへい、ちょっと待ってな」


 俺は、玄関の扉を開ける。


「ちょ、あなた、あっさり開けるのね……、いいわ、とりあえず、この人形の手足を探してきてくれないかしら。探してこないと、殺しちゃうんだから」

「む、仕方ないな」


 そう言って、俺は辺り探してみたが、駄目だった。

 そして、半年の月日が流れ。




 俺は陶芸家になっていた。




「ほら、できたぞ」

「え? 本当に作って……。馬鹿ね……」

「悪かったな。半年も待たせて。だけど、これでも天才とか言われてんだぞ? そりゃ、必死だったからな」

「そう……」

「でも、お前はもう、出ていっちまうのか……、楽しかったけどな……」

「ふん! 寂しいっていうなら仕方なく一緒にいてやるわよ!」

「マジでか! よっしゃ!!」

「あ、ちょ、抱きつかないでよ、恥ずかしい……」


 もしもし、メリーさんか?

 今日は美味いもん買って帰るわ。









ゆめあくむりょうてにはな



 良い夢を見た。

 どんな夢か?

 そりゃ言えねえ。

 何故?

 そりゃ、まあ赤裸々に表現したら年齢を確認しなきゃならないからな。

 うん、要するにとてもエロい夢で。

 金髪のエロい美人といざ本番、の瞬間、目が覚めた。


「もったいねぇ!」

「ひゃあっ!!」


 ひゃあ?

