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No.8346の一覧
[0] 【一発ネタから一発ネタまで】何故RPGで村が無事なのか?【ファンタジー・オリジナル】[兄二](2011/02/11 22:45)
[1] 【一発ネタ】ニコぽ、ナデぽについて本気で考えていたら百八十度ひん曲った作品ができた。[兄二](2009/06/15 11:16)
[2] [ハイパーネタタイム]ローマ字系主人公とかORIKYARAについて本気んなって考えてみたら、すごいことになった。[兄二](2009/05/23 20:27)
[3] 【真・一発ネタ】ネギまオリ主ハーレムと思っていたらタカミチに告白されていた[兄二](2009/06/21 20:58)
[4] 【銃に込められた一発のネタ】ヒーローとか悪の組織に生きる変な人とか。[兄二](2011/02/06 22:37)
[5] 【一発どころじゃないけど一発にまとめたネタ】バケモノラプソディー[兄二](2009/06/20 23:39)
[6] 【激・一発ネタ】異世界転移だの転移の際のオリ主チートだの笑わせるぜぇっ! とか考えてたら俺の予想斜め上をいった。あと筋肉とか。[兄二](2011/02/06 22:38)
[7] 【撃・一発ネタ】俺が最強主人公だぜッ! と思ったらそうでもなかった。[兄二](2011/02/06 22:40)
[8] 【爆・一発ネタ】 なんか妙なものに憑依しました。[兄二](2011/02/06 22:41)
[9] 【絶・一発ネタ】女の子が俺の剣、なんて思っていた時期が僕にもありました。[兄二](2011/02/06 22:41)
[10] 【一発ネタ】ヒーローものだと言い張りたい。[兄二](2010/06/22 22:10)
[11] 【一発ネタ】放課後破壊神[兄二](2011/02/06 23:02)
[12] 【一発ネタ】何故RPGで村が無事なのか?[兄二](2011/02/12 00:51)
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[8346] [ハイパーネタタイム]ローマ字系主人公とかORIKYARAについて本気んなって考えてみたら、すごいことになった。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/23 20:27





一、イタイイタイプロローグ





 その世界には、最強の男がいた。

 その男の刃は、あらゆるものを切り裂き、すべての物を貫き、運命を断ち切って、

 因果すら…、断絶した。

 だが、だがしかし。

 彼はその力を使う代償として……。




 その男はある日、信じられない現実に直面する。

 黒いコートにスラックス、中折れ帽すら黒い。

 燦々と太陽が照らす中、倒錯しているとしか思えない男は、目の前の現実に立ち尽くしていた。


「なんだ……? これは…」


 そこにあったのは、歪みだった。

 空間が捻じれたようにな、とでも言えばいいだろうか。

 そこだけ、極限に熱で歪んだ空気が固まったようになっているのだ。

 ここは、東京。

 熱い、とは言っても有り得ない。

 ただ一点に歪みが存在するなど、作為の他に思いつかない。

 そう結論付けて、その男は、踵を返した。

 いや、返そうとした。


「な、に?」


 不意に、その歪みに男は吸い込まれる。

 不意打ちを食らった男は、大した抵抗もできないまま、歪みの向こうへ落ちてしまった。











[ハイパーネタタイム]ローマ字系主人公とかORIKYARAについて本気んなって考えてみたら、すごいことになった。









前置

ローマ字系主人公[ろーま-じけいしゅじんこう]


クロスものなどに見られる、原作を全くと言っていいほど無視した強さを見せる主人公のこと。
異常なまでに超人的なことが多く、クロス元、クロス先、どちらの原作派閥においても好き嫌いははっきり分かれる。
ローマ字ではないがU-1など多岐に渡る。
また、SHIROUなど、本来制限が多いはずのキャラはなぜかその制限が無視されるか、別世界の影響で制限が解除されたりする。
もしくはYOKOSHIMAにおける文殊の異常なまでの万能性など、少なくとも、原作以上のパワーアップを見せているものが多い。
だが、世界に設定を付けようが本人に設定を付けようが、せめてキャラの性格は保っておかないとただの別人と化してしまう。
そこまで来ると、非難が来ても文句はいえない、見てくれている人も嫌な人もいるのを承知で書き続ける必要がある。
説教が得意。
ただし的外れなことが多い。
需要はあるが、好き嫌いが激しいので気を使って描く必要がある。
もともとこういう側面を持つため、魅力的な部分がないと、どちらの原作ファンにも嫌われる結果となってしまう。
バランスの配慮に最も気を遣うため、初心者にはお勧めできない。



ORIKYARA[おりきゃら]

