マシュー・バニングスの日常 第四十五話□×年□月○日 さーてそろそろ中学も卒業だなあ。 俺は適性試験の成績・父さんの影響力の範囲などから結局、USのCal大学に進学することが出来そうな見込みだ。ただしかなり強引に押し込んでくれたので、特に一年目二年目は成績優秀でなければクビくらいの覚悟でいけと言われてしまった。 アメリカは日本とは違いあからさまな富裕層、セレブ階級というのがいる。そういうセレブ層は、好きな大学への入学を、事実上、カネの力で買えたりする。なにせ向こうは入学は簡単、卒業が難しいという制度だ。俺も実質それに近い形で、無理やり入れてもらったのだ。だが、だからこそ優秀な成績を取らねばならないんだけどね。 俺がUSの大学に進むと決めたことで姉ちゃんはかなり迷ったが・・・ 結局は、姉ちゃんも既に大学レベルの学力を持っていたことは変わらない。一緒に来ることになった。同じ大学である。 姉ちゃんはギリまで日本で親友と過ごすか、将来のための本格的な勉強のため海をわたるべきか、悩んでいたのだが、俺が行くとなったので、結局は俺の方を選んでくれたのだ。決断したのが遅かったので、押し込むのは苦労したと父さんがぼやいてた。 俺と姉ちゃんのために父さんは、高級マンションのワンフロアを買い切り、警備システムとか防弾ガラスとかの特注工事を始めたとか。アメリカにおけるバニングス家は、そのくらい警戒して当然だそうで・・・そういう生活にも慣れなくてはいけないとのこと。 俺は週の4日はここで姉ちゃんと過ごし、3日はミッドで過ごす生活になると思う。 ミッドの病院も前と同じ程度の勤務は続けるつもりだしね。 月村さんも、友達がみんないなくなってしまうので海外留学することにしたそうだ。月村家はドイツと昔から縁があって、ドイツには屋敷も持っているらしい。近い将来、月村さんのお姉さん、忍さんと、高町のお兄さん、恭也さんが結婚する予定なので、月村さんは姉夫婦とドイツ在住となる可能性が高いとか。月村家は、バニングス家に規模では及ばないものの、工学系専門技術の高さで知られた企業集団を抱える財閥でもあり、今は信頼できる親戚の人がまとめてくれているが、将来的にはお姉さんと協力して月村さんもトップに立たなくてはならない立場とか・・・お姉さんは工学系技術が大好き、というレベルを超えて既にマッドエンジニアに近い人で、余りにも理系に偏りすぎてるので、妹の自分は、本当は理系のほうが得意だけど、経営学とか勉強しなくちゃいけないなあと言っていた。 高町は・・・なにせ俺が進学するというのを高町家のご両親も聞いていたので大変であった。大喧嘩、大騒動、あれを高町家では「第二次なのはの乱」と呼ぶ。第一次は入院のときだ。高校も行かないなんてどういうつもりだ、それでは全くツブシが効かない、前はマシュー君が上手く治してくれたけど、また同じように上手くいくなんて保証は無い、魔法が使えなくなったらただの中卒娘で、そんな考えなしのバカ娘は翠屋でも雇ってあげませんからね、大体マシュー君はミッドの病院も続けながら、アメリカの大学に入学するなんてことが出来ているのに、あんたはたかが高校に行くくらいのことがなぜ出来ないんだと・・・鬼の形相となった桃子さんの迫力は凄まじく・・・皆が震え上がったそうだ。 「第二次なのはの乱」は、中3の二学期の全てを使って激戦が続き・・・結局、高町が通信制で高卒資格をちゃんと取る、ということで決着がついた。ちゃんと普通の高校に通わせたかった桃子さん、通信制でも勉強にかなりの時間が制約されてしまうと決まった高町、双方ともに渋々とではあったが、何とか妥協案が成立した。 3年後には大学、せめて短大進学を巡って・・・「第三次なのはの乱」が起きるのではないかと関係者は戦々恐々としている。 高町がワガママでないなんて誰が言ったんだか・・・末っ子はワガママって定説が絶対的に正しいと皆思った。 フェイトさんは地球で出来た友達との別れを惜しみつつ・・・本格的に執務官としての仕事に打ち込み始めた。これからはフルタイムで勤務することになる。執務官は次元世界中、あらゆるところに派遣されて、あらゆる業務をこなすことが求められる激務であるのだが、フェイトさんは嬉々として仕事に打ち込んでいる。このへん高町と似ている。もうすぐリンディさんが前線の艦長職から退いて、後方の、もう少し時間が取れる職にうつるとかで、海鳴が気に入ったリンディさんは海鳴に拠点を構え、高町家などとのご近所づきあいを楽しみつつのんびり過ごすつもりのようだ。