 むう。


「お前、何勝手に人の夢消してんだよ」

「いや、だって……」


 ベッドのすぐ横に居たのは愛らしい、黄色い髪の少女だ。


「あんな夢はだめっ」

「あんな夢って……、悪夢じゃねーよ」


 その返事は、別のところから帰ってきた。

 妖艶な金髪美人。


「そうよね? いい夢、だったわよね? 私との愛の営みを邪魔しないで欲しいわね」

「夢の中でしか大胆になれないくせに」

「うっ……、うるさい。むー……、そんなことないもん!」

「いや、ってか夢の続きを――」

「私意外との夢なんてやだ! そんなの、私にとっての悪夢だもん」

「……そうよね…、いい加減…、夢を卒業するのも――、いや、でも……」

「すまん、もう寝かせてくれ」


 はたして、獏とサキュバスが同居しているのもどうかと思う。







なまくびおんな



「あ、ちょ、おま」

「これ、持ってください」

「あ、待てよ」


 俺の制止も聞かず彼女は俺を後ろから抱き締めた。


「おまえ、何するんだよ」


 俺は、抱えてるとあるものを見つめて、言う。

 すると、声は前から聞こえた。


「素敵ね。後から抱きしめてもあなたの顔が見える」


 そうだな。


「だが、生首抱える身にもなってくれ」

「別に気にしてないんでしょう? さあ、キスでもなんでもどうぞ」


 俺は、愛しい生首を眼前に持ち上げた。

 彼女は所謂、デュラハンだ。










へやのなか




「おーい。またこんなに散らかして」


 俺はいつものようにこの部屋の扉を開けた。


「あ、秋峰……」


 相変わらず、すごい部屋だ。

 本、本、本。

 本しかない。

 本の山ができるほどの量。

 そして、いつも通りの長い髪は、目にかかるほど。


「全く、相変わらずだな。髪もこんなボサボサにして。こんなこったろうと思って風呂沸かしといたから入っとけ」


 すると、彼女はふるふると首を振る。


「お風呂嫌い」

「うるせー、入れ。お前な、そんなに髪伸ばしてるから風呂入るのがめんどくせーんだよ」


 それでも動こうとしない彼女に、俺は溜息を吐いて続けた。


「まったく。ちゃんと入れよ? 風呂入ったら出かけるからな」


 その瞬間、少し表情が変わる。


「え? うん……、入ってくる」


 いつもこうだ。

 どうやら、出不精なくせに、こいつは散歩が好きなのだ。

 でも、一人じゃいかないという困った類の。

 おかげ様で、俺は頻繁に彼女の家に入ってはこの引きこもりが本当に引きこもりにならないように外に引っ張っていってるわけである。

 最初は嫌われたもんだったが、今ではそうでもない。


「てか……、たまには学校行けよな……」


 親御さんも心配してるっつに。

 だが、そんなこと露知らず、彼女は今呑気に風呂に入っている訳で。


「しばらく、暇だな……」






「あがった…、いこ?」

「へいへい」


 相も変わらず。

 今日も俺は彼女の手を引いて外に歩いている。










 その日、俺は彼女の家に呼ばれた。


「入るぞ?」

「うん……」


 何事かと俺は扉を開き、目を丸くした。


「お前……、その髪どうしたよ」


 床に散らばる髪。

 綺麗な瞳が覗く顔。


「…心中立て。お母さんから聞いた」


 彼女の髪は、いつもよりもずっと、短くなっていた。


「心中、だて?」

「うん。遊女が、客に思いを示すためにすること、だって」


 それ、は。


「その、勘違い、しても、いいのか?」


 ふるふると、いつものように彼女は首を振る。


「勘違いじゃ、ない」


 思わず、俺は彼女を抱きしめた。


「お前、また、髪伸ばしてくれよ」

「え?」

「そっちの方が似合ってる」


 言うと、彼女は赤くなりながら肯いてくれた。


「……うん」


 長い長い髪からのぞく、彼女の顔は、俺だけが知っていればいいと思う。

 彼女の名前は毛倡妓。






どうくつにいこう



 俺は今、洞窟に居る。

 何故、ねえ?

