マシュ・バニングスの日常 第十七話 目が覚めたのは数日後だ。 姉ちゃんが同じ部屋の別のベッドで寝ている。 ここはアースラの俺の個室で、船の個室というのは狭いのだが、そこに強引にベッドを持ち込んでるのはさすがである。 リミッターは、またちゃんとつけてくれてるな。 体調は、と。 あらま思ったよりひどいかな。胃と食道にキてるのは予想してたが・・・ 十二指腸、小腸、まんべんなくボロボロになってるかな。これは3日はまともにものが食えんな。 でもまあ心臓が止まるのに比べたらマシだし、俺的には全然平気である。 ギルさんも治してくれてるが、俺も一応やっとくか。手元のサウロンを・・・「あれ? サウロンがない・・・」「デバイスのことなら、探しても無いわよ。」 おっと。姉ちゃん起きてた。「なんでまた・・・治癒魔法を自分にかけないことには体調が・・・」「ねえマシュー。」 姉ちゃんは体を起こしてベッドに腰掛けた。俺をまっすぐに見つめる。「まずは、ごめんなさい。」 いきなり姉ちゃんが頭を下げた。天変地異の前触れか。「私が軽率だったわ。すずかは反対してたのに、なにか魔法絡みだってことも予想してたのに、強引に近づこうとした。」「う、うん。」「それで巻き込まれて自分だけでなく、すずかまで危険な目にあわせて・・・自分が情けないわ。」「まあ・・・不幸な事故だったというか・・・」 めったにない姉ちゃんのしおらしい表情に戸惑って、なんとか慰めようとしたのだが・・・ さすが姉ちゃん、必要なかったようだ。 すぐに姉ちゃんは表情を切り替えた。「まあ、それはそれよ。反省もしたし後悔もしたわ。魔法関係は対処できない、だから近づかない、それが正しい選択肢だと学習した。二度と同じ失敗はしないわ。だから、それはそれ。」「う、うん。」 姉ちゃんは立ち上がった。俺が半身を起こしてるベッドの傍に来て・・・ パンッ 俺の頬を叩いた。 もしかして初めてかな。叩かれたのは。「あんた、リミッター外したらどうなるか分かってたのに、あんなことやったそうね。」「いや、だって姉ちゃんが・・・それに大した負傷でも無いし・・・」「消化器系の内臓が! 全部ボロボロになって! それがたいしたことないの!?」 船医ギルさんに聞いたのか・・・ でもここは引けないなあ。「でもさ姉ちゃん。姉ちゃんが危なかったんだから、俺は後悔してない。」 それを聞くと姉ちゃんはボロボロと涙をこぼし・・・俺の頭を抱きしめた。「マシュー・・・お願い。これからは、自分の身が傷つく代わりに、何かできることがあったとしても・・・そんなことはしないで。」「それは、できればそうしたいけどさ・・・」「お願い。約束してマシュー。自分の身を傷つけて、何かをするなんてことはしないって・・・お願いよマシュー。」 結局の所、俺は姉ちゃんの言うことを聞いてしまうのである。「わかったよ姉ちゃん。約束する。自分の身を傷つけて、何かをしようとはしない。」 我が身を省みず突っ走り、自分自身をも傷つけても戦うとか、そういうのは確かに格好いいかもしれない。でもそういう生き方は、自分だけでなく、間違いなく、近くで心配してくれる人たちをも傷つける。 そういうことは絶対にしないと、姉ちゃんに約束した俺は、そういったヒーローには絶対になれない男になったが・・・ なんの後悔もしていない。 身近な人が悲しむような生き方が、正しいはずが無いのだ。「約束、したからね。」「ああ約束だ。」「確かにしたわよ?」「したってば。」「よし、それじゃあサウロンを返してあげるわ。」「あらま。そういう話だったのかよ。」「そうよ。文句ある?」「あーわかったよ。文句ないです。」「よろしい。」 姉ちゃんは大輪の花のような笑顔を見せてくれた。「・・・にしてもあんた。サウロンって指輪物語の悪役よね。魔王だったか冥王だったか。」「そだよ。かっこいいだろ。」