『比翼連理』中国の歴史時代を代表する「ラブ・ストーリー」というべき『長恨歌』に出てくる、愛の誓いの言葉です。「天にあっては願わくは比翼の鳥となり、地にあっては願わくは連理の枝とならん」「比翼の鳥」とは、片方ずつの翼しか持たずつがいでしか飛べない鳥。「連理の枝」とは、2本の木の枝が互いにからみ合って1つながりのようになった様子。だたし『長恨歌』自体は唐時代なので、この時代には後世の事になります。--------------------------------------------------------------------------------††恋姫無双演義††講釈の26『蜀には五虎と竜鳳が集結し 比翼連理の王に誠をささぐ』体育館にこだまする竹刀と防具、あるいは竹刀同士がぶつかり合う音、凛としたしかし澄んだ声の気合。何時もの様な剣道部の稽古。それが何時もの様に終わった。「女を待たせるな」そう冷やかされつつ、“唯一の男子部員”は目的地に急いだ。「聖フランチェスカ学園」直営のカフェレストラン「黎明館」で、やっぱり、先に席についていたその少女。当然ながらフランチェスカの制服姿の「同級生」しかし、今日からは……・ ・ ・ ・ ・北郷一刀は「三国志」ファンである。しかし「三国」以外の、中国の歴史時代に全く興味が無かったわけでもなかった。ただし、その知識は「三国時代」に比べればかなり片寄っていたのは確かだ。例えば「長恨歌」の全文を暗唱など出来ない。だが「比翼連理」と言う意味だけは知っていた。あの「悪友」ほどではないにしろ、人並みに彼女と呼ぶ存在は欲しかったのだし、その程度のシャレた科白の勉強はしてみたかったのである。ただ、そこで目を付けたのが「比翼連理」だったりとか、その科白を実践する余裕が結局は剣道の練習で消えていたりしたのが、一刀らしかった。それでも、実践の機会がとうとう来た。筈だった。「桃香……」… … … … … ……夢だった。目覚めれば三国時代。桃香は劉備。そして、ここは蜀の成都。・ ・ ・ ・ ・この日、文官、武官ともそろった公式の会議の場で、1つの情報が開示された。長安方面の戦況。実のところ、この方面に曹魏陣営にとっての不穏の気配あり、というのが、外交上で蜀がつけ込む好機だった。だから、戦況についての情報も刻々と追っていたのだが、この方面から最新の報告が届けられた。涼州の馬超は行方不明となった。曹魏軍に捕らえられたとも、涼州に逃げ帰ったとも考えにくいと報告された。… … … … … 会議後、一刀は数人の同志だけを集めた。桃香、愛紗、鈴々、朱里、雛里、星、紫苑。その席で告げた。「後世、蜀の「五虎大将軍」と呼ばれる、5人の武将の名が伝説となる。関羽、張飛、趙雲、黄忠そして馬超」この「五虎大将」と「伏竜鳳雛」がそろっていることが、蜀の理想実現に必要だったと伝えられる。(そろっていれば、「北伐」も成功したと言われていたな)すっかり「天の御遣い」としては、信用されるようになっていたから、馬超を仲間にする事自体は問題とはならなかった。しかし、馬超はどこへ行った?長安から北西の涼州へ逃げられたとは考えにくい。東を勢力圏にしている曹魏陣営に捕らえられたと言う情報も無い。では南は……「長安から南の延長上にはこの蜀がありますが、その間は」中国でも、ものの例えに使われるほどの険しい山岳地帯。その山中をさ迷っているのか。「あるいは」その山岳地帯で、いくらかでも開けているのは漢中盆地だが、そこは「五斗米道」の独立勢力になっている。「そこに逃げ込んでいるかもしれません」――― ――― ――― 「なぜ、それがしを助けました」「惜しいからよ」華琳は、当然のように、翡玉に答えていた。「それがしが、孟起どのの行方を知れば、その時は貴女を裏切るとも疑いませんか」「それぐらいでなければ、惜しくないわね。わざわざ華佗を探したりしないわ」・ ・ ・ ・ ・「華佗先生。ありがとうございました」「医者がケガ人を治療するのは当たり前です」「先生」曹仲徳は、華佗を接待していたが、その途中で人払いした。「先生はあの北郷一刀が言っている「天の国」から、来たのではありませんか?」安心してください。俺もです。その証拠に、「西遊記」も「ドラゴンボール」も知っています。華佗も信用した。数分ほどは、懐かしい話題を楽しんだが、「先生も「天の国」から来たのなら、漢中や「五斗米道」がどうなったかは知っていますね」ついにそう切り出した。「姉もそれを変えるつもりはありません。ただし、その後の蜀の横取りは別ですが」華佗は、あくまでも医者でいたかった。「天のお告げ」で歴史に介入するつもりは無い。しかし「五斗米道」の弾圧は避けたい。それで歴史の改変にもならないなら……「僕に教団の上層部を説得しろというのかい」「メッセージを届けてくれればよろしいのです。魏には優秀な外交官が何人もいます」それに、仲徳としては「天の御遣い」だから、積極的になりにくい理由があった。