 うち、海が近いんだ。

 それで、なんとなく久しぶりに海で遊ぶことにして。

 なんとなく、崖に横穴を見つけたんだ。

 正直、わくわくしたね。

 俺も男だ。

 探検という言葉には心躍ったってしかたがない。

 まあ、わくわくして、帰って来て終わりなんだろうが。

 と、思っていたら。

 そうでも――、なかった。


「どうも」

「なによ」


 そこに居たのは少女だった。

 だけどただの少女じゃなかった。

 美少女と言える上半身に、魚のような下半身。

 そして、腰回りには六つの犬。

 この子、スキュラだ。


「えっと……、可愛いワンちゃんですね?」


 言うと、少女は憮然とした表情でこちらを見た。


「食べるわよ」

「嘘だ。あんまり好きじゃないくせに」

「なんでわかるのよ」

「そりゃ、食べるの大好きなら迷い込んだ時点でガブリ、違う?」


 彼女は黙り込んだ。

 そして。


「怖くないの?」


 その問いに、俺はにやりと笑って見せた。


「俺な、人魚に会ったことがあるんだ」


 昔々の話だけどな。

 ちょっとおぼれたとこを助けてもらった。


「別に、人魚さんにわんこの顔付いてるくらいじゃビビらねえ」

「じゃ、じゃあ、私の目を見て、ちゃんと言ってよ」

「……いや、無理」


 俺は彼女を直視できない。


「やっぱり、気持ち悪いんでしょ」

「ちげえよ、怖くねえけど……、なんつーか、エロってか、服着ろ!!」


 彼女の上半身には、布一つなかった。


◆◆◆◆◆◆


「ほいほいまた来たぞ」

「あなたも物好きね」

「んなこというなよ。ほれ、今日は饅頭」


 言いながら、俺はごつごつした地面に腰を降ろし、足を水に突っ込んだ。

 スキュラも、水面から顔を出している状況から、上半身を出して、こちらへ来る。


「ちょ、おま。濡れ透けっ……、これ着ろ!」


 彼女は、俺の渡したYシャツを着たままで、思い切り透けている。

 思わず、俺はTシャツを脱いで放った。


「? それより早く饅頭ちょうだい」

「待て!! それは服着た後!!」

「着てるじゃない」

「透けてんの!!」

「むー……。変態」

「変態じゃない」

「私みたいなのに欲情するのは変態くらい」


 いや、まあそうかも知れないけど、上半身は美少女の裸なわけで……。

 まあ、ともあれ。

 既に一週間ほど、俺はこの洞窟に通っていた。

 最初の方は、邪険にされていたが、最近はそうでもない。

 普通に会話もする。

 スキュラが、岩場に寝そべるように這いだした。


「ほい饅頭」


 俺が、スキュラの口元に饅頭を持って行く。

 スキュラが饅頭に口を付けた。


「やっぱり、こしあんの方が私は好きね」

「そうかい。じゃ、次もこしあんにしとく」

「そうして」


 そのようにして、他愛もない会話を織り交ぜて一日は進んでいく。


「もう夕方か。さて、帰るか」


 そう言って俺は立ち上がる。

 彼女は名残惜しそうに俺を見上げた。


「そう、饅頭は、おいしかったわよ」


 つれない態度。

 俺は、適当に返す。


「へいへい」

「また、来るわよね?」


 不意に寂しそうな声。

 反則だと思う。


「明日は鯛焼きだ」

「そう!」


 俺はこの楽しそうな声を聞くために、いつもここにきている。

 きっと、この背の向こうでは、彼女は笑顔なのだろう。

 だが、彼女の微笑みは、俺が去る時にだけ。

 いまだ、一回とて俺は彼女の笑顔を見たことはない。

 いつになったら――、彼女は俺に笑顔を見せてくれるのだろう。

















はしのしたものがたり







 俺の名前は布留崎 稜治。

 橋の下に住む、いわゆる、ホームレスってやつだ。

 残念ながら俺は、こないだ会社を首になり、寮から追い出され。

 無職ではどの物件も借りられず。

 かといって、この現状、蓄えを切り崩してホテルに泊まるのは気分的に無理がある。

 言うなれば俺は、今、人生のどん底にいるわけだ。

 ああ、最悪だ。

 このまま、橋の下で生を終えることとなるというのか。

 こないだまで俺は、絶望はしていなかった。

 どん底であればそれより下はありはしない。

 蓄えもある。

 もう少し、もう少しあればまた就職先が見つかる。

 そう思っていた時期が俺にもあった。

 否。

 否。

 就職難は甘くない。

 職もなく、貯金で食っていく日々。

 このままでは、緩やかに死んでいく。

 ただ、俺は橋の下に腰かけて、ゆっくりと日々を過ごしていた。

 緩やかな死、暇は人を殺すとはよく言ったものだ。

 人は働かなければ死ぬような社会ができているのだ。

 まさに退屈。

 だが、それから抜け出す気力がない。

 これは病だ。

 死に至る病。

 病院に行く金はない。

 それに病院だって治せはしまい。

 自分で治すほどの気力も体力も尽きはてた。

 はて、どうすればこの病気は治るのだろう。

 これは、不治の病だったか。

 であれば、俺は死ぬのであろう。

 会社員人生三年。

 二十五で死亡とは情けない人生だ。

 ああ、ああ。

 このままでは本当に死んでしまう。

 まずは、腹を満たそう。

 そう思って、俺はコンビニへと向かった。

 




