日本の歴史時代における武士階級などの礼式、例えば名前の呼び方などは
中国の士太夫階級などから学習したものに日本国内でのアレンジを加えたものが基本でした。
したがって、そうした礼式社会と『恋姫』で言う処の「真名」の付き合いとの両面の顔を使い分けたとの「伝説」を持つ人物が
もしも『恋姫』ヒロインたちと問答したならば、“こんな”感じに成ったでしょうか。
『真名問答』
「遠山金四郎景元」
如何(いか)にも武士らしく、姿勢を保って名乗りを上げた。
「曹孟徳の曹に当る苗字は遠山、字の孟徳に当るのが金四郎。そうだな。四郎を“この”国では季と申したな」
孟が一郎、仲が二郎、叔が三郎。一応、江戸武士としてキチンとした教育を受けているのだから、それ位は知っている。
「景元は無礼ながら操に当る忌み名だ。…それから確かめて置きたいが」
遠山が確認したのは、彼女たち当人同士は『三国志』でも聞き慣れない如何にも今、目の前に居る容姿に似合った名前で呼び合っていた事。
「真名」と言うものについて聞かされて「成程」と思い当たる処もあった。
そこは相手によって呼び方、呼ばれ方を変えなければ成らなかった武士社会で出世だけはシッカリした遠山だ。
「例えば其れは…孟徳などの字を自ら名乗る前に、親御様などから呼ばれていた名かな。
それならば確かに、その子供同士の頃からの幼友達か同じ位に親しい相手以外から呼ばれれば」
遠山が居た武士社会でも、刃傷沙汰に成りかねない無礼だった。
「それがしの幼名ならば通之進。だが」
ここでニヤリと笑うと態度を変える。武士から“遊び人”に。
「その「真名」とかで付き合う様な連中からは、“こう”呼ばれているものさ」
「金さん」
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今回は『フルメタルパニック!』とのクロス短編に成ります。
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中国時代ものでラブストーリーと言えば、その1つは『長恨歌』でしょう。
その中で歌われる誓いの言霊(ことだま)が「比翼連理」です。
片翼ずつしか持たないために番(つがい)でしか飛べない伝説の鳥、
枝を絡ませ、ひと固まりに成りながら寄り添い合って立ち続ける2本の木。
そんな「天に在って願わくば比翼の鳥と成り、地に在って願わくば連理の枝と成らん」との誓いの言霊です。
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私論かつ個人的見解ながら、元々の『原作』にメインヒロインを残して来ているクロスオーバー主人公がクロス先のヒロインを寝取ったら
そもそも自分の恋人に対する裏切りかも知れません。
したがいまして“この”クロスオーバー作品の相良軍曹は、誘惑されても貞操を死守する予定です。
『片翼兵士』~帰りなん愛しき人よ~
「ここはどこだ?」
相良宗介はメリダ島もろとも、最後の核爆発で消失した筈だった。
どうして自分は存在している?そんな疑問に身を任せたのは、わずかな瞬間だった。
歴戦の兵士は現実家でもある。そして、彼には現実的な目的があった。
「俺は帰る。千鳥かなめが俺を待っている」
先ずは現状だ。
「ここは「北」中国か?」
秘密部隊の傭兵として、紛争地帯ならば世界中をめぐった相良軍曹だ。
風に混じって黄砂が吹きつけ、黄色い大地が地平線まで続く平原も立った事がある。
次は自分の現状だ。
「俺はASに乗っていた筈だ」
