黄権(真名霧花)は勅使を迎えていた。
「益州刺史の印綬を授ける」
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「正史」の黄権は、意外と「魏」でも厚遇されており、それなりに優秀な人材だった様である。
その割には“有名”な「イメージ」が薄いのは、それだけ「魏」の人材が厚い事と「演義」では「蜀」が注目されがちだからだろう。
特に、実戦指揮官となれば「泣いて馬謖を斬る」などという事態を招いていた人材不足からすれば、
「蜀」から「魏」に奪われた事が惜しい程の貴重な実績とすら言えた。
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その「経験値」をそっくり「この『外史』」に持ち込んでいる霧花は、実のところ貴重な人材だった。
「天の御遣い」だけが「正体」を知っているのが、もったいない位。
逆に、その霧花が「蜀」の拠点を守っているから、安心して遠征する事が出来たとも言える。
実際、主君たちである“カップル”、そして「五虎竜鳳」という「トップ」集団が、決して成都に落ち着かずに遠征続きの上、
その後では、なまじ天下を獲ってしまったために、帝都に行ってしまったのだから。
そして、天下を獲っても、その天下の西南に位置する益州は、西と南に「国境」を持っている。
「益州刺史」とは、天下が平穏だった時代から「その」国境を守る「遊撃軍団」を預かる任務でもあった。
「百戦錬磨」でもあれば「益州」は守るべき「故郷」でもある「黄権」には適任だった。
………。
……。
…勅使として、やって来たのは曹仲徳である。
「貴方も「天の国」の御方だった、とは」
「赤壁」までは、仲徳本人と姉の華琳、そして「天の国」同士の北郷一刀と華佗しか知らなかった事だ。
一刀は、霧花を「寵愛」しようとしていると感ちがいされないために、桃香にすら霧花の「正体」をうち明けていなかった。
それだけに霧花、いや黄権については、久し振りに何も隠さず話す事の出来る相手だった。
実際、愛くるしい「霧花」の見た目を裏切る「爺くさい」口調に戻っていた。
仲徳も三国志ファンだから「黄権」については語れる。
というか「この」世界で「ある」意味初めて、自分が知っている通りの「三国志」の人物「本人」と話せたとも言える。
………。
……。
…すっかり、話し込んでいた仲徳と霧花だったが、
「仲徳殿。私の「見た目」を忘れてしまったようですじゃ。お互いに」
そうだった。一刀も、その意味で「誤解」を避けてきた筈だった。
「特に、仲徳殿は未だ1人身だった筈」
「ああ。俺は「その」意味では慎重に、そして俺自身に忠実に生きたいんだ」
「ご主人様が、おっしゃられていた“ふらぐ”とやらですかのう」
「それとも少し外れているな。公衡殿も「この」時代の「男」だから」
「つまりは「天の国」の流儀ですかのう」
「そうだ。“ここ”でいう「天の国」では、本来は恋愛結婚以外むしろ不純とされているし、実は「後宮」という制度は無い」
「ほう」皇帝でなくても古代中国は、少なくとも地主階級以上は多妻だ。
「『天の国』の男は、1人の女だけに恋愛をして、それを貫くのが理想なんだよ。少なくとも、女の方が「それ」を要求できる」
「ほう、意外と窮屈なのですな」
「だけどね。それでも本望なほど愛する事の出来る女に出会う事が、一生の幸福と考えられているんだ」
「話に聞けば、面白くはありますのう」
「もしかしたら「天の国」でも、これは綺麗事かも知れないけれど。だけどな…」
「…俺や北郷は、その綺麗事が信じられるような若造の間に「天の国」から落ちて来たんだ」
「ご無礼!」
中身が「黄権」だと知っていれば「黄権」が笑っていると分かる様な、大人の男の爆笑だった。
「しかし、真にそれが、ご主人様の真情だと致(いた)すと…」
「ああ、アイツが「桃香さん」以外に手を出したのは「阿斗ちゃん」が生まれてからだったろう」
「その様な御方が、あの様な…」
「種馬に成るとはな(苦笑)「天の国」に居た頃のアイツ本人にいっても、下手な冗句としか聞こえなかっただろうな」
「…それでは、仲徳殿は、ご主人様の分まで…」
「そんな言い方をしたら、俺の姉さんを始め、大勢に失礼だよ。しかし、俺は「天の国」の「普通の恋愛」をしたいな」
「では、やはり「霧花」と誤解されても御迷惑でしょう。「黄権」だと御存知でしょうから尚更」
もう1度、大人の男笑いをする「見た目」は霧花だった。
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ところで、曹仲徳氏は、いったい誰と「普通の恋愛」をしたのでしょう。
一応「恋姫」公式キャラは除外として「あの」時代の誰かでしょうか。
皆様は「誰」を思い浮かべて、おいでですか。