◆◆◆◆◆◆





 ああ、寒い。

 冬の寒さが俺を刺す。

 俺の手にはコンビニの袋。

 中には肉まんが三つ。

 寒くて死んでしまいそうだ。

 温かい風呂に入りたい。

 もう、何日風呂に入ってないだろう。

 面接の前には必ず銭湯に行っていたのも今は昔。

 汚れるたびにクリーニングに出していたスーツも今ではバッグの奥底だ。

 薄汚い綿パンと、トレーナー。

 コート。

 ただ、それだけが今の俺の寒さを防ぐ道具。

 早く、早く戻ろう。

 橋の下なら温かい。

 俺は走りだした。

 そして、

 俺は妙な女に出会った。



 川の中に黒い長髪の美女が、立っていた。



 初めは、寒くないのかと思った。

 次に、綺麗だと思った。

 その次は、白い着物なんて珍しいと感じた。

 その女性が、口を開く。

 待て、と俺は目をこすった。

 美女に見えたのは何故か少女。

 大体、中学から高校位だろう。

 おかしい、さっき見えていた年齢と五つは違う。

 寒さのあまり幻覚でも見えたか。


「ねえ、貴方。この橋は好きですか?」


 この橋。

 俺は不意に上を見上げる。

 大きな、橋。

 俺みたいなすぐ切られてしまうようなのとは違う、かけがえのない橋。

 そして、少女に向かって、戸惑いながらも肯いた。

 そう、この橋は今の俺の生命線。

 この橋が俺の命を保ってくれている。

 この橋がなかったら、俺は雨に打たれ凍死していたはずだ。


「好き、だけど」


 すると、少女は満足げにうなずいた。


「そうですか」


 そう言って満足したように微笑む少女、彼女はそれきり何も言わずただにこにこと俺を見ていた。

 それに対して俺は、何故だか、言葉を発していた。


「こっち、来いよ。寒いだろ、肉まんあるから」


 きっとこの間までの俺なら、なんだこいつ、かわいそうな子だな、とばかりに無視したろうが、

 今の俺は、なんとなく、いや、正直に言おう。

 人に触れていたかったのだ。

 長いこと感じられていない人の温もりを、思い出したかった。

 にこにこと微笑む少女に俺は、人の温もりを見出していたんだ。

 すると、少女はしばらく驚いたようにこちらを見つめていたが、すぐに笑みを戻し、こちらに歩み寄ってきた。


「ほら、足拭けよ」


 俺は、鞄からタオルを出して放った。


「ありがとう」


 川から出てきた少女が、タオルを受け取り、足を拭く。

 俺は、その少女が裸足だという事に更に驚きを覚えるが、今更違和感は感じなかった。

 白い着物の冬に水遊びする少女だ。

 これくらい、というか白い着物からして、旧家の風習なのかも知れないと、納得した。

 いや、納得させた。

 色々な違和感も矛盾もあって尚。

 橋の下で無職な俺と比べたならば。

 きっとこの少女の方が俺より数段ましであろう。

 そんな少女に、俺は手招きする。


「こっちきて座れよ」


 そこには、ブルーシートがある。

 せいぜい一平方メートルほどの俺の空間。

 その空間に俺は、初めて人を招き入れた。

 少女が、素直に青い地面に腰を降ろす。


「ほらよ」


 そんな少女に俺は一つ肉まんを手渡した。

 残る二つは俺のものだ。

 不公平だが、俺の金である。

 そも、二つでも足りないのだ。

 我慢してもらおう。

 そんなこんな、俺は肉まんにかぶりつく。

 少女も、俺に習ってかぶりついた。


「おいしい」


 そう言ってもう一度口を付ける少女に、俺は問う。


「初めてか?」

「はい」


 やっぱり。

 多分この子の家は古い仕来たりがある家なのだ。

 と、すればこんな寒い中白い和服で水浴びしてたのも納得がいく、のか?