他作品とクロスする無茶に強い主人公。
結構壮絶な過去を持っていたりすることが多い。
あと、無駄にもてる。
取り扱いに注意しないと、蹂躙気味になるので、細心の注意を払う必要がある。
よっぽど面白く書く腕か、何か一貫して誇れる部分(他者が気圧されるほどの圧倒的なまでの情熱とか)がなければ手を出さない方が無難。



SEKKYOU[せっきょう]

いわゆる、説教なのだが、それが独りよがりであったり、空気を読めていなかったり、的外れであったりする場合こう呼ばれる。
もしくは、クロス先の主人公がゆっくり悟っていくはずのものをあっさり叩きつけたり、他の人の説教を奪っても呼ばれる場合がある。
主に、相手のことを考えていないことが多い。相手に悟ってほしいから言っているのではなく、納得できない事に自分の苛立ちをぶつけがち。
もしくは、主人公がその先の展開を知っていて、自分の情報をひけらかしたいだけだったりする。
説教するときは、こう呼ばれないために、説教される者の心情も考えてやる必要がある。











二、テンプレ異世界そしてTUEEEEEE





 その男は、ベッドの上で身を起こした。


「っ、どこだ…? ここ」


 思わず、呟く。

 あえて言葉にする意味もないが、なんとなく、声を出していたかった。

 そう思って適当に口に出しただけだったが、意外にも、その質問に答えが返ってきていた。


「ここは、私の家です。もっと広い意味なら――、アレリアの街です」


 男は、ぎょっとなって声の方へ視線を送る。


「君は……?」


 そこには、少女がいた。

 金の髪は長く、腰でまとめられており、眼は碧かった。

 そんな少女が、まるで中世のような服装で、男に話しかけている。


「私ですか? 私はエルです。貴方は?」


 聞かれて、男は口を開いた。


「俺は轉法輪 良方っていうんだけど……。ここは日本じゃないのかな?」


 聞くと、まず最初に少女は首をかしげる。


「テンポウリン、リョウホウ…? その、すいませんがどちらがお名前ですか?」

「ああ、良方だ」


 すると、少女は肯いて、良方の質問に答える。


「えと、ニホン、ですか…? それは、どの辺にある街でしょうか」


 良方は、そこまで遠い場所に来たのかとエルに気づかれぬよう溜息をついた。

 ただ、これまでも多くの非現実を経験した彼にとっては、大きなことではないのだが。

――大方、転移の装置にでも引っ掛かったんだろう。アメリカフランスイギリス、その他どこかはわからないけど、とっとと帰ろう。


「あー、と、国なんだけど、わかるかな?」


 すると、エルはバツが悪そうに良方を見る。


「ごめんなさい、無学なもので…」


 その様になんとなく罪悪感を覚えた良方は慌ててごまかした。


「いやいや、君のせいじゃない! そもそも、俺が意味不明の質問をしているんだから!!」


 だが、少女の言葉でここが日本じゃないことはわかった。


「じゃあ、この国の名前は?」

「アレエスト、ですけど?」


――どこだ、そこは。

 まったく良方の記憶にない名前だ。

 不意に、良方の脳裏にある考えが浮かびあがる。

 が、それを打ち消すように良方は頭を振った。


「すまないが、外を見ていいか?」

「あ、はい」


 言って、良方はベッドから立ち上がる。

 と、そこで、自分の着ていたコートが脱がされていることに気付く。

 当然ではあるが、帽子も。

 おかげで、良方の上半身が露わになっている。

 彼は、置いてあったコートを羽織り、中折れ帽をかぶると、窓から外を見る。


「どこだ…、ここは」


 そこはまさに、中世並の街並だった。

 とはいっても、良方は中世を見たわけではないので推測であるが。


「それで、俺は、君の家の前で倒れてたって落ちかな?」


 少女は肯く。


「はい」


――なんてこったい。

 良方は、自分の考えが正しいことに気付く。

 気づいてしまった。

 ここは、異世界であると。






 轉法輪 良方は普通の日本人の外見をしている。

 黒い短髪に切れ長の黒い目。

 だが。

 目の前にいる彼らはどうだろう。

 赤い髪に緑の髪、青もいれば紫もいる。

 更に、だというのに喋っているはずの日本語が、相手の言語で聞き取れる。

 有り得ない、超常だ。

――ああ、俺の世界にこんな国は無いよな…。

 あの後、基本として地図も見せてもらった。

 そして、許可をもらって外に出てみれば、この有様だ。

 良方は本当に異世界に来てしまったことを――、理解した。

 ただ、一番衝撃的だったのは、あっさりエルに異世界人だということを信じられてしまったことだろう。

 この世界には――、魔法がある。

 ただその一言で片づけられた。

 転移魔法の亜種を食らえば別世から呼び寄せられたっておかしくはない。