そういやクロノは結婚するとかしないとか・・・なんか怪しいらしい。今度機会があったら徹底的に問い詰めてやるとしよう。 八神は・・・海鳴の家を引き払ってしまった。かなり大きな家だったので、維持するだけで結構な金食い虫でもあったし。残しておきたいのだったら管理しておいてあげようかという誘いは、うちからも含めて複数あったようなのだが、未練を断ち切るかのようにスッパリと手放してしまった。 そしてミッドに本格的に移住し、教会のそばに一軒家を建てて、守護騎士たちと住んでいる。上級管理官であり特別捜査官である八神の仕事っぷりは大したもので、バリバリ仕事をこなしてメキメキ頭角を現し、出世街道まっしぐら、もうすぐ佐官になるんでは無いかという勢いだ。それでも互いに都合がついて週末に会えるときは、いつでも手料理を振舞ってくれる。しかし、やはり何か無理してるんではないかと心配になる。生きることに焦っているというか、何かに追い立てられているというか・・・だが今の俺には踏み込むことは出来なかった。俺は俺で体を治さないことには始まらないんだよな・・・何もかも・・・ そして俺たちは中学を卒業し、本格的にそれぞれの道へと旅立った。 小学校からずっと一緒だったからな・・・女性陣の涙に、俺もつられそうになってしまった。 これからは・・・これまでみたいにいつでも会えるってものじゃなくなって、会おうと思って頑張らなくては会えない距離に・・・お互いになってしまうわけだな。 これまでも大概、色々あったけど・・・今度こそは平穏な日常が続いて欲しいものである・・・ ☆ ☆ ☆以下の部分は番外編みたいなもので本作のメインストーリーとは関係ないものとみなして頂けると幸いでございます(おまけ) 並行世界観測機 通常とは異なる、とある不思議空間にて・・・「と、いうわけでロストロギア『並行世界観測機』の時間がやってまいりました。司会は私ユーノ・スクライアでお送り致します。」「どういうわけかさっぱりわからんぞユーノ。」「マシュー! 細かいことは気にしなくていいんだよ! どうも本編では僕には良いことなさそうなんだから少しくらい僕に時間をくれてもいいじゃないか!」「いや、いいけどさ・・・」「この機械はずばり、並行世界を観測できるものなんだ!」「そのまんまだな・・・それで、なんでまたそんなものを持ち出してんだよ?」「本編ではどうも僕には良いことがない・・・」「うむ、原作から二次から当作品から、ユーノが良い目に会う確率はかなり低いと言わざるを得ないな。」「良い目に会うのが決まってるオリシュのマシューには僕の気持ちなんて分からないんだ!」「メタな話を振って悪かった・・・本題をすすめてくれ。」「でもそんな僕でも! きっと可能性世界のどこかでは! 無事になのはとゴールインできてるとか! すでに子供もいるとか!もしかしてもしかしたらハーレム系ssの主人公になってるとか! そういう可能性もあるかもしれない!」「最後の問題発言はスルーしてやろう・・・つまりそういうあらゆる可能性をもった並行世界全体を観測できるんだな。」「そういうことさ。概算だけど確率まで出せるんだ。」「しかし上手くいく場合ってのを見ても・・・意味あんの?」「上手くいく確率が分かるだけでも大きい! また上手くいった場合は僕はどういう行動をしてるのか? どこでフラグを立て、どこで回収すれば良いのか? 分析すれば答えが分かるかもしれない!」「そうかもな~まあどうでもいいけど~」「ククク・・・」「なんだいきなり不気味に笑って。」「そんなことを言っていられるのも今のうちだよ・・・まずは衝撃の調査結果を教えてあげよう・・・」「なんだよ?」「ランダムにサンプリングした標本世界、実に1万! その結果なんだけどさ・・・」「?」「マシュー・バニングスがこの年まで生きている確率・・・0.1%以下!」「ぶほっ!」「正確に言うとね・・・アリサ・バニングスは99%以上の確率で存在してるんだけど同時に兄弟なんて存在しない。でも調べた世界の一つで、幼い頃に双子の弟が死んだって記憶のある場合があったんだ。それで念のために母胎の受胎発生時から調査してみると、なんと母親のお腹の中ではほぼ100%、君たちは双子なんだよね。ところが母胎内で成長する過程で・・・発生のごく初期、アリサさんにはなんの悪影響も及ばないような時期に君になるはずの受精卵は溶けて消えてしまう・・・その確率は実に90%を超えている。