 まあいい。

 ただ、俺は久しぶりに人と食べる食事を味わっていた。







 そして五分ほどの時が経ち。


「おいしかった、ありがとう。ごちそうさまでした」

「どういたしまして、おそまつさまでした」


 俺と少女は丁度肉まんを食べ終わる。


「ねえ、貴方、もう少しここに座ってていいでしょうか」


 俺は肯く。

 願ってもない話だ。

 ここは、暇で暇で仕方ない。

 そう言えば、今暇じゃない。

 そうか、これは延命措置。

 例え延命措置にしかならずとも、会話というものは退屈を緩和してくれる。


「そう言えば、名前は?」


 俺は少女に問う。

 教えてもらえるかどうかは知らないが、会話の出だしとしては十分だ。


「姫」

「性は?」


 少女は首を横に振る。


「言ったら笑われます」


 そう言って苦笑。


「笑わねえよ」


 すると、何かに耐えるように少女が言葉を紡ぐ。


「橋下」

「っぷ」


 姫、という少女が憮然とした表情でこちらを見る。

 いや、橋下とは。

 まんまじゃないか。


「っくく、いや、悪かった」

「お兄さんは?」

「え?」

「お兄さんは?」


 頬を膨らましながら姫が言う。

 俺は、笑いをどうにか堪え、言う。


「……布留崎 稜治」


 すると、少女は続けた。


「稜治は、いつもここにいますよね」

「お、おう」


 いきなりざっくりと痛いところを突かれてどもる俺に、さらに姫は追撃を掛けた。


「なぜ?」


 年下にまで、事細かに状況を語ることとなるとは思わなかった。

 否、年下だからこそ、大人なら察してくれるとこまで事細かに説明する必要があったのか。

 そんな俺の話を一通り聞いて、姫は俺を憐みの視線で見る。

 そんな目で見ないでくれ。


「稜治は、底辺なのですね」


 お兄さん怒るぞ?


「怒るぞ?」

「それは怒ってない人の台詞です」


 怒ってない人はそもそも怒るぞなんて言わない。

 と、追いかけようとしたが、不意に姫が寂しそうな顔をしたので、俺は声を出せなかった。


「じゃあ、稜治は、ずっとここにいるんですね」

「え? ああ、多分、そうなるな。死ぬまでは」


 死。

 就職をするまではすぐそこに転がる現実だ。

 が、既に俺に就職する気力などなくて。

 ただ、そんな俺に姫は楽しそうに笑っていた。


「じゃあ、もう寂しくないですね」

「は? お前、家は?」


 聞くと、姫はあっさりと否定した。


「ありませんよ? ここが私の家です」


 思わず俺は絶句した。

 この子もホームレス?

 世知辛いな、この世。


「そうかよ」


 思わずそれだけ相槌を打った俺に、姫は嬉しそうに告げた。


「はい。でも、稜治はずっとここにいるんでしょう? じゃあ、寂しくないです、稜治は私を裏切らない」


 まあ、そうだな、裏切りたくても裏切れん。

 だが、しかし。

 思えば、目の前にいる少女の方がずっと、俺よりきつい境遇なのではあるまいか?