 確かに、まだ開発されてはいない魔法だが、理論的にはできるから、何らかの事故であってもおかしくはない。

 だそうだ。

 魔法、その言葉に良方は唖然とし、結局、信じられぬままここにいる。

 だが。

 現実逃避の散歩で、いきなり現実を叩きつけられてしまった。


「……、はあ…」


――戻ろうか…。

 ちなみに、エルにまさかの滞在許可をもらってしまった。

 懐の広い人柄である。

 と、その時だった。

 不意の、爆音。


「なんだっ!?」


 思わず振り向いた先。

 そこに居たのは、拳から煙を立ち昇らせる長身の男と――、

 尻もちをついた、茶髪の長い髪の少女だった。


「悪いな、これも――、仕事なんだよ。許してもらおうたあ、思っちゃいねえが」


 言って、男が拳を振り上げた。

 その男の手に、何かが、収束して行く。

 少女は、一人、呟いた。


「ここで――、終わりなのっ……!?」


 そして拳が、

 振り下ろされた。

 ただの、地面に。


「……あんた…?」


 少女が、良方の顔を見上げる。


「邪魔、するってのか? 一般人はできるだけ巻き込みたくねえんだ。その手、離してもらえるか?」


 男が言った。

 そう、彼は今、少女の腕を引いて男の拳を強引に避けさせていた。

 そのまま彼は男を睨みつける。


「手は離すが――、この子を好きにさせるつもりはない」


 すると、感心したように男が目を細めた。


「そう、か…。わりいな、できるだけ、お前は生き残れるように注意して戦ってやる…」


 そう寂しげに言って、男は拳を振り上げた。

 対して、驚愕の表情で少女は良方を見つめる。


「あんた、何で知りもしない私に――」


 その言葉を、良方は途中で遮った。


「ま、とりあえずは殺されそうな方と女の子の味方をする。迷ったら、弱いほうの味方ってなっ!!」


 良方が地を駆けた。


「速いな…」


 男が、目を丸くして呟く。

 良方はそれに答えずに、拳を放った。


「だが、俺の敵じゃ……、ない」


 だが、一撃目が、避けられる。

 首を軽く動かすだけで。

 そして、そこに男の蹴りが迫る。

 良方は左腕を体の側面に回して、左脇腹をガード。


「ぐっ!」


 その腕から伝わる衝撃に、良方は痛感する。

――こいつ、強い…。


「やっぱり…、これじゃ勝てないか」


 良方は口の中だけで呟いた。

 対し、男は何も言わずに拳を突き出す。

 それを、良方は屈んで避ける。

 回避後、良方は、反撃することなく、呟いた。


「そちらがその気なら、こちらも刃を抜く」


 男の動きが止まる。


「刃? 見せてみろ」


 分かっていたが、紳士的な男だった。

 侮りではなく、悔いを残させぬための間。


「あんまり、見せたくはないんだけどね」


 男は、わざわざ攻撃の手を止めて見せた。

 対し、良方は悠然と構えて、呟いた。


「其は全斬る真紅の刃」


 男が、怪訝な顔をした。

 魔法か?

 そう呟いて、拳に力を集め始める。


「其は天突く赤き槍」


 良方の周囲に、大気が集まっていた。


「其は運命切り裂く赤い炎」


 その世界には、最強の男がいた。

 その男の刃は、あらゆるものを切り裂き、すべての物を貫き、運命を断ち切って、

 因果すら…、断絶した。


「其は因果断絶する漢の刃ッ!!」


 良方が、コートを掴み、前方に叩きつける。

 コートが、良方の体を隠し、

 そしてそのコートが地面にすべて着いたとき。

 そこには、









 そこには――。





 中折れ帽を被った褌一丁の男が仁王立ちしていた。







 だが、だがしかし。

 彼はその力を使う代償として――、



 社会的死を迎える。






「行くぞ」


 呆気に取られ、動けないでいる男に、良方は駆ける。

 その瞬間。

 まるで生きているかのように、

 褌が、動いた。

 燃えるような赤い軌跡。

 数十メートルにもなる長い褌。

 そして――。

 その街は、空間ごと断絶した。


「なっ!!」


 アレリアの街に深く刻まれた亀裂。

 そして、不自然に歪んだ空気。


「次はあてに行く。構えろ」


 次の瞬間、ふたたび褌が煌めいた。

 赤い軌跡が、両断した亀裂を、交差するように、斬る。

 男の顔が、また驚愕に染まる。


「……ありえねぇ…」


 街を深く切断していたはずの亀裂が、綺麗になくなっていたのだから。


「我が刃に、切れぬものは無い。破壊された現実を切る程度、造作もないよ」


 言いながら、良方はちらと少女を見た。

 彼女もまた、驚愕しながら、良方を見ている。

 そして、騒ぎを聞きつけ現れた街の人々が、良方を見ながらざわめいていた。

 …な、なにあれ。……え? 変態?