「もっと正義の味方チックな名前は思いつかなかったわけ?」「なんだよーいいじゃないかー俺は気に入ってるんだよー」「ま、いいけどね・・・」 サウロンを取り戻して、自分に治癒魔法を施したところで、そういえば事件がどうなったか全然知らないことに気づいた。 サウロンは展開すれば2Mを超える杖になるが、展開しなくても胸くらいまであるステッキである。 サウロンを杖にして、姉ちゃんが支えようとするのを、いーからいーから、なにいってんのよつかまりなさいとか言い合いながら、とりあえず皆が集まってるらしい食堂に向かった。 食堂にいたのは、高町さん、フェイトさん、そして宿敵だった守護騎士の皆さん、さらに・・・「マーくん!」 八神が満面の笑みを見せた。「マーくんは止めい、しっかし久しぶりだな。」「なにいうとんねん。この前、会ったばかりやんか。」「この前って・・・あれ? 伝わったのか、あれ。」「そやで~。しっかり覚えとるで~。お墓に、『バカ狸ここにくたばる』て刻むとかいっとったなあ。」「なんか微妙に違う気が・・・まあなんだ、お互い、よく生きてたもんだな、マジで。」「ほんまやな~。マーくん、一時は完全に動かへんようなったし、あれはもう死ぬか思たで。」「甘いぞ八神。俺みたいに病気に慣れてるやつは、逆にそう簡単にはくたばらんのだ。」「今は結構元気そうやな。マーくんが普通に歩いてるってウソみたいやわ。」「まーな。今なら八神を押し倒せる気がする。」「そんな細腕やったら無理やな。なんや、まだ私より腕細いんとちゃう? 嫌味やなあ。」「うるせえ。見た目は細いかもしれんが、力は強いんだよ。多分きっと・・・」「おっしゃ、それやったら腕相撲やな。また圧倒したるわ。」「ふふふ・・・後悔するがいい。負けてみじめに泣き喚け。」「それはこっちのセリフや。おし、いくで!」「おう!」「「レディー・・・ゴー!」」「ぐは!」「なんや張り合い無いなあ。ぜんぜんあかんやん。」「くっそう馬鹿力め・・・」「こっちはいつも車椅子で、腕は鍛えられとるんや。全身虚弱体質のマーくんなんてペペペのペーやな。」「ちっくしょう・・・確かに今は負けた、今日は負けた、まあそれは認めてやろう。」「惨敗しといて偉そうやなあ。」「だが見てろ! 男女差ってもんがあるんだ! いつか必ず俺が勝つ!」「でも今日は負けたと。」「おのれ・・・いつか絶対押し倒してやる・・・」「できるもんやったらやってみい。」 で、二人でふっと笑ったとき、周囲を置き去りにしてたことに気づいた。「えっとー・・・仲いいんだね、二人とも。」 高町さんがおずおずと言う。「なんつーかまあ、かれこれ数年の付き合いだからな~」「4年やで。マーくんが海鳴市立病院に落ち着いたんわ、その頃からやからな。」「でもお前、あんま入院はしてなかっただろ。」「定期健診に行った時に見たのが初めてやったからな。なんや目つきの悪いガイコツが喋っとって驚いたわ。」「まあそれは昔だ。どうだ? 今はかっこよくなったろ。」「アリサちゃんに似とるから、かっこよくなるはずなんやけどな・・・あかん、まだまだ。50点やな。」「なんだと! なにが足りない!」「主に逞しさやな。」「ぐはっ。八神よぅ、それは言わない約束だぜ・・・」「まあ元が元やからマッチョになれとは言わんけどな。にしてもまだまだ痩せ過ぎやわ。」「うお! 誰もが気を使って言わなかったセリフを遠慮なく言いやがった!」「そこに痺れてあこがれるやろ?」「冗談。やはり八神は女の子ではなくタヌキの一種だと再認識しました。」「この可愛らしい私のどこがタヌキやねん!」「主にデリカシーの無さが動物なみだ。」「ふん。ガイコツが人の言葉を喋っても気にならんわ。」「まったく人間のフリが上手いタヌキだな、こんちくしょう。」「はいはいはい、仲がいいのは分かったから。マシュー、聞きたいことがあったんじゃないの?」 姉ちゃんが話に割り込む。