 少女の年からして、普通の企業には就職できないからバイト。

 だが、住み込み寮付きのバイトなんてない。

 かといって住所不定じゃ雇ってくれない。

 そう思うと、まだ大丈夫な気もしてくる。

 ああ、駄目だ。

 これを言ったらいけない気がする。

 そうだ。

 明日から本気出す。




◆◆◆◆◆◆




 あっさりと、夜が訪れた。


「早く寝る。そんで明日からまた仕事探す」


 そう決めて、俺はシートの上に横になる、

 俺の何がいいというのか、俺に習って少女も寝ていた。

 まあ、姫も寂しいんだろう。

 俺の意識は、ゆっくりと沈んで行く。

 そして三十分ほど経つか経たないか。

 寒い、冷え込む。

 眠さで呆けながら心底そう思う。

 ……、何か、熱を…放つ物がある……。

 俺は、それを抱きしめて眠る。

 今日の夜は――、暖かかった。










「ああ、よく寝た。さて、行ってくっかな」


 俺は久しぶりに、やる気を出して、職を探すことにした。


「どこに行くんですか? 稜治」

「仕事探す。無理だとは思うけどな」

「無理なら、ここにいましょうよ。私と、お話しましょう」

「そうも言ってらんねーの。帰りに肉まん買ってきてやるから」


 すると、姫は考え込むようにして――。


「わかりました」

「現金だ」

「当然です」

「なにゆえに」

「対価があるのは」

「なんの対価?」

「私を抱きしめて寝た」

「まじですか」

「まじです」


 マジか、そんな記憶もないようで、ある。

 まあ、結局は肉まんを買ってくるのは規定事項なわけか。


「じゃ、行ってくる」

「いってらっしゃいませ」


 俺は橋の下を抜け出した。

 やはり寒い。











「ただいま」

「おかえりなさい」


 俺は普通に橋の下に戻ってきた。


「髪、濡れてる」

「銭湯行って来た」

「何故ですか?」

「明日、面接」

「頑張ってください、頑張らないでください?」

「どっち」

「残念ながら、受からないでくださいね」

「それは、困る」


 言いながら、俺は肉まんを手渡した。

 黙って姫はかぶりつく。

 微笑ましいね。


「さて、早く寝て、気合入れるか!」


 俺は早くも横になる。

 その日も、俺は姫を抱きしめていた。

















 そして。


「どうでした? 駄目でしたか? 駄目でした?」


 笑顔で聞いてくる姫に、俺は苦笑いで返す。


「その二択はねーよ」


 そう言って、久しぶりに袖を通したスーツを脱いだ。


「でも、まあまあかな」


 面接には言った。

 印象もなかなかよかったと思う。

 でも、目の前の少女は、嬉しそうには見えなかった。


「……どうしたよ」

「何でもありません」

「そっか、まあ、俺は今日も早く寝るよ。急かしたから、明日に電話来る」


 そう言って今日も。

 俺は姫を抱きしめて眠る。

 寒さは、いつの間にか感じなくなっていた。










◆◆◆◆◆◆





 あれから、三日ほど経った。

 不思議と暖かい、橋の下へと俺は向かう。


「俺、ついに就職できた」

「そう……。行くの、ですか……? 裏切らないって……、言ったのに」


 俺は、力強く肯く。

 橋の下。

 二十歳過ぎの男と少女の絵面。

 犯罪者の匂いがする。

 そんななか、悲しげに姫は問うた。


「貴方は、この橋が好きですか?」


 俺は、もう一度肯く。

 そして、言うんだ。

 前とは違う意味で。


「好きだ。前までは――、ただ、雨を避けるための場所だった。だけど、今は違う。ここは、れっきとした思い出の場所だ」


 橋の下の不思議な少女との出会いも拝めたしな。

 うん。

 ただ、俺は、この一週間にも満たないこの日々の中で。


「そう、ですか」


 彼女は泣きそうな顔で、笑った。

 そして、踵を返す。

 俺は、それを呼びとめる。


「待てよ。話は終わってない」


 俺は、この一週間にも満たない日々で、彼女の秘密に気がついた。


「なあ、もしよかったら。一緒に、住まないか?」

「え?」


 驚いて振り返る姫に、俺はきっと真っ赤な顔を見せたのだろう。

 格好悪い。

 だけど、これでいい、これくらいが丁度いい。


「でも、私、ここから、離れられないんです……」


 そう、わかってる、わかってるんだ。

 姫が人間じゃないことくらい。

 そんな姫に、俺はいたずらっぽく笑った。


「実はな? 祠、もう家に祭ってあるんだ」

「え?」


 驚愕の表情に、俺は笑みを深める。

 まるで悪戯が成功したかのように。


「別に、もう大体知ってる、第一、着物の女の子が一人橋の下なんて違和感あり過ぎ。色々調べたしな」


 白い着物。