「それじゃ、行くぞ」


 異常な速さで疾駆する良方。

 その眼には、涙が溢れていた。





 結果から言おう。

 良方は、男に勝った。

 男の爆発する拳の爆発を切り裂き。


「なっ、爆発を切る?」

「言っただろ? 斬れないものは無いって」

「ほんとに出鱈目だな……、お前」


 そして、赤い布が、男の脳天から股下までを突き抜ける。

 その時、誰もが男は両断されていると思った。

 だが、両断されたのは――


「な、なんだこりゃ、戦う気が――、起きねえ?」

「もちろん」


 男の戦意だった。


「もう、戦えないだろうな。多分、一日二日くらいは」


 男は肯いた。


「そう、だな。もう拳を向ける気すら起きやしねえ。今日は帰る」


 そう言って、男は踵を返した。

 そして、街の人々がざわめく。

 実際はどうだったかしらないが、少なくとも良方にはこう聞こえた。

 ……ふんどし…ヘンタイ……なにあれ…きもーい……。

 褌一丁で悠然と立つ男は、目から、血の涙を流していた。






三、きっとあの後茶髪少女は褌ポしたに違いない。



 あの後。

 コートをひっつかんで良方は速攻逃げた。

 赤い閃光と化して逃げた。

 実をいうと、コートとスラックスしか着てないのはここに理由があった。

 脱ぎやすく、穿きやすい。

 そして、帽子は本来顔を隠すためのもの。

 実は戦闘の時、落としてしまって意味の一つもないのだが。

 とりあえず路地裏に駆け込んで、服を着て帽子を深くかぶり直す。


「はぁ……、これで表を歩けない」


 思えば、エルが見ていないことだけが救いか。

 本来、そんなことはわからないはずだが、褌一丁の時の良方の身体能力は異常なまでに引き上げられる。

 さらに、各感覚が一気に強化されるだけでなく、褌に伝わる風が送る情報を受け取った結果、エルが家にいることまで分かっていた。


「とりあえず、帰ろう。限りなくこっそりと、隠密に、蛇のごとく」





「待たせたな」


 多少遠回りになったが、なんとか良方は誰にも見られずエルの家に帰ることに成功した。


「遅かったですね」

「ま、ちょっと色々あってね」


 言いながら、良方はテーブルの椅子を引き、座る。


「でも、本当にいいのかな? 好きなだけ滞在してていいって」


 それに、エルは笑顔で肯いた。


「はい! お好きなだけ」


 身寄りのないエルは、この世界で孤独の身の良方に大層同情してくれた。

 年頃の少女と一つ屋根の下で――、とか言ってられる状況ではないのはわかっていた良方はそれに素直に感謝する。


「そっか、ありがとな」

「お気になさらず。それと、お部屋はさっき貴方が寝ていた場所でいいですか?」


 全然構わない、そう告げて、良方は二階の自分の部屋になる場所を見に行った。













 あれから――、

 一月もたった。

 いや、経ってしまった。

 帰る手がかりはまったくつかめず、良方はエルとの暮らしを続けている。

 そして、帰る気が次第に失せてきている自分に、良方は気付いた。

 そもそも、元の世界では、裏の世界の住人の挙句、めっぽう強い変態褌男として生きていたのだ。

 友人なんていなかったし、女性なんて戦って見せた瞬間にたちまち表情を変える。

 誰もが、自分を――、褌男として、畏怖する。

 だが、ここではそんなことはない。

 確かに、一度戦ってしまったが、高速戦闘をしたため、あまり良方の顔を見ていたものはいなかった。

 例えいても、


「なーにいってるんすか、そんなわけないでしょう?」


 と言ったらそれもそうかと納得した。

 白昼夢を見ていたと勘違いする者も少なくない。

 ただ、漠然として、良方は幸せだった。

 自分が一般人、轉法輪良方であることにが、幸せだった。

 エルとの暮らしもそうだ。

 朝起きて、挨拶して、一緒に朝食を食べて。

 その後一緒に工芸品を作ったりして、街に出て、売る。

 大したことは無い。

 生きて、働いて、寝る。

 大したことのない幸せが。

 前の世界ではなかった幸せがそこにはあった。


「おはようございます」

「おはよう」


 良方は、昔父の部屋だったという、自室から出て、一階に下りて、エルと挨拶を交わす。