さすがである。 八神と俺では、この調子でいつまでも続いてしまう。「ああ~と。そうだ。ちょっとマジメな話、していいかな。」「せやな。ちゃんと話さんとあかんことがあったな。」 そこで俺は、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラの4体の守護騎士を紹介された。八神は彼女たちのしたことも、その存在がプログラム体であることも知った上で、自分の家族だと断言した。まあ八神がそういうならそのへんはどうでもいいのだが。 まずは一番聞きたかった、あの戦いの経緯だが・・・ そもそも闇の書とは、本来の名前を夜天の書といい、古代ベルカの秘宝であったらしい。それが故障したり改造されたりバグったりを繰り返した末に、悪名高い闇の書に成り果ててしまったと。特にひどかったのは自動防衛プログラム。単に書を守る範囲を超えて、辺り一面を破壊することで身を守ろうと暴走する、プログラムの中の癌細胞のような代物だったらしい。闇に取り込まれた八神は、八神自身の意識としては、しばらくはそのまま闇が見せる甘い夢の中でボーとしてたのだが、高町さんたちの攻撃を伴った呼びかけ、さらにまあ一応、俺の言葉などもあり、夢から目覚めた。そして八神は、本来の夜天の書のプログラムの管制人格と会い、彼女にリインフォースという新しい名を与えて制御に成功し、守護騎士たちも呼び戻して、夜天の書に取り付いた闇、すなわち暴走した防衛プログラムの切り離しに成功する。 そして切り離された闇を、高町さん、フェイトさん、八神と守護騎士たち、ついでにクロノなどが協力してボコり、衛星軌道上まで追い出した上で、アースラのアルカンシェルで吹き飛ばしてカタをつけた。 犠牲者ゼロの奇跡の結果。この結果をもたらしたのは・・・八神自身の非常に優れた魔道士としての才能だったとか。「それじゃもう、暴走の心配は無い、と考えてよいのか?」「うん大丈夫やで。」 なーんか隠してる、微妙な笑顔だな・・・ まーいい。 そこは押して聞かないのが俺だ。 後日に、数年がかりでポツポツと聞いた話では、守護騎士たちは大丈夫だが、管制プログラムであるリインフォースは闇の侵食とバグがもはや取り返しのつかないレベルになっていて、既にリインフォースだけは自ら消滅の道を選んだ後だったそうだ。八神から見て、いや近くにいた誰からみても、それはリインフォースが迷惑をかけないために自殺したように感じられたらしい。 まあ後の話は後においといて。「んで、お前、これからどうすんの?」「せやなー。とりあえず魔法とか、次元世界とか、勉強せんことには話しにならんな。」「ミッドに勉強しにいくとかか?」「まあなんや、士官学校? みたいなとこやったらタダで入れるんやて。その代わり厳しいらしいし、卒業後も管理局への奉仕義務やったかで拘束年限やらなんやらあるんやけどな。知らんかったこととは言え、うちの家族たちがご迷惑を皆さんにおかけしてたみたいやし、この際、そういう義務とか拘束とか抜きにしても、管理局で働いて、償っていければな~って思うねん。」「・・・まあ、お前がそう決めたなら、なんもいわんが。それって今すぐの話か?」「取りあえず、足がちゃんと治るまでは、普通に地球で学校に行きながら、自宅で通信教育。足がちゃんと治った後は、一回、長期の休みをとって何ヶ月かの徹底的な研修とかで缶詰になったあとは、今度は通いでボツボツ勉強やら試験やら実地研修やら、すすめていくんやって。」「へ~そういうシステムもあるのか。じゃあ基本的にはミッドに行ったきりになるってことはないわけ?」「ん~そういうこともあるにしても、ずっと行ったままってことはめったにないやろな。」「そか。俺もさあ、ミッドの魔法医学校に行こうかと思ってんだけど、う~ん俺はまずは最低1年はみっちりと向こうに住んで専門的に勉強しようかなとか思ってたんだよな。