10%の確率を乗り越えて生き延びても、双子として生きて生まれてくる段階に至るまででさらに確率は激減し・・・最終的に今の年齢までで考えれば生き延びる確率は実に0.07%程度・・・」「ぬぬぬ・・・俺って生きてるのが奇跡だと我ながら思ってたが・・・」「調査した世界は1万だから、そのうち7つしか『生きてる場合』が存在しなかったわけだね! すごいね!」「・・・妙に明るいなオマイ・・・」「なに大丈夫! つまるとこ、君が生きてる場合の世界・・・まあ1万に7つしかないような世界だけど・・・まあとにかくそういう場合の世界の方が、諸事につけ良い方向に進んでるみたいではあるよ?」「というと?」「なのはが大けがしたことあったろ? あのときもしマシューがいなければ、どうもなのはは一生後遺症が残るような状態になって、しかもそれを隠しながら強引に仕事を続けるみたいなんだよ。君のいるこの世界では完全回復+魔力10%UPなんてすごいことになったけど、これこそ本当に1万に7つ以下の奇跡的な超回復みたいだよ。」「ほほ~。つまり高町は今の俺たちの世界では・・・ありえねーくらい頑丈になってるわけだな・・・よし、これからもあいつには手加減する必要がないってことだな。」「まあ後遺症っていっても軽いコアの痛みとか? 魔力は微減するみたいだけど大したことは無いようだし・・・」「魔導師を続けられるんだけど、多分現役期間が短くなる程度ってところか?」「だね。あとは、アリサさんについてだけど、マシューがいない場合、まあほとんど100%近い確率なんだけど・・・とにかくその場合は、アリサさんは20%程度の確率で、不慮の事故や事件に巻き込まれて亡くなるみたいなんだな・・・ってマシュー、これはあくまで計算上の話なんだから、そんな怖い顔しないでよ・・・」「どういうことだ?」「うーん、おそらくだけどね・・・マシューがいれば、いるだけで、アリサさんは確実にマシュー中心の思考方法、行動パターンをとるんだろうね。そうして常に弟のことを思うがために行動も慎重になるし無茶もあまりしなくなる。本来のアリサさんはもしも一人っ子なら、天衣無縫な性格に任せて結構暴走したり軽率な行動をとったりしてしまって・・・招かなくてもよい危険をわが身に招いてしまうってことがあるみたいだね。」「なるほど・・・姉ちゃんならやりそうだな・・・」「マシューっていう重石があることで、自然、アリサさんの行動も慎重になり・・・結果としてアリサさんは安全平穏に生きることができるみたいだね。」「そか・・・良かった。っておいユーノ、さっきから俺の話ばっかじゃねーか。お前の調べたいことはどうなったんだ?」「む。」「えーっと、そうだな、中3時点で、お前と高町が恋人同士って確率はどの程度なんだ?」「・・・」「意外とそうだな・・・俺は20%くらいはありえるんじゃないかと思うんだが?」「・・・並行世界の可能性ってのは本当に面白いよ! なんと1%程度の確率で、フェイトに実の兄弟がいたりしてね! ほかにもこれは確率0.01%とかの話だけど僕たちのしらない第3者みたいな人が僕たちにとって重要な人物として行動する場合ってのもあるみたいだね! 悪くなってしまう方の確率では、残念ながらPT事件の後始末が上手くいかずに犠牲者が増える場合ってのは、10%程度の確率であるみたいだね・・・闇の書事件が丸く収まる確率も実は半々程度・・・うまくいかずに地球ごと吹き飛ばされる場合ってのが5割もあるんだよ! 怖いね~」「まあそういうもんかもな。それで、お前と高町がうまくいく確率は?」「・・・」「もしかして俺の生存確率よりも低いとか?」「さあ、メタな話はこれくらいで終わろう! さ~て、来週の『並行世界観測機』は~♪」「おいマジかよ・・・0.01%以下とかそんなレベルなのか? 哀れな・・・」「ええい! まだ中3時点までしか調べてないから分からないんだよ未来は! きっと僕たちが上手くいくのはもう少し時間が経ってからなんだ! きっとそうなんだ!」「今後も継続調査すんのか?」「もちろんさ! 誰が何と言おうとするとも! 僕となのはのグッドエンド成立フラグを絶対に見つけてみせる!」「まあ頑張れや・・・」 またやるかは不明!!!(あとがき)・「並行世界観測機」は酔っぱらって勢いで書いた。後悔はしていない。・今後の推移は不明だが、なんとかstsに繋げようと模索中。・進路は独自路線。しかし原作でもなぜ士朗さん桃子さんはなのはの進路を認めたのだろうか・・・