「もう、朝ごはんできてますから」

「相変わらず手際がいいな…」


 言いながら、席に着く。

 エルも席に着いたのを確認すると、良方は両手を合わせた。


「いただきます」


 すると、不思議そうにエルが自分を見つめていることに気付く。


「どうか、したのか?」


 すると、すぐにエルは視線をそらした。


「あ、すいません」

「いや、別に怒ってるわけでもないんだけど」


 すると、エルはおずおずと話し始めた。


「もう、一か月になるんだな、って」

「そうだな」


 それは良方も考えていたことだ。

 肯く良方に、エルは続けた。


「それで、その一か月、一度も欠かさず言ってましたよね、その、イタダキマス」

「あー、そうだな」


 いただきますは、良方に染みついた習慣だった。

 挨拶もそうだ。

 基本的に一人の良方は、独り言でも声を発生しなければ、本当に何もしゃべらなくなってしまう。

 喋るとすれば何か荒事があったときだけ。

 故に、少々、虚しくなりつつも、寂しく思ったため毎回、言い続けていたのである。

 いただきます、ごちそうさま、おはよう、おやすみ、いってきます、ただいま。


「なんか、嬉しいんですよね。おはように返してくれる人がいるって――」


 良方は思う。

 この少女と自分は似ていると。

 片や、自分の能力がために周りに人がいなくなった男。

 片や、両親に先立たれ、全てにおいて行かれた少女。

 今では、その二人が寄り添うように寂しさを埋めている。

 そんななか、目の前の少女は、不意に不安な表情で聞いてきた。


「でも…、いつか、帰ってしまうんですよ、ね?」


 その言葉にまた一つ、帰る気が失せる。

 いや、違う。

――素直に考えるなら。

 もう帰る気など失せている。

 今良方を動かしているのは怠惰。

 なんとはなしに、元の世界だからというだけで戻ろうとしている。

 否、戻る気はないが、これを失えば、目標が失われる。

 生きる上での原点、これが、異世界において曖昧になっていた。

 だが。

 いい加減に答えを出さなければならない。

 目の前の少女にそんな顔をさせないために。


「なあ、俺って、いつまでもここにいていいのかな?」


 これは、確認行為。

 確かに、二週間くらい前までなら迷惑になるからと、放り出される漠然とした不安を原動力に帰る道を探していたが、今。

 今もう既に、迷惑ではない。

 少なくとも良方はそう思っている。

 自惚れではないはずだった。

 恋愛感情、であるかはわからない。

 良方はそこに敏感な方ではない。

 だが、互いに、愛を向けていた。

――いや、愛というと恥ずかしいけど、少なくとも、家族にはなれたんじゃないか…?

 そう思う。

 自分ですらよく分かっていないが、この状況は、不自然なほどに自然で。

 手放しくたくない。

 そしてそれは。

 エルもそう思っている。

 そう、感じているのだ。

 それは、間違いではなかった。


「本当なら、こんなわがまま言っちゃいけないんでしょうけど……。でも、本当はいつまでも、いて欲しいです」


 だから、いつまでいても大丈夫ですよ。

 そう言って寂しげに笑う少女に。

 良方は宣言した。


「そこまで言うんなら。調子に乗って定住しようか」

「え?」


 驚いた表情のエルを見て、良方はたった一つ。

 決意した。


――この少女の寂しさを埋めていこう。










四、ついに物語は佳境へ、しかし褌。




 その日、祭りがあった。

 すべての職が休みとなる日、賑わう街を、良方はエルと二人で回っていた。


「あ、見てください! あそこでわたあめが売ってますよ?」

「一つ、買ってくか」


 言いながら、良方は店主の元へ歩きだし、わたあめを受け取り、現金を渡して帰ってきた。


「ほら」


 良方は、わたあめをエルに手渡す。


「あれ、いいんですか?」


 良方は肯く。


「あ、でも一口食わしてくれると嬉しいかな」


 そう言って良方が笑うと、エルは口を尖らせた。


「む、子供扱いしてません?」

「さて、ね」


 不意に良方は思う。

――妹、ってこんな感じなのか?