 少女。

 家無し。

 橋下 姫。

 そりゃ、まあ、納得できない。

 それに、なんとなく人ならざる雰囲気も察していた。

 そも、橋の下にいる少女が噂の一つにもならんのがおかしい。

 まるで他には見えないようだし。

 それで、就職決まって、図書館のパソコンで、女、橋の下、で調べてみたら、とあるのものが引っ掛かった。

 結果、全部知った。


「その上で問う。一緒に住まないか?」


 そう、そうだ。

 いつの間にか体は暖かくなっていた。

 いつの間にか退屈は消えていた。


「姫がいないと、寒くて――、退屈なんだ」








◆◆◆◆◆◆







「稜治、早く起きないと会社遅刻です」

「おう……」

「ほら、スーツとワイシャツです」

「おう……」

「あさごはんです」

「おう……」


 結果、俺と姫は一緒の部屋に住んでいる。

 そして、部屋には小さな祠が立っていた。

 かき集めた知識をもとに、俺が作ったものだ。

 もう、そんなことはどうでもいいか。

 今はもう、退屈でも暇でもない。


「さて、行くか、姫」

「はい、いきましょうか、あなた」

「……、あなたってのは恥ずかしい。結婚もしてない」

「だけど、私以外とは結婚させません。私は嫉妬深いので、丑の刻参りしますよ」

「お前ならよく効きそうだ」

「おまえだなんて……、稜治もその気じゃないですか」

「そう言うお前じゃない。ただな?」

「ただ?」


 俺の携帯には、祠型のストラップが付いている。


「お前がいないと、寒くて、退屈なんだ。だから、お前以外とは真っ平御免」

「……」

「そこで照れるのか」


 今日もまた、俺はあの橋の上を渡り、出勤する。


「うふふ、この橋は、好きですか?」

「当然。暖かな、俺の思い出の場所だ」

「それは私が大好きだという事でいいんですね」

「構わねえよ」

「……あなたは、たまにすごいことを平気でいいますね…」

「自分で言っといて照れんなよ」


 橋下姫。

 彼女は、橋のたもとに住む橋の守護神、橋姫らしい。


 現在は、俺の部屋に住んでいる。














 あ、と。
 書き。








まぎゃくまさかはんたいたいぎ


誰もが考えたことある、よね?
皆大好きツンデレさん。



かわにながれたりながれなかったりするあれ

なんかこう、ノリと勢いで書いた。
後悔はしていない。



さいほうずきでかじのとくいなどうきょにん。


キキーモラ、家事が好き、裁縫が好きだけど下手。
って、どんな萌っ子。



くだんのけんですが

本来は牛に人間の顔なんですけどね。
ここから萌を見出す俺! もう……、手遅れです。



なぞかけなぞ

これは、西東社の、知っておきたい伝説の英雄とモンスターのスフィンクスの絵の可愛さが異常だったから思いついた。
暇なら探してみてください。ちなみに、このスフィンクス、メソポタミアとギリシャの混合。



ハローハローもしもし

メリーさんを、斜め上の方法で回避した男。
でも、その同居期間中に仲良くなっちゃった。




ゆめあくむりょうてにはな

こう、夢魔と夢喰いで三角関係という。
ただし夢魔なのに初心。



なまくびおんな

こっちは首なし騎士ではなく、死を知らせる妖精の方。
中々マニアックなプレイが……。


へやのなか

リクエストがあったので。
こう、髪長い、しかも結構以上にから、引きこもりを思いついた俺は負け組。
ちなみに心中立て、に関しては実際に大昔化物双紙において恋仲になった妖怪相手にしている、という話を聞いたことが。


どうくつにいこう

意外と、人魚さんにワンちゃんの顔が付いてると表現すると、かわいらしく聞こえると思うんだ。





はしのしたものがたり。


実を言うと、最後の段落でよかったのが、ここまで伸びた。
なんとなく、橋の下で始まる恋、というのを思い浮かべてこう言うキャスティング。









はいはいやらかしたやらかした。
何が言いたいのか。
妖怪萌え。
夜中のテンションである。
痛々しいことこの上ない。
判っている、わかっているが晒さざるを得ない。
ともかく。
妖怪ってかわいいよね。
ということを伝えたかった。
こう、テンプレ属性に飽きてきていても、これならちょっと面白いかも、と思う何かを作りたかった。
何がいいたのかわからないが、要するに。


後悔はしていない。


だれか、こんな感じでラブコメ作ってくれないかな。



ちなみに、これ、転生トラック書いてる途中に描いたらこっちの方が完成したという、テスト勉強の休憩が本職になっている法則。

ま、テストも終わった訳で、テンションが高かったんですよ。
きっと。


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