しかし確認してみると、確かに「ミスリル」の正式装備だがパイロットスーツでは無い。歩兵としての任務に就く場合のものだった。
そして装備していた武器は、彼女を護衛していた時と同じ「グロック19」だった。念の為、装弾も確認してみる。
「オモチャよりはマシだな」
その宗介の頭上を、晴天を切り裂いて流星が落ちて行った。
「ふむ。あの隕石を見物に来る物好きでも居たら、何か情報が得られる可能性も在る」
黄砂を派手に巻き上げたキノコ雲に向かって歩き始めた。
……何処かの学生服を着た青少年が、どう見ても山賊に見える3人組に襲われていた。
「あ…有り難う。でも、銃なんか使わなくても」
「問題無い。非致死性のゴムスタン弾だ」
山賊どもが自分で用意していた縄で拘束し気絶から目覚めても問題無い様にしてから、さて会話を再開する。
「俺は相良宗介。陣代高校、安全保障問題担当」
「お、俺は北郷一刀。聖フランチェスカ学園の高校2年生。剣道部所属」
一刀の方は、突然に出現したサバイバル姿の他校学生を「ミリオタ?」とでも認識した様だ。
「北郷は、ここが何処だか分かるか?」「俺も困ってるんだけど」
戦場慣れしていた宗介は気が付いた。何者かが近付いて来る。
宗介が遣って来た方を除いた3方向から接近して来た。2組は騎馬で、残る1人は徒歩で。
「コスプレ?」
日本国内で育った一刀は兎も角(ともかく)紛争地帯で育ちながらも数ヶ月間は日本国内での学生生活を送った宗介にも、そう見えた。
もっとも宗介は、その少女たちが決して油断出来ない相手だとも見抜いていた。
「おい、そこの貴様」宗介は無愛想である。
「貴様!華琳様が御用だぞ」「俺の上官か?お前が言う相手は」
「貴様!!」
そこへ横から別な声が掛かった。
「ねえ、そこの貴方。そんなのは放(ほ)っといて、聞きたいことが有るんだけれど」
それから少しの間はガチャガチャと混沌(カオス)状態だったが、宗介は空中へ向かってグロックを何発か撃ち、静かにさせた。
もっとも最初の気短(きみじか)だけは尚も「何だ?!貴様、妖術使いか?!」などと五月蝿(うるさ)かったため
残り数発は気短の頭上を弾道が通過する様に狙って撃った。
「1人ずつ話せ」
“気短”の上官らしい小柄だが覇気の大きな少女が部下を宥(なだ)め、ようやっと話が動き始めた。
先ずは、それぞれ自分が何者であるかの宣言だ。
ところが何故か(北郷一刀ほどの『三国志』ファンでも別に無い宗介から見れば何に驚いていると感じる位)
北郷は少女たちが名乗りを上げる度に反応していた。
「私は沛国の曹孟徳よ。これは部下の夏侯元譲と妙才」
「そう…もうとく?魏の曹操?!」
ピクッと特徴ある金髪が悪戯っぽく跳ねた。
「あら。私は字しか名乗らなかったわね」
そんな仕草だと「美少女ゲーム」のツンデレ系ヒロインにも見える。
もっとも、そんな事をウッカリ指摘したら死神の大鎌でも首に落ちて来そうだ。
「私は幽州涿(たく)郡の劉玄徳です!」
今度は、これも「美少女ゲーム」の正統ヒロインにも見える少女がペコンと、桃色の髪と豊かな身体の一部を振って御辞儀をした。
「今度は劉備?!」
武将コスプレ(?)の他の少女に比べれば質素な庶民の衣装で、行商の売物らしい筵(むしろ)とかハキモノとかを身に付けている。
しかし、そんな風体の中で1点だけ、腰には立派な宝剣を下げていた。
「宝剣?もしかして、それ中山靖王?」
「うわあ、どうして知っているんです?もしかして、やっぱり」
北郷からすれば読み慣れた『三国志演義』のスタート、劉備の初登場シーンに当て嵌まってはいるが
どうして劉備の耳では無くって他の部分が福々しいんだ?