 妹どころか、恋人すらいなかった良方には判断がつかないが。

 だが、それで尚、楽しいことだけはわかる。

 良方は自然に笑いながら、一緒に道を歩いて行った。










 祭りは佳境。

 まだまだこれから、という雰囲気だったが、俺達は一度家に帰ることにした。

 そもそも祭りは夜遅くまで続くのだ。

 息切れ、しないわけがない。

 という訳で、良方は近道の狭い路地をエルと歩いていた。

 だが、予想外の事件はそこで起こる。

 不意に、路地に面した家の壁が、崩れた。


「エルッ!」


 叫んで、良方はエルを抱きとめた。

 すんでのところで、エルは崩れたレンガを回避する。


「……、何が起こって――!!」


 まきあがる砂ぼこりに、一度、視界を潰され。

 もう一度見た先には。

 一月前に会った、茶髪の少女が尻もちをついていた。


「ここまでだなぁ? ミナ。内の組織の魔具なんて奪わなきゃこうはならなかったのになー?」


 だが、次に穴のあいた壁から出て来たのは違う男。

 そいつは、目的には真摯であったが、他には紳士的であった一月前の男とは全く違う、卑しい雰囲気の男だった。


「るっさいわね、あんたなんかに私を捕まえられると思ってんの!?」


 叫んで、そのミナという少女はやっと、こちらの存在に気づいた。


「あ、あんた…!?」


 その顔に、驚愕と――、

 期待が浮かぶ。

 きっと――、良方に助けを期待している。


「んー? 一般人かよー。とっとと行くならなにもしないぜぇー?」


 その言葉に――、良方は動けないでいた。

――逃げても、いい?

 無論、良心は助けろと言っていた。

 だが、ここで褌になれ?

 変態と化せ?

 エルの、

 前で?

 ……無理だった。

 それは、今の生活の終わりを意味する。

 今まで、良方の褌に耐えられた女性は零だったのだ。

 それでは、今までの生活が無に帰してしまう。

 だが、だからと言って、エルを逃がすわけにもいかない。

 本来なら、この逡巡の時間すら惜しい。

 三秒でもあれば、きっとこの男はミナという少女を殺せるのだ。

 逃げろ、と言ってそれから助けるでは遅い。

 それに、きっとエルは一人では逃げない。

 で、あるならば。

――逃げてしまおう。

 それが一番だった。

 ミナという少女など、名前すら今知ったばかりの少女だ。

 しかも、一月前にすでに命を救っている。

 義理がないどころか感謝される側にある。

 だから、逃げる。

 だが、そう思っていて尚。

 良方の足は動かなかった。

 ただ、心臓は早鐘を打ち。

 良方は荒い息を吐く。

 葛藤で心が揺らぎ、逃げようとする心を押さえつけた。

 特に、良方はお人好しという方ではない。

 別に、あの少女を助けたいわけではない。

 だが、彼女を見捨ててはならない。

 そこで、良方は、エルの身じろぎによって抱きしめたままのエルの存在に気付く。

 そして、良方は不意に、エルの瞳を見た。

 見た。

 見てしまった。

 逡巡は十秒に満たない。

 すべては、この少女の綺麗な瞳を見て、決めてしまった。

 良方は、歩き出した。

 笑っている、

 男の方へ。


「なんだ? やるってのか?」


 きっと、万人が愚かな行為と笑うだろう。

 きっと、億人が偽善と罵るだろう。

 だが。

 善悪正義。

 良方にとっては、それ以前の問題だった。

――果たしてここで逃げて。俺はエルに胸を張れるか?

 肉体の生死ではない。

 心の、生死。

――そして、エルに胸を張れなくなって、彼女を幸せにできるのか?

 例えば、大規模な戦闘において、全ての戦友を犠牲に生き残る。

 それは生きていると言えよう。

 肉体は。

――彼女は、優しい彼女が。見捨てたことに後悔を覚えて悪夢を見て、俺は、生きていられるのか?

 だが、心はどうだというのか。

 精神は死んでいるのと変わらなければ――。

――彼女を幸せにできない俺は…っ!! 生きていると言えるのか!?

 それは死んでいるのと変わらない。

 これは偽善ではない。

 ましてや、悪でも、善でも。

 正義ですらない。

 ただ、良方が良方として幸せになるための儀式。

 良方が良方として生きるための――、必要な行為。

 例えそれですべて失おうとも。

――エルが。悪夢に魘されないためなら。動くだけの血袋になり下がるくらいなら! くれてやるよッ。 俺じゃない誰かに。 エルを幸せにしてくれる誰かに……!