多分、地球に住んで通いで行く体制ってのもできんのかもしれんけど・・・それはそれで大変そうだしなあ。学校いった後、さらに放課後に通うわけだべ。きついなあ。」「あれ? それやったらマーくんは、主にミッドにいる状態になるんか?」「さあそれはどうかしら。まずは事情をきっちり聞いてからね。マシュー?」 いきなり姉ちゃんが切り込んできた。素敵に無敵な笑顔だ。まずった。「ねえマシュー。その話は、私は初めて聞いたような気がするんだけど、気のせいかしら?」 優しげな声が超怖い。「いや言うの遅れたのは悪かった。帰ったらすぐに相談しようと思ってたんだけどバタバタしてて。そんでその後は、落ち着いたら言おうと思ってたわけでして。やっと落ち着いたから、相談しようと思ってたわけでして。」「ふう~ん。」 姉ちゃんの目線が痛い。ダラダラと冷や汗が流れる。「ごめんなさいね。皆さん。私たち、ちょっと話があるから席を外すわ。また後でね。」 言うが早いが、姉ちゃんは俺の首根っこを捕まえて強制連行。 ズルズルと引きずられながら、俺は皆に手をふった・・・シャマルさんと補助魔法について語り合いたかったなあ・・・「また後でな~」 姉弟が退場した後の食堂にて。「そっか~マーくんはお医者さんになるんや。」「うん、今でも治癒魔法は凄い腕前なんだよ。船医さんがベタ褒めしてたし。」「私たちも治療してもらったことあるんだけど・・・うん腕前は凄かった。腕前はね・・・」「あれ~? なんやフェイトちゃん。含みのある言い方やなあ。」「そ、そんなことないよ!」「フェイトちゃんて正直やなあ。なのはちゃん、なんかあるん?」「うん・・・確かに腕はいいのよ。全治一週間だったはずの所を、全治三日にしちゃうくらいに・・・」「それって凄いやんか。どこに問題あるん?」「え~とね・・・うん、別に痛いとか苦しいとか言うことは全然無いんだけどね・・・でもあれは・・・」「はやて・・・一回診てもらった方が早いと思うよ・・・説明しにくい・・・」 後日。「やばい・・・あれはあかんで・・・なのはちゃんもあれ受けたんか・・・」「う、うん。フェイトちゃんなんて二回も・・・」「だってマシューがどうしてもって言うから! 私は優しくしてっていったのに全然言うこと聞いてくれなくて! なんか気づいたら隅々まで調べられちゃって頭が真っ白になって・・・」「声が出ぇへんようにこらえるだけで体力使ったわ・・・マーくん、末恐ろしいな・・・」 さてこの頃。リンディさんとクロノは、グレアム提督が行っていた捜査妨害や内部情報の悪用などの証拠固めを終えて告発しようとしていて急がしかったようだし、高町さん・フェイトさん・八神・守護騎士の皆さんは、妙に仲良くなって一緒に訓練してみたり、勉強してみたりと楽しく過ごしていたようなのだが。 俺は姉ちゃんに連行されてから、数日がかりの大激論を行っていて、他に意識をまわす余裕が全くなかった・・・ まず、魔法医学を学ぶ必要性についての是非の討論。俺がリミッターに依存せずに生活できるレベルになるためには、俺自身の治癒魔法の技能の向上が必須であり、それはやはり専門的教育機関で受けるしかない、という点については何とか初日に合意できた。 リミッターをずっとつけたままにするとか、魔法医にずっとそばにいてもらうとか、そういう制約は可能な限り受けたくないという俺の意思は分かってもらえた。 だが次の問題は難しかった・・・俺は学費のかからない軍医学校的なとこに行こうと思ってたのだが、姉ちゃんはリンディさんから借金してでも民間の医学校に進めと主張したのだ。地球では大金持ちな我が家だが、管理外世界と呼ばれ、ミッドを中心とした次元世界との公式の交流が無い地球に住んでいるため、公式なミッドと地球の間での通貨交換レートなども無い。 