「五斗米道」を降伏させた後の漢中争奪戦は、決して曹魏陣営に有利ではない。しかも「正史」での漢中争奪戦、その当時以上に蜀が充実しているのと反対に、まだ、魏も呉も「当時」の勢力までは到達していない。(慎重に様子見だな。漢中に関しては)――― ――― ――― 漢中の教団本部では、すでに大騒ぎになっていた。南の益州には蜀の国が出現。北の長安は曹魏陣営が確保した上に、涼州軍閥を撃退。もはや、漢中だけを、乱世の別天地にしては置けなくなった。その恐怖に直面していた。とりあえず、その場しのぎの外交手段だけは行動として決定した。そこへ、涼州軍閥の残党、馬超が逃げ込んで来た。いや、教団側の主観からは飛び込んで来た。当然、馬超は、兵を貸せ、曹操と戦えと主張する。おとなしく、かくまわれようとは思ってもみないようだ。いかにも宗教団体らしい、教団の代表たちを困惑させていた。… … … … … そこへ、南から都合のいい密使がやって来た。馬超の亡命は蜀で受け入れる。曹魏には、馬超など来なかった、と回答すればいい。――― ――― ――― 漢中盆地から荊州の平原に流れくだり、長江へと合流する漢水。「ぶる」「ぶろろ」なぜか、その漢水を下る船中から、数頭の馬のいななきが漏れていた。「静かにして。黄鵬、紫燕、麒麟」なだめているのは、馬岱(蒲公英)である。流石は騎馬の民というべきか、あの乱戦から馬超(翠)が連れ出せたのは妹1人だったが、愛馬は何頭か持ち出していた。その姉妹と馬数頭を隠した船は、何も無く漢水を下って行った。途中、荊州の州都である襄陽を通過したが、なぜか臨検は形式だけだった。とはいえ、姉妹に加えて馬数頭が、決して広いとはいえない船内に閉じ込められていては快適ともいえない。しかし、それも長江の南に連なる洞庭湖までだった。洞庭湖の岸は、益州州牧が郡太守を代行する荊州南部。もう、追っ手を恐れる事も無しに乗り慣れた馬で進んで行けた。――― ――― ――― 「しばらく「五斗米道」は時間稼ぎをするつもりです」「曹魏に降伏されては、蜀側もあわてる必要があるかも知れませんが、それまでは大丈夫でしょう」「今は、益州と荊州の現在の拠点を、しっかりと固める事が優先です」蜀の軍師たちは当面の結論をそう出した。無論、情報と状勢は油断無く見守るという前提で。かくて、漢中争奪戦は先送りとなった。――― ――― ――― 曹魏の側でも、漢中は当面、蜀との中立地帯ないしは「クッション」になってくれた方が都合がいいという結論になった。呂布、袁術そして袁紹と、蜀より差し迫った脅威となる陣営がいくつもある。それに、あの華佗を含めた医療集団は、存続してくれた方が都合もいい。――― ――― ――― 洞庭湖で上陸してからの旅は、順調いや、快適だった。行く先々で、すっかり手配済みで、順調に成都に近付いていった。… … … … … 成都に到着した翠と蒲公英は、そのまま主君の前に連れて行かれた。そしてその場で、古参の武将4名と翠が同格とされた。喜ぶとか名誉に思う前に、先ず唖然として、そして仕官を承知してしまった。居並ぶ部下たちからもほとんど異論は出ない。大甘のようで大した統率力といえた。ただ焔耶だけは、焼き餅焼きも露骨な態度に出てしまい、蒲公英にお尻から蹴られていたが、笑って終わりにされてしまった。――― ――― ――― 中はともかく、蜀を放置しては置けない。曹魏陣営の結論自体は明白だった。直接兵を出す余裕が無いならば、戦わずして謀りごとを攻める。そして、その好機もすぐに来た。――― ――― ――― 108人もそろっているわけではない。だが、後世を知る「天の御遣い」には「水滸伝」のクライマックスを連想させる儀式。結集した、蜀の武将、軍師がその結束を、主君への忠誠という形で誓約する。「五虎大将軍」関羽こと愛紗、張飛こと鈴々、趙雲こと星、黄忠こと紫苑、馬超こと翠。「伏竜鳳雛」いや、いまや飛翔する竜鳳である諸葛亮こと朱里、鳳統こと雛里。五虎と竜鳳だけではない。厳顔こと桔梗、魏延こと焔耶、馬岱こと蒲公英etc.……。璃々まで末席で控えていた。誓いを受ける主君は2人。しかし、本人である劉備こと桃香と「天の御遣い」こと北郷一刀にはそれは問題ではない。どこまでも、2人一緒に同志たちの先頭に立つことを含め、ともに進むことを天地に誓う。そんな主君たちを、同志たちも祝福してくれている。そんな同志たちの見守る中で、桃香と一刀は誓いの言霊(ことだま)を交換する。「「天にあっては願わくは比翼の鳥となり、地にあっては願わくは連理の枝とならん」」--------------------------------------------------------------------------------無謀と思いつつ、書き始めて、やっとここまでたどり着きました。第1部・第2部・・・といった構成なら、ここまでが第1部のようです。それでは続きは次回の講釈で。次回は講釈の27『虚々実々』~人を致(いた)して人に致されず~の予定です。