 だから、良方は歩くのをやめない。

 良方には――、結論が出ていた。

 ミナが死に、良方とエルが罪悪感に塗れて生きるのと。

 ミナが生き、良方はエルといられないが、未来、エルが幸せになるであろう道。

 どちらがいいかなど。

 一目瞭然。

――ああそうさ。エルなら、きっといい男が見つかる。彼女が不幸せなら、俺はきっと生きていられはしまい。だから――。

――俺はエルが不幸にならないなら、きっと一人でも生きていける。


「其は、不幸斬り裂く漢の刃ぁああああああッ!!」


 良方は、コートを捨てる。

 そして、真紅の刃が、鞘から抜き放たれた。


「りょ、リョウホウ、さん…?」


 恐る恐る聞く、エルに。

 良方は悲しげに笑いかけた。

 諦めが、ついた。

 そもそも、いつかはばれる話だった。

 隠しても。

 この力と良方は離せない。

 こんな世界なら、どこかで見せてしまうはずだったのだ。

――ああ、短い夢だった……。

 良方は走りだす。

 赤い布をなびかせて。

――だけど、いい夢だったろう?

 ただ、只管に。

 只管に。

――そうだな。もう、十分か、夢からは、覚めなきゃいけない。




   だから、行こう。




「おおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおッ!!」




 狭い路地に、赤い閃光が煌めいた。








五、なんというクライマックスシーン、ただし絵面は最悪。






 敵は地に伏し、良方はただ、悠然と立っている。


「意識を斬った。もうしばらくは目覚めない」


 だが。

 勝者の顔には、喜びはない。

 ただ、悲哀を目に宿し。


「さようならだ。いい夢を――、ありがとう」


 後ろを振り向くことなく。

 良方は歩く。

 いつものことだ。

 幸せだった生活から、昔に戻るだけ。

 これからは、旅をしながら帰る方法を探そう。

 たった一つの、この世界の生きる目標。

 良方は、長い褌をたなびかせながら。

 立ち去ろうとして。

 不意に抵抗を感じ、立ち止まる。


「……待って、ください…っ!!」


 エルは、なびいた褌の端を、ギュッと握りしめ。

 目からあふれ出す涙を、堪えながら。

 それを感じた良方は、振り向くことも。

 歩くことさえできなかった。

 そんな中。

 エルは言う。


「一緒にいるって……! 言ったじゃないですか…っ!!」


 ざくり、と心臓に突き刺さる言葉。


「ずっと…っ、私の家にいるって…! 言ってくれたじゃないですかっ!!」


 確かに、言った。

 そう、遠くないはずのやり取りなのに、懐かしく感じる。


「だが、見ただろ? 俺を。笑っちゃうよな……。ただの、変態じゃねえか……」


 自分の先ほどの姿を思い出させ、エルに諦めてもらおうとする。

 彼女は、変態に耐えられない。

 だが。

 エルは――、首をぶんぶんと横に振った。


「いいじゃないですかっ……! 褌だって…!! それでも!!」


 褌でも構わない。

 今まで掛けられてきたどの言葉より、その声は。

 良方の胸に深く突き刺さった。

 握りしめた、拳が震えた。


「……なあ…。俺…っ、褌でもっ、いいのかなぁ……?」


 エルに向き直る、良方。

 自然と、良方の目からは、一筋の涙が溢れていた。


「はいっ…! だから…、行かないでください…!!」

「ああ…!! どこにもいかない! 俺は、俺は君と――、幸せになりたい!!」


 二人の影が、一つに重なる。






 二人が抱きしめあって、たっぷり一分すぎて。


「まったく、お熱いことね。液体窒素が必要みたい」

「ぬわっ、っておわぁっ!!」

「へ? あ!?」


 二人は、皆に声をかけられ、飛び跳ねるように後ろに下がった。


「あー、あー、とミナっていうんだっけか?」


 いそいそと服を着用し始めた良方が聞く。

 ミナは肯いた。


「そーよ」


 そこで、会話が途切れた。

 それでも良方はなんとか会話を探そうとする。


「あー……、何で追われてたんだ?」


 すると、意外にもあっさり彼女は事情を話してくれた。

 彼女は、とある魔術組織で、とある魔具と呼ばれる、要はマジックアイテムを盗んだ結果追われていると。


「そんなに貴重なもん?」

「そう。この聖骸布は、あらゆるものを両断するの。その力は世界のバランスを崩すほど。でも、それでも、私はこれを持ってなきゃいけない」


 どうやら、胸に秘めた何かがあるらしい。

 聞くのは無粋か、と思っていたが、勝手に続けてくれた。


「妹がね、病気なのよ。絶対に治らないっていうわ。少しづつ、筋肉が消えていく、っていうの」

「……」