しかしリンディさんなら会う機会があるし、ミッドでも価値のある貴金属を代替としてリンディさんに受け取ってもらうことによって、貸し借りなしの状態にすることも可能なのだ。両親もそのくらいは当然に出す、気にする必要はないと姉ちゃんは主張する。 言われてみれば確かにそうだな。うちの両親ならリンディさん相手でも対等に駆け引きして、ちゃんと受け取るべきものを受け取らせることも可能だろう。うむ、そうなると学費がかからないからって理由で進路を決めることはできない。 この点については姉ちゃんの主張が正しいと俺も認めた。 卒業後に管理局に拘束される義務のある所に行けば、どこに行かされるかわかったもんではない。管理局ってところはこれまで見てきたところでは実質的には軍隊、最大限贔屓目に見たとしても警察であり、どちらにしても武装組織だ。軍病院にしても警察病院にしても、そういうところの勤務が過酷でないはずがない。あんたは自分の体を治しながら勉強しなくちゃいけないのに、さらにそんな義務を背負ってしまったら治るものも治らなくなる!との姉ちゃんの主張は・・・なるほど正しい。「わかったでしょう? なにか異論でもある?」 姉ちゃんは言葉を止めて、俺をじっと見つめる。 確かに姉ちゃんの言うことは筋道が通ってる。理がある。でもなんか俺の心の中でもやもやするものがあるのはなんだろう。「なんだかまだ納得しきってないわね・・・いいわよ言ってみなさいよ・・・この際、なんでも。」「・・・俺は、俺の命は、いつでも誰かに『生かしてもらって』た。」「!」「誰でも最低限、『生きるだけ』なら自分で生きてられるのに・・・俺は誰かに生かしてもらわないと生きることもできなかった。」「・・・」「今もそうだよ。俺はこの、誰かが作ったリミッターに依存して『生かしてもらってる』。」「マシュー・・・」「もしも誰かに依存することが無くなるなら・・・『生かしてもらう』んじゃなくて自力で『生きる』ことが出来るような可能性があるならば、俺は他の何よりもそれを優先して、実現したい・・・」 姉ちゃんは黙って俺の話を聞いていた。「いつでも姉ちゃんに頼って、両親に頼って、病院の医者たちに頼って、そして何とか生きていた。そういう状態はイヤだ。俺は自分の命を自分で保てるような状態になりたい。そうだ俺はただ・・・『生きたい』んだ。『生かしてもらう』んじゃなくて。」「俺はこれまで散々依存してきた。周りのみんなに。もちろん姉ちゃんも父さん母さんもそれを重荷だなんて思ったことは無いんだって分かってるさ。でも俺は、やってみたいんだ。生まれたときから生かしてもらってただけの俺にも、純粋に『自力で生きる』ことができる、その可能性があるのかどうか試したい・・・」「これは俺のワガママだと思う。でもさ姉ちゃん・・・やっと俺にもやってみたいことが出来たんだよ。自力で生きることが出来るのかどうか、俺は試してみたいんだ。」 姉ちゃんは黙って俺の頭を撫でて・・・この日の議論は終結した。 でまあ、結論なんだが・・・ 双方妥協する形で、俺は一応、時空管理局所属ミッドチルダ中央魔法医学校に通うことは認められたものの、それはあくまで通い。向こうに住み込むのは却下。だから通常なら最低1年で済む過程を2年かけて学ぶ形になった。「考えてみたら、あんたがそういうワガママ言うのは初めてかも知れない。それを無碍にダメだって言えないわ。」 というのが姉ちゃんの出した結論だった。 そう、実は俺が姉ちゃんの言うことを絶対的に聞いてしまうのと同じくらい・・・姉ちゃんは俺の言うことを聞いてしまうのだ。 姉ちゃんを悲しませるようなことだけは・・・絶対にしないと、俺は心に誓った。 前とは少しだけ変わった、でも平和な日常が、再び始まる・・・(あとがき)事件は終わって、日常が始まりました。次の大きな事件は「なのは撃墜」。そこまで皆の成長や葛藤を描きつつ自然につなげられるか・・・道は遠いっす