「いや、いや。待て、落ち着け、これは孔明の罠だ」
劉備(?)は可愛らしく、はてなマークを浮かべていた。無理も無い。
未だ「筵を織り履(くつ)を売っていた」没落王族の頃の
関羽や張飛も居ない処を見れば「桃園の誓い」も済ませてはいない頃だろう劉備が孔明を知っている筈も無い。
(…いや、そこに納得するんじゃ無くって、どうして曹操や劉備が女の子…)
「私は江東の孫文台の子、伯符よ。そして我が友、周公瑾」
一刀の時代(?)なら「トースト色」とでも形容する容姿の、これも身体の何処かが豊かな少女が宣言した。
虎の子は虎。これもまた、曹操とは別に狩猟者の微笑を向けて来る。
虎が獲物を咥(くわ)えて尻尾を振っているみたいな笑顔だが、曹操(?)とも劉備(?)とも異なった魅力を持った美少女。
「曹操に劉備に孫策まで?!これ一体?何のエロゲ……」
そして「曹操」「劉備」「孫策」と名乗った少女たちが、それぞれに語った。
「天の御遣い」の予言について。
その予言と風評に何を求めているかについて。
……そして北郷一刀と相良宗介は、それぞれに行く途を選択した。
「それで、どうして私を選んだの?」
曹操の馬に続いて、話の邪魔に成らない程度にカポカポ歩きながら質問されていた。
もっとも夏候惇辺りは、そんな疑問を主君が持つこと自体が不愉快の様で妹に宥められていた。
確かに曹操ほどに用意が好い少女が、誰かを連れて帰る可能性が在る時に馬の準備もしていない事は考え難い。
意外な様だが、アフガニスタン育ちの宗介はASだけでは無く馬にも乗れた。
「劉備には北郷が付いて行った。もう、彼女には俺は必要ない」
「ふ―ん。それなら孫策は?」
「孫策が言っていた「天の血」がどうのと言う意味が分からない訳では無かった」
「それが理由?」
「それもだ。俺には其の可能性が存在する女は1人しか居ない」
「天の国に?でも、戻れるかどうか、分からないんでしょう」
「俺は帰る。千鳥かなめが俺を待っている」
もしも「天の御遣い」でも聞いていたら「関羽千里行」とかを連想したかも知れない。
「それにも関連しているが俺は傭兵だ。だから曹操とも契約は出来る。だが、必ず俺は帰る」
夏候姉妹の恒例漫才は、さて置いて
「分かったわ」
もう1人の「関羽千里行」の当事者は曹操だった。
「でも、私は欲張りなのよ」
相良宗介を連れ戻った曹操は、とりあえず確認する事が在った。
「貴方は傭兵だといっているけれど、詳しい事を聞かせてもらえるかしら」
「俺はミスリルという部隊に所属していた。階級は軍曹だ」
「軍曹?」「下士官だ。伍長の上、曹長の下だ」
「伍長ならば、漢にも居るわね」
古代中国での「伍長」とは、最小単位である5人の中で他の4人を指揮する立場だった。
実のところ明治日本でヨーロッパ語から翻訳ずる時、中国史から探して来た単語だったりする。
「本来は其の理解で好い。だが俺たちの場合は専門技術を持った職業軍人の意味だ」
曹操は興味津々している。
「だから俺たちのチームは全員が軍曹で以下の階級は居ない。直属の上官も士官だった」
「ふうん。じゃ、貴方も専門技術とやらを持っているの」
「ここには、俺が最も専門にしていた兵器は無いだろう。しかし」
まるで淡々とすら申告する。
「近接戦闘も射撃も、ある程度までなら出来る」
「射撃?そう言えば、さっきも其れらしいものを使っていたわね」
「残念ながら今はオモチャも同然だ」「貴様!華琳様に対して真面目に答えんか」
「さっき、全ての弾丸を撃って仕舞った。なかなか静かに成らない者が居たからな」
「しょうが無いわね。春蘭たら」クスリと笑った。
「別な方法で静かにさせようとしていたら、どちらかが死んでいただろう」
宗介にしてみれば何が可笑しいのか、曹操はコロコロと可愛らしく笑っていた。
火薬などは未だ発明されていないが「弩」(クロスボ―ガン)その他を使った射撃戦は、中国戦史では古代から存在していた。
余談ながら孔明は連弩(連発式ボ―ガン)の改良でも名を残している。
調練場に連れて来られた宗介は、20本込めの連弩を渡された。
「悪くない」
20本中の17本が的代わりの藁人形に命中していた。
「クルツならば、この倍の距離から20本命中しているだろう。頭か胸か狙った方に、だ」
「その兵も欲しいわね」
見かけは可愛らしく、自称欲深な事を言っている。
「だがヤツみたいな男は何故か、この部隊では嫌われそうだ」
ムッツリとしたまま言い切る。
「まあ、とりあえず貴方が役に立たない訳でも無さそうね」
「それでは契約の話をするか」
曹操は「乱世の姦雄」の顔に成った。
「貴方を傭兵に雇(やと)うわ。相良軍曹」