 この時、良方は自分の選択は間違っていなかったことを確認した。

 もしミナを見捨てたなら。

 その妹まで死んでいた。

 あらゆる選択の中で。

 これがベストだった。

 すると、今まで黙っていたエルが言う。


「一度、帰りましょう? 私達の家に。それで、ミナさんも一緒に夜のお祭りを見に行きませんか?」


 私達の家。

 良方は笑って――、肯いた。


「そうだな帰ろう、俺達の家に…!」


 孤独だった二人は寄り添って生きる。



 今日はその中に一人添えながら。



 なら、もう寂しくないだろう。











It'aト書き



またやっちまいました親分。
ついこないだオリ板に移転した兄二です。
不意に思いついたのでやっちまった。
後悔はしてない。
ただ、なんとなく笑って許されそうな無敵最強主人公が書きたかったんだ。
私としてはローマ字主人公も嫌いじゃないんですけどね。
じつは本来、ゼロの使い魔とかとクロス、とかどうかなとか思っていたけど、なんか作品に失礼なのでやめました。
賢明な判断です、褒めてください。
本当は2のふんどしで相手をフルボッコで終わるつもりが、一応伏線を回収して落ちを付けた方がいいかなー、とこんな長くなりました。
あと、例の如くORIKYARAとか半分関係なくなってます。
SEKKYOUも入れらんなかったし。
ただのネタの割に、無駄に濃いです。
あと、タカミチもの、書いた。
書いてしまった。
途中まで。
まだ途中なのに20、1キロバイト。
俺涙目。
さて、なんかもう、何故か二十六もの感想が来ていて作者もびっくりです。
本当は一人一人に感謝の返信、と行きたいのですが。
処理が限界です。
なので、ここで感謝を語らせてもらいます。
ありがとうございました。
あと、ここはなんか変なことを思いついたときにまた利用させていただきます。



後どうでもいいことつらつらと。


今回の話で何が伝えたかったのかというと、
ふんどし無双?


あと、この作品でしかできないたった一つの魅力は――、
褌ポ?
こう、褌一丁で仁王立ちする男らしさに胸がどきどき。
御嬢さん、それは病気だ。


あと、多分、聖骸布とやらはきっと褌。


良方君について。


大体二十歳前くらいの褌能力者。
服を着ていないときのみ、褌を自由に操ることができる。
伸び縮み硬化もできる。
あらゆるものを切り裂き、因果、概念、運命すら断絶する。
ちなみに、靴下、靴、帽子、手袋などは可。
ズボンとかは禁止。
基本的に、靴も靴下も脱いで中折れ帽だけ、というスタンスを取っている。
つか、靴下とかどれだけ変態。
中折れ帽だって変態だけどあれは顔を隠したいから。
ちなみに発動せずとも結構強い。


良方君の思考ルーチンについて
偽善者臭いけど、それ以前の問題で、それをしなければ自分が精神的に死を迎えるか、全く別のものに成り下がってしまうという事実から、自身の精神衛生のために他者を守る。
最近、斜に構えた偽悪とか偽善じゃないとかが人気な気もしますが、私としてはこれもありかな。
こう、根幹は完全自己中ながら結果的に人を救う結論に至る、という。
幸せになるために人を守るという思考。







そういや、最近電波をガンガン受信します。


浮かんで来たのが、



衝突したものを異次元に送るトラック、時空歪曲大型車両に乗る男と、そのAI美鈴の、大きな敵との戦い。



偶然出会った神にお願い事。神になりたい、ラブコメ世界に生きたい、金くれ。
すると、主人公は破壊神になっていた! しかも全く制御できん! そこに絡んでくる不良、不良逃げて!!


長い名前の勇者。ブレイク+890とか言っちゃう891単語の名前の勇者。名前だけで一話終了。
なんか厄い。


モンスターハンター。ウカムを倒しに行こうとしたら、うっかりピッケルで穴掘ってどつかれてそのまま壁を突き抜け現代へ。
ジャンプしてたら無敵だったり、熱線受けてもいてえで済む奴らに銃とか何言っちゃってんの?
っていう無双。でも、コスプレとか言われて警察に逮捕される。


108のオリ主能力者。百八の転生と異世界召喚を受け、現代に戻った時には彼の能力がすごいことに。
そして彼は戻ってくるたびに自分を異界に飛ばす道端で会う神、喋る剣、異国の姫、朝目覚めたら異世界だった系の絶対意志の異世界四天王に挑むのだった。


一つ、一つだけ言うなら、使えないよ。
全然使えないよこれ。





さて、長くなってきたのでそろそろ終了と行きますが。

そう言えば五月もそろそろ終わりですね。
色々ありました。
ゴールデンウィーク前に40度の熱を出して休みのほとんどをベッドの上で過ごしたりとか。


嘘です。











家に――、ベッドはありません。


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